特許第6243856号(P6243856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243856
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ハイブリッド建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   E02F9/20 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-10340(P2015-10340)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132968(P2016-132968A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】日田 真史
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148879(JP,A)
【文献】 特開2012−172520(JP,A)
【文献】 特開2012−082644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたエンジンと、前記エンジンに機械的に接続された油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの圧油によって駆動する油圧アクチュエータと、前記エンジンと機械的に接続された発電電動機と、前記発電電動機に電気的に接続された蓄電装置と、前記発電電動機および前記蓄電装置の充放電電力を制御するコントローラとを備えたハイブリッド建設機械において、
前記蓄電装置の蓄電率の適正使用範囲内で、互いに異なる目標蓄電率が設定された複数のモードのうちいずれか1つのモードを選択するモード選択装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電率が前記モード選択装置によって選択されたモードの目標蓄電率に収束するように、前記発電電動機および前記蓄電装置の充放電電力を制御することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記油圧ポンプの最大動力を増加または減少させる最大動力設定部を備え、
前記最大動力設定部は、前記モード選択装置によって選択されたモードの目標蓄電率が低くなるに従って、前記油圧ポンプの最大動力を小さな値に制限してなる請求項1に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記モード選択装置によってモードが変更されたときに、前記目標蓄電率の値をモード変更前の値からモード変更後の値に連続的に徐々に変化させてなる請求項1または2に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項4】
前記車体の操作状態を検出する車体操作状態検出装置をさらに備え、
前記最大動力設定部は、前記モード選択装置によってモードが変更され、かつ前記車体操作状態検出装置によって前記車体の非操作状態が検出されたときに、前記油圧ポンプの最大動力を変更してなる請求項2に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項5】
前記モード選択装置は、前記油圧ポンプの最大動力を制限せず、かつ前記目標蓄電率を前記蓄電装置の最大蓄電率付近とする最大蓄電率モードを選択可能とする請求項2に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項6】
前記モード選択装置によって選択されたモードを表示する車載モニタをさらに備えてなる請求項1ないし5のいずれかに記載のハイブリッド建設機械。
【請求項7】
前記エンジンの最大出力は、前記油圧ポンプの最大動力よりも小さくしてなる請求項1ないし6のいずれかに記載のハイブリッド建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと発電電動機が搭載されたハイブリッド建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンと油圧ポンプに機械的に結合された発電電動機と、リチウムイオンバッテリやキャパシタ等の蓄電装置を備えたハイブリッド建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなハイブリッド建設機械では、発電電動機は、エンジンの駆動力によって発電した電力を蓄電装置に充電する、または蓄電装置の電力を用いて力行することによってエンジンをアシストする、という役割を担う。また、多くのハイブリッド建設機械では、発電電動機とは別個に電動モータを備え、この電動モータによって油圧アクチュエータの動作を代行またはアシストさせている。例えば電動モータによって旋回動作を行うときには、電動モータへの電力供給によって上部旋回体の旋回動作やアシストを行うと共に、旋回停止時の制動エネルギを回生して蓄電装置の充電を行っている。
【0003】
ここで、特許文献1には、蓄電装置の蓄電量を適切に制御することによって、回生エネルギを高効率に回収する構成が開示されている。この場合、オペレータの操作情報に基づいて作業装置や上部旋回体の次なる動作を推定し、この推定した動作から算出された回生電力の推定値に基づいて目標蓄電量を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−82644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、蓄電装置は、低い蓄電率よりも高い蓄電率で充放電を繰り返した方が、蓄電装置の寿命が低下する。これに対し、特許文献1の構成では、回生エネルギと蓄電装置の蓄電量との関係に基づいて目標蓄電量を設定しているが、充放電の繰り返しによる蓄電装置の劣化を考慮していないため、蓄電装置の寿命が低下する可能性がある。
