特許第6243913号(P6243913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243913改善された特性を有するドライミックス配合物における使用のための再分散性ポリマー粉末混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243913
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】改善された特性を有するドライミックス配合物における使用のための再分散性ポリマー粉末混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20171127BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20171127BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20171127BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20171127BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20171127BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20171127BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20171127BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20171127BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C08L33/06
   C04B24/26 D
   C04B24/26 C
   C04B28/02
   C04B22/14 B
   C04B22/08 Z
   C08F265/06
   C08L31/04 S
   C08K3/30
   C08K13/02
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-534534(P2015-534534)
(86)(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公表番号】特表2015-535872(P2015-535872A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】US2013059573
(87)【国際公開番号】WO2014052034
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/707,037
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・キム−ハバメール
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ディー・ウェストメイヤー
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−187741(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00654454(EP,A1)
【文献】 国際公開第2011/136219(WO,A1)
【文献】 特開平09−110495(JP,A)
【文献】 特開2000−178055(JP,A)
【文献】 特開2011−190141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 33/06
C04B 22/08
C04B 22/14
C04B 24/26
C04B 28/02
C08F 265/06
C08K 3/30
C08K 13/02
C08L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.内部コアポリマーと関連付けられた外部シェルポリマーを含む、アクリルコアシェル再分散性ポリマー粉末であって、前記コアポリマーが、摂氏−40度以上および摂氏50度以下の範囲のガラス転移温度を有するアクリルポリマーであり、前記シェルポリマーが、前記コアポリマーよりも多くのカルボキシル基官能基を含有するアルカリ可溶性ポリマーであり、前記アクリルコアシェル再分散性粉末が、摂氏150度以上および摂氏500度以下の範囲の沸点および3.5重量%以下の水溶解度を有する核形成剤をさらに含む、アクリルコアシェル再分散性粉末と、
b.酢酸ビニルエチレンコポリマー再分散性ポリマー粉末、および酢酸ビニルエチレンコポリマーとバーサチック酸(versatic acid)のビニルエステルコポリマーとのブレンドのポリマー粉末から選択される第2の再分散性ポリマー粉末と、を含む混合物であって、
前記アクリル再分散性ポリマー粉末(a)の濃度が、再分散性粉末(a)および(b)の総合重量の20重量%超〜100重量%未満である、混合物。
【請求項2】
コロイド安定剤をさらに含む前記アクリルコアシェル再分散性ポリマー粉末をさらに特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
総シェルコポリマー重量の5重量%以上および40重量%以下の範囲の濃度で前記シェルコポリマーに共重合される、酸モノマーおよび無水モノマーから選択されるモノマーを含む前記シェルコポリマーをさらに特徴とする、請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
アルカリ不溶性である前記コアコポリマーをさらに特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の混合物。
【請求項5】
シェルコポリマーおよびコアコポリマーの総合重量に対して、5重量%以上の濃度で存在する前記シェルコポリマーをさらに特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の混合物。
【請求項6】
前記アクリルコアシェル再分散性ポリマー粉末の総重量に対して、5重量%未満の濃度で存在する前記核形成剤をさらに特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の混合物。
【請求項7】
コアシェル再分散性ポリマー粉末および第2の再分散性ポリマー粉末の総重量に基づいて、40重量%以上〜100重量%未満の濃度で存在する前記アクリルコアシェル再分散性ポリマー粉末をさらに特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の混合物。
【請求項8】
コアシェル再分散性ポリマー粉末および第2の再分散性ポリマー粉末の総重量に基づいて、50重量%未満の濃度で存在する前記コアシェル再分散性ポリマー粉末をさらに特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の混合物。
【請求項9】
摂氏15度以上および摂氏20度以下の範囲のガラス転移温度を有する前記コアコポリマーをさらに特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の混合物。
【請求項10】
ポルトランドセメント、アルミナに富むセメントの重量に基づいて、30重量%を超えるアルミナ含有量を有するアルミナに富むセメント、および硫酸カルシウムをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の混合物。
【請求項11】
前記混合物中の唯一の再分散性ポリマー粉末(RDP)が、請求項1〜9のいずれかに記載のRDP混合物である、請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
総ドライミックス配合物重量に基づく重量%セメントで、0.5重量%以上および10重量%以下の範囲内のアルミナに富むセメントの濃度、および25重量%以上および40重量%以下の範囲内のポルトランドセメントの濃度をさらに特徴とする、請求項10に記載の混合物。
【請求項13】
前記混合物中の唯一のRDPが、請求項1〜9のいずれかに記載のRDP混合物である、請求項12に記載の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、セメントのドライミックス配合物、特にアルミナに富むセメントおよび再分散性ポリマー粉末を含有するドライミックス配合物における使用に好適な再分散性ポリマー粉末の混合物に関する。本発明は、ドライミックス配合物を形成するために他の成分と組み合わせた再分散性ポリマー粉末の混合物をさらに含む。
