(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244018
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキ倍力装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
B60T13/74 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-520463(P2016-520463)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-521660(P2016-521660A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2014062830
(87)【国際公開番号】WO2014206830
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】1356267
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】志波 正貴
(72)【発明者】
【氏名】リュイリエー ロラン
(72)【発明者】
【氏名】オーギュスト アンソニー
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−108920(JP,A)
【文献】
特開昭62−132024(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02860474(FR,A1)
【文献】
特表2012−530645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その動作方向に押圧ロッドによって押圧され、該押圧ロッドは倍力ピストンに対して支持される、マスタシリンダのプライマリピストンを含む電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
該電気機械式ブレーキ倍力装置は、
その動作方向において倍力ピストン(300)をプライマリピストン(200)に連結する押圧ユニット(100)を備え、
該押圧ユニットは、
−その球状のキャップ状のフロント側端部(115)がプライマリピストン(200)のカップ(201)内部で支持され、リヤ側端部がボールジョイント(116)を備えるプランジャ(110)と、
−リアクションディスク(310)上で支持される基部(121,141)、及び、前記プランジャ(110)の前記ボールジョイント(116)を収容するスリーブ(122,142)を備えるベアリング(120,140)と、
を含んでおり、
前記ボールジョイント(116)は、前記スリーブ(122,142)の内側において、前記プランジャ(110)の軸(XX)方向における移動が制限された状態で回転可能である、
ことを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
−前記押圧ユニット(100)は、チューリップ状のグリッパ(130)を備え、そのぺタル(132)は外側に突起状をなす締付端部(134)を備え、内側においては、弾性を有して前記プランジャの前記ボールジョイント(116)の収容孔(131)を画定するつば(133)を形成し、
−前記ベアリング(120)の前記スリーブ(122)は、前記グリッパ(130)の前記ぺタル(132)の前記端部(134)の支持に用いられる内側の陥凹(123)を備え、
−前記グリッパ(130)は、組立体が、前記スリーブ(122)の前記陥凹(123)への前記ぺタル(132)の前記端部(134)の固定によって、前記スリーブ(122)内に係合され連動する前に、前記プランジャ(110)の前記ボールジョイント(116)上に配置される、
ことを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記スリーブ(142)は、前記プランジャの前記ボールジョイント(116)用のカップをなす孔(143)を構成し、前記スリーブは、前記ボールジョイントを回転自在に保持するために、前記孔(143)の手前に圧着帯(145)を備える、
ことを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記プランジャ(110)は、該プランジャ(110)がその前記プライマリピストン(200)への配置の前において、軸(XX)に対する前記プランジャの傾斜を制限するために、前記スリーブ(122,142)に連結された時点では、前記スリーブ(122,142)の縁部(124,144)から離間したアウタリング(119)を備える、
ことを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置であって、
