特許第6243951号(P6243951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243951
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】自律走行作業車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   G05D1/02 N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-71940(P2016-71940)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-182634(P2017-182634A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】山村 誠
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−164741(JP,A)
【文献】 特開2013−165588(JP,A)
【文献】 米国特許第06465982(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0154688(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0234153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリアの周縁に配置されて電源に接続されるエリアワイヤの通電時に生じるエリア信号の磁界を検出し、前記検出された磁界に基づいて前記作業エリアを搭載電池から通電される電動モータで駆動されて自律走行すると共に、充電ステーションに帰還するときに前記搭載電池が充電される自律走行作業車の制御装置において、
前記電源と前記エリアワイヤの間に介挿され、ユーザに操作可能であると共に、前記電源から前記エリアワイヤへの通電を接続/遮断する断接機器と、
前記断接機器を介してユーザによって前記電源から前記エリアワイヤへの通電が一旦遮断された後、再び接続される再接続動作がなされたか否か検出する再接続検出部と、
前記再接続検出部によって前記再接続動作がなされたことが検出されたとき、前記エリア信号に前記充電ステーションへの帰還を指示する帰還指示信号を挿入する帰還指示信号挿入部と、
前記帰還指示信号挿入部によって前記エリア信号に前記帰還指示信号が挿入されたとき、前記充電ステーションに帰還するように前記作業車の走行を制御する走行制御部と、を備えることを特徴とする自律走行作業車の制御装置。
【請求項2】
前記帰還指示信号挿入部は、前記再接続検出部によって前記再接続動作がなされたことが検出されたとき、所定時間の間、前記帰還指示信号を挿入することを特徴とする請求項1記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項3】
前記エリア信号がランダムな周期で生成されることを特徴とする請求項1または2記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項4】
前記エリア信号が64ビットからなるデジタル信号で生成されると共に、前記帰還指示信号は前記64ビットのうちの1ビットからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記作業車を搭載作業機で作業させる作業モードと前記充電ステーションに帰還させる帰還モードの少なくともいずれかに従って前記作業車の走行を制御すると共に、前記作業モードで走行させるときに前記帰還指示信号挿入部によって前記エリア信号に前記帰還指示信号が挿入されたとき、前記作業モードから前記帰還モードに移行させて前記充電ステーションに帰還するように前記作業車の走行を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自律走行作業車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自律走行作業車の制御装置に関し、より詳しくは作業エリアを搭載電池で通電される電動モータで自律走行しながら作業機で作業すると共に、充電ステーションに帰還して搭載電池を充電するようにした自律走行作業車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自律走行作業車の制御装置として例えば特許文献1記載の技術が知られている。特許文献1記載の技術は作業車の充電ステーションへの帰還を適正に誘導するようなエリアワイヤの配置構造を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−164741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術は作業車が充電ステーションに帰還したときの誘導に関するが、天候の悪化やメンテナンスの必要から作業車を充電ステーションに帰還させる必要に迫られることがある。そのような場合に備え、従来、充電ステーションに帰還指示用のスイッチを設置し、ユーザがそれを操作して行っていた。