【背景技術】
【0002】
ドライミックスセメント配合物(または単に「ドライミックス配合物」もしくは「ドライミックス」)は、即時混合および使用可能な状態でセメント組成物を輸送および保管するために有益である。一般に、ドライミックス配合物からのモルタルの調製は、単に水の添加および混合を必要とするだけである。ドライミックス配合物は、多くの場合、そのドライミックス配合物を水と混合することによって調製されたモルタルの特性を改善するための再分散性ポリマー粉末(RDP)添加剤を含む。ドライミックス配合物において使用される一般的なRDP添加剤は、酢酸ビニルエチレン(VAE)コポリマーの再分散性粒子、およびVAEとバーサチック酸のビニルエステル(VeoVA)コポリマーとのブレンド(VAE/VeoVAコポリマー)である。これらの種類のポリマー添加剤は、モルタルの適用において、モルタルを形成するためにドライミックスが水中に分散される際の、および/または得られたモルタル内でポリマーネットワークを形成することにより得られたモルタルの強度および可撓性を増加させることによって、ドライミックスの作業特性を強化するために有用である。
【0003】
アルミナに富むセメントを含有するドライミックス配合物は、特に興味深い。アルミナに富むセメントは、ポルトランドセメントに対してより速い固化時間を提供する。アルミナに富むセメント配合物は、高品質セメントタイル接着剤(CTA)における、また防水膜、グラウト、およびセルフレベリング下敷き材における使用に特に望ましい。アルミナに富むセメントは、そのアルミナに富むセメントの総重量に基づいて、30重量パーセント(wt%)超、好ましくは40重量%以上、より好ましくは55重量%以上、および最も好ましくは70重量%以上のアルミナ(Al)含有量を含む。
【0004】
モルタル特性を改善し、モルタルの最終用途性能を強化することは、ドライミックス配合物の業界における持続的要望である。例えば、水浸せん断強度を増加させることが望ましい。水浸せん断強度は、水中に浸漬された後の養生モルタルのせん断強度の尺度である。モルタルの固化時間を減少させることは、さらに望ましい。より短い固化時間は、作業者が建設中にモルタルの適用から建設の後次段階により迅速に移ることを許し、生産性を改善する。ドライミックス配合物に必要な水負荷を減少させることは、なおもさらに望ましい。必要な水負荷は、最適なモルタル特性を獲得するために、どれだけの水をドライミックスと合わせる必要があるかを明らかにする。
【0005】
同時に、ドライミックス配合物を、現在広く受け入れられている配合物にできる限り近い状態で保持することが望ましい。これは、費用を低く抑え、現在の業界の慣行を劇的に変えることを防ぐために望ましく、業界標準が依然として満たされていることを確認するために、広範な試験および資格を必要とし得る。例えば、ドライミックスセメント配合物に対して現在優勢なRDP技術は、VAEおよびVAE/VeoVaコポリマーに基づく。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、配合物中の唯一のRDPとしてVAEおよびVAE/VeoVAコポリマーから選択されるRDPを含む比較ドライミックスセメントよりも高い水浸せん断強度、短い固化時間、および低い水負荷を有するモルタルを産生するためのドライミックス配合物の混合物における使用に好適な再分散性ポリマー粉末の混合物を提供する。驚くことに、本発明の混合物は、ドライミックス配合物を形成するときに、単なるVAEまたはVAE/VeoVa RDPの代わりに、液滴として、別のRDPと合わせたVAEおよびVAE/VeoVAから選択されるコポリマーのRDP混合物を含有する。
【0007】
驚くことに、アクリルRDPとVAEまたはVAE/VeoVAコポリマーのRDPとのブレンドは、ドライミックス配合物において使用されるとき、VAEまたはVAE/VeoVAコポリマーのみの再分散性ポリマー粉末を含む比較ドライミックス配合物(再分散性ポリマー粉末の組成物を除いて同じ配合物)よりも高い水浸せん断強度、および短い急速固化時間を有するモルタルを産生するRDP混合物をもたらす。
【0008】
さらにより驚くことに、RDP混合物は、VAEおよびVAE/VeoVAコポリマーから選択されるRDPの50重量%以上であり得、それによってVAEおよびVAE/VeoVAコポリマーから選択されるRDPを使用する現在のドライミックス配合物からの著しい費用変動を防ぐ一方で、依然としてより高い水浸せん断強度、より短い急速固化時間、およびより低い水負荷の利益を享受する。
【0009】
なおもより驚くことは、アクリルRDPをVAEおよびVAE/VeoVAコポリマーから選択されるRDPとブレンドすることから得られるドライミックス配合物におけるこの相乗的な利益の幅が、アクリルRDPをスチレン−ブタジエンRDPのような他のRDPとブレンドするときに観察されないことであり、アクリルRDPとVAEおよびVAE/VeoVAコポリマーから選択されるRDPとの間の非普遍性の良好な相乗関係を示唆する。
【0010】
第1の態様において、本発明は、(a)内部コアポリマーと関連付けられた外部シェルポリマーを含む、アクリルコアシェル再分散性ポリマー粉末であって、コアポリマーが、摂氏−40〜50度の範囲のガラス転移温度を有するアクリルポリマーであり、シェルポリマーが、コアポリマーよりも多くのカルボキシル基官能基を含有するアルカリ可溶性ポリマーであり、アクリルコアシェル再分散性粉末が、摂氏150〜500度の範囲の沸点および3.5重量%以下の水溶解度を有する核形成剤をさらに含む、アクリルコアシェル再分散性ポリマー粉末、ならびに(b)酢酸ビニルエチレンコポリマー再分散性ポリマー粉末、および酢酸ビニルエチレンコポリマーとバーサチック酸のビニルエステルコポリマーとのブレンドのポリマー粉末、から選択される第2の再分散性ポリマー粉末を含む混合物であり、アクリル再分散性ポリマー粉末(a)の濃度は、再分散性粉末(a)および(b)の総合重量の20重量%超〜100重量%未満である。
【0011】
望ましくは、第1の態様の混合物は、ポルトランドセメント、アルミナに富むセメントの重量に基づいて、30重量%を超えるアルミナ含有量を有するアルミナに富むセメント、および硫酸カルシウムをさらに含む。
【0012】
本発明の混合物は、例えば、セメントタイル接着剤、グラウト、防水膜、亀裂分離膜、修復モルタル、およびセルフレベリング下敷き材として有用なモルタルを調製するために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「ASTM」は、ASTM Internationalを指し、ASTMによって発表された番号によって試験方法を指定するために使用される。「ANSI」は、米国規格協会(American National Standards Institute)を指す。「ISO」は、国際標準化機構(International Organization for Standardization)を指し、ISO試験方法番号を特定するために使用される。試験番号は、日付によって(例えば、試験番号の後にハイフンで結んだ接尾辞を使用して)特に指定されない限り、本文書の優先日に先行して発表された最近の試験を指す。「複数」は、2つ以上を意味する。「および/または」は、「および、または代替として」を意味する。全ての範囲は、別段の指示がない限り、終点を含む。有機化合物を特定するとき、下付き数字を有する「C」の指定は、その有機化合物中の炭素原子数を指す。再分散性ポリマー粉末、またはRDPは、RDPを調製するために使用される分散液中の粒子のサイズに等しい粒子を形成するように凝集するのではなく、望ましくは粒子が完全に分散するような程度で脱イオン水中に分散され得るポリマー粉末を指す。「配合物」は、特定の配合に従って調製された混合物を指す。
【0014】
本発明のアクリルコアシェルRDPは、内部コアポリマーの周りに、それと「関連付けられた」シェルポリマーを含む。「関連付けられた」は、物理的または化学的拘束に起因して互いに近位であることを意味する。例えば、シェルポリマーは、コアポリマーを物理的に包含することができ、それにより物理的拘束によってコアポリマーと関連付けられる。シェルポリマーは、または代替として、コアポリマーに(例えば、グラフ共重合を通じて)結合され得、それにより化学的拘束を通じて関連付けられる。シェルポリマーは、コアポリマー「の周りに」あり、コアポリマーよりもコアシェルRDP粒子の外面に対して近位にある。望ましくは、シェルポリマーは、コアシェルRDP粒子の外面上に曝露され、一般にコアポリマーを取り囲む。
【0015】
