特許第6243965号(P6243965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243965塗抹標本作製装置および塗抹標本作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243965
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】塗抹標本作製装置および塗抹標本作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20171127BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20171127BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20171127BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G01N1/28 V
   G01N35/04 H
   G01N1/30
   G01N1/00 101B
【請求項の数】23
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-105390(P2016-105390)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-211305(P2017-211305A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中西 利志
(72)【発明者】
【氏名】福島 政比古
(72)【発明者】
【氏名】品部 誠也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 充生
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−074803(JP,A)
【文献】 特開2011−185895(JP,A)
【文献】 特開2003−106958(JP,A)
【文献】 特開2010−145420(JP,A)
【文献】 特開2001−272317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/34
G01N 35/00 − 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライドガラスを第1方向に並べて保持可能な収納具を、前記第1方向に搬送するための第1搬送部と、
前記第1搬送部により搬送された前記収納具に、染色済みのスライドガラスを移送するスライド移送部と、
前記第1搬送部と隣接して設けられ、前記スライド移送部により移送された前記スライドガラスを収容した前記収納具を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送するための第2搬送部と
前記第1方向に沿って延びるように配置され、スライドガラスに塗抹された検体を染色するための染色処理部とを備え、
前記スライド移送部は、スライドガラスを、前記染色処理部の延びる前記第1方向に移送し、かつ、染色済みのスライドガラスを、前記第1搬送部に配置された前記収納具へ前記第1方向と直交する第3方向に移送する、塗抹標本作製装置。
【請求項2】
前記第1搬送部から前記第2搬送部へ前記収納具を移動させるための収納具移動機構をさらに備える、請求項1に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項3】
前記収納具移動機構は、前記第1搬送部のスライド収納位置から前記第2搬送部の受け入れ位置へ、前記第3方向に前記収納具を移動させる、請求項2に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項4】
前記スライド収納位置において前記第1搬送部と前記第2搬送部との間に配置され、前記収納具の前記第3方向への移動を規制する第1位置と、前記収納具の前記第3方向への移動を許容する第2位置と、に移動可能な仕切部材をさらに備える、請求項3に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項5】
前記仕切部材は、
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間を遮るように起立する前記第1位置と、
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間を通過可能なように倒れる前記第2位置とに、回動するように構成されている、請求項4に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項6】
前記仕切部材は、
前記スライド移送部により、染色済みのスライドガラスがスライド収納位置に配置された前記収納具に移送される間は、前記第1位置に配置され、
染色済みのスライドガラスが収納された前記収納具が前記第1搬送部から前記第2搬送部へ移動する時には、前記第2位置に配置される、請求項5に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項7】
前記収納具移動機構は、前記収納具と当接して移動することにより前記第1搬送部から前記第2搬送部へ前記第3方向に移動させるアーム部材を含み、
前記仕切部材は、前記アーム部材の移動に伴って、前記第1位置と前記第2位置との間で前記第3方向に向けて回動するように構成され、
前記アーム部材と前記仕切部材とは、共通の駆動源により連動して移動するように構成されている、請求項5または6に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項8】
前記第1搬送部は、前記第1方向に沿って延びる側壁部をさらに含み、
前記仕切部材は、前記第1位置において、前記第1搬送部の前記第2搬送部側の前記側壁部と、前記第1方向に沿って略直線状に並ぶように配置されている、請求項4〜7のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項9】
前記収納具は、上方に設けられた開口からスライドガラスを立てた状態で収納可能である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項10】
前記第1搬送部は、前記第1搬送部の前記第2方向側端部に配置された収納具設置位置からスライド収納位置に前記収納具を搬送し、
前記第2搬送部は、前記第2搬送部の前記第2方向側端部に配置された収納具回収位置に前記収納具を搬送し、
前記第1搬送部および前記第2搬送部の上側に設けられ、少なくとも前記第1搬送部の収納具設置位置および前記第2搬送部の前記収納具回収位置を外部に露出させつつ、前記スライド収納位置を覆うように構成されたカバーをさらに備える、請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項11】
記染色処理部は、前記第1搬送部に対して前記第2搬送部とは反対側の位置で、前記第1搬送部と並んで配置され、複数のスライドガラスが前記第1方向に沿って並んで配置可能に構成されており、前記第1方向側の端部において、スライドガラスに塗抹された検体の染色処理を完了させるように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項12】
前記染色処理部に対して前記第1方向側の位置で、かつ、前記第1搬送部のスライド収納位置に対して前記第3方向に並ぶように配置され、染色済みのスライドガラスを乾燥させるための第1乾燥処理部をさらに備え、
前記スライド移送部は、染色済みのスライドガラスを、前記第1乾燥処理部からスライド収納位置に配置された前記収納具に移送するように構成されている、請求項11に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項13】
前記スライド移送部は、前記染色処理部から前記第1乾燥処理部へスライドガラスを前記第1方向に移送するように構成されている、請求項12に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項14】
前記染色処理部と、前記第1乾燥処理部と、前記スライド収納位置の前記収納具とは、共に、スライドガラスを同じ向きで保持するように構成され、
前記スライド移送部は、前記染色処理部と、前記第1乾燥処理部と、前記スライド収納位置の前記収納具との間でスライドガラスを移送するように構成されている、請求項12または13に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項15】
処理前のスライドガラスを複数保持可能に構成され、処理前のスライドガラスを供給するためのスライド供給部をさらに備え、
前記第1搬送部は、前記第1搬送部の前記第2方向側端部に配置された収納具設置位置からスライド収納位置に前記収納具を搬送し、
前記第2搬送部は、前記第2搬送部の前記第2方向側端部に配置された収納具回収位置に前記収納具を搬送し、
前記スライド供給部は、前記収納具設置位置および前記収納具回収位置に対して、前記第3方向に並ぶ位置に配置されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項16】
前記スライド供給部に対して前記第1方向に配置され、スライドガラスに印字するための印字処理を行う印字処理部と、
前記スライド供給部と前記印字処理部との間でスライドガラスを前記第1方向に搬送するスライド搬送部とをさらに備える、請求項15に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項17】
前記印字処理部に対して前記第3方向に配置され、スライドガラスに検体を塗抹するための塗抹処理を行う塗抹処理部と、
前記塗抹処理部に対して前記第2方向に配置され、塗抹処理が行われたスライドガラス上の検体を乾燥させるための第2乾燥処理部と、
前記塗抹処理部から前記第2乾燥処理部へスライドガラスを前記第2方向に搬送する搬出機構とをさらに備える、請求項16に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項18】
記染色処理部に対して前記第2方向に配置され、スライドガラスを出し入れ可能に保持するためのスライド設置部とをさらに備え、
前記スライド移送部は、前記スライド設置部から前記染色処理部へスライドガラスを前記第1方向に移送するように構成されている、請求項15〜17のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項19】
前記スライド設置部は、前記収納具設置位置および前記収納具回収位置に対して、前記第3方向に並ぶ位置に配置されている、請求項18に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項20】
