【文献】
Quaranta, M. et al.,Indicators for optical oxygen sensors,Bioanal. Rev.,2012年,4巻,pp. 115-157.
【文献】
Borisov, S. M. et al.,Red light-excitable oxygen sensing materials based on platinum(II) and palladium(II) benzoporphyrins,Anal. Chem.,2008年,80巻24号,pp. 9435-9442.
【文献】
Tian, Y. et al.,A new crosslinkable oxygen sensor covalently bonded into poly(2-hydroxyethyl methacrylate)-co-polyacrylamide thin film for dissolved oxygen sensing,Chem. Mater.,2010年,22巻6号,pp. 2069-2078.
【文献】
Rietveld, I. B., et al.,Dendrimers with tetrabenzoporphyrin cores: near infrared phosphors for in vivo oxygen imaging,Tetrahedron,2003年,59巻22号,pp. 3821-3831.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オキシダーゼは、グルコースオキシダーゼ、エタノールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、またはヒスタミンオキシダーゼである、
請求項9に記載のセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0022] 本明細書に記載されるのは、本発明に係る、ポリマーへの組み込みに有用な重合性発光色素、およびかかる色素の残基をモノマー単位として含むポリマーである。これらの色素およびポリマーは、例えば、検知およびイメージング用途において有用であり、そのような用途として、例えば、正確、かつ場合によっては長期的なin vivoまたはin vitroでの酸素測定がある。
【0013】
[0023] さらに本明細書に記載されるのは、本発明のポリマーを含むセンサである。該センサは、対象の組織内に埋め込み、さまざまな生化学的分析物に関する長期または短期の継続的および半継続的データ収集のために使用することができ、かかる使用は、場合によっては、各種の埋め込み可能なハードウェアおよび/または酵素的および電気化学的検出方法を使用しなくてもよい。一側面において、センサは組織一体型であり、例えば、センサの全領域に極めて近接して(例えば、センサの表面上およびセンサ内部に)毛細血管が成長することを可能にし、それによって、長期にわたる場合を含む、正確な分析物の測定が行われる。別の一側面では、センサは、本発明の発光色素および/またはポリマーに加えて、オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼを含むがこれに限定されない)を含み、ポリマー中にモノマー単位として組み込まれた発光色素および/またはその残基がオキシダーゼによる酸素消費量を測定するため、センサは、酸素以外の多数の分析物(例えばグルコースが挙げられるがこれに限定されない)の検出を行うことができる。
【0014】
[0024] 本明細書において提供される色素および発光ポリマーの利点としては、(1)励起および発光波長が皮膚の光学窓領域(およそ550nm〜1000nm)にあるため組織または臓器内深くにおいて分析物を検出できること;(2)信号対ノイズ比が高いこと;(3)ストークスシフトおよび発光が大きいこと;(4)光安定性である、例えば、色素および/またはポリマーが急速な光退色を受けないこと、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0015】
[0025] 本明細書に記載されるセンサの利点としては、(1)長期間(例えば、1週間より長く、1か月より長く、6か月より長く)にわたって安定した信号を生成するデバイスを提供すること、(2)対象の組織に配置または埋め込まれ、(例えば、組織および/または毛細血管の内部成長により)該組織と一体化するデバイスを提供すること、(3)シリンジ注入またはトロカール注入により埋め込み可能なデバイスを提供すること、すなわち検知媒体を体内に配置するために外科手術を必要としないこと、(4)体内にセンサ電子機器を含まないデバイスを提供すること、(5)長期間(例えば、1週間より長く、通常、数週間、数か月または数年)にわたって分析物(例えば、酸素)の濃度を正確に評価するデバイスを提供すること、および/または(6)寸法が小さく、それによって患者の使用感が向上し体内での受容が改善するデバイスを提供すること、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
[0026] 本明細書および添付の請求の範囲において使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」との単数形の表現は、その内容から別段の明白な規定がない限り、複数形にも言及していることに注意されたい。したがって、例えば、「1つの検知部分(a sensing moiety)」を含むセンサへの言及は、2以上の検知部分を含むデバイスを含んでいる。同様に、「1つの分析物(an analyte)」への言及は2以上の分析物も言及するものである。
【0017】
定義
[0027] 「組織一体型」との用語は、生体組織内に一体化された場合に該組織の血管(例えば、毛細血管)に極めて近接してとどまる材料(例えば、足場材)を意味する。
【0018】
[0028] 「長期」とは、埋め込み片が約7日よりも長い期間、例えば、数週間、数か月または数年にわたって分析物を検知することを意味する。
【0019】
[0029] 「生分解性」または「生体吸収性」とは、数日から数週間、数か月または数年の範囲の期間に対象の体内で分解可能な材料であることを意味する。
【0020】
[0030] 「ハイドロゲル」とは、溶媒(例えば、水)を吸収し、識別可能な溶解を起こすことなく急速に膨潤し、可逆的な変形を可能とする3次元ネットワークを維持する材料を意味する。
【0021】
[0031] 「刺激応答性」との用語は、外部刺激にさらされると、あるいは、置かれた環境によって、相転移などの物理状態の変化を引き起こす物質、例えばポリマーを意味する。このようなポリマーの非制限的な例としては、「スマート・ポリマー」(Kumar A. et al., Smart polymers: Physical forms and bioengineering applications. Prog. Pofym. Sci. 32 (2007) 1205−1237)が挙げられる。
【0022】
A.発光NIR色素
[0032] 一側面において、本発明は式1の化合物を提供する。
【化2】
(式中、
MはH、Pd、Zn、Pt、GdまたはYbであり、
各R
1は互いに同一または異なっており、かつ独立してC(O)X−(CH
2)
n−YC(O)C(R
4)CH
2、C(O)X−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−YC(O)C(R
4)CH
2またはCOOHであり、
R
7はC(O)X−(CH
2)
n−YC(O)C(R
4)CH
2またはC(O)X−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−YC(O)C(R
4)CH
2であり、
R
2およびR
3は水素であるか、または融合していずれの場合もシクロアルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を形成し、
XはOまたはNR
5であり、
YはOまたはNHであり、
R
5およびR
4は独立してHまたはC1〜C4アルキルであり、
各R
6は互いに同一または異なっており、かつ独立してHまたはFであり、
nは1〜10であり、
mは1〜300である。)
【0023】
[0033] 一実施形態において、MはPdである。別の実施形態において、R
1およびR
7はともにC(O)NH(CH
2)
2OC(O)C(CH
3)CH
2である。別の実施形態において、R
1はC(O)NH(CH
2)
2OC(O)C(CH
3)CH
2であり、R
7はCOOHである。さらに別の実施形態において、R
1のうちの2つがC(O)NH(CH
2)
2OC(O)C(CH
3)CH
2であり、R
1のうちの1つがCOOHであり、R
7がCOOHである。別の実施形態において、R
1のうちの1つがC(O)NH(CH
2)
2OC(O)C(CH
3)CH
2であり、R
1のうちの2つがCOOHであり、R
7がCOOHである。一実施形態において、全てのR
1およびR
7がCOOHである。
【0024】
[0034] 別の実施形態において、R
1およびR
7はともにC(O)X−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−YC(O)C(R
4)CH
2である。別の実施形態において、R
