特許第6244089号(P6244089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244089
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B23Q3/06 304F
   B23Q3/06 301D
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-263138(P2012-263138)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108470(P2014-108470A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年9月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】米澤 慶多朗
(72)【発明者】
【氏名】吉村 画
(72)【発明者】
【氏名】梶 健太
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−160442(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/130854(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02025444(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から先端側へ直列状に配置される第1ハウジング(1)及び第2ハウジング(2)と、
前記第1ハウジング(1)に軸心方向へ移動可能に挿入されたピストン(12)
前記第2ハウジング(2)に軸心方向へ移動可能に挿入されたクランプロッド(15)であって、前記ピストン(12)の軸心(C1)に対して半径方向へ離れた軸心(C2)を有するクランプロッド(15)と、
そのクランプロッド(15)の入力部(15a)と前記ピストン(12)の出力部(55)とを連結するように当該出力部(55)に半径方向へ係合および係合解除可能に係合される連結部材(56)であって、前記ピストン(12)と共に前記ピストン(12)の軸心方向へ移動可能となるように前記第2ハウジング(2)内に挿入される連結部材(56)と、
被固定物(W)の穴(18)に挿入されて当該穴(18)の内周面に密着するように前記クランプロッド(15)の外周側に配置されたグリッパー(20)と、当該グリッパー(20)を先端方向へ押すように前記第2ハウジング(2)に設けた支持筒(21)であって、前記連結部材(56)が挿入される筒孔を有する支持筒(21)と、その支持筒(21)を先端方向へ付勢するバネ(47)と、そのバネ(47)を収容するように前記第1ハウジング(1)に設けたバネ室(46)と、を備える、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
直列状に配置される第1ハウジング(1)及び第2ハウジング(2)と、
前記第1ハウジング(1)に軸心方向へ移動可能に挿入されたピストン(12)と、
前記第2ハウジング(2)に軸心方向へ移動可能に挿入されたクランプロッド(15)であって、前記ピストン(12)の軸心(C1)に対して半径方向へ離れた軸心(C2)を有するクランプロッド(15)と、
そのクランプロッド(15)の入力部(15a)と前記ピストン(12)の出力部(55)とを連結するように前記第2ハウジング(2)に挿入された連結部材(56)であって、前記出力部(55)に半径方向へ係合する係合状態(X)で使用される連結部材(56)とを備え、
前記連結部材(56)は、前記出力部(55)との係合が解除される係合解除状態(Y)から前記係合状態(X)となるように前記出力部(55)と組み立てられ、
前記の係合状態(X)の前記出力部(55)と前記第2ハウジング(2)の内側面(2b)との間に、前記係合解除状態(Y)で前記出力部(55)が前記の内側面(2b)に干渉するのを防止するための隙間(G)を形成した、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項2のクランプ装置において、
前記隙間(G)は、前記出力部(55)を挟んで連結部材(56)とは反対側に形成される、クランプ装置。
【請求項4】
請求項2又は3のクランプ装置において、
被固定物(W)の穴(18)に挿入されて当該穴(18)の内周面に密着するように前記クランプロッド(15)の外周側に配置されたグリッパー(20)と、当該グリッパー(20)を先端方向へ押すように前記第2ハウジング(2)に設けた支持筒(21)であって、前記連結部材(56)が挿入される筒孔を有する支持筒(21)と、その支持筒(21)を先端方向へ付勢するバネ(47)と、そのバネ(47)を収容するように前記第1ハウジング(1)に設けたバネ室(46)と、を備えるクランプ装置。
【請求項5】
請求項4のクランプ装置において、
