特許第6244028号(P6244028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6244028-逆転写酵素阻害剤の製造方法 図000044
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244028
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】逆転写酵素阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/69 20060101AFI20171127BHJP
   C07C 255/50 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 253/30 20060101ALN20171127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20171127BHJP
   A61P 31/18 20060101ALN20171127BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALN20171127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171127BHJP
   C07D 401/06 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   C07D213/69
   C07C255/50CSP
   !C07C253/30
   !A61P43/00 111
   !A61P31/18
   !A61K31/4439
   !C07B61/00 300
   !C07D401/06
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-536221(P2016-536221)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2016-540765(P2016-540765A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014068008
(87)【国際公開番号】WO2015084763
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】61/911,686
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/017,542
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596129215
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ツアオ,ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーチエ,ドナルド・アール・ジユニア
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリー,ガイ・アール
(72)【発明者】
【氏名】伊東 哲志
(72)【発明者】
【氏名】ジユルネ,ミシエル
(72)【発明者】
【氏名】チエン,ガーン
(72)【発明者】
【氏名】シエリー,ベンジヤミン・デイー
(72)【発明者】
【氏名】チヤエン,デイヴイツド・エム
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503230(JP,A)
【文献】 特表2013−521286(JP,A)
【文献】 特表2013−510800(JP,A)
【文献】 特表2009−502787(JP,A)
【文献】 特表2002−501516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/69
C07C 255/50
C07C 253/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Fの化合物:
【化1】

[式中、KおよびKは独立にCH、CF、CHF、CHCF、OCH、Cl、Br、F、CNまたはSCHであり、RはCF、ClまたはBrである。]の合成方法であって、
段階1:−50℃から15℃である第一の低温で炭化水素またはエーテル系有機溶媒中、第1の塩基の存在下での、下記式Bのエステル:
【化2】

の下記式Cの化合物:
【化3】

とのアルドール付加[前記第1の塩基は金属アルコキシドまたは金属アミド塩基である。]を行って、中間体D
【化4】

を生成する段階であって任意に中間体D単離することを含む、段階;
段階2炭化水素またはエーテル系有機溶媒(溶媒は段階1でのものと同一であるか異なっていることができる)中、−50℃から15℃である第二の低温で第二の塩基(当該第二の塩基は三級アミン塩基である)の存在下に、有機酸無水物またはスルホニルクロライドと中間体Dを反応させて、中間体E
【化5】

を生成する段階であって任意に中間体Eを単離することを含む、段階;
段階3アルコールおよび有機溶媒の混合物中、25℃から80℃である第一の高温で、式NH3+n(X=非配位対アニオンおよびn=0(ゼロ)もしくは1である)を有する窒素源の存在下に中間体Eを環化させることで、式Fの化合物を作る段階を含む方法。
【請求項2】
下記式Iの化合物:
【化6】

[式中、RはC1−6アルキルであり、KおよびKは独立にCH、CF、CHF、CHCF、OCH、Cl、Br、F、CNまたはSCHであり、RはCF、ClまたはBrである。]の合成方法であって、
段階4極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒中、無機塩基または三級アミン塩基から選択される第三の塩基の存在下に、式Fの化合物:
【化7】

[式Fの化合物は、請求項1で定義の方法によって製造される。]と、式Aの化合物:
【化8】

[式中、Xは脱離基である]をカップリングさせて、式Iの化合物を得る段階を含む方法。
【請求項3】
前記第1の塩基がカリウムtert−アミレート、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムエトキシドまたはカリウムエトキシドから選択される、請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項4】