【0006】
一方、目標蓄電量を低く設定すれば、蓄電装置を長期間に亘って使用することができる。しかしながら、蓄電装置の目標蓄電量を常に低い値にすると、例えば重負荷作業を続けた場合に電動モータに供給するエネルギが不足し、作業装置等の動作に支障を来たす虞れがある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、蓄電装置の劣化を抑制しつつ所望の車体動作が可能なハイブリッド建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、車体に設けられたエンジンと、前記エンジンに機械的に接続された油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの圧油によって駆動する油圧アクチュエータと、前記エンジンと機械的に接続された発電電動機と、前記発電電動機に電気的に接続された蓄電装置と、前記発電電動機および前記蓄電装置の充放電電力を制御するコントローラとを備えたハイブリッド建設機械において、前記蓄電装置の蓄電率の適正使用範囲内で、互いに異なる目標蓄電率が設定された複数のモードのうちいずれか1つのモードを選択するモード選択装置をさらに備え、前記コントローラは、前記蓄電装置の蓄電率が前記モード選択装置によって選択されたモードの目標蓄電率に収束するように、前記発電電動機および前記蓄電装置の充放電電力を制御することを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明では、前記コントローラは、前記油圧ポンプの最大動力を増加または減少させる最大動力設定部を備え、前記最大動力設定部は、前記モード選択装置によって選択されたモードの目標蓄電率が低くなるに従って、前記油圧ポンプの最大動力を小さな値に制限している。
【0010】
請求項3の発明では、前記コントローラは、前記モード選択装置によってモードが変更されたときに、前記目標蓄電率の値をモード変更前の値からモード変更後の値に連続的に徐々に変化させている。
【0011】
請求項4の発明では、前記車体の操作状態を検出する車体操作状態検出装置をさらに備え、前記最大動力設定部は、前記モード選択装置によってモードが変更され、かつ前記車体操作状態検出装置によって前記車体の非操作状態が検出されたときに、前記油圧ポンプの最大動力を変更している。
【0012】
請求項5の発明では、前記モード選択装置は、前記油圧ポンプの最大動力を制限せず、かつ前記目標蓄電率を前記蓄電装置の最大蓄電率付近とする最大蓄電率モードを選択可能としている。
【0013】
請求項6の発明では、前記モード選択装置によって選択されたモードを表示する車載モニタをさらに備えている。
【0014】
請求項7の発明では、前記エンジンの最大出力は、前記油圧ポンプの最大動力よりも小さくしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、蓄電装置の蓄電率の適正使用範囲内で、互いに異なる目標蓄電率が設定された複数のモードのうちいずれか1つのモードを選択するモード選択装置を備え、コントローラは、モード選択装置によって選択されたモードの目標蓄電率に応じて、発電電動機および蓄電装置の充放電電力を制御する。このため、オペレータは、モード選択装置によって油圧アクチュエータの負荷に応じてモードを切り換えることができる。例えば軽負荷のときには目標蓄電率を低下させることができるから、蓄電率が低い状態で蓄電装置は充放電を繰り返すことになり、蓄電装置の劣化を抑制して、蓄電装置の寿命を延ばすことができる。一方、蓄電装置の充電が追い付かないような連続的な重負荷作業を行うときには、目標蓄電率を上昇させることができる。これにより、より長時間に亘ってオペレータの要求に応じた車体の動作を行うことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、最大動力設定部は、モード選択装置によって選択されたモードの目標蓄電率が低くなるに従って、油圧ポンプの最大動力を小さな値に制限する。これにより、作業時における蓄電装置の放電エネルギ量が小さくなった分、充電が追い付くようになる。従って、蓄電率の低下を気にせず、蓄電装置の寿命を優先した低い目標蓄電率による車体動作を行うことができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、コントローラは、モード選択装置によってモードが変更されたときに、目標蓄電率の値をモード変更前の値からモード変更後の値に連続的に徐々に変化させる。このため、モード変更のときに蓄電率を徐々に変化させることができるから、蓄電率の急峻な変化を防いで、予期せぬ車体動作を予防できる。
【0018】
請求項4の発明によれば、最大動力設定部は、モード選択装置によってモードが変更され、かつ車体が非操作状態となったときに、油圧ポンプの最大動力を変更する。このため、車体の操作途中で油圧ポンプの最大動力が変更されることがないから、車体が安定した状態で油圧ポンプの最大動力を変更することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、モード選択装置は、油圧ポンプの動力を制限せず、かつ目標蓄電率を蓄電装置の適正使用範囲の最大値付近の値に設定する最大蓄電率モードを選択できる構成とした。このため、最大蓄電率モードを選択することによって、例えば登坂走行時等のように作業持続性を最優先とするときでも、可能な限り長時間に亘って車体動作を継続することができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、モード選択装置によって選択されたモードを表示する車載モニタを備えるから、オペレータは車載モニタを目視することによって、現在選択されているモードを容易に把握することができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、エンジンの最大出力は油圧ポンプの最大動力よりも小さくしたから、軽負荷時には、エンジンの駆動力によって油圧ポンプを駆動することができ、重負荷時には、エンジンに加えて発電電動機のアシスト力によって油圧ポンプを駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態によるハイブリッド油圧ショベルを示す正面図である。