【0005】
しかしながら、充電ステーションに帰還指示用のスイッチを設置するのは、その分だけ物理的な構成が増えると共に、充電ステーションは通例屋外に設けられることから防水のための被覆も必要となって構成がさらに増える不都合がある。
【0006】
従って、この発明の課題は、物理的な構成を追加することなく、必要に応じて充電ステーションに帰還させるようにした自律走行作業車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、この発明は、作業エリアの周縁に配置されて電源に接続されるエリアワイヤの通電時に生じるエリア信号の磁界を検出し、前記検出された磁界に基づいて前記作業エリアを搭載電池から通電される電動モータで駆動されて自律走行すると共に、充電ステーションに帰還するときに前記搭載電池が充電される自律走行作業車の制御装置において、前記電源と前記エリアワイヤの間に介挿され、ユーザに操作可能であると共に、前記電源から前記エリアワイヤへの通電を接続/遮断する断接機器と、前記断接機器を介してユーザによって前記電源から前記エリアワイヤへの通電が一旦遮断された後、再び接続される再接続動作がなされたか否か検出する再接続検出部と、前記再接続検出部によって前記再接続動作がなされたことが検出されたとき、前記エリア信号に前記充電ステーションへの帰還を指示する帰還指示信号を挿入する帰還指示信号挿入部と、前記帰還指示信号挿入部によって前記エリア信号に前記帰還指示信号が挿入されたとき、前記充電ステーションに帰還するように前記作業車の走行を制御する走行制御部とを備える如く構成した。
【発明の効果】
【0008】
電源と作業エリアの周縁に配置されて電源に接続されるエリアワイヤの間に介挿され、ユーザに操作可能であると共に、電源からエリアワイヤへの通電を接続/遮断する断接機器と、断接機器を介してユーザによって電源からエリアワイヤへの通電が一旦遮断された後、再び接続される再接続動作がなされたか否か検出する再接続検出部と、接続動作がなされたことが検出されたとき、エリア信号に充電ステーションへの帰還を指示する帰還指示信号を挿入する帰還指示信号挿入部と、エリア信号に帰還指示信号が挿入されたとき、充電ステーションに帰還するように作業車の走行を制御する走行制御部とを備える如く構成したので、充電ステーションに帰還指示用のスイッチなどの物理的な構成を追加することなく、天候の悪化やメンテンナンスを行うときなど、必要に応じて作業車を充電ステーションに容易に帰還させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施形態に係る自律走行作業車を全体的に示す概念図である。
図2図1の自律走行作業車の上面図である。
図3図1のECU(電子制御ユニット)の入出力関係を示すブロック図である。
図4図1の自律走行作業車の作業エリアなどの説明図である。
図5図4の充電ステーションの電気的な構成を示すブロック図である。
図6図5の充電ステーションからエリアワイヤに通電される交流電流信号を示す波形図である。
図7図4のエリアワイヤからの離間距離と磁界強度との関係を示す図である。
図8図1の作業車のトレース走行時の動作を示す図である。
図9図8のトレース走行で生成される作業エリアのマップを示す説明図である。
図10】この実施形態に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
図11】同様にこの実施形態に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
図12図11フロー・チャートの処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はこの発明の実施形態に係る自律走行作業車を全体的に示す概念図、図2図1の自律走行作業車の上面図、図3図1のECU(電子制御ユニット)の入出力関係を示すブロック図である。
【0011】
以下では上面視における作業車10の進行方向(車長方向)と、それに直交する横方向(車幅方向)と、進行方向と横方向に直交する鉛直方向とをそれぞれ前後方向、左右方向、上下方向と定義し、それに従って各部の構成を説明する。
【0012】
図1において符号10は自律走行作業車(以下「作業車」という)を示す。作業車10は具体的には芝刈り機からなる。作業車10の車体12はシャシ12aとそれに取り付けられるフレーム12bとからなる。
【0013】
作業車10は、前後方向においてシャシ12aの前側にステー12a1を介して固定される比較的小径の左右2個の前輪14を備えると共に、後側にシャシ12aに直接取り付けられる比較的大径の左右の後輪16を備える。
【0014】
作業車10のシャシ12aの中央位置付近には作業機、具体的には芝刈り作業用のブレード(ロータリブレード)20が取り付けられると共に、その上部には電動モータ(以下「作業モータ」という)22が配置される。ブレード20は作業モータ22に接続され、作業モータ22によって回転駆動される。
