(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御器は、前記被接合物の接合工程を終了するときに、前記第1位置が前記第1領域に位置し、かつ、次回の接合工程を開始するときに、前記ピン部材及び前記ショルダ部材の温度が所定の温度以上である場合には、次回の接合工程における、前記ピン部材と前記ショルダ部材が前記被接合物を押圧する押圧力を減少させるように前記工具駆動器を制御する、及び/又は、前記ピン部材と前記ショルダ部材の回転数を減少させるように前記回転駆動器を制御する、請求項1に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記制御器は、前記被接合物の接合工程を終了するときに、前記第1位置が前記第1領域に位置し、かつ、前記被接合物の接合工程を終了から次回の接合工程を開始するまでの時間が所定の時間以内である場合には、次回の接合工程における、前記ピン部材と前記ショルダ部材が前記被接合物を押圧する押圧力を減少させるように前記工具駆動器を制御する、及び/又は、前記ピン部材と前記ショルダ部材の回転数を減少させるように前記回転駆動器を制御する、請求項1又は2に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記制御器は、前記被接合物の接合工程を終了するごとに、前記第1位置が、前記基準位置よりも前記被接合物から離れた側の領域である第2領域と、前記第1領域又は前記基準位置と、に変動する場合には、前記ピン部材及び/又は前記ショルダ部材に前記被接合物の一部が付着していると判断し、報知器により警告を報知する、及び/又は次回の接合工程の実行を禁止する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記制御器は、前記被接合物の接合工程において、前記ピン部材の先端面の断面積をAp、前記ショルダ部材の先端面の断面積をAs、前記ピン部材が前記被接合物の表面から圧入したときの圧入深さをPp、前記ショルダ部材が前記被接合物の表面から圧入したときの圧入深さをPsとしたときに、次式
Ap・Pp+As・Ps=Tx
で定義されるツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、前記工具駆動器を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記制御器は、前記基準位置と前記第1位置により算出されたツール平均位置Txであるツール平均位置Tx1が、予め設定された適正範囲外である場合には、次回の接合工程における、前記ピン部材と前記ショルダ部材が前記被接合物を押圧する押圧力を減少させるように前記工具駆動器を制御する、及び/又は、前記ピン部材と前記ショルダ部材の回転数を減少させるように前記回転駆動器を制御する、請求項5に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記制御器は、前記ツール平均位置Tx1が、前記適正範囲よりも大きい値である第1閾値より大きい場合には、次回の接合工程の実行を禁止する、請求項7に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記制御器は、前記被接合物の接合工程を終了するごとに、前記ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合には、前記ピン部材及び/又は前記ショルダ部材に前記被接合物の一部が付着していると判断し、報知器により警告を報知する、及び/又は、次回の接合工程の実行を禁止する、請求項7又は8に記載の摩擦攪拌点接合装置。
前記(E)では、前記第1位置が、前記第1領域に位置し、かつ、次回の接合工程を開始するときに、前記ピン部材及び前記ショルダ部材の温度が所定の温度以上である場合に、次回の接合工程における前記設定を変更する、請求項11に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記(E)では、前記第1位置が、前記第1領域に位置し、かつ、前記(D)から次回の接合工程を開始するまでの時間が所定の時間以内である場合に、次回の接合工程における前記設定を変更する、請求項11又は12に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記被接合物の接合工程を終了するごとに、前記(D)で検出した第1位置が、前記基準位置よりも前記被接合物から離れた側の領域である第2領域と、前記第1領域又は前記基準位置と、に変動する場合には、前記ピン部材及び/又は前記ショルダ部材に前記被接合物の一部が付着していると判断する(F)と、
前記(F)で前記ピン部材及び/又は前記ショルダ部材に前記被接合物の一部が付着していると判断すると、報知機により警告を報知する、及び/又は次回の接合工程を禁止する(G)と、をさらに備える、請求項11〜13のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記(B)における前記設定は、前記ピン部材の先端面の断面積をAp、前記ショルダ部材の先端面の断面積をAs、前記ピン部材が前記被接合物の表面から圧入したときの圧入深さをPp、前記ショルダ部材が前記被接合物の表面から圧入したときの圧入深さをPsとしたときに、次式
Ap・Pp+As・Ps=Tx
で定義されるツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、前記工具駆動器の動作量が設定されている、請求項11〜14のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記(E)では、前記基準位置と前記第1位置により算出されたツール平均位置Txであるツール平均位置Tx1が、予め設定された適正範囲外の場合には、次回の接合工程における、前記ピン部材と前記ショルダ部材が前記被接合物を押圧する押圧力、及び/又は、次回の接合工程における、前記ピン部材と前記ショルダ部材の回転数を減少させるように、前記設定を変更する、請求項16に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記(E)において、前記ツール平均位置Tx1が、前記適正範囲よりも大きい値である第1閾値より大きい場合には、次回の接合工程の実行を禁止する(H)をさらに備える、請求項17に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記(F)では、前記ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合には、前記ピン部材及び/又は前記ショルダ部材に前記被接合物の一部が付着していると判断する、請求項17又は18に記載の摩擦攪拌点接合方法。
前記(B)では、前記ピン部材及び前記ショルダ部材の少なくとも一方の部材、並びに、クランプ部材が予め設定された押圧力で前記被接合物を押圧した状態で、工具駆動器が前記ピン部材又は前記ショルダ部材を前記軸線方向に進退移動させて、かつ、回転駆動器が前記ピン部材又は前記ショルダ部材を予め設定された回転数で回転させて、前記被接合物を部分的に攪拌して、前記被接合物を接合し、
前記(E)では、前記第1位置が前記第1領域に位置する場合には、次回の接合工程における、前記ピン部材及び前記ショルダ部材の少なくとも一方の部材と、並びに、前記クランプ部材と、が前記被接合物材を押圧する押圧力を減少させるように、前記設定を変更する、請求項11〜19のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置は、被接合物を摩擦熱で軟化させ、攪拌することにより接合する摩擦攪拌点接合装置であって、円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているピン部材と、円筒状に形成され、ピン部材が内部に挿通されており、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているショルダ部材と、ピン部材及びショルダ部材を、軸線周りに回転させる回転駆動器と、ピン部材及びショルダ部材を、それぞれ軸線に沿って進退移動させる工具駆動器と、ピン部材又はショルダ部材における先端面の軸線方向の位置を検出する位置検出器と、制御器と、を備え、制御器は、被接合物の接合工程を開始するときに、位置検出器が検出した被接合物の表面に接触したときのピン部材又はショルダ部材における先端面の軸線方向の位置を基準位置と設定し、被接合物の接合工程を終了するときに、ピン部材及び前記ショルダ部材の先端面を面一にするように、工具駆動器を制御し、位置検出器が検出したピン部材又はショルダ部材の先端面の軸線方向の位置である第1位置が、基準位置よりも被接合物の内方側の領域である第1領域に位置する場合には、次回の接合工程における、ピン部材とショルダ部材が被接合物を押圧する押圧力を減少させるように工具駆動器を制御する、及び/又は、ピン部材とショルダ部材の回転数を減少させるように回転駆動器を制御する態様を例示するものである。
【0015】
以下、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
[摩擦攪拌点接合装置の構成]
図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の概略構成を示す模式図である。なお、
図1においては、図における上下方向を摩擦攪拌点接合装置における上下方向として表している。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、ピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、工具駆動器53、クランプ部材54、裏当て支持部55、裏当て部材56、及び回転駆動器57を備えている。
【0018】
ピン部材11及びショルダ部材12は、工具固定器52により支持されており、工具駆動器53によって、上下方向に進退駆動される。ピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、工具駆動器53及びクランプ部材54は、C型ガン(C型フレーム)で構成される裏当て支持部55の上部に設けられている。また、裏当て支持部55の下部には、裏当て部材56が設けられている。ピン部材11及びショルダ部材12と、裏当て部材56と、は互いに対向する位置で裏当て支持部55に取り付けられている。なお、ピン部材11及びショルダ部材12と、裏当て部材56と、の間には、被接合物60が配置される。