前記プランジャ(110)は、別体として実施され、ブレーキ倍力装置の種類に応じて前記プランジャが有することになる長さに応じて組み立てられる2つの部分(111,112)から構成される、
ことを特徴とする電気機械式ブレーキ倍力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その動作方向に押圧ロッドによって押圧され、押圧ロッドは倍力ピストンに対して支持されるマスタシリンダのプライマリピストンを含む電気機械式ブレーキ倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械式ブレーキ倍力装置において、プライマリピストンは、真空ブレーキ倍力装置の押圧ロッドと同一の押圧ロッドによって押圧され、かかる真空ブレーキ倍力装置においても、押圧ロッドは、ラックアンドピニオントランスミッションを介して倍力ピストンを連動させる空圧式又は電動機式制動力増幅器によって動作する倍力ピストンに対してリアクションディスクを介して支持されたピストンの形状のベースプレートに連結された本来のロッドから形成される。
【0003】
空圧式ピストンに連動する倍力ピストンの場合、アセンブリは比較的ゆとりをもって取り付けられ、プライマリピストンに横方向の力成分ではなく縦方向の力のみを加えるように、十分に自由を有している。
【0004】
電気機械式ブレーキ倍力装置の場合、倍力ピストンは、適応を行わないように、ラックアンドピニオン結合によって電気機械的駆動装置に強固に保持され、プライマリピストンに加えられる圧力は、比較的大きい縦方向の成分を呈する。
【0005】
特許文献1は、この特許の
図1の複製である本願の
図1に図示したブレーキアシスト電動サーボモータを記載している。
【0006】
図1は、タンデムマスタシリンダ48と結合されたブレーキ倍力装置を断面図で示し、タンデムマスタシリンダのプライマリピストン49は、押圧ロッド47又はプランジャを介して倍力ピストン20によって押圧される。上のプランジャは、リアクションディスク40を介して倍力ピストン20に対して支持される。押圧ロッド47は、その長さを個々のブレーキ倍力装置の種類に適応させるように2つの部分から構成される。すなわち、押圧ロッドは、丸みを帯びたフロント側端部と、リアクションディスクに支持されるディスク状のリヤ側端部とを備える。このため、倍力ピストン20によって押圧ロッド47に加えられる押圧力の横方向の成分がプライマリピストン49に加えられる応力の横方向の成分に変換されるように、押圧ロッド47は、ブレーキ倍力装置の軸に沿って自由度のない状態でブロックされ、これによって押圧ロッドの不規則な摩耗が引き起こされる。
【0007】
本願の
図1に関する説明中で使用された符号は、特許文献1の符号に対応する。
図1中に存在して、説明されていない符号は、公知のブレーキ倍力装置の要素に関し、本願で説明されていないのは、本発明の説明に直接関連がないためである。
【0008】
比較のために、試験の結果、同一の動作条件では、空圧式ブレーキ倍力装置の押圧ロッドによってプライマリピストンに加えられる横方向の成分は無視できるが、他方、電気機械式ブレーキ倍力装置の場合には、かかる成分が大きくなることが明らかとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許第0311580号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、プライマリピストンに横方向の成分を含む押圧力を事実上付加しない電気機械式ブレーキ倍力装置の押圧ロッド又はプランジャを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この趣旨において、本発明の目的は、その動作方向でプライマリピストンに倍力ピストンを連結し、且つ、その球状のキャップの形状のフロント側端部がプライマリピストンのカップに支持され、リヤ側端部がボールジョイントを含むプランジャと、リアクションディスクに支持された基部及びプランジャのボールジョイントを収容するスリーブを備えるベアリングとで形成される押圧ユニットを備えることを特徴とする、上に定義された電気機械式ブレーキ倍力装置にある。
【0012】
本発明に記載のブレーキ倍力装置は、従来公知の押圧ロッドに代えて用いられる押圧ユニットに自由度を創出するという利点を有する。かかる横方向への自由度は、倍力ピストンによって押圧ユニットに加えられる応力の横方向の成分の伝達を回避するが、押圧ユニットは、上記の自由度なしでは、横方向の成分と共に上記の応力をプライマリピストンに伝達してしまうことになる。
【0013】
