(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、積込機の位置、積込位置、切羽の境界など管制装置が把握できる情報を基に経路を生成する。一方、切羽周辺では掘削の際に土砂が散乱する。土砂の散乱状況は、掘削作業の進行によって変化するが、地図情報に反映されないので管制装置が把握することができない。従って、積込機の位置、積込位置、切羽の境界など管制装置が把握できる情報だけから生成した経路で無人搬送車が走行した場合、散乱する土砂などの障害物と無人搬送車とが干渉する虞があるという課題が残されている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、積込
機周辺に散乱する土砂などの障害物と干渉することなく、無人搬送車を積込位置に誘導する車両走行システム、
搬送車の停車姿勢設定装置が実行する方法、及び搬送車の停車姿勢設定装置
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、積荷の積込作業を行う積込機から、無人運転で前記積荷を搬送する搬送車に対し、前記積荷の積込位置に前記搬送車を誘導するための車両走行システムであって、前記積込機のオペレータが、前記積込位置を設定する積込位置設定装置と、前記オペレータが、設定された前記積込位置における前記搬送車の車体の向きを前記積込位置設定装置とは独立して任意に入力する向き入力装置と、設定画面を生成
する制御装置と、前記設定画面を前記オペレータに向けて表示する表示装置と、前記搬送車を、前記積込位置に前記入力された向きで停車させるための走行経路を算出する走行経路算出部と、前記走行経路に従って、前記搬送車を走行及び停止させるための車両制御を行う車両制御部と、を備え、前記積込機は、前記積込機の周辺状況を撮影するためのカメラと、積込作業を行うためのフロント作業機と、を備え、前記設定画面は、前記カメラが撮影したカメラ画像と、予め保持する積込作業中における前記積込機と前記搬送車との相対的な位置関係を示す積込パターン画像であって、前記フロント作業機の配置が異なる複数の積込パターン画像の中から選択された画像と、を用いて生成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、積込機のオペレータが、自身が把握している障害物との干渉を避けるように積込位置における搬送車の車体の向きを入力し、積込位置において入力された車体の向きで停車できるように走行経路が算出される。そして、この走行経路に従って搬送車を走行・停止させるように車両制御が実行されることで、障害物と干渉することなく、搬送車を積込位置に誘導することができる。
【0009】
より具体的には、例えば
図8に示すように、符号540aで示すダンプの車体の向きでは、散乱する土砂550とダンプとが干渉する。これに対し、ダンプの車体の向きを、積込位置(バケット位置520に相当する)を中心に符号540bで示すように回転させると、土砂550との干渉が解消する。このように、積込位置が同じであってもダンプの車体の向きを変えることで、周辺の障害物と干渉することなく、ダンプを誘導することができる。従って、設定した積込位置の再設定を行うことなく、ダンプの車体の向きを変更することで、干渉を避けてダンプを停車させることができる。
【0010】
また本発明は、上記構成において、
前記設定画面の表示制御を行う画面表示制御
部を更に備え、
前記設定画面に表示される積込パターン画像は、前記積込位置における前記搬送車の車体の向きを示す搬送車画像を含み、前記向き入力装置は、前記搬送車画像の向きを変更するための回転移動量の入力を受け付け、前記画面表示制御部は、前記設定画面において前記積込位置を示す2次元積込位置を中心に、前記搬送車画像を前記回転移動量に従って回転移動させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、オペレータが向き入力装置から入力した回転移動量に従って、設定画面上で搬送車画像を回転させることで、搬送車の車体の向きが視覚的に把握しやすくなり、向き入力操作時の操作性を向上させることができる。
【0012】
また本発明は、上記構成において、前記画面表示制御部は、前記設定画面に前記走行経路を重畳表示することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、オペレータが走行経路も考慮しながら、積込位置における搬送車の向きの入力操作を行うことができる。
【0014】
また本発明は、上記構成において、前記積込位置及び前記走行経路の周辺に位置する障害物の位置情報を参照し、前記設定画面に重畳表示された前記走行経路に沿って前記搬送車が走行すると、前記障害物と干渉することが予想される場合、及び前記設定画面
に表示された前記搬送車画像の向きに沿って前記積込位置において前記搬送車が停車すると、前記障害物と干渉することが予想される場合に、警告を発する警告部を更に備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、走行経路に沿って走行中、及び積込位置に停車したときに障害物と干渉する場合に警告を発することで、オペレータに対し、干渉を回避するように搬送車の向きを再度入力するように促すことができる。
【0016】
また本発明は、上記構成において、
前記カメラ画像の視点を上方視点に変換して監視画像を生成する監視画像生成部を更に備え、前記画面表示制御部は、前記搬送車の待機位置及び前記積込位置を含む広域画像を生成し、当該広域画像のうちの、前記監視画像の撮影範囲に対応する部分領域に、前記監視画像を重畳した合成画像を生成し、当該合成画像に前記走行経路を重畳表示することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、監視画像には積込機の周辺状況が撮影されているので、オペレータは監視画像に撮影されている積込機周辺の障害物の位置を確認しつつ、搬送車の向きの入力操作を行うことができる。さらに、設定画面には、監視画像の撮影範囲外にある待機位置と、そこから積込位置までの走行経路が表示されるので、オペレータは、車体の向きが変わることによって変化する走行経路について、障害物との干渉を確認しながら、搬送車の向きの入力操作を行うことができる。
