特許第6244096号(P6244096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244096
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20171127BHJP
   F04B 53/18 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F04B43/02 M
   F04B53/18
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71879(P2013-71879)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196679(P2014-196679A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】応研精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4307867(JP,B2)
【文献】 実開平07−038679(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0060515(US,A1)
【文献】 特開2003−35267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸が固着された回転体と、
前記回転体の前記出力軸から偏心した部位に傾斜した状態で固着された駆動軸と、
前記回転体と対向する一方の端面に非貫通孔からなる軸孔が開口し、この軸孔に挿通された前記駆動軸を摺動自在に支持する駆動体と、
前記駆動体にポンプ室を形成する各ダイヤフラム部が取り付けられたダイヤフラムと を備え、
前記回転体の回転に追従し前記駆動体を介して前記ダイヤフラムの各ダイヤフラム部を昇降させ前記ポンプ室を拡縮することによりポンプ作用を行わせるダイヤフラムポンプにおいて、
前記駆動体は、一体に固定された軸受部を備え、
前記軸受部は、当該軸受部の一方の端面から前記軸孔が形成され、当該軸孔とは逆側となる前記軸受部の他方の端面から前記駆動軸の軸線と平行に延びる油溜め溝が形成され、
前記油溜め溝は、前記軸孔に開口しているとともに、両端が閉塞されている
ことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
前記油溜め溝は、油を供給する油補給路と、油を溜めておく貯留部と、前記駆動軸に油を補給する補給口とにより形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
モータの出力軸が固着された回転体と、
前記回転体の前記出力軸から偏心した部位に傾斜した状態で固着された駆動軸と、
前記回転体と対向する一方の端面に非貫通孔からなる軸孔が開口し、この軸孔に挿通された前記駆動軸を摺動自在に支持する駆動体と、
前記駆動体にポンプ室を形成する各ダイヤフラム部が取り付けられたダイヤフラムと
を備え、
前記回転体の回転に追従し前記駆動体を介して前記ダイヤフラムの各ダイヤフラム部を昇降させ前記ポンプ室を拡縮することによりポンプ作用を行わせるダイヤフラムポンプにおいて、
前記駆動体は、前記駆動軸の軸線と平行に延びる油溜め溝を有し、
前記油溜め溝は、前記軸孔に開口しているとともに、両端が閉塞され、
前記駆動体の他方の端面には凹部が形成され、
前記凹部には蓋が取り付けられ、
前記油溜め溝は、
前記軸孔と同一軸線上に配設されて前記凹部の底面に開口する断面リング形状の第1の油溜め用溝部と、
前記軸孔に沿って延びるとともに前記第1の油溜め用溝部から径方向の内側に延び、前記第1の油溜め用溝部と前記軸孔とを連通する第2の油溜め用溝部とによって構成されている
ことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を供給するために使用されるダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイヤフラムポンプとしては、モータの出力軸が固着されたクランク台と、このクランク台に固着された出力軸から偏心した部位に傾斜した状態で突設した駆動軸と、この駆動軸に回転自在に支持された駆動体と、この駆動体にポンプ室を形成する各ダイヤフラム部が取り付けられたダイヤフラムとを備え、クランク台の回転に追従して駆動軸および駆動体を介してダイヤフラムの各ダイヤフラム部を昇降させポンプ室を拡縮することによりポンプ作用するダイヤフラムポンプにおける駆動軸の軸受構造において、駆動体に駆動軸が挿入される軸孔を設け、この軸孔の内周部に軸線方向に軸孔の開口まで延在する油溜め用の溝を設け、軸孔の開口を密閉するシール部材を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4307867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した従来のダイヤフラムポンプにおける駆動軸の軸受構造においては、駆動体の下方からシール部材により軸孔の開方側が密閉されているものの、駆動軸が取り付けられる駆動体のボスの下方に開放した状態で油溜め用の溝が形成されている。