(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[フラクチャリング用注入材料]
本発明のフラクチャリング用注入材料は、フラクチャリング用流体中に、フラクチャー支持材と共に配合されるもので、少なくとも加水分解性又は生分解性樹脂と澱粉とを含む樹脂組成物を含むものである。このフラクチャリング用注入材料は、フラクチャー支持材の分散性を高め、フラクチャリング用流体の移送を補助する作用を有する。
【0010】
<加水分解性又は生分解性樹脂>
本発明において、加水分解性又は生分解性樹脂は、澱粉と混合して使用される。
本発明における「加水分解性又は生分解性樹脂」は、化学的な(非酵素的な)加水分解によって分解する樹脂のほか、微生物によって分解される樹脂を包含する。なお、本明細書では、「加水分解性又は生分解性樹脂」を、単に「分解性樹脂」ともいう。
このような分解性樹脂としては、(1)重縮合型の脂肪族ポリエステル、(2)脂肪族・芳香族ポリエステル、(3)ポリ乳酸、(4)ポリカプロラクトン等が好ましい。また、その他の分解性樹脂として、酢酸セルロース、微生物により製造されるポリヒドロキシブチレート−バリレート共重合体等を使用することもできる。これらの樹脂は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
(1)重縮合型の脂肪族ポリエステル
重縮合型の脂肪族ポリエステルは、多価アルコールと脂肪族ポリカルボン酸から合成される、ウレタン結合を介して延長された構造を有するもの(特開平5−70575号、同6−248104号公報等参照)等が好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の鎖状アルコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状アルコール等が挙げられる。脂肪族ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びこれらの無水物等が挙げられる。
本発明においては、エチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールと、コハク酸及び/又はアジピン酸との縮合重合体を脂肪族ポリエステルとして用いることが好ましい。重縮合型の脂肪族ポリエステルは、上記以外のその他成分として3官能又は4官能を有するポリオール、オキシカルボン酸及びポリカルボン酸等を共重合成分として含んでいてもよい。
重縮合型の脂肪族ポリエステルの好適例としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート−アジペート等が挙げられ、その市販品としては、例えば、昭和電工(株)製の「ビオノーレ」(商標)シリーズを好ましく使用することができる。
【0012】
(2)脂肪族・芳香族ポリエステル
脂肪族・芳香族ポリエステルは、1個以上のグリコールと、1個以上の芳香族ジカルボン酸と1個以上の脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応から得られるポリマーを意味する。これらの中では、成形性等の観点から、熱可塑性の脂肪族・芳香族ポリエステルが好ましい。
グリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、及び、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール又はこれらの共重合体等のポリメリックグリコールが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0013】
脂肪族・芳香族ポリエステルとしては、脂肪族ジカルボン酸成分が通常20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、更に好ましくは40〜60モル%、及び芳香族ジカルボン酸成分が通常80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、更に好ましくは60〜40モル%からなる酸成分と、脂肪族グリコール成分からなるポリエステルが好ましい。脂肪族グリコール成分は脂肪族ジカルボン酸成分と芳香族ジカルボン酸成分との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでもよい。
脂肪族・芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリプロピレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリエチレンセバケートテレフタレート、及びポリブチレンセバケートテレフタレート等が挙げられるが、ポリブチレンアジペートテレフタレートが好ましい。
【0014】
脂肪族・芳香族ポリエステルは、融点が、好ましくは50〜190℃、より好ましくは60〜180℃、更に好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステルのメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.8〜30g/10分、より好ましくは0.8〜3g/10分の範囲にある。
脂肪族・芳香族ポリエステルは、公知の種々の方法、例えば特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている方法等で製造し得る。
脂肪族・芳香族ポリエステルの市販品としては、BASF社製の「ECOFLEX」等が挙げられる。
【0015】
(3)ポリ乳酸