【0015】
ブレード20にはユーザの手動操作自在なブレード高さ調整機構24が接続される。ブレード高さ調整機構24はネジ(図示せず)を備え、そのネジをユーザが手で廻すことでブレード20の接地面GRからの上下方向の高さが調整可能に構成される。
【0016】
作業車10のシャシ12aには、ブレード20の後端側で2個の電動モータ(原動機。以下「走行モータ」という)26L,26Rが取り付けられる。走行モータ26L,26Rは左右の後輪16に接続され、前輪14を従動輪、後輪16を駆動輪として左右独立に正転(前進方向への回転)あるいは逆転(後進方向への回転)させる。ブレード20と作業モータ22と走行モータ26などはフレーム12bで被覆される。
【0017】
この実施形態において、作業車10はユーザが運搬可能な重量と寸法を有し、例えば全長(前後方向長さ)71cm程度、全幅55cm程度、高さ30cm程度の寸法を有する。
【0018】
作業車10の後部には搭載充電ユニット30と搭載電池(バッテリ)32とが格納されると共に、フレーム12bには一対の電池充電端子34が前進方向において前端位置において前方に突出するように取り付けられる。搭載電池32は例えばリチウムイオン電池からなる。
【0019】
電池充電端子34は搭載充電ユニット30に配線を介して接続されると共に、搭載充電ユニット30は搭載電池32に接続される。また、作業モータ22と走行モータ26も搭載電池32に接続され、搭載電池32から通電されるように構成される。尚、図1では配線の図示を省略する。
【0020】
作業車10において車体12の前側には左右2個の磁気センサ、即ち、第1磁気センサ36L、第2磁気センサ36Rが配置され、それぞれ磁界の大きさ(磁界強度)を示す信号を出力する。図2に示す如く、第1、第2磁気センサ36L,36Rは作業車10の車体12の前後方向において前側に前後方向に延びる車体中心線CL1に対して左右方向に対称となる位置に配置される。
【0021】
また、車体12のフレーム12bには、障害物や異物との接触によってフレーム12bがシャシ12aから外れるとき、オン信号を出力する接触センサ40が取り付けられる。
【0022】
作業車10の中央位置付近には収納ボックス(図示せず)が設けられると共に、その内部に収納された回路基板42上にはマイクロコンピュータからなる電子制御ユニット(Electronic Control Unit。制御装置。以下「ECU」という)44が搭載される。図3に示す如く、ECU44は、CPU44aと、I/O44bと、メモリ(ROM,EEPROM,RAM)44cを備える。
【0023】
また、回路基板42上には、ECU44に近接して作業車10の重心位置のz軸(鉛直軸)回りの角速度(ヨーレート)を示す出力を生じる角速度センサ46と、作業車10に作用するx,y,z軸の直交3軸方向の加速度を示す出力を生じる加速度センサ50と、地磁気に応じた絶対方位を示す出力を生じる方位センサ52と、GPS衛星からの電波を受信して作業車10の現在位置(緯度、経度)を示す出力を生じるGPSセンサ54が設けられる。
【0024】
また、作業車10の左右の後輪16の付近には左右の後輪16の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサ56が配置されると共に、シャシ12aとフレーム12bの間には、ユーザなどによってフレーム12bがシャシ12aからリフトされた(持ち上げられた)とき、オン信号を出力するリフトセンサ60が配置される。搭載電池32には搭載電池32の消費電流を示す出力を生じる電流センサ62が配置される。
【0025】
また、作業車10には、作業の動作開始などを指令するメインスイッチ64と非常停止を指令する非常停止スイッチ66とがユーザの操作自在に設けられる。さらに、作業車10のフレーム12bは上面で大きく切り欠かれてそこにユーザの指令などの入力のためのキーボードやタッチパネルなどの入力機器68が設けられると共に、ディスプレイ70が設けられる。入力機器68とディスプレイ70はECU44に接続され、ディスプレイ70にはECU44の指令に応じて作業モードなどの各種の情報が表示される。
【0026】
図3に示す如く、磁気センサ36、接触センサ40、角速度センサ46などのセンサ類の出力とメインスイッチ64などのスイッチ類の出力は、ECU44に送られ、I/O44bを介して入力される。ECU44は、それらの出力に基づき、搭載電池32から走行モータ26に通電すると共に、I/O44bを介して制御値を出力して走行モータ26の動作を制御することで作業車10の走行を制御する。
【0027】
走行モータ26L,26Rは左右の後輪16を互いに独立に正転(前進方向への回転)あるいは逆転(後進方向への回転)可能に構成され、左右の後輪16の回転に速度差を生じさせて作業車10を任意の方向に旋回させるように構成される。
【0028】
