特許第6244064号(P6244064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244064
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】医療用診療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/00 20160101AFI20171127BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A61B90/00
   A61C19/00 B
   A61C19/00 D
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-511013(P2017-511013)
(86)(22)【出願日】2016年4月6日
(86)【国際出願番号】JP2016061243
(87)【国際公開番号】WO2016163389
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-78312(P2015-78312)
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園部 興一
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−284957(JP,A)
【文献】 特開2002−336281(JP,A)
【文献】 特開平04−074090(JP,A)
【文献】 特開2014−006915(JP,A)
【文献】 特表2004−516562(JP,A)
【文献】 特開2001−166958(JP,A)
【文献】 特開2014−16837(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0188318(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00
A61C 19/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置であって、
機能を発揮するための少なくとも1つの機能部と
機能を発揮するためのプログラムおよびデータの少なくとも1つを所定の更新情報に基づき更新する更新処理を、前記機能部に実行させる更新制御部とを備え、
前記更新制御部は、
前記医療用診療装置に取り付け可能な全ての前記機能部の前記更新情報を包括した包括更新情報を取得する取得部と
前記医療用診療装置に取り付けられている前記機能部を特定する機能特定部と
前記取得部で取得した前記包括更新情報の中から前記機能特定部で特定した前記機能部に対応する前記更新情報を特定する更新情報特定部と
前記機能特定部で特定した前記機能部に対して、少なくとも前記更新情報特定部で特定した前記更新情報を送信する送信部とを含み、
前記機能部は、
前記送信部から送信された前記更新情報に基づき前記更新処理を実行する更新部を含み、
前記更新制御部または前記機能部は、前記プログラムおよび前記データの少なくとも1つと、前記更新情報特定部で特定された前記更新情報とに基づき、前記更新処理を実行する必要があるか否かを判定する更新有無判定部をさらに含む、医療用診療装置。
【請求項2】
前記更新制御部は、前記医療用診療装置に取り付けられている前記機能部のうちの1つの前記機能部と同じ基板上に設けられている、請求項1に記載の医療用診療装置。
【請求項3】
前記更新制御部は、前記医療用診療装置に取り付けられている前記機能部とは別の基板上に設けられている、請求項1に記載の医療用診療装置。
【請求項4】
前記機能部は
選択可能な複数の副機能を有し、
前記副機能が選択された後においては、選択された前記副機能に対応する前記更新情報に基づいて前記更新処理を実行したことを条件に前記副機能を発揮可能であり、
前記包括更新情報は、選択可能な前記副機能に対応する前記更新情報を包括し、
前記更新情報特定部は、前記取得部で取得した前記包括更新情報の中から前記機能特定部で特定した前記機能部および選択された前記副機能に対応する前記更新情報を特定する、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の医療用診療装置。
【請求項5】
前記機能部は、同じ機能を発揮する複数の仕様を有し、
前記機能特定部は、前記医療用診療装置に取り付けられている前記機能部の仕様をさらに特定し、
前記更新情報特定部は、前記取得部で取得した前記包括更新情報の中から前記機能特定部で特定した前記機能部および前記仕様に対応する前記更新情報を特定する、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の医療用診療装置。
【請求項6】
前記機能部の仕様を特定可能な仕様情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記更新情報特定部は、前記記憶部に記憶された前記仕様情報に基づき、前記取得部で取得した前記包括更新情報の中から前記機能特定部で特定した前記機能部および前記仕様に対応する前記更新情報を特定する、請求項5に記載の医療用診療装置。
【請求項7】
複数の前記機能部には、前記医療用診療装置の基本的な機能を発揮する基本機能部と、前記医療用診療装置の拡張的な機能を発揮する拡張機能部とがある、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の医療用診療装置。
【請求項8】
複数の前記機能部には、所定の機能を発揮する第1機能部と、前記第1機能部と関連する機能を発揮する第2機能部とがあり、
前記第2機能部は、前記第1機能部の前記更新処理を実行したことを条件に機能を発揮可能である、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の医療用診療装置。
【請求項9】
前記更新制御部は、前記送信部で前記更新情報を送信する前に、前記更新情報特定部で特定した前記更新情報の正当性を判定する正当性判定部をさらに含む、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の医療用診療装置。
【請求項10】
前記更新制御部は、有線または無線で接続された伝送路を介して前記取得部により前記包括更新情報を取得する、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の医療用診療装置。
【請求項11】
前記取得部は、他の医療用診療装置と通信可能であり、前記他の医療用診療装置の前記取得部によって取得された前記包括更新情報を、通信によって取得する、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の医療用診療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用診療装置に関し、特に、複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科や医科などの医療分野における診療では、複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置が知られている。
【0003】
たとえば、特開2002−336281号公報(特許文献1)に開示された医療用診療装置は、歯科診療に用いることが可能であるが、そのための機能として、根管の長さを測定する根管長測定機能と、根管を拡大する根管拡大機能とを備えた機能モジュールを取り付けることが可能である。このように、複数の機能を選択して組み合わせることにより、主なユーザである医師の趣向、診療内容、および使用環境などに合った様々な機能を発揮する医療用診療装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−336281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療用診療装置において機能を発揮するためには、機能を発揮するためのプログラムおよびデータの少なくとも1つ(以下、プログラムなどとも称する)を所定の更新情報に基づき更新する更新処理を実行しなければならない場合がある。更新処理を実行する際には、たとえば、機能を発揮するための機能部を特定するとともに、特定した機能部に対応する更新情報を選択しなければならない。しかし、機能部に対応する更新情報を個別に準備することは煩雑であるし、医療用診療装置に取り付けられた全ての機能部に対して個別に順番に更新処理を実行することは時間が掛かるといった問題がある。さらに、機能部の特定や更新情報の選択を誤ってしまった場合、機能部が機能を発揮できずに診療自体を中断せざる得ない虞がある。
