(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分、老化防止剤、及びポリエーテル(A)を含み、ブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムの合計含有量が前記ゴム成分100質量%中80質量%以上、前記ゴム成分100質量部に対する前記老化防止剤の含有量が0.3〜7.0質量部であり、前記ポリエーテル(A)中に含まれる2連鎖以上のポリエチレンオキシドの平均質量が、ポリエーテル(A)に含まれるポリエチレンオキシドの質量の85%以下である。
【0018】
前述のとおり、エチレンオキシドを含むポリエーテル等は、スコーチ性能の悪化など、加工上の問題が発生する恐れがある。これは、加硫時などにおいて、酸化亜鉛から亜鉛イオンを生成する反応が、連鎖するエチレンオキシドによる亜鉛イオンのキレート化により促進されるため、加硫速度が速くなると推察できる。この点について、本発明では、連鎖エチレンオキシド含量を下げることにより、加硫速度が速くなることを抑えることできる。
【0019】
また、特定のゴム成分、特定量の老化防止剤を配合したゴム組成物において、特定のポリエーテルを配合することにより、ワックス等の析出により形成されるタイヤ表面(ブルーム層)の凸凹が平滑化され、光の乱反射が抑制される。これにより、上述の茶変色や白変色を軽減するなど、耐変色性も向上する。また、タイヤ表面に適度な黒色外観と光沢を与えるなど、優れたタイヤ外観が得られ、同時に、良好な耐クラック性、耐オゾン性も得られる。従って、加工性、耐クラック性、耐オゾン性、耐変色性、及びタイヤの外観がバランス良く改善される。
【0020】
本発明のゴム組成物では、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選択される少なくとも1種のゴムが使用され、これらは2種以上を併用してもよい。なかでも、補強性と耐亀裂成長性のバランスが良好という理由から、NR及び/又はIRと、BRとを併用することがより好ましい。
【0021】
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ゴム成分100質量%中のNRとIRの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。30質量%未満であると、充分な補強性や加工性を確保できないおそれがある。NRとIRの合計含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、充分な耐亀裂成長性を確保できなくなるおそれがある。
【0023】
BRとしては特に限定されず、例えば、JSR(株)製のBR730、BR51、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR710等の高シス含量BR、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の低シス含量BR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するBR(SPB含有BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性及び耐亀裂成長性を確保できなくなるおそれがある。該BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。70質量%を超えると、補強性や操縦安定性が確保できなくなるおそれがある。
【0025】
SPB含有BRは補強性と低燃費性を付与する為などに使用される。前記ゴム組成物にこれらを用いる場合は、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶含有率は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。5質量%未満では、充分な補強性と低燃費性を付与する事ができない。また、該含有率は22質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。22質量%を超えると、SPB含有BRが硬くなりすぎるため、ゴムの分散不良が発生するおそれがある。
【0026】
本発明のゴム組成物では、ブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムの合計含有量(好ましくはブタジエンゴム、及び天然ゴムの合計含有量)がゴム成分100質量%中80質量%以上、好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。80質量%未満では、補強性、耐摩耗性、または耐亀裂成長性を確保できなくなるおそれがある。
【0027】
BR、NR、IR以外に使用できるゴム成分としては、特に限定されず、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。例えば、リバージョン防止と補強性を確保する点からSBRを用いてもよく、耐候性を付与する為にEPDM、ブチルゴム、および/またはハロゲン化ブチルゴムを用いてもよい。これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明のゴム組成物は、連鎖エチレンオキシド含量が85質量%以下であるポリエーテル(A)を含む。
【0029】
本発明では、連鎖エチレンオキシド含量85質量%以下のポリエーテル(A)を用いることで、スコーチの問題が改善されるが、これは、例えば、エチレンオキサイド(EO)と、プロピレンオキサイド(PO)等のEO以外の構成単位とからなるポリエーテルにおいて、側鎖を持たないEOの連鎖部分が、他の部分に比べ、酸化亜鉛の亜鉛とキレートを形成しやすく、加硫を促進するため、スコーチが短くなるが、連鎖エチレンオキシド含量を低くすることで、前述のキレート化が抑制され、耐スコーチ性が改善解決されるものと推察される。
【0030】
前記ポリエーテル(A)の連鎖エチレンオキシド含量は、85質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。ポリエーテルを構成するエチレンオキシド中の連鎖エチレンオキシドの割合が85質量%を超えると、前述のスコーチ改善効果が低減する恐れがある。なお、連鎖エチレンオキシド含量の下限は、特に限定されない。
【0031】
前記ポリエーテル(A)の数平均分子量(スチレン換算値)は300以上が好ましく、1,500以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。数平均分子量が300未満の場合、ゴム表面にポリエーテルが移行する速度(ブルーム速度)が速すぎるため、ゴム表面がべたつく、艶が出過ぎる、外観が悪くなるなど、不具合が生じるおそれがある。また、前記ポリエーテル(A)の数平均分子量(スチレン換算値)は50,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。数平均分子量が50,000を超える場合、ゴム表面にポリエーテル(A)が移行する速度が遅くなりすぎるため、前述のタイヤ表面の凸凹が平滑化されにくくなり、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。