ポリ乳酸としては、D−乳酸の単独重合体とL−乳酸の単独重合体との混合物、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、及びそれらの混合物等が挙げられる。
ポリ乳酸は、成形性等を向上させる観点から、更にα−ヒドロキシカルボン酸等の他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体や、脂肪族ジオール/脂肪族ジカルボン酸との共重合体、非脂肪族ジオールや非脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
前記他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
ポリ乳酸に共重合される脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、非脂肪族ジオールとしては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられ、非脂肪族ジカルボン酸としては、テレフタル酸等が挙げられる。
【0016】
ポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸を繰り返し単位として含むものが好ましいが、L−乳酸及びD−乳酸の含有量がいずれも94モル%以下であることが好ましく、92モル%以下であることがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、ポリ乳酸に結晶性が生じないため分散性等が向上する。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、機械的強度等の実用物性、粘度の観点から、好ましくは6万〜60万、より好ましくは8万〜40万、更に好ましくは10万〜30万、特に好ましくは12万〜28万の範囲である。
ポリ乳酸の市販品としては、NatureWorks LLC製の「4060D」、「4043D」、「4032D」等が挙げられる。
【0017】
(4)ポリカプロラクトン
ポリカプロラクトンは、微量の活性水素化合物を開始剤としてカプロラクトンのような環状ラクトン化合物を開環重合して製造された樹脂である。
ポリカプロラクトンの重量平均分子量は、機械的強度の観点から、5万以上であることが好ましく、重量平均分子量10万以上の高分子量体(特開平7−53686号公報等参照)を使用することがより好ましい。
ポリカプロラクトンの市販品としては、ダイセル化学工業(株)製のセルグリーンPH7、CBS171等の「セルグリーンシリーズ」、ユニオンカーバイド(株)製の「TONE Polymer P−767」等のような「TONEシリーズ」等が挙げられる。
上記の加水分解性又は生分解性樹脂の中でも、フラクチャー支持材の分散性を高め、フラクチャリング用流体の移送を補助する作用の観点から、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート−アジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、及びポリ乳酸から選ばれる1種又は2種以上が、より好ましく、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート−アジペート及びポリブチレンアジペートテレフタレートから選ばれる1種又は2種以上とポリ乳酸を組み合わせることが更に好ましく、ポリブチレンサクシネート−アジペートとポリ乳酸を組み合わせることが特に好ましい。
【0018】
<澱粉>
本発明に用いられる澱粉は、天然澱粉でも加工澱粉でもよい。
天然澱粉に特に限定はなく、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴヤシ澱粉、甘薯澱粉、米澱粉、小麦澱粉等が挙げられる。これらの中では、入手性の観点から、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、及びタピオカ澱粉から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、コーンスターチがより好ましい。
加工澱粉は、天然澱粉に化学的、物理的又は酵素的処理を施し、澱粉の物性や性質を改変したものである。加工澱粉は、部分的又は全体がα化したものでもよいが、加熱前の粘度が上がりにくく、原材料の混合性が優れるという点ではβ澱粉が好ましい。
天然澱粉の化学的処理としては、酸化、アセチル化、エステル化、エーテル化、カチオン化、アセチル化酸化、アセチル化アジピン酸架橋、リン酸架橋、アルデヒド架橋、アクロレイン架橋、エピクロルヒドリン架橋、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシアルキル化、ヒドロキシプロピル化、カルボキシルメチル化、シアノエチル化、メチル化、オクテニルコハク酸化等が挙げられる。
物理的処理としては、湿熱処理、油脂加工、温水処理、ボールミル処理、高圧処理等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いる加工澱粉は、混合物の分散性、フィルムの成形性等の観点から、化学的処理を施した澱粉が好ましく、ジカルボン酸澱粉のような酸化澱粉(例えば、特開平9−188704号公報参照)、アセチル化澱粉、エステル化澱粉(例えば、特開平8−188601号公報参照)、カルボキシメチル化澱粉のようなエーテル化澱粉(例えば、特開2000−72801号公報参照)、澱粉をグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム化合物や2−ジメチルアミノエチルクロライド等の第三級アミノ化合物で処理したカチオン化澱粉(例えば、特開平9−12602号公報参照)、及び澱粉をアセトアルデヒドやリン酸で処理した架橋化澱粉(例えば、特開2007−222704号公報、特開2004−204197号公報参照)がより好ましく、酸化澱粉、アセチル化澱粉、エステル化澱粉、又はカチオン化澱粉が更に好ましく、酸化澱粉が特に好ましい。