【0006】
特許文献1に開示された医療用診療装置においても同様に、機能モジュール内に設けられた基板などの機能部において更新処理を実行しなければ、根管長測定機能および根管拡大機能といった各機能を発揮することができないと考えられるが、上記問題については何ら鑑みられていない。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、複数の機能を選択して組み合わせた場合であっても、誤ることなく容易にプログラムなどを更新することができる医療用診療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医療用診療装置は、複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置であって、機能を発揮するための少なくとも1つの機能部と、機能を発揮するためのプログラムおよびデータの少なくとも1つを所定の更新情報に基づき更新する更新処理を、機能部に実行させる更新制御部とを備え、更新制御部は、医療用診療装置に取り付け可能な全ての機能部の更新情報を包括した包括更新情報を取得する取得部と、医療用診療装置に取り付けられている機能部を特定する機能特定部と、取得部で取得した包括更新情報の中から機能特定部で特定した機能部に対応する更新情報を特定する更新情報特定部と、機能特定部で特定した機能部に対して、少なくとも更新情報特定部で特定した更新情報を送信する送信部とを含み、機能部は、送信部から送信された更新情報に基づき更新処理を実行する更新部を含み、更新制御部または機能部は、プログラムおよびデータの少なくとも1つと、更新情報特定部で特定された更新情報とに基づき、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する更新有無判定部をさらに含む。
【0009】
好ましくは、更新制御部は、医療用診療装置に取り付けられている機能部のうちの1つの機能部と同じ基板上に設けられている。
【0010】
好ましくは、更新制御部は、医療用診療装置に取り付けられている機能部とは別の基板上に設けられている。
【0011】
好ましくは、機能部は、選択可能な複数の副機能を有し、副機能が選択された後においては、選択された副機能に対応する更新情報に基づいて更新処理を実行したことを条件に副機能を発揮可能であり、包括更新情報は、選択可能な副機能に対応する更新情報を包括し、更新情報特定部は、取得部で取得した包括更新情報の中から機能特定部で特定した機能部および選択された副機能に対応する更新情報を特定する。
【0012】
好ましくは、機能部は、同じ機能を発揮する複数の仕様を有し、機能特定部は、医療用診療装置に取り付けられている機能部の仕様をさらに特定し、更新情報特定部は、取得部で取得した包括更新情報の中から機能特定部で特定した機能部および仕様に対応する更新情報を特定する。
【0013】
好ましくは、医療用診療装置は、機能部の仕様を特定可能な仕様情報を記憶する記憶部をさらに備え、更新情報特定部は、記憶部に記憶された仕様情報に基づき、取得部で取得した包括更新情報の中から機能特定部で特定した機能部および仕様に対応する更新情報を特定する。
【0014】
好ましくは、複数の機能部には、医療用診療装置の基本的な機能を発揮する基本機能部と、医療用診療装置の拡張的な機能を発揮する拡張機能部とがある。
【0015】
好ましくは、複数の機能部には、所定の機能を発揮する第1機能部と、第1機能部と関連する機能を発揮する第2機能部とがあり、第2機能部は、第1機能部の更新処理を実行したことを条件に機能を発揮可能である。
【0016】
好ましくは、更新制御部は、送信部で更新情報を送信する前に、更新情報特定部で特定した更新情報の正当性を判定する正当性判定部をさらに含む。
【0017】
好ましくは、更新制御部は、有線または無線で接続された伝送路を介して取得部により包括更新情報を取得する。
【0018】
好ましくは、取得部は、他の医療用診療装置と通信可能であり、他の医療用診療装置の取得部によって取得された包括更新情報を、通信によって取得する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る医療用診療装置によれば、機能部に対応する更新情報を個別に準備する必要もないし、医療用診療装置に取り付けられた全ての機能部に対して個別に順番に更新処理を実行する必要もない。さらに、機能部の特定や更新情報の選択を誤ってしまうこともないため、機能部が正常に機能を発揮することができる。このように、複数の機能を選択して組み合わせた場合であっても、誤ることなく容易にプログラムなどを更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】医療用診療装置の外観の構成を示す概略図である。
図2】医療用診療装置の内部の構成を概略的に示すブロック図である。
図3】取り付けられる基板の組み合わせに応じた医療用診療装置のバリエーションの一例を説明するための図である。
図4】医療用診療装置に対する包括更新用データの取得経路を説明するための図である。
図5】ホスト基板およびクライアント基板の機能を概略的に示すブロック図である。
図6】包括更新用データの構成を説明するための概念図である。
図7】包括更新用データの構成を説明するための詳細図である。
図8】ホスト基板が実行する更新制御のメインルーチンを説明するためのフローチャートである。
図9】ホスト基板のメモリに記憶された構成メンバーテーブルを説明するための図である。
図10】ホスト基板が実行する更新制御のサブルーチンを説明するためのフローチャートである。
図11】ホスト基板が実行する更新制御のサブルーチンを説明するためのフローチャートである。
図12】プログラムなどの更新例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態においては、本発明に係る医療用診療装置の1つの例示的形態として、歯科診療に用いることが可能な医療用診療装置について説明する。なお、本発明に係る医療用診療装置は、歯科に限らず、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用することが可能である。また、診療には、診断および治療が含まれる。
【0022】
[医療用診療装置10の基本構成]
図1は、医療用診療装置10の外観の構成を示す概略図であり、図2は、医療用診療装置10の内部の構成を概略的に示すブロック図である。図1および図2に示すように、医療用診療装置10は、診療椅子1と、フートコントローラ5と、トレーテーブル3と、制御装置9と、ベースンユニット2とを備える。
【0023】
診療椅子1は、医師から診療を受ける際に患者が座る椅子であり、患者の頭を支えるヘッドレスト1aと、患者の背中を支える背もたれ1bと、患者の尾尻を支える座面シート1cと、患者の足を支える足置き台1dとを備えている。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dは、シート駆動部11に接続されており、シート駆動部11の制御に基づき駆動することができる。たとえば、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dは、シート駆動部11の制御に基づき、座面シート1cに対して垂直方向または水平方向に移動することができ、垂直方向に移動したときには患者が座位姿勢になり、水平方向に移動したときには患者が仰向け姿勢になる。
【0024】
このように、シート駆動部11は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dを駆動して、患者を座位姿勢または仰向け姿勢にする機能(以下、シート駆動機能とも称する)を有する。なお、シート駆動部11は、A基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)およびメモリ(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、シート駆動機能は、A基板によって発揮される。
【0025】
フートコントローラ5は、医師などの足踏操作によって、診療椅子1を駆動させるための操作を受け付けるとともに、後述する診療器具4を駆動させるための操作を受け付ける操作部である。たとえば、フートコントローラ5に設けられた診療椅子駆動用のスイッチを足踏操作することにより、フートコントローラ5が備える操作部12からシート駆動部11に対して制御信号が出力され、シート駆動部11の制御によって診療椅子1が駆動する。また、フートコントローラ5に設けられた診療器具駆動用のスイッチを足踏操作することにより、操作部12から診療器具駆動部14に対して制御信号が出力され、診療器具駆動部14の制御によって診療器具4が駆動する。
【0026】