前記炭化水素またはエーテル系有機溶媒がトルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフランまたはキシレンから選択される請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項5】
前記有機酸無水物またはスルホニルクロライドが無水トリフルオロ酢酸、メタンスルホニルクロライド、無水酢酸、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、またはp−トルエンスルホニルクロライドから選択される請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項6】
前記第二の塩基がトリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアゾビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジイソプロピルエチルアミンまたはジシクロヘキシルエチルアミンから選択される請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項7】
中間体Dおよび中間体Eを単離せず、段階1を受取容器につながる二つの供給液投入口および一つの排出口を有するフローリアクター中で行う、請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法であって、
炭化水素またはエーテル系有機溶媒中の式Bのエステルおよび式Cの化合物を、一つのフローリアクター投入口にポンプで送り;
炭化水素またはエーテル系有機溶媒中の第1の塩基を第2のフローリアクター投入口にポンプで送り;
有機酸無水物またはスルホニルクロライドを連続的に受取容器に加え;そして
第二の塩基を連続的に受取容器に加える方法。
【請求項8】
前記窒素源がNHである請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項9】
前記アルコールおよび有機溶媒の混合物において、前記アルコールがメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、またはtert−アミルアルコールから選択され、前記有機溶媒がテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエンまたはキシレンから選択される請求項1または2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項10】
がハロゲン、OMs、OTs、OBs、OP(O)(OR、OC(O)R、OC(O)ORまたはOC(O)NRiiであり、RおよびRiiが独立にHまたはC1−6アルキルから選択される、請求項2に記載の式Iの化合物の合成方法。
【請求項11】
前記第三の塩基が水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアゾビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジイソプロピルエチルアミン、またはジシクロヘキシルエチルアミンから選択される請求項2に記載の式Iの化合物の合成方法。
【請求項12】
前記極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒がアルコールおよび有機アミドの混合物である、請求項2に記載の式Iの化合物の合成方法。
【請求項13】
段階4を25℃から80℃である第二の高温で実施する、請求項2に記載の式Iの化合物の合成方法。
【請求項14】
前記第二の高温が5℃である請求項13に記載の式Iの化合物の合成方法。
【請求項15】
前記第1の塩基がカリウムtert−アミレートまたはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドから選択され;
第一の低温が−50℃から℃の範囲であり;
前記炭化水素またはエーテル系有機溶媒がトルエンであり;
前記有機酸無水物またはスルホニルクロライドが無水トリフルオロ酢酸またはメタンスルホニルクロライドから選択され;
前記第二の塩基がトリエチルアミンであり;
前記第二の低温が℃から0℃の範囲であり;
前記窒素源がNHであり;
前記第一の高温が0℃から0℃の範囲であり;
前記アルコールおよび有機溶媒の混合物がメタノールおよびトルエンの混合物であり;
がクロロであり;
前記第三の塩基がN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり;
前記第一の極性非プロトン性もしくはプロトン性溶媒が、tert−アミルアルコールおよび1−メチル−2−ピロリジノンの混合物である、請求項2に記載の式Iの化合物の合成方法。
【請求項16】
式Bのエステル:
【化9】

を製造することをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法であって、50℃である第三の高温で、有機極性非プロトン性溶媒中、第四の塩基[当該第四の塩基は、三級アミンまたは無機炭酸塩である。]の存在下での式Gの化合物:
【化10】

と式Hの化合物:
【化11】

[式中、Xはハライドもしくは、メタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートおよびジエチルホスフェートからなる群から選択される擬ハライドである。]との反応によって式Bのエステルを製造する、前記方法。
【請求項17】
がブロモであり;
前記第四の塩基がN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり;
前記有機極性非プロトン性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトンである、請求項16に記載の式Fまたは式Iの化合物の合成方法。
【請求項18】
式Iの化合物において、KがClであり、KがCNであり、RがCHであり、RがCFである、または
式Fの化合物において、KがClであり、KがCNであり、RがCFである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の式Iまたは式Fの化合物の合成方法。
【請求項19】
式Fの化合物:
【化12】

[式中、KおよびKは独立にCH、CF、CHF、CHCF、OCH、Cl、Br、F、CNまたはSCHであり、RはCF、ClまたはBrである。]の合成方法であって、
アルコールおよび有機溶媒の混合物中、25℃から80℃である第一の高温で、式NH3+n(X=非配位対アニオンおよびn=0(ゼロ)もしくは1である)を有する窒素源の存在下に中間体E:

を環化させることで、式Fの化合物を作る方法。
【請求項20】
式Eの化合物:
【化13】

[式中、KおよびKは独立にCH、CF、CHF、CHCF、OCH、Cl、Br、F、CNまたはSCHであり、RはCF、ClまたはBrである。]
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)と称されるレトロウィルス、特にHIV1型(HIV−1)および2型(HIV−2)と称される株は、病因学的に、後天性免疫不全症候群(AIDS)と称される免疫抑制疾患に関連付けられてきた。HIV血清陽性者は最初は無症候性であるが、代表的にはAIDS関連症候群(ARC)、次にAIDSを発症する。罹患者は、重度の免疫抑制を示し、それによって衰弱性および最終的には致死性の感染にかかる可能性が非常に高くなる。宿主によるHIVの複製では、ウィルスゲノムの宿主細胞DNAへの組み込みが必要である。HIVはレトロウィルスであることから、HIV複製サイクルでは、逆転写酵素(RT)と称される酵素を介したウィルスRNAゲノムのDNAへの転写が必要である。
【0002】
逆転写酵素は、3種類の既知の酵素機能を有する。すなわち、その酵素はRNA依存性DNAポリメラーゼとして、リボヌクレアーゼとして、そしてDNA依存性DNAポリメラーゼとして作用する。RNA依存性DNAポリメラーゼとしての役割において、RTはウィルスRNAの一本鎖DNAコピーを転写する。リボヌクレアーゼとして、RTは元のウィルスRNAを破壊し、元のRNAから産生されたばかりのDNAを遊離させる。そして、DNA依存性DNAポリメラーゼとして、RTは、第一のDNA鎖を鋳型として用いて第2の相補DNA鎖を作る。その二つの鎖が二本鎖DNAを形成し、それがインテグラーゼ酵素によって宿主細胞ゲノムに組み込まれる。
【0003】
HIV RTの酵素機能を阻害する化合物が感染細胞におけるHIV複製を阻害することが知られている。これらの化合物は、ヒトにおけるHIV感染の予防または治療において有用である。HIV感染およびAIDSの治療での使用に承認されている化合物の中には、RT阻害剤3′−アジド−3′−デオキシチミジン(AZT)、2′,3′−ジデオキシイノシン(ddI)、2′,3′−ジデオキシシチジン(ddC)、d4T、3TC、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、アバカビル、エムトリシタビンおよびテノホビルがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RT阻害薬3−クロロ−5−({1−[(4−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル]−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル}オキシ)ベンゾニトリル、関連化合物およびそれらの製造方法が、2011年10月6日公開のWO2011/120133A1および2011年10月6日公開のUS2011/0245296A1(これらはいずれも、参照によって全内容が本明細書に組み込まれる)に示されている。本発明は、3−(置換されているフェノキシ)−1−[(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル])−ピリジン−2(1H)−オン誘導体の新規な合成方法に関するものである。本発明の方法によって合成される化合物は、逆転写酵素およびHIV複製の阻害、ならびにヒトでのヒト免疫不全ウィルス感染の治療に有用なHIV逆転写酵素阻害剤である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、3−(置換されているフェノキシ)−1−[(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル])−ピリジン−2(1H)−オン誘導体の新規な合成方法に関するものである。本発明の方法によって合成される化合物は、逆転写酵素およびHIV複製の阻害、ならびにヒトでのヒト免疫不全ウィルス感染の治療に有用なHIV逆転写酵素阻害剤である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】3−(置換されているフェノキシ)−1−[(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル])−ピリジン−2(1H)−オンの合成方法で使用されるアルドール縮合段階用のフローリアクターの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、式Iの化合物:
【化1】
【0008】
[式中、RはC1−6アルキルであり、KおよびKは独立にCH、CF、CHF、CHCF、OCH、Cl、Br、F、CNまたはSCHであり、RはCF、ClまたはBrである。]の合成方法であって、
段階1−第一の低温で炭化水素もしくはエーテル系有機溶媒中、第1の塩基の存在下での、下記式Bのエステル:
【化2】
【0009】
の下記式Cの化合物:
【化3】
【0010】
とのアルドール付加[前記第1の塩基は金属アルコキシドまたは金属アミド塩基である。]を行って、中間体Dを生成し、下記中間体D:
【化4】
【0011】
を単離してもよい段階;
段階2−炭化水素もしくはエーテル系有機溶媒(溶媒は段階1でのものと同一であるか異なっていることができる)中、第二の低温で第二の塩基(当該第二の塩基は三級アミン塩基である)の存在下に、有機酸無水物またはスルホニルクロライドと中間体Dを反応させて、中間体Eを生成し、中間体E:
【化5】
【0012】
を単離してもよい段階;
段階3−アルコールおよび有機溶媒の混合物中、第一の高温で、式NH3+n(X=非配位対アニオンおよびn=0(ゼロ)もしくは1である)を有する窒素源の存在下に中間体Eを環化させることで、式Fの化合物:
【化6】
【0013】
を作る段階;
ならびに
段階4−極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒中、無機塩基または三級アミン塩基から選択される第三の塩基の存在下に、式Aの化合物:
【化7】
【0014】
[式中、Xは脱離基である]と式Fの化合物をカップリングさせて、式Iの化合物を得る段階
を含む方法を包含する。
【0015】
あるいは、上記の段階1および2を行った後、上記の段階3および4に代えて、下記のような段階3A:
段階3A−アルコールおよび有機溶媒の混合物中、高温で、式Aの化合物:
【化8】
【0016】
[式中、XはNHである。]の存在下に中間体Eを環化させて、式Iの化合物を製造することを行うことができる。
【0017】
下記の図式は、段階3Aの1例である。
【化9】
【0018】
本発明は、式Fの化合物:
【化10】
【0019】
[式中、KおよびKは独立にCH、CF、CHF、CHCF、OCH、Cl、Br、F、CNまたはSCHであり、RはCF、ClまたはBrである]の合成方法であって、
段階1−第一の低温で、炭化水素またはエーテル系有機溶媒中、第1の塩基の存在下に、式Bのエステル:
【化11】
【0020】
の式Cの化合物:
【化12】
【0021】
[式中、第1の塩基は金属アルコキシドまたは金属アミド塩基である]とのアルドール付加を行って中間体Dを生成し、中間体D:
【化13】
【0022】
を単離してもよい段階;
段階2−炭化水素またはエーテル系有機溶媒[溶媒は段階1でのものと同一であるか異なっていることができる]中、第二の低温で、第二の塩基[当該第二の塩基は三級アミン塩基である。]の存在下に、中間体Dを有機酸無水物またはスルホニルクロライドと反応させて中間体Eを生成し、中間体E:
【化14】
【0023】
を単離してもよい段階;
段階3−アルコールおよび有機溶媒の混合物中、第一の高温で、式NH3+n[X=非配位対アニオンであり、n=0または1である。]を有する窒素源の存在下に、中間体Eを環化させて、式Fの化合物を製造すること
を含む方法も包含する。
【0024】
「アルキル」という用語は、例えば、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr、n−Pr)イソプロピル(i−Pr、i−PrまたはPr)またはtert−ブチル(t−ブチル、t−ブチル)などの指定数の炭素原子の直鎖もしくは分岐のアルキル鎖を意味する。
【0025】
前記第1の塩基は、例えば、金属アルコキシドまたは金属アミド塩基である。本発明の1実施形態において、第1の塩基は、カリウムtert−アミレート、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムまたはナトリウムtert−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミドまたはナトリウムもしくはカリウムエトキシドから選択される。本発明の別の実施形態において、第1の塩基はカリウムtert−アミレートまたはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0026】
第一の低温および第二の低温は室温以下の温度である。1実施形態において、第一の低温は約15℃から約−50℃の範囲である。1実施形態において、第二の低温は約15℃から約−50℃の範囲である。別の実施形態において、第二の低温は約0℃から約10℃の範囲である。
【0027】
本発明で利用可能な炭化水素およびエーテル系有機溶媒は当業界で公知であり、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエンまたはキシレンである。1実施形態において、炭化水素またはエーテル系有機溶媒は、トルエンまたはテトラヒドロフランから選択される。別の実施形態において、炭化水素またはエーテル系有機溶媒はトルエンである。
【0028】
「有機酸無水物またはスルホニルクロライド」という用語には、例えば無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、またはp−トルエンスルホニルクロライドなどがある。本発明の1実施形態において、有機酸無水物またはスルホニルクロライドは、無水トリフルオロ酢酸、無水酢酸またはメタンスルホニルクロライドから選択される。別の実施形態において、有機酸無水物またはスルホニルクロライドは、無水トリフルオロ酢酸またはメタンスルホニルクロライドから選択される。
【0029】
第二の塩基は三級アミン塩基である。第三の塩基は無機または三級アミン塩基である。無機塩基には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムなどがある。三級アミン塩基には、例えばトリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアゾビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミンなどがある。好適な非極性非プロトン性溶媒には、例えばテトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトミド(acetomide)、N−メチルピロリジノンなどがある。第1の塩基、第二の塩基および第三の塩基は、互いから独立に選択される。
【0030】
本発明の1実施形態において、第二の塩基は、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアゾビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジイソプロピルエチルアミンまたはジシクロヘキシルエチルアミンから選択される。本発明別の実施形態において、第二の塩基はトリエチルアミンである。
【0031】
1実施形態において、第三の塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアゾビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジイソプロピルエチルアミン、またはジシクロヘキシルエチルアミンから選択される。別の実施形態において、第三の塩基はN,N−ジイソプロピルエチルアミンである。
【0032】
本発明の別の実施形態は、中間体Dおよび中間体Eを単離せず、段階1および段階2を受取容器につながる二つの供給液投入口および一つの排出口を有するフローリアクター中で行う、本発明による式Iもしくは式Fの化合物の合成方法であって、
炭化水素またはエーテル系有機溶媒中の式Bのエステルおよび式Cの化合物を、一つのフローリアクター投入口にポンプで送り;
炭化水素またはエーテル系有機溶媒中の第1の塩基を第2のフローリアクター投入口にポンプで送り;
有機酸無水物またはスルホニルクロライドを連続的に受取容器に加え;そして
第二の塩基を連続的に受取容器に加えた方法を包含する。本発明に従って使用することができるフローリアクターを図1に示してある。
【0033】