1はC(O)X−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−YC(O)C(R
4)CH
2であり、R
7はCOOHである。さらに別の実施形態において、R
1のうちの2つがC(O)X−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−YC(O)C(R
4)CH
2であり、R
1のうちの1つがCOOHであり、R
7がCOOHである。別の実施形態において、R
1のうちの1つがC(O)X−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−YC(O)C(R
4)CH
2であり、R
1のうちの2つがCOOHであり、R
7がCOOHである。一実施形態において、全てのR
1およびR
7がCOOHである。
【0025】
[0035] 別の実施形態において、R
1およびR
7はともにC(O)X−(CH
2)
n−YC(O)C(R
4)CH
2である。別の実施形態において、R
1はC(O)X−(CH
2)
n−YC(O)C(R
4)CH
2であり、R
7はCOOHである。さらに別の実施形態において、R
1のうちの2つがC(O)X−(CH
2)
n−YC(O)C(R
4)CH
2であり、R
1のうちの1つがCOOHであり、R
7がCOOHである。別の実施形態において、R
1のうちの1つがC(O)X−(CH
2)
n−YC(O)C(R
4)CH
2であり、R
1のうちの2つがCOOHであり、R
7がCOOHである。一実施形態において、全てのR
1およびR
7がCOOHである。
【0026】
[0036] 一実施形態において、R
2およびR
3は融合してヘテロアリール基を形成する。一実施形態において、R
2およびR
3は融合してシクロアルケニル基を形成する。一実施形態において、R
2およびR
3は融合してテトラシクロヘキセノ基を形成する。一実施形態において、R
2およびR
3は融合してアリール基を形成する。一実施形態において、上記アリール基は過フッ素化アリール基である。一実施形態において、R
2およびR
3は融合してベンゾ基を形成する。別の実施形態において、R
2およびR
3は融合してナフト基を形成する。
【0027】
[0037] 一実施形態において、R
1は、2〜300のエチレン単位を有するオリゴエチレングリコールリンカーを含む。別の実施形態において、R
7は、2〜300のエチレン単位を有するオリゴエチレングリコールリンカーを含む。
【0028】
[0038] 特定の一実施形態において、MはPdであり、R
1およびR
7はともにC(O)NH(CH
2)
2OC(O)C(CH
3)CH
2であり、R
2およびR
3はHである。
【0029】
[0039] 特定の一実施形態において、MはPdであり、R
1およびR
7はともにC(O)NH(CH
2)
2OC(O)C(CH
3)CH
2であり、R
2およびR
3は融合してベンゼン環を形成する。
【0030】
[0040] 一実施形態において、式1の化合物は、近赤外発光色素である。一実施形態において、式1の化合物は、500nmから800nmの間の吸光極大を有する。特定の一実施形態において、式1の化合物は、500nmから700nmの間の吸光極大を有する。一実施形態において、式1の化合物は、500nmから1000nmの間の発光極大を有する。一実施形態において、式1の化合物は、650nmから900nmの間の発光極大を有する。特定の一実施形態において、式1の化合物は、800nmから900nmの間の発光極大を有する。一実施形態において、本発明の式1の化合物は、光安定性であり、皮膚のNIR光学窓領域に励起および発光スペクトルを有する。
【0031】
[0041] 例えば、好ましい実施形態において、
図1に示されるように、式2の化合物2は、HEMAとの共重合によりハイドロゲルを形成した場合に、633nmの吸光極大を有し、かつ805nmの発光極大を有する。
【化3】
【0032】
[0042] いくつかの実施形態において、本発明の色素は、酸素不透過性固体ナノ粒子内にカプセル化される。このナノ粒子は、酸素以外に感受性を有する発光用途に使用することができる。
【0033】
B.ポリマー
[0043] 本発明の蛍光色素は、重合可能な基、例えば、アクリル酸残基またはメタクリル酸残基を含み、他のモノマーとの共重合により近赤外発光基を含むポリマーを提供することができる。上記化合物が2以上の重合可能な基を有する場合、それらと他のモノマーとの共重合によって得られるポリマーは架橋化することができる。あるいは、重合混合物に別の架橋性モノマーを加えて、得られるポリマーがより高い架橋度を達成するようにすることもできる。
【0034】
[0044] 本明細書に記載されるポリマーは、好適なあらゆる方法で調製することができる。本明細書において提供されるポリマーを製造するために使用される好適な合成方法の非制限的な例としては、カチオン重合、アニオン重合、フリーラジカル重合が挙げられる。いくつかの特定の実施形態において、ポリマー合成は、何も添加せずに、または好適な溶媒中で行われる。好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、DMSO、またはジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの特定の実施形態において、ポリマー合成は、好適な反応温度、例えば、約−50℃〜約100℃の反応温度、または約0℃〜約70℃の反応温度で行われる。
【0035】
[0045] 上記ポリマーは、好ましくはフリーラジカル重合によって調製される。フリーラジカル重合プロセスを使用する場合、(i)モノマー、(ii)任意で1種または複数種のコモノマー、(iii)任意のフリーラジカル源を用意してフリーラジカル重合プロセスを誘発する。いくつかの実施形態において、フリーラジカル源は任意であり、これは、モノマーによっては高温で加熱されることで自動的に開始するものがあるためである。場合により、重合混合物を形成した後、この混合物を重合条件下に置く。そのような条件はあらゆる好適なレベルに任意で変更され、かかる条件の非制限的な例としては、温度、圧力、光、大気、重合混合物に使用される仕込み成分比、および反応時間が挙げられる。重合は、例えば、溶液中、分散液中、懸濁液中、乳濁液中、バルク状等、あらゆる好適な方法で行われる。
【0036】
[0046] いくつかの実施形態では、反応混合物中に開始剤が存在する。本明細書に記載される重合プロセスに有効であればあらゆる好適な開始剤が任意で利用される。そのような開始剤の非制限的な例としては、アルキル過酸化物、置換アルキル過酸化物、アリール過酸化物、置換アリール過酸化物、アシル過酸化物、アルキルヒドロ過酸化物、置換アルキルヒドロ過酸化物、アリールヒドロ過酸化物、置換アリールヒドロ過酸化物、ヘテロアルキル過酸化物、置換ヘテロアルキル過酸化物、ヘテロアルキルヒドロ過酸化物、置換ヘテロアルキルヒドロ過酸化物、ヘテロアリール過酸化物、置換ヘテロアリール過酸化物、ヘテロアリールヒドロ過酸化物、置換ヘテロアリールヒドロ過酸化物、アルキル過酸エステル、置換アルキル過酸エステル、アリール過酸エステル、置換アリール過酸エステル、またはアゾ化合物のうちの1種または複数が挙げられる。特定の実施形態では、過酸化ベンゾイル(BPO)および/またはAIBNが開始剤として使用される。
【0037】
[0047] いくつかの実施形態において、重合プロセスは、制御された(生体)モードで行われる。好ましい制御された(生体)重合プロセスとしては、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合プロセスおよび原子移動ラジカル重合(ATRP)が挙げられる。
【0038】
[0048] いくつかの特定の実施形態において、本発明のポリマーはハイドロゲルである。例えば、そのようなハイドロゲルは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を反応させてポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)を形成することで調製可能である。さらに、さまざまなコモノマーを組み合わせて使用し、ハイドロゲルの親水性、機械的特性および膨潤性を変化させることができる(PEG、NVP、MAA等)。ポリマーの非制限的な例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(種々の分子量の)ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、N−(2−ヒドロキプロピル)メタクリルアミド、グリセロールモノメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。架橋剤の非制限的な例としては、テトラエチレングリコールジメタクリレート、(種々の分子量の)ポリ(エチレングリコール)(n)ジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスアクリルアミド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。開始剤の非制限的な例としては、Irgacure系(UV)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(熱)、過硫酸アンモニウム(APS)(熱)が挙げられる。
【0039】