このように、操作部12は、診療椅子1および診療器具4を駆動させるための操作を受け付ける機能(以下、操作受付機能とも称する)を有する。なお、操作部12は、B基板上に実装されたCPUおよびメモリ(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、操作受付機能は、B基板によって発揮される。
【0027】
トレーテーブル3は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル3は、診療椅子1または床から延びるアーム(図示は省略)に接続されており、診療椅子1に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。
【0028】
制御装置9は、トレーテーブル3の底面に設けられており、複数の診療器具4と、操作パネル8と、モニタ6とが接続されている。制御装置9は、これら各構成を駆動させるための制御部である。
【0029】
診療器具4は、たとえば、エアータ−ビンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどのハンドピース、あるいは、スケーラ、スリーウェイシリンジ、バキュームシリンジなど、診療に用いるインスツルメントである。診療器具4は、トレーテーブル3に設けられたインスツルメントホルダ(図示は省略)によって保持される。なお、診療器具4は、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、および根管拡大器などであってもよいし、鏡や注射器など、駆動しない器具であってもよい。本実施の形態においては、診療器具4a〜4eの5種類が用いられる。各診療器具4は、制御装置9が備える診療器具駆動部14に接続されており、診療器具駆動部14の制御に基づき駆動することができる。たとえば、診療器具4としてハンドピースを用いた場合、診療器具駆動部14の制御に基づき、ヘッド部に保持される切削工具を回転させて治療に用いることができる。
【0030】
このように、診療器具駆動部14は、診療器具4を駆動する機能(以下、診療器具駆動機能とも称する)を有する。なお、診療器具駆動部14は、D基板上に実装されたCPUおよびメモリ(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、診療器具駆動機能は、D基板によって発揮される。
【0031】
操作パネル8は、表示した所定画像(たとえば、文字画像やアイコン画像など)に対する医師などのタッチ操作によって、診療椅子1を駆動させるための操作を受け付けるとともに、診療器具4の駆動に関する設定操作(たとえば、水やエアの噴出有無の設定操作、モータの回転速度の設定操作など)を受け付ける操作部である。たとえば、操作パネル8は、診療椅子1を駆動させるために操作される診療椅子駆動用のアイコン画像と、診療器具4の駆動に関する設定をするために操作される診療器具駆動用のアイコン画像とを表示する。制御装置9が備えるパネル制御部13は、診療椅子駆動用のアイコン画像に対するタッチ操作を検出すると、シート駆動部11に対して制御信号を出力する。これにより、シート駆動部11の制御によって診療椅子1が駆動する。また、パネル制御部13は、診療器具駆動用のアイコン画像に対するタッチ操作を検出すると、診療器具駆動部14に対して制御信号を出力する。これにより、診療器具駆動部14の制御によって診療器具4の駆動に関する設定が行われる。
【0032】
このように、パネル制御部13は、操作パネル8が表示する所定画像に対するタッチ操作を検出してシート駆動部11を駆動させる機能および診療器具駆動部14の駆動に関する設定を行う機能(以下、パネル制御機能とも称する)を有する。なお、パネル制御部13は、C基板上に実装されたCPUおよびメモリ(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、パネル制御機能は、C基板によって発揮される。
【0033】
モニタ6は、液晶ディスプレイなどで構成され、制御装置9が備えるモニタ制御部15の制御に基づき、所定画像を表示する。たとえば、モニタ6は、インスツルメントホルダから取り出されて使用されている診療器具4の駆動情報を示す画像、根管内での切削工具の先端の位置を示す画像、および口腔内カメラによって撮影された口腔内の画像などを表示する。
【0034】
このように、モニタ制御部15は、モニタ6の画像表示を制御する機能(以下、モニタ制御機能とも称する)を有する。なお、モニタ制御部15は、E基板上に実装されたCPUおよびメモリ(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、モニタ制御機能は、E基板によって発揮される。
【0035】
ベースンユニット2は、診療椅子1の側部に備え付けられており、排水口が形成された鉢2aと、コップが載置されるコップ台2bと、コップに給水するための給水栓2cとを備える。ベースンユニット2は、給水栓2cからコップに給水された水を用いて患者がうがいをするための台である。
【0036】
また、ベースンユニット2は、ベースン制御部16を備えており、ベースン制御部16の制御に基づき医療用診療装置10で用いられる水の流れを制御する。
【0037】
このように、ベースン制御部16は、医療用診療装置10で用いられる水の流れを制御する機能(以下、ベースン制御機能とも称する)を有する。なお、ベースン制御部16は、F基板上に実装されたCPUおよびメモリ(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、ベースン制御機能は、F基板によって発揮される。
【0038】
さらに、ベースンユニット2は、照明制御部17を備えており、照明制御部17の制御に基づき照明装置7の照明および消灯を制御する。
【0039】
このように、照明制御部17は、照明装置7の照明および消灯を制御する機能(以下、照明制御機能とも称する)を有する。なお、照明制御部17は、G基板上に実装されたCPUおよびメモリ(図示は省略)などによって構成されるコンピュータに対応する。すなわち、照明制御機能は、G基板によって発揮される。
【0040】
なお、図2に示す例において、医療用診療装置10は、A基板〜G基板のみ備えているが、それ以外の基板を備えるとともに、上述した以外の機能を発揮できるものであってもよいし、A基板〜G基板のうち、備えていない基板があってもよい。
【0041】
また、医療用診療装置10において、機能を発揮する複数の基板の中には、歯科診療を行う際に必須となる基本的な機能を発揮する基板と、拡張的な機能を発揮する基板とが含まれる。たとえば、シート駆動機能を発揮するA基板、操作受付機能を発揮するB基板、パネル制御機能を発揮するC基板、および診療器具駆動機能を発揮するD基板は、歯科診療を行う際には必須である。このため、通常、これらの基板は、医療用診療装置10の生産後に納入されたときから標準装備されている。一方、これ以外の基板については、拡張的な機能を発揮する基板であるため、オプションとして追加可能になっている。よって、医療用診療装置10は、主なユーザである医師の趣向、診療内容、および使用環境などに応じて、納入時点、もしくは納入後において、拡張的な機能を発揮する基板を取り付けたり取り外したりすることが可能である。
【0042】
たとえば、図3は、取り付けられる基板の組み合わせに応じた医療用診療装置10のバリエーションの一例を説明するための図である。なお、図3の例では、医療用診療装置10a〜10cの3種類が示されている。
【0043】
図3に示すように、医療用診療装置10aは、A基板〜W基板といった、取り付け可能な全ての基板が取り付けられているのに対して、医療用診療装置10bおよび医療用診療装置10cは、全ての基板が取り付けられることなく、選択的に組み合わされている。たとえば、医療用診療装置10bは、E基板が取り付けられていないため、E基板によるモニタ制御機能を発揮することはできないし、医療用診療装置10cは、F基板およびG基板が取り付けられていないため、F基板によるベースン制御機能およびG基板による照明制御機能を発揮することはできない。
【0044】
以上のように、本実施の形態の医療用診療装置10は、取り付けられた各基板によって各機能を発揮することができるため、医師は、医療用診療装置10を用いて円滑に患者を診療することができる。また、複数の機能を選択して組み合わせることにより、主なユーザである医師の趣向、診療内容、および使用環境などに合った様々な機能を発揮する医療用診療装置10を提供することができる。
【0045】
