特許第6244025号(P6244025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソーテック浜松の特許一覧

<>
  • 特許6244025-帯鋸の熱処理加工装置 図000002
  • 特許6244025-帯鋸の熱処理加工装置 図000003
  • 特許6244025-帯鋸の熱処理加工装置 図000004
  • 特許6244025-帯鋸の熱処理加工装置 図000005
  • 特許6244025-帯鋸の熱処理加工装置 図000006
  • 特許6244025-帯鋸の熱処理加工装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244025
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】帯鋸の熱処理加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 63/00 20060101AFI20171127BHJP
   B23D 65/00 20060101ALI20171127BHJP
   B23D 61/12 20060101ALN20171127BHJP
   B27B 33/06 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   B23D63/00
   B23D65/00
   !B23D61/12 B
   !B27B33/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-534008(P2016-534008)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2014068717
(87)【国際公開番号】WO2016009478
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030849
【氏名又は名称】株式会社ソーテック浜松
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 仁
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−007916(JP,U)
【文献】 特開2003−053526(JP,A)
【文献】 特開昭63−243223(JP,A)
【文献】 特開昭63−243222(JP,A)
【文献】 特開平11−092828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 63/00−65/04,
F23D 14/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯鋸を走行させるための上下の鋸送りローラーと、
走行する帯鋸を加熱するバーナーと、
加熱された帯鋸を冷却するためのヒート板と、
ヒート板に冷却水を送るための冷却装置と、
走行する帯鋸を挟持するため前記鋸送りローラーを移動させるための帯鋸締め付けハンドルと、
帯鋸の走行位置を移動させるための帯鋸前後調整ハンドルと、
前記鋸送りローラーの回転を制御する帯鋸走行スピードを切り替えるスイッチと、を設け、
走行する帯鋸に前記バーナーの燃焼炎を噴射し、
加熱された帯鋸を前記冷却されたヒート板によって冷却して、
帯鋸に長手方向に幅狭のヒートラインを形成する帯鋸の熱処理加工装置であって、
前記鋸送りローラーの回転を制御して帯鋸走行スピードを変えることによって前記ヒートラインの幅の変更するようにしたことを特徴とする帯鋸の熱処理加工装置。
【請求項2】
さらに、バーナーに供給される水素ガス及び酸素ガスを開閉するガス電磁バルブと、
バーナーの燃焼状況を調整するためのバーナー調整バルブと、
この装置の運転を制御する操作盤と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の帯鋸の熱処理加工装置。
【請求項3】
前記ヒート板は、バーナーで加熱された帯鋸を冷却水によって冷却するための銅製の冷却部材であり、
ヒート板は、走行する帯鋸の表側及び反対の裏側に接するように、表ヒート板及び裏ヒート板が設けられており、表ヒート板及び裏ヒート板で帯鋸を挟むようにして加熱された帯鋸を冷却することを特徴とする請求項1又は2に記載の帯鋸の熱処理加工装置。
【請求項4】
前記ヒート板には、走行する帯鋸の表面の一部を露出させるように縦長状の開口部が設けられており、