本明細書に関して、窒素源という用語は、一般式NH3+nの化合物を意味し、X=非配位対アニオンであり、n=0または1である。非配位対アニオンは、例えば、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンまたはトリフルオロメタンスルホン酸イオンである。本発明の1実施形態において、NH3+n窒素源はテトラフルオロホウ酸アンモニウムであり、n=1であり、X=テトラフルオロホウ酸イオンである。本発明の別の実施形態において、NH3+n窒素源はアンモニアであり、n=0である。別の実施形態において、窒素源はXがNHである式Aの化合物である。
【0034】
第一の高温という用語は、室温より高い温度を意味する。1実施形態において、第一の高温は約25℃から約80℃の範囲である。別の実施形態において、第一の高温は約60℃から約80℃の範囲である。
【0035】
アルコールおよび有機溶媒の混合物は、いずれかの比率での2成分の混合物を意味する。そのアルコールには例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコールなどがあり、有機溶媒には例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルメチルtert−ブチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエンまたはキシレンなどがある。
【0036】
「脱離基」という用語は、置換反応または脱離反応において物質から放出される原子または原子団を意味し、例えばハロゲンおよびスルホネートなどがある。1実施形態において、本発明は、Xがハロゲン、OMs(メシレート)、OTs(トシレート)、OBs(ベシレート)、OP(O)(OR、OC(O)R、OC(O)ORまたはOC(O)NRiiから選択され、RおよびRiiが独立にHおよびC1−6アルキルから選択される、本明細書に記載の方法を包含する。別の実施形態において、本発明は、Xがクロロである本明細書に記載の方法を包含する。
【0037】
極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒という用語は、大きい双極子モーメントを有する溶媒を意味する。極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒という用語は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、スルホラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−アミルアルコールまたは水を含む。1例において、極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒は、アルコールおよび有機アミドの混合物である。別の実施形態において、極性の非プロトン性もしくはプロトン性溶媒は、tert−アミルアルコールおよびN−メチルピロリジノンの混合物である。
【0038】
本発明の別の実施形態は、段階4を第二の高温で実施する、上記で記載の式Iの化合物の合成方法を包含する。第二の高温という用語は、室温より高い温度を意味し、第一の高温から独立である。1実施形態において、第二の高温は約25℃から約80℃の範囲である。別の実施形態において、第二の高温は約25℃である。
【0039】
本発明は、
前記第1の塩基がカリウムtert−アミレートまたはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドから選択され;
前記第一の低温が約0℃から約−50℃の範囲であり;
前記炭化水素またはエーテル系有機溶媒がトルエンであり;
前記有機酸無水物またはスルホニルクロライドが無水トリフルオロ酢酸またはメタンスルホニルクロライドから選択され;
前記第二の塩基がトリエチルアミンであり;
前記第二の低温が約0℃から約10℃の範囲であり;
前記窒素源がNHであり;
前記第一の高温が約60℃から約80℃の範囲であり;
前記アルコールおよび有機溶媒の混合物がメタノールおよびトルエンの混合物であり;
がクロロであり;
前記第三の塩基がN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり;
前記第一の極性非プロトン性もしくはプロトン性溶媒がtert−アミルアルコールおよびN−メチルピロリジノンの混合物である、上記で記載の式Iの化合物の合成方法も包含する。
【0040】
本発明は、式Bのエステル:
【化15】
【0041】
を、第三の高温で、有機極性非プロトン性溶媒中、第四の塩基[当該第四の塩基は、三級アミンまたは無機炭酸塩である。]の存在下での式Gの化合物:
【化16】
【0042】
と式Hの化合物:
【化17】
【0043】
[式中、Xはハライドもしくは擬ハライドである。]との反応によって式Bのエステルを製造することをさらに含む、前記の式Iまたは式Fの化合物の合成方法も包含する。本発明の1実施形態において、Xはブロモであり;第四の塩基はN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり;有機極性非プロトン性溶媒はN,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトンであり;第三の高温は約50℃である。
【0044】
「擬ハライド」という用語は、例えばメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートおよびジエチルホスフェートを意味する。
【0045】
本発明は、式Iの化合物においてKがClであり、KがCNであり、RがCHであり、RがCFである、上記式Iの化合物の合成方法のいずれかを包含するものでもある。
【0046】
本発明は、式Iの化合物においてKがClであり、KがCNであり、RがCFである上記の式Fの化合物の合成方法のいずれかをも包含する。
【0047】
化合物3−クロロ−5−({1−[(4−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル]−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル}オキシ)ベンゾニトリルは、下記の化学構造を有する。
【化18】
【0048】