[0049] 特定の一実施形態では、かかるポリマーは、HEMAと式1の化合物との共重合により調製される発光ハイドロゲルである。好適な実施形態では、そのようなハイドロゲルは、種々のモル量の式2の化合物を、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマー、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)架橋剤、Irgacure651開始剤、水、および補助溶剤と混合した後、UVで開始される重合を行って共重合させることで調製される。別の実施形態では、ポリマーにおける式1の化合物の最終濃度は1mMである。特定の一実施形態において、ポリマーは、50wt%のHEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、1wt%のTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、20wt%のエチレングリコール、25.5wt%の水、0.5%vol/volの光開始剤Irgacure651、および3%の化合物2の共重合によって調製された、酸素を検知するポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)足場材である。
【0040】
[0050] 本発明のポリマーは、体内で分解可能(生分解性)なポリマー、あるいは分解プロセスを開始または加速させる外部開始剤(例えば、UV、超音波、高周波、温度、またはその他の分解を開始させる外因的ソース)の適用により分解可能なポリマーであってよい。例えば、ポリマーは、生分解性または生体吸収性であるか、あるいは、生分解性または生体吸収性セグメントを含んでよく、そのようなセグメントの例としては、分解可能な形態のアルギン酸塩、ポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、微孔性ポリエステル、微孔性ポリエーテル、および架橋コラーゲンが挙げられるがこれらに限定されない。具体的な一例として、Phelps, et al (2010) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 107(8):3323−3328に記載される、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレートと、アクリル化されたプロテアーゼ分解性ペプチドと、VEGFとのUV光重合がある。
【0041】
[0051] 一実施形態において、本明細書において提供されるポリマーは生体適合性ポリマーである。本発明の別の側面において、これらポリマーは生分解性である。分解性ハイドロゲルは、HEMAと本発明の重合性発光色素との共重合による原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いて合成することができる。非分解性および分解性酸素検知ハイドロゲルに基づく多孔性センサ足場材は、球体テンプレートを使用した作製技術(sphere−templating fabrication technique)を用いて作成できる。分解性および非分解性HEMA試薬と、重合性色素とが、テンプレートとなるマイクロ粒子上で重合されることとなり、このマイクロ粒子がその後溶媒とともに溶解されることで、所望の非分解性および分解性足場材が作成される。簡単に説明すると、制御されたATRPにより、PCLベースの分解性二官能性ATRP開始剤および架橋剤の存在下でHEMAの重合が行われる。この合成スキームでは、分解性開始剤の両端から同じ速度でpHEMA鎖が成長することにより、親ポリマーの半分のMWを有する分解生成物が生じることになる。親ポリマーのMWと、開始剤および/または架橋剤中のPEG単位およびPCL単位とを制御することで、ポリマーの分解速度を変化させることができる。親ポリマーのMWを10kDaに制限することで、ハイドロゲルの機械的強度を維持しながら、体内で除去することができる分解生成物をもたらし、かつ分解速度を高めることができる。
【0042】
[0052] いくつかの特定の実施形態において、本明細書において提供されるポリマーは刺激応答性、例えば、温度感受性またはpH感受性ポリマーである。そのような刺激応答性ポリマーの非制限的な一例として、NIPAMの共重合に由来する温度感受性ポリマーがある。こうしたポリマーは、これらのポリマーを含むセンサを組織内の所望の位置に埋め込む際に、まず、体温よりも低い注入に適した媒体にポリマーを溶解した後、得られる溶液を組織内および/または体内の所望の位置に注入する場合に有効である。ポリマーがより高い温度(例えば、体温)にさらされると、該ポリマーは、酸素モニタリングが必要となる注入位置またはその近くで析出する。
【0043】
C.センサ
[0053] いくつかの実施形態において、本発明のポリマーは分析物の検出に有効なセンサ内に組み込まれる。かかる分析物の検出は、in vitro検出とすることもin vivo検出とすることもできる。本段落の以下の文章では、「C.センサ」のセクションにおいて使用される「ポリマー」との用語について説明する。かかるポリマーは、ポリマー骨格に共有結合された式1および/または式2の分子を含み得る。式1および/または式2の分子は、(例えば、共有結合またはその他の手段によって)結合されてもよいし、ナノ粒子キャリアまたはマイクロ粒子キャリア、あるいは、ポリマーに結合されるか、またはポリマー内に含まれるその他のキャリア内に含まれてもよい。そのようなキャリアはポリマー骨格に共有結合され得る。「ポリマー」との用語は「センサ」との用語と同義で使用することができる。
【0044】
[0054] 非制限的な一例において、ポリマーは、創傷治癒の過程をモニタリングするため、例えば、治癒の重要な要素の一つ(すなわち、酸素化)を継続的かつ非侵襲的に評価するために使用することのできる酸素検知創傷用包帯に組み込まれる。
【0045】
[0055] 別の実施形態では、ポリマーは、創傷治癒モニタリングセンサとして、創傷部に直接使用される粉末内に組み込まれる。本発明のセンサは、皮膚またはその下の組織の酸素化モニタリングが有益となる用途(例えば、創傷治癒モニタリング、皮膚閉鎖、ヘルニア治療、皮膚弁移植術、再建手術、およびその他の形成術用途が挙げられるがこれらに限定されない)において使用される注射剤、埋め込み片、メッシュ材、または縫合糸の形態とすることもできる。本発明のセンサは、微小循環不全および末梢動脈疾患のための測定に使用することもできる。特に、血管再生術中または薬の投与時に組織酸素を直接モニタリングすることが可能である。本発明のセンサは、腫瘍用途において組織内または臓器内の低酸素症の程度を測定するために使用することもできる。一実施形態では、動物における腫瘍の成長をモニタリングするために本センサが使用され、そのような動物としては、がん治療投薬または腫瘍代謝のモニタリング等の腫瘍薬学および診断の研究と発見において使用されるマウスまたはラットモデルが含まれるがこれらに限定されない。本発明のセンサは、例えば、COPDおよび喘息症状における肺機能の状態をモニタリングする際に使用することもできる。さらに別の実施形態では、運動またはトレーニングを最適化するために、例えば、兵士や運動選手のパフォーマンスまたはパーソナル訓練プログラムにおいて本センサが使用される。本センサは、酸素を検知する入れ墨の形態とすることもできる。
【0046】
[0056] さらに別の実施形態では、本発明のセンサは、酸素を継続的にモニタリングするために使用可能なツールが現状存在しない神経科学分野のモニタリング用途、例えば、くも膜下出血のモニタリングに使用される。
【0047】
[0057] 一実施形態では、本発明のセンサは、スラブ状、ロッド状、シリンダ状、粒子状または粉末状とし得る固体材料である。特定の一実施形態では、本センサはロッド状である。別の実施形態では、本センサはシリンダ状である。
【0048】
[0058] 別の実施形態において、本発明のセンサは、(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願2012/0265034号に記載されるように)組織一体型足場材に組み込まれて組織一体型センサを提供する。本明細書に記載されるセンサは、通常、組織一体型足場(マトリックスとも言う)材料を含む。本発明の組織一体型足場材は、該足場材が組織一体化および/または血管新生を促進するような材料および/または微細構造によって構築され得ることが好ましい。例えば、多孔性足場材は、組織と生体材料との固着をもたらし、細孔を通じた内部成長を促進する。結果として得られる組織成長の「回廊」パターンまたは「チャネル」パターンは、健康な空間充填物として長期間持続し、かつ宿主細胞の一体化を促す。本明細書に記載される生体材料の細孔は、そのほとんどまたは全ての相互に結合されている(切れ目のない)ことが好ましい。生体材料の切れ目ない細孔構造は、埋め込み片において細胞が空間を充填するように内部成長することを促し、これによって、異物反応を制限し、かつ、埋め込み片がセンサとして機能する能力を長期間(1週間より長く、数年に至るまで)持続させることとなる。組織一体型足場材をもたらす別の構造としては、繊維(例えば、直径1〜10ミクロン以上のもの、例えば、5、6、7、8、9、10ミクロン以上のもの)があり、こうした繊維は非ランダム構成またはランダム構成に配置し得る。多光子重合技術によって(任意の構成の)組織一体型足場材を形成することもできる。Kaehr et al. (2008) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 105(26):8850−8854;Nielson et al. (2009) Small 1:120−125;Kasprzak, Doctoral Dissertation, Georgia Institute of Technology, May 2009。