【0018】
また本発明は、上記構成において、前記積込機は、前記
フロント作業機を操作する操作レバ
ーを含み、前記向き入力装置は、前記操作レバーに備えられ、前記操作レバーの軸方向を回転中心とするダイヤル部を含んで構成されることを特徴とする。
【0019】
積込作業を継続中は、オペレータは操作レバーから手を放すことがほとんどないが、本発明によれば、操作レバーを把持した状態を維持しつつ、ダイヤル部を親指などで回転させることで搬送車の向きの入力操作を行うことができる。これにより、積込作業を継続しつつ、搬送車の向きの入力操作が行えるので、積込作業の生産性の向上が期待できる。
【0020】
また、本発明は、積荷の積込作業を行う積込機から、無人運転で前記積荷を搬送する搬送車に対し、前記積荷の積込位置に前記搬送車を誘導するための
車両走行システムにおける車両走行制御方法であって、
前記車両走行システムは、前記積込機が備える当該積込機の周辺状況を撮影するためのカメラと、前記積込機のオペレータが、前記積込位置を設定する積込位置設定装置と、前記オペレータが、設定された前記積込位置における前記搬送車の車体の向きを前記積込位置設定装置とは独立して任意に入力する向き入力装置と、前記カメラが撮影したカメラ画像と、予め保持する積込作業中における前記積込機と前記搬送車との相対的な位置関係を示す積込パターン画像であって、前記フロント作業機の配置が異なる複数の積込パターン画像の中から選択された画像と、を用いて生成した設定画面を前記オペレータに向けて表示する表示装置と、を備え、前記積込位置設定装置を介して前記積込機が、前記積込位置の設定操作を受け付けるステップと、
前記向き入力装置を介して前記積込機が、前記積込位置における前記搬送車の車体の任意の向きの入力を、前記積込位置の設定操作とは独立した入力操作により受け付けるステップと、
前記車両走行システムが、前記搬送車を、前記積込位置に前記入力された向きで停車させるための走行経路を算出するステップと、
前記車両走行システムが、前記走行経路に従って、前記搬送車を走行及び停止させるための車両制御を行うステップと、を含むことを特徴する。
【0021】
本発明によれば、積込機のオペレータが、自身が把握している障害物との干渉を避けるように積込位置における搬送車の向きを入力し、積込位置において入力された車体の向きで停車できるように走行経路が算出される。そして、この走行経路に従って搬送車を走行・停止させるように車両制御が実行されることで、障害物と干渉することなく、搬送車を積込位置に誘導することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、積込機や走行経路周辺に散乱する土砂などの障害物と干渉することなく、無人搬送車を積込位置に誘導する車両走行システム及び車両走行制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。全図を通じて、同一の構成には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0025】
まず、
図1に基づいて本実施形態に係る車両走行システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る車両走行システム1の概略構成を示す図である。
【0026】
図1に示す車両走行システム1は、鉱山などの採石場で、土砂や鉱石の積込作業を行う積込機としてのショベル10と、土砂や鉱石を無人運転で搬送する1乃至複数の無人搬送車(以下「ダンプ」という)20−1、20−2、・・・、20−nと、採石場の近傍若しくは遠隔の管制センタ30に設置された管制部31と、を含む。ショベル10、各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−n、及び管制部31は、無線通信回線を介して互いに通信可能に接続される。なお、
図1中、符号41は、無線通信の中継局を示す。積込機は、ショベルの他、ホイールローダでもよい。
【0027】
ショベル10及び各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nは、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation System)の少なくとも3つの航法衛星50−1、50−2、50−3から測位電波を受信して自車両の位置(3次元実座標)を検出するための自車両位置検出部(
図1では図示を省略する)を備える。GNSSとして、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEOを用いてもよい。
【0028】
ショベル10は、超大型の油圧ショベルであって、走行体11と、この走行体11上に旋回可能に設けた旋回体12と、運転室13と、旋回体12の前部中央に設けたフロント作業機14と、を備えて構成される。フロント作業機14は、旋回体12に対し上下方向に回動可能に設けられたブーム15と、このブーム15の先端に回動可能に設けられたアーム16と、そのアーム16の先端に取り付けられたバケット17とを含む。アーム16には、アーム16の関節角度を検出するための角度センサ16sを備える。
【0029】
ショベル10における見通しの良い場所、例えば運転室13の上部に、無線通信回線に接続するためのアンテナ18が設置され、旋回体12の後部には航法衛星50−1、50−2、50−3から測位電波を受信するためのアンテナ19(二つ備えるが、
図1では一つのみ図示)を備える。
【0030】
旋回体12の左右の側面、後面、及び前面には、ショベル10の周辺状況を撮影するための4つのカメラが備えられる。
図1では左側面に備えられた左カメラ60L及び後面に備えられた後面カメラ60Bのみを図示しているが、右側面及び前面にもカメラが備えられる。