無水3−クロロ−5−({1−[(4−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル]−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル}オキシ)ベンゾニトリルは、2種類の結晶形であるI型およびII型で存在することが知られている。無水結晶II型についての示差走査熱量測定(DSC)曲線は、無水II型から無水I型への多形変化による230.8℃での開始、245.2℃でピーク最大値および3.7J/gのエンタルピー変化を示す吸熱、ならびに無水I型の融解による283.1℃での開始、284.8℃でのピーク最大値および135.9J/gのエンタルピー変化を示す第2の融解吸熱を示している。この化合物の製造およびHIV逆転写酵素を阻害する能力は、2011年10月6日公開のWO2011/120133A1および2011年10月6日公開のUS2011/0245296A1(これらはいずれも、参照によってその全内容が本明細書に組み込まれるものとする。)。この化合物は、ヒトでのヒト免疫不全ウィルス感染の治療に有用である。無水結晶I型およびII型、ならびにII型の製造手順は、2014年4月3日公開のWO2014/052171(参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。無水I型の製造手順は、WO2011/120133およびUS2011/0245296に記載されている。
【0049】
3−クロロ−5−({1−[(4−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル]−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル}オキシ)ベンゾニトリルを合成するための既知の合成経路では、比較的高価な原料が必要であり、比較的多量の廃棄物が生じ、実施に要する労力が比較的大きかった。本発明は、上記化合物製造のための簡単でコスト効果が高い信頼性のある合成経路である。
【0050】
下記の実施例は本発明を説明するものである。具体的に別段の断りがない限り、反応物はいずれも、市販されていたか、当業界で公知の手順に従って製造することができる。下記の略称を使用する。
【0051】
略称
℃=摂氏
DMF=ジメチルホルムアミド
NMP=N−メチルピロリジノン
g=グラム
IPA=イソプロピルアルコール
NPA=n−プロピルアルコール
L=リットル
mL=ミリリットル
LC=液体クロマトグラフィー
LCAP=液体クロマトグラフィー面積パーセント
Me=メチル
h=時間
Hz=ヘルツ
t=三重線
d=二重線
s=一重線
brs=広い一重線
IPA=n−プロパノールとも称される2−プロパノール
NMR=核磁気共鳴
wt%=重量パーセント
nm=ナノメートル
ug=ミクログラム
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
ppm=百万分率
Ph=フェニル
L=リットル
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
conc.=濃縮された
KOAm=カリウムtert−アミレート
tAmOH=tert−アミルアルコール
TFAA=無水トリフルオロ酢酸
TEA=トリエチルアミン
mp=融点
GC/MS=ガスクロマトグラフィー/質量分析
BHT=ブチル化ヒドロキシトルエン
MTBE=tert−ブチルメチルエーテル
wt=重量。
【0052】
実施例1
【化19】
【0053】
段階1
【化20】
【0054】
フェニルメチルカーバメート:40%メチルアミン水溶液(500g、6.44mol)を、加熱/冷却ジャケット、オーバーヘッド撹拌機、温度プローブおよび窒素導入管を取り付けた2リットル容器に入れた。その溶液を冷却して−5℃とした。反応温度を−5℃から0℃に維持しながら、クロルギ酸フェニル(500.0g、3.16mol)を2.5時間かけて加えた。添加完了したら、得られた白色スラリーを約0℃で1時間撹拌した。
【0055】
そのスラリーを濾過し、水(500mL)で洗浄し、窒素気流下に終夜乾燥させて、所望の生成物465g(収率96%)を白色結晶固体として得た。H NMR(CDCl、500MHz):δ7.35(t、J=8.0Hz、2H)、7.19(t、J=8.0Hz、1H)、7.12(d、J=8.0Hz、2H)、4.95(brs、1H)、2.90(d、J=5Hz、3H)。
【0056】
段階2
【化21】
【0057】
2−(2−ヒドロキシアセチル)−N−メチルヒドラジンカルボキサミド:パートA:冷却ジャケット、オーバーヘッド撹拌機、温度プローブ、還流冷却管および窒素導入管を取り付けた2リットル容器に、フェニルメチルカーバメート(300g、1.95mol)を入れた。IPA(390mL)を23℃で加えた。ヒドラジン水和物(119g、2.33mol)を加え、得られたスラリーを加熱して75℃として6時間経過させた。
【0058】
パートB:反応完了したら(HPLCにより、変換率>99%)、IPA(810mL)およびグリコール酸(222g、2.92mol)を加え、混合物を83℃から85℃で10から12時間撹拌した。反応混合物は最初は透明無色溶液であった。83℃から85℃で4時間後、混合物に生成物のシードを添加した(0.5g)。スラリーを2時間かけてゆっくり冷却して20℃とし、1時間熟成させた。シードを用いて結晶化を促進させたが、溶液を83℃から85℃で4時間熟成させることで、シードなしに結晶生成物を沈澱および単離することが可能である。
【0059】
そのスラリーを濾過し、IPA(600mL)で洗浄した。得られたケーキを窒素気流下に乾燥させて、所望の生成物241.8g(収率81%)を白色結晶固体として得た。H NMR(DO、500MHz):δ4.11(s、2H)、2.60(s、3H)。
【0060】
段階3
【化22】
【0061】
ジャケット、オーバーヘッド撹拌機、温度プローブ、還流冷却管および窒素導入管を取り付けた1リットル容器に、3−(ヒドロキシメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オン:2−(2−ヒドロキシアセチル)−N−メチルヒドラジンカルボキサミド(130g、約95重量%品、0.84mol)、n−プロパノール(130mL)および水(130mL)を入れた。水酸化ナトリウム(ペレット、16.8g、0.42mol)を加え、得られたスラリーを昇温させて3時間還流させた。反応混合物を冷却して20℃とし、濃塩酸(28.3mL、0.34mol)を用いてpH6.5(±0.5)に調節した。体積を約400mLまで減らし、n−プロパノール(780mL)をゆっくり加えることで体積を維持することで、40℃から50℃で減圧下に水を共沸除去した。最終含水量は<3000μg/mLであった。得られたスラリー(約400mL)を冷却して23℃とし、ヘプタン(390mL)を加えた。そのスラリーを23℃で1時間熟成させ、冷却して0℃とし、2時間熟成させた。スラリーを濾過し、ケーキを1:2n−PrOH/ヘプタン(100mL)で洗浄し、フィルターケーキを窒素気流下に乾燥させて、オフホワイト結晶固体125g(収率85%)を得た。その固体は、残留無機物(NaCl)のために約75重量%品であった。H NMR(CDOD、500MHz):δ3.30(s、3H)、4.46(s、2H)。