ここで、各基板がその機能を発揮するためには、基板のメモリに記憶されたプログラムなどを所定の更新用データに基づき更新する更新処理を実行しなければならない場合がある。なお、本実施の形態におけるプログラムなどには、プログラムおよびデータの少なくとも1つが含まれる。プログラムとは、基板上のコンピュータが所定の動作をするための命令および処理手順、すなわち、基板のソフトウェア(ファームウェアとも言える)のことである。また、データとは、設定データ、画像データ、および音声データなど、基板上のコンピュータが所定の動作をする際に用いる様々なデータのことである。さらに、本実施の形態の更新用データには、たとえば、プログラムなどの最新の情報が含まれる。すなわち、更新処理の実行により、基板のメモリに記憶されたプログラムなどが、更新用データ内の最新のプログラムなどに更新(書き換えともいえる)される。以下、更新処理を実行しなければならない場合について説明する。なお、以下の例はあくまで一例であり、その他の理由でも更新処理を実行しなければならない場合はある。
【0046】
第1の例として、たとえば、各基板のプログラムなどに何らかの不具合が生じた場合、正常なプログラムなどに更新しなければ各機能を発揮することができない。具体的に、たとえば、パネル制御部13であるC基板のプログラムなどに何らかの不具合が生じた場合、C基板のプログラムなどを正常なプログラムなどに更新しなければ、操作パネル8が表示する所定画像に対するタッチ操作を検出することができなかったり、タッチ操作を検出できてもシート駆動部11を駆動させるための制御信号および診療器具駆動部14を駆動させるための制御信号を出力することができなかったりする場合がある。また、C基板のデータに何らかの不具合が生じた場合、モニタ6に本来表示されることのない画像が表示されてしまう場合がある。
【0047】
第2の例として、基板の中には、選択可能な複数の副機能を有し、副機能が選択された後においては、選択された副機能に対応する更新用データに基づいて更新処理を実行したことを条件に副機能を発揮可能となるものがある。たとえば、診療器具駆動部14であるD基板が発揮する診療器具駆動機能には、標準装備されるハンドピース、スケーラ、スリーウェイシリンジ、およびバキュームシリンジなどのインスツルメントを駆動する主機能と、追加装備可能な口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、および根管拡大器などの器具を駆動する副機能とが含まれる。主機能を発揮するためのプログラムなどは、医療用診療装置10の納入当初からD基板のメモリに記憶されているが、副機能を発揮するためのプログラムなどは、D基板のメモリに記憶されていない。このため、医療用診療装置10の納入後に口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、および根管拡大器などの器具を追加した場合は、D基板のプログラムなどを更新しなければ、追加した器具に対して診療器具駆動機能を発揮することができない。また、副機能を発揮するためのプログラムに限らず、主機能を発揮するためのプログラムについても、診療内容や環境に応じて変更しなければならない場合もある。たとえば、電気モータの仕様が変更されれば、それに応じて駆動を制御するための情報も変更する必要があり、この場合でも、D基板のプログラムなどを変更しなければ、変更した器具に対して診療器具駆動機能を発揮することができない。
【0048】
第3の例として、基板の中には、同じ機能を発揮する複数の仕様を有するものがある。たとえば、パネル制御部13であるC基板は、日本向け仕様、欧州向け仕様、および中東向け仕様など、言語の違いや診療器具の使われ方の違いなどに応じて、操作パネル8の画像表示が異なるように複数の仕様が存在する。このため、C基板の仕様が変われば、変更後の仕様に合わせてC基板のプログラムなども更新しなければ、仕様に応じたパネル制御機能を発揮することができない。また、ベースン制御部16であるF基板は、ベースンユニット2内に取り付けられる管路に複数の仕様が存在する。このため、F基板によって制御される管路仕様が変われば、変更後の管路仕様に合わせてF基板のプログラムなども更新しなければ、医療用診療装置10で用いられる水の流れを制御することができない。
【0049】
第4の例として、基板の中には、他の基板と関連する機能を発揮する基板があり、他の基板で更新処理を実行したことを条件に機能を発揮可能となるものがある。たとえば、診療器具4を新たに追加した場合、診療器具駆動部14であるD基板のプログラムなどを更新しなければ、パネル制御部13であるC基板は、追加した器具を認識することができず、追加した器具に対してパネル制御機能を発揮することができない。
【0050】
第5の例として、医療用診療装置10は、拡張的な機能を発揮する基板を取り付けたり取り外したりすることが可能であるため、たとえば、医療用診療装置10の納入当初、モニタ6が標準装備されていなかったが、納入後に追加することも考えられる。この場合、単に医療用診療装置10にモニタ6とモニタ制御部15であるE基板とを取り付けるだけではなく、E基板のプログラムなどを更新しなければ、E基板は、モニタ制御機能を発揮することができない。
【0051】
以上のように、各基板がその機能を発揮するためには、基板のプログラムなどの更新処理を実行しなければならない場合がある。更新処理を実行する際には、たとえば、医療用診療装置10に取り付けられた基板を特定するとともに、特定した基板に対応する更新用データを選択しなければならない。しかし、各基板に対応する更新用データを個別に準備することは煩雑であるし、医療用診療装置10に取り付けられた全ての基板に対して個別に順番に更新処理を実行することは時間が掛かる。さらに、基板の特定や更新用データの選択を誤ってしまった場合、基板が機能を発揮できずに診療自体を中断せざる得ない虞がある。
【0052】
そこで、本実施の形態における医療用診療装置10は、取り付け可能な全ての基板の更新用データを包括した包括更新用データを取得して、医療用診療装置10に取り付けられている基板(以下、構成基板とも称する)を特定し、取得した包括更新用データの中から特定した基板に対応する更新用データを特定する。さらに、医療用診療装置10は、基板のプログラムなどと、特定した更新用データとに基づき、更新処理を実行する必要があると判定したときに、特定した更新用データに基づき更新処理を実行する。以下、本実施の形態の医療用診療装置10が実行する更新処理について説明する。
【0053】
[医療用診療装置10の更新処理に関する構成]
図2および図3に示すように、医療用診療装置10の構成基板には、ホスト基板とクライアント基板とが含まれている。ホスト基板は、「更新制御部」の一実施例に対応し、クライアント基板は、「機能部」の一実施例に対応する。各基板はいずれかの他の基板と装置内ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。なお、図2および図3の例では、ホスト基板は、隣り合うクライアント基板のみと通信可能に接続されており、その他のクライアント基板とは、隣り合うクライアント基板を介して通信可能に接続されている。しかし、このような通信形態に限らず、ホスト基板は、他の全てのクライアント基板と直接的に通信可能に接続されてもよい。
【0054】
ホスト基板は、外部から取得した更新用データに基づきプログラムなどを更新する更新処理を、各クライアント基板に実行させる制御(以下、更新制御とも称する)を実行する基板であり、基本的な機能を発揮する基板が対応する。図2および図3に示す例では、ホスト基板は、C基板が対応する。このように、標準装備される基本的な機能を発揮する基板をホスト基板にすることで、拡張的な機能を発揮する基板のように、納入後に取り外されてしまう虞がない。クライアント基板は、ホスト基板の更新制御に基づき、更新処理を実行する基板であり、基本的な機能を発揮する基板および拡張的な機能を発揮する基板のいずれにおいても対応する。図2および図3に示す例では、クライアント基板は、C基板以外の基板が対応する。
【0055】
なお、図3に示すように、基板の中には、同じ機能を発揮する複数の仕様を有するものがある。たとえば、医療用診療装置10aのT基板およびU基板はA仕様であり、医療用診療装置10bのT基板およびU基板はB仕様である。また、医療用診療装置10cのT基板はC仕様、U基板はB仕様である。なお、仕様には、ハードウェアの仕様とソフトウェアの仕様とがある。具体的に、ハードウェアの仕様が異なる例として、医療用診療装置10aにおけるA仕様のT基板では、モータ回路に特定部品が実装されているのに対して、医療用診療装置10bにおけるB仕様のT基板では、モータ回路に特定部品が実装されていない例が挙げられる。また、ソフトウェアの仕様が異なる例として、医療用診療装置10aにおけるA仕様のT基板では、モータの回転数が低速仕様であるため高速回転させるためのソフトウェアが対応しないのに対して、医療用診療装置10bにおけるB仕様のT基板では、モータの回転数が高速仕様であるため高速回転させるためのソフトウェアが対応する例が挙げられる。
