【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 安立計器株式会社のウエブサイト(アドレスhttp://www.anritsu−meter.co.jp/sensor/mg/table mg.htm)に公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測温体の温度を測定する測温部と、被測温体と前記測温部との間に設けられ、被測温体に押圧されて被測温体から伝熱される感温部と、を有するセンサ部と、該センサ部を動かすときに使用する把手と、前記センサ部を磁力により被測温体に固定し、前記感温部を被測温体に密着させる磁石と、を備える磁石固定式温度計において、
前記センサ部と前記把手との間に介在し、可撓性を有する可撓性筒状部材を備え、
前記可撓性筒状部材は、該可撓性筒状部材が屈曲した際に形成される円弧の中心点及び前記可撓性筒状部材の前記把手側の一端を結ぶ線分と、前記円弧の中心点及び前記可撓性筒状部材の前記センサ部側の他端を結ぶ線分と、のなす角度が90°以下の角度に屈曲可能に構成され、前記把手を前記他端よりも前記センサ部の被測温体との接触面を含む接触平面から離間した位置に支持することを特徴とする磁石固定式温度計。
【背景技術】
【0002】
物体の表面温度を計測する際、センサ部の感温部を被測温体に完全に接触させることが測定誤差を最小にする上で重要である。しかし、センサ部の感温部を被測温体に直接接触させるためには、感温部がセンサ本体の外部に露出した状態でなければならず、その場合、計測者は感温部を被測温体に上手に接触させる技術を要する。又、直接接触させることによって感温部の消耗が早く、耐久性にも問題を生じる。
【0003】
そこで、コイルバネを収納した保持具に少なくとも2本の板バネを突設し、該板バネの先端から延設したリンクにより一対の熱電対を連結した測温片を支持し、上記コイルバネの可動端に設けた押しピンにより上記測温片を押圧し、押しピン先端を上記板バネ先端より外方に突出せしめている測温部を有する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、熱電素子と、この熱電素子の感温部を中央部の裏側に接合した接触板と、この接触板が露出する状態で前記熱電素子を収容するケーシングとからなり、前記接触板を、この接触板の長手方向中央部に配し、被測温体に接触させる接触部と、この接触部の両側に配し、この接触部よりも弾性を低下させた変形部と、両端部の取付部とで構成すると共に、前記取付部を前記ケーシングの支持部に係止させて、前記接触部を前記ケーシングの外部に露出させた装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
他にも感温部や測温部の形状や構成を工夫することによって、被測温体に感温部を密着させて、被測温体の温度を正確に測定するように構成された装置があり、その中の一つに磁石の磁力によって、感温部を被測温体に密着させる装置がある。
【0006】
ここで、その磁石固定式温度計について、
図8を参照しながら説明する。この磁石固定式温度計1Xは、センサヘッド(センサ部)2に、被測温体(図示せず)の温度を測定する熱電対3の測温部3aと、被測温体と測温部3aとの間に設けられ、被測温体に押圧されて被測温体から伝熱される感温部4と、ヘッド本体5とを備えている。
【0007】
そのヘッド本体5に、感温部4及び被測温体の表面を保護するガード(保護部材)6を接合し、そのガード6内部に、センサヘッド2を被測温体に固定し、感温部4を被測温体に密着させる磁石7を備えている。加えて、センサヘッド2を被測温体に取り付ける(固定する)、又は被測温体から取り外す(移動する)ときに使用する把手8を備え、熱電対3のケーブル(信号線)3bを、その把手8を経由して導出するように構成されている。
【0008】
この磁石固定式温度計1Xは、磁石7の磁力によりセンサヘッド2を被測温体に固定して、感温部4を被測温体に密着することができるので、装置や金型表面等の磁石7で固定できる面を有する被測温体の測定に適している。
【0009】