例えば、左右の後輪16をそれぞれ正転させる際、右後輪16の回転速度を左後輪16の回転速度よりも速くすると、その速度差に応じた旋回角度で作業車10を左方に旋回させる一方、左後輪16の回転速度を右後輪16の回転速度よりも速くすると、その速度差に応じた旋回角度で作業車10を右方に旋回させることができる。また、左右の後輪16を互いに同一速度で一方を正転、他方を逆転させると、作業車10はその場で旋回させることができる。
【0029】
また、ECU44はセンサ類の出力、特に磁気センサ36の出力から作業エリア(作業領域)ARを検出(認識)し、それに基づいて作業モータ22に通電して作業エリアARで作業する。
【0030】
その作業エリアARの検出(認識)とそこでの作業について図4を参照して説明する。
【0031】
作業エリアARは、その周縁(境界)に配置される、より具体的にはその周縁の地中に埋設されるなどして配置されるエリアワイヤ(電線)72によって区画される。作業エリアARの内側と外側のいずれか、具体的には内側に作業車10の搭載電池32を充電するための充電ステーション(以下「充電ST」という)76が配置される。なお、図4では作業車10や充電ST76の大きさなどを誇張して示す。
【0032】
図5は充電ST76の電気的な構成を示すブロック図である。
【0033】
同図に示す如く、充電ST76は、電源(商用電源)80にコンセント82を介して接続される充電器84と、充電器84に接続される一対の充電端子86とを備える。充電端子86は、作業車10に搭載される一対の電池充電端子34にその接点34a(図2に示す)を介して接続自在に構成される。
【0034】
充電器84は、AC/DC変換器84aと、AC/DC変換器84aの動作を制御するマイクロコンピュータからなる充電用ECU(電子制御ユニット)84bと、2基の信号発生器84cとを備える。
【0035】
充電ST76において電源80からコンセント82を通じて送られる交流は、充電器84のAC/DC変換器84aで適宜な電圧に降圧されつつ直流に変換されて充電端子86に送られ、帰還した作業車10が充電端子86と電池充電端子34とを介して接続(ドッキング)されたとき、作業車10の搭載電池32を充電するように構成される。
【0036】
また、AC/DC変換器84aの出力は信号発生器84cと充電用ECU84bに供給される。充電用ECU84bはECU44と通信自在に構成され、ECU44の指令に応じて信号発生器84cの動作を制御する。
【0037】
2基の信号発生器84cは、ECU44の指令に応じた充電用ECU84bの指令に従ってAC/DC変換器84aで適宜な電圧に降圧された直流電流を所定の信号に変換し、前記したエリアワイヤ72とドッキングワイヤ(電線。第1ワイヤ)90とステーションワイヤ(電線。第2ワイヤ。以下「STワイヤ」という)92に通電する。
【0038】
図6に、第1の信号発生器84cからエリアワイヤ72に通電される電流波形を示す。電流波形は信号長Lを有し、任意な周期Tnで通電される。尚。図示は省略するが、第2の信号発生器84cもドッキングワイヤ90とSTワイヤ92に同種の電流波形(位相において異なる)を通電する。
【0039】
尚、充電用ECU84bから指令されるエリア信号72aは具体的には0,1で2値化された64ビットのデジタル信号で指令され、信号発生器84cにおいて図6に示す交流波形信号に変換されてエリアワイヤ72に通電される。
【0040】
エリア信号74aを構成する64ビットのうち、最初の1ビットは作業車10の充電ST76への帰還を指示する信号と指示しない信号のいずれかからなり、
充電用ECU84bは後述する如く、作業車10を帰還させるとき、そのうちの任意のビット(例えば最後のビット)に帰還指示信号を選択(挿入)する。
【0041】
図4に戻って作業エリアARの検出について説明すると、信号発生器84cによってエリアワイヤ72に図6に示されるような電流が流されると、アンペアの右ねじの法則に従ってエリアワイヤ72を中心として右巻き同心円状の磁界が発生するが、このときの磁界強度はエリアワイヤ72の全長によって相違すると共に、作業車10のエリアワイヤ72からの離間距離によっても相違する。
【0042】
図7は、エリアワイヤ72からの離間距離dと磁界強度Hとの関係を示す図である。同図に示すように、磁界強度Hはエリアワイヤ72からの離間距離dに応じて変化し、エリアワイヤ72上において0となり、作業エリアARの内側でプラス、外側でマイナスの値となる。
【0043】
ECU44はエリアワイヤ72への通電によって発生する磁界強度を作業車10に搭載した磁気センサ36で検出することによって作業エリアAR内における作業車(自車)10の位置、即ち、作業車10が作業エリアARの内側/外側のいずれにいるかを判断すると共に、作業車10とエリアワイヤ72との離間距離を検出(算出)する。
【0044】
具体的には、ECU44は磁気センサ36L,36Rの検出値を読み込み、検出値がマイナスになると、例えば角速度センサ46の検出値に基づいて作業車10を作業エリアARの内側に向けて所定角度だけ旋回させ、よって作業エリアARの内側で作業車10を走行(例えばランダムに直進走行)させる。
【0045】