コアポリマーは、アクリルポリマーである。アクリルポリマーは、そのアクリルポリマーを形成するために共重合された総モノマー重量に基づいて、50重量%超の共重合(メタ)アクリルモノマーを含有する。(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリル酸を含む。本明細書において便宜的に、語中の接頭辞「(メタ)」は、「メタ」を含む語および「メタ」を含まない語の両方を指す。したがって、「(メタ)アクリル」は、メタクリルおよびアクリルの両方を指す。誤解を避けるために、「アクリルポリマー」は、50重量%超のアクリルモノマー、メタクリルモノマー、またはアクリルモノマーとメタクリルモノマーとの組み合わせを含むことができる。コアポリマーを調製するための好適な(メタ)アクリルモノマーの例としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリルアミド、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択されるいずれか1つまたは複数の組み合わせが挙げられる。
【0016】
コアポリマーは、摂氏−40度(℃)以上、好ましくは−10℃以上、およびより好ましくは15℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。同時に、コアポリマーは、50℃以下、好ましくは25℃以下、およびより好ましくは20℃以下のガラス転移温度を有する。このTgの範囲は、コアポリマーがドライミックス配合物から作製されたモルタル内で補強ポリマーフィルムを形成するのを許す。コアポリマーのみを調製し、そのコアポリマーのTgを測定することによって、コアポリマーのTgを決定する。ASTM D7426−08に従って、1分当たり10℃の加熱および冷却速度を用いてポリマーのTgを測定する。
【0017】
望ましくは、コアポリマーは、「アルカリ不溶性」である。対照的に、シェルポリマーは、「アルカリ可溶性」である。ポリマーのみを調製し、次に混合物を形成するポリマーの体積の10倍の体積の水溶液と、pH8.0、23℃で混合することによって、特定のポリマーが、アルカリ可溶性であるか、またはアルカリ不溶性であるかを決定する。混合物を激しく振り、24時間固化させた。ポリマーが24時間後も見え続ける場合、それはアルカリ不溶性である。見えなくなったことによって証明されるように、ポリマーが溶解する場合、ポリマーはアルカリ可溶性である。シェルポリマーおよびコアポリマーを互いに独立して試験し、それらがアルカリ不溶性であるか、またはアルカリ可溶性であるかを決定する。
【0018】
シェルポリマーは、カルボキシル基官能基を含有する。コアポリマーもカルボキシル基官能基を含有し得るか、またはカルボキシル基官能基を含まない可能性がある。コアポリマーが、カルボキシル基官能基を含有するかどうかにかかわらず、シェルポリマーは、コアポリマーよりも多くのカルボキシル基官能基を含有する。望ましくは、シェルポリマーは、0.1%以上、好ましくは1%以上、およびより好ましくは2%以上のカルボキシル化レベルを有する。同時に、シェルポリマーは、望ましくは20%以下、好ましくは10%以下、およびより好ましくは5%以下、およびさらにより好ましくは3.5%以下のカルボキシル化レベルを有する。ASTM D664に従う電位差滴定によって、カルボキシル化レベル(つまり、カルボキシル化の量または「酸含有量」または「酸レベル」)を決定する。
【0019】
シェルポリマーは、望ましくは、酸モノマーおよび無水モノマーを含めて選択される共重合モノマーを含有する。好適な酸モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。好適な無水モノマーの例としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、マレイン酸/フマル酸/イタコン酸無水物の半エステル、マレイン酸無水物、およびイタコン酸無水物が挙げられる。
【0020】
シェルポリマーに共重合された酸および無水物モノマーの複合濃度は、望ましくは、総シェルポリマー重量の5重量%以上、好ましくは10重量%以上、およびより好ましくは15重量%以上である。同時に、シェルポリマーに共重合された酸および無水物モノマーの複合濃度は、総シェルポリマー重量に基づいて、望ましくは40重量以下%であり、35重量%以下であり得る。
【0021】
1つの望ましいシェルポリマーは、メタクリル酸およびメチルメタクリレートのコポリマーを含むか、さらにそれからなる。かかるコポリマーにおいて、総コポリマー重量に対する共重合メタクリル酸の濃度は、望ましくは5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらにより好ましくは15重量%以上、およびさらにより好ましくは20重量%以上であるが、同時に、望ましくは60重量%以下、好ましくは50重量%以下、および典型的には40重量%以下である。バランスのとれたコポリマーは、共重合メチルメタクリレートである。
【0022】
1つの望ましいシェルポリマーは、そのシェルポリマーを形成するように共重合された総モノマーに基づく重量%で、5〜40重量%のカルボン酸および無水物から選択されるモノマー、30〜95重量%のアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、およびスチレンから選択されるモノマー、ならびに0〜30重量%のカルボン酸またはアクリルアミドまたはメタクリルアミドのヒドロキシアルキルエステルのコポリマーである。
【0023】
シェルポリマーは、望ましくは、2,500グラム/モル(g/mol)以上、好ましくは5,000g/mol以上の重量平均分子量を有し、同時に望ましくは、500,000g/mol以下、一般に250,000g/mol以下、および典型的に100,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。ゲル浸透クロマトグラフィーによって、シェルポリマーの重量平均分子量を決定する。
【0024】
望ましくは、シェルポリマーは、80℃以上、好ましくは85℃以上、さらにより好ましくは90℃以上、なおもより好ましくは95℃以上のTgを有する。シェルポリマーTgに対する技術的上限は未知である。一般に、シェルポリマーは、200℃以下のTgを有し、同時にTgに対する下限のうちのいずれかを有し得る。
【0025】
シェルポリマーの濃度は、シェルポリマーおよびコアポリマーの総重量の望ましくは5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらにより好ましくは20重量%以上、なおもより好ましくは25重量%以上であり、30重量%以上、40重量%以上、およびさらに50重量%以上であり得る。シェルポリマーが、100重量%未満でなければならず、一般に、シェルポリマーおよびコアポリマーの複合重量の70重量%以下、または60重量%以下であること以外に既知の技術的上限はない。
【0026】
本発明のアクリルコアシェルRDPは、典型的に、シェルポリマーが最初に調製され、次にコアポリマーがそのシェルポリマー内で調製される逆2段階プロセスにおいて、コアシェル分散液として作製される。次に、コアシェル粒子を、その分散液を噴霧乾燥することにより単離して、アクリルコアシェルRDPを得る。本発明のアクリルコアシェルRDPを調製するための逆2段階プロセスは、しかしながら、それが核形成剤を種粒子形成に使用し、それによってコアシェル分散液を調製する際に界面活性剤を含む必要性を低減し、さらには排除することができるという点において固有である。界面活性剤は、噴霧乾燥中にコアシェル粒子の凝集を引き起こす可能性があり、それによって単離後のコアシェル粒子の再分散性を阻害するため、コアシェル分散液を調製する際の界面活性剤の低減および/または排除は有益である。
【0027】
コアシェル分散液を調製するために、シェルポリマーのモノマーを含有する反応混合物を、混合しながら水性連続相に供給する。シェルポリマーの反応混合物を添加すると同時、添加前、または添加前および添加中の両方で、核形成剤を混合しながら連続水性相に供給する。シェルポリマーは、核形成剤の周りに形成し、水性相中の核形成剤の周りにシェルポリマーの分散を創出する。理論に束縛されることなく、核形成剤は、シェルポリマー疎水性部分が、核形成剤と整列することができ、シェルポリマー親水性部分が、水性相に曝露されたままであり得るように、その周りをシェルポリマーが移行する疎水性物質の液滴を提供することによって、シェル相の重合中に液滴形成を促進すると考えられる。かかる役割において、核形成剤は、分散相の形成をシードし、分散相形成を誘導するための追加の界面活性剤の必要性を低減または排除する。シェルポリマーを重合した後、コアポリマーのモノマーを含有する反応混合物を分散液に供給する。コアポリマーは、一般に、コアポリマー内の核形成剤で終わる。一旦コアポリマーが重合されると、得られる分散液を噴霧乾燥して、分散相粒子を単離することができる。多くの場合、コロイド安定剤は、噴霧乾燥プロセス中に、RDPの最分散性を強化するために、特にコアポリマーと比較してより低濃度のシェルポリマーとともに含まれる。シェルポリマーは、RDP中のシェルポリマーの濃度が増加し、追加のコロイド安定剤の必要性が、追加のコロイド安定剤が不要となるまで減少するように単独で安定剤として作用することができる。