しかし、被測温体が高温の場合に、温度を測定した後に把手8が高温状態になり、把手8を持って、センサヘッド2を被測温体から取り外すことができないという問題があった。直接、把手8を持つことができないため、ケーブル3bを持ってセンサヘッド2を被測温体から取り外そうとすると、ケーブル3b内の熱電対3の素線が切断されてしまう、あるいは感温部4から熱電対3の測温部3aが外れてしまう。
【0010】
把手8が高温状態になる原因は、把手8とセンサヘッド2とが直接、接合されていることで発生するセンサヘッド2からの伝熱と、把手8と被測温体との距離が近いことで発生する被測温体からの放射による伝熱である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者は、把手を従来よりも長く形成する、若しくは、
図9の(a)及び(b)に示すように、把手8とセンサヘッド2との間に筒状の部材であるパイプ9Xを介設することにより、センサヘッド2からの伝熱と、被測温体からの放射による伝熱を抑制することを試みた。これにより、センサヘッド2からの距離が遠くなることで、上記の問題を解決することができたが、一方で別の問題が発生した。
【0013】
その問題の一つは、
図9の(a)に示すように、例えば、測定器側からケーブル3bが引っ張られて、把手8にケーブル3bから衝撃が加えられると、その衝撃により、センサヘッド2が被測温体の上面F1から外れてしまう。これは、センサヘッド2と把手8との間に介設されたパイプ9Xにより、センサヘッド2周りのモーメントが大きくなり、センサヘッド2が外れやすいからである。
【0014】
また、
図9の(b)に示すように、被測温体の側面F2にセンサヘッド2を取り付けた場合に、ケーブル3b、把手8、及びパイプ9Xの重みによって、センサヘッド2が被測温体の側面F2から外れてしまうという問題も発生する。
【0015】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、被測温体の測定中に感温部が被測温体から外れることを防止すると共に、把手が高温になることを防止し、被測温体の温度を測定した後でも、把手を持って、センサ部を別の被測温体に取り付ける、若しくは被測温体から取り外すことができる磁石固定式温度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を解決するための本発明の磁石固定式温度計は、被測温体の温度を測定する測温部と、被測温体と前記測温部との間に設けられ、被測温体に押圧されて被測温体から伝熱される感温部と、を有するセンサ部と、該センサ部を動かすときに使用する把手と、前記センサ部を磁力により被測温体に固定し、前記感温部を被測温体に密着させる磁石と、を備える磁石固定式温度計において、前記センサ部と前記把手との間に介在し、可撓性を有する可撓性筒状部材を備え、前記可撓性筒状部材は、
該可撓性筒状部材が屈曲した際に形成される円弧の中心点及び前記可撓性筒状部材の前記把手側の一端を結ぶ線分と、前記円弧の中心点及び前記可撓性筒状部材の前記センサ部側の他端を結ぶ線分と、のなす角度が90°以下の角度に屈曲可能に構成され、前記把手を前記他端よりも前記センサ部の被測温体との接触面を含む接触平面から離間した位置に支持することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、センサ部と把手との間に可撓性筒状部材を設けることにより、把手がセンサ部と直に接続されないため、センサ部から把手への伝熱を抑制することができる。また、可撓性筒状部材が曲がったとしても、把手が接触平面から予め定めた距離を保って支持されるため、把手が被測温体から遠くに位置するので、被測温体から把手への放射による伝熱を抑制することができる。
【0018】
これにより、把手が高温状態になることを防いで、被測温体の温度を測定した後に、測定者が手で把手を持って、センサ部を動かすことができる。よって、信号線を持ってセンサ部を被測温体から取り外すこともなくなるので、信号線の素線が切断されてしまう、あるいは感温部から測温部が外れてしまうことを防止する。
【0019】