図2図1中のハイブリッド油圧ショベルに適用する油圧システムと電動システムを示すブロック図である。
図3図2中のハイブリッドコントロールユニットを示すブロック図である。
図4図3中のモード変更対応部を示すブロック図である。
図5】目標蓄電率およびポンプ出力制限の変更値テーブルを示す説明図である。
図6】ポンプ出力制限変更判定処理を示す流れ図である。
図7図3中の出力指令演算部を示すブロック図である。
図8図1のキャブ内を示す要部斜視図である。
図9】車載モニタに表示された表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態によるハイブリッド建設機械としてハイブリッド油圧ショベルを例に挙げて、添付図面に従って説明する。
【0024】
図1ないし図9は本発明の実施の形態を示している。図1において、1は後述のエンジン21と発電電動機27とを備えたハイブリッド油圧ショベル(以下、油圧ショベル1という)を示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回装置3と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う作業装置11とにより構成されている。このとき、下部走行体2と上部旋回体4とは、油圧ショベル1の車体を構成している。
【0025】
上部旋回体4は、旋回フレーム5上に設けられ後述のエンジン21等が収容された建屋カバー6と、オペレータが搭乗するキャブ7とを備える。図8に示すように、キャブ7内には、オペレータが着座する運転席8が設けられると共に、運転席8の周囲には、操作レバー、操作ペダル等からなる走行用操作装置9と、操作レバー等からなる作業用操作装置10とが設けられている。ここで、操作装置9,10には、これらの操作量(レバー操作量OA)を検出する操作量センサ9A,10Aがそれぞれ設けられている。これらの操作量センサ9A,10Aは、例えば下部走行体2の走行操作、上部旋回体4の旋回操作、作業装置11の俯仰動操作(掘削操作)等のような車体の操作状態を検出する車体操作状態検出装置を構成している。また、キャブ7内には、後述する車載モニタ39が設けられている。
【0026】
図1に示すように、作業装置11は、例えばブーム11A、アーム11B、バケット11Cと、これらを駆動するブームシリンダ11D、アームシリンダ11E、バケットシリンダ11Fとによって構成されている。ブーム11A、アーム11B、バケット11Cは、互いにピン結合される。作業装置11は、旋回フレーム5に取付けられ、シリンダ11D〜11Fを伸長または縮小することによって、俯仰動する。
【0027】
ここで、油圧ショベル1は、発電電動機27等を制御する電動システムと、作業装置11等の動作を制御する油圧システムとを搭載している。以下、油圧ショベル1のシステム構成について図2ないし図9を参照して説明する。
【0028】
21は旋回フレーム5に搭載されたエンジンを示し、このエンジン21は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成される。エンジン21の出力側には、後述の油圧ポンプ23と発電電動機27とが機械的に直列接続して取付けられ、これら油圧ポンプ23と発電電動機27とは、エンジン21によって駆動される。ここで、エンジン21の作動はエンジンコントロールユニット22(以下、ECU22という)によって制御され、ECU22は、HCU36からのエンジン回転数指令ωeに基づいて、エンジン21の回転速度(エンジン回転数)を制御する。また、エンジン21の最大出力は、例えば油圧ポンプ23の最大動力よりも小さくなっている。
【0029】
23はエンジン21によって駆動される油圧ポンプを示している。この油圧ポンプ23は、タンク(図示せず)内に貯溜された作動油を加圧し、走行油圧モータ25、旋回油圧モータ26、作業装置11のシリンダ11D〜11F等に圧油として吐出する。油圧ポンプ23には、負荷センサ23Aが設けられている。負荷センサ23Aは、ポンプ負荷PLを検出して、後述のHCU36に出力する。
【0030】
油圧ポンプ23は、コントロールバルブ24を介して油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ25、旋回油圧モータ26、シリンダ11D〜11Fに接続されている。コントロールバルブ24は、走行用操作装置9、作業用操作装置10に対する操作に応じて、油圧ポンプ23から吐出した圧油を走行油圧モータ25、旋回油圧モータ26、シリンダ11D〜11Fに選択的に供給または排出する。
【0031】
具体的には、走行油圧モータ25には、走行用操作装置9の操作に応じて油圧ポンプ23から圧油が供給される。これにより、走行油圧モータ25は、下部走行体2を走行駆動させる。旋回油圧モータ26には、作業用操作装置10の操作に応じて油圧ポンプ23から圧油が供給される。これにより、旋回油圧モータ26は、上部旋回体4を旋回動作させる。シリンダ11D〜11Fには、作業用操作装置10の操作に応じて油圧ポンプ23から圧油が供給される。これにより、シリンダ11D〜11Fは、作業装置11を俯仰動させる。