【0056】
図4は、医療用診療装置10に対する包括更新用データの取得経路を説明するための図である。図4に示すように、ホスト基板であるC基板は、有線LAN(Local Area Network)または無線LANを介して外部から包括更新用データを取得可能であり、また、記憶媒体などから包括更新用データを取得可能である。
【0057】
さらに、医療用診療装置10のC基板は、他の医療用診療装置10のC基板と有線LANまたは無線LANを介して互いに通信可能であり、医療用診療装置10のC基板が取得した包括更新用データを、他の医療用診療装置10のC基板との間で受け渡すことも可能である。たとえば、医療用診療装置10aのC基板、医療用診療装置10bのC基板、および医療用診療装置10cのC基板は、有線LANまたは無線LANを介して互いに通信可能であり、医療用診療装置10aのC基板が外部から取得した包括更新用データを、医療用診療装置10bのC基板および医療用診療装置10cのC基板との間で受け渡すことができる。
【0058】
図5は、ホスト基板およびクライアント基板の機能を概略的に示すブロック図である。なお、図5において、ホスト基板は、パネル制御部13であるC基板に対応し、クライアント基板は、診療器具駆動部14であるD基板に対応する例を示すが、その他の基板が、ホスト基板またはクライアント基板に対応したとしても、図5に示す機能と同様の機能を有する。また、図5に示す各種機能は一部であり、ホスト基板およびクライアント基板は、その他の機能も有する。
【0059】
ホスト基板は、構成記憶部130と、包括更新用データ取得部131と、更新用データ特定部132と、構成基板特定部133と、更新用データ送信部134と、ファームウェア情報取得部135と、更新有無判定部136と、ファームウェア情報記憶部137と、更新部138と、機能部139とを有する。
【0060】
クライアント基板は、ファームウェア情報送信部141と、ファームウェア情報記憶部142と、更新用データ取得部143と、更新部144と、機能部145とを有する。
【0061】
まず、ホスト基板側について説明する。包括更新用データ取得部131は、「取得部」の一実施例に対応し、有線LANまたは無線LAN、あるいは記憶媒体などを介して外部から包括更新用データを取得する。なお、包括更新用データ取得部131は、他の医療用診療装置10の包括更新用データ取得部131によって取得された包括更新用データを、通信部(図示は省略)による通信によって取得してもよい。構成基板特定部133は、「機能特定部」の一実施例に対応し、構成記憶部130に記憶された構成メンバーテーブル(詳細は後述する)に基づき、医療用診療装置10のクライアント基板を特定する。なお、構成記憶部130は、「記憶部」の一実施例に対応し、後述するメモリの機能を有する。
【0062】
更新用データ特定部132は、「更新情報特定部」の一実施例に対応し、包括更新用データ取得部131によって取得された包括更新用データの中から、構成基板特定部133によって特定されたクライアント基板に対応する更新用データを特定する。ファームウェア情報取得部135は、クライアント基板が有するファームウェア情報送信部141から送信されたファームウェア情報を取得する。なお、ファームウェア情報には、クライアント基板のプログラムなどを特定可能な情報が含まれる。
【0063】
更新有無判定部136は、「更新有無判定部」の一実施例に対応し、ファームウェア情報取得部135によって取得されたファームウェア情報と、更新用データ特定部132によって特定された更新用データとに基づき、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する。具体的に、更新有無判定部136は、ファームウェア情報から特定可能なプログラムなどの情報と、更新用データから特定可能なプログラムなどの情報とから、クライアント基板のプログラムなどが最新であるかを判定し、最新でない場合には更新処理を実行する必要があると判定する一方で、最新である場合には更新処理を実行する必要がないと判定する。更新用データ送信部134は、「送信部」の一実施例に対応し、更新有無判定部136によって更新処理を実行する必要があると判定されたときに、構成基板特定部133によって特定されたクライアント基板に対して、更新用データ特定部132によって特定された更新用データを送信する。
【0064】
次に、クライアント基板側について説明する。更新用データ取得部143は、更新用データ送信部134から送信された更新用データを取得する。更新部144は、「更新部」の一実施例に対応し、更新用データ取得部143によって取得された更新用データに基づき、ファームウェア情報記憶部142(後述するメモリの機能に対応)に記憶されたプログラムなどを更新する更新処理を実行する。機能部145は、ファームウェア情報記憶部142に記憶されたプログラムなどに基づいて、機能を発揮する。たとえば、図5の例の場合、診療器具駆動部14の機能部145は、ファームウェア情報記憶部142に記憶されたプログラムなどに基づき診療器具4を駆動する。
【0065】
なお、ホスト基板においても更新処理は実行される。具体的に、更新用データ特定部132は、包括更新用データ取得部131によって取得された包括更新用データの中から、ホスト基板に対応する更新用データを特定する。更新有無判定部136は、ファームウェア情報記憶部137に記憶されたファームウェア情報と、更新用データ特定部132によって特定された更新用データとに基づき、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する。更新部138は、更新有無判定部136によって更新処理を実行する必要があると判定されたときに、更新用データ特定部132によって特定された更新用データに基づき、ファームウェア情報記憶部137に記憶されたプログラムなどを更新する更新処理を実行する。また、機能部139は、ファームウェア情報記憶部137に記憶されたプログラムなどに基づいて、機能を発揮する。たとえば、図5の例の場合、パネル制御部13の機能部139は、ファームウェア情報記憶部137に記憶されたプログラムなどに基づき操作パネル8が表示する所定画像に対するタッチ操作を検出してシート駆動部11および診療器具駆動部14を駆動させる。
【0066】
[包括更新用データの構成]
図6は、包括更新用データの構成を説明するための概念図である。図7は、包括更新用データの構成を説明するための詳細図である。図6および図7に示すように、包括更新用データは、ヘッダ部と、データ部とから構成される。さらに、包括更新用データでは、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての構成基板の各々に対応して、ヘッダ部およびデータが格納されている。
【0067】
ヘッダ部には、データ部に格納された更新用データに関する情報が格納されている。たとえば、ヘッダ部には、データ部に格納されているソフトウェアの総数、包括更新用データの更新バージョン、包括更新用データの参照を許可するためのセキュリティパスワード、送受信時の誤りを検出するためのチェックサム、データ部における各基板の更新用データが格納されている位置、照合・書き込み・読み出しなどを指示するコマンド、およびデータ部に格納された更新用データの仕様に対応するシリアル情報などが格納されている。なお、シリアル情報としては、たとえば、医療用診療装置10のシリアル番号(たとえば、製造番号)が用いられる。医療用診療装置10のシリアル情報が分かれば、そのシリアル情報に基づき、データ部に格納された更新用データのうち、どの仕様に対応する更新用データであるかが分かるようになっている。すなわち、シリアル情報は、データ部に格納された更新用データの仕様を特定可能な情報であるとも言える。
【0068】
データ部には、更新用データとして、プログラムなどの最新の情報が格納されている。たとえば、データ部には、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板(A基板〜W基板)のソフトウェア、設定データなどの各種データ、およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などのように回路をプログラム可能なデバイスで用いるプログラムであるコンフィグレーションなどが格納されている。
【0069】
また、図7に示すヘッダ部およびデータ部におけるシグネチャは、ホスト基板が、メモリ内の構成メンバーテーブルに基づき、構成基板の更新用データを特定するための識別情報である。
【0070】
さらに、データ部には、診療器具駆動部14であるD基板で選択される副機能のように、全ての基板において選択可能な全ての副機能に対応する更新用データが格納されている。