また、可撓性筒状部材が柔軟性に優れていることにより、把手を持ったときにセンサ部を様々な方向に向けることもできるので、センサ部を様々な場所に容易に取り付けることができる。
【0020】
なお、ここでいう接触平面とは、例えば、被測温体の上面を測定する場合で、且つ、その上面が水平面の場合は、その水平面のことをいい、また、被測温体の側面を測定する場合で、且つその側面が垂直面の場合は、その垂直面のことをいう。
【0021】
また、予め定めた距離は、接触平面から把手までの垂線の長さであり、接触平面から可撓性筒状部材のセンサ部側の端部までの長さから、接触平面から可撓性筒状部材が曲がらない場合の可撓性筒状部材のセンサ部側の反対側の端部までの長さまでの範囲内の値に設定される。この予め定めた距離を、実験的に求めた結果として30mm以上、70mm以下の長さにすると、把手への伝熱を抑制し、且つ温度の測定作業に支障を来さないため、好ましい。
【0022】
また、上記の磁石固定式温度計において、前記可撓性筒状部材を経由して、前記把手から前記測温部に接続される信号線を導出すると、可撓性筒状部材が、可撓性を有して、柔軟性に優れていることにより、信号線から力が加わっても、その力の一部を逃がすことができ、センサ部が被測温体から外れてしまうという問題を回避することができる。また、信号線を被測温体から離れた把手から導出するので、信号線を被測温体から発する熱などの影響から守ることができる。
【0023】
加えて、上記の磁石固定式温度計において、前記センサ部を磁力により被測温体に固定したときに、又は前記把手を使用して前記センサ部を動かすときに、前記可撓性筒状部材が、前記センサ部、又は前記把手のどちらか重い方の重量に応じて定めた曲げ半径まで曲がるがそれ以上には曲がらない可撓性を有すると、上記の作用効果に加えて、把手を手に持ったときに把手とセンサ部とが近接しないので、把手を持つ手が熱くならない。加えて、可撓性筒状部材を経由して把手から信号線を導出する場合は、可撓性筒状部材の内部の信号線が過度に曲がることを防止して、信号線の破損を防ぐことができる。
【0024】
例えば、センサ部の重量が重い場合に、把手を持ったときの曲げ半径が小さ過ぎると、高温になった被測温体と把手を持つ手が近接し危険であり、一方、センサ部の重量が軽い場合に、曲げ半径が大き過ぎると、信号線からの衝撃を吸収できないという問題や、可撓性筒状部材の重みでセンサ部が外れてしまうという問題が発生する。
【0025】
そこで、予め実験的に求めた結果として、センサ部、又は把手のどちらか一方の重量が10g以上の場合に、把手を持ったときの曲げ半径を30mm以上、50mm以下とし、センサ部、及び把手のどちらの重量も10gより小さい場合に、把手を持ったときの曲げ半径を100mm以上、150mm以下とすると、センサ部と把手が近接せず、且つセンサ部が被測温体から容易に外れてしまうことを防止するため、好ましい。
【0026】
なお、ここでいう曲げ半径は、センサ部が把手より重い場合は、把手を手で持ったときの曲げ半径であり、また、把手がセンサ部よりも重い場合は、センサ部を被測温体に取り付けたときの曲げ半径であり、可撓性筒状部材の最大曲げ半径を表すものではない。加えて、把手を持ったときの曲げ半径は、持ち方によってその値は変化するが、ここでは、把
手をセンサ部よりも下側に位置するような持ち方で持ったときの曲げ半径とする。
【0027】
その上、上記の磁石固定式温度計において、前記可撓性筒状部材をフレキシブルチューブで構成することが好ましい。なお、ここでいうフレキシブルチューブとは、ステンレスなどの金属から形成された螺旋管などのことをいい、柔軟性に富み、かつ一定の許容曲げ半径より曲がらない性質をもつもののことをいう。
【0028】
このフレキシブルチューブは、例えば、JIS(日本工業規格)の金属可とう電線管附属品(JIS規格番号:JIS C8350)や、ガス用金属フレキシブルホース(JIS規格番号:JIS S2145)などで規定されているものが好ましく、フレキシブルチューブの中でも、前述の性質に加えて、引っ張っても伸びず、側圧及び引張荷重に強いという性質を有するケーシングチューブや、セミインターチューブと呼ばれるものが、柔軟、且つ伸びが無く、荷重、側圧、及び引張強度に優れるためより好ましい。