有利には、押圧ユニットはチューリップ状のグリッパを備え、そのぺタルは外側に突起状をなす締付端部を備え、内側においては、弾性を有してプランジャのボールジョイントの収容孔を画定するつばを形成する。ベアリングのスリーブは、グリッパのぺタルの端部の支持に用いられる内側陥凹を備え、グリッパは、問題のアセンブリがぺタルの端部のスリーブの陥凹内部への締付固定によってスリーブ内部に係合されさらに連動する前に、プランジャのボールジョイント上に配置される。かかる実施形態によって、押圧ユニットを効率的に組み立てる、すなわち、プランジャをベアリングに結合することで、ボールジョイントの高さでは連接型となるが、分解不可能な単一のアセンブリを構成することが可能になる。
【0014】
他の技術的特徴に従い、プランジャのプライマリピストンへの配置の前に、プランジャは、軸に対するプランジャの傾斜を制限するためにスリーブに連結された時点では、スリーブの縁部から若干離間したアウタリングを備える。かかるアウタリングは、プランジャのベアリングに対する過度の傾斜を回避することで、ブレーキ倍力装置のマスタシリンダへの組み付け時に押圧ユニットのプライマリピストン内への配置を容易にする。
【0015】
他の有利な技術的特徴に従い、プランジャは、別体として実施され、ブレーキ倍力装置の種類に応じてプランジャが有することになる長さに応じて組み立てられる2つの部分から構成される。
【0016】
他の有利な技術的特徴に従い、スリーブは、プランジャのボールジョイント用のカップをなす孔を構成し、スリーブは、ボールジョイントを回転自在に保持するために、孔の手前に圧着帯を備える。
【0017】
それゆえ、全体としては、本発明によって、プライマリピストンに加えられる押圧力の応力の横方向の成分の伝達を、マスタシリンダ構造の変更さらにはマスタシリンダ構造の電気機械式ブレーキ倍力装置への組み付けの必要なしに回避することが簡単な方法で可能になる。
【0018】
以下において、本発明は、添付の図面に図示した電気機械式ブレーキ倍力装置の実施形態を用いて、さらに詳細に説明されるが、図面では、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】先行技術(仏国特許第0311580号)に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置の一部断面図である。
【
図2】本発明の電気機械式ブレーキ倍力装置の一部断面図である。
【
図3】本発明の電気機械式ブレーキ倍力装置の押圧ユニットとプライマリピストン及び倍力ピストンの支持部とを組み合わせた状態の断面図である。
【
図4】押圧ユニットをプライマリピストン及び倍力ピストンの支持部の内部に設置した変更形態の
図3の断面図と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
説明を簡略化するために、慣例に従い、
図1に示したとおり、ブレーキ倍力装置のフロント(AV)は、タンデムマスタシリンダの側に位置し、リア(AR)は、ブレーキペダルによって動作する制御ロッド側に位置する。
【0021】
図2は、倍力ピストンの押圧力をプライマリピストンに伝達するための本発明の電気機械式ブレーキ倍力装置の押圧ユニット100を大幅に模式化して示している。かかる押圧ユニット100は、プランジャ110と、プランジャの一方の端部を収容し倍力ピストンに支持されるベアリング120とから構成され、プランジャの他方の端部は、プライマリピストンのカップ内部で支持される。プランジャ110は2つの部分、すなわち圧入によって組み付けられたフロント部111及びリヤ部112から実施される。フロント部111は非断面の状態で図示され、リヤ部112は断面の状態で図示されている。
【0022】
リヤ部112は、フロント部111のピン114を圧入させ、連動するアセンブリを構成するための円柱空間113を備える。これら2つの部分111,112は、別体として実施され、これら2つの部分の少なくとも1つは、装備されるブレーキ倍力装置の種類に応じてプランジャ110が有することになる長さに応じて選択される長さを有する。
【0023】
プランジャ110は、プライマリピストン200本体に実施されたボールジョイントのカップの形状の空間201と協働するために球状のキャップの形状となるよう丸みをつけたフロント側端部115を備える(
図3及び4)。
【0024】
プランジャ110のリヤ側端部は、円錐台状部117によってプランジャの本体118に連結されたボールジョイント116から構成される。円錐台状部117の向こう側で、本体118は、以下において検討する傾斜の制限ストッパとして用いられる周囲のリング119を備える。
【0025】
プランジャ100のリヤ側端部でボールジョイント116を収容するベアリング120は、プランジャのボールジョイント116を直接(
図4)又はいずれにしてもボールジョイントへの結合部を実施するピース130(