【0049】
[0059] 組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、式1または式2の化合物と組み合わせて任意の材料を含んでよく、例えば、合成ポリマー、天然由来物質、またはそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。例示的な合成ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、シリコーンゴム、ポリ([ε]−カプロラクトン)ジメチルアクリレート、ポリスルホン、(ポリ)メチルメタクリレート(PMMA)、可溶性テフロン(登録商標)−AF、(ポリ)エチレンテレフタレート(PET、Dacron)、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な天然由来材料としては、繊維状または球状タンパク質、複合糖質、グリコサミノグリカン、細胞外マトリックス、またはこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、ポリマー足場材は、あらゆる種類のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、アルギニン酸、デスミン、バーシカン、マトリクス細胞タンパク質、例えば、SPARC(オステオネクチン)、オステオポンチン、トロンボスポンジン−1、トロンボスポンジン−2、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、アルブミン、キトサン等、を含み得る。天然ポリマーは足場材としてまたは添加剤として使用され得る。
【0050】
[0060] いくつかの特定の実施形態において、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、ハイドロゲルを含む。例えば、本ポリマーはハイドロゲルを、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を反応させることによってポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、pHEMAを含み得る。さらに、さまざまなコモノマーを組み合わせて使用することで、ハイドロゲルの親水性、機械的特性および膨潤性を変化させることができる(PEG、NVP、MAA等)。ポリマーの非制限的な例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(種々の分子量の)ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、グリセロールモノメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。架橋剤の非制限的な例としては、テトラエチレングリコールジメタクリレート、(種々の分子量の)ポリ(エチレングリコール)(n)ジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスアクリルアミド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。開始剤の非制限的な例としては、Irgacure系(UV)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(熱)、過硫酸アンモニウム(APS)(熱)が挙げられる。
【0051】
[0061] 組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、例えば、Ratnerらの米国特許出願公開第2008/0075752号に記載されるような逆コロイド結晶といった、球体をテンプレートとしたハイドロゲルとしてもよく、あるいはその他の組織一体型材料としてもよい。
【0052】
[0062] 組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、体内で分解可能(生分解性)なポリマー、あるいは分解プロセスを開始または加速させる外的開始剤(例えば、UV、超音波、高周波、またはその他の分解を開始させる外因的ソース)の適用により分解可能なポリマーであってよい。例えば、ポリマーは、あらゆる生分解性または生体吸収性ポリマーで構成されてよく、そのようなポリマーとしては、分解可能な形態のアルギン酸塩、ポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、微孔性ポリエステル、微孔性ポリエーテル、および架橋コラーゲンが挙げられるがこれらに限定されない。具体的な一例として、Phelps, et al (2010) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 107(8):3323−3328に記載されるような、ポリ(エチレングリコール)−ジアクリレートと、アクリル化されたプロテアーゼ分解性ペプチドと、VEGFとのUV光重合がある。
【0053】
[0063] その他の具体的な例としては、Kloxin et al (2009) Science 324:59−63や米国特許第6,013,122号に記載されるポリマーであって、その分解が外的エネルギー形態にさらされることによって制御されるポリマー、ならびにAlexeev et al. (2003) Anal. Chem. 75:2316−2323;Badylak et al. (2008) Seminars in Immunology 20:109−116;Bridges et al. (2010) 94(l):252−258;Isenhath et al. (2007) Research 83A:915−922;Marshall et al. (2004) Polymer Preprints, American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry 45:100−101;Phelps et al. (2010) Proc Nat’l Acad Sci USA. 107(8):3323−8;Ostendorf and Chichkov (2006) Two Photon Polymerization: A New Approach to MicroMachining, Photonics Spectra;Ozdemir et al. (2005) Experimental and Clinical Research, Plast. Reconstr. Surg. 115:183;米国特許出願公開第20080075752号;Sanders et al. (2003) Journal of Biomedical Materials Research Part A 67A(4):1181−1187;Sanders et al. (2002) Journal of Biomedical Materials Research 62(2):222−227;Sanders et al. (2003) Journal of Biomedical Materials Research 65(4):462−467;Sanders et al. (2005) Biomaterials 26:813−818;Sanders et al. (2005) Journal of Biomedical Materials Research Part A 72(3):335−342;Sanders (2003) Journal of Biomedical Materials Research 67(4) :1412−1416;Sanders et al. (2000) Journal of Biomedical Materials Research 52(1):231−237;およびYoung Min Ju et al. (2008) J Biomed Mater Res 87A: 136−146に記載されるポリマーがある。
【0054】
[0064] いくつかの特定の実施形態において、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、足場材料から組織反応修飾因子が放出されて組織一体化および血管新生が促進または強化されるように構築される。
【0055】
[0065] さらに、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、空洞であるか、または分解性物質、血管形成物質またはその他の物質(幹細胞等)で充填された導管、細孔またはポケットをもつように構築され得る。上述のように、いったん体内に入ると、導管、細孔またはポケットを埋めている材料の生分解によって、毛細血管を含む組織と材料とが一体化するための空間が形成される。最初に導管、細孔またはポケットを埋めていた分解性材料は足場材内における血管成長または組織成長を強化し得る。この構造によって、新しい血管の形成が促進され、埋め込み片の内部およびその周囲に健康で生存可能な組織が維持される。