このため、ポンプ構造上、ポンプ動作時に油溜め用の溝の開放側に向かって遠心力が働き、その油溜め用の溝に溜められた油が遠心力でシール部材から少しずつ漏れ、駆動軸に対して油膜程度の油量しか保持することができないので、十分な油量の油を駆動軸に供給できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易な構成でありながら十分な油量の潤滑油を常時供給することにより長寿命なダイヤフラムポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、モータの出力軸が固着された回転体と、前記回転体の前記出力軸から偏心した部位に傾斜した状態で固着された駆動軸と、前記回転体と対向する一方の端面に非貫通孔からなる軸孔が開口し、この軸孔に挿通された前記駆動軸を摺動自在に支持する駆動体と、前記駆動体にポンプ室を形成する各ダイヤフラム部が取り付けられたダイヤフラムとを備え、前記回転体の回転に追従し前記駆動体を介して前記ダイヤフラムの各ダイヤフラム部を昇降させ前記ポンプ室を拡縮することによりポンプ作用を行わせるダイヤフラムポンプにおいて、前記駆動体は、一体に固定された軸受部を備え、前記軸受部は、当該軸受部の一方の端面から前記軸孔が形成され、当該軸孔とは逆側となる前記軸受部の他方の端面から前記駆動軸の軸線と平行に延びる油溜め溝が形成され、前記油溜め溝は、前記軸孔に開口しているとともに、両端が閉塞されているものである。
【0008】
さらに請求項2に係る発明において、前記油溜め溝は、油を供給する油補給路と、油を溜めておく貯留部と、前記駆動軸に油を補給する補給口とにより形成されているようにすることができる。
【0009】
さらに請求項3に係る発明は、モータの出力軸が固着された回転体と、前記回転体の前記出力軸から偏心した部位に傾斜した状態で固着された駆動軸と、前記回転体と対向する一方の端面に非貫通孔からなる軸孔が開口し、この軸孔に挿通された前記駆動軸を摺動自在に支持する駆動体と、前記駆動体にポンプ室を形成する各ダイヤフラム部が取り付けられたダイヤフラムとを備え、前記回転体の回転に追従し前記駆動体を介して前記ダイヤフラムの各ダイヤフラム部を昇降させ前記ポンプ室を拡縮することによりポンプ作用を行わせるダイヤフラムポンプにおいて、前記駆動体は、前記駆動軸の軸線と平行に延びる油溜め溝を有し、前記油溜め溝は、前記軸孔に開口しているとともに、両端が閉塞され、前記駆動体の他方の端面には凹部が形成され、前記凹部には蓋が取り付けられ、前記油溜め溝は、前記軸孔と同一軸線上に配設されて前記凹部の底面に開口する断面リング形状の第1の油溜め用溝部と、前記軸孔に沿って延びるとともに前記第1の油溜め用溝部から径方向の内側に延び、前記第1の油溜め用溝部と前記軸孔とを連通する第2の油溜め用溝部とによって構成されているようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の本発明によれば、駆動軸を支持する軸孔が当該駆動体の一方の端面に設けられ、当該軸孔と空間的に連通された油溜め溝が駆動体の一方の端面に到達することなく設けられているため、ポンプ動作時に遠心力が働いても、油溜め溝の油が駆動体の一方の端面から漏れることなく、十分な油量の油を駆動軸に常時供給することができ、かくして長寿命のダイヤフラムポンプを実現することができる。
【0011】
また本発明によれば、駆動体が備える一体に固定された軸受部の一方の端面から軸孔が形成され、当該軸孔とは逆側となる軸受部の他方の端面から前記油溜め溝が形成されているため、軸受部の一方の端面から油溜め溝の油が遠心力により漏れ出ることが防止され、十分な油量の油を駆動軸に常時供給することができる。
【0012】
さらに請求項2の本発明によれば、貯留部に蓄えられた油を油補給路および補給口を介して一定量ずつ確実に駆動軸に供給することができる。
【0013】
さらに請求項3の本発明によれば、前記軸孔が当該駆動体の一方の端面から形成され、当該軸孔と空間的に連通され当該軸孔とは逆側となる前記駆動体の他方の端面から前記油溜め溝が形成されて前記他方の端面に蓋が取り付けられているので、軸孔の形成された駆動体の一方の端面から油溜め溝の油が遠心力により漏れ出ることが防止され、十分な油量の油を駆動軸に常時供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態におけるダイヤフラムポンプの構成を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態における軸受部の構成を示す左側側面図、断面図および右側側面図である。