前記第1搬送部は、スライドガラスを収納していない前記収納具が配置される収納具設置位置から、染色済みのスライドガラスが前記スライド移送部により前記収納具に移送されるスライド収納位置に向けて、前記収納具を前記第1方向に搬送する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項21】
前記第1方向は、装置本体の奥行き方向であり、
前記第2方向は、前記装置本体の手前方向である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
【請求項22】
複数のスライドガラスを収納可能な収納具が設置される第1位置から前記第1位置とは異なる第2位置に向かう第1方向に前記収納具を搬送するための第1搬送部、および、前記第1搬送部と隣接して配置され、前記第2位置に搬送された前記収納具を受け取る第3位置から前記収納具を取り出すための第4位置に向かって、前記第1方向とは反対の第2方向に前記収納具を搬送するための第2搬送部を有するスライド収納部と、
前記第1方向に沿って延びるように配置され、スライドガラスに塗抹された検体を染色するための染色処理部と、
前記第1搬送部または前記第2搬送部上の所定の位置に配置された前記収納具に、染色済みのスライドガラスを把持して挿入するスライド移送部と、を備え
前記スライド移送部は、スライドガラスを、前記染色処理部の延びる前記第1方向に移送し、かつ、染色済みのスライドガラスを、前記第1搬送部に配置された前記収納具へ前記第1方向と直交する第3方向に移送する、塗抹標本作製装置。
【請求項23】
複数のスライドガラスを第1方向に並べて保持可能な収納具を、前記第1方向に搬送し、
前記第1方向に沿って延びる染色処理部においてスライドガラスに塗抹された検体を染色し、
前記染色処理部に対してスライドガラスを前記第1方向に移送し、
搬送された前記収納具、染色済みのスライドガラスを、前記第1方向と直交する第3方向に移送し、
移送された前記スライドガラスを収容した前記収納具を、スライドガラスが収納される位置に隣接する位置から、前記第1方向とは反対の第2方向に搬送する、塗抹標本作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗抹標本作製装置および塗抹標本作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検体が塗抹されたスライドガラスを染色する染色部と、染色済みのスライドガラスを収納具に移送するためのスライド移送部と、収納具を搬送するための搬送路とを備える塗抹標本作製装置が開示されている。収納具は、直方体状の外形形状を有し、スライドガラスを垂直状態で収納できる複数の凹部を含んでいる。搬送路は、装置の手前側で左右方向に沿って延びる第1通路と、装置の側面側で第1通路から装置の奥行き方向に延びる第2通路とを含む。
【0003】
第1通路は、収納具の長手方向を第1通路が延びる左右方向に一致させた状態で収納具を第2通路まで搬送する。第2通路は、第1通路から受け入れた収納具を、収納具の短手方向に奥側端部まで移動させて、収納具を貯留する。したがって、収納具は、長手方向を装置の左右方向に一致させた状態のまま、第1通路および第2通路を移動する。収納具は、第2通路の奥側から順に貯留されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−74803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗抹標本作製装置は、スライドガラスに対して印字処理、塗抹処理および乾燥処理などを行うために多数の処理部を備えており、装置が大型化しやすい。しかし、病院や検査機関では多くの検査装置が設置されるため、設置スペースを低減するために塗抹標本作製装置を小型化することが望まれている。
【0006】
また、塗抹標本作製装置では、空の収納具の設置、および塗沫標本作成装置による処理が行われたスライドガラスを収納済みの収納具の回収が、ユーザにより行われる。そのため、収納具の設置作業および回収作業を簡易にして利便性を向上させることが望まれている。
【0007】
この発明は、スライドガラスの収納具を搬送する搬送部の左右方向寸法を抑制することにより、塗抹標本作製装置を小型化しつつ、ユーザが実施する作業をより簡易に行えるようにすることに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による塗抹標本作製装置は、複数のスライドガラスを第1方向に並べて保持可能な収納具を、第1方向に搬送するための第1搬送部と、第1搬送部により搬送された収納具に、染色済みのスライドガラスを移送するスライド移送部と、第1搬送部と隣接して設けられ、スライド移送部により移送されたスライドガラスを収容した収納具を第1方向とは反対の第2方向に搬送するための第2搬送部と、第1方向に沿って延びるように配置され、スライドガラスに塗抹された検体を染色するための染色処理部とを備え、スライド移送部は、スライドガラスを、染色処理部の延びる第1方向に移送し、かつ、染色済みのスライドガラスを、第1搬送部に配置された収納具へ第1方向と直交する第3方向に移送する
【0009】
この発明の第2の局面による塗抹標本作製装置は、複数のスライドガラスを収納可能な収納具が設置される第1位置から第1位置とは異なる第2位置に向かう第1方向に収納具を搬送するための第1搬送部、および、第1搬送部と隣接して配置され、第2位置に搬送された収納具を受け取る第3位置から収納具を取り出すための第4位置に向かって、第1方向とは反対の第2方向に収納具を搬送するための第2搬送部を有するスライド収納部と、第1方向に沿って延びるように配置され、スライドガラスに塗抹された検体を染色するための染色処理部と、第1搬送部または第2搬送部上の所定の位置に配置された収納具に、染色済みのスライドガラスを把持して挿入するスライド移送部と、を備え、スライド移送部は、スライドガラスを、染色処理部の延びる第1方向に移送し、かつ、染色済みのスライドガラスを、第1搬送部に配置された収納具へ第1方向と直交する第3方向に移送する
【0010】
この発明の第3の局面による塗抹標本作製方法は、複数のスライドガラスを第1方向に並べて保持可能な収納具を、第1方向に搬送し、第1方向に沿って延びる染色処理部においてスライドガラスに塗抹された検体を染色し、染色処理部に対してスライドガラスを第1方向に移送し、搬送された収納具、染色済みのスライドガラスを、第1方向と直交する第3方向に移送し、移送されたスライドガラスを収容した収納具を、スライドガラスが収納される位置に隣接する位置から、第1方向とは反対の第2方向に搬送する。

【発明の効果】
【0011】
スライドガラスの収納具を搬送する搬送部の左右方向寸法を抑制することにより、塗抹標本作製装置を小型化しつつ、ユーザが実施する作業をより簡易に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】塗抹標本作製装置の全体構成の一例を説明するための平面図である。
図2】スライド収納部の全体構成の一例を説明するための模式的な平面図である。
図3】スライド収納部のスライド収納位置周辺の構成を説明するための模式的な拡大平面図である。
図4】スライドガラスの収納具の構成例を示した斜視図である。
図5】第1搬送部のスライド収納位置周辺における第1方向に沿った模式的な断面図である。
図6】収納具移動機構の横送り前の平面図(A)および正面図(B)、収納具移動機構の横送り後の平面図(C)および正面図(D)である。
図7】スライド収納位置に収納具が配置された状態を示したスライド収納部の第3方向に沿った模式的な断面図である。
図8】受け入れ位置に収納具が配置された状態を示したスライド収納部の第3方向に沿った模式的な断面図である。
図9】仕切部材の他の第1構成例を示した平面図である。
図10】仕切部材の他の第2構成例を示した第3方向に沿った模式的な断面図である。
図11】染色処理部および乾燥処理部を説明するための模式的な側面図である。
図12】塗抹標本作成処理を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[塗抹標本作製装置の全体構成]
図1を参照して、本実施形態による塗抹標本作製装置400の概要について説明する。
【0015】
塗抹標本作製装置400は、検体が塗抹されたスライドガラス10に対して、検体の染色処理を施して、スライド標本を作製するための装置である。検体は、被検体(被験者)から採取した生体試料であり、たとえば血液、尿や細胞などである。
【0016】
図1に示す構成例では、塗抹標本作製装置400は、スライド供給部20と、印字処理部30と、塗抹処理部40と、第2乾燥処理部50と、スライド搬送部60と、付着物除去部70と、搬出機構80とを備える。また、図1の構成例では、塗抹標本作製装置400は、スライド搬送部90と、染色処理部100と、スライド設置部110と、スライド移送部120と、第1乾燥処理部130と、スライド収納部140とを備える。
【0017】
以下では、塗抹標本作製装置400の設置面に平行な面内(すなわち、水平面内)で直交する2方向をそれぞれX方向、Y方向とする。図1の例では、塗抹標本作製装置400が、平面視でX方向およびY方向にそれぞれ沿う四角形状の外形形状を有する。X方向を塗抹標本作製装置400の左右方向とし、Y方向を塗抹標本作製装置400の前後方向とする。Y1方向側が装置本体の手前方向であり、Y2方向側が装置本体の奥行き方向である。すなわち、本願では、塗抹標本作製装置400のオペレータが、塗抹標本作製装置400の操作時に塗抹標本作製装置400の前面側に位置した際のオペレータから見た場合を基準として、塗抹標本作製装置400の左右方向、手前方向および奥行き方向を規定している。また、水平面と直交する上下方向をZ方向とする。
【0018】
スライドガラス10は、たとえば、長方形形状を有する板状部材である。スライドガラス10は、たとえば、検体が塗抹される塗抹領域11と、検体情報などの各種の情報を表示するための印字領域12とを有する。塗抹領域11は、たとえば、長手方向の中央部に、長手方向に延びる所定の範囲で形成される。印字領域12は、たとえば、長手方向の一端部に塗抹領域11から離間して形成される。印字領域12は、たとえば樹脂材などを用いてスライドガラス10がコーティングされることにより、印字可能とする処理が施された部位である。印字領域12には、検体番号、日付、バーコードまたは2次元コードなどが印字できる。
【0019】
図1の構成例では、塗抹標本作製装置400は、さらに、検体搬送部150と、吸引部160と、制御部170とを備える。
【0020】
検体搬送部150は、塗抹標本作製装置400において最も手前側に配置されている。検体搬送部150は、スライドガラス10に塗抹される検体を収容した検体容器151を搬送する機能を有する。検体搬送部150には、検体を収容する複数の検体容器151が設置できる。検体搬送部150は、設置された検体容器151を所定の取込位置に搬送する。検体容器151は、検体搬送部150は、たとえば検体容器151を複数保持したラック152を搬送する。吸引部160は、検体搬送部150により取込位置に搬送された検体容器151から血液、尿等の液体の検体を吸引する。吸引部160は、吸引した検体を塗抹処理部40へ供給する。検体搬送部150を設ける代わりに、ユーザが検体容器151を取込位置に直接設置する構成であってもよい。