【0032】
27はエンジン21によって駆動される発電電動機(モータジェネレータ)を示している。この発電電動機27は、例えば同期電動機等によって構成される。発電電動機27は、エンジン21を動力源に発電機として働き蓄電装置31や旋回電動モータ33への電力供給を行う発電(回生)と、蓄電装置31や旋回電動モータ33からの電力を動力源にモータとして働きエンジン21および油圧ポンプ23の駆動をアシストする力行との2通りの役割を果たす。従って、エンジン21のトルクには、状況に応じて発電電動機27のアシストトルクが追加され、これらのトルクによって油圧ポンプ23は駆動する。この油圧ポンプ23から吐出される圧油によって、作業装置11の動作や車両の走行等が行われる。
【0033】
図2に示すように、発電電動機27は、第1のインバータ28を介して一対の直流母線29A,29Bに接続されている。第1のインバータ28は、例えばトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を用いて構成され、モータジェネレータコントロールユニット30(以下、MGCU30という)によって各スイッチング素子のオン/オフが制御される。直流母線29A,29Bは、正極側と負極側とで対をなし、例えば数百V程度の直流電圧が印加されている。
【0034】
発電電動機27の発電時には、第1のインバータ28は、発電電動機27からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置31や旋回電動モータ33に供給する。発電電動機27の力行時には、第1のインバータ28は、直流母線29A,29Bの直流電力を交流電力に変換して発電電動機27に供給する。そして、MGCU30は、HCU36からの発電電動機力行発電電力指令Wmgに基づいて、第1のインバータ28の各スイッチング素子のオン/オフを制御する。これにより、MGCU30は、発電電動機27の発電時の発電電力や力行時の駆動電力を制御する。
【0035】
31は発電電動機27に電気的に接続された蓄電装置を示している。この蓄電装置31は、例えばリチウムイオンバッテリによって構成され、直流母線29A,29Bに接続されている。
【0036】
蓄電装置31は、発電電動機27の発電時には発電電動機27から供給される電力を充電し、発電電動機27の力行時(アシスト駆動時)には発電電動機27に向けて駆動電力を供給する。また、蓄電装置31は、旋回電動モータ33の回生時には旋回電動モータ33から供給される回生電力を充電し、旋回電動モータ33の力行時には旋回電動モータ33に向けて駆動電力を供給する。このように、蓄電装置31は、発電電動機27によって発電された電力を蓄電することに加え、油圧ショベル1の旋回制動時に旋回電動モータ33が発生した回生電力を吸収し、直流母線29A,29Bの電圧を一定に保つ。
【0037】
蓄電装置31は、バッテリコントロールユニット32(以下、BCU32という)によって充電動作や放電動作が制御される。BCU32は、蓄電装置31のバッテリ蓄電率SOCを検出してHCU36に向けて出力すると共に、HCU36から出力される目標蓄電率SOC0となるように、蓄電装置31の充放電を制御する。
【0038】
なお、本実施の形態では、蓄電装置31には、例えば電圧350V、放電容量5Ah程度、バッテリ蓄電率SOC(蓄電率)の適正使用範囲は30〜70%程度に設定されたリチウムイオンバッテリを用いるものとする。バッテリ蓄電率SOCの適正使用範囲等は、上述した値に限らず、蓄電装置31の仕様等に応じて適宜設定される。
【0039】
33は発電電動機27または蓄電装置31からの電力によって駆動される旋回電動モータを示している。この旋回電動モータ33は、例えば三相誘導電動機によって構成され、旋回油圧モータ26と共に旋回フレーム5に設けられている。旋回電動モータ33は、旋回油圧モータ26と協働して旋回装置3を駆動する。
【0040】
図2に示すように、旋回電動モータ33は、第2のインバータ34を介して直流母線29A,29Bに接続されている。旋回電動モータ33は、蓄電装置31や発電電動機27からの電力を受けて回転駆動する力行と、旋回制動時の余分なトルクで発電して蓄電装置31を蓄電する回生との2通りの役割を果たす。このため、力行時の旋回電動モータ33には、発電電動機27等からの電力が直流母線29A,29Bを介して供給される。これにより、旋回電動モータ33は、作業用操作装置10の操作に応じて回転トルクを発生させて、旋回油圧モータ26の駆動をアシストすると共に、旋回装置3を駆動して上部旋回体4を旋回動作させる。
【0041】
第2のインバータ34は、第1のインバータ28と同様に、複数のスイッチング素子を用いて構成される。第2のインバータ34は、旋回電動モータコントロールユニット35(以下、RMCU35という)によって各スイッチング素子のオン/オフが制御される。旋回電動モータ33の力行時には、第2のインバータ34は、直流母線29A,29Bの直流電力を交流電力に変換して旋回電動モータ33に供給する。旋回電動モータ33の回生時には、第2のインバータ34は、旋回電動モータ33からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置31等に供給する。
【0042】
RMCU35は、HCU36からの旋回電動モータ力行回生電力指令Wrmに基づいて、第2のインバータ34の各スイッチング素子のオン/オフを制御する。これにより、RMCU35は、旋回電動モータ33の回生時の回生電力や力行時の駆動電力を制御する。
【0043】