【0019】
工具固定器52は、回転工具固定器521及びクランプ固定器522から構成されており、工具駆動器53は、ピン駆動器531、ショルダ駆動器532、及びクランプ駆動器41から構成されている。また、クランプ部材54は、クランプ駆動器41を介してクランプ固定器522に固定されている。なお、クランプ駆動器41は、スプリングにより構成されている。
【0020】
ピン部材11は、略円筒形又は略円柱形に形成されていて、
図1には、詳細に図示されないが、回転工具固定器521により支持されている。また、ピン部材11は、回転駆動器57により、ピン部材11の軸心に一致する軸線Xr(回転軸)周りに回転し、ピン駆動器531により、矢印P1方向、すなわち軸線Xr方向(
図1では上下方向)に沿って、進退移動可能に構成されている。
【0021】
ショルダ部材12は、中空を有する略円筒状に形成されていて、回転工具固定器521により支持されている。ショルダ部材12の中空内には、ピン部材11が内挿されている。換言すると、ショルダ部材12は、ピン部材11の外周面を囲むように配置されている。また、ショルダ部材12は、回転駆動器57により、ピン部材11と同一の軸線Xr周りに回転し、ショルダ駆動器532により、矢印P2方向、すなわち軸線Xr方向に沿って進退移動可能に構成されている。
【0022】
このように、ピン部材11及びショルダ部材12は、本実施の形態ではいずれも同一の回転工具固定器521によって支持され、いずれも回転駆動器57により軸線Xr周りに一体的に回転する。さらに、ピン部材11及びショルダ部材12は、ピン駆動器531及びショルダ駆動器532により、それぞれ軸線Xr方向に沿って進退移動可能に構成されている。なお、本実施の形態1においては、ピン部材11は単独で進退移動可能であるとともに、ショルダ部材12の進退移動に伴っても進退移動可能となっているが、ピン部材11及びショルダ部材12がそれぞれ独立して進退移動可能に構成されてもよい。
【0023】
クランプ部材54は、ショルダ部材12と同様に、中空を有する円筒状に形成されていて、その軸心が軸線Xrと一致するように設けられている。クランプ部材54の中空内には、ショルダ部材12が内挿されている。
【0024】
すなわち、ピン部材11の外周面を囲むように、略円筒状のショルダ部材12が配置されていて、ショルダ部材12の外周面を囲むように略円筒状のクランプ部材54が配置されている。換言すれば、クランプ部材54、ショルダ部材12及びピン部材11が、それぞれ同軸芯状の入れ子構造となっている。
【0025】
また、クランプ部材54は、被接合物60を一方の面(表面)から押圧するように構成されている。クランプ部材54は、上述したように、本実施の形態1においては、クランプ駆動器41を介してクランプ固定器522に支持されている。クランプ駆動器41は、クランプ部材54を裏当て部材56側に付勢するように構成されている。
【0026】
なお、クランプ駆動器41は、本実施の形態1においては、スプリングで構成したが、これに限定されるものではない。クランプ駆動器41は、クランプ部材54に付勢を与えたり加圧力を与えたりする構成であればよく、例えば、ガス圧、油圧、サーボモータ等を用いた機構も好適に用いることができる。
【0027】
クランプ固定器522には、回転駆動器57を介して、回転工具固定器521が支持されている。そして、クランプ部材54(クランプ駆動器41及びクランプ固定器522を含む)は、ショルダ駆動器532によって、矢印P3方向(矢印P1及びP2と同方向)に進退可能に構成されている。
【0028】
すなわち、本実施の形態1においては、クランプ駆動器41及びショルダ駆動器532が、クランプ部材駆動器を構成する。なお、クランプ部材駆動器は、ショルダ駆動器532によらず独立して、クランプ部材54を進退移動可能に駆動する駆動器により構成されてもよい。
【0029】
ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54は、それぞれ先端面11a、先端面12a、及び先端面54aを備えている。また、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54は、工具駆動器53により進退移動することで、先端面11a、先端面12a、及び先端面54aは、それぞれ、被接合物60の表面に当接する。
【0030】
裏当て部材56は、本実施の形態1においては、平板状の被接合物60の裏面を当接するように平坦な面(支持面56a)により、支持するように構成されている。裏当て部材56は、摩擦攪拌点接合を実施できるように被接合物60を適切に支持することができるものであれば、その構成は特に限定されない。裏当て部材56は、例えば、複数の種類の形状を有する裏当て部材56が別途準備され、被接合物60の種類に応じて、裏当て支持部55から外して交換できるように構成されてもよい。
【0031】
なお、本実施の形態1におけるピン部材11、ショルダ部材12、工具固定器52、工具駆動器53、クランプ部材54、裏当て支持部55、及び回転駆動器57の具体的な構成は、前述した構成に限定されず、広く摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。例えば、工具駆動器53を構成するピン駆動器531及びショルダ駆動器532は、本実施の形態では、いずれも摩擦攪拌接合の分野で公知のモータ及びギア機構等から構成されているが、これに限定されない。
【0032】
また、本実施の形態1においては、クランプ部材54を備える構成を採用したが、これに限定されず、クランプ部材54を備えていない構成を採用してもよい。この場合、例えば、クランプ部材54は、必要に応じて裏当て支持部55から着脱可能に構成されていてもよい。
【0033】
また、裏当て支持部55は、本実施の形態1においては、C型ガンで構成されているが、これに限定されない。裏当て支持部55は、ピン部材11及びショルダ部材12を進退移動可能に支持するとともに、ピン部材11及びショルダ部材12に対向する位置に裏当て部材56を支持することができれば、どのように構成されていてもよい。
【0034】
さらに、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、摩擦攪拌点接合用ロボット装置(図示せず)に配設される形態を採用している。具体的には、裏当て支持部55が、ロボット装置のアームの先端に取り付けられている。このため、裏当て支持部55も摩擦攪拌点接合用ロボット装置に含まれるとみなすことができる。裏当て支持部55及びアームを含めて、摩擦攪拌点接合用ロボット装置の具体的な構成は特に限定されず、多関節ロボット等、摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。
【0035】
なお、摩擦攪拌点接合装置50(裏当て支持部55を含む)は、摩擦攪拌点接合用ロボット装置に適用される場合に限定されるものではなく、例えば、NC工作機械、大型のCフレーム、及びオートリベッター等の公知の加工用機器にも好適に適用することができる。
【0036】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50は、二対以上のロボットが、摩擦攪拌点接合装置50における裏当て部材56以外の部分と、裏当て部材56と、を正対させるように構成されていてもよい。さらに、摩擦攪拌点接合装置50は、被接合物60に対して安定して摩擦攪拌点接合を行うことが可能であれば、被接合物60を手持ち型にする形態を採用してもよく、ロボットを被接合物60のポジショナーとして用いる形態を採用してもよい。
【0037】
[摩擦攪拌点接合装置の制御構成]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50の制御構成について、
図2を参照して具体的に説明する。
【0038】
図2は、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置の制御構成を模式的に示すブロック図である。
【0039】
図2に示すように、摩擦攪拌点接合装置50は、制御器51、位置検出器21、記憶器31、入力器32、及び加圧力検出器33を備えている。
【0040】
記憶器31は、各種データを読み出し可能に記憶するものであり、記憶器31としては、公知のメモリ、ハードディスク等の記憶装置等で構成される。記憶器31は、単一である必要はなく、複数の記憶装置(例えば、ランダムアクセスメモリ及びハードディスクドライブ)として構成されてもよい。制御器51等がマイクロコンピュータで構成されている場合には、記憶器31の少なくとも一部がマイクロコンピュータの内部メモリとして構成されてもよいし、独立したメモリとして構成されてもよい。
【0041】
なお、記憶器31には、データが記憶され、制御器51以外からデータの読み出しが可能となっていてもよいし、制御器51等からデータの書き込みが可能になっていてもよいことはいうまでもない。また、記憶器31には、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aが、被接合物60の表面に接触した位置である、基準位置(0点)が記憶されている。
【0042】
入力器32は、制御器51に対して、摩擦攪拌点接合の制御に関する各種パラメータ、あるいはその他のデータ等を入力可能とするものであり、キーボード、タッチパネル、ボタンスイッチ群等の公知の入力装置で構成されている。本実施の形態1では、少なくとも、被接合物60の接合条件、例えば、被接合物60の厚み、材質等のデータが入力器32により入力可能となっている。
【0043】
位置検出器21は、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12a軸線Xr方向の位置(以下、単に位置という)を検出し、検出した位置を制御器51に出力するように構成されている。位置検出器21としては、種々の公知の位置センサを用いることができ、例えば、LVDT、エンコーダー等を使用することができる。
【0044】