【0071】
このように、包括更新用データには、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板の仕様および選択可能な副機能に対応する全ての更新用データが格納されている。このため、包括更新用データを1つ取得するだけで、あらゆる基板、あらゆる仕様、あらゆる副機能に対応する更新用データを取得することができ、取得した更新用データに基づき一括して容易に更新処理を実行することができる。
【0072】
[ホスト基板の更新制御に関するフローチャート]
図8は、ホスト基板が実行する更新制御のメインルーチンを説明するためのフローチャートである。なお、図8に示すルーチンは、構成基板のメモリに記憶されたプログラムなどを最新のプログラムなどに更新させる更新制御を実行する際のルーチンであり、作業者の操作に基づきセキュリティパスワードによって認証された後、ホスト基板により実行される。
【0073】
図8に示すように、まず、ホスト基板は、包括更新用データ取得部131により、外部から包括更新用データを取得したか否かを判定する(S1)。ホスト基板は、包括更新用データを取得していないと判定した場合(S1でNO)、本ルーチンを終了する。
【0074】
一方、ホスト基板は、包括更新用データを取得した場合(S1でYES)、ホスト基板は、構成基板特定部133により、メモリ内の構成メンバーテーブルを読み出し、医療用診療装置10の構成基板を特定し、さらに、シリアル情報を特定する(S2)。ここで、図9は、ホスト基板のメモリに記憶された構成メンバーテーブルを説明するための図である。図9に示すように、構成メンバーテーブルには、医療用診療装置10に取り付けられている構成基板のシグネチャおよびシリアル情報が格納されている。たとえば、医療用診療装置10aには、A基板〜W基板といった、取り付け可能な全ての基板が取り付けられているため、構成メンバーテーブルには、全ての基板に対応するシグネチャと、「J01234」といったシリアル情報とが格納されている。構成メンバーテーブルに格納されたシリアル情報は、構成基板の仕様を特定可能な情報である。このため、構成メンバーテーブルに格納されたシリアル情報とヘッダ部に格納されたシリアル情報とを照合することにより、構成基板の仕様に対応する更新用データが特定可能である。他の医療用診療装置10bおよび医療用診療装置10cにおいても同様に、構成メンバーテーブルには、構成基板のシグネチャおよびシリアル情報が格納されている。
【0075】
なお、構成メンバーテーブル内の情報は、医療用診療装置10に対して基板が取り付けられたり取り外されたりした場合、あるいは、包括更新用データにホスト基板が未知の構成メンバーがあることを確認できた場合に、ホスト基板によって更新される。これに関して図5を参照しながら説明する。
【0076】
構成メンバーテーブルは、ホスト基板のメモリの機能を有する構成記憶部130に記憶されている。すなわち、構成基板のシグネチャ、および構成基板の仕様を特定可能なシリアル情報は、ホスト基板の構成記憶部130に記憶されている。構成記憶部130は、「記憶部」の一実施例に対応する。ホスト基板は、各クライアント基板との接続部(図示は省略する)に対して所定間隔(たとえば、100msec間隔)でシグネチャを要求するコマンドを送信する。なお、ホスト基板は、各クライアント基板との接続部に対して包括更新用データを受け取ったときにシグネチャを要求するコマンドを送信してもよい。ホスト基板との接続部にクライアント基板が新たに取り付けられたときには、ホスト基板からのコマンドに反応して、クライアント基板のファームウェア情報送信部141は、ホスト基板に対してシグネチャを送信する。これにより、構成記憶部130に記憶された構成メンバーテーブル内に新たに取り付けられたクライアント基板のシグネチャが追加される。つまり、クライアント基板が送信する情報に基づき、ホスト基板が構成メンバーテーブルを再生成することができるため、ホスト基板が包括更新用データに基づいて、最新の構成メンバーテーブルを保持することができる。一方、ホスト基板との接続部に取り付けられていたクライアント基板が取り外されたときには、ホスト基板からのコマンドに対して反応がない。これにより、構成記憶部130に記憶された構成メンバーテーブル内から取り外されたクライアント基板のシグネチャが削除される。このように、所定間隔(たとえば、100msec間隔)、あるいは包括更新用データを受け取ったときに、ホスト基板における構成メンバーテーブル内の情報が更新される。
【0077】
なお、シリアル情報は、医療用診療装置10の製造時点で構成メンバーテーブルに格納されているが、取り付けられるクライアント基板の仕様が変更されたときに、シグネチャと同様に所定間隔(たとえば、100msec間隔)で更新されるものであってもよい。
【0078】
ホスト基板は、メモリ内の構成メンバーテーブルを参照することによって、医療用診療装置10に取り付けられている構成基板およびシリアル情報を特定することができる。
【0079】
図8に戻り、ホスト基板は、更新用データ特定部132により、包括更新用データ内のヘッダ部と、構成メンバーテーブルから特定した構成基板およびシリアル情報とに基づき、データ部において構成基板の仕様に対応する更新用データを特定する(S3)。たとえば、ホスト基板は、構成メンバーテーブルに格納されたシリアル情報と、ヘッダ部に格納されたシリアル情報とに基づき、データ部に格納された更新用データのうち、構成基板の仕様に対応する更新用データが格納されている位置を特定する。さらに、ホスト基板は、構成メンバーテーブルに格納された構成基板のシグネチャと、ヘッダ部に格納されたシグネチャとに基づき、データ部において構成基板の更新用データが格納されている位置を特定する。これにより、ホスト基板は、包括更新用データの中から、構成基板の仕様に対応する更新用データを特定することができる。
【0080】
ホスト基板は、メモリ内の構成メンバーテーブルに基づき、構成基板の総数Nを算出する(S4)。ホスト基板は、ホスト基板自身の更新処理を実行するためのサブルーチン(図10のサブルーチン)およびクライアント基板に更新処理を実行させるためのサブルーチン(図11のサブルーチン)を実行する(S5)。
【0081】
ホスト基板は、更新処理を未だ実行していない構成基板の総数n(=N−1)を算出する(S6)。ホスト基板は、更新処理を未だ実行していない構成基板が存在しない、すなわちn=0であるか否かを判定する(S7)。ホスト基板は、更新処理を未だ実行していない構成基板が存在する場合(S7でNO)、再びS5に戻って、サブルーチンを実行する。
【0082】
一方、ホスト基板は、更新処理を未だ実行していない構成基板が存在しない場合(S7でYES)、各種デバイスを再起動し(S8)、本ルーチンを終了する。
【0083】
次に、図10は、ホスト基板が実行する更新制御のサブルーチンを説明するためのフローチャートである。なお、図10は、ホスト基板自身の更新処理を実行するためのサブルーチンである。
【0084】
図10に示すように、まず、ホスト基板は、図8のS3で特定した、包括更新用データ内のホスト基板用の更新用データを読み出す(S11)。ホスト基板は、読み出した更新用データの正当性を判定するため、チェックサムの照合が正常であるか否かを判定する(S12)。ホスト基板は、チェックサムの照合が正常でない場合(S12でNO)、本ルーチンを終了する。
【0085】
一方、ホスト基板は、チェックサムの照合が正常である場合(S12でYES)、ホスト基板のメモリ内のファームウェア情報を取得する(S13)。ホスト基板は、更新有無判定部136により、取得したファームウェア情報と、S11で読み出した更新用データとに基づき、ホスト基板のメモリ内のプログラムなどは最新であるか否か、すなわち更新処理を実行する必要があるか否かを判定する(S14)。ホスト基板は、ホスト基板のメモリ内のプログラムなどが最新である、すなわち更新処理を実行する必要がない場合(S14でYES)、本ルーチンを終了する。
【0086】
一方、ホスト基板は、ホスト基板のメモリ内のプログラムなどが最新でない、すなわち更新処理を実行する必要がある場合(S14でNO)、S11で読み出した更新用データに基づき、メモリ内のプログラムなどを更新する更新処理を実行し(S15)、本ルーチンを終了する。
【0087】
次に、図11は、ホスト基板が実行する更新制御のサブルーチンを説明するためのフローチャートである。なお、図11は、クライアント基板に更新処理を実行させるためのサブルーチンである。
【0088】
図11に示すように、まず、ホスト基板は、図8のS3で特定した、包括更新用データ内のクライアント基板用の更新用データを読み出す(S21)。ホスト基板は、読み出した更新用データの正当性を判定するため、チェックサムの照合が正常であるか否かを判定する(S22)。ホスト基板は、チェックサムの照合が正常でない場合(S22でNO)、本ルーチンを終了する。