この開口部に向かってバーナーの燃焼炎を噴射し、開口部の下方から上方に燃焼炎を立ち昇らせるにすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帯鋸の熱処理加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸に熱応力を持たせるためのいわゆる腰入れ装置に関し、詳しくは、帯鋸の長手方向に幅狭のヒートラインを形成するための熱処理加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材を切断する帯鋸の製造において、塑性変形で鋸刃を伸ばす作業によって帯鋸に部分的に応力を持たせる処理のための帯鋸の腰入れ作業がある。
このような帯鋸の腰入れ作業は、例えば、特許文献1(特開平11−300523号公報)に示されるように、鋸身の中央部をロール機により「伸ばし」て、両縁部、すなわち刃幅の前後の両縁部に強い緊張力がかかる緊張帯を形成するようにするロールテンション法によって行われてきた(図6(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−300523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の帯鋸のロールテンション法による「伸ばし」は、ハンマー等で帯鋸の両面に衝撃を与えたり、ロール玉圧延などによって行われ、多年の経験を積んだ熟練者でないと適切な腰入れ作業ができない。
また、このような腰入れ作業の「伸ばし」は人為的な作業のため、品質にばらつきが発生するとともに、大変な労力を必要としていた。
また、「伸ばし」が不均一のため不良振動が発生し、帯鋸の寿命が短くなるという問題もあった。
そこで、本発明は上記問題点を解決するために、長年の経験と勘による緊張帯加工(帯鋸腰入れ加工)を、熱処理によって簡単に形成できる熱処理加工装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、帯鋸の長手方向に幅狭の複数本のヒートライン(熱処理加工部分)を容易に形成できる帯鋸の熱処理加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の帯鋸の熱処理加工装置は、
帯鋸を走行させるための上下の鋸送りローラーと、
走行する帯鋸を加熱するバーナーと、
加熱された帯鋸を冷却するためのヒート板と、
ヒート板に冷却水を送るための冷却装置と、
走行する帯鋸を挟持するため前記鋸送りローラーを移動させるための帯鋸締め付けハンドルと、
帯鋸の走行位置を移動させるための帯鋸前後調整ハンドルと、
前記鋸送りローラーの回転を制御する帯鋸走行スピードを切り替えるスイッチと、を設け、
走行する帯鋸に前記バーナーの燃焼炎を噴射し、
加熱された帯鋸を前記冷却されたヒート板によって冷却して、
帯鋸に長手方向に幅狭のヒートラインを形成する帯鋸の熱処理加工装置であって、
前記鋸送りローラーの回転を制御して帯鋸走行スピードを変えることによって前記ヒートラインの幅の変更するようにしたことを特徴とする。
(2)本発明の帯鋸の熱処理加工装置は、上記(1)において、
さらに、バーナーに供給される水素ガス及び酸素ガスを開閉するガス電磁バルブと、バーナーの燃焼状況を調整するためのバーナー調整バルブと、この装置の運転を制御する操作盤と、が設けられていることを特徴とする。
(3)本発明の帯鋸の熱処理加工装置は、上記(1)又は(2)において、
前記ヒート板は、バーナーで加熱された帯鋸を冷却水によって冷却するための銅製の冷却部材であり、ヒート板は、走行する帯鋸の表側及び反対の裏側に接するように、表ヒート板及び裏ヒート板が設けられており、表ヒート板及び裏ヒート板で帯鋸を挟むようにして加熱された帯鋸を冷却することを特徴とする。
(4)本発明の帯鋸の熱処理加工装置は、上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、
前記ヒート板には、走行する帯鋸の表面の一部を露出させるように縦長状の開口部が設けられており、この開口部に向かってバーナーの燃焼炎を噴射し、開口部の下方から上方に燃焼炎を立ち昇らせるにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
帯鋸の熱処理加工装置は、従来の職人技のような経験が不要であり、加工時間が短縮され、加工歪みも生することなく、短い技術習得期間で同品質の帯鋸の熱処理加工ができる。また、帯鋸の長手方向に形成されたヒートライン(熱処理加工部分)の幅は幅狭で均一となり、帯鋸刃先に不良振動が発生せず、帯鋸の寿命が長くなるという効果もある。
なお、従来行われていた背盛加工(バック調整加工)は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の帯鋸の熱処理加工装置を示す概略斜視図である。
図2】実施形態の帯鋸の熱処理加工装置の部分的拡大図である。
図3】実施形態の帯鋸の熱処理加工装置のヒート板を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)はX−X断面図である。