36はコントローラとしてのハイブリッドコントロールユニット(HCU)を示している。このHCU36は、例えばマイクロコンピュータによって構成されると共に、CAN37(Controller Area Network)等を用いてECU22、MGCU30、RMCU35に電気的に接続されている。HCU36は、ECU22、MGCU30、RMCU35と通信しながら、エンジン21、発電電動機27、旋回電動モータ33を制御する。
【0044】
また、HCU36には、操作装置9,10のレバー操作量OAを検出する操作量センサ9A,10Aと、油圧ポンプ23のポンプ負荷PLを検出する負荷センサ23Aとが接続されている。これに加えて、HCU36には、モード選択装置38、車載モニタ39等に接続されている。これにより、HCU36には、モード情報MODE、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OA、ポンプ負荷PL、エンジン情報EI、その他車体情報VIが入力される。なお、ポンプ負荷PLは、負荷センサ23Aによって直接的に検出する必要はなく、例えば油圧ポンプ23から吐出される作動油の圧力(吐出圧)から間接的に検出してもよい。
【0045】
モード選択装置38は、例えばスイッチ、ダイヤル、レバー等によって構成され、後述するEモード、P1モード、P2モードの3種類のモードのうちいずれか1つを選択する。モード選択装置38は、キャブ7内に位置して、オペレータによって操作され、選択中のモードに対応したモード情報MODEをHCU36に出力する。
【0046】
図8および図9に示すように、車載モニタ39は、キャブ7内に配置され、例えば燃料の残量、エンジン冷却水の水温、稼動時間、車内温度等のように車体に関する各種の情報を表示する。これに加え、車載モニタ39は、HCU36に接続されると共に、モード表示部39Aを備える。このモード表示部39Aには、Eモード、P1モード、P2モードのうちモード選択装置38によって選択されたモードが表示される。なお、車載モニタ39は、モード選択装置38に接続されることによって、モード情報MODE(Eモード、P1モード、P2モード)を表示してもよい。
【0047】
HCU36は、モード選択装置38によって選択されたモードに応じてエンジン21、発電電動機27、旋回電動モータ33を制御する。そこで、次にHCU36の具体的な構成について、図3ないし図7を参照しつつ説明する。
【0048】
図3に示すように、HCU36は、モード変更対応部40と出力指令演算部41とを有する。このHCU36は、モード情報MODE、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OA、ポンプ負荷PL、エンジン情報EI、その他車体情報VIに基づいて、エンジン回転数指令ωe、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrm、発電電動機力行発電電力指令Wmgを出力する。
【0049】
モード変更対応部40は、モード情報MODE、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OAに基づいて、目標蓄電率SOC0とポンプ出力制限POL0を演算し、出力する。このとき、目標蓄電率SOC0は、蓄電装置31のバッテリ蓄電率SOCの目標値である。ポンプ出力制限POL0は、油圧ポンプ23の最大出力の制限値である。
【0050】
出力指令演算部41は、目標蓄電率SOC0、ポンプ出力制限POL0、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OA、ポンプ負荷PL、エンジン情報EI、その他車体情報VIに基づいて、エンジン回転数指令ωe、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrm、発電電動機力行発電電力指令Wmgを演算し、出力する。
【0051】
そこで、HCU36のモード変更対応部40について、図4ないし図6を参照しつつ説明する。モード変更対応部40は、モード情報MODEに応じて目標蓄電率SOC0を決定すると共に、モード情報MODE、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OAに応じてポンプ出力制限POL0を決定する。このため、モード変更対応部40は、モード選択装置38によるモード情報MODEと、操作量センサ10Aによるレバー操作量OAと、BCU32から送信されるバッテリ蓄電率SOCを入力とし、目標蓄電率SOC0とポンプ出力制限POL0を出力値とする。モード変更対応部40は、目標蓄電率変更部40Aと、ポンプ出力制限変更部40Bと、1次遅れフィルタ40Cと、ポンプ出力制限変更判定部40Dと、遅延部40Eとを備える。
【0052】
目標蓄電率変更部40Aおよびポンプ出力制限変更部40Bは、図5に示す目標蓄電率およびポンプ出力制限の変更値テーブル42に基づいて、入力されたモード情報MODEから選択されたモード(Eモード、P1モード、P2モード)に対応して予め設定された目標蓄電率変更値SOCnとポンプ出力制限変更値POLnを選択し、出力する。
【0053】
ここでは、選択可能なモードはEモード、P1モード、P2モードの3種類としている。このうち、Eモードは、オペレータが作業量よりも燃費を優先する場合に選択するモードとする。図5に示すように、Eモードでは、燃費を優先するために、ポンプ出力制限変更値POLnは、他のモード(P1モード、P2モード)に比べて小さい値に設定される。従って、蓄電装置31は、それほど多くのエネルギを保持しておく必要はないため、目標蓄電率変更値SOCnは、寿命を優先してバッテリ蓄電率SOCの適正使用範囲(30〜70%)のうち半分以下の低い値(例えば40%)に設定される。
【0054】