前記ピストン(12)の前記出力部(55)に、前記の連結部材(56)に設けた凹部(56a)に対して前記の半径方向へ相対的に係合可能な凸部(55a)を設けた、クランプ装置。
【請求項6】
請求項5のクランプ装置において、
前記ピストン(12)のピストン本体(54)から先端方向へ突出させたピストンロッド(58)の外周面に軸心方向へ延びる溝(57)を形成することにより、前記出力部(55)に前記凸部(55a)を形成した、クランプ装置。
【請求項7】
請求項6のクランプ装置において、
前記溝(57)が前記バネ室(46)の一部を構成している、クランプ装置。
【請求項8】
請求項1のクランプ装置において、
前記ピストン(12)の前記出力部(55)に、前記の連結部材(56)に設けた凹部(56a)に対して前記の半径方向へ相対的に係合可能な凸部(55a)を設けた、クランプ装置。
【請求項9】
請求項8のクランプ装置において、
前記ピストン(12)のピストン本体(54)から先端方向へ突出させたピストンロッド(58)の外周面に軸心方向へ延びる溝(57)を形成することにより、前記出力部(55)に前記凸部(55a)を形成した、クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークや金型等の被固定物を固定側部材に固定するクランプ装置に関し、より詳しく言えば、クランプ装置と被固定物との干渉を回避するために、そのクランプ装置の流体圧シリンダの軸心からクランプロッドの軸心をオフセットさせた技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置として、特許文献1(日本国:特開2009-279745号公報(2009年12月3日公開))に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
下部本体部材(第1ハウジング)と上部本体部材(第2ハウジング)とが上下方向へ直列状に配置される。下部本体部材には、クランプ用油圧シリンダのピストン部材が上下方向へ移動可能に挿入される。上部本体部材には、クランプロッドが上下方向へ移動可能に挿入される。そのクランプロッドは、上記ピストン部材に対して水平方向へ所定の間隔をあけて配置される。
【0004】
上記ピストン部材を上記クランプロッドと連結するためのL形連結部材が設けられている。そのL形連結部材は、上記ピストン部材にボルトで固定された第1縦軸部と、その第1縦軸部の上端部から水平に延びる水平軸部と、その水平軸部の端部から上方へ延びる第2縦軸部とを有する。その第2縦軸部は、上記クランプロッドの軸心と共通の軸心を有し、当該第2縦軸部の上端部分に形成されたT溝に上記クランプロッドのT脚が係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-279745号公報(2009年12月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成によれば、クランプロッドとピストン部材とを連結するL形連結部材は、第1縦軸部と水平軸部と第2縦軸部と含むので形状が複雑であると共に高い寸法精度が要求される。このため、L形連結部材の加工が困難であり、クランプ装置の製作コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、加工が容易で製作コストを低減することができるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1発明に係るクランプ装置は、例えば、図1図3に示すように、次のように構成される。
即ち、基端側から先端側へ直列状に配置される第1ハウジング1及び第2ハウジング2と、前記第1ハウジング1に軸心方向へ移動可能に挿入されたピストン12、前記第2ハウジング2に軸心方向へ移動可能に挿入されたクランプロッド15とを備える。そのクランプロッド15は、前記ピストン12の軸心C1に対して半径方向へ離れた軸心C2を有する。そのクランプロッド15の入力部15aと前記ピストン12の出力部55とを連結する連結部材56は、前記出力部55に半径方向へ係合および係合解除可能に係合されると共に、前記ピストン12と共に前記ピストン12の軸心方向へ移動可能となるように前記第2ハウジング2内に挿入される。
上記構成により、第1発明は、前述した従来構造のL形連結部材とは異なり、単純な形状の連結構造を提供できる。その結果、クランプ装置は、加工が容易で製作コストを低減できる。被固定物Wの穴18に挿入されるグリッパー20は、当該穴18の内周面に密着するように前記クランプロッド15の外周側に配置される。当該グリッパー20を先端方向へ押すように前記第2ハウジング2に設けた支持筒21は、前記連結部材56が挿入される筒孔を有する。その支持筒21を先端方向へ付勢するバネ47が設けられる。そのバネ47を収容するバネ室46が前記第1ハウジング1に設けられる。
【0009】