【0028】
この製造方法の結果として、アクリルコアシェルRDPは、一般に、核形成剤の不在下で調製されたRDPよりも少ない界面活性剤を含有し、界面活性剤を含まない可能性がある。さらに、アクリルコアシェルRDPは、一般に、核形成剤を含有する。
【0029】
適切に機能するために、核形成剤は、コアシェル分散液の形成中に揮発するのを防ぐ必要があり、したがって沸点は、コアシェル分散液の形成中に水性相の温度よりも高くなければならない。好適な核形成剤は、150℃以上、好ましくは200℃以上、および同時に500℃以下の沸点を有する。ASTM D6352に従って、核形成剤の沸点を決定する。
【0030】
好適な核形成剤は、3.5重量%以下の水溶解度も有し、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、およびさらに0.5重量%以下の水溶解度を有し得る。水溶性は、水重量に対する重量%として表される、23℃で水中に目に見えて溶解する所与の物質の最大量を指す。例えば、最大5グラムの物質が100グラムの水に目に見えて溶解する場合、その物質の水溶解度は5重量%である。ASTM E1148に従って、水溶解度を決定する。
【0031】
好適な核形成剤であり得る物質の例としては、C〜C10アルキルグリコールエーテル;フェニルグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールフェニルエーテル;C〜C10アルキルジグリコールエーテル、例えば、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル;C〜C10アルカリアリールグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールオクチルフェニルエーテル;C〜C10アルキルアリールジグリコールエーテル、例えば、ジプロピレングリコールブチルフェニルエーテル;C〜Cアルカン酸のC〜C10アルキルエステル、例えば、コハク酸ブチル;C〜Cアルカン酸のC〜C10アルキルジエステル、例えば、2,2−ジメチル−1−メチルエチル−1,3−プロパンジイルビス2−プロピオン酸メチル;およびC〜C10アルカン二酸のC〜C10ジアルキルエステル、例えば、グルタル酸ジイソブチル、コハク酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチルから選択されるいずれか1つまたは複数の物質の組み合わせが挙げられる。核形成剤は、望ましくは、アルキルおよび/または分岐イソ酪酸アルキルを含むか、またはそれからなる。
【0032】
核形成剤は、典型的に、5重量%未満、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、およびより好ましくは1重量%以下の濃度で存在し、同時にアクリルコアシェルRDPの総重量に対する濃度で0重量%を超える濃度で存在する。
【0033】
アクリルコアシェルRDPは、コロイド安定剤をさらに含み得る。コロイド安定剤は、単離および保管されるとき、RDP粒子が不可逆的に凝集するのを防止するために有用であり、それによって粒子の再分散を促進する。好適なコロイド安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリドン)、アリールスルホン酸−ホルムアルデヒド凝縮物、およびポリアクリルアミドが挙げられる。ポリビニルアルコールは、特に望ましいコロイド安定剤である。存在するとき、コロイド安定剤は、典型的に、0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、同時に典型的に、アクリルコアシェルRDP重量に基づく重量%で15重量%以下、好ましくは10重量%以下、およびより好ましくは4重量%以下の濃度で存在する。シェルポリマーが、シェルポリマーおよびコアポリマーの総重量の20重量%未満またはそれ以上の濃度で存在するとき、コロイド安定剤を含むことが望ましい。シェルポリマーおよびコアポリマーの総重量が20重量%以上であるとき、コロイド安定剤は最適である。
【0034】
アクリルコアシェルRDPは、任意に、1つまたは複数の他の従来の添加剤、例えば、消泡剤(一般に、RDP重量に基づいて1.5重量%以下の濃度で)、塩(例えば、塩化マグネシウムおよび/または塩化カルシウム)、乳化剤、界面活性剤、単糖、二糖、およびケーキング防止剤またはブロッキング防止剤(例えば、カオリン粘土、または分散剤もしくは高流動化剤)を、RDP重量に基づいて30重量%以下、好ましくは15重量%以下、および一般に3重量%以上の濃度でさらに含み得る。
【0035】
本発明の混合物は、VAEコポリマーRDPおよびVAE/VeoVAコポリマーのRDPから選択される第2のRDPをさらに含む。
【0036】
ドライミックス配合物中のアクリルコアシェルRDPの濃度は、アクリルコア−シェルRDPおよび第2のRDP重量の複合重量に基づいて、望ましくは20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらにより好ましくは40重量%以上であり、50重量%以上、60重量%以上、およびさらに70重量%以上であり得る。技術的に、アクリルコアシェルRDP濃度が、アクリルコアシェルRDPおよび第2のRDPの複合重量の100重量%未満であるという実用限界を除いて、アクリルコアシェルRDPの濃度に対する上限はない。つまり、アクリルコアシェルRDPの濃度は、アクリルコアシェルRDPおよび第2のRDPの総重量に基づいて、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、さらに50重量%以下、およびさらに40重量%以下であり得る。
【0037】
混合物の費用を最小化し、ドライミックス配合物を形成するために一般的に使用されるRDPに最も類似するRDPを保持するために、第2のRDP重量を最大化することが望ましい。驚くことに、本発明のRDPは、標準VAEコポリマーRDPまたはVAE/VeoVAコポリマーRDPの50重量%超であり得るが、依然として純粋なVAEコポリマーRDPまたはVAE/VeoVAコポリマーRDPであるRDPを含有するドライミックス配合物よりも高い水浸せん断強度、短い急速固化時間、および低い水負荷を獲得するドライミックス配合物をもたらす。本発明のRDP混合物は、現在のドライミックス配合物中の現在のVAEコポリマーRDPまたはVAE/VeoVAコポリマーRDPのドロップイン代替物である。
【0038】
本発明の混合物は、ドライミックス配合物を形成するために、ポルトランドセメント、アルミナに富むセメント、および硫酸カルシウムをさらに含むことができる。かかるドライミックス配合物中のRDPの総量は、ドライミックス配合物中のセメントの総重量に基づいて、望ましくは2重量%以上であり、3重量%以上、4重量%以上、およびさらに5重量%以上であり得る。同時に、ドライミックス配合物中のRDPの総量は、ドライミックス配合物中のセメントの総重量に基づいて、20重量%以下、好ましくは16重量%以下であることが一般的であり、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、またはさらに6重量%以下であり得る。
【0039】
本発明における使用に好適なポルトランドセメントは、任意の通常のポルトランドセメントである。本発明における使用に好適なアルミナに富むセメントは、アルミナに富むセメントの総重量に基づいて、30重量%超、好ましくは40重量%以上、より好ましくは55重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上のアルミナ(Al)含有量を有する。アルミナに富むセメントは、例えば、アルミン酸カルシウムセメント(CAC)およびスルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)であり得る。
【0040】
ドライミックス配合物混合物中のポルトランドセメントの量は、混合物の総重量に基づいて、望ましくは25重量%以上であり、また30重量%以上、さらに40重量%以上であり得ると同時に、一般に45重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