【0020】
酸化澱粉であるジカルボン酸澱粉の製造方法としては、澱粉を次亜塩素酸ナトリウムや、次亜塩素酸塩、さらし粉、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、オゾン等で酸化する方法が挙げられる。
次亜塩素酸ナトリウム等による澱粉の酸化は、例えば、澱粉濃度が40〜50質量%程度、好ましくは45質量%程度の水懸濁液をpH8〜11程度に調整し、この水懸濁液に対して塩素濃度が8〜12質量%、好ましくは10質量%程度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して40〜50℃程度で1〜2時間程度反応させることにより行うことができる。反応は常圧下で撹拌しながら行うことが好ましい。反応終了後、得られた酸化澱粉を遠心脱水機等を用いて分離し、水洗後、乾燥することにより得ることができる。
澱粉中のカルボキシル基の量はカルボキシル基置換度(中和滴定法)で表すことができ、0.001〜0.1が好ましく、0.003〜0.05がより好ましく、0.008〜0.04がより好ましい。
酸化澱粉の市販品としては、王子コーンスターチ(株)製、「エースA」、「エースC」等が挙られる。
【0021】
<フラクチャリング用注入材料の好適態様>
フラクチャリング用注入材料の好適態様としては、少なくとも分解性樹脂と澱粉とを押出機で溶融混練して得られた樹脂組成物からなる平均粒径1mm以下の粒子(好適態様(1))と、前記樹脂組成物からなる微小フィルム(好適態様(2))の2つの態様が挙げられる。
分解性樹脂と澱粉とからなる前記樹脂組成物において、分解性樹脂は連続相で、澱粉は分散相として存在させることが好ましい。フラクチャリング流体中の分解性樹脂が分解する過程において、分散相である澱粉の流出と、連続相である分解性樹脂の表面積の増加により、分解性樹脂の加水分解速度は向上するので、分解性樹脂と澱粉の割合を調整することにより、フラクチャリング用注入材料の分解速度をコントロールすることができる。
分解性樹脂と澱粉との混合割合は、分解性樹脂と澱粉との合計量を100質量%としたとき、澱粉の含有量は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは20〜50質量%であり、分解性樹脂の含有量は、好ましくは95〜10質量%、より好ましくは90〜40質量%、更に好ましくは80〜50質量%である。澱粉の含有量が5質量%未満、分解性樹脂の含有量が95質量%を超えると、分解性樹脂の分解が遅く、分解期間が長くなり過ぎて好ましくない。一方、澱粉の含有量が90質量%を超え、分解性樹脂の含有量が10質量%未満では、ペレットの製造上は問題ないが、インフレーションフィルムの成形時にバブルの安定性が得られにくいという問題が生じる。
【0022】
(押出機による溶融混合)
分解性樹脂と澱粉とを含むフラクチャリング用注入材料の製造方法としては、押出機を用いて両者を溶融混練により混合して、樹脂組成物を調製する方法が好ましい。
押出機は、単軸スクリュー方式でも、二軸スクリュー方式でもよいが、澱粉の糊化、脱水、糊化された澱粉と分解性樹脂との溶融混合を同時に行うために、二軸スクリュー方式が好ましい。
二軸押出機のスクリューはかみ合い型、非かみ合い型のどちらも採用しうるが、混練効果の観点から、かみ合い型が好ましい。また、回転方向は、同方向回転、異方向回転のいずれでもよい。スクリュー同士のロール作用によって、摩擦が少なく低温で樹脂を混練する観点からは、異方向回転型が好ましいが、樹脂に十分で均一な混練を与えると共に、押出変動がない安定した成形を行う観点からは、同方向回転型がより好ましい。
押出機は、十分な製造量を確保するために、十分なスクリュー有効長[スクリューの長さ(L)/スクリューの直径(D)]とすることが好ましく、L/Dは、通常28以上、好ましくは30以上、より好ましくは31以上である。押出機は、更に、脱水のためのベントを備えていることが好ましい。
【0023】
押出機による前記樹脂組成物の製造においては、押し出しスクリューの前半(供給部、圧縮部)と後半(混練部)とを、下記のように行うことが効率的で好ましい。
スクリューの前半(供給部、圧縮部;以下「第一工程」ともいう)では、分解性樹脂の溶融と澱粉の糊化を行う。この際、開放式のベントでガス、水分等を脱気し、押出機内の圧力上昇による逆流を防止しながら、分解性樹脂の溶融と加熱混合による澱粉の糊化を完了することが好ましい。
スクリューの後半(混練部;以下「第二工程」ともいう)では、分解性樹脂と糊化した澱粉との混合、水分の脱気を行う。この際、澱粉の糊化物と分解性樹脂を更に混練しながら、真空ベントで脱水を行うことが好ましい。
【0024】
第一工程では、分解性樹脂の軟化温度(又は融点)に合わせて設定温度を、通常60〜160℃程度、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜140℃とする。分解性樹脂の多くはこの温度範囲で軟化(又は溶融)するため、酸化澱粉の糊化と同時に糊化した澱粉と分解性樹脂の溶融状態での混合も行われる。
第一工程での滞留時間は、通常30〜180秒間、好ましくは60〜120秒間である。滞留時間を30秒間以上とすることにより、澱粉の糊化を充分進行させ、180秒間以下とすることにより、分解性樹脂の分解を抑制し、生産性を確保することができる。
第一工程における澱粉の糊化のためには水分が必要である。澱粉自身が保持している水分だけでも、温度及び滞留時間、剪断力等により糊化が可能な場合もあるが、糊化を完了させるために、必要な水、高沸点の極性溶媒等を添加することができる。
