(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遷移金属複合酸化物又は遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物と、有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上と、水とを混合し、水100質量部に対する有機酸及び糖類の合計添加量が2〜15質量部であるスラリーAを得る工程(I)、
得られたスラリーAを乾燥した後、酸素雰囲気下で600〜1200℃にて焼成して、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子Xを得る工程(II)、
得られた開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、グルコース及び水を混合してスラリーBを得た後、得られたスラリーBを撹拌して乾燥し、造粒体Yを得る工程(III)、並びに
得られた造粒体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程(IV)
を備える、非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
工程(II)で得られた開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔径の最頻値が、80〜1000nmである請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
水銀圧入式細孔径分布測定により求められる遷移金属複合酸化物粒子Xの全気孔容積が、0.1〜0.6mL/gである請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法は、遷移金属複合酸化物又は遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物と、有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上と、水とを混合し、水100質量部に対する有機酸及び糖類の合計添加量が2〜15質量部であるスラリーAを得る工程(I)、
得られたスラリーAを乾燥した後、酸素雰囲気下で焼成して、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子Xを得る工程(II)、
得られた開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を混合してスラリーBを得た後、得られたスラリーBを撹拌して乾燥し、造粒体Yを得る工程(III)、並びに
得られた造粒体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程(IV)
を備える。
【0017】
工程(I)は、遷移金属複合酸化物又は遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物と、有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上と、水とを混合し、水100質量部に対する有機酸及び糖類の合計添加量が2〜15質量部であるスラリーAを得る工程である。
本発明で用いる遷移金属複合酸化物とは、二次電池の負極活物質として用いられる遷移金属複合酸化物であれば特に制限されないが、具体的には例えば、Li
4Ti
5O
12、TiNb
2O
7、及びTi
2Nb
10O
29等が挙げられる。
【0018】
Li
4Ti
5O
12は、例えばチタン化合物及びリチウム化合物を焼成することにより製造することができ、またチタン化合物及びリチウム化合物等の所定の原料化合物を用いて懸濁液を調製し、水熱反応により結晶を得た後、熱処理することによっても製造することができる。
原料化合物であるチタン化合物としては、酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸等の含水酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、アナターゼ型TiO
2が好ましい。原料化合物であるリチウム化合物としては、リチウム酸化物又はリチウム水酸化物が挙げられ、具体的には、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、炭酸リチウムが好ましい。
【0019】
より具体的には、固相法による製造方法を用いる場合、上記チタン化合物及びリチウム化合物の所定量を混合・粉砕した後、温度700〜900℃で8〜24時間焼成し、次いで得られた焼成物を粉砕することにより、Li
4Ti
5O
12を得ることができる。
また、水熱法による製造方法を用いる場合、原料化合物として上記チタン化合物及びリチウム化合物を混合してスラリーを得た後、反応温度180〜220℃、圧力0.5〜1.0MPaで、10〜20時間が水熱反応させ、反応後のスラリーを乾燥することにより、Li
4Ti
5O
12を得ることができる。
なお、工程(I)では、上記の固相法又は水熱法等で予め製造されたLi
4Ti
5O
12を用いる代わりに、Li
4Ti
5O
12を生成するための原料化合物として上記チタン化合物及びリチウム化合物を混合してスラリーAを得てもよい。この場合、後述する工程(II)に移行する前に、予めスラリーAを水熱反応に付することによって、スラリーA中にLi
4Ti
5O
12を形成させることもできる。
【0020】
TiNb
2O
7は、例えばニオブ化合物及びチタン化合物等の所定の材料を用いて懸濁液を調製し、水熱反応により結晶を得た後、熱処理することによって結晶度の高いものを製造することができる。また、所定の材料をボールミル等により混合・粉砕した後、焼成することによっても製造することができる。