また、P1モードは、オペレータが燃費よりも作業量を優先する場合に選択するモードとする。P1モードでは、作業量を優先するために、ポンプ出力制限変更値POLnは、Eモードに比べて大きい値に設定される。従って、蓄電装置31は、できるだけ多くのエネルギを保持しておく必要があるため、目標蓄電率変更値SOCnは、バッテリ蓄電率SOCの適正使用範囲のうち半分以上の高い値(例えば60%)に設定される。
【0055】
さらに、P2モードは、例えば登坂走行等のように休み無く重作業を行うときに選択するものであり、蓄電装置31の寿命よりも作業の持続力を最優先する場合に選択するモードとする。このP2モードは、目標蓄電率SOC0を蓄電装置31の適正使用範囲の最大値付近の値に設定する最大蓄電率モードに相当する。
【0056】
なお、各モードの目標蓄電率変更値SOCnおよびポンプ出力制限変更値POLnは、図5に記載したものに限らず、油圧ショベル1の仕様等に応じて適宜設定される。
【0057】
図4に示すように、目標蓄電率変更部40Aによって決定された目標蓄電率変更値SOCnは、1次遅れフィルタ40Cを介して、目標蓄電率SOC0として出力される。このとき、1次遅れフィルタ40Cは、数秒程度(例えば3〜7秒程度)の時定数を有する。この時定数は、例えば旋回装置3、作業装置11の1動作に必要な時間等に基づいて設定される。これにより、目標蓄電率SOC0は、目標蓄電率前回値SOCpから目標蓄電率変更値SOCnに徐々に変更される。
【0058】
同時に、ポンプ出力制限変更判定部40Dには、目標蓄電率変更部40Aから出力された目標蓄電率変更値SOCnと、目標蓄電率変更部40Aから出力されたポンプ出力制限変更値POLnと、BCU32から出力されたバッテリ蓄電率SOCとが入力されると共に、遅延部40Eに保持されたポンプ出力制限前回値POLpが入力される。これに加えて、ポンプ出力制限変更判定部40Dには、操作量センサ9A,10Aからのレバー操作量OAが入力される。ポンプ出力制限変更判定部40Dは、これらの入力に基づいて、図6に示すポンプ出力制限変更判定処理を実行する。これにより、ポンプ出力制限変更判定部40Dは、ポンプ出力制限POL0をポンプ出力制限変更値POLnに変更するか、ポンプ出力制限前回値POLpに保持するかを決定し、決定したポンプ出力制限POL0を出力する。
【0059】
ここで、ポンプ出力制限変更判定部40Dでの処理を、図6を参照しつつ説明する。モードが変更されたときには、目標蓄電率SOC0とポンプ出力制限POL0とは同時に変更される。但し、以下に示すように、車体が非操作状態であるか否かに応じて、ポンプ出力制限POL0は、ポンプ出力制限変更値POLnとポンプ出力制限前回値POLpとのいずれかの値に設定される。
【0060】
ステップ1では、レバー操作量OAから車体が非操作状態にあるか判定する。ステップ1で「YES」と判定したときには、車体の走行、旋回、俯仰動についての操作がないから、ステップ2に移行する。ステップ2では、ポンプ出力制限POL0をポンプ出力制限変更値POLnに変更し、ポンプ出力制限POL0を出力する。
【0061】
一方、ステップ1で「NO」と判定したときには、車体の走行、旋回、俯仰動のうちいずれかについての操作がされているから、ステップ3に移行する。ステップ3では、ポンプ出力制限POL0をポンプ出力制限前回値POLpに保持し、ポンプ出力制限POL0を出力する。ステップ2,3が終了すると、リターンする。
【0062】
これにより、ポンプ出力制限変更判定部40Dは、車体が非操作状態であるときには、ポンプ出力制限POL0をポンプ出力制限変更値POLnに変更し、車体が操作状態であるときには、ポンプ出力制限POL0をポンプ出力制限前回値POLpに保持する。
【0063】
モード変更対応部40の目標蓄電率変更部40Aおよび1次遅れフィルタ40Cは、選択されたモードに応じて目標蓄電率SOC0を設定する目標蓄電率設定部を構成している。また、モード変更対応部40のポンプ出力制限変更部40Bおよびポンプ出力制限変更判定部40Dは、油圧ポンプ23の最大動力を増加または減少させる最大動力設定部を構成している。
【0064】
次に、HCU36の出力指令演算部41について、図7を参照しつつ説明する。出力指令演算部41は、モード変更対応部40で決定された目標蓄電率SOC0、ポンプ出力制限POL0に加えて、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OA、ポンプ負荷PL、エンジン情報EI、その他車体情報VIに基づき、エンジン21のエンジン回転数指令ωe、発電電動機27の発電電動機力行発電電力指令Wmg、旋回電動モータ33の旋回電動モータ力行回生電力指令Wrmを演算し、出力する。出力指令演算部41は、これらの指令ωe,Wmg,Wrmによって、バッテリ蓄電率SOCが目標蓄電率SOC0に近付いて、その値近辺で充電または放電されるように、エンジン21、発電電動機27、旋回電動モータ33を制御する。
【0065】
出力指令演算部41の一例として、エンジン21を回転数制御する場合の制御処理を、図7を参照しつつ説明する。以下では、蓄電装置31の放電を正(+)、充電を負(−)とし、電動モータの力行を正(+)、発電、回生を負(−)とする。
【0066】
出力指令演算部41は、目標充放電電力演算部41Aと、エンジン回転数指令演算部41Bと、電動モータ電力演算部41Cとを有する。目標充放電電力演算部41Aには、バッテリ蓄電率SOCと目標蓄電率SOC0が入力される。このとき、目標充放電電力演算部41Aは、バッテリ蓄電率SOCと目標蓄電率SOC0の蓄電率差ΔSOCが大きいほど、蓄電率差ΔSOCが小さくなるように目標充放電電力Wcdを決定する。具体的には、目標充放電電力演算部41Aは、例えば蓄電率差ΔSOC(ΔSOC=SOC−SOC0)と目標充放電電力Wcdの値が正の相関となるように、目標充放電電力Wcdを決定し、出力する。
【0067】