【0056】
[0066] 組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、関心のある分析物に対して透過性を有するように構築され得る(例えば、酸素は、組織一体型ハイドロゲル足場材内に拡散し、ハイドロゲルマトリックス内部に埋め込まれた検知部分に到達することができる)。
【0057】
[0067] 組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、任意の好適な形状とすることができ、例えば、ブロック状(または任意の厚さ)、立方体状、ディスク型、円筒形、楕円形、円形、ランダムまたは非ランダム構成の繊維状等が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの特定の実施形態では、センサは、非ランダム(例えば、グリッド、層状グリッド等)またはランダムに組織され得る1以上の繊維を含む。
【0058】
[0068] 本明細書に記載される、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、通常、1以上の分析物を検出する検出部分と組み合わせられる(またはそれら検知部分からなる)。一実施形態では、組織一体型足場材に組み込まれた式1および/または式2の化合物の残基がこの検知部分となる。
【0059】
[0069] 別の実施形態では、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、式1および/または式2の化合物の残基に加えて、酸素を産生または消費する第2の検知部分、例えば、オキシダーゼを含み、式1および/または式2の化合物の残基は、第2の検知部分によってもたらされる酸素濃度の変化を検出するために用いられる。第2の検知部分は、例えば、基質グルコースに特異的なグルコースオキシダーゼ(GOx)のような酵素を含むことができる。グルコースオキシダーゼとの酵素的相互作用によるグルコースの反応により、酸素が比例的に消費され、H
2O
2に変換される。式1および式2の分子のようなO
2感受性蛍光色素を使用することで、酵素付近でのO
2の還元を測定することができる。これらの色素分子はO
2の存在下で失活するため、GOxの作用によるO
2の還元によって蛍光発光が増加することとなる。したがって、O
2検定部分から発光される蛍光量はセンサ中のグルコース濃度に比例する。グルコース以外の他の分析物を検出するためのグルコースオキシダーゼ以外のオキシダーゼとしては、ビリルビンオキシダーゼ、エタノールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ヒスタミンオキシダーゼ、または他の関心ある分析物に特異性を有するその他のオキシダーゼを挙げることができる。
【0060】
[0070] 組織内のO
2濃度は生理学的にも変動する場合があり、それにより検知部分における酸化物酵素(oxide enzyme)の反応が変化または制限される。したがって、センサ内のO
2濃度をオキシダーゼターゲット濃度とは独立して測定することが可能である。これは、数ナノメートル、マイクロメートル、ミリメートルスケールで、酵素−O
2検出部分からO
2参照部分を物理的に分離してクロストークを回避することで実現し得る。そのようなO
2の参照測定値は、オキシダーゼ検知部分からのグルコース特異的信号に補正を加えることを可能にする。
【0061】
[0071] 別の実施形態において、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、複数分析物のためのセンサであって、検出および報告される2以上の分析物のうちの1つが酸素であるセンサとし得る。この実施形態では、ポリマーは、酸素検出用の式1および/または式2の化合物の残基と、別の物質を検出するための第2の検知部分とを含んでいる。これらの検知部分によって検出し得る分析物の非制限的な例としては、酸素、活性酸素種、グルコース、乳酸塩、ピルビン酸塩、コルチゾール、クレアチニン、尿素、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、バソプレッシン、ホルモン(黄体形成ホルモン等)、pH、サイトカイン、ケモカイン、エイコサノイド、インスリン、レプチン、小分子薬剤、エタノール、ミオグロビン、核酸(RNA、DNA)、フラグメント、ポリペプチド、単一アミノ酸等が挙げられる。
【0062】
[0072] 別の実施形態では、組織一体型足場材の形態であることが好ましい本発明のポリマーは、式1および/または式2によって検出される酸素信号が1以上の他の分析物に関する信号を補正または較正するための参照として使用されるセンサとし得る。酸素信号は報告されてもされなくてもよく、他の分析物の信号を較正または補正するための内部アルゴリズムにおいてのみ使用され得る。この実施形態では、酸素信号を参照として使用することが、センサ部位における分析物の有効性を変化させ得る生理学的ばらつき(例えば、血流の変動)の克服に寄与する。
【0063】
[0073] さらに別の実施形態では、検知部分は、式1および/または式2の化合物の残基に加えて、第2の発光性分析物検知部分を含み、式1および/または式2の化合物の残基は参照分子として使用される。非酸素検知部分は、分析物特異的な部分、例えば、競合的結合アッセイ(例えば、リガンド受容体部分とコンカナバリンAやデキストランのような分析物類似体部分)、可逆的発光結合分子(例えば、グルコース検出用のボロン酸系センサ化学物質)、グルコース結合タンパク質のような結合タンパク質等を利用し得る。組織内のグルコース等の分析物を測定するため、ポリマーは、埋め込み片の長期寿命の間、所望の間隔で(例えば、90日以上の期間にわたって5〜60分毎)、埋め込み片上部の皮膚の上のパッチリーダから650nmの照明を受ける。(例えば、Alexafluor647等の分子からの)検出される発光信号量は、組織内の分析物(例えば、グルコース)の濃度に比例する。(例えば、式1または式2の分子からの)検出される発光信号量は、組織内のO
2濃度に比例する。組織内のO
2濃度は、センサ周辺における急性および/または慢性の生理学的変化を表しており、該濃度は、比例アルゴリズムによってグルコース信号またはその他の分析物信号を補正または調整するために使用し得る。
【0064】
[0074] 別の実施形態では、組織の光学的変化に対する補正を容易にする内部参照対照材料を採用することができる。埋め込まれた組織一体型バイオセンサは、通常、スキャン表面から3〜4mm下に存在する。皮膚において、近赤外領域の励起光および蛍光発光は、光がリーダパッチと埋め込み片との間の組織を通過する際強く散乱することが広く知られている。吸収および散乱の程度は、温度等の物理的特性、あるいは、血液かん流、水和およびメラニン濃度の違いを含むがこれらに限定されない組織の組成による影響を受ける。ユーザ間に生じる皮膚の相違もあれば、一人の患者の異なる時点において生じる皮膚の相違もあり、これらの相違が、分析物特異的信号に関して正確な信号を生じる蛍光励起および発光信号に影響を及ぼす場合がある。そのため、分析物特異的蛍光発光と区別可能な発光スペクトルを有する別の蛍光分子を足場材内に固定化させることができる。そのような分子からの蛍光発光は、組織組成の変化に関する情報を伝える信号を測定するため、分析物特異的な蛍光発光とは別個に測定することができる。色素の選択は、組織変化に対して分析物特異的色素と同様の反応を示すことに基づいて行われる。式1または式2は、例えば、高架橋PANまたはシリカシェル内に埋め込まれる等、非酸素拡散環境に組み込まれることによって、その酸素検知機能が大きく低下または消失する場合がある。このフォーマットでは、本発明の色素分子は上述の安定した内部参照対照材料として機能し得る。
【0065】
[0075] 1以上の円筒形要素(例えば、繊維)からなる組織一体型センサは、現在使用されている埋め込み片と比較して、異物反応を除去、または大きく削減する。さらに、他の公知のセンサと異なり、毛細血管供給源から検知媒体のあらゆる部分までの平均拡散距離は天然の組織に匹敵する。
【0066】
[0076] 検知媒体(埋め込み型センサ)の全体的寸法は、測定される対象および/または(1以上の)分析物によって異なるものであることが明らかであろう。通常、埋め込み片は、厚さ約0.001mmから2mmの間(またはこの間の任意の数値)であり、直径1mmから1cmの間(または円形以外の形状の場合は同等の断面積、例えば、長さ/幅)であり、長さ15mm以下であり、例えば、厚さ2mm以下、直径10mm以下のディスク状センサがある。いくつかの特定の実施形態では、おおよそのセンササイズが、直径およそ100〜1000ミクロン、長さ0.25mmから10mmの間である。ディスク状の組織一体型検知媒体のサイズは、通常、厚さ2mm以下、直径10mm以下である。
【0067】
[0077] 本発明の別の側面は、哺乳類の体内で半継続的、継続的および/または長期的に使用するための組織一体型バイオセンサシステムである。
【0068】
[0078] 本発明のポリマーの有利な特徴の一つとして、その安定性がある。本発明の一側面において、センサは、例えば、1週間超、1か月超、6か月超といった長期間にわたって哺乳類の組織内で安定する。例示的な一実施形態では、