原料化合物であるニオブ化合物としては、水酸化ニオブ等を用いることができ、原料化合物であるチタン化合物としては、硫酸チタニルや硫酸チタン等の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、又は有機酸等を用いることができる。かかるチタン化合物には、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはSn、Zr、Fe、Bi、Cr、Mo、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよく、異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0021】
より具体的な製造方法としては、ニオブ化合物として水酸化ニオブ、チタン源としてアナターゼ型TiO
2を用い、過酸化水素及び水とともに懸濁液を調製し、水熱反応を介して得られた固形分を固液分離し、焼成する方法が好ましい。なお、上記懸濁液中におけるニオブとチタンのモル比(Nb/Ti)は、好ましくは1.6〜2.4であり、より好ましくは1.8〜2.2である。
なお、工程(I)では、遷移金属複合酸化物として予め製造されたTiNb
2O
7を用いる代わりに、TiNb
2O
7を生成するための原料化合物として上記ニオブ化合物及びチタン化合物を混合してスラリーAを得てもよい。この場合、後述する工程(II)に移行する前に、予めスラリーAを水熱反応に付することによって、スラリーA中にTiNb
2O
7を形成させることもできる。
【0022】
Ti
2Nb
10O
29は、例えばチタン化合物及びニオブ化合物を混合・粉砕した後、焼成することにより製造することができる。また、ニオブ化合物及びチタン化合物等の所定の材料を用いて懸濁液を調製し、水熱反応により結晶を得た後、熱処理することによっても製造することができる。
原料化合物であるニオブ化合物としては、ニオブ酸化物又はニオブ水酸化物が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)が好ましい。原料化合物であるチタン化合物としては、酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸等の含水酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、アナターゼ型TiO
2が好ましい。かかるチタン化合物には、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはSn、Zr、Fe、Bi、Cr、Mo、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよく、異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0023】
より具体的には、固相法による製造方法を用いる場合、上記ニオブ化合物及びチタン化合物の所定量を混合・粉砕した後、温度1200〜1400℃で4〜24時間焼成し、次いで得られた焼成物を粉砕することにより、Ti
2Nb
10O
29を得ることができる。
なお、工程(I)では、遷移金属複合酸化物として予め製造されたTi
2Nb
10O
29を用いる代わりに、Ti
2Nb
10O
29を生成するための原料化合物として上記ニオブ化合物及びチタン化合物を混合してスラリーAを得てもよい。この場合、後述する工程(II)に移行する前に、予めスラリーAを水熱反応に付することによって、スラリーA中にTi
2Nb
10O
29を形成させることもできる。
【0024】
工程(I)において遷移金属複合酸化物を用いた場合、スラリーA中における遷移金属複合酸化物(一次粒子)の含有量は、スラリーA中の水100質量部に対し、好ましくは20〜80質量部であり、より好ましくは40〜60質量部である。この際、かかる遷移金属複合酸化物(一次粒子)の粒径は、良好な電池性能を発現する観点から、好ましくは20〜900nmであり、より好ましくは20〜600nmである。なお、遷移金属複合酸化物(一次粒子)の粒径とは、SEM観察における、かかる粒子の差し渡し長さの最大値を意味し、その平均粒径とは、任意に抽出した粒子20個分での平均値を意味する。なお、遷移金属複合酸化物の代わりに、遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物を用いた場合、これら原料化合物の合計含有量は、上記遷移金属複合酸化物(一次粒子)の含有量と同様である。
【0025】
工程(I)において用いる有機酸、糖類及び塩化ナトリウムは、これらのうちのいずれか1種以上が用いられ、遷移金属複合酸化物(一次粒子)又は遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物、並びに水と混合されて、水溶液であるスラリー水A中の水100質量部に対し、合計で2〜15質量部添加される。次いで、後述する工程(II)の乾燥を経ることにより、遷移金属複合酸化物の一次粒子が凝集して形成される遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)内部に、これら添加された有機酸、糖類及び塩化ナトリウムが固体物質として析出し、二次粒子内部に残存する一次粒子間空隙、いわゆる気孔を充填するように散在することとなる。その後、工程(II)の酸素雰囲気下での焼成を経ることにより、有機酸及び糖類は燃焼して消失し、また塩化ナトリウムは揮発して消失する結果、遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)内部に上記特定量の有機酸、糖類又は塩化ナトリウムからなる固体物質が存在していた痕跡として、適度な気孔径を有する気孔を形成し、かかる気孔が遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)の表面から内部にかけて連通し、開気孔を形成することができるものと考えられる。