【0031】
運転室13の内部には、ショベル10のオペレータが、積込位置及び積込位置で停車中のダンプの車体の向き(以下、積込位置及び積込位置で停車中のダンプの車体の向きを総称して「停車姿勢」という)を設定するための停車姿勢設定装置100が備えられる。停車姿勢設定装置100は、MPU(Micro−Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)といった演算・制御部、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶部を含む制御装置、出入力装置としての積込位置設定ボタン101、向き入力装置102、フットスイッチ103、及び表示装置110(
図2参照)を含むハードウェアと、停止姿勢設定装置100の機能を実現するためのソフトウェアと、を含んで構成される。そして、制御装置で上記ソフトウェアが実行されることで、停車姿勢設定装置100の機能が実現される。
【0032】
ダンプ20−1は、車両本体を形成するフレーム21と、前輪22及び後輪23と、フレーム21の後方部分に設けられたヒンジピン(図示せず)を回動中心として上下方向に回動可能な荷台24と、この荷台24を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ(図示せず)と、を含む。また、ダンプ20−1は、見通しの良い場所、例えば、ダンプ20−1の上面前方に、無線通信回線に接続するためのアンテナ25と、航法衛星50−1、50−2、50−3から測位電波を受信するための二つのアンテナ26を備える。その他のダンプ20−2、・・・20−nは、ダンプ20−1と同一の構成であるので、説明を省略する。
【0033】
管制部31は、CPU等の演算・制御装置、ROMやRAM等の記憶装置、及び出入力装置を含むハードウェア(図示を省略)と、このハードウェア上で実行されるソフトウェアとを含んで構成される。そして、これらのハードウェアがソフトウェアを実行することにより、管制部31の機能が実現される。また、管制部31は、無線通信回線に接続するためのアンテナ32に接続される。そして、管制部31は、ショベル10、及びダンプ20−1、20−2、・・・20−nの其々と通信する。
【0034】
次に、
図2に基づいてショベル10の運転席内の概略構成を説明する。
図2は、
図1に示すショベル10の運転席内部の概略構成を示す図である。
【0035】
図2に示すように、ショベル10の運転席13内には、オペレータが着座する座席71が備えられる。座席71は、左アームレスト72L及び右アームレスト72Rを備える。左アームレスト72L及び右アームレスト72Rの各々には、オペレータが左手で把持して操作する左操作レバー73L及び右手で把持して操作する右操作レバー73Rが設けられる。
【0036】
左操作レバー73L及び右操作レバー73Rは、各操作レバー73L、73Rの前後、左右への動きが、アーム16の各関節の回転、及び旋回体12の回転に反映される。オペレータが、左操作レバー73L及び右操作レバー73Rのそれぞれを前後又は左右に動かすと、アーム16が回転、又は旋回体12が旋回することにより、バケット17が意図した位置及び姿勢に動く。このため、オペレータは、バケット17の操作中において左右の手を左操作レバー73L及び右操作レバー73Rから離すことはない。
【0037】
上記では、ショベル10の運転室13内に、左右の操作レバー73L、73Rを搭載すると説明したが、これらをショベル10の外部に設置し、オペレータがショベル10に搭乗することなく遠隔操縦できるように構成してもよい。この場合、角度センサ16sの検出データ、左カメラ60L、後面カメラ60B、右カメラ、前面カメラ(図示を省略)のカメラ画像、及び自車両位置検出部で得られる自車両位置の情報は、無線通信回線を通じて遠隔地に備えられた停車姿勢設定装置100に送信される。
【0038】
また、本実施形態では、右操作レバー73Rの最上端には、ショベル10のホーン(警笛)を鳴らすためのホーンボタン74が設けられる。本実施形態では、ホーンボタン74の隣に、バケット17の位置を設定するための積込位置設定ボタン101を備える。また、右操作レバー73Rの側面のうち、積込位置設定ボタン101の近傍には、ダンプ20−1の車両の向きを設定するためのダイヤル状の向き入力装置102を備える。向き入力装置102は、右操作レバー73Rの長軸方向を軸として回転できるダイヤル部102dを含んで構成される。
【0039】
座席71の右前面には、ショベル10及びダンプ20−1との相対位置を表示し、ダンプ20−1の車両の向きを設定する設定画面120を表示する表示装置110を備える。オペレータが左右の操作レバー73L、73Rを操作して、バケット17を所望の位置に移動させた後、積込位置設定ボタン101を押し下げると、上記の所望の位置がバケット17の位置として設定される。また、右操作レバー73Rを握った手の親指などで向き入力装置102のダイヤル部102dを回転すると、その回転移動量を停車姿勢設定装置100の制御装置150(
図4参照)が読み取り、設定画面120に表示されたダンプ画像540が連動して回転する。
【0040】
座席71の前方床面には、ダンプの停車姿勢を確定するためのフットスイッチ103が備えられる。
【0041】
次に、
図3に基づいて、積込エリア内におけるダンプの走行経路について説明する。
図3は、本実施形態に係るダンプの走行経路を示す図である。
【0042】
図3に示すように、積込エリア400内には、走行経路410が予め設定されている。走行経路410上には、入口411、出口412、ショベル10の左側積込位置LP−L、右側積込位置LP−R(Loading Point:以下「LP」と記載する。)、及び入口411からLPに向かうまでの走行経路上に、ダンプの待機位置(Queuing position:以下「QP」と記載する)として、3つの待機位置、QP1、QP2、QP3が設定されている。本実施形態では待機位置をQP1、QP2、QP3の3台分設けることとしたが、待機位置の数はこれに限定されない。