高沸点の極性溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。これらの中では、澱粉と分解性樹脂との相溶性、糊化能力、及びコストバランスの観点から、グリセリンを用いることが好ましい。
【0025】
第二工程では、設定温度を通常130〜180℃程度、好ましくは135〜175℃、より好ましくは140〜170℃とする。この工程により澱粉の糊化物と分解性樹脂が完全に溶融混合される。
第二工程には、水分を除去するために、一つ又は複数のベント孔を設け、得られる樹脂組成物の水分を調整することもできる。
第二工程での滞留時間は、通常30〜120秒間、好ましくは60〜90秒間である。滞留時間を30秒間以上とすることにより、糊化された澱粉と分解性樹脂との混合を充分に行い、120秒間以下とすることにより、分解性樹脂の分解を抑制し、生産性を確保することができる。
以上の方法により、分解性樹脂と澱粉とを含む樹脂組成物を得ることができる。澱粉として未加工澱粉を用いる場合や、酸化澱粉等の加工澱粉を用いる場合も、同様の条件で行うことができる。
【0026】
得られた樹脂組成物中に、澱粉に含まれていた水分、澱粉の糊化を完了させるために添加された水、又は保管中に空気中から吸収された水分が多く含まれると、該樹脂組成物をフィルムに成形した時に発泡し、フィルムの表面が不均質になり、更に悪化すると孔が生じる場合がある。そのため、得られた前記樹脂組成物又はペレットの水分率は、好ましくは4,000質量ppm以下、より好ましくは3,000質量ppm以下とする。
樹脂組成物又はペレットの水分の除去方法としては、特に限定はないが、50〜100℃での加熱乾燥が好ましい。加熱乾燥では装置内を風が循環しない方式でもよいが、速やかな乾燥を行うためには発生させた熱風が装置内を循環する除湿空気循環式乾燥機、流動床式乾燥機等が好ましい。
【0027】
<好適態様(1):平均粒径1mm以下の粒子>
フラクチャリング用注入材料の好適態様(1)である平均粒径1mm以下の粒子は、分解性樹脂と澱粉とを溶融混練して樹脂組成物のペレット又は成形体を得、その後、該ペレット又は成形体を粉砕することにより製造することができる。
ペレット又は成形体の粉砕方法に特に制限はない。しかし、通常の粉砕手段を用いると、粉砕時の発熱により、分解性樹脂等が熱的変性を生じるおそれがある。しかし、低温粉砕によれば、分解性樹脂が低温脆化した状態で粉砕されるため、粉砕時の発熱が抑制され、熱的変性を生じることなく微細に粉砕することができる。低温粉砕の中でも、特に冷凍粉砕が好ましい。
冷凍粉砕は、通常、液体窒素雰囲気下でペレット又は成形体を脆化点以下に冷却した後、リンレックスミル(商標)、ピンミル、ハンマーミル、ディスクミル、ボールミル、ターボミル等の衝撃型粉砕機を用いて行うことができる。これらの中では、リンレックスミルがより好ましい。
【0028】
リンレックスミル(商標)は、ミルの外周に固定された多数の鋭利部を有するライナーと、複数の刃を有するプレートとからなるミルである。通常、プレートの回転軸は、リンレックスミルの中央部に設置され、プレートに固定された刃とライナーとの間に衝撃を加えることにより、ペレットが粉砕される。ここで、リンレックスミルのサイズ、プレートのサイズ、プレートの回転数、プレートに固定される刃の数等は適宜選択される。リンレックスミルとしては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の低温粉砕装置「リンレックスミル」LXシリーズが挙げられる。なお、該リンレックスミルは、分級機構を有していてもよい。
ペレット又は成形体の粉砕は、分解性樹脂の分解時間を短縮する観点、及びフラクチャーに支持材を滑り込ませ易くする観点から、平均粒径が1mm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましくは0.9mm以下、更に好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.5mm以下になるように粉砕することが好ましい。
なお、ペレット粉砕物の平均粒径は、ホソカワミクロン(株)製の網面固定・振動気柱式分級機、「ミクロンウオシーブ」を用いて測定することができる。
また、平均粒径1mm以下の粒子は前記した粉砕法によらず、ペレットサイズを小さく製造したり、懸濁重合等によって直接製造することもできる。
【0029】
<好適態様(2):微小フィルム>
フラクチャリング用注入材料の好適態様(2)である微小フィルムは、分解性樹脂と澱粉とを溶融混練して得た樹脂組成物からインフレーションフィルム等のフィルムを得、その後、該フィルムを粉砕することにより製造することができる。
本発明のフラクチャリング用注入材料においては、フラクチャリング用流体中のフラクチャー支持材の沈降を抑え、フラクチャー(割れ目)の奥まで、フラクチャリング用流体を均一に移送する観点、及び他の成分と絡み易くする観点から、フラクチャリング用注入材料の形態を、フィルムを粉砕したフィルム粉砕物の形態にしておくことがより好ましい。
【0030】
少なくとも分解性樹脂と澱粉とを含む樹脂組成物をフィルムに成形する方法としては、インフレーション成形、Tダイ式フィルム成形等が挙げられるが、インフレーション成形がより好ましい。フィルムに成形する際、更に可塑剤を添加してもよい。
用いられる可塑剤としては、グリセリン誘導体が好ましく、特にポリグリセリン酢酸エステル又はその誘導体、又はアジピン酸ジエステルが好ましい。