なお、本実施の形態1においては、位置検出器21が、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を直接検出する形態を採用したが、間接的にピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を検出する形態を採用してもよい。例えば、位置検出器21が、ピン部材11又はショルダ部材12の所定の位置を検出するように構成されていて、制御器51には、所定の位置と先端面との距離が予め記憶されている形態であってもよい。
【0045】
また、後述するように、ピン部材11及びショルダ部材12は、被接合物60の接合時に熱が蓄積し、熱膨張により、たわみが発生する場合がある。このような場合には、制御器51は、位置検出器21が検知した位置にピン部材11又はショルダ部材12のたわみ分を補正して、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置としてもよい。
【0046】
加圧力検出器33は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54のうち、少なくとも1つの部材が被接合物60に当接又は圧入しているときに、これらの部材が被接合物60に与える加圧力(押圧力)を検出し、検出した押圧力を制御器51に出力するように構成されている。なお、本実施の形態1においては、加圧力検出器33としてロードセルを用いているが、これに限定されず、公知の加圧力検出手段を用いることができる。
【0047】
制御器51は、摩擦攪拌点接合装置50を構成する各部材(各機器)を制御するように構成されている。具体的には、制御器51は、工具駆動器53を構成するピン駆動器531及びショルダ駆動器532と、回転駆動器57と、を制御する。これにより、ピン部材11及びショルダ部材12の進出移動又は後退移動の切り替え、進退移動時のピン部材11及びショルダ部材12における、先端位置の制御、移動速度、及び移動方向等を制御することができる。また、ピン部材11、ショルダ部材12及びクランプ部材54の被接合物60を押圧する押圧力を制御することができる。さらに、ピン部材11及びショルダ部材12の回転数を制御することができる。
【0048】
制御器51の具体的な構成は、特に限定されず、本実施の形態1では、制御器51は、マイクロコンピュータで構成されていて、CPUを備えている。制御器51は、CPUが記憶器31に格納された所定の制御プログラムを読み出し、これを実行することにより、工具駆動器53及び回転駆動器57の動作に関する演算を行うように構成されている。なお、制御器51は、単独の制御器で構成される形態だけでなく、複数の制御器が協働して、摩擦攪拌点接合装置50の制御を実行する制御器群で構成される形態であっても構わない。
【0049】
そして、制御器51では、被接合物60の接合を開始するときに、位置検出器21が検出した位置データと、加圧力検出器33が検出した圧力値と、を基に、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aが、被接合物60の表面に接触した位置を基準位置(0点)として設定する。
【0050】
具体的には、制御器51は、加圧力検出器33が予め設定された押圧力を検出したときにおける、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を基準位置と設定する。後述するように、ピン部材11、ショルダ部材12及びクランプ部材54は、被接合物60の表面60cに同時(ほぼ同時)に接触し、予め設定された押圧力で被接合物60を押圧するように制御されている(
図3Aの(1)参照)。このため、加圧力検出器33が予め設定された押圧力を検出したときにおける、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を基準位置として設定することができる。
【0051】
なお、ピン部材11又はショルダ部材12は、被接合物60と接触した後、回転駆動される(
図3Aの(2)参照)が、材料が軟化するまでの間、被接合物60の表面60cで、わずかではあるが一定時間留まることになる。このため、制御器51は、位置検出器21から出力される位置データが一定時間同じ値であるときの位置を基準位置として設定してもよい。
【0052】
制御器51は、後述するように、ピン部材11及びショルダ部材12の先端面の断面積及び圧入深さの関係式に基づいて、工具駆動器53を制御することにより、ピン部材11及びショルダ部材12の先端の位置を制御する。
【0053】
[摩擦攪拌点接合方法(摩擦攪拌点接合装置の動作)]
次に、摩擦攪拌点接合装置50を用いて実施される摩擦攪拌点接合方法の具体的な工程について、
図3A、
図3B、及び
図4を参照して具体的に説明する。なお、
図3A、
図3B、及び
図4においては、被接合物60として、2枚の金属板61、62を用い、これらを重ねて点接合にて連結する場合を例に挙げている。
【0054】
また、本実施の形態1においては、ピン部材11の先端面の断面積をAp、ショルダ部材12の先端面の断面積をAsとし、ピン部材11の圧入深さをPp、ショルダ部材12の圧入深さをPsとしたときに、制御器51が、次の式(I)
Ap・Pp+As・Ps=Tx ・・・ (I)
で定義されるツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、工具駆動器53を制御する形態の一例について説明する。
【0055】
図3A及び
図3Bは、
図1に示す摩擦攪拌点接合装置による摩擦攪拌点接合の各工程の一例を模式的に示す工程図である。
図4は、
図3に示す摩擦攪拌点接合の各工程におけるピン部材の先端面、ショルダ部材の先端面、及びツール平均位置Txを模式的に表すグラフである。
【0056】
なお、
図3A及び
図3Bにおいては、摩擦攪拌点接合装置の一部を省略し、矢印rは、ピン部材11及びショルダ部材12の回転方向を示し、ブロック矢印Fは、金属板61、62に加えられる力の方向を示す。
【0057】
また、裏当て部材56からも金属板61、62に対して力が加えられているが、説明の便宜上、
図3A及び
図3Bには図示していない。さらに、ショルダ部材12には、ピン部材11及びクランプ部材54との区別を明確とするために、網掛けのハッチングを施している。
【0058】
さらに、
図4においては、被接合物60の表面60cと裏面60dの位置、及び金属板61と金属板62の接触面の位置を一点鎖線で示している。また、
図4に示す工程(1)〜(6)は、
図3A及び
図3Bに示す各工程(1)〜(6)に対応している。
【0059】
以下、摩擦攪拌点接合装置50における単発の接合動作の一例について、説明する。
【0060】
まず、裏当て部材56の上面に被接合物60を載置する。次に、制御器51は、工具駆動器53を駆動させて、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54を被接合物60(金属板61、62)に接近させ、ピン部材11の先端面11a、ショルダ部材12の先端面12a、及びクランプ部材54の先端面54a(
図3A及び
図3Bには図示せず)を被接合物60の表面60cに当接させる(
図3A及び
図4の工程(1)参照)。
【0061】
これにより、クランプ部材54と裏当て部材56とで金属板61、62が挟み込まれ、クランプ駆動器41の収縮により、クランプ部材54が被接合物60の表面60c側に付勢され、クランプ力が発生する。
【0062】
このとき、制御器51は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54が予め設定された所定の押圧力(例えば、3000N〜8000Nの範囲に含まれる所定値)で被接合物60を押圧するように、工具駆動器53を制御する。また、制御器51には、加圧力検出器33から検出した圧力が入力され、制御器51は、加圧力検出器33が検出した圧力が所定の圧力である場合には、所定の圧力を検出したときに位置検出器21が検出したピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を基準位置として、記憶器31に記憶させる。
【0063】
次に、制御器51は、回転駆動器57を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を被接合物60の表面60cに当接させた状態で回転させる(
図3A及び
図4の工程(2)参照)。この状態では、ピン部材11及びショルダ部材12共に進退移動しないので、被接合物60の表面60cを「予備加熱」することになる。これにより、金属板61の当接領域における金属材料が摩擦により発熱することで軟化し、被接合物60の表面60c近傍に塑性流動部60aが生じる。
【0064】
次に、制御器51は、ピン駆動器531及び/又はショルダ駆動器532(
図1参照)を制御して、ピン部材11を被接合物60の表面60cから後退させることで、ショルダ部材12を被接合物60の表面60cからさらに内部に進入(圧入)させる(
図3A及び
図4の工程(3)参照)。このとき、金属材料の軟化部位は、上側の金属板61から下側の金属板62にまで及び、塑性流動部60aの領域が増加する。
【0065】
次に、制御器51は、ピン駆動器531を制御して、後退させたピン部材11を徐々に金属板61に進入(圧入)させる。これに伴って、ショルダ部材12が金属板61から後退する(
図3B及び
図4の工程(4)参照)。なお、当該工程(4)は、後述する工程(5)によって金属板61の表面60cが充分整形される場合には、実行されなくともよい。
【0066】
ここで、制御器51は、工程(3)及び工程(4)を実行する場合には、上述したように、ツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、工具駆動器53を制御する。なお、ツール平均位置Txの絶対値を小さくする具体的な制御については、特許文献1に詳細に開示されているため、ここでは、その説明を省略する。
【0067】