【0043】
3つの待機位置のうちLPに最も近い待機位置であるQP1からLPまでの走行経路は、アプローチパス(Approach pass:以下「APP」と記載する)として設定される。
【0044】
走行経路410は、QP1において、LP−Lに向かう左側アプローチパス(以下「APP―L」と記載する)と、LP−Rに向かう右側アプローチパス(以下「APP―R」と記載する)とに分岐する。APP―L、及びAPP―Rのそれぞれは、各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nが進行方向を変えるためのスイッチバックポイント431L、431Rが設定されるが、スイッチバック動作が不要な場合もある。
【0045】
各ダンプ20−1,20−2、・・・20−nは、入口411から積込エリア400に入り、空いている待機位置うち、LPにより近い待機位置まで進み、停車する。そして、LPに最も近い待機位置(以下「直前待機位置」という)まで走行し、そこで停車して次の指示を待つ。直前待機位置は、QP1でもよいし、スイッチバックポイント431L、431Rでもよいが、予め選択して決めておく。
【0046】
そして、直前待機位置に停車中のダンプが、管制部31から停車姿勢に応じた走行経路情報を取得すると、これに従って車両制御が実行される。
【0047】
次に、
図4乃至
図6に基づいて、
図1に示す車両走行システムの内部構成について説明する。
図4は、
図1に示すショベル10の内部構成を示すブロック図である。
図5は、
図1に示す管制部31の内部構成を示すブロック図である。
図6は、
図1に示すダンプ20−1の内部構成を示すブロック図である。
【0048】
図4に示すように、停車姿勢設定装置100の制御装置150は、自車両位置検出部1501、バケット位置算出部1502、パターン記憶部1503、監視画像生成部1504、地図情報記憶部1505、画面表示制御部1506、走行経路算出部1507、警告部1508、停車姿勢設定部1509、通信制御部1510、及び通信インターフェース(以下「通信I/F」と記載する)1511を備える。
【0049】
自車両位置検出部1501は、航法衛星50−1、50−2、50−3からアンテナ19を介して受信した測位電波を基に、自車両(ショベル10の本体)の3次元実座標を検出する。なお、本実施形態に係る車両走行システムにおいて、x方向、y方向、z方向から定義される直交3次元実座標のうち、水平面上の座標を示すx軸座標及びy軸座標があれば、停車姿勢の設定や走行経路の算出等の各処理が行えるので、z軸座標の検出は必須ではない。
【0050】
バケット位置算出部1502は、角度センサ16sの検出信号を基にアームの回転角度を算出し、これと、自車両位置検出部1501が検出した自車両の3次元実座標及び旋回体12の旋回角度を基にバケット17の3次元実座標を算出する。このバケット17の3次元実座標が積込位置となる。
【0051】
パターン記憶部1503は、積込作業中におけるショベル10とダンプ20−1との相対的な位置関係を示す積込パターン画像を複数記憶する。積込パターン画像の詳細は
図7を参照して後述する。
【0052】
監視画像生成部1504は、ショベル10の左右の側面、及び前後面に取り付けられた各カメラが撮影した画像(動画像及び静止画像のどちらでもよい)の視点を上方視点に変換した監視画像を生成する。
【0053】
具体的には、例えば斜め上方から撮影されたカメラ画像では、画像の上部、すなわちカメラから遠い場所が小さく、画像の下部、すなわちカメラから近い場所が大きく写っている。そこで各カメラから得られたカメラ画像に対し、画像上部を拡大、画像下部を縮小するような射影変換を行って、地面を真上から見たような画像(俯瞰画像)に変換する。そして、ショベル10を示す図形の左側には、左カメラ60Lが撮影したカメラ画像を射影変換した左俯瞰画像を配置し、右側、後、前のそれぞれには、右カメラ、後面カメラ60B、前面カメラが撮影したカメラ画像を射影変換した右俯瞰画像、後面俯瞰画像、前面俯瞰画像を配置して合成した監視画像を生成する。
【0054】
射影変換のための事前準備として、既知の形状の撮影対象物を各カメラで撮影し、各カメラ画像における撮影対象物が撮影された領域の形状が、撮影対象物を上方視点で見たときの形状となるように、各カメラ画像に含まれる各座標の変換量を算出し、これをキャリブレーションデータとして保存しておく。そして、監視画像の生成時に、各カメラ画像に対し、保存されたキャリブレーションデータを用いて各座標の座標変換(射影変換)を行うことで俯瞰画像を生成し、これを合成して監視画像を生成する。
【0055】
地図情報記憶部1505は、ショベル10及び走行経路の周辺に位置する切羽面等の周囲障害物の位置情報(3次元実座標)や、ダンプ20−1の走行範囲の地形情報を含む地図情報を格納する。
【0056】
画面表示制御部1506は、積込位置設定ボタン101が押されると、自車両位置検出部1501により得たショベル10本体の位置(3次元実座標)と、バケット位置算出部1502から得たバケット17の位置(3次元実座標)と、地図情報記憶部1505に格納された地図情報に含まれる切羽面などの周囲障害物の位置(3次元実座標)とを基に、パターン記憶部1503に予め記憶されている複数の積込パターンの中から、ショベル10とバケット17との実際の位置関係に最も近い積込パターン画像を一つ選定する。再度積込位置設定ボタン101が押されると、上記で選定されたものとは異なる積込パターン画像を選定する。
【0057】
そして、監視画像生成部1504が生成した監視画像に、上記で選定された積込パターン画像に沿って、ショベル本体を示すショベル画像510、バケット画像520、切羽面の境界線530、及びダンプ画像540を重畳した向き設定画像(
図9で後述する)を生成し、表示装置110に表示する。この向き設定画像を表示した画面が設定画面120(