次に、電動モータ電力演算部41Cには、目標充放電電力Wcdとレバー操作量OAが入力される。電動モータ電力演算部41Cは、レバー操作量OAによって旋回の力行、制動が判断され、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrmを出力する。そして、電動モータ電力演算部41Cは、目標充放電電力Wcdと旋回電動モータ力行回生電力指令Wrmの差をとって発電電動機力行発電電力指令Wmgを算出し、発電電動機力行発電電力指令Wmgを出力する。
【0068】
さらに、エンジン回転数指令演算部41Bには、発電電動機力行発電電力指令Wmg、エンジン情報EI、ポンプ負荷PL、ポンプ出力制限POL0が入力される。ポンプ負荷PLがポンプ出力制限POL0よりも小さいときには、エンジン回転数指令演算部41Bは、ポンプ負荷PLと発電電動機力行発電電力指令Wmgの和をとってエンジン目標出力とする。ポンプ負荷PLがポンプ出力制限POL0よりも大きいときには、エンジン回転数指令演算部41Bは、ポンプ出力制限POL0と発電電動機力行発電電力指令Wmgの和をとってエンジン目標出力とする。その上で、エンジン回転数指令演算部41Bは、例えば現在のエンジン回転数等のようなエンジン情報EIとエンジン目標出力とに基づいてエンジン回転数指令ωeを算出し、エンジン回転数指令ωeを出力する。
【0069】
なお、出力指令演算部41は、目標蓄電率SOC0、ポンプ出力制限POL0、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OA、ポンプ負荷PL、エンジン情報EIに基づいて、発電電動機力行発電電力指令Wmg、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrm、エンジン回転数指令ωeを算出する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、出力指令演算部41は、目標蓄電率SOC0、ポンプ出力制限POL0、バッテリ蓄電率SOC、レバー操作量OA、ポンプ負荷PL、エンジン情報EIに加えて、例えば車両速度、冷却水温度、燃料残量等のようなその他車体情報VIに基づいて、発電電動機力行発電電力指令Wmg、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrm、エンジン回転数指令ωeを算出してもよい。
【0070】
HCU36は、以上の演算処理によって、発電電動機力行発電電力指令Wmg、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrm、エンジン回転数指令ωeを算出する。そして、HCU36は、発電電動機力行発電電力指令Wmgを第1のインバータ28に出力し、旋回電動モータ力行回生電力指令Wrmを第2のインバータ34に出力し、エンジン回転数指令ωeをECU22へ送信する。これにより、HCU36は、オペレータの意図する車体動作の実現と、モードによって設定された目標蓄電率SOC0にバッテリ蓄電率SOCが収束するように、発電電動機27、旋回電動モータ33、エンジン21の制御を行う。
【0071】
かくして、本実施の形態によれば、HCU36は、Eモード、P1モード、P2モードのうちオペレータがモード選択装置38によって選択したモードに応じて、蓄電装置31の目標蓄電率SOC0を変更する。これにより、オペレータは蓄電装置31の寿命と蓄電装置31の保有エネルギに由来する作業量の優先度を能動的に選択することができる。
【0072】
例えば軽負荷のときには、Eモードを選択して目標蓄電率SOC0を低下させることができる。このため、バッテリ蓄電率SOCが低い状態で蓄電装置31は充放電を繰り返すことになり、蓄電装置31の劣化を抑制して、蓄電装置31の寿命を延ばすことができる。一方、重負荷のときには、P1モードやP2モードを選択して、目標蓄電率SOC0を上昇させることができる。これにより、蓄電装置31に大きなエネルギを蓄えておくことができるため、より長時間に亘って発電電動機27への電力供給を行い、発電電動機27を力行させてエンジン21をアシストする、即ち、オペレータの要求に応じた車体の動作を行うことができる。
【0073】
また、HCU36は、目標蓄電率SOC0が低いEモードのポンプ出力制限POL0を、目標蓄電率SOC0が高いP1モードやP2モードよりも小さく設定した。これにより、寿命を優先したEモードでも、P1モードやP2モードに比べて油圧ポンプ23の最大出力を小さい値に制限することができるから、例えば発電電動機27や旋回電動モータ33の力行による蓄電装置31の放電エネルギ量が小さくなるため、蓄電装置31のエネルギ不足(電力不足)を予防することができる。
【0074】
また、HCU36のモード変更対応部40は、目標蓄電率変更部40Aの出力側に1次遅れフィルタ40Cを設けたから、目標蓄電率SOC0を目標蓄電率前回値SOCpから目標蓄電率変更値SOCnに時間的に連続して徐々に変化させる。これにより、モード変更による急峻なバッテリ蓄電率SOCの変化を防ぐことができるから、予期せぬ車体動作を防止できる。
【0075】
これに加え、HCU36のモード変更対応部40はモード選択装置38によってモードが変更され、かつ車体が非操作状態となったときに、ポンプ出力制限POL0を変更する。このため、例えば下部走行体2の走行途中、上部旋回体4の旋回途中、作業装置11の掘削動作途中等のように、車体の操作途中で油圧ポンプ23の最大動力が変更されることがなく、車体の停止状態で油圧ポンプ23の最大動力を変更することができる。この結果、モード変更したときでも、予期せぬ車体動作を防止することができる。
【0076】