【0089】
一方、ホスト基板は、チェックサムの照合が正常である場合(S22でYES)、クライアント基板のメモリ内のファームウェア情報を、装置内ネットワークを介して更新対象のクライアント基板に対して要求して取得する(S23)。ホスト基板は、更新有無判定部136により、取得したファームウェア情報と、S21で読み出した更新用データとに基づき、更新対象のクライアント基板のメモリ内のプログラムなどは最新であるか否か、すなわち更新処理を実行する必要があるか否かを判定する(S24)。ホスト基板は、更新対象のクライアント基板のメモリ内のプログラムなどが最新である、すなわち更新処理を実行する必要がない場合(S24でYES)、本ルーチンを終了する。
【0090】
一方、ホスト基板は、更新対象のクライアント基板のメモリ内のプログラムなどが最新でない、すなわち更新処理を実行する必要がある場合(S24でNO)、更新用データ送信部134により、S21で読み出した更新用データを、図8のS2で特定した更新対象のクライアント基板に対して送信する(S25)。
【0091】
その後、ホスト基板は、更新対象のクライアント基板においてプログラムなどの更新処理が完了したか否かを判定する(S26)。なお、ホスト基板は、装置内ネットワークを介して、クライアント基板から、更新部144による更新処理が完了したことを特定可能な情報を受信したか否かに基づき、S26の判定を実行する。その後、ホスト基板は、本ルーチンを終了する。
【0092】
以上、説明した本実施の形態の医療用診療装置10は、主に以下の構成を備えている。
本実施の形態の医療用診療装置10は、複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置であって、機能を発揮するための少なくとも1つのクライアント基板と、機能を発揮するためのプログラムなどを更新用データに基づき更新する更新処理を、各基板に実行させるホスト基板とを備え、ホスト基板は、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板の更新用データを包括した包括更新用データを取得する包括更新用データ取得部131と、医療用診療装置10に取り付けられているクライアント基板を特定する構成基板特定部133と、包括更新用データ取得部131で取得した包括更新用データの中から構成基板特定部133で特定したクライアント基板に対応する更新用データを特定する更新用データ特定部132と、構成基板特定部133で特定したクライアント基板のプログラムなどの情報を特定可能なファームウェア情報と、更新用データ特定部132で特定した更新用データとに基づき、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する更新有無判定部136と、更新有無判定部136により更新処理を実行する必要があると判定したときに、構成基板特定部133で特定したクライアント基板に対して、少なくとも更新用データ特定部132で特定した更新用データを送信する更新用データ送信部134とを含み、クライアント基板は、更新用データ送信部134から送信された更新用データに基づき更新処理を実行する更新部144を含む。
【0093】
これにより、各構成基板のプログラムなどに何らかの不具合が生じて更新処理を実行しなければならない場合であっても、各構成基板に対応する更新用データを個別に準備する必要もないし、全ての構成基板に対して個別に順番に更新処理を実行する必要もない。さらに、取り付けられている基板の特定や基板に合った更新用データの選択を誤ってしまうこともないため、正常に各種機能を発揮することができる。このように、複数の機能を選択して組み合わせた場合であっても、誤ることなく一括して容易にプログラムなどを更新することができる。
【0094】
ホスト基板は、医療用診療装置10に取り付けられている基板のうちのC基板が担っている。すなわち、図5に示すように、更新制御を実行するための包括更新用データ取得部131、構成基板特定部133、更新用データ特定部132、更新有無判定部136、および更新用データ送信部134など各部は、ホスト基板自身の機能を発揮するための機能部139と同じ基板上に設けられている。
【0095】
これにより、更新制御を実行するための基板と、機能を発揮するための基板とを共通化することができるため、更新制御を実行するための基板と機能を発揮するための基板とを別の基板に分けた場合よりも、省スペースで基板設計することができる。
【0096】
包括更新用データには、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板で選択可能な副機能に対応する全ての更新用データが格納されている。
【0097】
これにより、診療器具駆動部14であるD基板のように、選択可能な複数の副機能を有し、副機能が選択された後においては、更新処理を実行したことを条件に副機能を発揮可能となるものであっても、1つの包括更新用データを取得することにより、誤ることなく容易に更新処理を実行することができる。
【0098】
包括更新用データには、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板の仕様に対応する全ての更新用データが格納されている。
【0099】
さらに、ホスト基板のメモリ内の構成メンバーテーブルには、構成基板の仕様を特定可能なシリアル情報が格納されており、ホスト基板は、構成メンバーテーブルに格納されたシリアル情報と、包括更新用データのヘッダ部に格納されたシリアル情報とに基づき、包括更新用データのデータ部に格納された更新用データの中から構成基板の仕様に対応する更新用データを特定する。
【0100】
これにより、同じ機能を発揮する複数の仕様が存在するものであっても、1つの包括更新用データを取得することにより、誤ることなく包括更新用データの中から構成基板の仕様に対応する更新用データを特定することができ、容易に更新処理を実行することができる。
【0101】
たとえば、図12は、プログラムなどの更新例を説明するための図である。図12の(a)に示す更新例1のように、ベースン制御部16であるF基板に接続される管路の仕様が管路仕様aから管路仕様bに変更になった場合、F基板のメモリに記憶された管路仕様aに対応するプログラムなどを、変更後の管路仕様bに対応するプログラムなどに更新しなければならない。ここで、管路仕様aおよび管路仕様bの各々に対応する更新用データを個別に準備したり、管路仕様の変更に応じて個別に更新処理を実行するものであれば、更新用データの選択を誤ってしまった場合、たとえば、水漏れなどの異常が発生してしまう虞がある。
【0102】
しかし、上記のように、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板の仕様に対応する全ての更新用データが格納された包括更新用データを用い、かつシリアル情報に基づき構成基板の仕様に対応する更新用データを特定すれば、誤ることなく容易に更新処理を実行することができる。
【0103】
また、基板の中には、他の基板と関連する機能を発揮する基板があり、他の基板で更新処理を実行したことを条件に機能を発揮可能となるものがある。
【0104】
たとえば、図12の(b)に示す更新例2のように、診療器具4を新たに追加した場合、診療器具駆動部14であるD基板のメモリに記憶されたプログラムなどを更新しなければ、追加した診療器具4を駆動させることができない。また、D基板に限らず、パネル制御部13であるC基板においても、メモリに記憶されたプログラムなどを更新しなければ、追加した診療器具4を駆動させるためのスイッチ画像を表示することができず、診療器具4を駆動させるための操作を受け付けることができない。すなわち、診療器具4を新たに追加した場合、D基板およびC基板の両方において、更新処理を実行しなければならない。さらに、C基板は、追加した診療器具4をD基板が認識したことを条件に更新処理が実行可能である。すなわち、C基板は、D基板で更新処理を実行したことを条件にパネル制御機能を発揮可能である。ここで、C基板およびD基板の各々に対応する更新用データを個別に準備したり、C基板およびD基板の各々に対して個別に更新処理を実行するものであれば、更新用データの選択を誤ってしまったり、先にD基板の更新処理を実行しなければならないところ、先にC基板の更新処理を試みてしまったりして、機能を発揮できずに診療自体を中断せざる得ない虞がある。
【0105】
しかし、本実施の形態の医療用診療装置10においては、1つの包括更新用データを用いて構成基板の全てに対して更新処理を実行できるため、誤ることなく容易にプログラムなどを更新することができる。
【0106】