図2参照)に相当する。なお、本実施形態では、ショベル画像510、バケット画像520、及びダンプ画像540は、視認性を向上される目的でショベル、バケット、及びダンプの形状を模式的に示す図形を用いる。よって、以後、ショベル画像510、バケット画像520、及びダンプ画像540をそれぞれショベル図形510、バケット図形520、及びダンプ図形540と記載する。これらの図形に代えて、例えば、ショベル10、バケット17、切羽面、及びダンプ20−1を上方視点から見た画像を用いてもよい。
【0058】
表示装置110に設定画面120が表示されている状態で、オペレータは必要に応じて向き入力装置102のダイヤル部102dを操作して、設定画面120上でダンプ画像540を回転させ、積込位置におけるダンプの向きを微調整する。
【0059】
走行経路算出部1507は、地図情報記憶部1505に記憶された地図情報を参照し、ダンプを設定された停車姿勢で停車させるための走行経路を算出し、画面表示制御部1506に出力する。画面表示制御部1506は、走行経路を向き設定画像に重畳表示してもよい。
【0060】
警告部1508は、地図情報記憶部1505に記憶された地図情報に含まれる障害物の位置情報を参照し、設定画面に表示された走行経路に沿って搬送車が走行すると、障害物と干渉することが予想される場合、及び設定画面で表示された搬送車画像の向きに沿って積込位置において搬送車が停車すると、障害物と干渉することが予想される場合に、警告を発する。例えば設定画面120上に、警告を示す図形や文字情報を表示してもよいし、警告音を発するように構成してもよい。
【0061】
停車姿勢設定部1509は、オペレータがフットスイッチ103を踏んだときの設定画面120上で示されたダンプの積込位置及び車体の向きを停車姿勢として確定する。
【0062】
通信制御部1510は、無線通信機器からなる通信I/F1511を介して、上記で確定された停車姿勢に対応する走行経路を示す走行経路情報を、管制部31を介して直前待機位置に停車中のダンプに無線送信する。また、管制部31から直前待機位置に停車中のダンプの自車両位置を含むダンプ情報を受信する。
【0063】
図5に示すように、管制部31は、各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nから取得した位置情報及び走行情報を基に各ダンプの位置及び走行状態(走行中/停車中)を示す管制データを生成する交通管制部311と、鉱山の切羽面の位置や形状を含む地形情報、及び鉱山内の各位置における緯度・経度を含む地図情報を格納する地図情報記憶部312と、ショベル10及び各ダンプ20−1、20−2、・・・20−nとの通信制御を行う通信制御部313と、無線通信回線に接続するための通信I/F314と、を備える。
【0064】
交通管制部311は、各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nから現在位置を示す自車両位置情報、及びダンプの走行状態(走行中/停車中)を示す走行状態情報を取得して、管制データを生成する。具体的には、交通管制部311は、地図情報に各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nの現在位置、予め定められたダンプの走行経路、走行経路上に設定されたダンプの待機位置、ショベル10の積込位置を重畳して管制データを生成し、ダンプの走行状態を監視する。上記の構成に代えて、管制部31が各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nから取得した自車両位置情報の単位時間当たりの変化量を基に、各ダンプ20−1、20−2、・・・、20−nの走行状態を算出してもよい。この場合、走行状態情報の送受信は不要である。
【0065】
地図情報記憶部312は、ショベル10の地図情報記憶部1505に格納された地図情報と同じものを記憶する。
【0066】
通信制御部313は、通信I/F314を介して、ダンプから自車両位置情報及び走行状態情報を受信して交通管制部311に出力し、ショベル10からの照会に対して直前待機位置に停車中のダンプ情報を送信する。また、ショベル10から受信した走行経路情報を、直前待機位置に停車中のダンプに送信する。
【0067】
図6に示すように、ダンプ20−1は、航法衛星50−1、50−2、50−3(
図1参照)からの測位電波を受信して自車両の現在位置を取得する自車両位置検出部201と、ショベル10及び管制部31との通信制御を行う通信制御部202と、通信I/F203と、地図情報を記憶する地図情報記憶部204と、走行経路情報に従ってダンプを動作させるための車両制御を行う車両制御部205と、ダンプの走行装置及び制動装置を含む車両駆動装置206と、を含む。
【0068】
通信制御部202は、自車両位置検出部201が算出したダンプの現在位置を示す自車両位置情報、車両制御部205が車両駆動装置206の駆動状態(例えばタイヤの回転数)を検知して生成した走行状態情報を通信I/F203を介して管制部31に送信する。また、管制部31を介してショベル10から走行経路情報を受信する。
【0069】
地図情報記憶部204は、ショベル10に周辺に位置する切羽面などの周囲障害物の位置(3次元実座標)や、ダンプ20−1の走行範囲の地形情報を含む地図情報を格納する。この地図情報は、ショベル10及び管制部31で記憶される地図情報と同一ものである。
【0070】
車両制御部205は、受信した走行経路情報に沿って走行するように、車両駆動装置206に対し、加減速の制御及びステアリング角度の制御を行う。その際、車両制御部205は、地図情報記憶部204に記憶された地図情報を参照して、ダンプ20−1の現在位置と、地図情報に示された各地点(ノード)の位置情報とを照合して位置ずれ量を算出し、ダンプ20−1の進行方向を修正する。
【0071】