【0041】
存在するポルトランドセメントの量にかかわらず、本発明のドライミックス配合物形態のアルミナに富むセメントの量は、ドライミックス混合物を形成する混合物の総重量に基づいて、望ましくは0.5重量%以上、典型的に1重量%以上、好ましくは2.5重量%以上、同時に典型的に、10重量%以下、望ましくは8重量%以下、および好ましくは5.5重量%以下である。
【0042】
ドライミックス配合物を形成する混合物は、アルミナに富むセメントの総重量に基づいて、典型的に40重量%以上〜60重量%以下の濃度で硫酸カルシウムをさらに含む。
【0043】
ドライミックス配合物は、例えば、亜鉛酸化物、水酸化亜鉛、および水酸化亜鉛炭酸塩からなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物および/もしくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸リチウム、酒石酸のような促進剤、セルロースエーテルのような1つ以上の増粘剤、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、消泡剤、ならびに液化剤、分散剤、または高流動化剤、例えば、MELFLUX(商標)2651Fのような水溶性コポリマー分散剤、修飾ポリカルボン酸塩(MELFLUXは、BASF Construction Polymer GMBHの商標である)のような充填剤および他の従来の付加剤を、従来の量で含有することができ、一般に含有する。充填剤の例としては、砂、例えば、ケイ砂および石英砂、石英粉、炭酸カルシウム、ドロマイト、ケイ酸アルミニウム、タルクもしくは雲母、または軽量充填剤、例えば、軽石、発泡ガラス、泡コンクリート、パーライト、もしくはバーミキュライトが挙げられる。充填剤の混合物が含まれてもよい。
【0044】
ドライミックス配合物を形成する本発明の混合物は、水和してモルタルを形成するために有用である。ドライミックス配合物の水和は、一般に、混合しながらドライミックス配合物に水を添加することによって発生する。他のドライミックス配合物(特に、VAEおよびVAE/VeoVAコポリマーのRDPから選択されるRDPのみを含有するもの)を超える本発明のドライミックス配合物の利点の1つは、それがより低い水負荷を有することである。つまり、本発明のドライミックス配合物は、最適な一貫性、圧縮性、およびせん断特性(総称して「最適な特性」)を同時に獲得するために、他のドライミックス配合物よりも少量の水を必要とする。この文脈において「最適な特性」は、3つの特徴に最適な値を指し、試験方法は次のとおりである:一貫性(Heritage−Wolffスティック試験下で97.5%の評価値)、圧縮性(圧縮性試験において90%超の湿潤)、および粘度(モルタル粘度試験において400,000〜600,000センチポイズ)。
【0045】
Heritage−Wolffスティック試験
100グラムのドライミックスをプラスチック容器に入れ、既知量の水を添加してモルタルを形成する(約20グラム)。木製スティック(舌圧子)を用いて30秒間モルタルを均一にかき混ぜる。スティックを水平位置で保持しながら全モルタル組成物を木製スティックの上に置き、モルタルの一貫性を評価する。次の特性化スケールに従って、モルタルがスティック上を動くか、または垂れ下がる様子を特性化することによって一貫性を評価する:100%=動きなし;97.5%=ほぼ凝縮してわずかな動きを有する;95%=わずかな連続する動き;92.5%=速く連続する動き。
【0046】
圧縮性試験
混合しながら既知量の水をドライミックスに添加することによって、均一なモルタルを調製する。モルタルをアクリルタイルの長さに沿って均一にこてで塗る。モルタルを10分間静置させる。モルタルの上にガラスプレートを置き、2.2キログラムの錘をそのガラスプレートの上に直接適用して、30秒間静置させる。錘を取り除き、プラスチックシートをガラスプレースの上に置く。このプラスチックシートは、その上に400個の等しいサイズの正方形に分割された10.16センチメートル×10.16センチメートル(4インチ×4インチ)の格子がマークされている。モルタルによって湿潤したガラスの割合を決定する。ガラスの90%超の湿潤が最適である。
【0047】
モルタル粘度試験
混合しながら既知量の水をドライミックスに添加することによって、均一なモルタルを調製する。ブルックフィールドシンクロ−レクトリック粘度計(モデルRVT)をブルックフィールドヘリパススタンドと併せて用い、摂氏25度(℃)でスピンドルT−Fを使用してモルタルの粘度を測定する。粘度を測定するために、モルタルを比重カップに入れ、それをスピンドルがモルタルの表面にちょうど触れるように位置付ける。スピンドルを2分間、毎分5回転(rpm)で回転させる。スピンドルが回転するにつれて、回転するスピンドルが試料を通じてらせん状の経路を確立するように、粘度計を上下に動かす。スピンドルを沈めて完全回転が完了した後に最初の粘度測定を行う。粘度計が各方向に動くにつれて4回の粘度測定値を記録し、測定値の平均を記録する。モルタルを形成した直後に粘度測定を行う。400,000〜600,000センチポイズ(cps)の範囲の粘度が最適である。
【0048】
本発明のドライミックスの別の利点は、他のドライミックス配合物、特にVAEおよびVAE/VeoVAコポリマーのRDPのみから選択されるRDPを含有するものよりも高い水浸せん断強度、および短い固化時間を有する最適な特性を有するモルタルを提供することである。
【0049】
ANSI試験標準118.4、節5.2.3に従って、水浸せん断強度を決定する。一般に、水をドライミックスとブレンドすることにより均一なモルタルを調製することによって、水浸せん断強度試験を行い、次にそのモルタルを使用して、2枚の不浸透性セラミックモザイクタイルを一緒に接着する。接着したタイルを7日間、21〜25℃の範囲の恒温、および45〜55%相対湿度の範囲の恒湿で養生する。次に、接着したタイルを水中にさらに7日間浸す。引用される試験標準の方法に従って、タイルを互いから引き離すために必要なせん断応力を決定する。
【0050】
ASTM C191に従って、既知量の水をドライミックスと混合して、最適特性を有する均一な組成物を形成することにより形成されたモルタルを、円形固化時間型に入れ、ゴムバンドで適所に保持されたプラスチックの層でモルタルを被覆することにより固化時間を決定する。Vicat針がモルタルに貫通し得る距離を測定することによって、初期固化時間および最終固化時間を特性化する。
【0051】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0052】
以下の成分を使用して、実施例(Exs)および比較例(Comp Exs)を調製する。
【0053】
[表]
【0054】
アクリルRDP Aの合成
外部アルカリ可溶性コポリマーシェルおよび低Tgコポリマーコアを含むアクリルコアシェルRDPを以下のように調製する。
【0055】
1525グラムの水、0.183グラムのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)、4.77グラムの硫酸ドデシルベンゼンナトリウム、125.1グラムのオクチルフェノールエトキシレート(例えば、TRITON(商標)X−15界面活性剤、TRTONはThe Dow Chemical Companyの商標である)、981.0グラムのメチルメタクリレート、19.06グラムのアリルメタクリレート、250.2グラムのメタクリル酸、および43.69グラムのメチルメルカプトプロプリオン酸塩を含む、第1のモノマー乳剤を調製する。均一な溶液が獲得されるまで前述の成分を一緒に混合することによって、乳剤を調製する。
【0056】
機械的攪拌器、サーモカップル、コンデンサー、およびステンレス鋼供給ポートを備える18.9リットル(5ガロン)の反応器に、1933グラムの脱イオン水を添加し、85℃に加温する。FMIポンプを使用して、15分の期間にわたって攪拌しながら、モノマー乳剤を反応器に供給する。次に、追加の159グラムの脱イオン水を添加し、50℃に冷却する。3つの水溶液を次の順序で、ショット添加(急速添加)により順次添加する:(1)151グラムの脱イオン水中15.89グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド溶液;(2)115グラムの水中24.62グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液;および(3)61グラムの水中0.095グラムの硫酸第一鉄七水和物。反応混合物は、温度を上昇させ、約20分後に約88℃でピークに至る。温度がピークに至った後、さらに2つの水溶液をショット添加により次の順序で添加する:(1)9グラムの脱イオン水中1.79グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、および(2)60グラムの水中2.58グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド。10分後、得られたラテックスを616グラムの脱イオン水、150.9グラムの水酸化ナトリウム(50%水性)、および71.5グラムの水酸化カルシウムの中和溶液で処理する。