この実施形態では、ECU44は、作業車10を作業モードと帰還モードとのうちのいずれかで動作させる。作業モードは作業車10が作業エリアAR内を自律走行しながら作業を行うモードであり、帰還モードは搭載電池32への充電が必要になったときに作業車10を充電ST76までエリアワイヤ72を検出してそれに沿って走行させて帰還させるモードである。
【0046】
尚、作業モードの一つとしてエリアワイヤ72上をトレースするように作業車10を走行させるトレース走行も行われる。ECU44は作業モードの前にトレース走行させることで作業エリアAR、より具体的にはその境界を認識(把握)する。
【0047】
図8は、トレース走行時の作業車10の動作を示す図である。同図に示すように、トレース走行時には、左右一対の磁気センサ36L,36Rのうち一方の磁気センサ(例えば36L)をエリアワイヤ72の内側に位置させつつ、他方の磁気センサ(例えば36R)がエリアワイヤ72上を矢印A方向に移動するように作業車10を周回走行させる。
【0048】
具体的には、ECU44は磁気センサ36Rの出力を監視し、それによって検出される磁界強度Hが0となるように走行モータ26L,26Rを制御する。例えば、磁気センサ36Rによって検出される磁界強度Hがプラスになると、右側の走行モータ26Rを減速かつ左側の走行モータ26Lを増速させ、作業車10を右側に旋回させる一方、磁気センサ36Rによって検出される磁界強度Hがマイナスになると、右側の走行モータ26Rを増速かつ左側の走行モータ26Lを減速させ、作業車10を左側に旋回させる。
【0049】
これにより、磁気センサ36Rをエリアワイヤ72に近づけ、磁気センサ36Rにより検出される磁界強度Hを0に維持しつつ、エリアワイヤ72上を走行することができる。
【0050】
トレース走行は作業車10の電池充電端子34を充電ST76の充電端子に接続させた状態から開始され、作業車10がエリアワイヤ72に沿って周回走行した後、作業車10の電池充電端子34が充電ST76の充電端子に再び接続されたときに終了する。
【0051】
トレース走行開始から終了までの作業車10の位置はGPSセンサ54によって検出される。ECU44はGPSセンサ54と方位センサ52の出力に基づき、充電ST76を基準(原点)とする作業エリアARのマップ(作業エリアマップ)MPを生成する。
【0052】
図9にそのマップMPを示す。マップMPにおいてエリアワイヤ72の位置は作業エリアARの境界線(周縁)L0として示される。
【0053】
より具体的には、マップMPは、トレース走行開始時の充電ST76の位置を原点とし、かつ方位センサ52によって規定される所定方位を基準とする直交2軸座標の平面(XY平面)上において境界線L0の内側の作業エリアARを格子状に等間隔に分割して得られる複数のセルCmpを配列してなる。
【0054】
マップMPにおいて、セルCmpはそれぞれ作業エリアARにおいて例えば縦横1m程度の大きさに相当すると共に、それぞれ固有の位置座標(X,Y座標)を有する。
【0055】
ECU44は図示のマップMPに基づいて作業車10の走行を制御するが、この実施形態に係る自律走行作業車の制御装置の特徴は作業車10の充電ST76への帰還制御にあるので、以下その点に焦点をおいて説明する。
【0056】
図10図11はその自律走行作業車の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、充電ST76の充電用ECU84bとECU44によって実行される。
【0057】
より具体的には充電用ECU84b(のCPU44a)は、図5に記載されるように、再接続検出部84b1と帰還指示信号挿入部84b2を備えると共に、ECU44のCPU44aは図3に記載されるように走行制御部(あるいは制御手段)44a1を備える。図10に示す処理は図5の再接続検出部84b1と帰還指示信号挿入部84b2によって実行され、図11に示す処理は図3の走行制御部44a1によって実行される。
【0058】
以下説明すると、S10において電源80がオフされた、換言すれば、コンセント82を介してユーザによって電源80からエリアワイヤ72への通電が一旦遮断された後、再び接続される再接続動作がなされたか否か判断する。これはAC/DC変換器84aの出力を検出するなどして判断する。
【0059】
S10で肯定されるときはS12に進み、帰還指示をエリア信号に送信する。即ち、図6を参照して説明したエリア信号72aを構成する64ビット信号のうちの所定のビット(1ビット)に帰還指示信号を選択(挿入)する。
【0060】
次いでS14に進み、1sec経過したか否か判断し、否定される限りS12に戻って上記の処理を繰り返す一方、肯定されるときはS16に進み、通常のエリア信号72aを送信、換言すれば最初の1ビット目に帰還指示信号ではないエリア信号72aを選択(挿入)して送信する。尚、S10で否定されるときはS12からS14の処理をスキップする。
【0061】
図11は、図10の充電用ECU84bの動作と平行してECU44(より詳しくはその走行制御部44a1)で実行される処理を示すフロー・チャート、図12はそのときの説明図である。
【0062】