【0029】
また、ケーシングチューブよりもセミインターチューブの方が噛み合わせ部が堅牢な構造であるため、センサ部、又は把手のどちらか一方の重量が10g以上の場合は、最小曲げ半径が30mm以上、50mm以下のセミインターチューブが好ましく、センサ部、及び把手のどちらの重量も10gより小さい場合は、セミインターチューブよりも安価で容易に製造でき、且つ重量が軽い、最小曲げ半径が15mm以上、30mm以下のケーシングチューブが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、被測温体の測定中に感温部が被測温体から外れることを防止すると共に、センサ部と把手との間に可撓性筒状部材を設けることにより、把手がセンサ部と直に接続されないので、把手が高温になることを防止し、被測温体の温度を測定した後でも、把手を持って、センサ部を別の被測温体に取り付ける、若しくは被測温体から取り外すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態の磁石固定式温度計について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態では、熱電対で温度を測定する磁石固定式温度計を例に説明するが、本発明はこれに限定せず、例えば、蛍光式光ファイバーや測温抵抗体などにも適用することができる。
【0033】
また、熱電対として+極にクロメル、−極にアルメルを用いたタイプKを例に説明するが、本発明は、+極にクロメル、−極にコンスタンタンを用いたタイプEや、+極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量30%)、−極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量6%)を用いたタイプBなどの様々な種類の熱電対に適用することができる。
【0034】
加えて、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0035】
本発明に係る第1の実施の形態の磁石固定式温度計について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。ここで、
図2及び
図4の図中では、被測温体の上面をF1、及び側面をF2とし、その上面F1を水平面、及び側面F2を垂直面とする。また、図中の左右方向を水平方向x、図中の上下方向を鉛直方向y、図中の裏表方向を奥行方向zとする。
【0036】
本発明の磁石固定式温度計1は、
図8に示す従来の磁石固定式温度計1Xの構成に加えて、
図1に示すように、センサヘッド(センサ部)2と把手8との間に、可撓性を有するセミインターチューブ(可撓性筒状部材;フレキシブルチューブ)10を介設し、セミインターチューブ10が曲がった場合でも、把手8をセンサヘッド2の被測温体の上面F1との接触面2aを含む接触平面Aから予め定めた距離H1を保って支持可能に構成される。
【0037】
また、セミインターチューブ10を経由して、把手8から測温部3aに接続されるケーブル(信号線)3bを導出して構成される。
【0038】
詳しく説明すると、感温部4は、金属などの熱伝導体から形成され、被測温体に押圧されて、被測温体から伝熱される接触板であり、熱電対3の測温部3aが当接されている。この実施の形態では、センサヘッド2が被測温体に固定されたときに、被測温体との密着性を高めるため、センサヘッド2の外側に湾曲するように形成されている。
【0039】
ヘッド本体5は、ステンレス、フッ素樹脂、ガラスクロス積層板、フェルノール樹脂、又はポリイミド系樹脂など、用途に合わせて様々な材質で形成される。中でもフェルノール樹脂や、ポリイミド系樹脂などの熱伝導率が低い材質を用いると、ヘッド本体5を介した把手8への伝熱を抑制することができる。加えて、ヘッド本体5は、感温部4及び被測温体の表面を保護するためのガード(保護部材)6と接合される。このガード6は、フッ素樹脂や、ガラスクロス積層板などから形成され、内部に磁石7を備える。
【0040】