【0021】
スライド供給部20は、処理前のスライドガラスを複数保持可能に構成され、処理前のスライドガラス10を供給する機能を有する。スライド供給部20は、複数のスライドガラス10を収納できる。スライド供給部20は、塗抹標本作製装置400において、装置本体の手前方向である第2方向側(Y1方向側)に配置されている。
【0022】
図1の構成例では、スライド供給部20は、第1供給部21と、第2供給部22とを含む。スライド供給部20は、1つまたは3つ以上の供給部を含んでいてもよい。スライド供給部20は、第1供給部21および第2供給部22の各々に、検体の塗抹前の未使用状態のスライドガラス10を多数収納できる。スライドガラス10は、たとえば、第1供給部21および第2供給部22の内部に、塗抹面が上方を向くように平置きで収納される。
【0023】
第1供給部21および第2供給部22は、X方向に並んで配置されている。第1供給部21および第2供給部22の各々は、内部に収容された塗抹前のスライドガラス10を、Y2方向に移動させて、スライドガラス10を1枚ずつ供給できる。
【0024】
印字処理部30は、スライドガラス10に印字するための印字処理を行う機能を有する。印字処理部30による印字処理は、スライドガラス10の表面の印字領域12に検体情報などの各種の情報を印字する処理である。印字処理部30は、スライド搬送部60の上面に保持された状態のスライドガラス10に対して印刷を行う。印字処理部30は、たとえば熱転写プリンタやインクジェットプリンタなどの公知の印字ヘッドを備えた印字部により、印字処理を行う。図1の構成例では、印字処理部30は、スライド供給部20に対して第1方向(Y2方向)に配置されている。
【0025】
塗抹処理部40は、スライドガラス10に検体を塗抹するための塗抹処理を行う機能を有する。塗抹処理部40による塗抹処理は、スライドガラス10の表面の塗抹領域11に、検体を塗りつける処理である。塗抹処理は、引きガラスなどの塗抹部材を用いた塗抹方法(いわゆるウェッジ法)や、その他の塗抹方法が採用できる。塗抹処理部40は、採用される塗抹方法に応じた塗抹機構により、塗抹処理を行う。塗抹処理部40は、スライド搬送部60の上面に保持された状態のスライドガラス10に対して検体の塗抹を行う。図1の構成例では、塗抹処理部40は、印字処理部30に対して第3方向(X方向)に配置されている。
【0026】
スライド搬送部60は、スライド供給部20、印字処理部30および塗抹処理部40の間で移動してスライドガラス10を搬送するように設けられている。すなわち、スライド搬送部60は、スライド供給部20、印字処理部30および塗抹処理部40に共通の搬送部として機能する。
【0027】
スライド搬送部60は、水平方向(XY方向)に移動できる。スライド搬送部60は、たとえば、1枚のスライドガラス10を上面に保持して搬送できる。スライド搬送部60は、第1供給部21からスライドガラス10を受け取れる。また、スライド搬送部60は、第2供給部22からスライドガラス10を受け取れる。スライド搬送部60は、保持したスライドガラス10を付着物除去部70、印字処理部30および塗抹処理部40の各々の処理位置に搬送できる。スライド搬送部60は、スライド供給部20から受け取ったスライドガラス10を付着物除去部70、印字処理部30および塗抹処理部40の順に搬送する。スライド搬送部60は、保持したスライドガラス10を上下方向(Z方向)に移動させることができる。スライドガラス10は、スライド搬送部60により保持された状態で、付着物除去部70、印字処理部30および塗抹処理部40のそれぞれにおいて所定の処理に供される。
【0028】
図1の構成例では、スライド搬送部60は、スライドガラス10の長手方向をY2方向に一致させ、スライドガラス10の短手方向をX方向に一致させてスライドガラス10を搬送する。スライド搬送部60を設ける代わりに、付着物除去部70、印字処理部30および塗抹処理部40の各々の間でスライドガラス10を搬送する搬送部を個別に設けてもよい。
【0029】
付着物除去部70は、スライドガラス10の表面に付着した付着物を除去する機能を有する。たとえば、付着物除去部70は、図示しない圧力源に接続され、エアを吐出することによりスライドガラス10の塗抹領域11および印字領域12の付着物を吹き飛ばすことができる。付着物は、たとえば、ガラス粉末やほこりなどの小さい異物である。
【0030】
図1の構成例では、搬出機構80は、塗抹処理部40に搬送されたスライドガラス10を第2乾燥処理部50に搬出する機能を有する。搬出機構80は、塗抹処理部40に搬送されたスライドガラス10をY1方向に移動させて、第2乾燥処理部50の処理位置に位置付ける。すなわち、搬出機構80は、塗抹処理部40から第2乾燥処理部50へ、スライドガラス10を第2方向(Y1方向)に搬送する。
【0031】
第2乾燥処理部50は、染色前のスライドガラス10に対して、塗抹処理が行われたスライドガラス10上の検体を乾燥させる乾燥処理を行う。第2乾燥処理部50は、送風により、スライドガラス10に塗抹された検体を乾燥させることができる。図1の構成例では、第2乾燥処理部50は、塗抹処理部40に対して第2方向(Y1方向)に配置されている。
【0032】
図1の構成例では、搬出機構80は、第2乾燥処理部50に搬出したスライドガラス10を、さらに第2乾燥処理部50からスライド搬送部90に搬出するように構成されている。搬出機構80は、第2乾燥処理部50に搬送されたスライドガラス10をY1方向に移動させて、スライド搬送部90に受け渡す。
【0033】
スライド搬送部90は、第2乾燥処理部50および染色処理部100のY1方向側に配置され、X方向に延びるように設けられている。スライド搬送部90は、第2乾燥処理部50から、染色処理部100とスライド設置部110との間の取出位置92へ、X1方向にスライドガラス10を搬送するように構成されている。スライド搬送部90は、スライドガラス10を収容する収容部91を有し、収容部91をX方向に移動できる。スライド搬送部90は、設置面と略平行に寝かせた状態のスライドガラス10を収容部91内に受け入れ、設置面に対して略垂直に立てた状態にして、取出位置92へ搬送する。このため、取出位置92では、スライドガラス10は、塗抹面が上下方向(Z方向)に沿うように立てられた状態で保持される。
【0034】
染色処理部100は、スライドガラス10に塗抹された検体を染色できる。染色処理部100は、第2乾燥処理部50に対してX1方向側に並んで配置され、第2乾燥処理部50からX1方向に搬送されるスライドガラス10を受け取るように構成されている。図1の構成例では、染色処理部100は、Y方向に延びるように設けられている。染色処理部100は、染色液を溜める染色槽1および洗浄液を溜める洗浄槽を備える。染色処理部100では、塗抹済みのスライドガラス10に対して、染色槽および洗浄槽において染色処理および洗浄処理が実施される。
【0035】
スライド設置部110は、染色処理部100に対して第2方向(Y1方向)に配置され、スライドガラス10を出し入れ可能に保持するように構成されている。スライド設置部110には、たとえば、複数のスライドガラス10を保持可能な収納具200が取り外し可能に設置される。スライド設置部110は、設置された収納具200内でスライドガラス10を保持する。
【0036】
スライド移送部120は、染色済みのスライドガラス10を、スライド収納位置121に配置された収納具200に移送できる。また、スライド移送部120は、スライド設置部110から染色処理部100へスライドガラス10を第1方向(Y2方向)に移送できる。図1の構成例では、スライド移送部120は、染色処理部100、スライド設置部110および取出位置92の間でスライドガラス10を移送できる。スライド移送部120は、たとえば、染色処理部100、スライド設置部110および取出位置92よりも上方の高さ位置において、X方向、Y方向およびZ方向の各方向に移動できる。これにより、スライド移送部120は、染色処理部100、スライド設置部110および取出位置92の各々に配置されたスライドガラス10を把持して取り出したり、染色処理部100、スライド設置部110および取出位置92の各々にスライドガラス10を移送できる。ここで、スライド収納位置121とは、染色済みのスライドガラス10を収納具200に移送する位置であって、固定の位置に限られない。例えば、収納具200を移動させながらスライドガラス10を収納具200に移送してもよい。その場合、スライド収納位置121とは、染色済みのスライドガラス10を収納具200に移送するにあたって移動する領域を意味し、範囲を持ったものとなる。
【0037】
スライド移送部120が染色処理部100、スライド設置部110および取出位置92の間でスライドガラス10を移送する構成によって、塗抹標本作製装置400は、ユーザが手動でスライド設置部110に設置した検体塗抹済みのスライドガラス10を、スライド設置部110から染色処理部100に移送できる。塗抹標本作製装置400は、印字処理、塗抹処理および染色処理を行う通常モードでの動作の他に、印字処理および塗抹処理を行ったスライドガラス10を、染色処理を行うことなくスライド設置部110に送り出す塗抹モードでの動作ができる。また、塗抹標本作製装置400は、ユーザが手動でスライド設置部110に設置した検体塗抹済みのスライドガラス10に、染色処理部100による染色処理を行い、スライド収納部140に送り出す染色モードでの動作ができる。
【0038】
図1の構成例では、スライド移送部120は、染色処理部100から、第1乾燥処理部130およびスライド収納部140へスライドガラス10を移送できる。染色処理部100、スライド設置部110および取出位置92の間のスライドガラス10の搬送と、染色処理部100から第1乾燥処理部130およびスライド収納部140へのスライドガラス10の搬送とが、別々のスライド移送部によって実施してもよい。
【0039】
図1の構成例では、第1乾燥処理部130は、染色処理部100に対してY2方向側に並んで配置されている。第1乾燥処理部130は、染色処理部100からY2方向に搬送されるスライドガラス10を受け取る。第1乾燥処理部130は、たとえば、送風により、染色処理部100による染色済みのスライドガラス10を乾燥させる機能を有する。第1乾燥処理部130は、乾燥したスライドガラス10をスライド収納部140に受け渡す。
【0040】
スライド収納部140は、処理が終了したスライドガラス10を受け取り、収納する機能を有する。図1の構成例では、スライド収納部140は、第1乾燥処理部130に対してX1方向側に並んで配置され、第1乾燥処理部130からX1方向側に搬送されるスライドガラス10を受け取る。
【0041】
スライド収納部140には、たとえば、複数のスライドガラス10を保持可能な収納具200が取り外し可能に設置される。スライド収納部140は、設置された収納具200内にスライドガラス10を収納して保管できる。
【0042】
図1の構成例では、スライド収納部140は、第1搬送部210と、第2搬送部220と、収納具移動機構230とを含む。