図2に示されるように、ラットの皮膚に170日間埋め込まれた場合に、センサは安定であり、かつ安定した信号を生成する。
【実施例】
【0069】
[0079] NMR分光データを、300MHzの機器を使用して室温で記録した。NMRスペクトルは重水素化DMSO−d6またはCDCl3の溶媒信号に合わせて較正した。信号の多重度を表すために、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、br(ブロード)、m(多重線)との略号が使用される。HPLC−MS分析データは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)分光計に結合されたC18逆カラムを含むHPLCシステム使用して記録した。2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩およびテトラエチレングリコールジメタクリレートはPolysciences社から調達した。その他の化学物質はすべてSigma・Aldrich社から調達した。
【0070】
実施例1:重合性近赤外発光色素の合成
[0080] スキーム1は、近赤外発光色素の例示的な一例である化合物2(「Pd−BP」とも言う)の合成を説明している。
【化4】
【0071】
[0081] Niedermair et al, J. Inorg. Chem., 2010, 49, p. 9333に記載される方法で
化合物3を調製した。簡単に説明すると、90mLの無水THFに対し、1−ニトロシクロへキセン(2.66mL)、エチルイソシアノアセトニトリル(2.6mL)およびDBU(3.53mL)を加えた。70℃、アルゴン下で18時間反応を還流させた。加熱を開始するとすぐに茶色の析出物が生じた。THFを蒸発させ、残留物を塩化メチレンに溶解し、塩化メチレン中のシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィにより生成物の精製を行った。生成物を含む分画を真空下で蒸発させ、ほとんどの溶媒を取り除き、残留溶液にヘキサンを添加して生成物の結晶化を促した。4℃で48時間経過後、析出物をろ過により回収することで、微細な黄色針状の生成物が2g得られた。母液を部分的に蒸発させることでさらに1.4gの生成物が得られ、合計収率は75%であった。
【0072】
[0082]
化合物5:化合物3(1.40g、7.2mmol)を30mLの無水エチレングリコール中に懸濁させ、この溶液にKOHペレット(0.73g、13.0mmol)を添加した。この混合物をアルゴン下で1時間還流させた。得られた透明な茶色溶液を0℃に冷却し、該溶液に100mLのジクロロメタンを添加した。ジクロロメタン層を分離し、水(2×100mL)および塩水(2×100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。この生成物をジクロロメタン中のシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィにより精製した。高速移動する成分を含む分画を引き抜き、ジクロロメタンで希釈して1000mLとした。得られた溶液に4−ホルミル安息香酸メチルを添加し、アルゴン下、該溶液を室温で10分間攪拌し、BF
3・OEt
2(0.19mL、1.3mmol)を添加した。この混合物を2時間攪拌した後、1.73g(7.6mmol)のDDQを添加し、この混合物を一晩攪拌した。その後、10%Na
2CO
3水溶液、1MHCl、および塩水で該混合物を洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ジクロロメタン中のMeOHの段階的勾配(0〜2%)を使用したシリカゲルクロマトグラフィによる精製後、緑色粉末状の生成物430mg(24%)が得られた。
【0073】
[0083]
化合物6:遊離塩基として化合物5(0.43g、0.40mmol)を50mLのベンゾニトリルに溶解した。この溶液に対し、PdCl
2をアルゴン下で添加し、得られた混合物を10分間還流させた。溶液の色は緑色から赤色へと変化した。この混合物を室温に冷却し、200mLのジクロロメタンで希釈し、セライトを通してろ過した。ジクロロメタンを真空下で蒸発させ、ベンゾニトリルを留去した。ジクロロメタン中でシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィにより生成物を精製し、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)中のシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィを行うことで最終的な精製を達成し、赤色粉末状の生成物0.109mg(60%)が得られた。
【0074】
[0084]
化合物7:化合物6(0.105g、0.09mmol)を20mLの無水THFに溶解し、この溶液にDDQ(0.327g、1.44mmol)を添加した。この混合物を20分間還流させ、TLCで混合物中に出発物質が検出されなくなってから反応を終了させた。THFを真空下で取り除き、残留物をジクロロメタンで希釈した後、10%Na
2SO
4、水および塩水で洗浄した。
【0075】
[0085]
化合物8:Finikova et al., J. Phys. Chem., 2007, 111, p. 6977に記載される方法でエステル7を加水分解した。簡単に説明すると、0.074g(0.064mmol)の化合物7を110mLのTHFに溶解した。この溶液に対し、MeOH(10mL)を添加し、続いて2mLのMeOH中に0.573gのKOHを含む溶液を添加した。溶液中には緑色析出物が生じ、溶液はほぼ無色となった。この析出物を遠心分離で回収し、10mLの水に溶解した。この溶液を0.2mLの濃塩酸で酸性化し、得られた析出物を遠心分離で回収した。収率:0.070g(86%)。
【0076】
[0086]
化合物2:0℃のDMF(10mL)およびCH
2Cl
2(10mL)中の化合物8(70mg、63.9μmol)を、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(43.17mg、0.32mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(61.25mg、0.32mmol)およびトリエチルアミン(90μL、0.64mmol)に添加した。20分後、2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩(53.23mg、0.3195mmol)を添加し、室温で16時間、反応を攪拌させた。上記CH
2Cl
2を減圧下で蒸発させ、酢酸エチル/ヘキサン混合物を添加して残留するDMFから粗生成物を析出させた。溶媒のデカンテーションを行い、析出した残留物をCH
2Cl
2に溶解した後、飽和NaHCO
3および塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、真空で濃縮した。シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィ(CH
2Cl
2中の0〜4%のメタノール勾配)で粗生成物を精製することで緑色粉末状の化合物2が得られた(16mg、収率16%)。1H NMR(300MHz,CDC1
3)δ8.40(d,J=8.1Hz,8H),8.32(d,J=8.1Hz,8H),7.22(br s,8H),7.10(br s,8H),6.28(s,4H),5.71(s,4H),4.61(t,J=5.4Hz,8H),4.03(q,J=5.1Hz,8H),2.06(s,12H)。LC−MS(ESI):C
88H
73N
8O
12Pdについて算出:1539.4403[M+H]+,実測値1539.4405[M+H]+,Rt=11.8分。
【0077】
[0087]
化合物9は、スキーム2に示すように、HOBtおよびEDCの存在下、市販のテトラカルボキシフェニルポルフィリンとアミノエチルメタクリレートとを反応させることで、化合物2と同様にして合成した。
【化5】
【0078】
実施例2:組織一体型ハイドロゲル足場材に固定化された酸素感受性発光色素を有する酸素検知媒体の生成
[0088] 以下、本明細書に記載される通りの組織一体型センサを製造する一つの方法について説明する。この方法は、非架橋PMMAテンプレートマイクロ粒子と、pHEMAとを足場材料として使用することを含む。PMMAマイクロ粒子テンプレートは、単分散PMMA粒子(20〜100μm、好ましくは80μm)を使用し、テンプレートビーズを2枚のスライドガラスの間にテフロン(登録商標)スペーサを用いて載置することで調製した。焼結プロセスは、ビーズを密にパッキングするための少なくとも10分間の(1回以上の)超音波処理を含むものであった。超音波処理の後、ビーズを融合させるため、十分な温度まで十分な時間をかけてテンプレートを加熱する(通常、20〜32時間かけて140〜180℃まで、例えば、24時間かけておよそ177℃まで加熱する)。温度および加熱時間はビーズの各ロットに対して最適化される。
【0079】