可塑剤の添加量は、分解性樹脂組成物、即ち分解性樹脂と澱粉との合計量を100質量部としたときに、通常1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部である。添加量を1質量部以上とすることにより、フィルム物性、特に引張伸度、フィルムインパクト強度が改良され、添加量を10質量部以下とすることにより可塑剤がブリードするのを防ぐことができる。
また、フラクチャリング用注入材料のフィルムには、本発明の特性を損なわない範囲で、所望により、当該技術分野において通常用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、フイラー等を含有させることができる。
酸化防止剤としてはp−t−ブチルヒドロキシトルエン、p−t−ブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、熱安定剤としてはトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としてはp−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン等が挙げられ、帯電防止剤としてはN,N−ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルホネート等が挙げられる。
難燃剤としてはヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等が挙げられ、結晶化促進剤としてはタルク、ホロンナイトライト、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−トランスシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等が挙げられ、フィラーとしてはクレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機フィラー、セルローズ粉、綿粉、木粉等の有機フィラーが挙げられる。
【0031】
(インフレーション成形)
前記のとおり、フィルムは、インフレーション成形、Tダイ式フィルム成形等により製造することができるが、好適例であるインフレーション成形について説明する。
インフレーション成形機の押し出しスクリューは、分解性樹脂と澱粉の溶融混練の際の発熱を抑制する観点から、フルフライト緩圧縮タイプが好ましい。
インフレーション成形機の押し出しバレル(シリンダー)は、継ぎ手溶接を使用せず凹凸のない、真直性の高いものが好ましい。
押し出しスクリューの有効長[スクリューの長さ(L)/スクリューの直径(D)]は、通常10〜40、好ましくは20〜40、より好ましくは25〜40である。
スクリューの圧縮比(C/R)は、通常2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下であり、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.4以上である。
インフレーション成形のブローアップ比(フィルム直径/ダイ口径)は、通常2〜8、好ましくは2.3〜6、より好ましくは2.5〜5である。
環状ダイスのリップギャップは、分解性樹脂と澱粉とを含む樹脂組成物のインフレーション成形を安定に行うこととフィルム物性の向上の観点から、1.0〜2.0mmとすることが好ましく、1.0〜1.8mmとすることがより好ましく、1.1〜1.5mmとすることが更に好ましく、1.1〜1.4mmとすることが特に好ましい。
環状ダイスの温度は、通常130〜180℃程度、好ましくは145〜170℃である。
インフレーション成形のエアーリングは、前記混合物の結晶化温度が低く、溶融張力も小さいため、多層垂直吹き出しタイプが好ましい。
【0032】
インフレーション成形時には、分解性樹脂と澱粉からなる樹脂組成物に、必要に応じて、更に、分散剤、着色剤、界面活性剤、pH調整剤、脱酸剤、グリセリン、ポリエチレングリコール、架橋剤、難燃剤、芳香剤、耐候剤等を、適当量配合することができる。
【0033】
上記のように、分解性樹脂と澱粉を含む樹脂組成物の調製に引き続いて、連続してフィルムの製造を行うのでなく、一旦ペレット化又はフレーク化された分解性樹脂と澱粉の樹脂組成物を用いてフィルムの製造を行う場合、インフレーション成形、Tダイ式フィルム押出成形機の設定温度は、上記第二工程と同様の温度、すなわち130〜180℃程度、好ましくは145〜170℃とすることができる。
分解性樹脂と澱粉を含む樹脂組成物のフィルムは、前記フィルムを、更に一軸又は二軸延伸したものであってもよい。
【0034】
上記で得られたインフレーションフィルムの厚さは、安定してフィルムを成形する観点から、5〜200μmの厚さであることが好ましく、より好ましくは5〜150μm、更に好ましくは5〜120μm、特に好ましくは10〜100μmである。
【0035】
(フィルムの粉砕)
上記で得られたインフレーションフィルムの粉砕方法に特に制限はないが、該フィルムを微細に粉砕するためには、ロータリーカッターを用いることが好ましい。
ロータリーカッターは、2〜5枚の固定刃と3〜10枚の片刃の回転刃を有する粉砕機(細断機)であり、フィルムにずりやよじれがかからず固いまま粉砕できるよう空気を送りながら細断することにより、カール等の発生を抑制しつつ、微粉砕化が可能になり、かさ比重を大きくすることができる。
市販のロータリーカッターとしては、(有)吉工製、ロータリーカッター(薄物粉砕機)RCシリーズが好ましく挙げられる。