【0057】
15分後、115グラムの脱イオン水中9.13グラムの過硫酸アンモニウム開始溶液を、ショット添加により添加する。その開始溶液に続いて、第2のモノマー乳剤をコフィード模倣溶液とともにコフィードする。コフィード開始溶液は、42.89グラムの過硫酸アンモニウムおよび732グラムの脱イオン水からなる。第2のモノマー乳剤は、1973グラムの脱イオン水、1131.4グラムの20重量%ポリビニルアルコール溶液(MOWIOL(商標)4−88、MOWIOLはPolysciences,Inc.の商標である)、50.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、3415.5グラムのブチルアクリレート、および3415.5グラムのメチルメタクリレートからなる。成分を一緒に混合して均一な溶液を獲得することによって、第2の乳剤を調製する。第2のモノマー乳剤を毎分57.5グラムの速度で、およびコフィード開始溶液を毎分4.1グラムの速度で10分間添加する。10分後、供給速度をそれぞれ毎分117.6グラムおよび9.1グラムに増加させる。総供給時間は90分である。反応温度を84℃〜86℃に維持する。
【0058】
第2のモノマー乳剤を洗浄するための159グラムの脱イオン水を反応器に添加し、コフィード開始溶液を洗浄するための20グラムの脱イオン水を反応器に添加する。洗浄水を添加しながら、反応器を75℃に冷却する。同時に、50℃に冷却しながら、tert−ブチルヒドロペルオキシド(16重量%)の水溶液を毎分1.4グラムで30分間、およびスルホキシル酸ホルムアルデヒドナトリウム塩(4重量%)を毎分3.7グラムで30分間、ラテックスに供給する。50℃で、107グラムの水性ROCIMA(商標)BT2S殺生物剤溶液、25重量%活性を10分かけて添加する(ROCIMAはRohm and Haas Companyの商標である)。
【0059】
得られたアクリルコアシェルラテックス粒子を、RDPとして噴霧乾燥により単離する。23℃で、1000グラムのラテックス(約48重量%の固体)を、365グラムの水中6.25グラムの水酸化カルシウムの水性スラリーで処理する。得られた中和ラテックスは、10〜11のpHおよび約35重量%の固体含有量を有する。ノズルを備えるMobile Minor研究室噴霧乾燥器(SU4、Spray systems,Inc.)を使用し、170〜180℃の入口温度、62〜64℃の出口温度、1平方メートル当たり6.0〜6.2キログラムの空気流量、毎分55〜65グラムのラテックス乳剤流量、および毎分2.9〜3.5グラムのカオリン粘土ケーキング防止補助流を用いて中和ラテックス乳剤を噴霧乾燥する。得られたアクリルコアシェルRDPは、RDP粒子重量に基づいて、15重量%のシェルポリマーである。シェルポリマーは、約95℃のTgを有し、コアポリマーは、約17℃のTgを有する。RDPは、Beckman Coulter LS 13 320シリーズレーザー回折粒径分析器を使用し、ISO13320−2009に従ってレーザー回折により決定されるように、16〜20マイクロメートルの平均粒径を有する。特に明記しない限り、「平均粒径」は、体積平均粒径を指す。アクリルRDPは、アクリルRDP重量に基づいて、2.59重量%の水分を含有する。アクリルRDPは、アクリルRDP重量に基づいて、12.41重量%のカオリン粘土をケーキング防止剤として含む。
【0060】
SB RDPの合成
(a)総コモノマー重量に基づいて、62重量部のスチレン、35重量部のブタジエン、および3重量部のイタコン酸(3重量%のカルボキシル化)のコモノマー含有量を有し、1500オングストロームの平均粒径および8℃のTgを有する水不溶性フィルム形成カルボキシレートスチレンブタジエン(SB)ラテックスと、(b)10重量%のポリビニルアルコール(例えば、MOWIOL(商標)4−88、MOWIOLはKuraray Europe GMBHの商標である)とを混合することによって、SB RDPを調製する。MOWIOL4−88は、4±0.8mPa*sの粘度DIN 53015(20℃で4重量%の水溶液)、87.7±1.0モル−%の加水分解の程度、1グラム当たり140±10ミリグラム水酸化カリウムのエステル値DIN 53401、10.8±0.8w/w%の残留アセチル含有量、および0.5%の最大灰含有量(NaOとして計算される))を有する。混合物は、混合物重量に基づいて、35重量%の固体含有量を有する。Mobile Minor噴霧乾燥器上に備えられた2つの流体ノズル噴霧器に混合物を圧送する。ノズルへの空気圧は、毎時6キログラムの気流に等しい50%フローで1バールに固定した。噴霧乾燥は、140℃に固定された入口温度を有する窒素環境下で行い、出口温度は、混合物の供給速度を調節することによって50℃±1℃を目標とした。同時に、カオリン粉末(KaMin HG90)を、得られる乾燥粉末重量に基づいて、10重量%であるように制御される量で、噴霧乾燥するためにケーキング防止剤としてチャンバに添加した。
【0061】
実施例(Ex)1および2、ならびに比較例(Comp Exs)A〜Eの混合物
実施例および比較例の混合物は、重量部の値に続いて、指定の水負荷におけるドライミックスおよび得られたモルタルの特性とともに表1に記載される。実施例の場合、アクリルコアシェルRDPと、VAEおよび/またはVeoVA RDPのみの組み合わせは、本発明のRDP混合物の例であり、完全混合組成物は、ドライミックス配合物の形態の本発明の混合物の例である。成分の全ての混合物の濃度は、ドライミックス配合物(「ドライミックス」)の総重量と比較して重量%で提供される。セメント、砂、炭酸リチウム、酒石酸、硫酸カルシウム、およびRDP成分を一緒に合わせることによって、ならびに2分間手で混合し、続いて混合物を23℃、相対湿度50%で24時間静置させることによって調整することにより調製する。
【0062】
モルタルを特性化するために、水負荷試験について記載されるように、最適な特性を獲得するために必要な水量の最小量で水和した後、特性化試験のそれぞれの手順に従う。
【0063】
表1に記載される実施例および比較例は、本発明の驚くべき、かつ望ましい利点を明らかにする。表1のデータは、少なくとも以下を明らかにする。
1.VAEおよびVAE/VeoVAコポリマーから選択されるRDPのみを使用するよりも、VAEコポリマーのRDPと併せてアクリルRDPを含有するドライミックスの場合、水負荷は減少し、固化時間は短縮され、水浸せん断強度は増加する。比較例Aは、VAE RDPのみを含有する。実施例1および2は、アクリルRDPおよびVAE RDPのブレンドを含有する。実施例1および2はそれぞれ、比較例Aよりも低い水負荷、短い固化時間、および優れた水浸せん断強度を同時に有する。
2.固化時間の短縮および水浸せん断強度の同時増加の傾向は、アクリルRDPをSB RDPとブレンドするときは観察されない。比較例Cは、SB RDPのみを含有するが、比較例DおよびEは、SB RDPとアクリルRDPとのブレンドを含有する。アクリルRDPをVAEコポリマーRDPとブレンドすることで観察される傾向とは対照的に、アクリルRDPとSB RDPとのブレンドは、水浸せん断強度の同時増加および固化時間の減少をもたらさない。実際に、固化時間の増加および水浸せん断強度の減少を伴う反対方向の可能な傾向があるように思われる。これは、アクリルRDPを別のRDPとブレンドする効果が予測可能でないことを明らかにする。
3.比較例Bは、アクリルRDP単独で、最短の固化時間および最高の推進せん断強度を提供することを示す。しかしながら、VAE RDPおよびSB RDPに関する上記の2つの観察は、別の種類のRDPとブレンドしたとき、アクリルRDPがどのように動作するかを予測できないことを明らかにする。本発明は、アクリルRDPをSB RDPのような別の種類のRDPとブレンドするときに生じる利益(および考えられる不利益)の欠如にかかわらず、アクリルRDPをVAE RDPおよびVAE/VeoVA RDPとブレンドすることからの利益があるという発見に起因する。
【0064】