【0026】
かかる糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類が挙げられる。なかでも、有機酸が燃焼して消失した際、粒子Xの表面から内部にかけて適度な気孔径を有する気孔が連通するよう、工程(II)の乾燥工程において効果的に固体物質を析出させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、及びデキストリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、グルコースがより好ましい。
かかる有機酸としては、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、有機酸が燃焼して消失した際、粒子Xの表面から内部にかけて適度な気孔径を有する気孔が連通するよう、工程(II)の乾燥工程において効果的に固体物質を析出させる観点から、クエン酸が好ましい。
かかる塩化ナトリウムとしては、特に限定されず、通常に入手可能なものが使用できる。
【0027】
工程(I)では、これら糖類のみを用いてもよく、有機酸のみを用いてもよく、塩化ナトリウムのみを用いてもよく、或いは糖類、有機酸及び塩化ナトリウムから選ばれる2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、これら糖類、有機酸、及び塩化ナトリウムが燃焼又は揮発して消失した際、粒子Xの表面から内部にかけて適度な気孔径を有する気孔が連通するよう、工程(II)の乾燥工程において効果的に固体物質を析出させる観点から、有機酸及び糖類から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましい。
【0028】
かかる有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのスラリーAへの合計添加量は、スラリーA中の水100質量部に対し、2〜15質量部であって、好ましくは3〜10質量部である。
【0029】
工程(I)における、遷移金属複合酸化物、並びに有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上は、各々水に添加するのが好ましく、その添加順序は、特に制限されない。また、遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物を用いる場合にも、かかる原料化合物、並びに有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上を各々水に添加するのが好ましく、その添加順序は、特に制限されない。かかる遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物を用いた場合、得られるスラリーAをそのまま工程(II)へ移行するか、又は得られるスラリーAを水熱反応に付した後、後述する工程(II)へ移行すればよい。
【0030】
なお、工程(I)においてスラリーAを得るにあたり、後述する工程(II)において上記開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子の微細化を図る観点から、所定の原料を混合する際、後述する工程(III)におけるスラリーBと同様の撹拌を行うのが好ましい。
【0031】
工程(II)は、工程(I)で得られたスラリーAを乾燥した後、酸素雰囲気下で焼成して、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子Xを得る工程である。スラリーAを乾燥することにより、遷移金属複合酸化物と有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上由来の固体物質とが混合されてなる造粒体X1、または遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物と有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上由来の固体物質とが混合されてなる造粒体X2が得られ、これを酸素雰囲気下で焼成することにより、有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか由来の固体物質が消失し、粒子表面から内部にかけて気孔が連通した開気孔を有する遷移金属複合酸化物のみからなる粒子X(二次粒子)を得ることができる。
【0032】
工程(II)におけるスラリーAの乾燥方法としては、恒温乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の、通常の乾燥方法のいずれをも使用することができるが、遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)の大きさを有効に制御する観点から、噴霧乾燥がより好ましい。
噴霧乾燥により得られる、遷移金属複合酸化物と有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上由来の固体物質が混合されてなる造粒体X1、または遷移金属複合酸化物を生成するための原料化合物と有機酸、糖類及び塩化ナトリウムのいずれか1種以上由来の固体物質とが混合されてなる造粒体X2の粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD
50値で、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜15μmである。ここで、粒度分布測定におけるD
50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D