以下説明すると、S100において作業モードにあるものとみなし、作業エリアARを走行させながら、作業機(ブレード20)を駆動して芝刈り作業を実施させる(図12(a))。
【0063】
次いでS102に進み、エリア信号72aを受信しないか否か判断し、否定されるときはS100に戻って芝刈り作業を実施する一方、肯定されるときはS104に進み、作業車10を停止させる(図12b)。
【0064】
次いでS106に進み、エリア信号72aを受信したか否か判断し、否定されるときはS104に戻る一方、肯定されるときはS108に進み、エリア信号72aに帰還指示信号が含まれているか否か、即ち、前記した64ビットの所定のビット(最後の1ビット)に相当する信号が帰還指示信号か否か判断する。
【0065】
S108で肯定されるときはS110に進み、前記した帰還モードで作業車10の走行を制御する(図12(c))。一方、否定されるときはS112に進み、前記した作業モードで作業車10の走行を制御する(図12(d))。
【0066】
上記した如く、この実施形態にあっては、作業エリアARの周縁に配置されて電源80に接続されるエリアワイヤ72の通電時に生じるエリア信号72aの磁界を検出し、前記検出された磁界に基づいて前記作業エリアを搭載電池32から通電される電動モータ(走行モータ)26で駆動されて自律走行すると共に、充電ステーション(ST)76に帰還するときに前記搭載電池が充電される自律走行作業車10の制御装置において、前記電源と前記エリアワイヤの間に介挿され、ユーザに操作可能であると共に、前記電源から前記エリアワイヤへの通電を接続/遮断する断接機器(コンセント)82と、前記断接機器82を介してユーザによって前記電源80から前記エリアワイヤ72への通電が一旦遮断された後、再び接続される再接続動作がなされたか否か検出する再接続検出部(充電用ECU84b,84b1,S10)と、前記再接続検出部によって前記再接続動作がなされたことが検出されたとき、前記エリア信号72aに前記充電ステーション76への帰還を指示する帰還指示信号を挿入する帰還指示信号挿入部(充電用ECU84b,84b1,S12,S14)と、前記帰還指示信号挿入部によって前記エリア信号72aに前記帰還指示信号が挿入されたとき、前記充電ステーション76に帰還するように前記作業車の走行を制御する走行制御部(ECU44,44a1,S100からS110)とを備える如く構成したので、充電ステーション76に帰還指示用のスイッチなどの物理的な構成を追加することなく、天候の悪化やメンテンナンスを行うときなど、必要に応じて作業車10を充電ステーション76に容易に帰還させることができる。
【0067】
また、前記帰還指示信号挿入部は、前記再接続検出部によって前記再接続動作がなされたことが検出されたとき、所定時間の間、前記帰還指示信号を挿入する(S12,S14)如く構成したので、上記した効果に加え、必要に応じて作業車10を充電ステーション76に確実に帰還させることができる。
【0068】
また、前記エリア信号が64ビットからなるデジタル信号で生成されると共に、前記帰還指示信号は前記64ビットのうちの1ビットからなる如く構成したので、上記した効果に加え、帰還指示信号を簡易に挿入することができる。
【0069】
また、前記走行制御部は、前記作業車10を搭載作業機(ブレード20)で作業させる作業モードと前記充電ステーション76に帰還させる帰還モードの少なくともいずれかに従って前記作業車10の走行を制御すると共に、前記作業モードで走行させるときに前記帰還指示信号挿入部によって前記エリア信号に前記帰還指示信号が挿入されたとき、前記作業モードから前記帰還モードに移行させて前記充電ステーションに帰還するように前記作業車10の走行を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、作業車10を充電ステーション76に一層確実に帰還させることができる。
【0070】
尚、作業車10を芝刈り作業車に適用したが、この発明はそれに限られるものではなく、他の自律走行可能な自律走行作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 自律走行作業車(作業車)、12 車体、14 前輪、16 後輪、20 ブレード(作業機)、22 電動モータ(作業モータ)、24 ブレード高さ調節機構、26 電動モータ(原動機。走行モータ)、30 搭載充電ユニット、32 搭載電池、34 電池充電端子、36 磁気センサ(36L 第1磁気センサ,36R 第2磁気センサ)、44 電子制御ユニット(ECU)、44a1 走行制御部、46 角速度センサ、50 加速度センサ、52 方位センサ、54 GPSセンサ、56 車輪速センサ、62 電流センサ、70 ディスプレイ、72 エリアワイヤ、72a エリア信号、76 充電ステーション(ST)、84 充電器、84b 充電用ECU、84b1 再接続検出部、84b2 帰還指示信号挿入部、86 充電端子、AR 作業エリア
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