特許第6244006号(P6244006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244006透明カーボンナノチューブ高分子複合導電インク及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244006
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】透明カーボンナノチューブ高分子複合導電インク及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20171127BHJP
   C01B 32/158 20170101ALN20171127BHJP
【FI】
   C09D11/52
   !C01B32/158
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-503525(P2016-503525)
(86)(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公表番号】特表2016-519700(P2016-519700A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】CN2014072623
(87)【国際公開番号】WO2014146534
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】201310089765.2
(32)【優先日】2013年3月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177893
【氏名又は名称】北京阿格蕾雅科技発展有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ハウ▼ 海燕
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0015098(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/030123(WO,A1)
【文献】 特開2012−097219(JP,A)
【文献】 特開2012−097209(JP,A)
【文献】 特開2010−168445(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101486836(CN,A)
【文献】 国際公開第2008/088028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00− 11/54
C01B 32/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、
(1)純化された改質後のカーボンナノチューブ0.01〜1重量%、
(2)導電高分子0.17〜2重量%、
(3)導電高分子共溶媒0.43〜5重量%、
(4)界面活性剤0.01〜0.05重量%、
(5)高分子改質助剤0.037〜0.44重量%、
(6)100重量%になるように加えられる脱イオン水、を含み、
前記高分子改質助剤は、プロパンジオール、プロパントリオール、エチレングリコールブチルエーテル、ソルビット、ジメチルスルホキシド、N−Nジメチルフォルムアミド中の1種又は複数種であり、
前記導電高分子は、ポリアニリン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン又はポリピロールであり、対応する導電高分子共溶媒は、ポリスチレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸又はナフタレンスルホン酸である透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調方法であって、
(1)カーボンナノチューブの純化改質:カーボンナノチューブに30%HNO溶液を加え、超音波で40min分散した後、50〜70℃で30min撹拌し、200μmの多孔質濾過膜を用いて濾過し、中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥し、純化された改質後のカーボンナノチューブを得るステップと、
(2)所定量の純化された改質後のカーボンナノチューブを界面活性剤と混合して所定量の水に溶解し、超音波分散装置と機械撹拌によって十分に分散し、得られた分散液を200μmの貫通孔濾過膜を用いて数回濾過し、得られた濾液をカーボンナノチューブ分散液とするステップと、
(3)導電高分子、導電高分子共溶媒の高分子体改質:所定量の高分子改質助剤を導電高分子、導電高分子共溶媒に加え、超音波分散と機械撹拌を行うことによって澄清な溶液を形成し、該溶液を200μmの貫通孔濾過膜を用いて数回濾過するステップと、
(4)前記(2)のステップと前記(3)のステップで得られた溶液を混合し、超音波と機械撹拌の方法で安定した均一な透明カーボンナノチューブ高分子導電インクを形成するステップと、
を有する透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調製方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、二壁カーボンナノチューブ又は多壁カーボンナノチューブ粉体である請求項1に記載の透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調方法。
【請求項3】
前記界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はポリビニルピロリドンである請求項1に記載の透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調方法。
【請求項4】
前記導電高分子はポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、前記導電高分子共溶媒はポリスチレンスルホン酸ナトリウムであり、前記界面活性剤はポリビニルピロリドンである請求項3に記載の透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調方法。
【請求項5】
