(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のチタンニオブ酸化物負極活物質の製造方法は、ニオブ化合物と、硫酸チタン及び/又は硫酸チタニルと、水を混合及び撹拌して、pHが7以上の混合液Aを得る工程(I)、
得られた混合液Aを強撹拌しながら水熱反応に付して、混合液Bを得る工程(II)、
得られた混合液Bを固液分離し、固形分を得る工程(III)、並びに
得られた固形分を水で洗浄した後、焼成してチタンニオブ酸化物を得る工程(IV)
を備える。
【0012】
工程(I)は、ニオブ化合物と、硫酸チタン及び/又は硫酸チタニルと、水を混合及び撹拌して、pHが7以上の混合液Aを得る工程である。工程(I)において用いるニオブ化合物は、後の工程でチタンニオブ酸化物を得るにあたり、ニオブ源として用いる化合物である。かかるニオブ化合物としては、反応性や操作性等の観点から、100gで15℃の水に対する溶解度が、好ましくは0.2〜50gであり、より好ましくは0.3〜50gであるものが望ましい。具体的には、塩化ニオブ、シュウ酸ニオブアンモニウム、ニオブエトキシド、ニオブブトキシドが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、価格面等の入手容易さの観点から、塩化ニオブ及び/又はシュウ酸ニオブアンモニウムが好ましい。
かかるニオブ化合物の含有量は、ニオブ化合物の種類によっても変動し得るが、工程(I)において得られる混合液A中に、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは15〜70質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%である。
【0013】
工程(I)において用いる硫酸チタン及び/又は硫酸チタニルであるチタン化合物は、後の工程でチタンニオブ酸化物を得るにあたり、チタン源として用いる化合物であり、ニオブ化合物との反応性も高く、得られるチタンニオブ酸化物の微細化を効果的に図ることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種双方とも用いてもよい。なかでも、反応性や操作性等の観点から、硫酸チタニルが好ましい。
【0014】
また、かかるチタン化合物は、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよい。異種金属(M)の含有量は、より良好な充放電特性を確保する観点から、チタン化合物全量中に、好ましくは33質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0015】
かかるニオブ化合物及びチタン化合物の合計含有量は、工程(I)において得られる混合液A中に、好ましくは0.1〜6.0mol/Lであり、より好ましくは0.5〜5.0mol/Lであり、さらに好ましくは0.8〜4.5mol/Lである。
【0016】
また、工程(I)において得られる混合液A中におけるニオブとチタンとのモル比(Nb/Ti)は、好ましくは1.8〜5.4であり、より好ましくは1.85〜5.3であり、さらに好ましくは1.9〜5.2である。より具体的には、本発明で得られるチタンニオブ酸化物が後述する式(1)で表される場合、混合液A中におけるニオブとチタンとのモル比(Nb/Ti)は、好ましくは1.8〜2.4であり、より好ましくは1.85〜2.3であり、さらに好ましくは1.9〜2.1である。また、本発明で得られるチタンニオブ酸化物が後述する式(2)で表される場合、混合液A中におけるニオブとチタンとのモル比(Nb/Ti)は、4.6〜5.4であり、より好ましくは4.7〜5.3であり、さらに好ましくは4.8〜5.2である。
【0017】
工程(I)では、上記ニオブ化合物、及びチタン化合物とともに、水を混合及び撹拌して混合液Aを調製する。混合液Aにおける水の含有量は、適宜用いるpH調整剤等、その他の含有成分に含まれる水分量をも含む全水分量を意味し、その他各成分の分散性や反応性を確保する観点から、工程(I)において得られる混合液A中に、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜80質量%である。
【0018】
工程(I)における混合液AのpHは、目的物であるチタンニオブ酸化物を良好に得る観点、及び効果的に結晶の微細化を図る観点から、好ましくは7以上であり、より好ましくは7〜12であり、さらに好ましくは8〜11である。なお、かかるpHの値は、混合液Aの温度が25℃のときの値を意味し、適宜アンモニア水等のpH調整剤を用いて調製してもよい。
【0019】