また、前記の目的を達成するために、第2発明に係るクランプ装置は、例えば、図1図3に示すように、次のように構成される。
即ち、直列状に配置される第1ハウジング1及び第2ハウジング2と、前記第1ハウジング1に軸心方向へ移動可能に挿入されたピストン12と、前記第2ハウジング2に軸心方向へ移動可能に挿入されたクランプロッド15とを備える。そのクランプロッド15は、前記ピストン12の軸心C1に対して半径方向へ離れた軸心C2を有する。上記クランプロッド15の入力部15aと前記ピストン12の出力部55とを連結するように、前記第2ハウジング2に連結部材56が挿入される。その連結部材56は、前記出力部55に半径方向へ係合する係合状態Xで使用される。そして、前記連結部材56は、前記出力部55との係合が解除される係合解除状態Yから前記係合状態Xとなるように前記出力部55と組み立てられる。そして、前記の係合状態Xの前記出力部55と前記第2ハウジング2の内側面2bとの間に、前記係合解除状態Yで前記出力部55が前記の内側面2bに干渉するのを防止するための隙間Gを形成した。
【0010】
上記特徴により、第2発明は次の作用効果を奏する。
【0011】
係合解除状態で出力部が第2ハウジングの内側面に干渉するのを防止するように形成した前記隙間を利用することにより、前記出力部と前記連結部材との両者を組み立てる時に、上記両者を円滑に係合させて、ピストンとクランプロッドとを連結することができる。従って、第2発明は、前述した従来構造のL形連結部材とは異なり、単純な形状の連結構造を提供できる。その結果、クランプ装置は、加工が容易で製作コストを低減できる。
【0012】
上記の第2発明に係るクランプ装置では、前記隙間Gは、前記出力部55を挟んで連結部材56とは反対側に形成されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第2ハウジングに組み込んだ連結部材を、出力部を挟んで前記隙間と反対側から出力部に向かって移動させることにより、連結部材を出力部に係合させて組み立てることができる。
【0014】
上記の第1と第2の各発明に係るクランプ装置では、被固定物Wの穴18に挿入されて当該穴18の内周面に密着するように前記クランプロッド15の外周側に配置されたグリッパー20と、当該グリッパー20を先端方向へ押すように前記第2ハウジング2に設けた支持筒21であって、前記連結部材56が挿入される筒孔を有する支持筒21と、その支持筒21を先端方向へ付勢するバネ47と、そのバネ47を収容するように前記第1ハウジング1に設けたバネ室46と、を備えることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、被固定物の穴にグリッパーを密着させて当該被固定物を第2ハウジングに固定するための構成が簡素且つコンパクトになる。
【0016】
上記の各発明に係るクランプ装置では、前記ピストン12の前記出力部55に、前記の連結部材56に設けた凹部56aに対して前記の半径方向へ相対的に係合可能な凸部55aを設けることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、連結部材とピストンの出力部とを係合する構成が簡素かつコンパクトになる。
【0018】
上記の各発明に係るクランプ装置では、前記ピストン12のピストン本体54から先端方向へ突出させたピストンロッド58の外周面に軸心方向へ延びる溝57を形成することにより、前記出力部55に前記凸部55aを形成することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、ピストンロッドの構成が簡素かつコンパクトになる。
【0020】
上記の各発明に係るクランプ装置では、前記溝57が前記バネ室46の一部を構成していることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、溝の一部をバネ室として利用することができるので、クランプ装置の横幅をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るクランプ装置の立面図である。
図2図2Aは、図1中の2A−2A線の矢視断面図である。図2Bは、図1中の2B−2B線の矢視断面図である。
図3図3は、上記クランプ装置の組み立て方法を説明するための立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
図1図3は、本発明の一実施形態のクランプ装置を示している。まず、図1図2Bにより、クランプ装置の構成を説明する。
【0025】
(クランプ装置の構成)
工作機械のベースプレートPに、クランプ装置のハウジングHが固定される。そのハウジングHは、第1ハウジングとしての下ハウジング1と、第2ハウジングとしての上ハウジング2とを備える。下ハウジング1と上ハウジング2とは、複数の連結ボルト(図示せず)によって、上下方向へ直列状に固定される。また、下ハウジング1と上ハウジング2とに上下方向に挿通させた複数の締付けボルト(図示せず)によって、上記ハウジングHがベースプレートPに固定される。