前記導電高分子は、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、前記導電高分子共溶媒は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンスデバイスに関し、特に透明電極用の透明カーボンナノチューブ高分子複合導電インク及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、OLEDパネル、タッチスクリーン、電子ペーパー、太陽電池等の表示装置及び光起電装置において、透明電極は、不可欠な部分となっている。酸化インジウムスズ(ITO)は、ガラスサブストレートの上にITO薄膜を形成して優れた透光性と導電性を示すことから、現在、産業化透明電極の応用分野で主導的な地位を占めている。しかしながら、科学技術の発展と透明電極応用分野の多様化に伴って、透明電極は、低いシート抵抗、可視光線範囲内における良好な透過率、可撓性を備えなければならず、且つ、大面積で細かく塗布して成膜することを実現できるという簡単な操作プロセス等の要求を満たさなければならないようになっている。そのため、ITO薄膜の拡張応用に技術的に克服できない問題が存在している。Inは、希元素であり、世界での貯蔵量が少なく、また、薄膜におけるInの含有量が高いので、調製のコストが高い。ITO薄膜は、脆いので、周期的に複数回曲げたり圧縮した後、割れ目が現われやすく、導電性が失われてしまう。ITO薄膜は、低温で対応するプラスチック基板に沈積している時、膜層に比較的高い表面抵抗と粗さが現われる。従って、新規な可撓性透明電極材料を開発してITO電極を代替することは、電子表示分野と光起電力等の応用分野の発展にとって、解決しなければならない技術的難題となっている。
【0003】
カーボンナノチューブは、典型的な層状中空構造特徴を有する炭素材料となっており、カーボンナノチューブを構成するチューブ本体は、特別な構造(径方向寸法がナノメートルオーダー、軸方向寸法がマイクロメートルオーダー)を有する一次元量子材料となる六角形の黒鉛炭素環構造単位で組成されている。その管壁は、主に数層〜数十層の同軸円管で構成されている。各層の間に、例えば約0.34nmといった所定の距離が保持されており、直径が、一般的に2〜20nmである。カーボンナノチューブにおける炭素原子のP電子は、大範囲の非局在化π結合を形成しており、共役効果が著しいので、カーボンナノチューブは、いくつかの特別な電気学性質を有している。カーボンナノチューブの構造は、黒鉛の積層構造と同様であるので、好ましい電気学性能を有している。カーボンナノチューブ材料は、その高い電子移動度、低い抵抗及び高い透明度によって科学研究と産業界にITOを代替可能な透明電極と認められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンナノチューブと導電材料を複合層にすれば、透明電極の導電性能を増加することができる。現在の方法としては、一般的に、カーボンナノチューブと導電材料を混合液にしてから、電極に吹き付けたり又は印刷したりする。、しかしながら、カーボンナノチューブは、構造の特殊性によって他の物質との相溶性が悪い。そのため、混合液におけるカーボンナノチューブの分散性は悪く、また混合液は不安定であり、沈積しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、改質したカーボンナノチューブ及び導電高分子を原材料とし、特別に選択した共溶媒を用い、且つ、溶液の混合プロセス技術によってカーボンナノチューブと導電高分子溶液の均一な分散を実現した新規な透明カーボンナノチューブ高分子導電インクが開発され、調製されたインクは、安定性と再分散性が良好である。
【0006】
本発明は、更にこの透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調製方法を提供する。
【0007】
成分として、
(1)純化された改質後のカーボンナノチューブ0.01〜1重量%、
(2)導電高分子0.17〜2重量%、
(3)導電高分子共溶媒0.43〜5重量%、
(4)界面活性剤0.01〜0.05重量%、
(5)高分子改質助剤0.037〜0.44重量%、
(6)100重量%になるように加えられる脱イオン水、を含み、
前記高分子改質助剤は、プロパンジオール、プロパントリオール、エチレングリコールブチルエーテル、ソルビット、ジメチルスルホキシド、N−Nジメチルフォルムアミド中の1種又は複数種であり、
前記導電高分子は、ポリアニリン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン又はポリピロールであり、対応する導電高分子共溶媒は、ポリスチレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸又はナフタレンスルホン酸である透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調方法であって、
(1)カーボンナノチューブの純化改質:カーボンナノチューブに30%HNO溶液を加え、超音波で40min分散した後、50〜70℃で30min撹拌し、200μmの多孔質濾過膜を用いて濾過し、中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥し、純化された改質後のカーボンナノチューブを得るステップと、
(2)所定量の純化された改質後のカーボンナノチューブを界面活性剤と混合して所定量の水に溶解し、超音波分散装置と機械撹拌によって十分に分散し、得られた分散液を200μmの貫通孔濾過膜を用いて数回濾過し、得られた濾液をカーボンナノチューブ分散液とするステップと、
(3)導電高分子、導電高分子共溶媒の高分子体改質:所定量の高分子改質助剤を導電高分子、導電高分子共溶媒に加え、超音波分散と機械撹拌を行うことによって澄清な溶液を形成し、該溶液を200μmの貫通孔濾過膜を用いて数回濾過するステップと、
(4)前記(2)のステップと前記(3)のステップで得られた溶液を混合し、超音波と機械撹拌の方法で安定した均一な透明カーボンナノチューブ高分子導電インクを形成するステップと、
を有する透明カーボンナノチューブ高分子導電インクの調製方法である。
【0008】
前記カーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、二壁カーボンナノチューブ又は多壁カーボンナノチューブ粉体である。