【0062】
段階4
【化23】
【0063】
3−(クロロメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オン(1):3−(ヒドロキシメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オン(54g、73重量%、307mmol)の酢酸エチル(540mL)中混合物を45℃で撹拌した。SOCl(26.9mL、369mmol)を30から45分間かけて加え、50℃で2時間熟成させた。反応の進行をHPLCによってモニタリングした。反応完了したら(210nmで>99.5面積%)、温懸濁液を濾過し、フィルターケーキ(主としてNaCl)を酢酸エチル(108mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗浄液を減圧下に50℃から60℃で濃縮して、約150mLとした。得られたスラリーを冷却して−10℃とし、1時間熟成させた。スラリーを濾過し、フィルターケーキを酢酸エチル(50mL)で洗浄した。そのケーキを窒素気流下で乾燥させて、所望の生成物40.1g(収率86%)を明黄色固体として得た。H NMR(CDOD、500MHz):δ3.30(s、3H)、4.58(s、2H)。
【0064】
実施例2
【化24】
【0065】
段階1−エチルエステル合成
実験手順:
【化25】
【0066】
2−(3−クロロ−5−シアノフェノキシ)酢酸エチル(A):オーバーヘッド撹拌機を取り付けた1リットル丸底フラスコに、3−クロロ−5−ヒドロキシベンゾニトリル(50.0g、純度98重量%、319mmol)および15%DMF水溶液(DMF 200mL+HO 35.5mL)を入れた。得られた溶液に、環境温度でジイソプロピルエチルアミン(61.3mL、純度99.0%、1.1当量)および2−ブロモ酢酸エチル(35.7g、純度98%、1.15当量)を加えた。得られた溶液を窒素下に昇温させて50℃とし、12時間熟成させた。反応完了したら、バッチを冷却して0℃から5℃とした。得られた透明ないしやや濁った溶液に、5%シード(3.8g、16.0mmol)を加えた。温度を0℃から5℃に維持しながら、薄い懸濁液に、シリンジポンプによって3時間かけてHO(64.5mL)を加えた。温度を0℃から5℃に維持しながら、追加のHO(200mL)を1時間かけて加えた。最終DMF/HO比は1:1.5である。得られたスラリーを0℃から5℃で1時間熟成させた。バッチを濾過し、ケーキスラリーを2:1DMF/水(150mL)、次に水(200mL)で洗浄した。湿ケーキを、フリット上、窒素気流下に吸引しながら20℃から25℃で乾燥させた。HOが<0.2%となった時点で、ケーキは乾燥状態と考えられる。エチルエステル73.4gが明黄褐色固体として得られた(収率96%)。H NMR(CDCl、400MHz)δ=7.29(s、1H)、7.15(s、1H)、7.06(s、1H)、4.67(s、2H)、4.32(q、2H)、1.35(t、3H)ppm。シードを用いて結晶化を促進したが、溶液を0℃から5℃で少なくとも約2時間熟成させることで、シードなしに結晶生成物を沈澱および単離することが可能である。
【0067】
段階2−ピリドン合成
合成図式
【化26】
【0068】
実験手順
アルドール縮合
(2E/Z,4E)−エチル2−(3−クロロ−5−シアノフェノキシ)−5−エトキシ−3−(トリフルオロメチル)ペンタ−2,4−ジエノエート(C):2−(3−クロロ−5−シアノフェノキシ)酢酸エチル(25.01g、104.4mmol、1.00当量)をトルエン(113.43g、131mL)に加え、4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロ−3−ブテン−2−オン(26.43g、157.2mmol、1.51当量)を加えた。
【0069】
フローリアクターは、受取容器につながる二つの供給溶液投入口および一つの排出口からなるものであった。そのフローリアクターも模式図が図1に示してある。
【0070】
エステル溶液を一つのフローリアクター投入口にポンプ送りした。カリウムtert−アミレート溶液を第2のリアクター投入口にポンプ送りした。無水トリフルオロ酢酸を、受取容器に連続的に加えた。トリエチルアミンを、受取容器に連続的に加えた。
【0071】
流量は、エステル溶液13mL/分、カリウムtert−アミレート溶液7.8mL/分、無水トリフルオロ酢酸3.3mL/分およびトリエチルアミン4.35mL/分であった。
【0072】
トルエン(50mL)およびトリフルオロ酢酸カリウム(0.64g、4.21mmol、0.04当量)を受取容器に入れた。フローリアクターを−10℃浴に浸し、ポンプを動作させた。受取容器におけるバッチ温度は、操作を通じ、ドライアイス/アセトン浴を用いて5℃から10℃に維持した。13.5分後、エステル溶液は消費され、リアクターにトルエン(10mL)を流し、ポンプを止めた。
【0073】
得られた黄色スラリーを昇温させて室温とし、4.5時間熟成させた。メタノール(160mL)を入れて、81.20LCAPジエンを含む均一溶液を得た。
【0074】
ジエンの溶液(573mL)を、精製せずに次の反応で用いた。
【0075】
環化
3−クロロ−5−((2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)オキシ)ベンゾニトリル(E):ジエンのPhMe/MeOH(573mL;40.69g、104.4mmol理論値)中溶液に、メタノール(25mL)を加えた。アンモニア(32g、1.88mol、理論値基準で18当量)を加え、溶液を昇温させて60℃とした。反応液を60℃で18時間熟成させた。温度を35℃から45℃に調節し、圧力を下げて、生産的蒸留速度を維持した。バッチ体積を約300mLまで減らし、メタノール(325mL)を少量ずつ加えて、バッチ体積を250mLから350mLに維持した。加熱を停止し、系を排気した。得られたスラリーを冷却して室温として、終夜熟成させた。
【0076】
バッチを濾過し、ケーキをメタノールで洗浄した(3回、45mL)。湿ケーキを、窒素気流下に吸引しながらフリット上で乾燥させて、白色固体18.54gを得た。H NMR(DMSO−d、500MHz):δ12.7(brs、1H)、7.73(t、1H、J=1.5Hz)、7.61−7.59(m、2H)、7.53(t、1H、J=2.0Hz)、6.48(d、1H、J=7.0Hz)ppm。