また、制御器51は、ツール平均位置Tx=0となるように、工具駆動器53を制御することが好ましい。ここで、「ツール平均位置Tx=0」とは、ツール平均位置Txが±0である状態(Tx≒0)をいい、ピン部材11の断面積Ap、ショルダ部材12の断面積As、ピン部材11の圧入深さPp、及びショルダ部材12の圧入深さPsの単位、有効数字、その他の諸条件に基づいてTx=0と見なすことができる状態をいう。したがって、摩擦攪拌点接合装置50の構成又は用途等の諸条件によっては、ツール平均位置Tx=0にまで小さくする必要はなく、良好な制御が可能になるのであれば、実用上でツール平均位置Txの絶対値をできる限り小さい値とすればよい。
【0068】
そして、制御器51は、工程(3)から工程(5)へ移行する場合には、ピン駆動器531を制御して、ピン部材11を徐々に進入させる。一方、制御器51は、工程(3)から工程(4)を経て工程(5)へ移行する場合には、ピン駆動器531を制御して、ピン部材11を徐々に引き込ませる。このとき、ピン部材11又はショルダ部材12は、いずれも引き込み動作中であっても、その先端による加圧力は維持されている(
図3Aの工程(3)の矢印F及び
図3Bの工程(4)の矢印F参照)。
【0069】
このため、ショルダ部材12が引き込まれる場合には、ピン部材11による回転及び押圧が維持されているので、塑性流動部60aの軟化した金属材料は、ピン部材11の直下からショルダ部材12の直下に流動し、ショルダ部材12の圧入により生じた凹部が埋め戻されていく。
【0070】
一方、ピン部材11が引き込まれる場合には、ショルダ部材12による回転及び押圧が維持されているので、塑性流動部60aの軟化した金属材料は、ショルダ部材12の直下からピン部材11の直下に流動し、その結果、ピン部材11の圧入により生じた凹部が埋め戻されていく。
【0071】
次に、制御器51は、工具駆動器53を制御して、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを、互いに段差がほとんど生じない程度に合わせる(面一とする)(
図3B及び
図4の工程(5)参照)。これにより、被接合物60の表面60cが整形され、実質的な凹部が生じない程度の略平坦な面が得られる。
【0072】
次に、制御器51は、工具駆動器53を制御して、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54を被接合物60から離し、その後、回転駆動器57を制御して、ピン部材11及びショルダ部材12の回転を停止させ、一連の摩擦攪拌点接合(被接合物60の接合工程)を終了させる(
図3B及び
図4の工程(6)参照)。これにより、ピン部材11及びショルダ部材12の当接による回転(及び押圧)は金属板61、62に加えられなくなるので、金属板61、62の双方に及ぶ塑性流動部60aでは、塑性流動が停止し、接合部60bとなる。このようにして、2枚の金属板61、62は接合部60bによって連結(接合)される。
【0073】
このように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50では、制御器51が、ツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、各部材(各機器)を制御することにより、好適な精度で良好な接合品質を実現し得るとともに、内部空洞欠陥の発生を防止又は抑制することができる。
【0074】
ところで、本発明者等は、上記特許文献1に開示されている摩擦攪拌点接合方法を用いずに、かつ、ピン部材11及びショルダ部材12を充分に冷却せずに、連続して接合を行った場合には、外観品質等が不充分になるという知見を得た。ここで、「連続して接合を行う」とは、ピン部材及び/又はショルダ部材が充分に冷却(例えば、空冷)せずに、次の接合を行うことをいい、例えば、接合を終了後、所定の時間(例えば、数秒(2秒))以内に次の接合を開始する場合、及び/又は、次の接合を開始するときに、ピン部材11及びショルダ部材12の温度が所定の温度以上である場合、といった高サイクルで施工することをいう。
【0075】
ここで、本発明者は、種々の冷却方法で連続して、2枚のアルミニウム合金2024クラッド−T3材(板厚0.8mm)への接合を行った場合におけるショルダ部材の温度を計測したところ、200℃以上の温度のときに外観品質(主に接合部の凹み)の不良が発生した。一方、ショルダ部材の温度が20〜60℃以下の温度まで冷却された条件では、繰り返して接合をしても、ツールの温度の増加は確認されず、外観品質(主に接合部の凹み)の不良が発生しなかった。なお、これらの温度の閾値は、被接合材料及び板厚、並びにショルダ部材の材質により異なるので、一律に定義されるものではないことは言うまでもない。
【0076】
そして、本発明者等は、連続して接合を行った場合における外観品質等の不良発生は、後述する理由(要因)によるものと考察している。以下、
図5及び
図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0077】
図5は、摩擦攪拌点接合装置を用いて、被接合物を接合したときにおける工程(5)の状態を示す模式図であり、単発で接合した場合における工程(5)の状態(A)と連続で接合した場合における工程(5)の状態(B)を示している。また、
図6は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置を用いて、連続して被接合物を接合したときにおけるツール平均位置Txを模式的に表すグラフである。
【0078】
なお、
図6においては、制御器51は、工程(5)において、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを面一にしたとき、これらの先端面は、被接合物60の表面60c(基準位置)に位置するように制御している。また、
図6においては、
4回連続して、被接合物の異なる部分の接合を実行し、各回におけるツール平均位置Txを示している。また、
図6においては、ピン部材11及びショルダ部材12の圧入方向(
図1における下向きの方向)を「正の方向」と定義している。さらに、
図6においては、工程(6)のプロットを省略している。
【0079】
単発で被接合物60を接合した場合には、
図5の(A)に示すように、工程(5)において、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを面一にしたとき、これらの先端面は、被接合物60の表面60c(基準位置)に位置している。
【0080】
しかしながら、単発で接合した場合と同じ制御条件で、連続して被接合物60を接合したところ、被接合物60における、ピン部材11及びショルダ部材12が当接している部分が陥没し、クランプ部材54が当接している部分が隆起するという結果が得られた(図示せず)。
【0081】
また、
図6に示すように、連続して被接合物を接合したときにおけるツール平均位置Txをプロットしたところ、単発の接合と同じ制御条件では、工程(5)において、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを被接合物60の表面60c(基準位置)に位置するように制御することができず、ツール平均位置Txが正の値をとるという結果が得られた。
【0082】
これらの結果から、本発明者等は、工程(5)において、摩擦攪拌点接合装置50は、
図5の(B)に示すような状態になっていると推察している。すなわち、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aは、基準位置(被接合物60の表面60c)よりも被接合物60の内方側の領域(第1領域)に位置している。一方、クランプ部材54の先端面54aは、基準位置よりも被接合物60の外方側の領域(第2領域)に位置している。
【0083】
本発明者等は、このような結果は、ピン部材11及びショルダ部材12に摩擦により発生した熱が蓄積されたまま、次の接合を実行するため、単発で接合を実行する場合に比して、より金属材料が軟化されるまでの時間が早くなり、その結果、単発の接合と同じ時間、同じ回転速度、又は同じ押圧力で連続接合を行う場合、軟化する材料が多くなり、材料がショルダ部材12の外側(クランプ部材54側)等に流れてしまったことが原因(要因)であると考察している。
【0084】
そこで、連続して被接合物を接合する場合に、次の接合を開始するまでの間に、軟化材料の流出することを防止するための処置を行うことにより、連続して接合を行っても、良好な接合品質を実現し得ることを見出し、本発明を想到した。
【0085】
すなわち、被接合物60の接合工程を終了するときに、位置検出器21が検出したピン部材11又はショルダ部材12の先端面の位置(第1位置)が第1領域に位置する場合には、被接合物60を押圧する押圧力を減少させる、及び/又は、ピン部材11とショルダ部材12の回転数を減少させることで、上記課題(要因)を解決することができることを見出した。
【0086】
以下、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50において、連続して接合を行う場合の動作(制御方法)について、説明する。
【0087】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図7は、連続接合を実行する場合における、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0088】
図7に示すように、制御器51は、工具駆動器53を駆動し、被接合物の接合工程を開始する(ステップS101)。これにより、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54が被接合物60(金属板61、62)に接近するように移動する。
【0089】
次に、制御器51は、予め設定された所定の回転数で、回転駆動器57を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を回転させる(ステップS102)。これにより、ピン部材11及びショルダ部材12が回転しながら、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54が被接合物60に接近するように移動する。
【0090】