図4図3のヒート板にバーナーから燃焼炎を噴射した状態を示す概略側面図である。
図5】本発明の実施形態の帯鋸の熱処理加工装置に、帯鋸を走行させるようにセットした状態を示す概略斜視図である。
図6】ヒートラインを形成した帯鋸の一部を示す概略図であり、(a)は本発明の実施形態の帯鋸の熱処理加工装置を用いてヒートラインを形成した例を示す説明図であり、(b)は従来のロール玉圧延によって形成された「伸ばし」を形成した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の実施形態の帯鋸の熱処理加工装置を示す概略斜視図である。
すなわち、実施形態の帯鋸の熱処理加工装置は、図1の概略斜視図に示すように、熱処理加工装置の廻りに帯鋸を走行させるための上下の鋸送りローラー9と、走行する帯鋸を加熱するバーナー11と、バーナー11で加熱された帯鋸を冷却するためのヒート板10と、ヒート板10に冷却水を送るための冷却装置5と、が備えられている。
【0009】
また、スクリューネジ91を介して上下の鋸送りローラー9を移動させて、帯鋸を挟むように押しつけるため、上下の帯鋸締め付けハンドル2が設けられている。
そして、帯鋸の熱処理加工装置の側方には帯鋸前後調整ハンドル3が設けられており、帯鋸前後調整ハンドル3を回転させることにより、スクリューネジを介して、帯鋸の後方に位置させた位置決め板32を移動させて、走行する帯鋸の通り道を前方へ移動させるようにしている。
【0010】
さらに、バーナー11に供給される水素ガス及び酸素ガスを開閉するガス電磁バルブ6と、バーナー11の燃焼状況を調整するためのバーナー調整バルブ4と、この装置の運転を制御する操作盤1と、が設けられており、走行する帯鋸の長手方向に幅狭のヒートラインを形成するようにしている。
また、熱処理加工装置には、熱処理を終えた帯鋸を下部で受け止めて搬送する下部ローラ7と、熱処理をしようとする帯鋸を上部で受け止めて搬送する上部ローラ8と、が備えられている。
【0011】
なお、本熱処理加工装置に適用できる帯鋸としては、例えば、幅:50〜200mm程度、厚み:0.65〜1.45mm程度、長さ:5〜10m程度のものが挙げられる。
【0012】
次に、図1に加えて、図2の部分的拡大図、図3のヒート板の概略図、図4のバーナー燃焼炎噴射状態の概略側面図を併せて用い、帯鋸の熱処理加工装置に備えられている各部材について、詳細に説明する。
【0013】
<鋸送りローラー>
鋸送りローラー9は、熱処理加工装置の上下位置に、上鋸送りローラー9a、下鋸送りローラー9bとして設けられており、2個の上鋸送りローラー9a,9a及び2個の下鋸送りローラー9b,9bが、帯鋸を挟持するようにして向かい合い、図示しない駆動モータによって回転して、帯鋸を上から下方向に走行させるようになっている。
【0014】
<ヒート板>
ヒート板10は、バーナー11で加熱された帯鋸を冷却水によって冷却するための金属製の冷却部材である(詳細は後述する)。
ヒート板10の材質としては、銅、鉄などの熱伝導性に優れたものが挙げられる。これによりバーナー加熱後の冷却効果が向上し、ヒートラインの幅を狭くすることができる。
ヒート板10は、走行する帯鋸の表側及び反対の裏側に接するように、表ヒート板10a及び裏ヒート板10bが設けられており、表ヒート板10a及び裏ヒート板10bで帯鋸を挟むようにして冷却するようにする。
また、ヒート板10には、走行する帯鋸の表面の一部を露出させるように開口部10cが設けられており、この開口部10cに向かってバーナー11の燃焼炎を噴射するようにする。
開口部10cの形状は、燃焼炎を、この開口部10cの下方から上方に向けて立ち昇らせる(図4参照)ことができるように、帯鋸50の走行方向に沿って縦長状(図面では上下方向)としている。この縦長状に形成された開口部10cを通して噴射される燃焼炎によって、走行する帯鋸50を筋状に加熱して、ヒート板10の冷却作用により帯鋸50の長手方向に幅狭のヒートライン51を形成することができる。
なお、形成された筋状のヒートライン51は、開口部10cの下方に設けた観察窓10dを通して観察することができる。
【0015】
<冷却装置>
冷却装置5は、ヒート板10に冷却水を送るための装置であり熱処理加工装置に付随して設けられているものである。
冷却装置5で形成された冷却水は、ヒート板10の内部に設けられている冷却パイプ10eに矢印で示すように搬送され、表ヒート板10a、裏ヒート板10bを常時冷却するようにしている。
【0016】
<バーナー>
バーナー11は、走行する帯鋸50を加熱して、帯鋸の走行方向に沿って長手方向に幅狭のヒートライン51を形成するための加熱器具である。
走行する帯鋸50の表裏に設置されたヒート板10のそれぞれの開口部10c、10cに向けて燃焼炎を噴射するように、2台のバーナー11a、11bが設けられている。