上記のセンサヘッド2の構成は、一例であり、本発明の磁石固定式温度計1は、磁石7を備えて、感温部4を被測温体に密着することができればよく、特開昭54−62877号公報や特開平7−198504号公報などに記載された公知の技術に磁石7を備えたものを用いることができる。また、例えば、本発明は、感温部4、ヘッド本体5、及びガード6を一体に形成するものや、ヘッド本体5、あるいはガード6を磁性体で形成するものなどにも適用することができる。また、センサヘッド2を被測温体に固定することが可能であれば、磁石7をヘッド本体5に内蔵してもよい。
【0041】
把手8は、非熱伝導体、つまり、金属等の熱伝導体以外のものが好ましく、例えば、合成樹脂などの非金属材料で形成されるとよい。特に、耐熱性と耐久性に優れ、且つ熱伝導性の低いポリイミド系樹脂などの耐熱性樹脂が適している。
【0042】
セミインターチューブ10は、フレキシブルチューブの一種で、フレキシブルチューブ
とは、柔軟で自由自在に曲げることが出来るパイプであり、ステンレスなど金属や合成樹脂の薄いパイプに波付加工して形成され、フレキシブルホース、SUSフレキ、フレキシブルパイプ、フレキシブルメタルホース、ラセン管、螺旋管とも呼ばれるものである。
【0043】
そのセミインターチューブ10を、センサヘッド2のヘッド本体5とステンレスなどで形成された接続パイプ11を介して接続する。また、このセミインターチューブ10と、把手8及び接続パイプ11は、それぞれネジにより固定されている。この接続パイプ11を介さずに、センサヘッド2とセミインターチューブ10を直に接続することもできる。
【0044】
上記のセミインターチューブ10は、様々な種類が存在するフレキシブルチューブの中でも、
図3に示すように、ステンレス鋼板をコの字状で組み合わせて形成した噛み合わせ部10cを有し、適度な柔軟性を持ち、且つ強度を持たせたチュ−ブで、帯鋼の噛み合わせ部10cが堅牢な構造になっており、つぶれ、曲げ、引っ張り、及びねじれなどに非常に強いという効果を持つ。
【0045】
センサヘッド2と把手8との間に介設されるセミインターチューブ10は、以下の特徴を有する。ここで、
図1に示す状態は把手8を手で持った状態とする。また、センサヘッド2の重量が把手8の重量よりも重いものとする。
【0046】
まず、セミインターチューブ10は、
図1に示すように、把手8を使用してセンサヘッド2を動かすときに、センサヘッド2の重量に応じて定めた曲げ半径R1まで曲がるがそれ以上には曲がらない可撓性を有する。
【0047】
この実施の形態では、重量が10g以上のセンサヘッド2を用いるので、把手8を手で持ったときの曲げ半径R1が小さいと、センサヘッド2と把手8との距離が近い、つまり高温のセンサヘッド2と把手8を持つ手とが近接して危険である。一方、把手8を手で持ったときの曲げ半径R1が大きいと、センサヘッド2が被測温体に固定されたときに、ケーブル3bからの衝撃を逃がすことや、セミインターチューブ10と把手8のモーメントを小さくすることができない。
【0048】
よって、この把手8を手で持ったときの曲げ半径R1を実験的に求め、曲げ半径R1を30mm以上、50mm以下とした。このときのセミインターチューブ10の曲げ角度θ1は、55°以上、90°以下となる。これによれば、把手8とセンサヘッド2とが近接しないため、把手8を持ったときにセンサヘッド2からの把手8を持つ手への伝熱の影響を抑制することができる。また、セミインターチューブ10の内部のケーブル3bが過度に曲がることを防止して、ケーブル3bの破損を防ぐことができる。
【0049】
なお、この実施の形態では、センサヘッド2の重量が把手8の重量よりも重いため、
図1の把手8を手に持った状態での曲げ半径R1を規定したが、センサヘッド2の重量が把手8の重量よりも軽い場合は、
図2のセンサヘッド2を磁石7の磁力により被測温体に固定したときの曲げ半径を規定することとする。
【0050】
また、ここでいう曲げ半径R1は、把手8を手で持ったときの曲げ半径R1であり、セミインターチューブ10の最大曲げ半径とは一致しなくてもよい。加えて、把手8を手で持ったときの曲げ半径R1は、磁石固定式温度計1の持ち方によって変化するが、