なお、本実施の形態1においては、制御器51は、工具駆動器53を駆動させた後に、回転駆動器57を駆動させる形態を採用したが、これに限定されない。例えば、制御器51は、回転駆動器57を駆動させた後に、工具駆動器53を駆動させる形態を採用してもよい。また、例えば、制御器51は、工具駆動器53を駆動させて、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54が被接合物60に接触した後に、回転駆動器57を駆動させる形態を採用してもよい。
【0091】
そして、制御器51は、加圧力検出器33が所定の圧力を検出したか否かを判定する(ステップS103)。上述したように、制御器51は、ピン部材11、ショルダ部材12、及びクランプ部材54が予め設定された所定の押圧力で被接合物60を押圧するように、工具駆動器53を制御している。このため、制御器51は、加圧力検出器33が検出した圧力が所定の圧力である場合には、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aが、被接合物60の表面60cに当接したと判定することができる。
【0092】
したがって、制御器51は、加圧力検出器33が所定の圧力を検出した場合(ステップS103でYes)には、ステップS104に進む。制御器51は、加圧力検出器33が所定の圧力を検出しない場合(ステップS103でNo)には、所定の圧力を検出するまで、ステップS101〜ステップS103を繰り返す。
【0093】
なお、ピン部材11及びショルダ部材12は、被接合物60と接触すると、上述したように、材料が軟化するまでの間、被接合物60の表面60cで留まっている。また、クランプ部材がある場合には、材料が軟化しても被接合物60の表面60cで留まっている。
【0094】
次に、制御器51は、加圧力検出器33が所定の圧力を検出したときに、位置検出器21が検出したピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を基準位置として、設定する(記憶器31に記憶させる)(ステップS104)。
【0095】
なお、本実施の形態1においては、制御器51が、回転駆動器57を駆動させた後に、基準位置を設定する形態を採用しているが、これに限定されない。制御器51が、回転駆動器57を駆動させる前に、基準位置を設定する形態を採用してもよい。この場合、基準位置を設定する際(工程(1))の押圧力の閾値と、金属板61に当接させたピン部材11等を回転させる際(工程(2)〜(5))の押圧力と、を同じ値にしてもよく、両者を異なる値にしてもよい。例えば、工程(2)〜(5)での押圧力に比べて、工程(1)での押圧力の閾値を小さい値に設定してもよい。またクランプがある場合は、工程(3)の開始される直前の時間において基準位置を設定しても差し支えない。
【0096】
次に、制御器51は、ピン部材11又はショルダ部材12が所定の動作をするように、工具駆動器53を制御する(ステップS105)。具体的には、制御器51は、所定の制御プログラムに従って、工具駆動器53を制御する。このとき、制御器51は、ツール平均位置Txの絶対値を小さくするように、工具駆動器53を制御することが好ましく、ツール平均位置Tx=0となるように、工具駆動器53を制御することがより好ましい。
【0097】
なお、制御器51は、ピン部材11及びショルダ部材12を被接合物60の表面60cから後退させる。被接合物60の接合工程を終了するときには、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aが面一になるように、工具駆動器53を制御する。
【0098】
次に、制御器51は、ピン部材11の先端面11a及びショルダ部材12の先端面12aを面一にしたときにおける、位置検出器21が検出したピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を取得する(ステップS106)。ついで、制御器51は、ステップS106で取得した位置が、第1領域に位置するか否かを判定する(ステップS107)。
【0099】
制御器51は、ステップS106で取得した位置(第1位置)が、第1領域に位置していない(ステップS107でNo)場合には、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0100】
一方、制御器51は、ステップS106で取得した位置が、第1領域に位置している(ステップS107でYes)場合には、上記押圧力及び/又は回転数の設定を変更して(ステップS108)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0101】
具体的には、制御器51は、次回の接合工程における被接合物60を押圧する押圧力を、前記所定の押圧力よりも減少させるように、工具駆動器53の設定を変更する、及び/又は、次回の接合工程におけるピン部材11及びショルダ部材12の回転数を前記所定の回転数よりも減少させるように、回転駆動器57の設定を変更する。より詳細には、制御器51は、工具駆動器53の操作量を減少させる、及び/又は回転駆動器57の操作量を減少させる。
【0102】
これにより、過剰に金属材料が軟化されることを抑制することができ、軟化した材料のクランプ部材54側への流出を抑制することができる。
【0103】
このように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50では、連続して接合を実行する際に、ピン部材11及びショルダ部材12が被接合物60を押圧する押圧力及び/又はピン部材11及びショルダ部材12の回転数を減少させることにより、被接合物60の接合部分の外観品質等を充分に担保することができ、良好な接合品質を実現し得る。
【0104】
[変形例1]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50の変形例について、説明する。
【0105】
本実施の形態1における変形例1の摩擦攪拌点接合装置は、制御器が、被接合物の接合工程を終了するときに、第1位置が第1領域に位置し、かつ、次回の接合工程を開始するときに、ピン部材及びショルダ部材の温度が所定の温度以上である場合には、次回の接合工程における、ピン部材とショルダ部材が被接合物を押圧する押圧力を減少させるように工具駆動器を制御する、及び/又は、ピン部材とショルダ部材の回転数を減少させるように回転駆動器を制御する態様を例示する。
【0106】
なお、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置50は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されているため、その構成の説明については省略する。
【0107】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図8は、連続接合を実行する場合における、本実施の形態1における変形例1の摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0108】
図8に示すように、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合動作は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と基本的動作は同じであるが、ステップS107とステップS108の間に、ステップS107Aが実行される点が異なる。
【0109】
具体的には、制御器51は、ステップS106で取得した位置(第1位置)が、第1領域に位置している(ステップS107でYes)場合に、ステップS107Aに進む。ステップS107Aでは、制御器51は、次の接合を開始する指令が入力されたときに、ピン部材11及びショルダ部材12の温度が所定の温度以上であるか否かを判断する。
【0110】
ここで、所定の温度は、予め実験等により設定することができ、例えば、20〜60℃に設定してもよい。また、ピン部材11及びショルダ部材12の温度は、例えば、赤外線温度センサ等により、直接的に検知してもよく、また、被接合物60等の温度、又は被接合物60の接合回数等から間接的に検知してもよい。
【0111】
そして、制御器51は、第1位置が第1領域に位置し、かつ、ピン部材11及びショルダ部材12の温度が所定の温度以上である場合(ステップS107AでYes)には、押圧力及び/又は回転数の設定を変更して(ステップS108)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。なお、押圧力及び/又は回転数の設定変更は、あらかじめ実験等でデータベースをつくり、自動的に変更されることが望ましい。
【0112】
一方、制御器51は、ピン部材11及びショルダ部材12の温度が所定の温度以上でない場合(ステップS107AでNo)には、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0113】
このように構成された、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0114】
[変形例2]
本実施の形態1における変形例2の摩擦攪拌点接合装置は、制御器が、被接合物の接合工程を終了するときに、第1位置が第1領域に位置し、かつ、被接合物の接合工程を終了から次回の接合工程を開始するまでの時間が所定の時間以内である場合には、次回の接合工程における、ピン部材とショルダ部材が被接合物を押圧する押圧力を減少させるように工具駆動器を制御する、及び/又は、ピン部材とショルダ部材の回転数を減少させるように回転駆動器を制御する態様を例示する。
【0115】
なお、本変形例2の摩擦攪拌点接合装置50は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されているため、その構成の説明については省略する。
【0116】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図9は、連続接合を実行する場合における、本実施の形態1における変形例2の摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0117】
図9に示すように、本変形例2の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合動作は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と基本的動作は同じであるが、ステップS107とステップS108の間に、ステップS107Bが実行される点が異なる。