工程(II)は、工程(I)で得られた混合液Aを強撹拌しながら水熱反応に付して、混合液Bを得る工程である。混合液Aを強撹拌するとは、撹拌強度が強い条件、すなわち激しく混合液Aを撹拌することを意味し、水熱反応に付している間も強撹拌し続けるのが好ましい。この強攪拌によって、所定モル比のニオブとチタンが、水熱反応容器内の各所で高頻度かつ均一に接触することから、後述する式(1)又は式(2)で示される目的とするチタンニオブ酸化物を効率的に生成できる。工程(II)において、混合液Aは水熱反応に付することから耐圧容器に収容されるが、かかる混合液Aを強撹拌するにあたり、例えばポンプを用いる場合、耐圧容器内の混合液Aをポンプで抜き出し、かかるポンプから排出される混合液Aを再度耐圧容器内に戻せばよい。この際、耐圧容器内壁面での混合液Aの流速が、好ましくは15cm/s以上であり、より好ましくは15〜80cm/sであり、さらに好ましくは15〜70cm/sとなるよう、調整しながらポンプでの処理を繰り返すのが好ましい。また、撹拌羽根を用いる場合にも、耐圧容器内壁面での混合液Aの流速が、好ましくは15cm/s以上であり、より好ましくは15〜80cm/sであり、さらに好ましくは15〜70cm/sとなるよう、撹拌羽根を回転させればよい。さらに、ニオブとチタンの均一な混合状態を生じさせるために、耐圧容器内に邪魔板を設置したり、攪拌翼を間欠回転させたり逆回転させたりすることによって、混合液Aに擾乱を生じさせてもよい。
【0020】
水熱反応に付すまでの強撹拌にかける時間は、得られるチタンニオブ酸化物結晶の微細化を効果的に図る観点から、好ましくは0.05〜1時間であり、より好ましくは0.05〜0.5時間であり、さらに好ましくは0.1〜0.2時間である。またこの際における混合液Aの温度は、加温することなく常温であるのが望ましく、具体的には、好ましくは5〜50℃であり、より好ましくは10〜40℃である。
【0021】
次いで、強撹拌した後の混合液Aにつき、そのまま強撹拌を続けながら水熱反応に付す。水熱反応の温度は、好ましくは100〜200℃であり、より好ましくは100〜180℃であり、さらに好ましくは100〜160℃である。また水熱反応時の圧力は、好ましくは0.3〜0.9MPaであり、より好ましくは0.3〜0.6MPaである。水熱反応時間は、好ましくは0.1〜6時間であり、さらに好ましくは0.5〜5時間である。水熱反応に付した後に得られる混合液Bは、チタンニオブ酸化物前駆体を含む懸濁液であり、後述する工程を経ることにより、チタンニオブ酸化物を得ることができる。
【0022】
工程(III)では、工程(II)で得られた混合液Bを固液分離し、固形分を得る工程である。チタンニオブ酸化物前駆体は、この固形分として得られる。固液分離に用いる装置としては、例えば、フィルタープレス機、遠心濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的に固形分を得る観点から、フィルタープレス機を用いるのが好ましい。
【0023】
工程(IV)では、工程(III)で得られた固形分を水で洗浄した後、焼成する工程である。焼成する前に、予め水で洗浄することにより、不純物を効果的に除去しつつ、焼成後に得られるチタンニオブ酸化物の微細化を効果的に図ることができる。洗浄の際には、固形分の乾燥質量1質量部に対し、好ましくは8〜60質量部、より好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは10〜40質量部の水を用いる。また、洗浄に用いる水の温度は、得られるチタンニオブ酸化物を負極材料として用いた電池の放電容量を効果的に高める観点から、好ましくは10〜80℃であり、より好ましくは10〜70℃である。
【0024】
次いで、洗浄した固形分を焼成することにより、結晶性が高く、かつ微細化されたチタンニオブ酸化物を得ることができる。焼成温度は、得られるチタンニオブ酸化物の結晶性を高めつつ、微細化された結晶を得る観点から、好ましくは600〜1200℃であり、より好ましくは600〜1100℃であり、さらに好ましくは700〜1000℃である。また焼成時間は、同様の観点から、好ましくは0.3〜7時間であり、より好ましくは0.5〜6時間である。なお、焼成する際の雰囲気は、チタンの価数を+4価とするために酸化雰囲気下で焼成する必要があり、簡便性、経済性の観点から大気雰囲気での焼成が最も好ましい。焼成に用いる装置としては、焼成雰囲気及び温度の調整が可能な物であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式のものも使用することができる。かかる装置としては、例えば、外熱キルンやローラーハース等の焼成炉が挙げられる。
【0025】
このように、工程(I)から工程(IV)を経るに至るまで、特に溶媒としてエタノールを用いることなく、チタンニオブ酸化物を得ることができる。そのため、工業的生産への活用度が大きく、有用性の高い製造方法を実現することができる。
【0026】
本発明により得られるチタンニオブ酸化物は、具体的には、例えば、下記式(1)又は(2)で表され、単斜晶構造を有する化合物である。
Ti
1-xM
xNb
2O
7 ・・・(1)
(式(1)中、MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。xは、0≦x<0.1を満たす数を示す。)
Ti
2-yM
yNb
10O
29 ・・・(2)
(式(2)中、MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。yは、0≦y<0.2を満たす数を示す。)
上記チタンニオブ酸化物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、式(1)で表される場合は、Ti
2Nb
10O
29及び/又はTiO
2の夾雑相を含んでいてもよく、式(2)で表される場合は、TiNb
2O
7及び/又はTiO