図1に示すように、センサヘッド2の重量が把手8の重量よりも重い場合は、把手8がセンサヘッド2よりも下側になるように持ったときが、曲げ半径R1の最大値となるので、上記の範囲はこの最大値の範囲とする。
【0051】
次に、
図2及び
図4に示すように、センサヘッド2を磁力により被測温体に固定したと
きに、セミインターチューブ10が曲がった場合でも、把手8を接触平面Aから予め定めた距離H1を保って支持するという特徴を有する。
【0052】
ここでいう接触平面Aとは、
図2の場合は、センサヘッド2の被測温体の上面F1との接触面2aを含むx−z平面であり、
図4の場合は、センサヘッド2の被測温体の側面F2との接触面2aを含むy−z平面である。この実施の形態では、上面F1が水平面のため、この接触平面Aも水平面となり、側面F2が垂直面のため、この接触平面Aも垂直面となる。
【0053】
予め定めた距離H1は、接触平面Aからセミインターチューブ10のセンサヘッド2側の端部10aまでの距離H2から、接触平面A又はBからセミインターチューブ10が曲がらない場合のセミインターチューブ10のセンサヘッド2側の反対側の端部10bまでの距離H3までの間の範囲内の任意の長さに設定されるが、実験的に求めた結果として距離H1を30mm以上、70mm以下に設定すると、長さが短すぎずに把手8への伝熱を抑制すると共に、長さが長すぎずに温度の測定作業に支障を来さないため好ましい。
【0054】
この構成によれば、距離H1を、接触平面Aから端部10aまでの距離H2よりも長く設定することで、把手8の位置が従来のものよりも遠い位置になり、被測温体の上面F1からの放射による伝熱を抑制することができ、且つ、接触平面Aから端部10bまでの距離H3よりも短く設定することで、センサヘッド2に掛かるモーメントが大きくなりすぎないため、センサヘッド2が被測温体の上面F1から外れることを防止することができる。
【0055】
よって、把手8がセンサヘッド2と直に接続されないため、センサヘッド2から把手8への伝熱を抑制することができる。また、温度の測定中にセミインターチューブ10が曲がったとしても、把手8が接触平面Aから予め定めた距離H1を保って支持されるため、把手8が被測温体から遠くに位置するので、被測温体から把手8への放射による伝熱を抑制することができる。これにより、把手8が高温状態になることを防いで、被測温体の温度を計測した後に、把手8を持って、センサヘッド2を別の被測温体に取り付ける、あるいは被測温体から取り外すことができる。
【0056】
最後に、
図1に示すように、セミインターチューブ10を経由して、把手8から測温部3aに接続されるケーブル3bを導出し、ケーブル3bを保護するという特徴を有する。これにより、セミインターチューブ10が、可撓性を有して、柔軟性に優れていることにより、ケーブル3bから力が加わっても、その力の一部を逃がすことができ、センサヘッド2が被測温体から外れてしまうという問題を回避することができる。
【0057】
また、ケーブル3bを被測温体から離れた把手8から導出するので、ケーブル3bを被測温体から発する熱などの影響から守ることができ、さらに、セミインターチューブ10の内部のケーブル3bが過度に曲がることを防止して、ケーブル3bの破損を防ぐことができる。
【0058】
本発明は、JIS(日本工業規格)の金属可とう電線管附属品(JIS規格番号:JIS C 8350)や、ガス用金属フレキシブルホース(JIS規格番号:JIS S 2145)などで規定されているものを用いることができる。例えば、インターロックチューブと呼ばれ、曲がったままの状態を保持可能なものを用いることができるが、センサヘッド2の重量、又は把手8の重量のどちらか一方が10g以上の場合は、把手8を手に持ったときの曲げ半径R1が、又はセンサヘッド2を被測温体に固定したときの曲げ半径が、最大で30mm以上、50mm以下のセミインターチューブ10が、把手8への伝熱を抑制すると共に、温度の測定作業に支障を来さないため好ましい。
【0059】
この磁石固定式温度計1の動作について、
図2、
図4、及び
図5を参照しながら説明する。
図2は、被測温体の上面F1の温度を測定する動作を示している。把手8を持って、被測温体の上面F1にセンサヘッド2を近付けると、磁石7の磁力によって、センサヘッド2が被測温体の上面F1に固定される。