50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。したがって、適宜噴霧乾燥装置の運転条件を最適化することにより、かかる造粒体X1又はX2の粒径を調整すればよい。例えば、4流体ノズルを備えたマイクロミストドライヤー(藤崎電気(株)製 MDL−050M)での処理条件としては、エアー圧が0.3〜0.8MPaであるのが好ましく、0.5〜0.7MPaであるのがより好ましく、エアー流量が20〜60NL/分であるのが好ましく、50〜60NL/分であるのがより好ましい。また、熱風量は0.6〜1.2m
3/分であるのが好ましく、0.8〜1.1m
3/分であるのがより好ましく、入口温度は、100〜250℃であるのが好ましく、150〜200℃であるのがより好ましい。さらに、排気温度は70〜150℃であるのが好ましく、80〜120℃であるのがより好ましく、スラリーAの流量は20〜70g/分であるのが好ましく、50〜70g/分であるのがより好ましい。
【0033】
次いで、得られた造粒体X1又はX2を酸素雰囲気下で焼成する。この焼成により、造粒体X1又はX2に含まれる糖類及び/又は有機酸由来の固体物質が燃焼して焼失し、或いは造粒体X1又はX2に含まれる塩化ナトリウムが揮発するとともに、隣り合う遷移金属複合酸化物(一次粒子)間の焼結が良好に進行し、かつ造粒体X1又はX2中で形成される遷移金属複合酸化物粒子Xの結晶性が高められ、遷移金属複合酸化物のみからなる強固な遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)を得ることができる。
【0034】
工程(II)における焼成温度は、得られる遷移金属複合酸化物粒子Xの結晶性を高めつつ、かつ過度の焼結によって遷移金属複合酸化物粒子Xに存在する気孔が小径化するのを有効に抑制する観点から、好ましくは600〜1200℃であり、より好ましくは600〜1100℃であり、さらに好ましくは700〜1000℃である。さらに具体的には、造粒体X1又はX2に塩化ナトリウムが含まれる場合は、塩化ナトリウムを揮発して完全に消失させることも加味する観点から、好ましくは850〜1200℃であり、より好ましくは900〜1200℃であり、さらに好ましくは950〜1200℃である。また焼成時間は、得られる遷移金属複合酸化物粒子Xの結晶性を高めつつ、かつ過度の焼結によって遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔が小径化するのを有効に抑制する観点から、好ましくは0.3〜7時間であり、より好ましくは0.5〜6時間である。さらに具体的には、造粒体X1またはX2に塩化ナトリウムが含まれる場合は、塩化ナトリウムを揮発して完全に消失させることも加味する観点から、好ましくは1〜7時間であり、より好ましくは2〜7時間である。
なお、焼成する際の雰囲気は、糖類及び/又は有機酸由来の固体物質の焼失を完遂させるため、或いは塩化ナトリウムの揮発を完遂させるため、さらに遷移金属複合酸化物粒子X中のチタンの価数を+4価とするため、酸素雰囲気下とする必要があり、簡便性及び経済性の観点から大気雰囲気とするのが最も好ましい。焼成に用いる装置としては、焼成雰囲気及び温度の調整が可能な装置であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式の装置も使用することができる。
【0035】
工程(II)で得られる遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)は、適度な気孔径を有する気孔が表面から内部に連通して形成された開気孔を有するため、後述する工程(III)の撹拌工程を経ることにより、かかる開気孔を介して、二次粒子内部に炭素材料を効果的に充填させることができる。二次粒子に形成されてなる気孔径(気孔の直径)の大小は、水銀圧入式細孔径分布測定装置(水銀ポロシメーター)による加圧力と水銀浸入量の測定結果から、気孔径とその気孔径に対する気孔の体積(気孔径分布)を元に、その最頻値を求めて評価することができる。具体的には、工程(II)で得られる二次粒子の気孔径の最頻値は、二次粒子内部に炭素材料を効果的に充填させる観点から、好ましくは80〜1000nmであり、より好ましくは100〜500nmである。
また、工程(II)で得られる遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)における全気孔容積(mL/g)は、二次粒子内部に炭素材料を充填させる領域を適度に確保して、電池物性を有効に高めることのできる負極活物質を得る観点から、好ましくは0.1〜0.6mL/gであり、より好ましくは0.2〜0.6mL/gである。なお、かかる全気孔容積の値についても、上記水銀圧入式細孔径分布測定装置により測定することができる。
【0036】
工程(III)は、工程(II)で得られた開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を混合してスラリーBを得た後、得られたスラリーBを撹拌して乾燥し、造粒体Yを得る工程である。用い得る炭素材料としては、水溶性炭素材料であってもよく、水不溶性炭素材料であってもよい。
【0037】
かかる水溶性炭素材料とは、25℃の水100gに、水溶性炭素材料の炭素原子換算量で0.4g以上、好ましくは1.0g以上溶解する炭素材料を意味し、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔を充填する炭素源として機能する。かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて、効果的に導電性を有する炭素源としての機能を発揮させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、及びデキストリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、グルコースがより好ましい。
【0038】