同様の傾向は、他のアクリルRDPと、本発明の範囲内のVAEおよびVeoVA RDPから選択されるRDPとのブレンドから予想される。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例3および4ならびに比較例G:アクリルRDPおよびVAE/VeoVA RDPの混合物
実施例3および4ならびに比較例Gは、重量部の値に続いて、指定の水負荷におけるドライミックスおよび得られるモルタルの特性とともに表2に記載される。比較例Gは、比較例Gの作製から数ヶ月後に作製された比較例Fの繰り返しである。実施例3および4の場合、アクリルコアシェルRDPおよびVAE/VeoVA RDPのみの組み合わせは、本発明のRDP混合物の例であり、完全混合組成物は、ドライミックス配合物の形態の本発明の混合物の例である。成分の全ての混合物の濃度は、ドライミックス配合物(「ドライミックス」)の総重量と比較して重量%で提供される。セメント、砂、炭酸リチウム、酒石酸、硫酸カルシウム、およびRDP成分を一緒に合わせることによって、ならびに2分間手で混合し、続いて混合物を23℃、相対湿度50%で24時間静置させることによって調整することにより調製する。
【0067】
モルタルを特性化するために、水負荷試験について記載されるように、最適な特性を獲得するために必要な水量の最小量で水和した後、特性化試験のそれぞれの手順に従う。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に記載される実施例および比較例は、本発明の驚くべき、かつ望ましい利点を明らかにする。表2のデータは、VAE/VeoVAコポリマーのRDPのみを使用するよりも、VAE/VeoVAコポリマーのRDPと併せてアクリルRDPを含有するドライミックスの場合、水負荷が減少し、固化時間が短縮され、水浸せん断強度が増加することを明らかにする。
【0070】
実施例5〜10および比較例H:様々なアクリルRDPとの混合物
実施例5〜10および比較例Hは、VAEコポリマーRDPと、様々なコアTg値およびシェル厚のアクリルRDPとの混合物を探究し、表3に記載される。実施例5〜10および比較例Hの混合物は、重量部の値に続いて、指定の水負荷におけるドライミックスおよび得られるモルタルの特性とともに表3に記載される。
【0071】
実施例5〜10は、アクリルRDP Aとは異なるアクリルRDPを使用する(15重量%シェル、コアTg17℃)。実施例5〜10に使用されるアクリルRDPは、以下から選択される。
【0072】
アクリルRDP B(10重量%シェル、コアTg17℃)。反応を1ガロン反応サイズに縮小し、第1のモノマー乳剤と第2のモノマー乳剤との間の比を変更することを除いて、アクリルRDP Aと同様の方法でアクリルRDP Bを調製する。例えば、244グラムの水、0.045グラムのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)、0.76グラムのスルホン酸ドデシルベンゼンナトリウム、20.0グラムのオクチルフェノールエトキシレート(例えば、TRITON(商標)X−15界面活性剤、TRITONはThe Dow Chemical Companyの商標である)、157.0グラムのメチルメタクリレート、3.05グラムのアリルメタクリレート、40.0グラムのメタクリル酸、および6.99グラムのメチルメルカプトプロプリオン酸塩を用いて、第1のモノマー乳剤を調製する。均一な溶液が獲得されるまで前述の成分を一緒に混合することによって、乳剤を調製する。
【0073】
機械的攪拌器、サーモカップル、コンデンサー、およびステンレス鋼供給ポートを備える1リットルの反応器に、510グラムの脱イオン水を添加し、85℃に加温する。FMIポンプを使用して、15分間にわたって攪拌しながら、モノマー乳剤を反応器に供給する。次に、追加の35グラムの脱イオン水を添加し、50℃に冷却する。3つの水溶液を次の順序で、ショット添加(急速添加)により順次添加する:(1)30グラムの脱イオン水中2.54グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド溶液;(2)20グラムの水中3.94グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液;および(3)10グラムの水中0.023グラムの硫酸第一鉄七水和物。反応混合物は、温度を上昇させ、約20分後に約88℃でピークに至る。温度がピークに至った後、さらに2つの水溶液をショット添加によって次の順序で添加する:(1)24グラムの脱イオン水中0.44グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、および(2)10グラムの水中0.63グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド。10分後、得られたラテックスを104グラムの脱イオン水、24.2グラムの水酸化ナトリウム(50%水性)、および11.5グラムの水酸化カルシウムの中和溶液で処理する。
【0074】
15分後、30グラムの脱イオン水中2.23グラムの過硫酸アンモニウム開始溶液を、ショット添加によって添加する。その開始溶液に続いて、第2のモノマー乳剤をコフィード模倣溶液とともにコフィードする。コフィード開始溶液は、10.48グラムの過硫酸アンモニウムおよび162グラムの脱イオン水からなる。第2のモノマー乳剤は、488グラムの脱イオン水、223.6グラムの20重量%ポリビニルアルコール溶液(MOWIOL(商標)4−88、MOWIOLはPolysciences,Inc.の商標である)、12.2グラムのラウリル硫酸ナトリウム、834.6グラムのブチルアクリレート、および834.6グラムのメチルメタクリレートからなる。成分を一緒に混合して均一な溶液を獲得することによって、第2の乳剤を調製する。第2のモノマー乳剤を毎分14.0グラムの速度で、コフィード開始溶液を毎分1.00グラムの速度で10分間添加する。10分後、供給速度をそれぞれ毎分28.7グラムおよび2.22グラムに増加させる。総供給時間は90分である。反応温度を84℃〜86℃に維持する。
【0075】
第2のモノマー乳剤を洗浄するための35グラムの脱イオン水を反応器に添加し、コフィード開始溶液を洗浄するための10グラムの脱イオン水を反応器に添加する。洗浄水を添加しながら、反応器を75℃に冷却する。同時に、50℃に冷却しながら、tert−ブチルヒドロペルオキシド(16重量%)の水溶液を毎分2.16グラムで30分間、およびスルホキシル酸ホルムアルデヒドナトリウム塩(4重量%)を毎分1.38グラムで30分間ラテックスに供給する。50℃で、25.4グラムの水性ROCIMA(商標)BT2S殺生物剤溶液、25重量%活性を10分かけて添加する(ROCIMAはRohm and Haas Companyの商標である)。
【0076】
アクリルRDP C(30重量%シェル、コアTg17℃)。反応を1ガロン反応サイズに縮小し、第1のモノマー乳剤と第2のモノマー乳剤との間の比を変更することを除いて、アクリルRDP Aと同様の方法でアクリルRDP Cを調製する。例えば、600グラムの水、0.072グラムのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)、1.88グラムのスルホン酸ドデシルベンゼンナトリウム、49.2グラムのオクチルフェノールエトキシレート(例えば、TRITON(商標)X−15界面活性剤、TRITONはThe Dow Chemical Companyの商標である)、386.0グラムのメチルメタクリレート、7.50グラムのアリルメタクリレート、98.5グラムのメタクリル酸、および17.19グラムのメチルメルカプトプロプリオン酸塩を用いて、第1のモノマー乳剤を調製する。均一な溶液が獲得されるまで前述の成分を一緒に混合することによって、乳剤を調製する。
【0077】
機械的攪拌器、サーモカップル、コンデンサー、およびステンレス鋼供給ポートを備える1リットルの反応器に、684グラムの脱イオン水を添加し、85℃に加温する。FMIポンプを使用して、15分間にわたって攪拌しながら、モノマー乳剤を反応器に供給する。次に、追加の35グラムの脱イオン水を添加し、50℃に冷却する。3つの水溶液を次の順序で、ショット添加(急速添加)により順次添加する:(1)62グラムの脱イオン水中6.25グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド溶液;(2)48グラムの水中9.69グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液;および(3)38グラムの水中0.038グラムの硫酸第一鉄七水和物。反応混合物は、温度を上昇させ、約20分後に約88℃でピークに至る。温度がピークに至った後、さらに2つの水溶液をショット添加によって次の順序で添加する:(1)16グラムの脱イオン水中0.70グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、および(2)16グラムの水中1.02グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド。10分後、得られたラテックスを221グラムの脱イオン水、59.3グラムの水酸化ナトリウム(50%水性)、および28.1グラムの水酸化カルシウムの中和溶液で処理する。