【0043】
第1搬送部210は、複数のスライドガラス10を第1方向(Y2方向)に並べて保持可能な収納具200を、第1方向に搬送するように構成されている。第2搬送部220は、第1搬送部210と隣接して設けられ、スライド移送部120により移送されたスライドガラス10を収容した収納具200を第1方向(Y2方向)とは反対の第2方向(Y1方向)に搬送するように構成されている。これにより、第1搬送部210および第2搬送部220が、収納具200におけるスライドガラス10の配列方向に沿って収納具200を搬送できる。複数のスライドガラス10が収納可能な収納具200の場合、収納具200の寸法がスライドガラス10の配列方向に長くなり、配列方向と直交する方向には短くなることから、第1搬送部210および第2搬送部220の左右方向(X方向)の寸法を、収納具200の短手方向の寸法に合わせることができる。その結果、収納具200の長手方向を左右方向(X方向)に一致させて搬送する構成と比較して、第1搬送部210および第2搬送部220の幅を抑制することができるので、その分、塗抹標本作製装置400を小型化することができる。なお、第2搬送部220が第1搬送部210と隣接して設けられるとは、第2搬送部220と第1搬送部210とが隣り合って設けられていればよく、第1搬送部および第2搬送部の間に印字処理部30、塗抹処理部40、第1乾燥処理部130および第2乾燥処理部50、染色処理部100等の、他の処理部が設けられていないことを指している。
【0044】
また、第1搬送部210が収納具200を第1方向(Y2方向)に搬送する構成によって、空の収納具200を第1搬送部210の第2方向側(Y1方向側)の位置に設置できる。第2搬送部220が収納具200を第2方向(Y1方向)に搬送する構成によって、塗沫標本作成装置400による処理が行われたスライドガラス10を収納した収納具200を、第2搬送部220の第2方向側(Y1方向側)の位置から回収できる。これらの結果、空の収納具200のセット作業の実施位置、スライドガラス10を収納した収納具200の回収作業の実施位置を、共に第2方向側(Y1方向側)の位置に隣接して配置できるので、ユーザが容易にアクセスできる。これにより、ユーザが実施する作業をより簡易に行えるようにすることができる。
【0045】
図1の構成例では、第1搬送部210は、第1方向(Y2方向)に沿って延びるように設けられている。図1の構成例では、第1搬送部210は、装置本体の前後方向(Y方向)に延びている。図1の構成例では、第1方向(Y2方向)は、収納具200内でスライドガラス10が並ぶ方向であり、装置本体の奥行き方向でもある。第1搬送部210は、収納具200の第1方向を装置本体の奥行き方向に一致させた状態で、収納具200をスライド収納位置121へ奥行き方向に搬送する。第2搬送部220は、第1搬送部210と隣接して設けられ、装置本体の前後方向(Y方向)に沿って延びている。第2搬送部220は、収納具200の第1方向とは反対の第2方向を装置本体の手前方向に一致させた状態で、収納具200を手前方向に搬送する。塗抹標本作製装置は、たとえば検体分析装置などの他の装置と組み合わせてシステムとして用いられる場合が多く、その場合には塗抹標本作製装置と他の装置とが左右方向(X方向)に沿って横並びに配置される。そのため、システム全体の左右方向の幅を小さくするために、特に塗抹標本作製装置の左右方向寸法を抑制することが望まれている。図1の構成例では、第1搬送部210および第2搬送部220装置本体の前後方向(Y)方向に延び、左右方向(X方向)に隣接することにより、塗抹標本作製装置の左右方向寸法が効果的に抑制される。
【0046】
図1の構成例では、収納具移動機構230は、第1搬送部210から第2搬送部220へ収納具200を移動させるように構成されている。収納具移動機構230を設ける代わりに、第1搬送部210が、第2搬送部220へ収納具200を移動させることができるように構成されてもよい。
【0047】
第1搬送部210は、スライドガラス10を収納していない収納具200が配置される収納具設置位置122から、染色済みのスライドガラス10がスライド移送部120により収納具200に移送されるスライド収納位置121に向けて、収納具200を第1方向(Y2方向)に搬送する。スライド収納位置121は、第1乾燥処理部130に対して第3方向側(X1方向側)に隣接する位置である。スライド移送部120が、第1乾燥処理部130からスライドガラス10をX1方向に移動させて、スライド収納位置121の収納具200に処理が終了したスライドガラス10を設置する。スライド収納部140は、収納具移動機構230により、スライドガラス10を収容した収納具200を第1搬送部210のスライド収納位置121から第2搬送部220の受け入れ位置124へ第3方向(X1方向)に移動させる。第2搬送部220は、受け入れ位置124から収納具回収位置123に向けて、収納具200を第2方向(Y1方向)に搬送する。収納具設置位置122および収納具回収位置123は、互いにX方向に並ぶ位置である。ユーザは、空の収納具200を収納具設置位置122に設置することができ、収納具設置位置122に配置された収納具200を取り出すことができる。
【0048】
なお、図1の構成例では、検体搬送部150が、第1搬送部210および第2搬送部220よりも第2方向側(Y1方向側)に配置されている。第1搬送部210は、第1搬送部210の第2方向(Y1方向側)側端部に配置された収納具設置位置122からスライド収納位置121に収納具200を搬送する。第2搬送部220は、第2搬送部220の第2方向側(Y1方向側)端部に配置された収納具回収位置123に収納具200を搬送する。これにより、収納具設置位置122および収納具回収位置123を、装置の第2方向側に配置された検体搬送部150の近傍の位置に並べて配置できるので、ユーザが作業を行う部分を装置本体の第2方向側に集約できる。つまり、検体搬送部150への検体容器151またはラック152の設置作業、収納具設置位置122への空の収納具200のセット作業、スライドガラス10を収納した収納具200の収納具回収位置123からの回収作業の各実施位置を、それぞれ、装置本体の第2方向側に集約できる。これにより、ユーザが実施する作業を容易に行えるようになるので、装置の利便性が向上する。
【0049】
また、図1の構成例では、スライド供給部20は、収納具設置位置122および収納具回収位置123に対して、第1方向(Y2方向)と直交する第3方向(X方向)に並ぶ位置に配置されている。これにより、収納具設置位置122および収納具回収位置123と同様に、スライド供給部20を、装置の第2方向側に配置できるので、ユーザがスライド供給部20へのスライドガラス10のセット作業を装置の第2方向側で実施できる。ユーザが実施する作業を装置本体の第2方向側に集約できるので、装置の利便性が向上する。
【0050】
また、図1の構成例では、スライド設置部110は、収納具設置位置122および収納具回収位置123に対して、第3方向(X方向)に並ぶ位置に配置されている。これにより、収納具設置位置122および収納具回収位置123と同様に、スライド設置部110を、装置の第2方向側に配置できるので、ユーザがスライド設置部110へのスライドガラスの設置作業あるいは取出作業を装置本体の第2方向側で実施できる。ユーザが実施する作業を装置本体の第2方向側に集約できるので、装置の利便性がさらに向上する。
【0051】
図1の構成例では、染色処理部100が、第1搬送部210に対して第2搬送部220とは反対側の位置で、第1搬送部210と並んで配置されている。染色処理部100は、複数のスライドガラス10が第1方向(Y2方向)に沿って並んで配置可能に構成されており、第1方向側(Y2方向側)の端部において、スライドガラス10に塗抹された検体の染色処理を完了させるように構成されている。これにより、染色処理部100を装置本体の前後方向(Y方向)に沿った縦長形状にすることができるので、塗抹標本作製装置400の左右方向寸法をさらに抑制することができる。また、前後方向(Y方向)における、染色処理の終了位置と、第1搬送部210のスライド収納位置121とを、互いに近づけることができる。そのため、染色処理部100からスライド収納位置121に至るスライドガラス10の移送経路を短くすることができる。
【0052】
図1の構成例では、第1乾燥処理部130が、染色処理部100に対して第1方向側(Y2方向側)の位置で、かつ、スライド収納位置121に対して第3方向(X方向)に並ぶように配置されている。スライド移送部120は、染色済みのスライドガラス10を、第1乾燥処理部130からスライド収納位置121に配置された収納具200に移送するように構成されている。これにより、染色処理部100および第1乾燥処理部130が第1方向(Y2方向)に並ぶ列と、第1搬送部210とを、左右方向(X方向)に並べて配置できる。そのため、塗抹標本作製装置400の左右方向寸法を増大させることなく、第1乾燥処理部130を設けることができる。また、Y方向における、第1乾燥処理部130の位置と、スライド収納位置121とを、互いに近づけることができるので、第1乾燥処理部130からスライド収納位置121へのスライドガラス10の移送経路を極力短くすることができる。
【0053】
図1の構成例では、染色処理部100と、第1乾燥処理部130と、スライド収納位置121の収納具200とは、共に、スライドガラス10を同じ向きで保持するように構成されている。スライド移送部120は、染色処理部100と、第1乾燥処理部130と、スライド収納位置121の収納具200との間でスライドガラス10を移送するように構成されている。これにより、染色処理部100、第1乾燥処理部130およびスライド収納位置121の収納具200においてスライドガラス10を出し入れする際に、スライドガラス10の向きを変更する必要がなくなる。そのため、別途、スライドガラス10の向きを変更する機構などを設ける必要がなくなるので、塗抹標本作製装置400を小型化することができる。
【0054】
具体的には、図1の構成例では、染色処理部100と、第1乾燥処理部130と、スライド収納位置121の収納具200とは、共に、スライドガラス10を立てた状態で、塗抹面が装置本体の左右方向(X方向)に沿うように保持する。言い換えると、スライドガラス10は、厚み方向が装置本体の奥行き方向(Y2方向)に一致するように保持される。
【0055】
また、図1の構成例では、スライド供給部20と印字処理部30との間で、スライド搬送部60がスライドガラス10を第1方向(Y2方向)に搬送する。これにより、スライドガラス10の第1の搬送経路が、Y方向に沿って形成される。塗抹処理部40と第2乾燥処理部50との間で、搬出機構80がスライドガラス10を第2方向(Y1方向)に搬送する。これにより、スライドガラス10の第2の搬送経路が、Y方向に沿って形成される。スライド設置部110、染色処理部100および第1乾燥処理部130の間で、スライド移送部120がスライドガラス10を第1方向(Y2方向)に搬送する。これにより、スライドガラス10の第3の搬送経路が、Y方向に沿って形成される。これらの各構成により、図1では、スライド収納部140の第1搬送部210および第2搬送部220によるY方向に沿った搬送経路も含めると、Y方向に沿った4つの搬送経路が塗抹標本作製装置400に設けられており、塗抹標本作製装置400の各ユニットがY方向に沿って4本の列状に配列されている。この結果、塗抹標本作製装置400の前後方向(Y方向)のスペースを有効利用して各ユニットを配置できるので、効果的に、塗抹標本作製装置400の左右方向寸法を抑制することができる。