水不溶性炭素材料とは、水不溶性の炭素粉末であって、焼成等せずともそのもの自体が導電性を有する炭素源である。かかる水不溶性炭素材料としては、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び繊維状炭素等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、高ストラクチャ構造を有する観点から、アセチレンブラック又はケッチェンブラックが好ましい。用い得る水不溶性炭素材料の平均粒径は、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔を効果的に充填する観点から、好ましくは1〜30nmであり、より好ましくは1〜15nmである。
かかる水不溶性炭素材料は、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内に効果的に充填させる観点から、予め水に分散させて用いることが好ましい。
【0039】
かかる炭素材料を遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内に有効に充填させる観点から、遷移金属複合酸化物粒子Xと水からなる懸濁液に炭素材料を添加して、スラリーBを得るのが好ましい。かかる懸濁液における遷移金属複合酸化物粒子Xの含有量は、水100質量部に対し、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは50〜100質量部である。また、懸濁液への炭素材料の添加量は、炭素材料に由来する炭素が遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内を充填し、さらに遷移金属複合酸化物粒子X表面をも被覆して導電性を高めるのに十分な量とする観点から、遷移金属複合酸化物粒子X 100質量部に対し、炭素原子換算量で、好ましくは0.5〜15質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
【0040】
遷移金属複合酸化物粒子Xにおける開気孔を介した気孔内への炭素材料の充填は、得られたスラリーBを攪拌することによって行うことができる。スラリーB中において、遷移金属複合酸化物粒子Xと炭素材料を均一かつ良好に分散させる観点から、分散機(ホモジナイザー)を用いて撹拌することが好ましい。かかる分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。なかでも、分散効率を高める観点から、超音波攪拌機が好ましい。スラリーBの分散均一性の程度は、例えば、UV・可視光分光装置を使用した光線透過率や、E型粘度計を使用した粘度で定量的に評価することもでき、また白濁度が均一であることを目視により確認することによって、簡便に評価することもできる。スラリーBの撹拌時間は、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは5〜60分間である。
【0041】
スラリーBの攪拌は、遷移金属複合酸化物粒子Xにおける開気孔を介した気孔内への炭素材料の充填をより効率的に行う観点から、減圧環境下で行うのが好ましい。かかる減圧環境下で撹拌を行うには、減圧容器内にスラリーBの攪拌槽を設置すればよく、この際の圧力は、好ましくは0.09MPa以下であり、より好ましくは0.001〜0.09MPaであり、さらに好ましくは0.001〜0.05MPaである。減圧環境下での分散機を用いた撹拌時間は、好ましくは0.1分間以上であり、より好ましくは0.1〜5分間であり、さらに好ましくは0.1〜3分間である。
【0042】
次いで、工程(III)では、撹拌後のスラリーBを乾燥して、気孔内が炭素材料で充填されてなる二次粒子が混在する造粒体Yを得る。スラリーBの乾燥方法は、工程(II)における乾燥方法と同様に、恒温乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の通常の乾燥方法を使用することができるが、造粒体Cの大きさを有効に制御する観点から、噴霧乾燥がより好ましい。
【0043】
乾燥後に得られる造粒体Yは、二次粒子単体からなるものが好ましく、したがって、造粒体Yの好ましい粒径は造粒体Xと同様、D
50値で、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜15μmである。このような値となるように、例えば噴霧乾燥を行う場合は、適宜噴霧乾燥装置の運転条件を最適化することにより、かかる造粒体Yの粒径を調整すればよい。例えば、4流体ノズルを備えたマイクロミストドライヤー(藤崎電気(株)製 MDL−050M)での処理条件としては、エアー圧が0.5〜0.9MPaであるのが好ましく、0.7〜0.9MPaであるのがより好ましく、エアー流量が40〜80NL/分であるのが好ましく、60〜80NL/分であるのがより好ましい。また、熱風量は0.6〜1.2m
3/分であるのが好ましく、0.8〜1.1m
3/分であるのがより好ましく、入口温度は、100〜250℃であるのが好ましく、150〜200℃であるのがより好ましい。さらに、排気温度は70〜150℃であるのが好ましく、80〜120℃であるのがより好ましく、スラリーBの流量は5〜40g/分であるのが好ましく、10〜20g/分であるのがより好ましい。
【0044】
工程(IV)は、工程(III)で得られた造粒体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程である。これにより、造粒体Yが含有していた遷移金属複合酸化物粒子Xと炭素材料から、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内に開気孔を介して炭素が有効に充填及び担持された非水電解質二次電池用負極活物質が得られ、電池性能に優れた非水電解質二次電池用負極活物質を実現することができる。かかる工程(IV)の焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中であればよく、焼成温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは400〜800℃であり、焼成時間は、好ましくは10分〜3時間、より好ましくは0.5〜1.5時間とするのがよい。