2の夾雑相を含んでいてもよい。これら夾雑相の含有率は、優れた充放電特性を発揮する観点から、チタンニオブ酸化物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。なお、かかる夾雑相の含有率とは、得られたチタンニオブ酸化物について、X線回折−リートベルト法を適用して求めた定量値を意味する。
【0027】
本発明により得られるチタンニオブ酸化物は、充放電効率及び電池容量が高い電池を得る観点から、そのBET比表面積が、好ましくは1.0m
2/g以上であり、より好ましくは1.2m
2/g以上であり、さらに好ましくは1.5m
2/g以上である。
【0028】
本発明により得られるチタンニオブ酸化物は、その結晶子サイズが、好ましくは25〜250nmであり、より好ましくは25〜200nmであり、その結晶性も高いものである。また、チタンニオブ酸化物の平均粒子径は、50〜900nmであり、より好ましくは50〜800nmである。なお、チタンニオブ酸化物の結晶子サイズは、Cu−kα線による回折角2θの範囲が10°〜80°のX線回折プロファイルについて、シェラーの式を適用して求めた値を意味する。ここで、得られたチタンニオブ酸化物が、例えばTiO
2等の夾雑相を含有する場合は、結晶構造パラメーター(ICDDデータベース)に基づいて計算されたそれら夾雑相のX線回折プロファイルを、得られたチタンニオブ酸化物混合体のX線回折プロファイルから差し引いて求めたTiNb
2O
7のX線回折プロファイルについて、シェラーの式を適用して求めた値を意味する。
【0029】
上記チタンニオブ酸化物は、そのままでも二次電池用の負極活物質として用いることができるが、チタンニオブ酸化物の表面に炭素を担持させて、より十分なイオン伝導性を確保して優れた電池特性を発現させる観点から、本発明のチタンニオブ酸化物負極活物質の製造方法では、さらに、工程(IV)を経て得られたチタンニオブ酸化物に水不溶性導電性炭素材料及び/又は水溶性炭素材料を添加し、焼成する工程(V)を備える。これにより、水不溶性導電性炭素材料や水溶性炭素材料が炭素源として作用し、焼成されることによって炭化され、水不溶性導電性炭素材料由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素として、チタンニオブ酸化物の表面に担持されることとなる。
【0030】
水不溶性導電性炭素材料とは、25℃の水100gに対する溶解量が、水不溶性導電性炭素材料の炭素原子換算量で0.4g未満である水不溶性の炭素材料であって、焼成等せずともそのもの自体が導電性を有する炭素源である。かかる水不溶性導電性炭素材料としては、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、及びサーマルブラックから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。グラファイトとしては、人造グラファイト(鱗片状、塊状、土状、グラフェン)、天然グラファイトのいずれであってもよい。
【0031】
水溶性炭素材料とは、25℃の水100gに、水溶性炭素材料の炭素原子換算量で0.4g以上、好ましくは1.0g以上溶解する炭素材料を意味し、上記式(A)〜(C)で表される酸化物表面を被覆する炭素源として機能する。かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて炭素源として効果的に機能させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリンが好ましく、グルコースがより好ましい。
【0032】
水不溶性導電性炭素材料及び水溶性炭素材料の炭素原子換算分は、水不溶性導電性炭素材料及び炭化された水溶性炭素材料が上記酸化物に担持された炭素として、得られるチタンニオブ酸化物負極活物質中に共存することとなる。かかる水不溶性導電性炭素材料及び水溶性炭素材料の炭素原子換算量は、これら水不溶性導電性炭素材料及び水溶性炭素材料由来の炭素の合計担持量に相当し、チタンニオブ酸化物負極活物質中に、合計で、好ましくは0.2〜20.0質量%であり、より好ましくは0.2〜17.5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜15.0質量%である。
【0033】
工程(V)における焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下にて行うのが好ましく、また焼成温度は、好ましくは500〜900℃であり、より好ましくは550〜850℃であり、さらに好ましくは600〜800℃である。また、焼成時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは30分〜4時間とするのがよい。
【0034】
得られたチタンニオブ酸化物を負極活物質として用いて二次電池を製造する方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、かかる負極活物質を結着剤や溶剤等の添加剤とともに混合して塗工液を得る。この際、必要に応じて、さらに導電助剤を添加して混合してもよい。かかる結着剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー等が挙げられる。また、かかる導電助剤としては、特に限定されず、黒鉛以外の公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、繊維状炭素等が挙げられる。次いで、かかる塗工液を銅箔等の負極集電体上に塗布し、乾燥させて負極とする。