[0089] 酸素を検知するポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)足場材の全般的調製は以下のように行った。HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(50wt%)、TEGDMA(トリエチレングリコール−ジメタクリレート)(1wt%)、エチレングリコール(20wt%)、水(25.5wt%)、光開始剤Irgacure651(0.5%vol/vol)、および3%のパラジウム−テトラメタクリレート−ベンゾポルフィリン(化合物2、重合性O
2検知色素)を混合し、ポリマー前駆体溶液中の化合物2の最終濃度1mMを得た。ポリマー、溶媒および検知試薬を混合し、組織を通して信号の変化を測定可能な程度に検出できるよう十分高い検知化学物質濃度を達成した。
【0080】
[0090] 予備混合したモノマー溶液をPMMA鋳型内に充填した。溶液を真空下に置いて、泡を取り除き、PMMA鋳型を完全に浸潤させた。鋳型をUV光(280〜320nm、10〜300mW/cm2)に5〜10分間暴露することで重合を開始させた。続いて、ソックスレー抽出器を使用し、手動の体積変化により、24〜48時間の間ジクロロメタンまたはその他の溶媒系の交換を頻繁に行うことで、得られたポリマーからPMMAマイクロ粒子を溶出させた。
【0081】
[0091] 以下では、ロッド状ハイドロゲルセンサの調製について説明する。化合物2の10mMのDMSO溶液100μLをポリマー前駆体溶液[2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.5mL、4.1mmol)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(10μL、34μmol)、エチレングリコール(0.2mL)、水(185μL)および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(5mg、2μmol)]に添加して、化合物2の最終濃度1mMを得た。既にMarshall, A.J. et al. (Biomaterials with Tightly Controlled Pore Size that Promote Vascular In−Growth. ACS Polymer Preprints 45, 100−101 (2004))によって記載される通りに、色素とポリマー前駆体との混合物を、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ビーズを含有するガラス鋳型に注入した。この鋳型を真空下に置くことで泡を取り除き、充填が完全に行われるようにした。400ワットの水銀球を搭載したDymax2000−ECフラッド硬化システム(Flood Curing System)を使用し、およそ6”(インチ)の距離から鋳型の各面をUV光(280〜320nm)で2分ずつ暴露することで重合を開始させた。ガラスプレートを取り除き、ハイドロゲルを50mLのCH
2Cl
2(2回交換)に浸漬し、24時間振動させることでPMMAビーズを抽出した。ハイドロゲルを水中に移動し、5分間真空下に置くことで、多孔性足場材を完全に水和させた。埋め込みのため、ハイドロゲルをロッド状(長さ10mm、断面積750μm×750μm)にカットし、70%エタノールに曝して殺菌した後、使用までの間、4℃でpH7.4の無菌PBS中に保管した。テンプレートビーズを使用しないこと以外は同様にして、非多孔性(すなわち、固体)ハイドロゲルセンサを調製した。
【0082】
[0092] また、足場材を調製するために使用する重合混合物にGOxをさらに含ませること以外は上述の通りの方法で、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含むハイドロゲルを調製した(
図5)。
【0083】
実施例3:ハイドロゲルに組み込まれた化合物2の励起および発光波長の測定
[0093] 実施例2で作成した色素含有ハイドロゲルの吸光および発光スペクトルを、蛍光プレートリーダを使い、周囲大気においてpH7.4のPBS中で測定した(
図1)。吸光スペクトルは、445nmにソーレー帯、633nmにQ帯を含んでいた。633nmの励起によって805nmの発光ピークが生じたことから、Pd−BP(化合物2)はNIR域に吸光と発光の双方を示すことが確認された。
【0084】
実施例4:ハイドロゲル中の最適色素濃度の決定
[0094] 最大強度信号を達成するために必要となる最小色素濃度を決定するため、異なる濃度のPd−BP(化合物2)を含有する一連のpHEMAハイドロゲルを作成した。共有結合Pd−BP(化合物2)を0.01mM、0.1mM、1mM、2mMおよび3mMの色素濃度で含有する固体および多孔性pHEMAハイドロゲルを調製した。全てのゲルは厚さが1mm以下であり、多孔性ゲルの平均孔径は70μm以下であった。周囲空気中、pH7.4のPBS中で、蛍光プレートリーダを用いて805nmにおける各ゲルの蛍光発光(633nm励起)を測定した。これらのデータから、1mMより高い濃度では信号飽和が見られたため、最適色素濃度は1mMであることが判明した。
【0085】
実施例5:NIRベンゾポルフィリンの光退色の特性決定
[0095] 共有結合された化合物2を含むハイドロゲルを用いて光退色調査を行い、化合物2および9の光安定性を測定した。LEDで照明しながら、生理的条件(pH7.4PBS、37℃、21%O
2)をシミュレートするように特注された流液システム(flow−through system)でハイドロゲルをテストした。直径1mmの光ファイバケーブルにより、ゲルサンプルの底面に励起光を直接当てた。2秒のパルス長(LEDの「ON時間」)と5秒のパルス間隔で40%の全デューティサイクルを達成する525nmのLED源(出力=127mW/cm
2)を用いて化合物9を含むハイドロゲルを励起させる一方、同じデューティサイクルの630nmLED源(出力=143mW/cm
2)を用いて化合物2を含むハイドロゲルを励起させた。上記条件の下、連続して15時間実験を行った。しかし、化合物2の寿命信号には5%未満の変化しか見られなかった。この実験で得られたデータを使用して、長期的なin vivoでの使用中に起こり得る光退色の予測される程度およびその速度を推定する。
【0086】
[0096] シミュレートされた使用条件での試験において上記色素を含むゲルは極めて光安定的であった(
図6)。これらのデータは、寿命信号の測定が、in vivoで長期(5か月)安定性を達成するための好ましい手法であることを示している。Pd−BP化合物の光安定性は、他のいずれかの場所で開示されている技術、例えば、金属コアの変更、あるいは主剤のフッ素化または過フッ素化等によってさらに向上させることが可能である。
【0087】
実施例6:埋め込み
[0097] 19〜23ゲージの挿入針、トロカール、変形された生検デバイス、または皮下注入用に設計されたその他のデバイス内に、直径300〜500nm、長さ5mmのロッド状に作成された組織一体型センサを配置する。より小型の挿入針が使用できるように、挿入前に、任意でセンサを脱水または圧縮してもよい。
【0088】
[0098] 挿入後、挿入針が皮膚表面下4mmまでに皮膚表面と平行になるように皮膚をつまみ上げる。流体または逆置換(reverse displacement)プランジャ(またはトロカール)を使用して、シリンジが引き抜かれる際にセンサが組織内に残されるようにする。挿入部位としては、任意の皮下または真皮領域、典型的には腹部、腕部および大腿部を挙げることができる(
図4)。研究モデルでは、背面皮膚、腹部、後肢および脳(
図3)の全てについて調査した。以下では、ラットモデルにおけるハイドロゲルの埋め込み、in vivo蛍光イメージングおよびデータ分析の一例について説明する。
【0089】
[0099] ハイドロゲルの埋め込みおよびin vivo蛍光イメージング
ハイドロゲルセンサ(n=3〜4の多孔性センサおよびn=3〜4の固体センサ)を、12頭の成体のオスのCDラット(Charles・River・Labs社、150〜250g)の皮下組織に、1週間、4週間、または170日間注入した。センサを注入する間、ラットには2〜3%のイソフルラン(酸素中のv/v)による麻酔を行った。多孔性および固体ハイドロゲルロッド(長さ10mm、断面積750μm×750μm)を18ゲージ針に装填した後、正中線に対して直交する背面皮下空間に挿入した。カニューレを通してステンレス製のプランジャを挿入することで針からセンサを放出させた。ハイドロゲルセンサはおよそ1.5cm離して埋め込まれた。ラットは正常に成長し、センサ注入後の数週間、不快な様子を示すことはなかった。
【0090】
[00100] IVISスペクトルまたは動的イメージングシステム(アメリカマサチューセッツ州ウォルサム、Perkin・Elmer社)を使用し、in vivoで30秒ごとに1回、酸素センサの蛍光イメージングを行った。イメージング前、1.00のFIO2で、2%イソフルランによる麻酔を30分間ラットに対して行った。in vivoイメージング中にFIO2を少なくとも2回調節して5〜10分で0.12(v/v、窒素出納(N
2 balance)まで下げた後、10〜15分で1.00に戻した。センサ周囲の関心領域(ROI)を識別し、このROIにおける平均放射効率をIVISシステムに含まれる生体イメージソフトウェア(Living Image Software)を使用して測定することで、各センサの相対的反応(強度)を定量化した。
【0091】