【0032】
前記ポリエーテル(A)はR
1−O−(R
2−O)
n−R
3、又はR
4−{(O−R
2−O)
n−R
1}
mである。ここで、R
1、R
3は、水素又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルカノイル基であり、炭素に結合する水素を芳香族炭化水素基で置換したものでもよい。R
2は、同一若しくは異なって、炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環族炭化水素基であり、炭素に結合する水素を芳香族炭化水素基で置換したものでもよい。R
4は、3個以上の水酸基を有する化合物(a)から水酸基を除いた残基である。n及びmは整数を表し、連鎖エチレンオキシド含量が前述の範囲を満たす限り、任意に選択できる。
【0033】
R
1、R
3は特に限定されず、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ステアリル基、オレイル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、ピリジル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキシノイル基、オクチノイル基、オクタデカノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、などが挙げられる。
【0034】
R
2は特に限定されず、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、(2−メチル)プロパン−1,2−ジイル基、ヘキサン−1,2−ジイル基、オクタン−1,2−ジイル基、(1−フェニル)エタン−1,2−ジイル基、(1−フェニル)プロパン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,2−ジイル基、などが挙げられる。
【0035】
3個以上の水酸基を有する化合物(a)は特に限定されず、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、単糖類、多糖類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、などが挙げられる。
【0036】
前記ポリエーテル(A)は、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、2−メチルプロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、等のオキシラン化合物を単独重合又は共重合させて得られるポリアルキレングリコール;該ポリアルキレングリコールの水酸基の水素をアルキル基で置換した化合物(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル等);該ポリアルキレングリコールの水酸基を有機酸と脱水反応させた化合物;多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物;などが挙げられる。
【0037】
ゴム成分100質量部に対して、前記ポリエーテル(A)の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.6質量部以上である。0.1質量部未満では、ゴム表面に前記ポリエーテル(A)が移行する量が少なすぎるため、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。また、前記ポリエーテル(A)の含有量は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。8.0質量部を超えると、加硫速度が速くなるのを抑制する効果が得られにくく、また、ゴム表面にポリエーテルが移行する速度(ブルーム速度)が多すぎるため、外観が悪くなど不具合が生じるおそれがある。
【0038】
本発明では、特定量のカーボンブラックが使用されることが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、良好な操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が得られる。
具体的には、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。1質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下である。70質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向があるとともに、カーボンブラックに吸着される前記ポリエーテル(A)の量が増えるため、ゴム表面に前記ポリエーテル(A)が移行する量が減り、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。
【0039】
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は20m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上がより好ましい。20m
2/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該N
2SAは、180m
2/g以下が好ましく、120m
2/g以下がより好ましく、90m
2/g以下が更に好ましく、80m
2/g以下が特に好ましい。180m
2/gを超えると、加工性が悪化するとともに、カーボンブラックに吸着される前記ポリエーテル(A)の量が増えるため、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0041】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、50ml/100g以上が好ましく、80ml/100g以上がより好ましい。50ml/100g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、カーボンブラックのDBPは、200ml/100g以下が好ましく、135ml/100g以下がより好ましく、115ml/100g以下が更に好ましい。200ml/100gを超えると、加工性が悪化するとともに、カーボンブラックに吸着される前記ポリエーテル(A)の量が増えるため、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K 6217−4:2001に準拠して測定される。