なお、バーナーから噴射する燃焼ガスの組成は、短時間で高温領域に加熱できるようにするため、水素及び酸素とすることが好ましい。
【0017】
<上下の帯鋸締め付けハンドル>
帯鋸締め付けハンドル2は、帯鋸を挟むように押しつけるため、一方の鋸送りローラー9aを対となる鋸送りローラー9a方向へ移動させるための回転部材であり、上方の上部帯鋸締め付けハンドル2aと、下方の下部帯鋸締め付けハンドル2bとが設けられている。
上部帯鋸締め付けハンドル2aを正回転又は逆回転させることによって、上部鋸送りローラー9a、9a間で挟持する帯鋸の締め付け力を加減し、帯鋸50の走行や停止を操作することができる。
下部帯鋸締め付けハンドル2bについても同様である。
なお、鋸送りローラー9a、9aは、それらの回転軸の軸方向が平行ではなく、わずかに先端方向(図示では手前)が狭まるように設けられているので、走行する帯鋸50を後側(鋸底50b方向)に付勢する(位置決め板32a,32b方向に押しつける)ように機能し、帯鋸52の走行中において、帯鋸の鋸底50bは、常時上下の位置決め板32a、32bに当接している状態にある。
【0018】
<帯鋸前後調整ハンドル>
帯鋸前後調整ハンドル3は、走行する帯鋸50の側方に設けられ、位置決め板32a、32bを前後に移動させるための回転部材である。
帯鋸前後調整ハンドル3を回転させることにより、スクリューネジ31aを介して、帯鋸の後方に位置させた位置決め板32aを前後に移動させて、走行する帯鋸の通り道を前方へ移動させるようにする。
また、スクリューネジ31aの後方にはプーリ31cが設けられており、下方のスクリューネジ31bの後方に設けられたプーリ31dとの間に掛けられたベルト33によって、位置決め板32bも同様に前後移動するようになっている。
すなわち、帯鋸前後調整ハンドル3に直接連結するスクリューネジ31aの後方には、プーリーを介して下方のスクリューネジ31bを連動させるベルト33が設けられており、下方のスクリューネジ31bに取り付けられている位置決め板32bも、上方の位置決め板32aとリンクしてスクリューネジ31b上を前後に移動する。
【0019】
このように、帯鋸前後調整ハンドル3を回転させると、帯鋸前後調整ハンドル3に連設されたスクリューネジ31aの回転により、帯鋸50の鋸底50bに当接されている位置決め板32aを前方又は後方へ移動させることができ、ヒート板10内におけるヒートライン予定部Aの走行位置も前方又は後方へ移動させることができる。
【0020】
なお、実施形態では、帯鋸前後調整ハンドル3の1回転で位置決め板32aを3mm前方又は後方に移動できるようになっている。
この帯鋸前後調整ハンドル3を正回転又は逆回転して、帯鋸50に長手方向に筋状のヒートライン51を形成するため、通過する帯鋸50の前後方向(幅方向)の位置決めを行う。
すわなち、帯鋸50のヒートライン予定部Aを、表ヒート板10aに目印した矢印位置Bに帯鋸50のヒートライン予定部Aが来るように、帯鋸前後調整ハンドル3を正又は逆に回転させて位置決めする。
【0021】
実施形態における帯鋸50の長手方向のヒートライン51の形成は、刃底50aより6〜8mm中心寄りのところに1本目のヒートライン51aを位置決めし(図6参照)、次に、帯鋸前後調整ハンドル3を2.5回転、正回転させ帯鋸50を前進させて2本目のヒートライン51bを位置決めする。
さらに、帯鋸前後調整ハンドル3を2.5回転、正回転させ帯鋸50を前進させて3本目のヒートライン51cも位置決めすることができる。同様にして、4本目のヒートライン51dも位置決めする。
このようなヒートライン51の位置決めは、まずは、上下の帯鋸締め付けハンドル2を回して、帯鋸がスリップしないよう、帯鋸が安定して回転するように締め付け具合を調整した後に、帯鋸前後調整ハンドル3を回してヒートライン予定部Aに帯鋸をセットするようにする。
なお、ヒートライン51の幅は帯鋸の走行スピードを変えることによって調整可能であり、トータルテンション量はヒートラインの本数や幅によって決めることができる。
【0022】
次に、本実施形態の装置に帯鋸をセットした状態を示す図5を用いて、帯鋸に熱処理加工をする方法を説明する。
まず、熱処理加工(ヒートライン51を形成)しようとする帯鋸50を、上部帯鋸送りローラ9a,9aの間、表ヒート板10aと裏ヒート板10bの間、下部帯鋸送りローラ9b,9bの間の順に挿入し、下記の手順に基づき帯鋸の熱処理加工を実施する。
【0023】
(a)操作盤1のスイッチで、上部ローラ支柱8を帯鋸の長さに合わせて上下させて高さ調整する(図4の上下矢印)。
(b)1本目のヒートライン予定部Aを、帯鋸前後調整ハンドル3を回して帯鋸50の鋸底50bに当接する位置決め板32a、32bを前後させて位置決めする。