【0118】
具体的には、制御器51は、ステップS106で取得した位置(第1位置)が、第1領域に位置している(ステップS107でYes)場合に、ステップS107Bに進む。ステップS107Bでは、制御器51は、前回の接合が終了してから、次の接合を開始する指令が入力されるまでの時間を計時し、当該計時した時間が所定の時間以上経過しているか否かを判断する。
【0119】
ここで、所定の時間は、予め実験等により設定することができ、例えば、5〜7秒に設定してもよい。なお、制御器51による時間の経時は、図示されない制御器51の時計部によって実行される。
【0120】
そして、制御器51は、第1位置が第1領域に位置し、かつ、前回の接合が終了してから、次の接合を開始する指令が入力されるまでの時間が所定の時間以上経過していない場合(ステップS107BでYes)には、押圧力及び/又は回転数の設定を変更して(ステップS108)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0121】
一方、制御器51は、前回の接合が終了してから、次の接合を開始する指令が入力されるまでの時間が所定の時間以上経過している場合(ステップS107BでNo)には、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0122】
このように構成された、本変形例2の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0123】
なお、本変形例2の摩擦攪拌点接合装置50では、制御器51は、第1位置が第1領域に位置し、かつ、前回の接合が終了してから、次の接合を開始する指令が入力されるまでの時間が所定の時間以上経過していない場合に、押圧力及び/又は回転数の設定を変更する形態を採用したが、これに限定されない。
【0124】
制御器51は、第1位置が第1領域に位置し、かつ、前回の接合が終了してから、次の接合を開始する指令が入力されるまでの時間が所定の時間以上経過しておらず、かつ、次の接合を開始する指令が入力されたときに、ピン部材11及びショルダ部材12の温度が所定の温度以上である場合に、押圧力及び/又は回転数の設定を変更する形態を採用してもよい。
【0125】
[変形例3]
本実施の形態1における変形例3の摩擦攪拌点接合装置50は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と基本的構成は同じであるが、加圧力検出器33が設けられていない点が異なる。また、本変形例3の摩擦攪拌点接合装置50では、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様に、連続接合動作を実行するが、基準位置の設定方法が異なる。具体的には、作業者が、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aと、被接合物60の表面との接触を目視にて確認し、制御器51は、このときに位置検出器21が検知した位置を、記憶器31に基準位置として記憶させる。
【0126】
このように、本変形例3の摩擦攪拌点接合装置50では、予め記憶器31に基準位置が記憶されているため、本変形例3においては、連続接合動作は、
図7に示す連続接合動作のステップS103が省略されて実行される。このように構成された、本変形例3の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0127】
なお、記憶器31は、連続して接合を実行する前に、1以上の接合箇所の基準位置を記憶すればよく、例えば、全ての接合箇所の基準位置を記憶してもよく、複数の接合箇所の基準位置を記憶してもよく、1の接合箇所の基準位置を記憶してもよい。
【0128】
なお、本変形例3の摩擦攪拌点接合装置50は、上記特徴以外は、変形例1又は2の摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されていてもよい。
【0129】
[変形例4]
上述したように、ピン部材11又はショルダ部材12は、被接合物60と接触した後、回転駆動され、その後、ピン部材11又はショルダ部材12のいずれか一方の部材は、工具駆動器53により、被接合物60の表面60cからさらに内部に進入(圧入)する。すなわち、ピン部材11又はショルダ部材12が駆動される前も、ピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aは、被接合物60の表面60cに位置する。
【0130】
このため、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50では、制御器51が、工具駆動器53を制御して、ピン部材11又はショルダ部材12のいずれか一方の部材を駆動する直前における位置検出器21が検出した位置を基準位置として設定する。
【0131】
以下、
図10を参照しながら、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50の動作について、具体的に説明する。なお、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されているため、その構成の説明については省略する。
【0132】
図10は、連続接合を実行する場合における、本実施の形態1における変形例4の摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0133】
図10に示すように、制御器51は、工具駆動器53を駆動し、被接合物の接合工程を開始する(ステップS201)。ついで、制御器51は、予め設定された所定の回転数で、回転駆動器57を駆動させて、ピン部材11及びショルダ部材12を被接合物60の表面60cに当接させた状態で回転させる。このとき、ピン部材11及びショルダ部材12は、上述したように、材料が軟化するまでの間、被接合物60の表面60cで留まっている。
【0134】
次に、制御器51は、ステップS205で、工具駆動器53に制御信号を出力する直前に、位置検出器21が検出したピン部材11の先端面11a又はショルダ部材12の先端面12aの位置を取得する(ステップS203)。ついで、制御器51は、ステップS203で取得した位置を、基準位置として、設定する(記憶器31に記憶されている基準位置を更新する)(ステップS204)。
【0135】
そして、制御器51は、ステップS205〜ステップS208を実行する。なお、ステップS205〜ステップS208は、
図7に示すステップS105〜ステップS108と同様の動作であるため、その説明は省略する。
【0136】
このように、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50では、連続して接合を実行するときに、ステップS204で基準位置を更新していくように構成されている。このように構成された、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0137】
なお、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50では、変形例3と同様に、連続して接合を実行する前に、1以上の接合箇所の基準位置を記憶器31に記憶させておき、被接合物60を接合するときに、記憶器31に記憶されている基準位置を更新させてもよい。
【0138】
また、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50では、変位例4と同様に、連続して接合を実行する前に、1以上の接合箇所の基準位置を記憶器31に記憶させておき、被接合物60を接合するときに、記憶器31に記憶されている基準位置とは別に、ステップS203で取得した位置を基準位置として記憶してもよい。
【0139】
さらに、本変形例4の摩擦攪拌点接合装置50は、上記特徴以外は、変形例1〜3のいずれかの摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されていてもよい。
【0140】
[変形例5]
本変形例5の摩擦攪拌点接合装置は、制御器が、第1位置を基準として算出されたツール平均位置Txであるツール平均位置Tx1が、予め実験等で任意に設定される適正範囲外である場合には、次回の接合工程における、ピン部材とショルダ部材が被接合物を押圧する押圧力を減少させるように工具駆動器を制御する、及び/又は、次回の接合工程における、ピン部材とショルダ部材の回転数を減少させるように回転駆動器を制御する態様を例示する。なお、本変形例5の摩擦攪拌点接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置と同様に構成されているため、その構成の説明は省略する。
【0141】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図11は、連続接合を実行する場合における、本実施の形態1における変形例5の摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0142】
図11に示すように、本変形例5の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作は、ステップS301〜ステップS306までは、
図7に示す実施の形態1のステップS101〜ステップS106と同じであるが、ステップS307以降の動作が異なる。以下、動作が異なる部分について、詳細に説明する。
【0143】
ステップS307では、制御器51は、ステップS306で取得した位置(第1位置)を基準として、ツール平均位置Tx1(Ap・Pp+As・Ps)を算出する。ついで、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、その適正範囲内であるか否かを判定する(ステップS308)。
【0144】
ここで、ツール平均位置Tx1の適正範囲は、被接合物60を構成する金属材料等により、任意に変更されるものであり、予め実験等で設定することができる。被接合物60の接合部分の外観品質等を充分に担保する観点から、適正範囲の下限値は、−0.08〜−0.05程度の値であることが好ましく、上限値は0.05〜0.08程度の値であることが好ましい。