【0042】
本発明では、特定量のカーボンブラックと共にシリカを使用してもよい。シリカを配合することにより、タイヤの外観をより改善できる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐破壊性能及びウェットグリップ性能の両立効果が高いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0043】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上、更に好ましくは150m
2/g以上である。50m
2/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該N
2SAは、好ましくは250m
2/g以下、より好ましくは210m
2/g以下である。250m
2/gを超えると、加工性が悪化するとともに、シリカに吸着される前記ポリエーテル(A)の量が増えるため、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0044】
前記ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。また、シリカの含有量は、好ましくは40質量部以下である。シリカの含有量が40質量部を超えると、シリカに吸着される前記ポリエーテル(A)の量が増えるため、タイヤの外観を改善する効果が得られないおそれがある。
【0045】
本発明のゴム組成物は、シリカを配合する場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0046】
前記ゴム組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、シランカップリング剤による充分な補強効果が得られないおそれがある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った補強効果が得られない傾向がある。
【0047】
本発明では、ポリマー鎖に架橋鎖を形成する為に、加硫剤が使用される。加硫剤としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
加硫剤として硫黄を用いる場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。0.1質量部未満であると、充分な補強効果が得られないおそれがある。硫黄の含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下、特に好ましくは3.0質量部以下である。6.0質量部を超えると、ゴムが硬くなりすぎるおそれがある。
【0049】
本発明では、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、ワックスを配合することが好ましい。本発明では、ワックスを配合しても上述のように、ワックス等の析出により形成されるタイヤ表面(ブルーム層)の凸凹を平滑化でき、光の乱反射が抑制されるため、上述の茶変色や白変色を軽減できる。また、タイヤ表面に適度な黒色外観と光沢を与えるなど、タイヤ外観が改善される。
【0050】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。
【0052】
前記ゴム組成物がワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.5質量部未満であると、充分な耐オゾン性が得られないおそれがある。また、該ワックスの含有量は、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。12質量部をこえると、それ以上の耐オゾン性の向上効果が望めず、コストが上昇するおそれがある。
【0053】
本発明のゴム組成物は、オイルを配合してもよい。オイルを配合することにより、加工性が改善され、タイヤに柔軟性を与える事ができ、本発明の効果がより良好に得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。パラフィン系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のPW−32、PW−90、PW−150、PS−32などが挙げられる。また、アロマ系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58などが挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記ゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量に下限はなく、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームするオイルの含有量を前記範囲内とすることにより、ポリエーテル(A)のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0055】
本発明のゴム組成物は、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、老化防止剤を含有している。本発明は、前述の説明の通り、老化防止剤などを配合した時に生じる茶変色や白変色を軽減でき、耐変色性、タイヤの外観を向上できる。
【0056】
老化防止剤としては特に限定されず、例えば、ナフチルアミン系、キノリン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、ヒドロキノン誘導体、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、トリスフェノール系、ポリフェノール系)、チオビスフェノール系、ベンゾイミダゾール系、チオウレア系、亜リン酸系、有機チオ酸系老化防止剤などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐オゾン性能が良好であり、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、p−フェニレンジアミン系が好ましい。
【0057】
p−フェニレンジアミン系老化防止剤としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐オゾン性能が良好であり、経済性にも優れるという理由から、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0058】