ロータリーカッターはチャンバー内に回転刃が取り付けられ、チャンバー底部には、例えば、目開き0.5〜15mm、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1〜8mm、更に好ましくは2〜6mmのメッシュが取り付けられ、所定範囲に中心値を有する粉砕物は篩い落され、所定のサイズより大きい粉砕物のみ更に切断が続けられる。好ましい実施の態様は、フィルムを幅0.1〜10mm、長さ0.1〜10mm程度の断片とし、チャンバー内に投入して、例えば2分〜30分間程度粉砕する。所定のサイズより小さくなった粉砕物はチャンバー底部のメッシュを通過して系外に回収され、メッシュを通過しないものは更に粉砕が続けられる結果、粗大物が微量なフィルム粉砕物を得ることができる。得られたフィルム粉砕物は、平均粒径0.1〜3mmのフラクチャー支持材と混合した際に均質なフラクチャリング用流体を得ることができる。
なお、フィルム粉砕物の粒度は、(株)飯田製作所製のロータップ型ふるい振盪機を用いて測定することができる。
【0036】
フィルムの粉砕物のアスペクト比[縦(L)/横(D)]が大きいほど、フィルムの粉砕物が他成分と絡み易く相分離が起きにくい。そのため、フィルムの粉砕物のアスペクト比は、通常1以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上である。
アスペクト比の調整は、フィルムの粉砕物を製造する際に、カッター刃の数を変えること等により、行うことができる。すなわち、引き込むフィルムの幅及び引き込みスピードが一定のため、カッター刃の数を増加させると、アスペクト比が小さいものができ、カッター刃の数を減少させるとアスペクト比の大きなものができる。
なお、アスペクト比(L/D)の測定において、フィルムの粉砕物の最も長い部分を縦(L)とし、縦(L)に対して垂直で最も長い部分を横(D)とした。
なお、アスペクト比の測定は、キヤノン(株)製の非接触表面形状測定機、「NewView 7300」を用いて測定することができる。
【0037】
[フラクチャリング用流体]
本発明のフラクチャリング用流体は、前記した本発明のフラクチャリング用注入材料、平均粒径0.1〜3mmのフラクチャー支持材、及び水を含有する。
本発明のフラクチャリング用流体に含まれるフラクチャリング用注入材料は、フラクチャー支持材の分散性を高め、フラクチャリング用流体の輸送を補助する作用を有し、水は、フラクチャリング用流体の主流体である。
フラクチャリング用流体中におけるフラクチャリング用注入材料の含有量は、好ましくは0.00001〜0.1質量%、より好ましくは0.0001〜0.1質量%、更に好ましくは0.001〜0.1質量%、特に好ましくは0.001〜0.05質量%である。
【0038】
<フラクチャー支持材>
フラクチャー支持材(以下、単に「支持材」ともいう)は、地下採取層に圧力をかけて作ったフラクチャーを支え、フラクチャーが閉合するのを防ぐ働きを有する。
そのため、支持材は、平均粒径0.1〜3mmの範囲の粒子であり、地下採取層の土質に比べて粒径が大きい材料であることが好ましい。支持材の平均粒径は、好ましくは0.1〜2.8mm、より好ましくは0.2〜2.0mm、更に好ましくは0.4〜1.5mmである。支持材の粒径は不揃いでも構わないが、形成したフラクチャーの奥まで導入するためには、粒径が均一であることが好ましい。
支持材は、フラクチャー(割れ目)表面から閉塞圧を受けるため、これによりフラクチャーが破壊され、支持材が地層中に埋没しないようにする必要がある。そのため、支持材の強度は、支持材の粒子あたり、好ましくは350kgf/cm
2以上、より好ましくは400kgf/cm
2以上であり、耐薬液性であるものが好ましい。このため、支持材の素材は、ケイ砂、砂、ガラスビーズ、セラミック等が好ましい。
支持材はそのまま用いることができるが、支持材がフラクチャーの閉塞圧で断片化し、支持材としての機能が低下するのを防止する観点、及び支持材表面を円滑にして流体伝導率を向上させる観点から、熱硬化性のエポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂等でコーテイングしたものが好ましい。
フラクチャリング用流体中における支持材の含有量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜18質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
【0039】
<その他の添加剤>
本発明のフラクチャリング用流体においては、フラクチャリング流体の圧入を容易にする等の観点から、必要に応じて、その他の添加剤として、例えば、鉱物の溶解作用を有する酸(塩酸等)、バクテリアによる腐食を防止するための殺生物剤(グルタルアルデヒド、エタノール、メタノール等)、ブレーカー(地下採取層のフラクチャーが閉合しようとするときに作動して、ポリマーの粘性を低下させるもの。過硫酸アンモニウム等)、腐食防止剤(N、N−ジメチルホルムアルデヒド等)、温度上昇時の粘性維持作用を有する架橋剤(ホウ酸塩等)、摩擦損失を低減する作用を有し、フラクチャリング流体の圧入を容易にするための摩擦低減剤(ポリアクリルアミド、鉱油、繊維状物質等)、フラクチャー支持材の随伴性向上作用を有するゲル化剤(グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース等)、金属酸化物の沈殿防止作用を有する鉄分制御剤(クエン酸等)、粘土膨潤抑制剤(塩化カリウム等)、pH調整剤(炭酸ナトリウム等)水に溶解できないために生じるスケール/スラッジの管内付着対策としてのスケール付着防止剤(エチレングリール等)、増粘剤(イソプロパノール等)等を含有することができる。
上記の添加剤の添加量は、フラクチャリング用流体中、通常0.0001〜1%、好ましくは0.0005〜1%、更に好ましくは0.001〜1%である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、各種物性の測定は以下の方法により行った。
(1)ペレット粉砕物の粒度の測定