【0026】
上記の下ハウジング1内に、油圧シリンダ10が配置される。その油圧シリンダ10は、下ハウジング1の下面から上向きに形成された貫通孔11と、その貫通孔11に挿入されたピストン12とを備える。
【0027】
上ハウジング2の上部内には、後述するように、クランプロッド15が上下方向(軸心方向)へ移動可能且つ水平方向(半径方向)へ移動可能に配置される。なお、本実施形態においては、クランプロッド15は、ピストン12で上方(先端方向)へ移動されることによってリリース駆動され、上記ピストン12で下方(基端方向)へ移動されることによってロック駆動される。図1は、クランプロッド15が上方に移動したリリース状態を示している。
【0028】
上記ピストン12の軸心C1に対して、上記クランプロッド15の軸心C2が、左横方向(半径方向)へ所定の間隔を空けて平行に配置されている。
【0029】
上記クランプロッド15の上部の外周には、被固定物としてのワークWの穴18に挿入される複数のグリッパー20と、支持筒21とが、上下に配置される。上記グリッパー20の外周側で上ハウジング2の上面には、ワークWの下面を受け止める着座面23が環状に形成される。なお、上記グリッパー20は、穴18の内周面を内張りするための把持部材として機能する。
【0030】
この実施形態では、上記グリッパー20は、周方向へ所定の間隔をあけて4つ配置される。各グリッパー20は、上部に設けた薄肉の密着部26と途中高さに設けた胴部27と下フランジ28とを備える。上記密着部26の外周には、鋸刃状の突起29が上下方向へ複数形成される。また、各密着部26の内周には、下方へ向かうにつれてクランプロッド15の軸心C2に近づくように傾斜面30が形成される。
【0031】
上記傾斜面30に上側から係合する楔面(楔部)32がクランプロッド15の上部に形成される。その楔面32は、上記傾斜面30に対応して、4つ設けられる。この実施形態では、上記の楔面32と傾斜面30とが平面によって構成されている。
【0032】
上記4つのグリッパー20の胴部27には、ゴム等の弾性体からなる薄肉のリング34が装着される。そのリング34の弾性力がグリッパー20を半径方向の内方へ付勢している。
【0033】
また、上ハウジング2の上孔2aの周壁にはダストシール36が装着される。そのダストシール36の弾性力が、上記クランプロッド15及びグリッパー20を、クランプロッド15の軸心C2へ向けて半径方向の内方へ付勢している。
【0034】
前記の支持筒21は、上記4つのグリッパー20を下方から受け止める上壁40と、その上壁40の外周部から下方へ突出させた環状壁41とを備える。この上壁40と環状壁41の内周面とにより、支持筒21の筒孔が形成される。上記支持筒21が上ハウジング2に設けた収容孔44に上下移動可能に挿入される。また、支持筒21の下側で第1ハウジング1に配置したバネ室46には、支持筒21を先端方向へ付勢するため、圧縮コイルバネからなる進出バネ47が装着されている。この進出バネ47の上には、円板状のバネ受け48が設けられている。当該バネ受け48は、支持筒21の環状壁41の下端を支持している。
【0035】
この進出バネ47が、バネ受け48及び支持筒21を介してグリッパー20を上方へ付勢している。即ち、この実施形態では、上記進出バネ47とバネ受け48と支持筒21とが、グリッパー20を所定の力で押し上げる支持機構を構成している。
【0036】
なお、上記バネ室46の上端部に、平面視でC字状の止め輪50が装着される。その止め輪50は、後述するクランプ装置の組み立て時に、下ハウジング1内に上記の進出バネ47等を仮組みするための部材である。
【0037】
前記貫通孔11は、上向きに順に形成された大径のシリンダ孔51と小径孔52a・52b・52cとを備える。
【0038】
前記ピストン12は、シリンダ孔51に保密状に挿入されたピストン本体54と、そのピストン本体54から上方へ突出させたピストンロッド58とを備える。そのピストンロッド58の上部に出力部55が設けられる。また、ピストンロッド58の外周面に軸心方向へ延びる溝57が形成される(図2B参照)。この溝57は、前記のバネ室46の一部を構成している。
【0039】
支持筒21の前記筒孔の内部には、クランプロッド15と連結する連結部材56が挿入される。連結部材56は、上記クランプロッド15と同軸上に配置される。当該連結部材56の上端部分にはT溝56bが形成され、このT溝56bに、上記クランプロッド15の下端に設けたT脚(入力部)15aが係合されている。
【0040】
連結部材56の下部には、ピストンロッド58の上端の出力部55と対面する凹部56aが形成されている(図2A参照)。出力部55の上端には、当該凹部56aに対して水平方向へ相対的に係合可能な凸部55aが形成されている。その凸部55aは、ピストンロッド58の外周面に上下方向へ延びる溝57を形成することにより、出力部55の上端に設けられる。この凸部55aが凹部56aに水平方向へ相対的に係合することにより、クランプロッド15がピストン12と連結される。