【0077】
段階3 3−クロロ−5−({1−[(4−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル]−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル}オキシ)ベンゾニトリルの塩素化、アルキル化および単離
【化27】
【0078】
3−(クロロメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オン:3−(ヒドロキシメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オン(68重量%品1.638kg、8.625mol)およびN−メチルピロリジノン(8.9リットル)を、30リットル容器に入れた。懸濁液を環境温度で10時間熟成させた。スラリーを4リットル焼結ガラス漏斗によりN下に濾過し、フィルターケーキ(主としてNaCl)をNMP(2.23リットル)で洗浄した。合わせた濾液および洗浄液は、5750μg/mLの含水量を有していた。オフガス蒸気を捕捉するための2N NaOHスクラバーを取り付けた75リットルフラスコにその溶液を入れた。塩化チオニル(0.795リットル、10.89mol)を1時間かけて加え、温度を35℃まで上げた。HPLC分析では、その反応では、変換を完了させるのに追加の塩化チオニル添加(0.064リットル、0.878mol)が必要であることが示された。溶液を昇温させて50℃とし、60Torrの減圧下に置き(2N NaOHスクラバーに排気)、液面下窒素(4リットル/分)を緩やかに吹き込んだ。溶液中の二酸化硫黄含有量が定量的GC/MSによる測定で<5mg/mLとなるまで、脱気を10時間続けた。3−(クロロメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オンのNMP中黄褐色溶液が13.0kgの重量であり、9.63重量%と定量されて、1.256kgが得られた(収率97%)。
【0079】
3−クロロ−5−((1−((4−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)メチル)−2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)オキシ)ベンゾニトリル:75リットルフラスコに、9.63重量%の3−(クロロメチル)−4−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−5(4H)−オンのNMP中溶液(11.6kg、7.55mol)、3−クロロ−5−((2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)オキシ)ベンゾニトリル(2.00kg、6.29mol)、NMP(3.8リットル)および2−メチル−2−ブタノール(6.0リットル)を加えた。得られた懸濁液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.38リットル、25.2mol)を4時間かけてゆっくり加えた。反応液を環境温度で18時間熟成させた。HPLCによって<1%の3−クロロ−5−((2−オキソ−4−(トリフルオロメチル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)オキシ)ベンゾニトリル残留が示されたら、反応は完了と見なされる。得られた黄褐色溶液を酢酸(1.26リットル、22.0mol)で反応停止し、環境温度で終夜熟成させた。その黄褐色溶液を昇温させて70℃とした。水(2.52リットル)を加え、バッチに水和物II型(134g)(水和物II型の製造手順は、WO2014/052171に記載されている)のシードを付与した。得られた薄い懸濁液を70℃で1時間熟成させた。追加の水(14.3リットル)を7時間かけてむらなく加えた。スラリーを70℃で2時間熟成させ、5時間かけてゆっくり冷却させて20℃とした。そのスラリーを濾過し、2:1NMP/水(6リットル)、次に水洗浄液(6リットルで2回)で洗浄した。フィルターケーキをN下で乾燥させて、白色固体2.53kg(収率85%)を得て、それはX線粉末回折(defraction)分析により、標題化合物の結晶II型であることが確認された。
【0080】
実施例3
2−(3−クロロ−5−シアノフェノキシ)酢酸エチル(A):
【化28】
【0081】
3段階ワンポット手順
段階1および2:
乾燥機乾燥した250mL丸底フラスコに、ナトリウム2−メチルプロパン−2−オレート(12.85g、134mmol)およびBHT(0.641g、2.91mmol)を加え、次にDMF(30mL)を加えた。10分後、明黄色溶液となった。2−フェニルエタノール(7.66mL、63.9mmol)を加えたところ、溶液は発熱して35℃となった。得られた明黄色溶液を昇温させて55℃とし、次に3,5−ジクロロベンゾニトリル(10g、58.1mmol)のDMF(15mL)中溶液をシリンジポンプによって2時間かけて加えた。得られた赤−橙赤色懸濁液を55から60℃で熟成させた。2時間後、HPLCによって、ナトリウムフェノレートへの変換率>98%が示された。
【0082】
段階3:
懸濁液を冷却して10℃とし、次に温度を<20℃に維持しながら、2−ブロモ酢酸エチル(8.70mL、78mmol)を1時間かけて加えた。得られた混合物を環境温度で熟成させた。1時間後、HPLCによって、標題化合物への変換率>99%が示された。
【0083】
後処理および単離:
懸濁液に、MTBE(50mL)およびHO(50mL)を加え、層を分離した。有機層を20%ブライン水溶液(25mL)で洗浄した。有機層は12.5gと定量された(収率90%)。有機層を濃縮して約38mLとし、ヘキサン(12.5mL)で希釈し、冷却して5℃とした。溶液に結晶2−(3−クロロ−5−シアノフェノキシ)酢酸エチル0.28g(2重量%)をシード添加し、5℃で0.5時間熟成させて、自由流動スラリーを得た。ヘキサン(175mL)を、スラリーに0℃から5℃で1時間かけて加えた。スラリーを0℃から5℃で濾過し、ヘキサン(50mL)で洗浄し、窒素気流下に乾燥させて、標題化合物9.8g(収率70%)を白色結晶固体として得た。シードを加えて結晶化を促進したが、溶液を0℃から5℃で少なくとも約2時間熟成させることで、シードなしに結晶生成物を沈澱および単離することが可能である。
図1