ホソカワミクロン(株)製の網面固定・振動気柱式分級機、「ミクロンウオシーブWST−1」を用いて、ペレット粉砕物の平均粒径を測定した。
(2)フィルム粉砕物の粒度の測定
(株)飯田製作所製のロータップ型ふるい振盪機を用いて、フィルム粉砕物の粒度を測定した。
(3)フィルム粉砕物のアスペクト比の測定
キヤノン(株)製の非接触表面形状測定機、「NewView 7300」を用いて、アスペクト比を測定した。
【0041】
製造例1
(1)分解性樹脂含有フィルムの製造
分解性樹脂として、昭和電工(株)製の生分解性樹脂、前記「ビオノーレ(商標)3001MD」(脂肪族ポリエステル;コハク酸とアジピン酸と1,4-ブタンジオールとの重縮合物、MFR(温度190℃、荷重2160g)1g/10分)60質量%と、澱粉として、未加工のコーンスターチ40質量%とを用意した。
前記分解性樹脂と澱粉とをスーパーミキサーを用いて混合し、脱水用のベントを備えたスクリュー径80mmの同方向回転型二軸押出機(スクリュー有効長(L/D):32)を用いて溶融混練し、分解性樹脂組成物のペレットを得た。二軸押出機の溶融混練条件は、前半(供給部、圧縮部)が130℃で滞留時間70秒間、後半(混練部)が140℃で滞留時間70秒間であった。
得られたペレットを原料として、(株)プラコー製、インフレーション成形機を用いて、下記条件で、厚さ15μmのインフレーションフィルムを成形した。
インフレーションフィルムの成形条件は、リップギャップ:1.2mm、ブローアップ比:3、スクリュー:フルフライト緩圧縮タイプ、スクリュー有効長(L/D):28、スクリューの圧縮比(C/R):1.5、ダイ:150mmφ、モータ:22kW、ブロワー:7.5kW、エアーリング:二層垂直吹き出しタイプ((株)プラコー製、HA300)、成形温度:165℃であった。
【0042】
(2)フィルム成形性試験
上記(1)で得られたインフレーションフィルムを用いて、インフレーションフィルム成形を行い、以下の基準でフィルム成形性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:安定して、厚みむらのないフィルムが成形できた。
○:安定してフィルムの成形ができたが、実用上問題はない程度の若干の厚みむらが見られた。
△:安定してフィルムの成形ができたが、厚みむらが見られた。
×:フィルムが成形できなかった。
【0043】
製造例2〜5
製造例1において、澱粉を表1に示すものに変更した以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
なお、表1で用いた澱粉の詳細は以下のとおりである。
・コーンスターチ:王子コーンスターチ(株)製、商品名:コーンスターチ
カルボキシル基置換度0、粘度1100±50BU(ブラベンダー粘度、濃度8質量%、50℃1時間後測定)、水分12質量%(常圧加熱法105℃、4時間)
・酸化澱粉:王子コーンスターチ(株)製、商品名:エースA
カルボキシル基置換度:0.01、粘度:300±50BU(ブラベンダー粘度、濃度20質量%、50℃1時間後測定)、水分12質量%(常圧加熱法105℃、4時間)
・エステル化澱粉:王子コーンスターチ(株)製、商品名:エースP130
粘度:200±50BU(ブラベンダー粘度、濃度20質量%、50℃1時間後測定)、水分12質量%(常圧加熱法105℃、4時間)
・アセチル化澱粉:王子コーンスターチ(株)製、商品名:エースOSA1100
・カチオン化澱粉:王子コーンスターチ(株)製、商品名:エースK100粘度:200±50BU(ブラベンダー粘度、濃度6質量%、50℃1時間後測定)、水分12質量%(常圧加熱法105℃、4時間)
なお、ブラベンダー粘度は、ブラベンダー社のブラベンダー粘度計を用いて、所定濃度に調整した澱粉スラリーをブラベンダーにセットし、95℃まで昇温後30分保持した後、50℃まで冷却し、50℃到達から30分経過したときの粘度を測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から、製造例1〜5で得られたインフレーションフィルムは、成形性に優れていることが分かる。
【0046】
製造例6〜8、比較製造例1
(1)分解性樹脂含有フィルムの製造
昭和電工(株)製の生分解性樹脂、前記「ビオノーレ(商標)3001MD」と、王子コーンスターチ(株)製の酸化澱粉、前記「エースA」とを用いて、製造例1と同様にして、分解性樹脂組成物のペレットを得た。二軸押出機の溶融混練条件は、前半(供給部、圧縮部)が120℃で滞留時間80秒間、後半(混練部)が160℃で滞留時間80秒間であった。
(2)フィルム成形性試験
上記(1)で得られたペレットを原料として、製造例1と同様にして、インフレーションフィルム成形を行い、フィルム成形性を評価した。
(3)フィルムの分解性試験
上記(2)で得られたフィルムを用いて、茨城県小美玉市の農事試験場にて、フィルムの分解性試験を行った。
前記フィルムを地面から10cmの深さのところに埋設し、埋設後1週間経過後に取り出し、質量を測定し、以下の基準で分解性を評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
×:質量減少量10%未満
△:質量減少量10%以上20%未満
○:質量減少量20%以上
【0047】
【表2】
【0048】
表2から、製造例6〜8で得られたインフレーションフィルムは、成形性は良好であり、分解性も優れていることが分かる。
【0049】
実施例1(フラクチャリング用注入材料の製造、評価)
(1)分解性樹脂含有微粉砕物の製造
分解性樹脂として、昭和電工(株)製の生分解性樹脂、前記「ビオノーレ(商標)3001MD」を用意し、澱粉として、王子コーンスターチ(株)製の酸化澱粉、前記「エースA」を用意した。