図11のS22に示すチェックサム照合において、ホスト基板は、更新用データ送信部134によって、クライアント基板に対して、更新用データを送信する前に、更新用データ特定部132で特定した更新用データの正当性を判定する。
【0107】
これにより、送信時において、更新用データの誤りを検出することができ、異常が生じた更新用データがクライアント基板に送信されてしまうことを防ぎ、その結果、クライアント基板において異常が生じた更新用データに基づき更新処理が実行されてしまうことを防ぐことができる。
【0108】
[変形例]
本発明は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。
【0109】
本実施の形態において、ホスト基板は、医療用診療装置10に取り付けられている基板のうちのC基板が担っていたが、その他の基板が担っていてもよい。また、医療用診療装置10において、1つのホスト基板を設けるものに限らず、複数のホスト基板が設けられるものであってもよい。さらに、所定の条件に基づき各基板がグループ分けされるとともに、各グループ内で1つのホスト基板が設けられ、グループごとに更新制御が実行されてもよい。たとえば、A基板〜W基板のうち、C基板およびP基板がホスト基板であってもよい。さらに、C基板は、A基板〜L基板に対して更新制御を実行し、P基板は、M基板〜W基板に対して更新制御を実行するものであってもよい。
【0110】
また、ホスト基板は、医療用診療装置10に取り付けられた機能を発揮するための基板とは別の基板(たとえば、更新制御を実行するための専用基板)が担っていてもよい。すなわち、更新制御を実行するための基板と、機能を発揮するための基板とは別の基板であってもよい。このようにすれば、更新制御を実行するための基板が故障しても、機能を発揮するための基板まで取り外す必要がないし、機能を発揮するための基板が故障しても、更新制御を実行するための基板まで取り外す必要がない。
【0111】
本実施の形態において、ホスト基板の更新用データ送信部134は、構成基板特定部133で特定したクライアント基板に対して、更新用データ特定部132で特定した更新用データを送信するものであった。しかし、これに限らず、更新用データ送信部134は、構成基板特定部133で特定したクライアント基板に対して、包括更新用データをそのまま送信するものであってもよい。すなわち、ホスト基板は、医療用診療装置10に取り付けられたクライアント基板を特定し、特定したクライアント基板に対して、外部から取得した包括更新用データをそのまま送信するものであってもよい。そして、クライアント基板は、取得した包括更新用データの中から、メモリに記憶されたプログラムなどを更新するための更新用データを自ら特定し、特定した更新用データに基づき更新処理を実行するものであってもよい。
【0112】
図5に示すように、本実施の形態において、更新有無判定部136は、ホスト基板のみが備えていたが、これに限らない。たとえば、クライアント基板のみが更新有無判定部を備えていてもよい。この場合、クライアント基板は、ホスト基板の更新用データ送信部134から更新用データ特定部132で特定された更新用データ、あるいは包括更新用データをそのまま送信してもらい、受信した更新用データ、あるいは包括更新用データに基づき、更新処理を実行する必要があるか否かを判定するものであってもよい。つまり、医療用診療装置10は、複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置であって、機能を発揮するための少なくとも1つのクライアント基板と、機能を発揮するためのプログラムなどを更新用データに基づき更新する更新処理を、各基板に実行させるホスト基板とを備え、ホスト基板は、医療用診療装置10に取り付け可能な全ての基板の更新用データを包括した包括更新用データを取得する包括更新用データ取得部131と、医療用診療装置10に取り付けられているクライアント基板を特定する構成基板特定部133と、包括更新用データ取得部131で取得した包括更新用データの中から構成基板特定部133で特定したクライアント基板に対応する更新用データを特定する更新用データ特定部132と、構成基板特定部133で特定したクライアント基板に対して、少なくとも更新用データ特定部132で特定した更新用データを送信する更新用データ送信部134とを含み、クライアント基板は、ファームウェア情報記憶部142に記憶されたプログラムなどの情報を特定可能なファームウェア情報と、ホスト基板の更新用データ送信部134から送信された更新用データとに基づき、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する更新有無判定部と、更新有無判定部により更新処理を実行する必要があると判定したときに、更新用データ送信部134から送信された更新用データに基づき更新処理を実行する更新部144を含む。
【0113】
このような医療用診療装置10においても、各構成基板のプログラムなどに何らかの不具合が生じて更新処理を実行しなければならない場合であっても、各構成基板に対応する更新用データを個別に準備する必要もないし、全ての構成基板に対して個別に順番に更新処理を実行する必要もない。さらに、取り付けられている基板の特定や基板に合った更新用データの選択を誤ってしまうこともないため、正常に各種機能を発揮することができる。このように、複数の機能を選択して組み合わせた場合であっても、誤ることなく一括して容易にプログラムなどを更新することができる。
【0114】
なお、ホスト基板およびクライアント基板の両方が更新有無判定部を備えるものであってもよい。また、クライアント基板のみが更新有無判定部を備える場合、ホスト基板およびクライアント基板の両方が更新有無判定部を備える場合であっても、図1図12を用いて説明した医療用診療装置10が有する構成を適用することができる。
【0115】
本実施の形態において、ホスト基板は、構成基板のメモリに記憶されたプログラムなどを最新のプログラムなどに更新させる更新制御を実行するものであったが、これに限らない。たとえば、作業者による外部からの操作に基づき、クライアント基板のメモリに記憶されたプログラムなどを強制的に古い状態のプログラムなど(たとえば、1つ前のバージョンのプログラムなど)に書き換えるものであってもよい。この場合、包括更新用データの中には、最新のプログラムなどに更新する更新用データと、前のバージョンのプログラムなどに書き換える更新用データとが含まれてもよい。さらに、図10のS14および図11のS24の処理は省略してもよい。
【0116】
本実施の形態において、ホスト基板は、構成メンバーテーブルに格納されたシリアル情報と、包括更新用データのヘッダ部に格納されたシリアル情報とに基づき、包括更新用データのデータ部に格納された更新用データの中から構成基板の仕様に対応する更新用データを特定するものであったが、これに限らない。たとえば、構成メンバーテーブル内において、医療用診療装置10に取り付けられている構成基板のシグネチャに加えて構成基板の仕様を特定可能な情報が格納されていてもよい。
【0117】
本実施の形態において、ホスト基板は、ファームウェア情報取得部135によって、クライアント基板のファームウェア情報記憶部142に記憶されたファームウェア情報を取得するものであったが。これに限らない。たとえば、ホスト基板が有するファームウェア情報記憶部137において、医療用診療装置10に取り付けられている各構成基板のファームウェア情報が予め記憶され、ファームウェア情報取得部135は、ファームウェア情報記憶部137から各構成基板のファームウェア情報を取得してもよい。
【0118】
本実施の形態においては、病院などに設置される医療用診療装置について例示したが、このような備え付けの医療用診療装置に限らず、持ち運び可能な携帯型の医療用診療装置に対しても本発明を適用することもできる。すなわち、複数の機能を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置であれば、いずれの医療用診療装置に対しても本発明を適用することができる。
【0119】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
1 診療椅子、2 ベースンユニット、3 トレーテーブル、4 診療器具、5 フートコントローラ、9 制御装置、10 医療用診療装置、11 シート駆動部、12 操作部、13 パネル制御部、14 診療器具駆動部、15 モニタ制御部、16 ベースン制御部、17 照明制御部、131 包括更新用データ取得部、132 更新用データ特定部、133 構成基板特定部、134 更新用データ送信部、136 更新有無判定部、142 ファームウェア情報記憶部、144 更新部、145 機能部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12