【0012】
前記界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はポリビニルピロリドンである。
【0015】
前記導電高分子リ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)であり前記導電高分子共溶媒は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の処方において改質後のカーボンナノチューブ、導電高分子及び脱イオン水を基礎とする他に、更に導電高分子共溶媒、高分子改質助剤及び界面活性剤が添加されることで、カーボンナノチューブの分散性能が著しく向上し、同時に、このインクの安定性と再分散性が良好である。
【0017】
カーボンナノチューブは、導電薄膜の導電伝送材料として、導電高分子系への分散が非常に重要である。しかしながら、カーボンナノチューブは、表面張力が大きいので、凝集して顆粒状を形成しやすい。そのため、カーボンナノチューブを均一にこのインク系に分散することは非常に肝心である。本特許技術において、酸性化の方法によってカーボンナノチューブの表面の不定形炭素を除去すると共に、カーボンナノチューブの表面に例えばOH、COOH類の官能基を結合して、カーボンナノチューブの凝集を低減させ、カーボンナノチューブの溶解性を増加させた。また、界面活性剤によってカーボンナノチューブの表面張力を調整することで、カーボンナノチューブのインク系での分散安定性を増加可能である。
【0018】
導電高分子そのものは、水に溶解しにくい物質であるが、高分子共溶媒の結合作用で溶解可能な溶液系を形成することができる。その導電特性を調整するために、高融点の物質即ち導電助剤を加えてその導電性能を増強することができる。
【0019】
本発明では、改質したカーボンナノチューブ及び導電高分子を原材料とし、溶液混合のプロセス技術によってカーボンナノチューブと導電高分子溶液の均一な分散を実現した新規な透明カーボンナノチューブ高分子導電インクが開発された。調製されたインクは、安定性と再分散性が良好である。この透明なカーボンナノチューブ高分子導電インクは、室温条件でスピンコーティング、インクジェット印刷等の装置によって細かい電極パターンを作成することができ、更に、フォトエッチングプロセスによって電極パターンを細かく作成することを実現する可能性もあり、更にフォトエッチング型の導電インクにして、細かい構造の電極パターンを一度だけで作成することを実現する可能性もある。
【0020】
この透明CNTインクは、可撓性OLED表示装置、太陽電池、液晶表示、タッチスクリーンパネル等のデバイスにおける極透明電極材料に応用可能であり、透明高分子サブストレートとの相溶性が好ましく、付着力が強く、可撓性電極の耐用年数が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】カーボンナノチューブ(CNT)及びCNT/PEDOT:PSS(実施例1)薄膜の表面形態検出図である。
図2】実施例1で調製された薄膜の光学透過率の検出結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
【0023】
(実施例1)
改質後のカーボンナノチューブ 0.05%
ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンPEDOT 1%
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムPSS 1%
PVP 0.03%
プロパントリオール 0.08%
ジメチルスルホキシド 0.08%
エチレングリコールブチルエーテル 0.03%
水 97.8%
【0024】
調製方法:
プロセスのステップ:
(1)カーボンナノチューブの純化改質:カーボンナノチューブに30%HNO溶液を加え、超音波で40min分散した後、50〜70℃で30min撹拌し、200μmの多孔質濾過膜で濾過し、中性になるまで洗浄し、100℃で乾燥し、純化されたカーボンナノチューブを得た。
(2)所定量の純化されたカーボンナノチューブを界面活性剤PVPと混合して所定量の水に溶解し、超音波分散装置と機械撹拌によって十分に分散し、得られた分散液を200μmの貫通孔濾過膜を用いて数回濾過し、得られた濾液をカーボンナノチューブ分散液とした。
(3)PEDOT、PSSの高分子体改質。所定量の高分子改質助剤をPEDOT、PSS溶液に加えた。超音波分散と機械撹拌を行うことによって、澄清な青色溶液を形成した。溶液を200μmの貫通孔濾過膜を用いて数回濾過した。
(4)所定の割合によってステップ(2)とステップ(3)で得られた溶液を混合し、超音波と機械撹拌の方法によって安定した均一な透明カーボンナノチューブ高分子複合導電インクを形成した。
【0025】
(実施例2)
改質後のカーボンナノチューブ 0.05%
ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンPEDOT 0.8%
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムPSS 1%
PVP 0.05%
ソルビット 0.12%
ジメチルスルホキシド 0.08%
エチレングリコールブチルエーテル 0.025%
水 97%
【0026】
調製方法は実施例1と同様である。
【0027】
透明なカーボンナノチューブ高分子導電インクは、室温条件でスピンコーティング、インクジェット印刷等の装置によって細かい電極パターンを作成することができ、更にフォトエッチングプロセスによって電極パターンを細かく作成することを実現する可能性もあり、更に、フォトエッチング型の導電インクにして細かい構造の電極パターンを一度だけで作成することを実現する可能性もある。
【0028】
実験例:実施例1の導電インクをスピンコーティングして電子ガラスサブストレートの上に導電膜を形成した。図1を参照する。実施プロセス:回転数3000rpm、時間30s、ベーキング温度120℃、ベーキング時間20min。
【0029】
得られた単層膜の厚さは19〜23nmであり、三層膜の厚さは55〜60nmであり、300〜600nmの波長範囲内において光学透過率(サブストレートに対して)は全て、90%より大きかった。三層薄膜のシート抵抗は150〜200Ω/□に達した。表1、図2を参照する。
【0030】
【表1】
図1
図2