前記ゴム組成物における老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。0.3質量部未満であると、充分な耐オゾン性が得られないおそれがあり、また、茶変色もしにくくなるため、本発明の効果が得られにくい。老化防止剤の含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。7.0質量部を超えると、特に使用初期における老化防止剤のブルーム量が増大し、タイヤの外観が悪化するおそれがある。
【0059】
本発明のゴム組成物は加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを用いることができる。加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記ゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決めることが出来る。
【0062】
本発明のゴム組成物は加硫を促進する為に、酸化亜鉛やステアリン酸等を用いてもよい。酸化亜鉛としては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号、2号等が挙げられる。
【0063】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、粘着付与剤などを適宜配合することができる。
【0064】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0065】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、タイヤの表面(外面)を構成し、良好な耐オゾン性、耐変色性、タイヤの外観が要求されるサイドウォール、クリンチ、及び/又はウイング等)に好適に使用できる。
【0066】
サイドウォールとは、ショルダー部からビード部にかけてケースの外側に配された部材であり、具体的には、特開2005−280612号公報の
図1、特開2000−185529号公報の
図1等に示される部材である。
【0067】
クリンチとは、サイドウォール下部に存在するリムとの接触部をカバーするゴム部であり、クリンチエイペックス又はラバーチェーファーともいう。具体的には、例えば、特開2008−75066号公報の
図1等に示される部材である。
【0068】
ウイングとは、ショルダー部において、トレッドとサイドウォールの間に位置する部材であり、具体的には、特開2007−176267号公報の
図1、3等に示される部材である。
【0069】
本発明の空気入りタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォール、クリンチ、ウイング等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
【0070】
本発明の空気入りタイヤは、たとえば乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【実施例】
【0071】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0072】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
【表2】
【0073】
<ポリエーテル1の製造>
温度計、加熱冷却装置、撹拌機及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、1,2−ブタンジオール(和光純薬工業社製)90部及び水酸化カリウム(東京化成工業社製)6部を投入し、窒素置換後密閉し140℃に昇温した。撹拌下140℃で減圧することで水2部を留去した後、圧力が0.5MPa以下になるように調整しながら1,2−ブチレンオキサイド(東京化成工業社製)2910部を10時間かけて滴下し同温度で5時間熟成した。60℃まで冷却後、酢酸6部を投入した。60℃で30分間撹拌してポリブチレングリコール3010部を得た。JIS−K0070に準拠した中和滴定法によって測定した水酸基価は37.4であり、数平均分子量として3,000であった。
【0074】
表3に、使用したポリエーテル1〜10の特性を示す。
【表3】
【0075】
表4〜6に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を180℃になるまで混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。次に、得られた未加硫ゴム組成物を160℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0076】
得られた加硫ゴム組成物を下記により評価し、結果を表4〜6に示した。なお、表4〜6の基準比較例をそれぞれ、比較例1、比較例6、比較例7とした。
【0077】
<耐スコーチ性評価>
JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、100℃にてスコーチタイム(t10)を測定し、基準比較例の指標を100とした指数(各配合のスコーチタイム(t10)/基準比較例のスコーチタイム(t10)×100)を計算した。指数が大きいほど、耐スコーチ性能に優れることを示す。
【0078】
<耐オゾン性評価>
JIS K 6259「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に準じて、得られた加硫ゴム組成物から所定のサイズの試験片を作製し、動的オゾン劣化試験を行った。往復運動の周波数0.5±0.025Hz、オゾン濃度50±5pphm、試験温度40℃、引張歪み20±2%の条件下で、48時間試験した後の亀裂(クラックの発生の有無)の状態を観察することで、耐オゾン性を評価した。なお、指数が大きいほど亀裂の数が少なく、亀裂の大きさが小さく、耐オゾン性に優れることを示す。
【0079】
<耐変色性評価>
耐オゾン性試験を終えたサンプルを(株)ミノルタ製色彩色差度計(CR−310)を用い、a値、b値を求めた(L*a*b*表色系)。指標を(a2+b2)−0.5とし、基準比較例の指標を100とした指数(各配合の指標/基準比較例の指標×100)を計算した。指数が大きいほど、変色が少なく、耐変色性に優れることを示す。
【0080】
<外観評価>
耐オゾン性試験を終えたサンプルを屋外に持ち出し、下記指標にて外観評価を行った。
◎基準比較例より黒く、光沢がある
○基準比較例より黒く、やや光沢がある
△基準比較例と同等の茶色
×基準比較例より茶色い
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
ブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムの合計含有量80質量%以上のゴム成分、所定量の老化防止剤、連鎖エチレンオキシド含量85質量%以下のポリエーテル(A)を含む実施例では、加工性(耐スコーチ性)、耐クラック性、耐オゾン性、耐変色性、及びタイヤの外観がバランス良く改善された。