図3)を介在させて収容するスリーブ122を備えるディスクから構成される基部121から形成される。
【0026】
押圧ユニット100は、軸(xx)方向への並進運動に連動するが、プライマリピストン200の本体のカップ201に対して回転自在なキャップの形状のヘッド115及びプランジャ110のボールジョイント116があるため、倍力ピストン300の支持部によって支持されるベアリング120に対する横方向には自由度を有する。
【0027】
図3は、
図2に示したプランジャ110と、倍力ピストン300の支持部によって支持されるベアリング120とを備える押圧ユニット100の第一の実施形態を示す。ベアリング120は、スリーブ122を備えるディスクの形状の基部121から構成され、アセンブリは支持部300の軸方向スリーブ301内に係合される。リアクションディスク310に支持される上の基部121は、そのぺタル132によって周囲を取り囲まれるボールジョイント131でカップを実施するチューリップ状のグリッパ130を介してプランジャ120のボールジョイント116を収容する。ぺタル132はグリッパのリヤから幅が狭まっていき、ボールジョイント116の正面に達するつば133を形成した後、カップ131の内部にボールジョイントを保持し、その後傾斜して、ベアリング120のスリーブ122の内部でグリッパ130の締付端部134を構成する。この目的で、スリーブ122は、周縁の陥凹123を内包し、この陥凹にグリッパ130のぺタル132の突起状端部134が固定される。
【0028】
プランジャ110とベアリング120との組み付けは、グリッパ130をボールジョイント116に事前に取り付け、次いでボールジョイント116をかかる方法で収容したグリッパ130をスリーブ122に係合させることで行われる。かかる係合の途中で、グリッパ130の弾性を有するぺタル132は、ボールジョイント116をプランジャの本体118に連結する円錐台状の接合部117に対して収縮する。次いで、いったん陥凹123内に達すると、ぺタル132は弾性的に離間し、グリッパ130及びボールジョイント116をベアリング120に軸xxの方向にロックし、グリッパ130内に形成されたキャップ131内を自由に回転できる可能性は、ボールジョイント116に残される。
【0029】
図3は、プランジャ110の周縁のリング119が、スリーブ122のフロント側縁部124と一定の間隔にあり、これによって、プランジャ110のスリーブ122に対する横方向への傾斜動作が可能になる。かかる動作は、スリーブ122の縁部124に対するリング119の当接によって制限される。かかる制限は、ブレーキ倍力装置の通常の機能を全く妨害するものではなく、かかる制限は、プランジャが、スリーブ122によって規定される軸(xx)に対して過度に傾斜する事態を回避する。これによって、すでにマスタシリンダ内に係合されたプライマリピストン200内へのプランジャ110の配置が容易になる。本発明のブレーキ倍力装置のその他の要素は、
図3に示していない。
【0030】
図4は、本発明の電気機械式ブレーキ倍力装置の他の変更形態を示す。この変更形態は、
図3の第1の変更形態とは、ベアリング140の形状において相違しており、基部141は、プランジャ110のリヤ側端部においてボールジョイント116を直接収容するスリーブ142を備え、スリーブの底部がボールジョイント116用のカップ143を形成する。この場合においても、プランジャ110は、プランジャ110のベアリング140の軸xxに対する傾斜動作を制限して、スリーブ142の底部144に支持されるための周縁のつば119を備える。ボールジョイント116は、ボールジョイント116の正面でスリーブ142の圧着帯145によってカップ143を閉塞する孔内で保持される。
【0031】
プランジャ110の上の実施形態は、グリッパ130の押し込みを原因とする円錐台状部117の長さの縮小が原因で、より短くなる。上の電気機械式ブレーキ倍力装置の他の部品、特にプライマリピストン200及び倍力ピストン300は、先行する実施形態と同一である。
【符号の説明】
【0032】
100 押圧ユニット
110 プランジャ
111 フロント部
112 リヤ部
113 シリンダ孔
114 ピン
115 球状のキャップ状フロント側端部
116 ボールジョイント
117 円錐台状部
118 プランジャの本体
119 周縁のリング
120 ベアリング
121 基部
122 スリーブ
123 周縁の陥凹
124 スリーブ縁部
130 グリッパ
131 ボールジョイント付カップ
132 ぺタル
133 つば
134 締付端部
140 ベアリング
141 基部
142 スリーブ
143 カップを形成する孔
144 スリーブ142の縁部
145 圧着帯
200 プライマリピストン
201 カップ状の孔
300 倍力ピストン/倍力ピストンの支持部
301 スリーブ
310 リアクションディスク