【0056】
制御部170は、図示しないCPU及びメモリを備え、塗抹標本作製装置400の各部の動作を制御する。制御部170は、出力部171を備える。出力部171は、たとえば液晶モニタなどの表示部である。なお、出力部171をプリンタとすることも可能である。
【0057】
このような構成によって、塗抹標本作製装置400は、スライドガラス10への印字処理、検体の塗抹処理、染色処理の各処理を実施して塗抹標本を自動作製できる。
【0058】
(スライド収納部の構成例)
次に、図2を参照して、スライド収納部140の具体的な構成例を説明する。
【0059】
図2の構成例では、第1搬送部210および第2搬送部220の各々は、Y方向に直線状に延びるように形成されている。第1搬送部210および第2搬送部220は、X方向に並んで配置されている。収納具設置位置122は、第1搬送部210の第2方向側(Y1方向側)の端部位置である。スライド収納位置121は、第1搬送部210の第1方向側(Y2方向側)の端部位置である。収納具回収位置123は、第2搬送部220の第2方向側(Y1方向側)の端部位置である。受け入れ位置124は、第2搬送部220の第1方向側(Y2方向側)の端部位置である。収納具設置位置122、スライド収納位置121、収納具回収位置123、および受け入れ位置124は、互いに異なる位置である。
【0060】
第1搬送部210および第2搬送部220の各々は、直線状の搬送路として構成されている。第1搬送部210および第2搬送部220には、共に、第1方向(Y2方向)に沿って複数の収納具200が設置できる。図2の構成例では、第1搬送部210および第2搬送部220の各々には、最大で8つの収納具200が設置できる。第1搬送部210および第2搬送部220の各々への収納具200の設置可能数はいくつでもよい。
【0061】
第1搬送部210のX方向の両側、および、第2搬送部220のX方向の両側には、側壁部240が設けられている。側壁部240は、第1方向(Y2方向)に沿って延びている。側壁部240は、収納具200の搬送を案内する。
【0062】
第1搬送部210は、スライド収納位置121において第1方向(Y2方向)の奥側に配置され、第1方向における収納具200の位置決めをするための端部壁部241を含む。これにより、第1搬送部210では、収納具200を端部壁部241に当接するまで第1方向(Y2方向)に搬送するだけで、第1方向における収納具200の位置決めが可能となる。
【0063】
図2の構成例では、端部壁部241は、第1搬送部210および第2搬送部220の第1方向側(Y2方向側)端部に設けられている。端部壁部241は、第1搬送部210から第2搬送部220までX方向に沿って延びている。図3の構成例では、端部壁部241は、第1搬送部210から第2搬送部220へ収納具200を横送りする際のガイド壁としても機能する。なお、第1搬送部210および第2搬送部220の第2方向側(Y1方向側)端部にも壁部が設けられている。
【0064】
第1搬送部210および第2搬送部220は、たとえばベルト搬送機構により収納具200を搬送する。図2の構成例では、第1搬送部210および第2搬送部220の各々は、2本1組の搬送ベルト211および221を含む。2本の搬送ベルト211および221は、各搬送路においてX方向の両側に配置され、それぞれY方向の両端位置に設けられたプーリ212および222に架け渡されている。第1搬送部210は、搬送ベルト211および221を駆動する搬送モータ213を含み、第2搬送部220は、搬送ベルト211および221を駆動する搬送モータ223を含む。
【0065】
第1搬送部210および第2搬送部220では、8箇所の設置位置の各々において、収納具200の有無が確認できる。第1搬送部210および第2搬送部220のX2方向側には、収納具センサ242が設けられている。収納具センサ242は、スライド収納位置121および受け入れ位置124を除く各7箇所の設置位置に対応して、Y方向に所定間隔を隔てて7つずつ配置されている。スライド収納位置121の収納具200は、後述する当接検知部260により検知される。受け入れ位置124については、第2搬送部220のX1側に収納具センサ242が配置されている。これにより、第1搬送部210および第2搬送部220のどの位置に収納具200があるかが把握できる。収納具センサ242は、たとえば光学式センサである。
【0066】
図2の構成例では、塗抹標本作製装置400は、第1搬送部210および第2搬送部220の上側に設けられ、少なくとも第1搬送部210の収納具設置位置122および第2搬送部220の収納具回収位置123を外部に露出させつつ、スライド収納位置121を覆うように構成されたカバー244(一点鎖線参照)を備える。スライド収納部140の第1方向側(Y2方向側)は、カバー244によって一部が覆われている。たとえば、第1方向側の収納具5つ分の領域C1がカバー244に覆われており、第2方向側(Y1方向側)の収納具3つ分の領域C2がカバー244に覆われずに外部に露出している。ユーザは、領域C2において、第1搬送部210への収納具200の設置および第2搬送部220からの収納具200の回収ができる。その結果、空の収納具200のセット作業のための収納具設置位置122へのユーザによるアクセスや、収納具200の回収作業のための収納具回収位置123へのユーザによるアクセスを容易にしつつ、収納具200にスライドガラス10がセットされるスライド収納位置121を覆って、移送中のスライドガラス10とユーザの手やその他の障害物との干渉を防止することができる。
【0067】
図2の構成例では、制御部170は、第1搬送部210のいずれかの位置において収納具200が検知されると、第1搬送部210を第1方向(Y2方向)に作動させて収納具200を奥側に詰める。収納具200は、第1搬送部210の奥側(Y2方向側)から順に並ぶように搬送される。制御部170は、第2搬送部220のいずれかの位置において収納具200が検知されると、第2搬送部220を第2方向(Y1方向)に作動させて収納具200を第2方向側に詰める。収納具200は、第2搬送部220の第2方向側(Y1方向側)から順に並ぶように搬送される。
【0068】
図3は、スライド収納位置121周辺の拡大図を示す。収納具移動機構230は、スライド収納部140の第1方向側(Y2方向側)の端部に設けられている。図3の構成例では、収納具移動機構230は、収納具200の長手方向を第1方向(Y2方向)に一致させた状態で、第1搬送部210のスライド収納位置121から第2搬送部220の受け入れ位置124へ、第1方向と直交する第3方向(X1方向)に収納具200を移動させるように構成されている。これにより、第1搬送部210から第2搬送部220への収納具200の受け渡しを最短経路で行うことができる。そのため、収納具移動機構230を小型化することができるので、塗抹標本作製装置400の小型化を図ることができる。
【0069】
収納具移動機構230は、収納具200と当接して移動することにより第1搬送部210から第2搬送部220へ第3方向(X1方向)に移動させるアーム部材231を含む。アーム部材231は、端部壁部241からY1方向側に向けて、突出長さD1だけ直線状に突出するように設けられている。突出長さD1は、たとえば、収納具200の長手方向の長さL1に対してL1>D1>(L1/2)となる。なお、収納具200は短手方向の長さW1を有し、L1>W1となっている。
【0070】
収納具移動機構230は、アーム部材231をX1方向に移動させることにより、スライド収納位置121における収納具200の側面を押圧して、受け入れ位置124まで収納具200を横送りさせる。
【0071】
図3の構成例では、スライド収納部140には、スライド収納位置121において第1搬送部210と第2搬送部220との間に配置された仕切部材250が設けられている。仕切部材250は、収納具200の第3方向(X1方向)への移動を規制する第1位置P11(図7参照)と、収納具200の第3方向(X1方向)への移動を許容する第2位置P12(図8参照)と、に移動できる。これにより、スライド収納位置121へ収納具200を搬送する時や、スライド収納位置121において収納具200にスライドガラス10をセットする時には、第1位置P11の仕切部材250によって収納具200の第3方向(X1方向)への位置ずれを抑制することができる。そして、仕切部材250を設ける場合でも、仕切部材250を第2位置P12に移動させることによって、第1搬送部210から第2搬送部220へ収納具200を横送りする際の妨げとなることがない。
【0072】
図3の構成例では、仕切部材250は、スライド移送部120により、染色済みのスライドガラス10がスライド収納位置121に配置された収納具200に移送される間は、第1位置P11に配置される。仕切部材250は、染色済みのスライドガラス10が収納された収納具200が第1搬送部210から第2搬送部220へ移動する時には、第2位置P12に配置される。これにより、仕切り部材250が第1搬送部210から第2搬送部220への収納具200の移動の妨げになることなく、収納具200に染色済みのスライドガラス10を収納する間は、仕切り部材250によって収納具200が第2搬送部220側へ移動することを防止できる。
【0073】
図3の構成例では、仕切り部材250は、第1搬送部210と第2搬送部220とを仕切るように壁状あるいは板状形状に形成されている。図3の構成例では、仕切部材250は、第1位置P11において、第1搬送部210の第2搬送部220側(X1方向側)の側壁部240と、第1方向(Y2方向)に沿って略直線状に並ぶように配置されている。これにより、第1位置P11における仕切部材250を側壁部240の一部として機能させることができる。すなわち、第1搬送部210が、収納具200をスライド収納位置121へ第1方向(Y2方向)に搬送する際のガイド壁として、仕切部材250を機能させることができるので、安定して収納具200が搬送できる。仕切り部材250は、たとえば第1搬送部210と第2搬送部220との間に配置される棒状部材、または、複数の棒状部材を組み合わせた格子状部材であってもよい。
【0074】
第1位置P11の仕切部材250は、X2方向側の側壁部240との間で、X方向の間隔D2を隔てるように配置されている。間隔D2は、収納具200の短手方向の長さW1よりも僅かに大きい。間隔D2は、(D2−W1)がスライド収納位置121における収納具200のX方向位置の許容誤差よりも小さくなるように設定されている。そのため、収納具200は、スライド収納位置121に搬送された状態で、位置決め部に当接させるなどのX方向の位置決めが不要となっている。
【0075】