【0145】
制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、適正範囲内の場合(ステップS308でNo)には、そのまま本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0146】
一方、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、適正範囲外である(ステップS308でYes)場合には、上記押圧力及び/又は回転数の設定を変更して(ステップS309)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0147】
このように構成された、本変形例5の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。なお、本変形例5の摩擦攪拌点接合装置50は、上記特徴以外は、変形例1〜4のいずれかの摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されていてもよい。
【0148】
[変形例6]
本変形例6の摩擦攪拌点接合装置は、制御器が、ツール平均位置Tx1が第1閾値より大きい場合には、次回の接合工程の実行を禁止する態様を例示するものである。なお、本変形例6の摩擦攪拌点接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置と同様に構成されているため、その構成の説明は省略する。
【0149】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図12A及び
図12Bは、連続接合を実行する場合における、本実施の形態1における変形例6の摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0150】
図12A及び
図12Bに示すように、本変形例6の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作は、変形例5の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作と基本的動作は同じであるが、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、適性範囲外である場合(ステップS308でYes)の動作が異なる。以下、動作が異なる部分について、詳細に説明する。
【0151】
制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、適性範囲外である場合(ステップS308でYes)には、ステップS309に進む。ステップS309では、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、第1閾値より大きいか否かを判定する。
【0152】
ここで、第1閾値は、適性範囲より大きい値であり、被接合物60を構成する金属材料、又は求められる品質要求等により、任意に変更されるものであり、予め設計要求又は実験等で設定することができる。第1閾値としては、求められる品質に応じて、例えば、0.1mm、又は0.2mm等と設定してもよく、被接合物60の板厚の20%等と設定してもよい。
【0153】
制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、第1閾値より大きくない場合(ステップS309でNo)、には、上記押圧力及び/又は回転数の設定を変更して(ステップS311)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0154】
一方、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、第1閾値より大きい場合(ステップS309でYes)には、次回の接合の実行を禁止し(ステップS310)、本フローを終了する。ピン部材11及びショルダ部材12に蓄積された熱量が大きいため、設定変更によっても、被接合物60の接合部分の外観品質等を充分に担保することができないおそれがあるため、次回の接合の実行を禁止する。
【0155】
なお、次回の接合の実行の禁止には、単に、次の被接合物60の接合を中止する場合だけでなく、充分にピン部材11及びショルダ部材12を冷却する時間が経過するまで、被接合物60の接合を中止する場合も含む。
【0156】
このように構成された、本変形例6の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0157】
また、本変形例6の摩擦攪拌点接合装置50では、ピン部材11及びショルダ部材12が過加熱されていると判断できる場合には、被接合物60の接合の実行を禁止することにより、より外観品質等を充分に担保することができ、良好な接合品質を実現し得る。
【0158】
なお、本変形例6の摩擦攪拌点接合装置50は、上記特徴以外は、変形例1〜4のいずれかの摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されていてもよい。
【0159】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置は、制御器が、被接合物の接合工程を終了するごとに、第1位置が、基準位置よりも被接合物から離れた側の領域である第2領域と、基準位置又は第1領域と、に変動する場合には、ピン部材及び/又はショルダ部材に被接合物の一部が付着していると判断し、報知器により警告を報知する、及び/又は次回の接合工程の実行を禁止する態様を例示するものである。なお、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置と同様に構成されているため、その構成の説明は省略する。
【0160】
ところで、本発明者等は、連続して被接合物の接合を実行すると、被接合物の接合工程を終了するときに、第1位置が、第2領域に位置する場合があることを見出した。このような状態が生じる要因としては、被接合物の表面と、ピン部材の先端面及び/又はショルダ部材の先端面と、の間に、空洞(空間)が形成されている場合、ピン部材及び/又はショルダ部材の先端部に被接合物の一部が付着している場合等が考えられる。
【0161】
そこで、本発明者等は、当該現象について、さらに考察したところ、第1位置が、第2領域に位置した場合、次回以降の接合工程において、ピン部材及び/又はショルダ部材の先端部に付着した被接合物の一部は、当該接合部分に混ざって、除去されることがあることを見出し、本発明を想到した。
【0162】
以下、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置50において、連続して接合を行う場合の動作(制御方法)について、説明する。
【0163】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図13A及び
図13Bは、連続接合を実行する場合における、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0164】
図13A及び
図13Bに示すように、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作と基本的動作は同じであるが、ステップS107以降の動作が異なる。以下、動作が異なる部分について、詳細に説明する。
【0165】
制御器51は、ステップS106で取得した位置(第1位置)が、第1領域に位置している(ステップS107でYes)場合には、上記押圧力及び/又は回転数の設定を変更する(ステップS108)。ついで、制御器51は、ステップS106で取得した位置(第1位置)を記憶器31に記憶させ(ステップS109)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0166】
一方、制御器51は、ステップS106で取得した位置(第1位置)が、第1領域に位置していない(ステップS107でNo)場合には、ステップS110に進む。ステップS110では、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動しているか否かを判定する。具体的には、制御器51は、記憶器31に記憶されている第1位置の履歴を参照して、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動しているか否かを判定する。なお、記憶器31に記憶されている第1位置の履歴は、本フローを開始してからの履歴を参照し、それ以前の履歴は参照されない。
【0167】
ここで、被接合物60の接合工程を終了するごとに、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動する場合とは、以下のような場合をいう。
【0168】
上述したように、制御器51は、被接合物60の接合工程を終了するごとに、第1位置を記憶器31に記憶させている。そして、例えば、1回目の第1位置が第2領域に位置し、2回目の第1位置が第1領域(又は基準位置)に位置し、3回目の第1位置が第2領域に位置するような場合に、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動する場合と判定する。
【0169】
なお、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動する場合には、記憶された第1位置が、第2領域と、第1領域(又は基準位置)と、を交互に位置する場合だけに限定されない。第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動する場合としては、例えば、第1位置が、複数回連続して、第2領域に位置し、その後、1以上の回数、第1領域(又は基準位置)に位置した後に、再び、第2領域に位置する場合、又は第1位置が、複数回連続して、第1領域(又は基準位置)に位置し、その後、1以上の回数、第2領域に位置した後、再び、第1領域(又は基準位置)に位置する場合等であってもよい。
【0170】