(c)上部及び下部締め付けハンドル2a、2bを回転させて、帯鋸50を走行させる上部帯鋸送りローラ9a、9a及び下部帯鋸送りローラ9b、9bの間隔を広げ又は狭め、帯鋸50が安定して走行するように、帯鋸送りローラによる帯鋸50の締め付け力を調節する。
(d)操作盤1の点火スイッチを手動側にセットする。
(e)操作盤1の自動起動ボタンを押す。緑ランプが点灯し帯鋸50が帯鋸熱処理装置の中を走行し始める。
操作盤1のスイッチを高速側にセットする。
(f)帯鋸50が安定して走行することを確認する。
(g)操作盤1の自動停止ボタンを押して帯鋸50の走行が停止することを確認する。
(h)以上で実施形態の装置の初期機械調整が終了する。
【0024】
次に、帯鋸の熱処理加工方法について説明する。
上記のように、帯鋸50を熱処理加工装置にセットした後、帯鋸50の走行スピード(高速・低速)及び帯鋸厚みを、最初に操作盤1で入力する。
(1)バーナー11の点火スイッチを自動側にセットし、自動起動ボタンを押す。
(2)帯鋸高速スタート、バーナー11の左右バーナー点火を確認した後、帯鋸走行スピードのスイッチを低速側に切り替える。
(3)帯鋸走行スピードをゆっくり減速していき、観察窓10dからバーナー11によって形成されたヒートラインの幅を決める。
すなわち、帯鋸走行スピードを遅くすればヒートラインの幅が太くなり、帯鋸走行スピードを速くすればヒートラインの幅が細くなる。
(4)帯鋸50が1周する時間をタイマーで設定する(初期設定後、最初の1枚は実測値で設定する)
(5)帯鋸が1周して、1本目のヒートライン51aが形成されたら、操作盤1の帯鋸走行スピードのスイッチを高速側に切り替える。
なお、高速側走行スピードは、2.0〜2.5程度とする。
(6)帯鋸前後調整ハンドル3をゆっくり回転し帯鋸を前後に移動させて、帯鋸の2本目のヒートラインの位置を決める。
実施形態では帯鋸前後調整ハンドル3の1回転で3mm移動するようにセットしている。(7)2本目のヒートライン51bの位置を決定後、操作盤1の帯鋸走行スピードを低速側に切り替えて、2本目のヒートライン51bの加工をする。
(8)3本目のヒートライン51cの加工は、前記(5)〜(7)を繰り返す。
(9)3本目のヒートライン51cの加工終了後、操作盤1の帯鋸走行スピードを高速側に切り替え、自動停止ボタンを押す。
これにより、バーナー11が消火し、帯鋸50の走行が停止され、加工を終了する。
(10)鋸底50b側(帯鋸刃53が形成されている側と反対側の後端)にも4本目のヒートライン51dを形成する。
作業終了時は、ガスボンベ元栓を閉め、電源を切る。
このような操作手順により、同じ品質の熱処理加工ができる。
なお、ヒートラインの幅は帯鋸の厚さに応じて変え、通常では、帯鋸の厚さの6.0倍程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0025】
次に、本実施形態の帯鋸の熱処理加工装置を用い実施例を説明する。
図6に示すように、幅:127mm、厚み:1.05mm、長さ:7mの帯鋸の、帯鋸刃53側に3本のヒートライン51a、51b、51cを形成し、鋸底50b側に1本のヒートライン51dを形成した。
1本のヒートラインの幅は、帯鋸の厚みの6.0倍とし、ヒートライン間の間隔は7mmとした。
このときの帯鋸の走行スピードは、2.5m/分とした。
4本のヒートラインを形成する作業時間は10分であった。
形成されたヒートラインの幅は均一であり、熱処理加工を終えた帯鋸には歪みは生じず、使用中においても刃先に不良振動が発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の帯鋸の熱処理加工装置は、長年の経験と勘による緊張帯加工(帯鋸腰入れ加工)を、熱処理によって簡単に形成できる。
また、帯鋸の長手方向に幅狭の複数本のヒートライン(熱処理加工部分)を容易に形成できるので、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0027】
1:操作盤
2:帯鋸締め付けハンドル
2a:上部帯鋸締め付けハンドル
2b:下部帯鋸締め付けハンドル
3:帯鋸前後調整ハンドル
32、32a、32b:位置決め板
4:バーナー調整バルブ
5:冷却装置
6:ガス電磁バルブ
7:下部ローラ
8:上部ローラ
9:鋸送りローラー
9a:上鋸送りローラー
9b:下鋸送りローラー
10:ヒート板
10a:表ヒート板
10b:裏ヒート板
10c:開口部
10d:観察窓
10e:冷却パイプ
11,11a,11b:バーナー
31a,31b:スクリューネジ
31c,31d:プーリ
32a:位置決め板
33:ベルト
32b:位置決め板
50:帯鋸
50a:刃底
50b:鋸底
51,51a,51b,51c、51d:ヒートライン
53:帯鋸刃
91:スクリューネジ
A:ヒートライン予定部
B:矢印位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6