【0035】
得られる二次電池用負極活物質は、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の負極として非常に優れた放電容量及びサイクル特定を発揮する点で有用である。かかる負極を適用できる二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0036】
ここで、正極については、リチウムイオン又はナトリウムイオン等、所定の金属イオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料を水熱反応させることにより得られる各種オリビン型化合物を好適に用いることが好ましい。
【0037】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0038】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオン二次電池の場合、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO
3CF
3、LiC(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。また、例えばナトリウムイオン二次電池の場合、NaPF
6、NaBF
4、NaClO
4及びNaAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、NaSO
3CF
3、NaC(SO
3CF
3)
2及びNaN(SO
3CF
3)
2、NaN(SO
2C
2F
5)
2及びNaN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
《合成物における生成相の特定及び含有率の測定》
後述する、実施例及び比較例で得られた合成物(チタンニオブ酸化物)について、X線回折分析によりチタンニオブ化合物の構成相(TiNb
2O
7、Ti
2Nb
10O
29、TiO
2及び非晶質)を判別し、各構成相の含有率をX線回折−リートベルト法を適用して求めた。なお、非晶質の含有率は、結晶相の含有率の総和(質量%)を100質量%から差し引いて求めた。
得られた結果を表1に示すとともに、実施例1及び比較例1において得られたX線回折プロファイル図を
図1に示す。なお、X線回折の測定条件は、以下の通りである。
試料調整:粉末試料成形機(東京科学製TK−750)にて、70kgの圧力でプレス
X線:Cu−kα(管電圧−電流=35kV−350mA)
走査方法:ステップスキャン(ステップサイズ0.023°、0.13秒/ステップ)
測定範囲(2θ): 10°〜80°
測定装置:D8 Advance(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)
解析ソフトウェア:DIFFRAC
plusTOPAS(ver.3)(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)
【0042】
[実施例1]
硫酸チタニルと塩化ニオブを、チタンとニオブのモル比(Ti:Nb)が1:2となる量で水に投入して、硫酸チタニルと塩化ニオブの合計含有量が3.5mol/Lとなるよう、混合液A1を調製した。なお、この時点では、塩化ニオブは完全溶解には達していなかった。次いで、混合液A1にアンモニア水を投入してpHを8に調整し、白濁していることを確認した。
【0043】
得られた混合液A1を圧力容器に移した後、圧力容器から高圧対応型ポンプ(帝国電気製作所製)で混合液A1を抜き出し、さらにポンプから排出される混合液A1を耐圧容器内に戻すことにより、6分間強攪拌を行った。この際、混合液A1の温度は30℃であり、混合液A1の流速は、圧力容器内の壁面において20cm/sになるよう調整した。次いで圧力容器を130℃で1時間加熱しつつ、圧力0.3MPaで混合液A1を水熱反応させ、水熱反応中も上記強攪拌を行い続けて混合液B1を得た。その後、得られた混合液B1をフィルタープレスで固液分離し、得られた固形分を、かかる固形分の乾燥質量1質量部に対し、10質量部の水(20℃)で洗浄した後、大気雰囲気下、850℃で4時間焼成してチタンニオブ酸化物(TiNb
2O
7100質量%)を得た。
【0044】
得られたチタンニオブ酸化物と、かかるチタンニオブ酸化物100質量部に対し、炭素原子換算で10質量部のグルコースとを水に投入し、スラリー中の固形分含有量が40質量%のスラリーを調製した。かかるスラリーを、スプレードライ装置(MDL−050M、藤崎電機株式会社製)を用いて噴霧乾燥に付し、得られた造粒体を窒素雰囲気下にて600℃で3時間焼成し、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0045】
[実施例2]
圧力容器内での混合液A1の流速を圧力容器内の壁面において15cm/sになるよう調整した以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7/TiO