【0078】
15分後、16グラムの脱イオン水中1.53グラムの過硫酸アンモニウム開始溶液を、ショット添加によって添加する。その開始溶液に続いて、第2のモノマー乳剤をコフィード模倣溶液とともにコフィードする。コフィード開始溶液は、7.21グラムの過硫酸アンモニウムおよび111グラムの脱イオン水からなる。第2のモノマー乳剤は、297グラムの脱イオン水、190.2グラムの20重量%ポリビニルアルコール溶液(MOWIOL(商標)4−88、MOWIOLはPolysciences,Inc.の商標である)、8.4グラムのラウリル硫酸ナトリウム、574.0グラムのブチルアクリレート、および574.0グラムのメチルメタクリレートからなる。成分を一緒に混合して均一な溶液を獲得することによって、第2の乳剤を調製する。第2のモノマー乳剤を毎分9.7グラムの速度で、コフィード開始溶液を毎分0.65グラムの速度で10分間添加する。10分後、供給速度をそれぞれ毎分19.3グラムおよび1.31グラムに増加させる。総供給時間は90分である。反応温度を84℃〜86℃に維持する。
【0079】
第2のモノマー乳剤を洗浄するための35グラムの脱イオン水を反応器に添加し、コフィード開始溶液を洗浄するための10グラムの脱イオン水を反応器に添加する。洗浄水を添加しながら、反応器を75℃に冷却する。同時に、50℃に冷却しながら、tert−ブチルヒドロペルオキシド(16重量%)の水溶液を毎分2.16グラムで30分間、およびスルホキシル酸ホルムアルデヒドナトリウム塩(4重量%)を毎分1.38グラムで30分間ラテックスに供給する。50℃で、25.4グラムの水性ROCIMA(商標)BT2S殺生物剤溶液、25重量%活性を10分かけて添加する(ROCIMAはRohm and Haas Companyの商標である)。
【0080】
アクリルRDP D(70重量%シェル、コアTg17℃)。反応を1ガロン反応サイズに縮小し、第1のモノマー乳剤と第2のモノマー乳剤との間の比を変更することを除いて、アクリルRDP Aと同様の方法でアクリルRDP Dを調製する。例えば、600グラムの水、0.072グラムのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)、1.88グラムのスルホン酸ドデシルベンゼンナトリウム、49.2グラムのオクチルフェノールエトキシレート(例えば、TRITON(商標)X−15界面活性剤、TRITONはThe Dow Chemical Companyの商標である)、386.0グラムのメチルメタクリレート、7.50グラムのアリルメタクリレート、98.5グラムのメタクリル酸、および17.19グラムのメチルメルカプトプロプリオン酸塩を用いて、第1のモノマー乳剤を調製する。均一な溶液が獲得されるまで前述の成分を一緒に混合することによって、乳剤を調製する。
【0081】
機械的攪拌器、サーモカップル、コンデンサー、およびステンレス鋼供給ポートを備える1リットルの反応器に、684グラムの脱イオン水を添加し、85℃に加温する。FMIポンプを使用して、15分間にわたって攪拌しながら、モノマー乳剤を反応器に供給する。次に、追加の35グラムの脱イオン水を添加し、50℃に冷却する。3つの水溶液を次の順序で、ショット添加(急速添加)により順次添加する:(1)62グラムの脱イオン水中6.25グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド溶液;(2)48グラムの水中9.69グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液;および(3)38グラムの水中0.038グラムの硫酸第一鉄七水和物。反応混合物は、温度を上昇させ、約20分後に約88℃でピークに至る。温度がピークに至った後、さらに2つの水溶液をショット添加によって次の順序で添加する:(1)16グラムの脱イオン水中0.70グラムのスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、および(2)16グラムの水中1.02グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド。10分後、得られたラテックスを221グラムの脱イオン水、59.3グラムの水酸化ナトリウム(50%水性)、および28.1グラムの水酸化カルシウムの中和溶液で処理する。
【0082】
15分後、16グラムの脱イオン水中1.53グラムの過硫酸アンモニウム開始溶液を、ショット添加によって添加する。その開始溶液に続いて、第2のモノマー乳剤をコフィード模倣溶液とともにコフィードする。コフィード開始溶液は、7.21グラムの過硫酸アンモニウムおよび111グラムの脱イオン水からなる。第2のモノマー乳剤は、297グラムの脱イオン水、190.2グラムの20重量%ポリビニルアルコール溶液(MOWIOL(商標)4−88、MOWIOLはPolysciences,Inc.の商標である)、8.4グラムのラウリル硫酸ナトリウム、574.0グラムのブチルアクリレート、および574.0グラムのメチルメタクリレートからなる。成分を一緒に混合して均一な溶液を獲得することによって、第2の乳剤を調製する。第2のモノマー乳剤を毎分9.7グラムの速度で、コフィード開始溶液を毎分0.65グラムの速度で10分間添加する。10分後、供給速度をそれぞれ毎分19.3グラムおよび1.31グラムに増加させる。総供給時間は90分である。反応温度を84℃〜86℃に維持する。
【0083】
第2のモノマー乳剤を洗浄するための35グラムの脱イオン水を反応器に添加し、コフィード開始溶液を洗浄するための10グラムの脱イオン水を反応器に添加する。洗浄水を添加しながら、反応器を75℃に冷却する。同時に、50℃に冷却しながら、tert−ブチルヒドロペルオキシド(16重量%)の水溶液を毎分2.16グラムで30分間、およびスルホキシル酸ホルムアルデヒドナトリウム塩(4重量%)を毎分1.38グラムで30分間ラテックスに供給する。50℃で、25.4グラムの水性ROCIMA(商標)BT2S殺生物剤溶液、25重量%活性を10分かけて添加する(ROCIMAはRohm and Haas Companyの商標である)。
【0084】
アクリルRDP E(30重量%シェル、コアTg−10℃)。第2のモノマー乳剤中のブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートの重量を834.0グラムのブチルアクリレートおよび314.0グラムのメチルメタクリレートに変更することを除いて、アクリルRDP Cと同様の方法でアクリルRDP Eを調製する。
【0085】
アクリルRDP F(30重量%シェル、コアTg50℃)。第2のモノマー乳剤中のブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートの重量を298.0グラムのブチルアクリレートおよび850.0グラムのメチルメタクリレートに変更することを除いて、アクリルRDP Cと同様の方法でアクリルRDP Fを調製する。
【0086】
表3に記載される実施例および比較例は、本発明の驚くべき、かつ望ましい利点を明らかにする。表3のデータは、広範囲のアクリルRDPシェル厚およびコアポリマーTgにわたってVAEコポリマーのRDPのみを使用するよりも、VAEコポリマーのRDPと併せてアクリルRDPを含有するドライミックスの場合、水負荷が減少し、固化時間が短縮され、水浸せん断強度が増加することを明らかにする。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例11および比較例J:低減量のRDP
実施例11および比較例Jは、RDPの量が6重量部から3重量部に低減されることを除いて、実施例1および2ならびに比較例Aと同様である。より低い総重量部のRDPにおいても、VAE RDPがアクリルRDPと混合されるとき、水負荷の減少および水浸せん断強度の増加は明らかである。表4は、実施例11および比較例Jの特性を提供し、この観察を説明する。実施例および比較例の混合物は、重量部の値に続いて、指定の水負荷におけるドライミックスおよび得られるモルタルの特性とともに記載される。
【0089】
【表4】