仕切部材250は、端部壁部241からY1方向に向けて突出するように設けられている。仕切部材250の突出長さL2は、収納具200の長手側の長さL1と等しいか僅かに大きい。後述するように、仕切部材250が第2位置P12にある場合、側壁部240と端部壁部241との間に、1つの収納具200が通過可能なY方向の長さL2の通路が形成される。長さL2は、間隔D2よりも大きい。
【0076】
図3の構成例では、第1搬送部210と第2搬送部220との間の側壁部240には、仕切部材250との間の位置に、平面視で角部が面取りされるように傾斜した案内壁部243が設けられている。案内壁部243によって、スライド収納位置121から第3方向(X1方向)に移動される収納具200が側壁部240に引っかかることなく、第3方向に移動するように案内される。また、案内壁部243によって、受け入れ位置124から第2方向(Y1方向)に移動される収納具200が側壁部240に引っかかることなく、第2方向に移動するように案内される。
【0077】
図3の構成例では、第1搬送部210は、収納具200と端部壁部241との当接を検出するための当接検知部260を含む。当接検知部260は、端部壁部241に設けられている。これにより、収納具200がスライド収納位置121に位置決めされたことが検出できるので、より確実に、スライド収納位置121収納具200にスライドガラス10を設置することができる。当接検知部260は、たとえば接触式のセンサにより構成される。
【0078】
図3の構成例では、第1搬送部210は、スライド収納位置121に配置された収納具200を端部壁部241に対して付勢する付勢機構270をさらに含む。これにより、収納具200がスライド収納位置121に位置決めされた状態を維持することができる。また、スライド移送部120によりスライドガラス10が収納具200に収納される際に、スライドガラス10が収納具200に当接しても、収納具200がぐらつくことを付勢力によって抑制できるので、スライドガラス10を収納具200に安定して収納できる。
【0079】
図3の構成例では、スライド収納位置121において、第1方向(Y2方向)に沿って延びる第1係合部281と、第3方向(X1方向)に沿って延びる第2係合部282とが設けられている。第1係合部281および第2係合部282については、後述する。
【0080】
図3の構成例では、スライド収納部140には、ストッパ機構290が設けられている。ストッパ機構290は、第1搬送部210のスライド収納位置121に対して第2方向(Y1方向)に隣接する収納具200、および、第2搬送部220の受け入れ位置124に対して第2方向に隣接する収納具200の、第1方向側(Y2方向側)への移動を規制するように構成されている。すなわち、Y2方向端部から数えて1番目にスライド収納位置121および受け入れ位置124があり、ストッパ機構290は、Y2方向端部から数えて2番目の収納具200の設置位置に設けられている。ストッパ機構290により、2番目の設置位置にある収納具200が、スライド収納位置121および受け入れ位置124にある収納具200側に押圧されることが抑制される。その結果、各搬送路に複数の収納具200が設置される場合でも、スライド収納位置121から受け入れ位置124に収納具200を横送りする際に、隣接する収納具200と接触して横送りが妨げられることが防止できる。
【0081】
図3の構成例では、第2搬送部220は、受け入れ位置124において第2搬送部220と仕切部材250との間に配置された移動規制部材300をさらに備える。移動規制部材300は、収納具200の第3方向(X1方向)への移動を規制する第3位置P21と、収納具200の第3方向への移動を許容する第4位置P22(2点鎖線参照)と、に移動できる。これにより、移動規制部材300を第3位置P21に配置することによって、受け入れ位置124に横送りされた収納具200が第1搬送部210側に移動することを抑制できる。そして、移動規制部材300を設ける場合でも、移動規制部材300を第4位置P22に移動させることによって、第1搬送部210から第2搬送部220へ収納具200を横送りする際の妨げとなることがない。
【0082】
(収納具および係合部の構成)
図4を参照して、収納具200、第1係合部281および第2係合部282の構成例を説明する。
【0083】
図4に示す構成例では、収納具200は、上方に設けられた開口205からスライドガラス10を立てた状態で収納可能である。収納具200は、上面側が開放された箱状形状を有し、概ね直方体形状に形成されている。収納具200は、複数のスライドガラス10を収納可能である。図4の構成例では、収納具200は、複数のスライドガラス10を第1方向に並べて保持するように構成されている。収納具200は、スライドガラス10の厚み方向を第1方向に一致するように並べて保持できる。図4の構成例では、収納具200は、平面視で長方形状を有し、第1方向は、収納具200の平面視における長手方向である。第3方向(X方向)が、収納具200の平面視における短手方向である。収納具200は、各スライドガラス10の短辺が収納具200の短手方向に沿うように保持できる。これにより、1つの収納具200に収納可能なスライドガラス10の数を十分に確保しても、収納具200の短手方向寸法が大きくなることを抑制できる。そのため、収納具200の長手方向を奥行き方向である第1方向(Y2方向)に一致させて収納具200を搬送する構成によって、スライドガラス10の収納枚数を十分に確保しながら、装置の左右方向寸法を抑制することができる。
【0084】
収納具200の短手方向両側の内側面からは、板状の仕切板201が短手方向内側に向けて突出している。仕切板201は、長手方向に等間隔で並んでいる。これらの仕切板201の間の空間に、1枚のスライドガラス10が挿入される。挿入されたスライドガラス10は、仕切板201によって左右方向の両端部分が支持され、垂直方向に延びる姿勢(すなわち、スライドガラス10を立てた状態)で保持される。これにより、収納具200は、複数枚のスライドガラス10を長手方向に並べて収納できる。
【0085】
図4の構成例では、収納具200は、側面202において長手方向に延びる第1係合溝203を有する。第1搬送部210は、スライド収納位置121に搬送される収納具200の第1係合溝203と係合する第1係合部281(図3参照)を含む。これにより、スライド収納位置121では、第1係合部281と第1係合溝203との係合により、収納具200が傾いて倒れることを抑制できる。
【0086】
第1係合溝203は、収納具200の下端部近傍の位置に形成されている。第1係合部281は、第1搬送部210のX2方向側の側壁部240から突出するように形成され、第1方向(Y2方向)に沿って水平方向に延びる板状部材である。第1係合部281は、第1係合溝203と同じ高さ位置に配置されている。これにより、収納具200の搬送に伴って第1係合溝203内に第1係合部281が入り込み、互いに係合する。
【0087】
図4の構成例では、収納具200は、側面202において短手方向に延びる第2係合溝204を有する。第1搬送部210は、スライド収納位置121に搬送された収納具200の第2係合溝204と係合する第2係合部282(図3参照)を含む。これにより、スライド収納位置121では、第2係合部282と第2係合溝204との係合により、収納具200が傾いて倒れることを抑制できる。
【0088】
第2係合溝204は、収納具200の下端部近傍の位置に形成されている。第2係合部282は、第1搬送部210の端部壁部241から突出するように形成され、第3方向(X1方向)に沿って水平方向に延びる板状部材である。第2係合部282は、第2係合溝204と同じ高さ位置に配置されている。これにより、収納具200の搬送に伴って第2係合溝204内に第2係合部282が入り込み、互いに係合する。
【0089】
図4の構成例では、第1係合溝203と第2係合溝204とはつながっていて、収納具200に周状に形成された単一の溝を構成している。
【0090】
また、第1係合部281および第2係合部282は、アーム部材231よりも下方に配置されている(図8参照)。これにより、たとえアーム部材231により収納具200が第3方向(X1方向)側に傾斜して倒れようとする場合があっても、第1係合部281および第2係合部282が収納具200の下部と係合することにより、より確実に収納具200の転倒を抑止できる。
【0091】
(当接検知部、付勢機構およびストッパ機構の構成例)
図5を参照して、当接検知部260、付勢機構270およびストッパ機構290の構成例を説明する。
【0092】
図5の構成例では、当接検知部260は、端部壁部241のY2方向側に配置されており、端部壁部241の開口部分からY1方向側に突出するように配置された検知片261を有する。検知片261は、X方向の軸周りに回動できる。当接検知部260は、収納具200の側面202が検知片261に当接して検知片261が端部壁部241内に押し込まれることにより、収納具200と端部壁部241との当接を検出する。
【0093】
図5の構成例では、付勢機構270は、第1搬送部210の下側で重なる位置に配置されている。付勢機構270は、第1搬送部210よりも上方(Z1方向)に移動して収納具200を付勢する位置と、第1搬送部210よりも下方(Z2方向)に移動して退避する位置とに移動可能な押圧部材271を有する。これにより、たとえば付勢機構270を第1搬送部210に対して左右方向(X方向)に配置する場合と比べて、スライド収納部140の左右方向のスペースを抑制できる。その結果、付勢機構270を設ける場合でも、スライド収納部140の左右方向の寸法を抑制できる。また、押圧部材271により収納具200の下部を付勢できるので、収納具200をスライド収納位置121に安定して保持できる。
【0094】
図5の構成例では、押圧部材271は、概略でL字状の形状を有し、一端側が回動軸272に回動可能に支持され、他端側に当接部273が設けられている。付勢機構270は、押圧部材271を移動させるためのアクチュエータ274と、連結部材275と、ガイド276とをさらに備える。アクチュエータ274は、たとえばモータ、リニアモータ、ソレノイドまたはエアシリンダなどであってよい。図5では、エアシリンダからなるアクチュエータ274が設けられている。
【0095】
連結部材275は、一端がアクチュエータ274のロッド274aに取り付けられ、他端が押圧部材271に取り付けられている。これにより、アクチュエータ274のロッド274aの進退によって連結部材275が上下方向に移動し、連結部材275の移動によって押圧部材271が付勢位置と退避位置とに回動する。ガイド276は、上下方向(Z方向)に延びるように設けられ、連結部材275に係合して連結部材275の上下方向の移動を案内する。
【0096】
アクチュエータ274に陽圧が供給されると、ロッド274aがZ1方向に伸びて押圧部材271が回動軸272周りに回動し、第1搬送部210の開口部を介して第1搬送部210の上面から突出する。回動に伴って、押圧部材271の当接部273が収納具200の底面に設けられたリブ205と当接し、収納具200を第1方向(Y2方向)に付勢する(2点鎖線参照)。アクチュエータ274に陽圧を供給している間は、付勢力が作用し続ける。アクチュエータ274のロッド274aを戻すと、押圧部材271が回動して第1搬送部210の上面よりも下方(Z2方向)に退避する。付勢機構270は、スライド収納位置121に搬送された空の収納具200が当接検知部260により検出されると、付勢を開始し、収納具200にスライドガラス10が収納される間も付勢力を維持する。付勢機構270は、スライド収納位置121へ収納具200を搬送する際およびスライド収納位置121から収納具200を横送りする際に、押圧部材271を退避させる。