【0060】
そして、把手8やケーブル3bの重みなどにより、セミインターチューブ10が曲がる(但し、把手8の重量やケーブル3bの状態によっては、セミインターチューブ10が曲がらない場合もある)。このとき、感温部4が被測温体の上面F1と密着するので、被測温体の上面F1の温度を正確に測定することができる。また、セミインターチューブ10が曲がることにより、センサヘッド2に掛かるモーメントを低減することができる。
【0061】
測定中に、例えば、水平方向xにケーブル3bから力(図中の塗り潰し矢印)が掛っても、図中の点線で示すように、セミインターチューブ10が変形するので、その衝撃の影響を低減することができる。これにより、センサヘッド2が被測温体の上面F1から外れることを防止することができる。また、逆方向に力が掛った場合でも、セミインターチューブ10が曲がっているため、センサヘッド2に掛かるモーメントは低減されるので、この場合でもセンサヘッド2が被測温体の上面F1から外れることを防止することができる。
【0062】
これによれば、温度の測定中に、被測温体の上面F1からセンサヘッド2が外れてしまうことを防止すると共に、セミインターチューブ10が曲がった場合でも、把手8と接触平面Aとの距離H1が十分に遠く、把手8が被測温体の放射により伝熱されないので、被測温体の上面F1の温度を測定した後に、把手8が高温にならず、把手8を持って、センサヘッド2を被測温体の上面F1から取り外して、他の場所に移動させることができる。
【0063】
図4は、被測温体の側面F2の温度を測定する動作を示している。把手8を持って、被測温体の側面F2にセンサヘッド2を近付けると、磁石7の磁力によって、センサヘッド2が被測温体の側面F2に固定される。このとき、感温部4が被測温体の側面F2と密着するので、被測温体の側面F2の温度を正確に測定することができる。
【0064】
測定中は、セミインターチューブ10は、把手8やケーブル3bの重みによって鉛直方向yの下方に曲がる。セミインターチューブ10が曲がることによって、把手8と接触平面Aとの間の距離H1が、セミインターチューブ10が曲がらなかった場合の把手8と接触平面Aとの間の距離H3よりも短くなる。よって、センサヘッド2に掛かるモーメントは、
図9の(b)に示す従来の磁石固定式温度計1Yのセンサヘッド2に掛かるモーメントと比べて小さくなる。これにより、
図4に示すセンサヘッド2が被測温体の側面F2から外れることを防止することができる。
【0065】
図5は、被測温体の下面F3の温度を測定する動作を示している。把手8を持って、センサヘッド2が上方になるように、つまり感温部4が鉛直方向yの上方に位置するようにして、被測温体の下面F3にセンサヘッド2を近付けると、磁石7の磁力によって、センサヘッド2が被測温体の下面F3に固定される。
【0066】
このように、本発明の磁石固定式温度計1は、セミインターチューブ10が柔軟に曲げることができるので、様々な箇所に容易に取り付けることができる。
【0067】
この磁石固定式温度計1によれば、センサヘッド2と把手8との間にセミインターチューブ10を設けることにより、把手8がセンサヘッド2と直に接続されないため、センサヘッド2から把手8への伝熱を抑制すると共に、セミインターチューブ10が曲げ半径R1まで曲がったとしても、把手8が被測温体から遠くに位置するため、被測温体から把手8への放射による伝熱を抑制することができる。これにより、温度を測定後に把手8を持って、センサヘッド2を別の被測温体に取り付ける、あるいは被測温体から取り外すことができる。
【0068】
また、セミインターチューブ10が、柔軟性に優れていることにより、ケーブル3bから力が加わっても、その力の一部を逃がすことができ、センサヘッド2が被測温体から外れてしまうという問題を回避することができる。且つ、センサヘッド2を様々な場所に容易に取り付けることができる。
【0069】
次に、本発明に係る第2の実施の形態の磁石固定式温度計20について、