2=94質量%/3質量%、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0046】
[実施例3]
圧力容器内での混合液A1の流速を圧力容器内の壁面において10cm/sになるよう調整した以外、実施例1と同様に処理して、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2=74質量%/12質量%/14質量%、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0047】
[実施例4]
実施例1と同様にして混合液A1を圧力容器に移した後、圧力容器内に設置した攪拌羽根により、6分間強攪拌を行った。この際、圧力容器壁面での混合液A1の流速が、圧力容器内の壁面において20cm/sになるよう調整した。次いで圧力容器を130℃で1時間加熱した後、圧力0.3MPaで混合液A1を水熱反応させ、水熱合成中も攪拌を続けて混合液B2を得た。その後、実施例1と同様にして得られた混合液B2を固液分離し、固形分を焼成してチタンニオブ酸化物を得た。
得られたチタンニオブ酸化物を用い、実施例1と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0048】
[実施例5]
圧力容器内での攪拌羽根での強攪拌の際、圧力容器壁面での混合液A1の流速を圧力容器内の壁面において10cm/sになるよう調整した以外、実施例4と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2=78質量%/11質量%/11質量%、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0049】
[実施例6]
ニオブ源として、塩化ニオブの代わりにシュウ酸ニオブアンモニウムを用い、チタンとニオブのモル比、並びに混合液A2中における硫酸チタニルとシュウ酸ニオブアンモニウムの合計含有量を実施例1と同様にして混合液A2を調製し、混合液A2から混合液B3を得た。その後、実施例1と同様にして得られた混合液B3を固液分離し、固形分を焼成して得られたチタンニオブ酸化物を用い、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0050】
[実施例7]
チタンとニオブのモル比(Ti:Nb)を1:5に変更して混合液A3を調製した以外、実施例1と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(Ti
2Nb
10O
29、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0051】
[実施例8]
圧力容器内での混合液A3の流速を圧力容器内の壁面において10cm/sになるよう調整した以外、実施例7と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=79質量%/11質量%/10質量%、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0052】
[比較例1]
圧力容器内でのポンプ循環処理(強撹拌)を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2=54質量%/22質量%/24質量%、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0053】
[比較例2]
圧力容器内でのポンプ循環処理(強撹拌)を行わなかった以外、実施例6と同様にして、表面に炭素が被覆されてなるチタンニオブ酸化物負極活物質(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2=58質量%/19質量%/23質量%、炭素の量=10.0質量%)を得た。
【0054】
《充放電特性の評価》
実施例及び比較例で得られたチタンニオブ酸化物、アセチレンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比85:10:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを厚さ10μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80 ℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、負極とした。
次いで、φ15mmに打ち抜いたLi箔を陽極とし、電解液としてエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒にLiPF
6を1 mol/Lの濃度で溶解したものを用い、セパレータにポリプロピレンを用いて、露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
作成した各リチウム二次電池について、0.1C(38.7mAh/g)の初期放電容量を測定した(放電容量測定装置:HJ−1001SD8(北斗電工(株)製))。なお、充放電試験は全て30℃で行った。
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】