【0097】
図5の構成例では、ストッパ機構290は、第1搬送部210の下側で重なる位置に配置されている。ストッパ機構290は、第1搬送部210よりも上方に移動して収納具200の移動を規制する規制位置と、第1搬送部210よりも下方に移動して退避する退避位置とに移動可能な係止部材291を有する。係止部材291は、退避位置から、回動軸292周りにY1方向側へ回動して、規制位置(2点鎖線参照)に移動する。規制位置において、係止部材291は、収納具200の底面に形成された凹部206の内側面に当接して、収納具200の第1方向(Y2方向)への移動を規制する。係止部材291が収納具200に当接した状態では、搬送ベルト211および221をY2方向に駆動しても係止部材291によって収納具200のY2方向への移動が阻止される。規制位置は、係止部材291が当接した収納具200と、スライド収納位置121に配置された1番目の収納具200との間に、Y方向の所定間隔CLが形成されるように、所定位置に設定されている。係止部材291がY1方向に回動するので、2番目の収納具200がスライド収納位置121に配置された収納具200と接触していた場合でも、係止部材291が2番目の収納具200を所定間隔CLの分だけY1方向に移動させる。
【0098】
係止部材291を回動させるための構成は、特に限定されない。図5の構成例では、ストッパ機構290は、アクチュエータ293と、係止部材291を回動させるための回動部材294と、を備える。アクチュエータ293は、モータからなる。回動部材294は、プーリと、係止部材291の長穴295に挿入された作動軸296とを含むカム機構により構成されている。アクチュエータ293により回動部材294を回動させると、作動軸296が長穴295内で移動して、係止部材291を回動軸292周りに回動させる。なお、係止部材291は、第1搬送部210および第2搬送部220にそれぞれ設けられており(図3参照)、共通の回動軸292周りに回動するように連結されている。そのため、第1搬送部210および第2搬送部220の各ストッパ機構290は、共通のアクチュエータ293によって連動して動作する。
【0099】
(収納具移動機構、仕切部材および移動規制部材の構成例)
図6を参照して、収納具移動機構230、仕切部材250および移動規制部材300の構成例を説明する。図6(A)および(B)は、横送り動作前の平面図および正面図(Y2方向矢視図)であり、図6(C)および(D)は、横送り動作後の平面図および正面図(Y2方向矢視図)である。図6(B)および(D)では、便宜的に、アーム部材231、仕切部材250および移動規制部材300にハッチングを付して図示している。
【0100】
図6(B)の構成例では、収納具移動機構230は、アーム部材231と、ガイド232と、駆動源233とを含む。アーム部材231は、X方向に延びるガイド232により、X方向に直線移動可能に支持されている。駆動源233は、たとえばステッピングモータやサーボモータなどのモータにより構成されている。駆動源233とアーム部材231とは、ベルト−プーリ機構からなる伝達機構234を介して連結されている。
【0101】
これにより、収納具移動機構230は、駆動源233により、アーム部材231を待機位置P31(図6(A)参照)と送り出し位置P32(図6(C)参照)との間で、X方向に移動させる。待機位置P31は、スライド収納位置121に対して第2搬送部220とは反対側(X2方向側)の位置である。送り出し位置P32は、受け入れ位置124に配置された収納具200の側面とアーム部材231とが当接する位置である。これにより、収納具移動機構230は、アーム部材231を待機位置P31から送り出し位置P32へ第3方向(X1方向)に移動させることにより、スライド収納位置121にある収納具200を、受け入れ位置124まで、第3方向(X1方向)に横送りする。
【0102】
図6の構成例では、仕切部材250は、第1搬送部210と第2搬送部220との間を遮るように起立する第1位置P11(図6(B)参照)と、第1搬送部210と第2搬送部220との間を通過可能なように倒れる第2位置P12(図6(D)参照)とに、回動するように構成されている。これにより、仕切部材250を回動させるだけの簡易な構成で、容易に、収納具200の第3方向への移動を規制する第1位置P11と、収納具200の第3方向への移動を許容する第2位置P12と、に移動可能な仕切部材250を得ることができる。
【0103】
図6では、仕切部材250は、Y方向の回動軸251を中心に、略90度回動するように構成されている。すなわち、仕切部材250は、第1位置P11において、収納具200側の表面252が第1搬送部210の上面に対して略垂直になる。第1位置P11において、表面252が、側壁部240の一部として機能する。仕切部材250は、第2位置P12において、収納具200側の表面252が第1搬送部210の上面に対して略平行になる。第2位置P12において、表面252が、収納具200が横送りされる際の床面として機能する。回動軸251は、仕切部材250が起立した第1位置P11において、仕切部材250の下端部に配置され、仕切部材250を回動可能に支持している。
【0104】
図6の構成例では、仕切部材250は、アーム部材231の移動に伴って、第1位置P11と第2位置P12との間で第3方向(X1方向)に向けて回動するように構成されている。アーム部材231と仕切部材250とは、共通の駆動源233により連動して移動するように構成されている。これにより、アーム部材231と仕切部材250とを別々の駆動源により駆動する場合と比較して、部品点数を削減できるので、その分、装置構成を簡素化し、スライド収納部140を小型化することができる。
【0105】
具体的には、図6(A)に示すように、アーム部材231には、X方向に延びる当接部235が設けられている。仕切部材250は、Y2方向側の端部において、当接部235とX方向に並ぶように配置された当接部253が設けられている。待機位置P31にあるアーム部材231が駆動源233により第3方向(X1方向)に移動すると、第1位置P11にある仕切部材250の当接部253と当接部235が当接し、当接部253を第3方向(X1方向)に押圧する。その結果、仕切部材250が第2位置P12まで倒れるように、回動軸251周りに回動する。仕切部材250が倒れると、当接部253は当接部235よりも下方の位置(図6(D)参照)に離間するため、仕切部材250が倒れた後もアーム部材231がそのまま送り出し位置P32まで移動し続ける。
【0106】
また、図6(D)に示すように、仕切部材250には、仕切部材250が第2位置P12に位置した状態で、上側に突出する当接部254が設けられている。アーム部材231が送り出し位置P32から待機位置P31へX2方向に戻る際には、当接部235に設けられた部材236が当接部254と接触し、X2方向への移動に伴って当接部254をX2方向側に押し倒す。その結果、仕切部材250が第1位置P11へ引き起こされるように、回動軸251周りに回動する。仕切部材250が起立すると、当接部254は部材236よりも下方の位置に離間(図6(B)参照)するため、当接部254と部材236とは接触しない。これにより、アーム部材231の待機位置P31から送り出し位置P32への移動と、仕切部材250の第1位置P11から第2位置P12への移動とが連動する。
【0107】
図6の構成例では移動規制部材300は、アーム部材231の移動に伴って、第3位置P21と第4位置P22との間で移動するように構成されている。アーム部材231と移動規制部材300とは、共通の駆動源233により連動して移動するように構成されている。これにより、アーム部材231と移動規制部材300とを別々の駆動源により駆動する場合と比較して、部品点数を削減できるので、その分、装置構成を簡素化し、スライド収納部140を小型化することができる。
【0108】
具体的には、図6(B)に示すように、移動規制部材300は、上下方向の回動軸301により、水平面内で回動可能に支持されている。図6(A)に示すように、アーム部材231には、X方向に延びた後、Y1方向側に傾斜するように曲がった当接部237が設けられている。移動規制部材300には、当接部237と接触するための当接部302が設けられている。待機位置P31にあるアーム部材231が駆動源233により第3方向(X1方向)に移動すると、第3位置P21にある移動規制部材300の当接部302と当接部237とが当接し、当接部302を第3方向(X1方向)に押圧する。これにより、当接部302が当接部237に沿って押しのけられるように移動して、移動規制部材300が回動軸301周りに回動する。その結果、図6(C)に示すように、移動規制部材300が端部壁部241よりも突出する第3位置P21から、端部壁部241よりも奥側の第4位置P22に移動する。
【0109】
移動規制部材300は、回動軸301に設けられたねじりバネ部材303(図6(B)参照)によって、第3位置P21側に向けて付勢されている。そのため、アーム部材231が送り出し位置P32から待機位置P31へX2方向に戻る際には、アーム部材231の当接部237が移動するのに伴って、当接部302が元の位置に復帰し、移動規制部材300が第3位置P21へ戻るように、回動軸301周りに回動する。これにより、アーム部材231の待機位置P31から送り出し位置P32への移動と、移動規制部材300の第3位置P21から第4位置P22への移動とが連動する。
【0110】
このように、図6の構成例では、収納具移動機構230のアーム部材231と、仕切部材250と、移動規制部材300とが、共通の駆動源233によって連動して移動する。その結果、図7に示すように、収納具200がスライド収納位置121に配置された横送り前の状態では、アーム部材231が待機位置P31に配置され、仕切部材250が第1位置P11に配置されて側壁部240の一部を構成し、移動規制部材300が第3位置P21に配置される。
【0111】
収納具200の横送りを行う際には、アーム部材231が第3方向(X1方向)に移動して、スライド収納位置121に配置された収納具200と当接する。このとき、仕切部材250は、第2位置P12に移動している。そして、アーム部材231の移動に伴って、収納具200が仕切部材250の表面252上を乗り越えて、受け入れ位置124まで第3方向(X1方向)に移動する。受け入れ位置124までの移動途中で、移動規制部材300が第4位置P22(図6(C)参照)に退避する。図8に示すように、アーム部材231が送り出し位置P32まで到達すると、収納具200が受け入れ位置124に配置される。アーム部材231が待機位置P31に戻る過程で、移動規制部材300が第3位置P21に移動して、受け入れ位置124に配置された収納具200の移動を規制する。また、仕切部材250が第1位置P11に戻る。