【0045】
得られる非水電解質二次電池用負極活物質は、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の負極として非常に優れた放電容量及びサイクル特定を発揮する点で有用である。かかる負極を適用できる二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0046】
ここで、正極については、リチウムイオン又はナトリウムイオン等、所定の金属イオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料を水熱反応させることにより得られる各種オリビン型化合物を好適に用いることが好ましい。
【0047】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0048】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオン二次電池の場合、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO
3CF
3、LiC(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。また、例えばナトリウムイオン二次電池の場合、NaPF
6、NaBF
4、NaClO
4及びNaAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、NaSO
3CF
3、NaC(SO
3CF
3)
2及びNaN(SO
3CF
3)
2、NaN(SO
2C
2F
5)
2及びNaN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0049】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の方法にしたがって各測定を行い、製造条件等も含め、得られた結果を表1に示す。
【0051】
《遷移金属複合酸化物からなる二次粒子の気孔径分布の測定》
測定装置(Micromeritics製AutoPore IV9505)を用い、水銀圧入法により、実施例1及び比較例1で得られた遷移金属複合酸化物からなる二次粒子の気孔径分布を測定した。
【0052】
《遷移金属複合酸化物からなる二次粒子のBET比表面積の測定》
測定装置((株)島津製作所製FlowSorbIII 2305)を用いて、実施例及び比較例で得られた遷移金属複合酸化物からなる二次粒子の窒素吸着法によるBET比表面積を測定した。
【0053】
《製造例1:TiNb
2O
7の製造》
5Lポリ容器に、アナターゼ型TiO
2(関東化学(株)製) 243.2g、Nb2O5(関東化学(株)製)797.4g、及び水1000mLと共に、φ1mmのジルコニアボール13kgを入れ、混合・粉砕処理を24時間行った。その後、湿式ふるいでジルコニアボールを洗浄、及び除去した後、フィルタープレスで固液分離した。
【0054】
[実施例1]
水1000mLに、製造例1の固液分離により得られた脱水ケーキ固形分 538gを加え(スラリー濃度が35質量%に相当)、そこにグルコース(日本食品化工製無水結晶ぶどう糖)21.5g(TiNb
2O
7 100質量部に対して4質量部)を添加し、超音波攪拌機(IKA、T25)で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーAを得た後、得られたスラリーAを噴霧乾燥(スプレードライヤー;藤崎電機(株)製 MDL−050M)して、造粒体X1(一次粒子)を得た。その後、かかる造粒体X1を大気雰囲気下1100℃で4時間焼成して、TiNb
2O
7のみからなる二次粒子A1を得た。得られた二次粒子A1のBET比表面積は8.2m
2/g、二次粒子A1の平均粒径は10μmであった。さらに、二次粒子A1の水銀ポロシメーターで測定した二次粒子A1内の気孔径の最頻値は、200nmであり、全気孔容積は0.40mL/gであった。
得られた二次粒子A1のSEM像を
図1に示すとともに、水銀圧入法による気孔径分布を
図2に示す。なお、
図2中の気孔径分布に示される2つのピークのうち、左側のピークが二次粒子A1(二次粒子)の気孔(二次粒子中に残存する一次粒子間空隙)であり、右側のピークは、二次粒子間空隙であった。
【0055】
得られた二次粒子A1を100g分取し、グルコース 6.2g(100質量部の二次粒子A1に対し、炭素原子換算量で5.3質量部に相当)とともに水200mLと混合し、超音波攪拌機(T25)を用いて大気圧下で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーB1を得た。
次いで、スラリーB1を噴霧乾燥(MDL−050M)して造粒体Y1を得た後、これをアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0056】
[実施例2]
二次粒子A1を得るにあたり、グルコースの添加量を32.3g(TiNb
2O
7 100質量部に対して6質量部)とした以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0057】
[実施例3]
二次粒子A1を得るにあたり、グルコースの添加に代えてクエン酸(和光純薬工業製、純度99.5%)を21.5g(TiNb
2O
7 100質量部に対して4質量部)添加した以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0058】
[実施例4]