各ダンプ20−1、20−2、20−nが送受信する情報には、各ダンプを固有に識別可能な識別情報を含む。これにより、例えば、管制部31が複数あるダンプのうち、どのダンプ20−1から受信した情報であるかを判別できる。また、ショベル10及び管制部31から受信した情報が、自車両に対するものかそうでないかを判別できる。識別情報として、例えば、通信I/F203に一意に割り当てられたMACアドレス(Media Access Control address)を用いてもよい。これにより、相手方を特定せずに各情報を無線送信した場合、無線を受信した各ダンプ20−1、20−2、・・・20−nは、自車両が受信すべき情報であるか否かを判断することができる。そして、自車両に対して送信された情報であれば受信し、他車両に対して送信された情報であれば廃棄する。同様に、ショベル10及び管制部31が送受信する情報にも、これらを固有に識別可能な識別情報を含む。
【0072】
次に
図7を参照して、パターン記憶部に記憶される積込パターン画像について説明する。
図7は、
図4のパターン記憶部1503に記憶された積込パターン画像の一例を示す説明図である。
【0073】
本実施形態では、
図7に示す6つの積込パターン画像501〜506がパターン記憶部1503に記憶される。各積込パターン画像501〜506は、ショベル本体を示すショベル図形510、バケットの位置を示すバケット図形520、切羽面を示す境界線530、及びダンプの位置を示すダンプ図形540を含む。
【0074】
6つの積込パターン画像501〜506は、ショベル図形510とダンプ図形540と相対位置を基に、左ローディング、右ローディング、ベンチローディングの三種類に分類され、さらに各分類において、ショベル図形510に対するダンプ図形540の向きに応じて候補1、候補2の二つのパターンがある。
【0075】
積込パターン画像501は、バケット図形520の位置が、切羽面の境界線530に対向してショベル図形510の左側に表示された左ローディングのパターンであって、ショベル図形510のアーム510aの長軸方向と、ダンプ図形540の前後方向とが直角の関係(候補1)にある積込パターン画像を示す。
【0076】
積込パターン画像502は、左ローディングのパターンであって、ショベルのアーム510aの長軸方向とダンプ図形540の前後方向とが平行の関係(候補2)にある積込パターン画像を示す。
【0077】
積込パターン画像503は、バケット図形520の位置が、切羽面の境界線530に対向してショベル図形510の右側に表示された右ローディングのパターンであって、ショベル図形510のアーム510aの長軸方向と、ダンプ図形540の前後方向とが直角の関係(候補1)にある積込パターン画像を示す。また、積込パターン画像504は、右ローディングのパターンであって、ショベル図形510のアーム510aの長軸方向とダンプ図形540の前後方向とが平行の関係(候補2)にある積込パターン画像を示す。
【0078】
積込パターン画像505は、ショベル図形510が切羽面の境界線530の外側にあり、バケット図形520が境界線530の内側にあるベンチローディング(積込機が切羽の崖上にいて、崖下の搬送車に積み込む方式)のパターンであって、ショベル図形510のアーム510aの長軸方向と、ダンプ図形540の前後方向とが直角の関係(候補1)にある積込パターン画像を示す。また、積込パターン画像506は、ベンチローディングのパターンであって、ショベル図形510のアーム510aの長軸方向とダンプ図形540の前後方向とが平行の関係(候補2)にある積込パターン画像を示す。
【0079】
予め記憶されている積込パターン画像では、ダンプ図形と切羽面の境界線とが干渉する場合には、画
面表示制御部1506が、干渉しないようにダンプ図形の向きを微調整した形で表示するようにしてもよい。
【0080】
次に
図8乃至
図12に基づいて、本実施形態に係る設定画面の表示例について説明する。
図8は、
図2に示す設定画面120の表示例を示す説明図である。
図9は、
図8の設定画面120aにおいて干渉警告表示を行った状態を示す説明図である。
図10は、走行経路を重畳表示した設定画面を示す説明図である。
図11は、監視画像と広域画像とを合成した設定画面を示す説明図である。
【0081】
図8に示す設定画面120aは、監視画像にショベル図形510、バケット図形520、切羽面の境界線530、及びダンプ図形540a又は540bを重畳表示した向き設定画像を表示した状態を示す。設定画面120aに示すように、例えば切羽から崩れた土砂が
図8の符号550として示すような位置に散乱していた場合、ダンプ図形540aで示す向きにダンプ20−1が進入すると、散乱する土砂と干渉する虞がある。そこで、オペレータは向き入力装置102を操作して、向き設定画像(設定画面)における積込位置に対応する位置(2次元積込位置)を中心に、ダンプ図形540aで示す向きからダンプ図形540bで示す向きに回転させる。ここで、ダンプ図形540a、540bの向きは、向き入力装置102のダイヤル回転操作量に連動して回転して表示するようにしておき、あたかもダイヤル部102dで実際に進入する予定のダンプ20−1を回転させているような感覚で操作できるようにしておく。これにより、オペレータは直感的で分かりやすい方法で搬送車の向きを微調整することができる。
【0082】
また、このような微調整の操作において、ダンプ図形540a、540bと切羽などの地図情報記憶部1505に記憶されている周囲障害物とが干渉する場合は、
図9に示すように、警告部1508が設定画面120aに干渉警告図形561や文字情報562を重畳表示して、干渉が生じていることをオペレータに伝えてもよい。これにより、オペレータが不注意で不適切な向きを設定することを防ぐことができる。
【0083】
更に
図10に示す設定画面120bのように、ダンプ20−1の予想される走行経路570a、570bを重畳表示してもよい。走行経路570aは、ダンプ図形540aの向きに対応した走行経路である。ダンプ図形540aが回転してダンプ図形540bの向きに代わると、走行経路570aは走行経路570bに更新表示される。
【0084】
また、設定画面120bでは、直前待機位置のダンプの位置を示すダンプ図形545を表示することで、走行経路全体をオペレータが把握することができる。これにより、オペレータはダンプの走行経路も考慮しながら適切な積込位置と向きを設定することができる。