【0112】
(仕切部材の他の構成例)
図9および図10には、仕切部材250の他の構成例を示す。図9に示す構成例では、仕切部材250Aは、第1位置P11(図9(A)参照)と、第2位置P12(図9(B)参照)と、に水平移動できる。図9では、仕切部材250Aは、第1方向(Y2方向)および第2方向(Y1方向)に水平移動できる。仕切部材250Aは、第1位置P11において、スライド収納位置121と受け入れ位置124との間に配置される。仕切部材250Aは、第2位置P12において、スライド収納位置121と受け入れ位置124との間を開放するように、側壁部240の内部に収納される。
【0113】
図10に示す構成例では、仕切部材250Bは、第1位置P11(図10(A)参照)と、第2位置P12(図10(B)参照)と、に上下移動できる。仕切部材250Bは、第1位置P11において、スライド収納位置121と受け入れ位置124との間に配置される。仕切部材250Bは、第2位置P12において、スライド収納位置121と受け入れ位置124との間を開放するように下降する。仕切部材250Bは、第2位置P12において、上端面が第1搬送部210および第2搬送部220の上面位置と略同じ高さ位置に配置される。仕切部材250Bの上端面が、収納具200を横送りする際の床面として機能する。
【0114】
(染色処理部および乾燥処理部)
図11の構成例では、染色処理部100は、染色槽101および洗浄槽102を含む。染色槽101および洗浄槽102は、共に、上面側が開放された容器形状を有し、内部に液体を溜めることができる。染色槽101および洗浄槽102には、スライドガラス10を立てた状態で、Y方向に並べて複数設置できる。染色槽101には、所定の染色液が溜められ、洗浄槽102には、所定の洗浄液が溜められる。なお、図11では、便宜的に3つの染色槽101および2つの洗浄槽102を図示しているが、染色槽101および洗浄槽102は、染色処理工程の数および洗浄処理工程の数に応じた数だけ設けられる。各染色槽101および各洗浄槽102は、処理工程の順序に従ってY方向に並んで配置されている。スライドガラス10は、Y1方向側からY2方向側に向けて順に各槽に搬送され、所定の設定時間の間、それぞれの槽に溜められた染色液又は洗浄液に漬けられて処理される。
【0115】
第1乾燥処理部130は、乾燥槽131と、乾燥槽131に設けられた送風ファン132とを含む。乾燥槽131は、上側が開放されていて、スライドガラス10が挿入できる。乾燥槽131には、スライドガラス10を立てた状態で、Y方向に並べて複数設置できる。送風ファン132は、乾燥槽131に保持されたスライドガラス10に対して送風する。これにより、第1乾燥処理部130は、染色処理後のスライドガラス10を乾燥させる。
【0116】
図11の構成例では、染色槽101および洗浄槽102と、乾燥槽131とが、Y方向に沿って並んで配置されている。つまり、第1乾燥処理部130が、Y方向に沿って延びる染色処理部100の延長上に配置されている。これらの染色処理部100および第1乾燥処理部130が、第1搬送部210および第2搬送部220とX方向に並んで隣接配置されている(図2参照)。これにより、装置の左右方向の空間が効率的に利用されることにより、装置の小型化を図ることができる。
【0117】
スライド移送部120は、装置の上部に設けられた移動機構121と、移動機構121に設けられたハンド122とを含む。移動機構121は、ハンド122を水平方向のX方向およびY方向に移動させることができる。スライド移送部120は、収納具200に、染色済みのスライドガラス10を把持して挿入する。ハンド122は、Z方向に移動して、1枚のスライドガラス10を把持できる。ハンド122は、一対の把持板によってスライドガラス10を厚さ方向に挟んで把持する構成の例を示している。ハンド122は、スライドガラス10を左右方向に挟む構成であってもよい。
【0118】
図11の構成例では、スライド移送部120は、2つ設けられている。Y1方向側のスライド移送部120は、スライド設置部110、取出位置92および染色処理部100の上方位置に移動して、スライドガラス10を出し入れすることができる。Y2方向側のスライド移送部120は、染色処理部100、第1乾燥処理部130およびスライド収納部140のスライド収納位置121(図1参照)の上方位置に移動して、スライドガラス10を出し入れすることができる。スライドガラス10は、Y1方向側のスライド移送部120により染色処理部100の途中まで搬送された後、Y2方向側のスライド移送部120によって第1乾燥処理部130やスライド収納部140に搬送される。スライド移送部120が1つまたは3つ以上設けられていてもよい。
【0119】
図11の構成例では、スライド移送部120は、染色処理部100から、染色処理が完了したスライドガラス10を1枚ずつ順次、第1乾燥処理部130の乾燥槽131に移送する。スライド移送部120は、第1乾燥処理部130から、乾燥処理が完了したスライドガラス10を1枚ずつ順次、スライド収納位置121の収納具200に移送する。これにより、複数枚のスライドガラス10をまとめて搬送する構成と異なり、染色処理や乾燥処理が終了した時点で速やかに次の設置位置にスライドガラス10を移送できる。したがって、個々のスライドガラス10の処理プロセスにおいて不必要な待ち時間が発生せず、処理効率が向上する。また、複数枚のスライドガラス10をまとめて搬送する場合には、個々のスライドガラスに乾燥ムラがあると不十分な乾燥状態で収納具200に移送されて収納具200が汚れる可能性がある一方、上記構成では、個々のスライドガラス10の乾燥処理が完了してから個別に収納具200に移送できるので、収納具200が汚れることを抑止できる。その結果、収納具200の洗浄や乾燥作業を不要または簡易にすることができる。
【0120】
(塗抹標本作製装置の塗抹標本作製動作)
図12を参照して、塗抹標本作製装置400の塗抹標本作成動作の例について説明する。塗抹標本作製装置400の制御は、制御部170により行われる。
【0121】
まず、図12のステップS1において、検体の吸引処理が行われる。検体搬送部150により吸引位置に搬送された検体容器151から、吸引部160により検体が吸引される。ステップS1の処理と並行して、ステップS2において、スライドガラス10が付着物除去部70に搬送される。具体的には、スライド供給部20からスライド搬送部60にスライドガラス10が供給される。そして、スライド搬送部60により保持されたスライドガラス10が付着物除去部70に搬送される。ステップS3において、付着物除去部70により、スライド搬送部60により保持されたスライドガラス10の付着物除去処理が行われる。
【0122】
ステップS4において、スライド搬送部60により、スライドガラス10が印字処理部30へ搬送される。ステップS5において、印字処理部30により、スライド搬送部60により保持されたスライドガラス10に対して印字処理が行われる。
【0123】
ステップS6において、スライド搬送部60により、スライドガラス10が塗抹処理部40に搬送される。ステップS7において、塗抹処理部40により、スライド搬送部60により保持されたスライドガラス10に対して塗抹処理が行われる。
【0124】
ステップS8において、搬出機構80により、スライドガラス10がスライド搬送部60から第2乾燥処理部50に搬送される。ステップS9において、第2乾燥処理部50により、スライドガラス10に塗抹された検体に対して乾燥処理が行われる。
【0125】
ステップS10において、スライド搬送部90により、スライドガラス10が取出位置92(図1参照)に搬送される。具体的には、搬出機構80により、スライドガラス10が、第2乾燥処理部50からスライド搬送部90の収容部91に受け渡される。スライド搬送部90は、収容部91内にセットされたスライドガラス10を、取出位置92に搬送する。
【0126】
ステップS11において、スライドガラス10が染色処理部100に搬送される。具体的には、スライド移送部120により、取出位置92のスライド搬送部90からスライドガラス10が取り出され、染色処理部100に移送される。ステップS12において、染色処理部100により、スライドガラス10に塗抹された検体に対して染色処理が行われる。スライドガラス10は、処理工程の順序に従って、各染色槽および各洗浄槽に順番に移送される。この過程で、スライドガラス10は染色処理部100内をY1方向側からY2方向側に移動する。
【0127】
ステップS13において、スライド移送部120により、スライドガラス10が染色処理部100から第1乾燥処理部130に移送される。具体的には、スライド移送部120により、染色処理部100からスライドガラス10が第1乾燥処理部130に受け渡される。ステップS14において、第1乾燥処理部130により、スライドガラス10に塗抹され染色された検体に対して乾燥処理が行われる。
【0128】
ステップS15において、スライドガラス10がスライド収納部140に搬送される。具体的には、スライド移送部120により、第1乾燥処理部130からスライドガラス10がスライド収納部140の収納具設置位置122に配置された収納具200に設置される。そして、収納具200が収納具回収位置123まで搬送される。収納具回収位置123において、塗抹標本が作製されたスライドガラス10がスライド収納部140に保管される。その後、塗抹標本作成処理が終了される。
【0129】
なお、塗抹モードの場合、ステップS10において、取出位置92に搬送されたスライドガラス10が、スライド移送部120によってスライド設置部110に搬送されることにより、処理が終了する。ユーザは、スライド設置部110から、印字処理および塗抹処理が行われた未染色のスライドガラス10を回収できる。
【0130】
染色モードの場合、ユーザによりスライド設置部110にセットされた塗抹済みのスライドガラス10に対して、ステップS11以降の処理が実施される。この場合、スライドガラス10は、スライド移送部120によってスライド設置部110から染色処理部100に搬送される。
【0131】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【符号の説明】
【0132】
10:スライドガラス、20:スライド供給部、30:印字処理部、40:塗抹処理部、50:第2乾燥処理部、60:スライド搬送部、80:搬出機構、100:染色処理部、110:スライド設置部、120:スライド移送部、121:スライド収納位置、122:収納具設置位置、123:収納具回収位置、124:受け入れ位置、130:第1乾燥処理部、150:検体搬送部、200:収納具、203:第1係合溝、204:第2係合溝、210:第1搬送部、220:第2搬送部、230:収納具移動機構、231:アーム部材、233:駆動源、240:側壁部、241:端部壁部、244:カバー、250:仕切部材、260:当接検知部、270:付勢機構、271:押圧部材、281:第1係合部、282:第2係合部、290:ストッパ機構、300:移動規制部材、400:塗抹標本作製装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12