図3】第1の実施の形態における油溜め溝の構成を示す拡大図である。
図4】第2の実施の形態におけるダイヤフラムポンプの構成を示す断面図である。
図5】第2の実施の形態における駆動体の他方の端面から見た状態を示す斜視図である。
図6】第2の実施の形態における駆動体の構成を示す左側側面図、断面図および右側側面図である。
図7】第2の実施の形態における駆動体の一方の端面から見た状態を示す斜視図である。
図8】第2の実施の形態における駆動体に蓋部が取り付けられた状態を示す断面図である。
図9】他の実施の形態における油溜め溝の構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
<第1の実施の形態>
図1に示すように、ダイヤフラムポンプ1は、駆動源であるモータ2を備えており、このモータ2は上方が開口した有底円筒状に形成されたケース3の底部5に、その出力軸4がケース3の底部5に形成された穴6からケース3内に臨むように、ねじ7によって固定されている。回転体としてのクランク台8の中央貫通孔には、モータ2の出力軸4が固着されており、この出力軸4の軸線から偏心した位置には、駆動体10の駆動軸9が傾斜した状態で固着されている。
【0017】
駆動体10は、ボス13と、このボス13の上端に一体に形成された本体14と、ボス13の下端に一体に固定された軸受部50とよって形成されている。なお、軸受部50の構成については後述する。
【0018】
本体14は、円周方向に等角度間隔で中心から放射状に延設された3つの駆動子15(図1では2つの駆動子15だけを示す)を備え、これら3つの駆動子15は中心から先端に向かって何れも同じ角度だけ下方に傾斜されている。駆動子15の先端側には、後述するダイヤフラム25の各ダイヤフラム部26を取り付けるためのダイヤフラム部取付孔16が形成されている。
【0019】
ケース3上に載置されたダイヤフラムホルダー20の天井部21には、3つのダイヤフラム部保持孔22が円周方向に等角度間隔で設けられている。
【0020】
ダイヤフラム25は、ゴム等の柔軟性を有する材料により円周方向に等角度間隔に設けられ上方が開口した3つのダイヤフラム部26(図1では2つのダイヤフラム部26だけを示す)と、これら3つのダイヤフラム部26の上端部を連設する略円板状に形成されたフランジ27とにより一体に形成されている。各ダイヤフラム部26の下面には、断面略円錐状のピストン28が一体に形成されており、このピストン28の下部には細径の首部29を介して係止用の凸部30が一体に形成されている。
【0021】
また、ダイヤフラム25のフランジ27の上面にはバルブホルダー35が固定され、そのバルブホルダー35に筒体41が固定されている。バルブホルダー35には、その中央に形成された凸部35aに重ねられると共に筒体41との間に挟み付けられるように、有底円筒状でなる第2の弁体31が取り付けられている。バルブホルダー35と筒体41との間には、第2の弁体31と対応する箇所に貫通孔の形成されたガスケット62が取り付けられている。
【0022】
ダイヤフラム25は、各ダイヤフラム部26の凸部30を弾性変形させながら、駆動体10の各駆動子15のダイヤフラム部取付孔16に挿入することにより、首部29が駆動子15のダイヤフラム部取付孔16に取り付けられる。
【0023】
バルブホルダー35には第1の弁体取付孔44、排気通路40および吸気通路45が形成されている。またバルブホルダー35は、ダイヤフラム25をダイヤフラムホルダー20とともに挟持するように、ダイヤフラムホルダー20上に固定されており、ダイヤフラム25の各ダイヤフラム部26とともに3つのポンプ室49を形成している。なお、バルブホルダー35に形成された3つの排気通路40および3つの吸気通路45は、各ポンプ室49に対応するように位置付けられている。
【0024】
バルブホルダー35には、ゴム等の柔軟性を有する材料によって傘形に形成された第1の弁体47がバルブホルダー35の下面35a側に臨むように第1の弁体取付孔44に取り付けられ、吸気通路45とポンプ室49との間を閉塞するように当該バルブホルダー35の下面35aに密着される。この第1の弁体47とバルブホルダー35の下面35aとが、ポンプ室49から吸気通路45へ流体が流れることを規制する逆止め弁を構成している。
【0025】
筒体41とバルブホルダー35との間には弁室38が形成され、当該弁室38とバルブホルダー35の排気通路40との間を閉塞するように第2の弁体31の先端部31aがバルブホルダー35の上面に密着している。従って第2の弁体31とバルブホルダー35の上面とが、後述する吐出口43から排気通路40を通ってポンプ室49に流体が流れ込むのを規制する逆止め弁を構成する。