【0085】
また、
図11に示す設定画面120cのように、直前待機位置(QP1)に停車中のダンプを示すダンプ図形548と、設定された積込位置に停車中のダンプを示すダンプ図形540a又は540bとを一画面で表示してもよい。この場合、監視画像121にはショベル10の周辺領域が撮影されており、直前待機位置(QP1)までは4つのカメラの撮影範囲に含まれないことがある。そこで、画面表示制御部1506は、ショベル、切羽面、及び直前待機位置(QP1)を含む広域画像(グラフィカル画像)122を生成し、当該広域画像122のうちの、監視画像121の撮影範囲に対応する部分領域に、監視画像121を重畳した合成画像を生成する。そして合成画像に走行経路を重畳して向き設定画像を生成し、表示装置110に表示する。
【0086】
このとき、画面表示制御部1506は、監視画像121と広域画像122との縮尺が一致させる。例えば、ショベル10の3次元実座標と直前待機位置に停車中のダンプ20−1の3次元実座標とを基に、ショベル10及びダンプ20の3次元実座標上の実際の距離Dを算出する。そして、この距離D[m]を設定画面120c上で表示する際のピクセル数Pnを定め、下式(1)により、1ピクセルあたりの実際の距離を求める。
d=D/Pn・・・(1)
但し、d:[m/pixel]
【0087】
式(1)を満たすように、監視画像121及び広域画像122を拡大・縮小することで両者の縮尺が一致し、オペレータが設定画面120cを視認した時に、直前待機位置(QP1)から積込位置までの距離、走行経路、及び車体の向きを把握しやすくなる。そして、直前待機位置(QP1)から積込位置までの走行経路も考慮して、積込位置におけるダンプの車体の向きを設定することができる。
【0088】
図11の設定画面120cによれば、監視画像121の撮影範囲外の走行経路570a、570bも表示できるので、走行経路570
aではスイッチバックポイントにおいてダンプ図形590
aが切羽面の境界線530と干渉していることがわかる。そこで、積込位置のダンプ図形540aをダンプ図形540bに回転して走行経路570aを走行経路570bに示す経路に変更する。これにより、スイッチバックポイントにおいてもダンプ図形590bが切羽面の境界線530に干渉しなくなる。
【0089】
次に
図12を参照して、本実施形態に係る車両走行システムの処理の流れを説明する。
図12は、本実施形態に係る車両走行システム1の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0090】
図12に示すように、ダンプ20−1の稼働中、ダンプ20−1の自車両位置検出部201は現在位置を算出して自車両位置情報を生成し、車両制御部205は走行状態情報を算出する。これらの自車両位置情報及び走行状態情報は、管制部31に送信される(S101)。交通管制部311は、それらを基に各ダンプの位置及び走行状態を含む管制データを生成する(S102)。
図12では説明の便宜上、S101及びS102は1回分の処理を図示しているが、1台以上のダンプが稼動中は、交通管制部311は管制データの生成を継続して行う。
【0091】
この状態で、ショベル10のオペレータは、左右の操作レバー73L、73Rを操作して、ショベル10のバケット17を積込位置に移動し、その状態で積込位置設定ボタン101を操作する、又はショベル10のオペレータがフットスイッチ103を踏む(S103)。この積込位置設定ボタン101の操作又はフットスイッチ103の操作をトリガーとして、制御装置150におけるダンプ20―1の停車姿勢及び向きを設定するための停車姿勢設定処理が開始する(S104)。
【0092】
停車姿勢設定処理の実行中、制御装置150から交通管制部311に対し、管制データの照会を行い、直前待機位置に停車中のダンプ情報を取得する。またオペレータは、積込位置設定ボタン101の再操作及び向き入力装置102の操作を行う場合があるが、その詳細については後述する。
【0093】
停車姿勢設定処理により確定された停車姿勢に対応した走行経路情報が、
管制部31を介してダンプ20−1に送信される(S105)。
【0094】
ダンプ20−1は、その走行経路に沿って走行・停車するように車両制御を行い、積込位置への移動を開始する(S106)。
【0095】
次に
図13に基づいて、停車姿勢設定処理について説明する。
図13は、停車姿勢設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0096】
オペレータによる積込位置設定ボタン101の操作を待機している状態で、積込位置設定ボタン101のボタン操作があった場合(S103−1/Yes)、画
面表示制御部1506から交通管制部311に照会して、直前待機位置に停車中のダンプの自車両位置情報(ダンプ情報)を取得する(S201−1)。
【0097】
次いで、自車両位置検出部1501によりショベル10の本体の位置及び向き(旋回体12の旋回角度)を算出する(S202)。更に、バケット位置算出部1502は、これらショベル10の本体の位置及び向き及び角度センサ16sからアームの角度を算出し、バケット位置(3次元実座標)を算出する(S203)。
【0098】
画
面表示制御部1506は、ショベル10の本体の位置及び向き、バケット位置、及び地図情報記憶部1505に記憶されている地図情報に含まれる切羽などの周囲障害物の位置を基に、パターン記憶部1503に予め記憶されている複数の積込パターン画像の中から、現状に最も近い積込パターン画像を選定する(S204)。すなわち、ショベル10本体の位置、バケット17の位置、及び周囲障害物の位置から、左ローディング、右ローディング、又はベンチローディングのいずれかを選択し、このうちのダンプの向きがアームに対して直角な方向となる候補1を最初に選定する。積込パターンの選択は、最初に候補1の積込パターンを選択し、この状態で再度積込位置設定ボタン101が押されると候補2が選択され、更に再度積込位置設定ボタン101が押されると、候補1の積込パターンが選択されるように構成してもよい。