前記分解性樹脂と澱粉とを用いて、製造例1と同様にしてペレット化した。二軸押出機の溶融混練条件は前半(供給部、圧縮部)が130℃で滞留時間70秒間、後半(混練部)が170℃で滞留時間70秒間であった。
得られたペレットを、ホソカワミクロン(株)製、低温粉砕装置「リンレックスミル」を用いて、冷凍粉砕により微粉砕し、分級して平均粒径0.7mmのものを取得した。
(2)微粉砕物の分解性試験
上記(1)で得られた微粉砕物を用いて、製造例6〜8(3)と同様にして、微粉砕物の分解性を評価した。結果を表3に示す。
【0050】
実施例2〜6、及び比較例1(フラクチャリング用注入材料の製造、評価)
実施例1において、表3に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3から、実施例1〜6で得られた微粉砕物(フラクチャリング用注入材料)は、地中埋設時の分解性に優れていることが分かる。
【0053】
実施例7〜12(フラクチャリング用注入材料の製造、評価)
分解性樹脂として、昭和電工(株)製の生分解性樹脂、前記「ビオノーレ(商標)3001MD」とNatureWorks LLC製のポリ乳酸、「Ingeo 4060D」(D−乳酸体含有量:12mol%、MFR:2.3g/10分(190℃、2160g)、重量平均分子量:20万)を用意し、澱粉として、王子コーンスターチ(株)製の酸化澱粉、前記「エースA」を用意した。
表4に示すように、フィルムの厚みを5〜200μmの範囲で変え、製造例1と同様にしてインフレーション成形を行い、フィルム成形性を評価した。結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4から明らかなように、実施例7、8では、安定してフィルムの成形ができたが、厚みむらが見られた。実施例9〜11では、フィルム成形が安定してでき、厚みむらのないフィルムが成形できた。
実施例12では、フィルムの成形はできたが、フィルムの冷却が不十分で、バブルが安定せず厚みむらが見られた。
【0056】
実施例13〜16(フラクチャリング流体の製造、評価)
(1)昭和電工(株)製の生分解性樹脂、前記「ビオノーレ(商標)3001MD」と王子コーンスターチ(株)製の酸化澱粉、前記「エースA」を原料として、(株)プラコー製、インフレーション成形機を用いて、実施例7〜12と同様にしてインフレーション成形を行い、インフレーションフィルムを得た。
得られたインフレーションフィルムを、(有)吉工製、ロータリーカッター(薄物粉砕機)RC−250を用いて粉砕し、厚み15μmのフィルム粉砕物を得た。このロータリーカッターのチャンバー底部には、表5に示す所定の目開きを有する篩を設置して、表5に示すフィルム粉砕物を得た。このフィルム粉砕物を分級して各種のアスペクト比を有するものを取得した。
(2)フラクチャリング流体の分散状態の評価
表5に示すフィルム粉砕物を用いて、下記の組成を有するフラクチャリング流体を作製し、透明な水槽に流し、攪拌しながら、5分後にその分散状態を目視で観察し、下記の方法により評価した。結果を表5に示す。
(フラクチャリング流体の組成) (質量%)
砂(フラクチャー支持材) 8.96
塩酸(鉱物溶解剤) 0.11
グルタルアルデヒド(殺生物剤) 0.001
過硫酸アンモニウム(ブレーカー) 0.01
N、N−ジメチルホルムアルデヒド(腐食防止剤) 0.001
ホウ酸塩(架橋剤) 0.01
ポリアクリルアミド及び鉱油(摩擦低減剤) 0.08
グアーガム及びヒドロキシエチルセルロース(ゲル化剤) 0.05
クエン酸(鉄分制御剤) 0.004
塩化カリウム(粘土膨潤抑制剤) 0.05
炭酸ナトリウム(pH調整剤) 0.01
エチレングリール(スケール付着防止剤) 0.04
イソプロパノール(増粘剤) 0.08
フィルムの粉砕物(フラクチャリング用注入材料) 0.01
水(主流体) 90.584
合 計 100.000
【0057】
(分散状態の評価基準)
◎:分散状態は良好であり、成分の凝集、水槽壁面への付着、容器底への沈降、水面への浮遊が見られなかった。
○:分散状態は良好であり、水槽壁面への付着、容器底への沈降、水面への浮遊が見られなかったが、成分の凝集が一部見られた。
△:分散状態は良好であり、水槽壁面への付着、容器底への沈降が見られなかったが、水面への浮遊と成分の凝集が一部見られた。しかし、実用上の問題はない程度であった。
×:分散状態は不均一であり、成分の凝集、水槽壁面への付着、容器底への沈降、水面への浮遊等が見られた。
【0058】
【表5】
【0059】
表5から、実施例13〜16で得られたフラクチャリング用流体は、分散状態が安定で、十分に実用性があることが分かる。
【0060】
実施例17〜21(フラクチャリング流体の製造、評価)
分解性樹脂として、昭和電工(株)製の生分解性樹脂、前記「ビオノーレ(商標)3001MD」とNatureWorks LLC製のポリ乳酸、前記「Ingeo 4060D」を用意し、澱粉として、王子コーンスターチ(株)製の酸化澱粉、前記「エースA」を用意し、(株)プラコー製、インフレーション成形機を用いて、実施例9と同様にしてインフレーション成形を行い、インフレーションフィルムを得た。
得られたインフレーションフィルムを、(有)吉工製、ロータリーカッター(薄物粉砕機)RC−250を用いて粉砕し、厚み15μmのフィルム粉砕物を得た。このフィルム粉砕物を分級して各種のアスペクト比を有するものを取得した。
得られた各種のアスペクト比を有するフィルム粉砕物を用いて、実施例13〜16(2)と同じ組成のフラクチャリング流体を作製し、実施例13〜16(2)と同様にして評価した。結果を表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
表6から、実施例17〜21で得られたフラクチャリング用流体は、分散状態が安定で、十分に実用性があることが分かる。