二次粒子A1を得るにあたり、グルコースの添加に代えてクエン酸を32.3g(TiNb
2O
7 100質量部に対して6質量部)添加した以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0059】
[実施例5]
スラリーB1を得るにあたり、0.04MPaの減圧処理下で2分間撹拌した以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0060】
[実施例6]
スラリーB1を得るにあたり、0.01MPaの減圧処理下で0.5分間撹拌した以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0061】
[比較例1]
二次粒子を得るにあたり、グルコースを添加しなかった以外、実施例1と同様にして、二次粒子G1を得た。得られた二次粒子G1の水銀ポロシメーターでの測定では、二次粒子G1内の気孔(二次粒子中に残存する一次粒子間空隙)は、確認できなかった。
得られた二次粒子G1のSEM像を
図3に示すとともに、水銀圧入法による気孔径分布を
図4に示す。なお、
図4中の気孔径分布に示されるピークは、隣接する二次粒子間空隙に相当するピークのみであった。
次いで、二次粒子A1の代わりに、得られた二次粒子G1を用いた以外、実施例1と同様にして非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0062】
[比較例2]
二次粒子A1を得るにあたり、グルコースの添加量を5.4g(TiNb
2O
7 100質量部に対して1質量部)とした以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0063】
[比較例3]
二次粒子A1を得るにあたり、グルコースの代わりにクエン酸を5.4g(TiNb
2O
7 100質量部に対して1質量部)添加した以外、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0064】
《製造例2:Li
4Ti
5O
12の製造》
5Lポリ容器に、アナターゼ型TiO
2(関東化学(株)製) 1768g、Li
2CO
3(関東化学(株)製) 654g、及び水1000mLと共に、φ1mmのジルコニアボール 13kgを入れ、混合・粉砕処理を24時間行った。その後、湿式ふるいでジルコニアボールを洗浄、及び除去した後、フィルタープレスで固液分離した。
【0065】
[実施例7]
水1000mLに、製造例2の固液分離により得られた脱水ケーキ固形分 538gを加え(スラリー濃度が35質量%に相当)、そこにグルコース 21.5g(Li
4Ti
5O
12100質量部に対して4質量部)を添加し、超音波攪拌機(T25)で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーA2を得た後、得られたスラリーA2を噴霧乾燥(MDL−050M)して、造粒体X2を得た。その後、かかる造粒体X2を、大気雰囲気下800℃で10時間焼成して、Li
4Ti
5O
12のみからなる二次粒子A2を得た。
得られた二次粒子A2のBET比表面積は13.1m
2/g、二次粒子A2の平均粒径は10μmであった。さらに、二次粒子A2の水銀ポロシメーターで測定した気孔開口部の孔径の最頻値は、500nmであった。
【0066】
得られた二次粒子A2を100g分取し、グルコース 6.2g(100質量部の二次粒子A2に対し、炭素原子換算量で5.3質量部に相当)とともに水200mLと混合し、超音波攪拌機(T25)で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーB2を得た。
次いで、スラリーB2を噴霧乾燥(MDL−050M)して造粒体Y2を得た後、これをアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li
4Ti
5O
12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0067】
[比較例4]
二次粒子A2を得るにあたり、グルコースを添加しなかった以外、実施例7と同様にして、非水電解質二次電池用負極活物質(Li
4Ti
5O
12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0068】
【表1】
【0069】
《充放電特性の評価》
実施例及び比較例で得られた非水電解質二次電池用負極活物質、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比90:3:7の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを厚さ20μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80 ℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、負極とした。
次いで、φ15mmに打ち抜いたLi箔を正極とし、電解液としてエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPF
6を1 mol/Lの濃度で溶解したものを用い、セパレータに高分子多孔フィルム(ポリプロピレン製)を用いて、露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
作成した各リチウム二次電池について、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧3Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電として、1CAおよび20CAにおける放電容量を測定(測定装置:北斗電工(株)製 HJ−1001SD8)した。
結果を表2に示す。
【0070】
【表2】