【0099】
走行経路算出部1507は、ダンプの現在位置と向き、選定されている積込位置と向きとを基に、予想されるダンプ20−1の走行経路や切り返し位置を算出する(S205)。
【0100】
監視画像生成部1504は、4つのカメラ画像を基に監視画像を生成し、画
面表示制御部1506が監視画像に、ショベル図形510、バケット画像520、切羽面の境界線530、及びダンプ図形540を重畳して表示装置110に表示する(S206)。更に走行経路570a、570bや、直前待機位置におけるダンプ図形54
8またスイッチバックポイントにおけるダンプ図形590a、590bを重ね合わせてもよい。
【0101】
警告部1508は、地図情報記憶部1505の地図情報を参照し、スイッチバックポイントや走行経路上のダンプ図形が、切羽などの周囲障害物と干渉するか否かを判定し、干渉する場合は(S207/Yes)、警告を示す図形561や文字情報562(
図9参照)等を用いて、干渉警告表示を行う(S208)。
【0102】
干渉がない場合(S207/No)、及び干渉警告表示(S208)の後、オペレータによる向き入力装置102の操作があった場合は(S209/Yes)、向き入力装置102の操作量に応じて設定画面上のダンプ図形540の向きを変更し(S210)、ステップS205へ戻って走行経路を再算出する。
【0103】
向き入力装置102の操作がなく(S209/No)、オペレータによる積込位置設定ボタン101の操作があった場合は(S211/Yes)、画
面表示制御部1506は、現在選択されている積込パターン画像に代えて次の候補を選定し(S212)、ステップS205へ戻って走行経路を再算出する。前の選択候補が積込パターン画像における最後の候補である場合は、最初の候補を選択する。
【0104】
オペレータによる積込位置設定ボタン101の操作がなく(S211/No)、オペレータによるフットスイッチ103の操作があった場合は(S213/Yes)、表示装置110に表示中のダンプの積込位置及び車体の向きを停車姿勢として確定し、その停車姿勢に対応した走行経路を示す走行経路情報を生成する(S214)。その後、ステップS105において、走行経路情報を、管制部31を介してダンプ20−1に無線送信する(S105)。オペレータによるフットスイッチ103の操作がない場合は(S213/No)、ステップS205へ戻って走行経路を再算出する。
【0105】
オペレータによる積込位置設定ボタン101の操作を待機している状態において、フットスイッチ103の操作があった場合は(S103−1/No、S103−2/Yes)、直前待機位置のダンプ情報を取得する(S201−2)。そして、前回設定した停車姿勢(これは制御装置150のRAM等に一時的に保存されている)を読み出し、この停車姿勢を今回の停車姿勢として確定し、これに対する走行経路を算出して走行経路情報を生成する(S215)。その後、管制部31を介して走行経路情報をダンプ20−1に無線送信する(S105)。積込位置設定ボタン101及びフットスイッチ103の操作がなければ(S103−1/No、S103−2/No)、再度、ステップS103−1へ戻り、積込位置設定ボタン及びフットスイッチの入力操作の待機状態となる。
【0106】
本実施形態によれば、オペレータがショベルの周辺状況を確認したうえで、ダンプの積込位置及び向きを設定することができるので、地図情報には反映されない障害物との干渉を避けてダンプを積込位置に向けて走行及び停車させることができる。特に、監視映像を重畳表示する場合には、オペレータから死角になる場所に散乱した土砂などの障害物の位置関係も考慮してダンプの向きを設定することができる。また走行経路を重畳表示する場合には、走行経路上での干渉も考慮してダンプの向きを設定することができる。
【0107】
更に
、積込位置設定ボタン、及び向き入力装置を操作レバーに設けることにより、ショベルのオペレータは操作レバーから手を離すことなく積込位置及びダンプの向きの設定・操作を行うことができる。
【0108】
また、積込位置及びダンプの向き
を確定するための操作装置は、フットスイッチを用いて別途構成する。フットスイッチの操作時は、ボタンやスイッチを手で操作するときよりも振動の影響による誤動作が生じにくいので、意図しない積込位置及びダンプの向きの確定操作が行われるといった不具合を防ぐことができる。
【0109】
更に、ダンプが障害物と干渉する際に警告部が警告を発することで、オペレータに対し、障害物との干渉を解消するように車体の向きを再入力させるように促すことができる。
【0110】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。例えばフットスイッチの代わりに積込位置設定ボタンの隣、あるいは左右の操作レバーの一方に積込位置設定ボタンを設け、他方のレバーに積込位置及びダンプの向きの確定操作を行うための操作ボタンを設けてもよい。また、積込位置設定ボタン、及び向き入力装置は、必ずしも同一のレバー上になくても良い。但し、同じようなボタンが左右のレバー上に並ぶことを回避できること、積込位置設定ボタン、及び向き入力装置が1箇所に集約できること、最終的な決定は足で行うという関連付けで覚えられることなどから、上記実施形態で説明した構成とした方がオペレータにとってより分かりやすいユーザインタフェースとすることができる。
【0111】
また、上記実施形態において、警告部は必須ではない。オペレータが走行経路やダンプ図形と障害物との干渉の有無を自ら判断するように構成してもよい。
【0112】
また、上記では、無人搬送車を例に挙げて説明したが、有人搬送車に本発明を適用してもよい。これにより、搬送車のオペレータからは死角となる位置に障害物がある場合に、それとの干渉を避けることができる。有人搬送車に本発
明を適用する場合は、車両制御部に代えて走行経路を表示する表示装置を備え、オペレータがその走行経路に沿って搬送車を走行・停車させるように運転する。これにより、有人搬送車においても、障害物との干渉を避けることができる。