また、モード選択装置38は、目標蓄電率SOC0を適切なバッテリ蓄電率SOCの使用範囲最大付近に設定するP2モードを選択可能とした。これにより、例えば登坂走行時等のように休みなく重負荷作業を行うときでも、オペレータがP2モードを選択することによって、作業持続力を最優先とすることができ、可能な限り長時間に亘って車体動作を継続させることができる。
【0077】
さらに、モード選択装置38によって選択されたモードを表示する車載モニタ39を備えたから、オペレータは車載モニタ39を目視することによって、現在選択されているモードを容易に把握することができる。このため、オペレータの要求する作業と現在のモードとを容易に対比することができるから、両者が異なる場合には、速やかにモードを変更することができる。
【0078】
また、エンジン21の最大出力は油圧ポンプ23の最大動力よりも小さくしたから、小型で燃費低減が可能なエンジン21を使用することができる。一方、エンジン21の最大出力は油圧ポンプ23の最大動力よりも小さくしたから、エンジン出力が最大ポンプ負荷に比べて十分に大きい場合に比べて、車体動作時の発電電動機27の力行によるエンジンアシストの寄与する割合は大きく、蓄電装置31が充放電を繰り返す頻度が高くなる傾向がある。これに対し、本実施の形態では、Eモードを選択することによって、目標蓄電率SOC0を低い値に設定することができる。この結果、目標蓄電率SOC0を高い値に設定した場合に比べて、蓄電装置31の劣化を抑制することができる。
【0079】
なお、前記実施の形態では、モード選択装置38は、異なる目標蓄電率SOC0とポンプ出力制限POL0を設定した3種類のモード(Eモード,P1モード,P2モード)を選択可能とした。しかし、本発明はこれに限らず、モード選択装置は4種以上のモードを選択可能とし、これらのモードに応じて目標蓄電率やポンプ出力制限をさらに細かく制御してもよい。モード選択装置は、EモードとP1モードとの中間の目標蓄電率とポンプ出力制限を設定された第4のモードを選択可能としてもよい。また、モード選択装置は、P1モードとP2モードとのうちいずれか一方のモードを省いて、2種類のモードを選択可能としてもよい。
【0080】
前記実施の形態によるモード変更対応部40は、1次遅れフィルタ40Cによって目標蓄電率SOC0を目標蓄電率前回値SOCpから目標蓄電率変更値SOCnに徐々に変化させるものとした。しかし、本発明はこれに限らず、時間的に連続して目標蓄電率SOC0を徐々に変化させるものであればよく、例えば目標蓄電率SOC0を、所定の推移時間をもって目標蓄電率前回値SOCpから目標蓄電率変更値SOCnに比例変化させてもよい。
【0081】
前記実施の形態では、エンジン21の最大出力を油圧ポンプ23の最大動力よりも小さくしたが、エンジン21の最大出力は、油圧ショベル1の仕様等に応じて適宜設定される。このため、エンジン21の最大出力は、油圧ポンプ23の最大動力と同程度でもよく、油圧ポンプ23の最大動力よりも小さくてもよい。
【0082】
前記実施の形態では、蓄電装置31にリチウムイオンバッテリを使用した例で説明したが、必要な電力を供給可能な二次電池(例えばニッケルカドミウムバッテリ、ニッケル水素バッテリ)やキャパシタを採用してもよい。また、蓄電装置と直流母線との間にDC−DCコンバータ等の昇降圧装置を設けてもよい。
【0083】
前記実施の形態では、ポンプ出力制限POL0に応じてエンジン21の回転数を制限するものとしたが、例えば可変容量型の油圧ポンプを使用する場合には、ポンプ出力制限POL0に応じて油圧ポンプの吐出容量を変化させる構成としてもよい。
【0084】
前記実施の形態では、旋回油圧モータ26と旋回電動モータ33とを備えるものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回油圧モータ26と旋回電動モータ33とのうちいずれか一方を省く構成としてもよい。
【0085】
前記実施の形態では、ハイブリッド建設機械としてクローラ式のハイブリッド油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、エンジンと油圧ポンプに連結された発電電動機と、蓄電装置とを備えたハイブリッド建設機械であればよく、例えばホイール式のハイブリッド油圧ショベル、ハイブリッドホイールローダ、リフトトラック等の各種の建設機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 ハイブリッド式油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
4 上部旋回体(車体)
9 走行用操作装置
9A,10A 操作量センサ(車体操作状態検出装置)
10 作業用操作装置
11 作業装置
11D ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
11E アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
11F バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
21 エンジン
23 油圧ポンプ
25 走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)
26 旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)
27 発電電動機
31 蓄電装置
33 旋回電動モータ
36 ハイブリッドコントロールユニット(コントローラ)
38 モード選択装置
39 車載モニタ
40 モード変更対応部
40A 目標蓄電率変更部
40B ポンプ出力制限変更部
40C 1次遅れフィルタ
40D ポンプ出力制限変更判定部
40E 遅延部
41 出力指令演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9