そして、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動していない場合(ステップS110でNo)には、そのまま、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0171】
一方、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合(ステップS110でYes)には、報知器により、使用者にピン部材11及び/又はショルダ部材12の先端部に被接合物60の一部が付着しているおそれがあるという警告を報知させ(ステップS111)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0172】
ここで、報知器としては、警告を外部に知らせることができれば、どのような構成であってもよい。外部に知らせる態様としては、例えば、リモコンの表示部(画面)に、文字データ又は画像データ等を表示させる態様であってもよく、スピーカー等により音声で知らせる態様であってもよく、光又は色で知らせるような態様であってもよい。また、通信ネットワークを介してスマートフォン、携帯電話、又はタブレット型コンピュータ等にメール又はアプリで知らせる態様であってもよい。
【0173】
これにより、摩擦攪拌点接合装置50の使用者は、ピン部材11及び/又はショルダ部材12に異常が発生しているおそれがあることを知ることができ、摩擦攪拌点接合装置50の整備等を早期に実行することができる。このため、被接合物60にピン部材11に付着した被接合物60の一部が接合部分に混ざることによる品質の悪化(例えば、被接合物60の表面60cが肉盛りされる等)を抑制することができる。
【0174】
なお、本実施の形態2においては、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合には、報知器により、警告を報知する形態を採用したが、これに限定されない。例えば、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合には、次回の接合を禁止する形態を採用してもよい。また、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合に、報知器による警告の報知を複数回行った後に、次回の接合を禁止する形態を採用してもよい。
【0175】
また、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置50は、上記特徴以外は、実施の形態1における変形例1〜6のいずれかの摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されていてもよい。
【0176】
[変形例1]
次に、本実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置50の変形例について、説明する。
【0177】
本変形例1の摩擦攪拌点接合装置は、制御器が、被接合物の接合工程を終了するごとに、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合には、ピン部材及び/又はショルダ部材に被接合物の一部が付着していると判断し、報知器により警告を報知する、及び/又は次回の接合工程の実行を禁止する態様を例示するものである。なお、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌点接合装置と同様に構成されているため、その構成の説明は省略する。
【0178】
[摩擦攪拌点接合装置の連続接合動作]
図14A、
図14B、及び
図14Cは、連続接合を実行する場合における、本実施の形態2における変形例1の摩擦攪拌点接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0179】
図14A、
図14B、及び
図14Cに示すように、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作は、実施の形態1の変形例5の摩擦攪拌点接合装置50における連続接合の動作と基本的動作は同じであるが、ステップS308以降の動作が異なる。以下、動作が異なる部分について、詳細に説明する。
【0180】
制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、適性範囲内である場合(ステップS308でNo)には、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1を記憶器31に記憶させ(ステップS313)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0181】
一方、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、適性範囲外である場合(ステップS308でYes)には、ステップS309に進む。ステップS309では、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、第1閾値より大きいか否かを判定する。
【0182】
制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、第1閾値より大きい場合(ステップS309でYes)には、次回の接合の実行を禁止し(ステップS312)、本フローを終了する。
【0183】
一方、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1が、第1閾値より大きくない場合(ステップS309でNo)には、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動しているか否かを判定する(ステップS311A)。
【0184】
具体的には、制御器51は、記憶器31に記憶されているツール平均位置Tx1の履歴を参照して、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動しているか否かを判定する。なお、記憶器31に記憶されているツール平均位置Tx1の履歴は、本フローを開始してからの履歴を参照し、それ以前の履歴は参照されない。
【0185】
ここで、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合とは、以下のような場合をいう。
【0186】
上述したように、制御器51は、被接合物60の接合工程を終了するごとにツール平均位置Tx1を記憶器31に記憶させている。そして、例えば、1回目のツール平均位置Tx1がマイナスの値をとり、2回目のツール平均位置Tx1がプラスの値(又は0)をとり、3回目のツール平均位置Tx1が再びマイナスの値をとるような場合に、制御器51は、記憶されたツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合と判定する。
【0187】
なお、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合には、記憶されたツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値(又は0)と、を交互にとる場合だけに限定されない。ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動する場合としては、例えば、ツール平均位置Tx1が、複数回連続して、マイナスの値をとり、その後、1以上の回数、プラスの値(又は0)をとった後に、再び、マイナスの値をとる場合、又はツール平均位置Tx1が、複数回連続して、プラスの値(又は0)をとり、その後、1以上の回数、マイナスの値をとった後、再び、プラスの値(又は0)をとる場合等であってもよい。
【0188】
そして、制御器51は、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動している場合(ステップS311AでYes)には、報知器により、使用者にピン部材11及び/又はショルダ部材12の先端部に被接合物60の一部が付着しているおそれがあるという警告を報知させ(ステップS312)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0189】
一方、制御器51は、ツール平均位置Tx1が、マイナスの値と、プラスの値又は0と、に変動していない場合(ステップS311AでNo)には、上記押圧力及び/又は回転数の設定を変更する(ステップS311)。ついで、制御器51は、ステップS307で算出したツール平均位置Tx1を記憶器31に記憶させ(ステップS313)、本フローのスタートに戻り、次の接合を実行する。
【0190】
このように構成された、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置50であっても、実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置50と同様の作用効果を奏する。
【0191】
なお、本変形例1においては、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合には、報知器により、警告を報知する形態を採用したが、これに限定されない。例えば、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合には、次回の接合を禁止する形態を採用してもよい。また、制御器51は、第1位置が、第2領域と、第1領域又は基準位置と、に変動している場合に、報知器による警告の報知を複数回行った後に、次回の接合を禁止する形態を採用してもよい。
【0192】
また、本変形例1の摩擦攪拌点接合装置50は、上記特徴以外は、実施の形態1における変形例1〜6のいずれかの摩擦攪拌点接合装置50と同様に構成されていてもよい。
【0193】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の形態を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の要旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。