【0041】
出力部55の右側面と上ハウジング2の内側面2bとの間に、当該出力部55と連結部材56とを組み立てるための隙間Gが形成される。連結部材56は、出力部55に半径方向へ係合する係合状態X(図1参照)で使用される。前記連結部材56は、前記出力部55との係合が解除される係合解除状態Y(図3参照)から前記係合状態Xとなるように前記出力部55と組み立てられる。前記の係合状態Xの前記出力部55と前記上ハウジング2の内側面2bとの間に、前記係合解除状態Yで前記出力部55が前記内側面2bに干渉するのを防止するための隙間Gが形成される。この隙間Gは、出力部55を挟んで連結部材56とは反対側に形成される。
【0042】
上記ピストン本体54の上側にロック室62が形成されると共に、当該ピストン本体54の下側にリリース室63が形成される。上記ロック室62が、下ハウジング1内のロック用の給排路65へ連通される。また、上記リリース室63がリリース用の給排口67へ連通される。
【0043】
また、上ハウジング2の上部に形成した前記の着座面23に、着座用の検出孔70が開口される。その検出孔70は、エア供給路71を経て異常検出用の加圧エアの供給口(図示せず)へ連通される。
【0044】
さらに、エアブロー用の通路73が、前記バネ室46の下側で前記貫通孔11の上部に開口される。上記の通路73へ供給されたエアブロー用の加圧エアは、バネ室46と、連結部材56の外周面に形成した縦溝(図示せず)と、隣り合うグリッパー20同士の間の隙間などを通って、ハウジングHの外側へ排出される。
【0045】
上記構成のクランプ装置に動作異常(クランプ不良)の検出機構が設けられる。前記貫通孔11の小径孔52a・52b・52cと前記ピストンロッド58との間に環状空間が形成され、その環状空間によって弁機構の弁室77が構成される。その弁室77に、筒状の弁部材78が、内封止部材79及び外封止部材80を介して保密状に挿入される。その弁部材78の外径寸法は、前記ピストン本体54の外径寸法よりも小さい値に設定されている。
【0046】
上記の小径孔52bの周壁に弁機構の入口86が開口される。その入口86は、入口路87を経て前記エア供給路71に連通される。また、弁機構の出口91が、小径孔52cの周壁に形成される。その出口91は、ハウジングHの外側へ連通される。なお、参照符号88は、上記弁機構の弁座を示している。
【0047】
(クランプ装置の組み立て方法)
上記構成のクランプ装置は、図3に示すように、以下の手順で組み立てられる。
【0048】
まず、下記の手順で下ハウジング1を組み立てる。即ち、下ハウジング1に、弁部材78とピストン12とを下側から装着する。そして、この下ハウジング1に、進出バネ47とバネ受け48とを上側から装着し、当該バネ受け48を止め輪50によって受け止める。
【0049】
次に、下記の手順でクランプロッド15等のサブアセンブリを組み立てる。即ち、連結部材56の上部のT溝56bに、クランプロッド15の下端のT脚15aを水平方向に嵌合させる。上記連結部材56及びクランプロッド15に支持筒21及び4つのグリッパー20を上側から挿入する。その後、4つのグリッパー20の外周にリング34を外嵌めして、上記サブアセンブリを完成する。そして、上ハウジング2に上記サブアセンブリを下側から挿入する。
【0050】
次に、図3に示すように、下ハウジング1の上側に上ハウジング2を配置し、支持筒21及びグリッパー20に対してクランプロッド15及び連結部材56を押し下げる。これにより、4つのグリッパー20は、拡径して半径方向の外方へ移動する。
【0051】
その後、下ハウジング1に対して上ハウジング2を右方へ移動させ、ピストンロッド58の出力部55の凸部55aに連結部材56の凹部56aを係合させる。すると、図1に示すように、ピストンロッド58の右側面と上ハウジング2の内側面2bとの間に隙間Gが形成される。引き続いて、下ハウジング1と上ハウジング2とが複数の連結ボルト(図示せず)によって固定される。
【0052】
このように、連結部材56は、出力部55との係合が解除される係合解除状態Y(図3参照)から係合状態X(図1参照)となるように出力部55と組み立てられる。そして、当該係合解除状態Y(図3参照)において出力部55が第2ハウジング2の内側面2bに干渉するのを防止するための隙間G(図1参照)が、前記の係合状態Xの前記出力部55と前記の内側面2bとの間に形成されている。
【0053】
(クランプ装置の動作)
上記構成のクランプ装置は、図1に示すように、以下のように動作する。
【0054】
図1のリリース状態では、前記ロック室62の圧油を排出するとともに、リリース室63に圧油を供給している。これにより、前記ピストン12と連結部材56及びクランプロッド15が上昇し、前記の支持筒21と4つのグリッパー20が進出バネ47によって上昇位置に保持され、上記グリッパー20がリング34の弾性力によって縮径状態に切り換えられている。