図6を参照しながら説明する。この磁石固定式温度計20は、第1の実施の形態のセンサヘッド2に替えて、感温部とヘッド本体とを一体に形成したセンサヘッド21を備えると共に、センサヘッド21と把手8との間にケーシングチューブ22を備えて構成される。
【0070】
このセンサヘッド21は、ステンレスなどの金属で、感温部23とヘッド本体24を一体した筒状に形成される。この筒状の中に、熱電対3の測温部3aと磁石25を内蔵する。このセンサヘッド21は、第1の実施の形態のセンサヘッド2と比べると、小さく、且つ軽量に形成されている。
【0071】
ケーシングチューブ22は、
図7に示すように、様々な種類が存在するフレキシブルチューブの中でも、ステンレス鋼板を組み合わせて形成した噛み合わせ部22aを有し、
図3に示すセミインターチューブ10と比較して、柔軟性、及び屈曲性に優れ軽量に出来ており最もスタンダ−ドな螺旋管である。
【0072】
この実施の形態のセンサヘッド21の重量は10gより小さく、第1の実施の形態のセンサヘッド2よりも軽く、また、把手8の重量も10gより小さい。そのため、第1の実施の形態と同様のセミインターチューブ10をセンサヘッド21と把手8との間に介設すると、セミインターチューブ10の重さによるモーメントの影響により被測温体からセンサヘッド21が外れてしまう。これは、センサヘッド21が、第1の実施の形態のセンサヘッド2よりも小さく、且つ軽いため、それにより、磁石25の磁力が第1の実施の形態の磁石7の磁力よりも弱いためである。
【0073】
そこで、第1の実施の形態のセミインターチューブ10よりも軽量なケーシングチューブ22を用いることにより、上記の問題を解決した。ここで、ケーシングチューブ22の特徴について説明するが、この実施の形態では、センサヘッド21の重量が把手8の重量よりも重いものとし、また、センサヘッド21の重量が10g以下とする。
【0074】
このケーシングチューブ22は、手で把手8を持ったときに、ケーシングチューブ22が、センサヘッド21の重量に応じて定めた曲げ半径R2まで曲がるがそれ以上には曲がらない可撓性を有する。
【0075】
この実施の形態では、重量が10g以下のセンサヘッド21を用いるので、把手8を手で持ったときの曲げ半径R2は、第1の実施の形態の曲げ半径R1よりも大きくなる。この把手8を手で持ったときの曲げ半径R2を実験的に求め、100mm以上、1550mm以下とした。このときのケーシングチューブ22の曲げ角度θ2は、10°以上、25°以下となる。
【0076】
なお、ここでいう曲げ半径R2は、把手8を手で持ったときの曲げ半径R2であり、ケーシングチューブ22の最大曲げ半径とは一致しなくてもよい。センサヘッド21が軽いため把手8を手で持ったときの曲げ半径R2は大きくなるが、この実施の形態で用いたケーシングチューブ22の最大曲げ半径は、20mm程度の小さい値となっている。特に、この実施の形態のように、センサヘッド21の重量が10g以下と軽い場合は、ケーシングチューブ22の最大曲げ半径がケーシングチューブ22内部のケーブル3bを破損しない範囲の値か否かに注意する必要がある。
【0077】
また、この実施の形態では、センサヘッド21の重量が把手8の重量よりも重いため、
図6の把手8を手に持った状態での曲げ半径R2を規定したが、センサヘッド21の重量が把手8の重量よりも軽い場合は、センサヘッド21を磁石7の磁力により被測温体に固定したときの曲げ半径を規定することとする。
【0078】
上記の構成によれば、センサヘッド21を第1の実施の形態のセンサヘッド2よりも小さく、且つ軽量に形成しても、センサヘッド21と把手8との間に、ケーシングチューブ22を介設することにより、第1の実施の形態で述べた作用効果と同様の効果を得ることができる。
【0079】
なお、第1の実施の形態では、センサヘッド2の重量が10g以上のため、手で持ったときの曲げ半径R1が30mm以上、50mm以下の可撓性を有するセミインターチューブ10を用いて、また、第2の実施の形態では、センサヘッド21の重量が10gより軽いため、手で持ったときの曲げ半径R2が100mm以上、150mm以下の可撓性を有するケーシングチューブ22を用いたが、前述した特徴を有するフレキシブルチューブであれば、本発明はその種類を限定しない。