【0026】
筒体41は、弁室38と連通する中空部42を有し、この筒体41の上端開口が吐出口43を形成している。この筒体41は、筒体押さえ板61の筒体取付孔から中空部42が露出するように取り付けられ、筒体押さえ板61、筒体41、ガスケット62、バルブホルダー35、ダイヤフラム25、ダイヤフラムホルダー20およびケース3全体を挟み付けるようにバネ60が取り付けられ、全体が一体化された状態を維持している。なお、筒体押さえ板61は、バネ60の押さえる力が強いため、バネ60が食い込まないように補強するために用いられている。
【0027】
軸受部50は、図2に示されるように、円柱状の胴体部50Aと、当該胴体部50Aの一端に一体形成された円板状のフランジ部50Bとによって構成された成形品であり、フランジ部50Bの一方の端面中心に駆動体10の駆動軸9が固定されるための軸孔51が形成されている。軸孔51はフランジ部50Bの端面(クランク台8と対向する一方の端面)から胴体部50Aを貫通することがなく、当該軸孔51に駆動軸9が挿通されて固定されるべき所定の深さに形成されている。すなわち、軸孔51は、軸受部50におけるクランク台8と対向する一方の端面に開口する非貫通孔である。
【0028】
軸受部50は、軸孔51の周囲であって120度ずつ位相をずらした位置に、当該軸孔51と空間的に連結された油溜め用溝52、53、54がそれぞれ形成されている。この油溜め用溝52、53、54は、軸孔51が開放されるフランジ部50Bの端面に形成されるのではなく、フランジ部50Bとは反対側となる胴体部50Aの他方の端面からフランジ部50Bの一方の端面に到達しない程度の深さであり、図2に示すように、一方の端部が閉塞された状態で形成されている。すなわち、この油溜め用溝52、53、54は、前動軸9の軸線と平行に延び、軸受部50が駆動体10に固定された状態において、前記油溜め溝は、前記軸孔に開口しているとともに、両端が閉塞されている。
【0029】
具体的には、油溜め用溝52、53、54は、胴体部50Aの端面から胴体部50Aとフランジ部50Bとの境界線付近までの長さに渡り、軸孔51の大部分を占めるように形成されている。但し、これに限るものではなく、胴体部50Aの端面に形成された油溜め用溝52、53、54がフランジ部50Bの端面にまで到達して軸受部50を貫通しなければ、任意の長さに形成されることができるが、油溜め用溝52、53、54の長さは、長ければ長いほど、油の供給範囲が広くなり摩擦による焼き付き防止の効果が高くなる。
【0030】
次に、油溜め用溝52、53、54の構成について説明するが、油溜め用溝52、53、54はその構造が全て同一であるため、ここでは便宜上、油溜め用溝52についてのみ説明する。
【0031】
図3に示すように、油溜め用溝52は、その全体の断面が略電球形状であり、その先端に軸孔51と空間連結される断面半円状の油補給口52aが形成されているとともに、その基端に断面円形状の油蓄積部52cが形成され、油補給口52aと油蓄積部52cとの間に同一幅の油補給路52bが形成されている。なお、3つの油溜め用溝52、53、54がそれぞれ独立して設けられているが、これに限るものではなく、油溜め用溝52、53、54の油蓄積部52c、53c、54cが円環状に接続されていても良い。
【0032】
次に、このように構成されたダイヤフラムポンプ1の動作を説明する。予め、軸受部50の油溜め用溝52、53、54に油(潤滑油)を供給しておく。このような状態としてから、モータ2が駆動し出力軸4が回転すると、クランク台8も一体的に回転し、このクランク台8に出力軸4の軸線から偏心した位置に傾斜した状態で軸受部50に固着された駆動軸9が出力軸4の周りを傾斜方向を変えるようにして偏心回転する。従って、この駆動軸9および軸受部50と一体に回転自在に支持された駆動体10の各駆動子15が順次上下に揺動し、ダイヤフラム25の各ダイヤフラム部26も順次昇降するので、各ポンプ室49は順次拡縮しポンプ動作を行う。
【0033】
図1に示したように、ダイヤフラム25の各ダイヤフラム部26のうちの一つが下降すると、そのポンプ室49は拡張するので、ポンプ室49が負圧状態となる。このとき、第1の弁体47は吸気通路45とポンプ室49との間を開放するので、吸気通路45からポンプ室49内に流体が流入する。
【0034】
モータ2の出力軸4がさらに回転し、拡張したポンプ室49のダイヤフラム部26が上昇するとポンプ室49は収縮するため、ポンプ室49内の流体の圧力が上昇する。このとき、第2の弁体31の先端部31aは、排気通路40と弁室38との間を開放するため、ポンプ室49内の流体は排気通路40を通って弁室38に流入し、中空部42を介して吐出口43から吐出される。このポンプ室49の拡縮動作は、各ポンプ室49において順次連続して行われるため、各排気通路40から弁室38へ排出された流体は、弁室38によって集められて1つの吐出口43から連続して吐出される。