[00101] 埋め込み当日、Oxford Optronics OxyLiteシステムを組織酸素化の参照として使用した。Braun, et. al.(Comparison of tumor and normal tissue oxygen tension measurements using OxyLite or microelectrodes in rodents. Am J Physiol Heart Circ Physiol 280, H2533−2544 (2001))に記載されるように、センサ注入日(0日目)に、針に収容したOxyLiteプローブをラットの背部に皮下挿入し、データ収集前に10〜15分かけて信号が安定状態に達するようにした。
【0092】
[00102] データ分析および統計的試験
ROIによって特定された各センサのデータは正規化を行って最大および最小平均放射効率とし、かつ、上記データを反転させて蛍光データと組織酸素化との間に正の相関関係を有するようにした。この正規化により、それぞれの別個の実験に関する各センサのデータを、それぞれ各センサの最大強度および最小強度である0と1の間に収めることができた。
【0093】
[00103] 動物の健康上の懸念から暴露時間を短く(5〜10分)する必要が生じたために低酸素試験の間に平坦域に至らないセンサが多くあった。そのため、センサの応答時間を算出するため、10分間の低酸素(FIO2=0.12)事象または15分間の高酸素(FIO2=1.00)事象のいずれかの間において、90%の蛍光強度変化量を達成するまでの時間(T90%)を測定した。FIO2変更事象の最後の3分間が合計変化量の10%未満であった場合、センサは安定状態に達していたと判定した。データについては、ノンパラメトリックなウィルコクソンの順位和検定(p<0.05)を用いた統計的有意性に関するテストを行った。
【0094】
[00104] 組織学的分析
ラットを犠牲として、センサおよび周辺組織を取り出し、液体窒素中で急速冷凍し、−80℃で保管した。低温維持装置Leica CM1850上で、凍結組織サンプルを厚さ10μmの凍結切片とし、ポリL−リジンでコーティングされたスライドガラスに載せた。ラットCD31(カリフォルニア州サンホセ、BD・Biosciences社)については切片を免疫染色した。簡単に説明すると、スライドを室温で20分間、アセトン中に固定し、1倍PBSでリンスし、染色緩衝液(1倍PBS中に5%の正常ロバ血清を含むもの)で30分間ブロッキングし、染色緩衝液中に1:200の割合で含まれるマウス由来ラットCD31一次抗体で1時間培養し、抗マウスAlexa Fluor 488(Jackson・Immuno・Research社)で30分間培養し、Hoechst33342(Invitrogen)を用いて室温で5分間染色した。4%パラホルムアルデヒド中にサンプルを固定し、同日、イメージングを行った。12ビットCCDカメラ(QImaging社)と、Ludl Mac5000駆動ユニット(Ludl社)で駆動される自動スキャンステージ(Marzhauser社)とを搭載したZeiss AxioSkop II+蛍光顕微鏡を用いて、サンプルの蛍光イメージングを行った。5倍の対物レンズ(NA0.25、Zeiss社)を使用して多数の顕微鏡写真を取得した後、Metamorphソフトウェアを使用してそれらをつなぎ合わせて合成画像を作成した。露光は、低照明強度、1×1ビニング(ピクセルサイズ:1.36μm×1.36μm)、通常取得期間100msに設定した。この実験の結果を
図11に示す。
【0095】
実施例7:測定
[00105] センサからのデータを、センサ位置の直上の皮膚表面に配置された蛍光リーダで収集し、このデータを処理して、スマートフォン、その他の携帯用デバイス、コンピュータ画面に、またはその他の視覚化フォーマット、例えば、市販のデータ表示デバイスを使用して表示する。未加工データを変換して、分析物濃度または分析物濃度を示す何らかの非定量的表示(例えば、高、低、範囲内)とする。任意の時点における数値、またはトレンド(経時的グラフ)、または一定期間における概略的統計値を求める。任意選択で、上記データの質を表す指標を求める。HEMAとNIRのPd−BPとの共重合およびHEMAと緑色励起Pd−TCPPとの共重合により調製されたハイドロゲルをラット胴体の皮下に埋め込み、その発光を測定した(
図2)。Pd−BPは、NIRの励起および発光波長であるためPd−TCPPよりも極めて明るく、そのため、皮膚内に光が非常によく浸透し、より深いセンサ配置が可能であった。より良好な免疫応答のためにはより深い配置が望ましいが、もともとの緑色Pd−TCPP信号の大部分は、皮膚によって拡散および/または吸収される等、ブロックされてしまうため、そのような深い配置はこれまでできなかった。浅い真皮埋め込み片のみが可能であった。さらに、Pd−BPハイドロゲルは、マウスの頭蓋骨下(マウスの脳内部)深くに埋め込まれた場合に明るい検出可能信号を生成した。
【0096】
実施例8:ラット皮膚に埋め込まれたセンサの安定性
[00106] 酸素センサをラットの皮膚に埋め込み、その信号強度を170日間モニタリングした。
図4は、マウスの皮膚に170日間埋め込まれたセンサの蛍光発光を示している。強度は埋め込み深さの関数として変化した(データはベースライン蛍光に対して正規化を行った)。吸入酸素を100%から12%の間で調節し、Caliper IVIS(スペクトル:Ex=640nm、Em=800nm、帯域幅20nm)で30秒ごとにイメージを収集した。関心領域(ROI)をセンサの周囲に設定し、時間に対してデータをプロットした(
図6)。このデータは、本発明の色素を用いて作成したセンサが何か月もの間in vivoで機能を維持することを示している。さらに、組織一体型センサを固体センサと比較した。組織一体型センサは固体センサに比べて酸素レベルの変化に対するより速い動的応答をもたらしており、このことは、組織一体型センサのさらに別の有利な特性を示している。
【0097】
実施例9:低酸素濃度におけるin vitro酸素検出
[00107] Pd−BPの酸素感受性を特性付けるため、多孔性HEMAハイドロゲル中の色素の強度および発光寿命を異なるO
2レベル(0%、12%および20%のO2)で測定した(
図8)。ハイドロゲルは、TauTheta社の光ファイバ機器でモニタリングを行いながら、特注の流液システム(pH7.4PBS、37℃)で試験を行った。色素は、シュテルン−フォルマー・プロットで示される通りの良好なO
2感受性とともに良好な可逆性を示した。
【0098】
実施例10:グルコースセンサの調製および特性決定
[00108] 上述の共有結合Pd−BPを含むpHEMAハイドロゲルにグルコースオキシダーゼ(GOx)を封入した。得られたセンサの多孔性形態をSEMで確認した(
図5)。流液システム(PBS、37℃)において、GOx−Pd−BPセンサを、そのグルコース応答について試験した。ゲル内部のPd−BPの発光強度および寿命を、生理的範囲に及ぶ一連のグルコース変移の間モニタリングした(
図9)。(グルコース濃度が一定に保たれている)平坦域において強度および寿命がわずかに低下するのは、試験リザーバ内のグルコースがGOxによって消費されるためである。
【0099】
実施例11:ブタ皮膚に対するO
2センサの埋め込み
[00109] 化合物2を含むポリマーから調製されたO
2センサをブタに注入する急性ブタ実験を行い、この実験から外植片試料を得た。センサ信号を取得した。蛍光寿命および強度の測定値を収集した。センサ信号測定値を取得後、ブタを犠牲として、試料を10%のホルマリンに固定し、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。倍率40倍のニコン顕微鏡と、Infinity1顕微鏡用カメラおよびソフトウェア(バージョン6.1.0、Luminera社)とを用いて、イメージおよび深さ測定値を取得した。重複するイメージを連続して得ることで最終的な合成イメージを作成した。
図10は、皮膚表面下8mmの深さに埋め込まれたことが判明したセンサを示している。
図10から、皮膚表面下8mmのセンサ埋め込み深さであっても調節センサ信号を検出可能であったことが分かる。
【0100】
[00110] 本明細書において、本発明の好適な実施形態を示し、それらを説明してきたが、それらの実施形態は例示の目的でのみ提供されることが当業者には明らかであろう。当業者には、本発明を逸脱することなく、多数の変形、変更および置換が想起されるだろう。本発明の実施にあたっては、本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替例を適用し得ることが理解されるべきである。本発明の範囲は添付の請求の範囲によって画定され、かかる請求の範囲に含まれる方法および構造ならびにそれらの均等物がその請求の範囲によってカバーされることが意図されている。
【0101】
[00111] 本明細書において言及される全ての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全体がここに組み込まれる。明確な理解のため、説明または例示として詳細な開示がなされているが、かかる開示の趣旨または範囲を逸脱することなくさまざまな変更および変形が可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、これまでの記載および例示を制限的なものと解するべきではない。