【0055】
また、グリッパー20及びクランプロッド15がダストシール36の弾性力によって連結部材56の軸心と同軸上に位置されている。
【0056】
さらに、弁機構の弁部材78は、ピストン本体54によって上昇され、弁座88を閉じている。そのピストン本体54の上端面の外周部とロック室62の上壁との間には、接当隙間が形成されている。
【0057】
上記リリース状態で、ワークWを、何らかの昇降手段または自重によって下降させ、そのワークWの穴18にグリッパー20を挿入させていく。すると、上記ワークWの下面が、上ハウジング2の着座面23に受け止められると共に着座用の検出孔70を閉じる。
【0058】
クランプ装置を上記図1のリリース状態からロック状態へ切り換えるときには、リリース室63の圧油を排出するとともに、ロック室62に圧油を供給する。
【0059】
すると、進出バネ47の付勢力によって上昇位置に保持された支持筒21及びグリッパー20に対して、ピストン12と連結部材56及びクランプロッド15が下降していく。
【0060】
これにより、クランプロッド15の楔面32によってグリッパー20が拡径され(半径方向の外方へ移動され)、当該グリッパー20がワークWの穴18の内周面に係合する。引き続いて、クランプロッド15の下降力により、穴18の内周面に食い込んで密着した状態の上記グリッパー20が上記の穴18を介してワークWを下向きに引っ張り、これと同時に、グリッパー20及び支持筒21が進出バネ47の付勢力に抗して下降する。これにより、ワークWが上記の着座面23に強力に押圧される。
【0061】
このロック状態では、前記弁機構の弁部材78は、ロック室62の圧力によって上昇され、弁座88を閉じており、着座用の検出孔70もワークWの下面によって閉じられている。従って、上記ロック状態では、エア供給路71に供給された異常検出用の加圧エアの圧力が上昇するので、クランプ装置の動作が正常であることを確認できる。
【0062】
なお、クランプ装置を上記ロック状態から図1のリリース状態へ切り換えるときには、ロック室62の圧油を排出すると共にリリース室63へ圧油を供給すればよい。これにより、クランプ装置は、上述したロック動作とはほぼ逆の手順でリリース状態へ切り換えられる。
【0063】
(効果)
上記の実施形態は次の効果を奏する。
【0064】
係合解除状態Yで出力部55が第2ハウジング2の内側面2bに干渉するのを防止するように形成した前記隙間Gを利用することにより、前記出力部55と前記連結部材56との両者を組み立てる時に、上記両者を円滑に係合させて、ピストン12とクランプロッド15とを連結することができる。従って、本発明は、前述した従来構造のL形連結部材とは異なり、単純な形状の連結構造を提供できる。その結果、クランプ装置は、加工が容易で製作コストを低減できる。
【0065】
また、第2ハウジング2に組み込んだ連結部材56を、出力部55を挟んで隙間Gと反対側から出力部55に向かって移動させることにより、連結部材56を出力部55に係合させて組み立てることができる。さらに、ワークWの穴18にグリッパー20を密着させて当該ワークWを第2ハウジング2に固定するための構成が簡素且つコンパクトになる。
【0066】
そして、凹部56aに対応する凸部55aを設けることにより、連結部材56とピストン12の出力部55とを係合する構成が簡素かつコンパクトになる。また、ピストンロッド58の外周面に溝57を形成することにより凸部55aを形成するので、ピストンロッド58の構成が簡素かつコンパクトになる。さらに、溝57の一部をバネ室46として利用することができるので、クランプ装置の横幅をコンパクトにすることができる。
【0067】
(実施形態の変更例)
上記の実施形態は、次のように変更可能である。
【0068】
グリッパー20及び楔面32は、周方向へ所定の間隔を空けて4つ配置する例を示したが、2つ若しくは3つ又は5つ以上配置してもよい。
【0069】
クランプ装置の配置姿勢は、図示の姿勢とは、上下逆にしたり、横向きにしたり、斜め向きにしてもよい。
【0070】
また、クランプ装置に使用する圧力流体は、例示した圧油に代えて、他の液体でもよく、圧縮空気等の気体でもよい。
【0071】
本発明が適用される被固定物は、例示したワークWに代えてワークパレットや金型などであってもよい。
【0072】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 第1ハウジング
2 第2ハウジング
2b 内側面
12 ピストン
15 クランプロッド
15a T脚(入力部)
18 穴
20 グリッパー
21 支持筒
46 バネ室
47 バネ
54 ピストン本体
55 出力部
55a 凸部
56 連結部材
56a 凹部
57 溝
58 ピストンロッド
C1、C2 軸心
W ワーク(被固定物)
G 隙間
X 係合状態
Y 係合解除状態
図1
図2
図3