【0035】
このようなポンプ動作が行われている間、軸受部50の油溜め用溝52、53、54の油蓄積部52c、53c、54cにそれぞれ溜められた油(潤滑油)が油補給路52b、53b、54bから油補給口52a、53a、54aを介して軸受部50の軸孔51に固着されている駆動軸9に対し、3方向から満遍なく油(潤滑油)を供給する。これにより駆動軸9の周面には常時十分な量の油(潤滑油)が満遍なく供給されることになり、摩擦による焼き付きが防止される。
【0036】
また軸受部50では、図1に示すように、油溜め用溝52、53、54の両端がフランジ部50Bの一方の端面と駆動体10の本体14とにより塞がれているため、油溜め用溝52、53、54の油が遠心力により当該軸受部50から外部へ漏れるおそれがなく、駆動軸9の周面に常時十分な量の油を供給することができる。
【0037】
また、油溜め用溝52、53、54の油は、油蓄積部52cから油補給路52bを介して油補給口52aから少量づつ供給されることになるため、過剰な量ではなく必要十分な量の油が駆動軸9の周面に確実に供給されることになる。これにより、駆動軸9の外周面と軸受部50の軸孔51の内周面との間には、長期間の使用に対しても油(潤滑油)が補給された状態を維持することができるので、油(潤滑油)が不足することに起因する油切れが起きず焼き付きを起こすことがなく、ダイヤフラムポンプ1の耐久性を向上させることができる。
【0038】
<第2の実施の形態>
図1との対応部分に同一符号を付した図4、および図5乃至図8に示すように、第2の実施の形態におけるダイヤフラムポンプ100は、第1の実施の形態における駆動体10に代えて第2の実施の形態における駆動体70が用いられた構成を有し、当該駆動体70が用いられている点以外を除いて第1の実施の形態におけるダイヤフラムポンプ1と基本的に同様の構成を有している。
【0039】
この駆動体70は、一方に設けられたボス71と、このボス71の他方に一体に設けられた本体72とによって形成されている。本体72は、円周方向に等角度間隔で中心から放射状に延設された4つの駆動子73(図4では2つの駆動子73だけを示す)を備え、これら4つの駆動子73は中心から先端に向かって何れも同じ角度だけ下方に傾斜されている。駆動子73の先端側には、ダイヤフラム25の各ダイヤフラム部26を取り付けるためのダイヤフラム部取付孔74が形成されている。
【0040】
駆動体70におけるボス71の端面の中心には、駆動体70の駆動軸9が固定されるための軸孔75が形成されている。軸孔75はボス71の端面から本体72を貫通することがなく、当該軸孔75に駆動軸9が挿通されてボス71と一体に固定されるべき所定の深さに形成されている。すなわち、軸孔75は、駆動体70におけるクランク台8と対向する一方の端面に開口する非貫通孔である。
【0041】
駆動体70における本体72の端面には、蓋81(図8)を取り付けるための断面略コ字状でなる凹部76が形成されている。その凹部76の内側には、本体72の端面からボス71の端面まで到達することのない所定深さの断面リング形状の油溜め用溝部77aが形成されるとともに、当該油溜め用溝部77aの空間と連通し、油溜め用溝部77aと同一深さの断面略三角形状でなる油溜め用溝部77bが形成されている。すなわち油溜め用溝部77aおよび油溜め用溝部77bにより油溜め用溝77が構成される。油溜め用溝部77aは、図6に示すように、軸孔75と同一軸線上に配設されて凹部76の底面に開口している。油溜め用溝部77aが請求項3記載の発明でいう「第1の油溜め用溝部」に相当し、油溜め用溝部77bが請求項3記載の発明でいう「第2の油溜め用溝部」に相当する。
【0042】
軸孔75と油溜め用溝部77bとはその一部で重なって空間的に連通するように設けられており、その重なった部分が軸孔75の空間と油溜め用溝部77bの空間とを繋ぎ、油溜め用溝部77bから軸孔75に挿入された駆動軸9へ油を供給するためのスリット79として機能する。
【0043】
ここで、軸孔75と油溜め用溝部77bとの重なった連通部分が長ければ長いほど、軸孔75に挿入された駆動軸9への油の供給範囲が広くなり摩擦による焼き付き防止の効果が高くなる。
【0044】
次に、このように構成されたダイヤフラムポンプ100の動作を説明する。予め、駆動体70における本体72の凹部76の内側に設けられた油溜め用溝77に油(潤滑油)を供給し溜めておく。このような状態としてから、モータ2が駆動し出力軸4が回転すると、クランク台8も一体的に回転し、このクランク台8に出力軸4の軸線から偏心した位置に傾斜した状態で駆動体70に固着された駆動軸9が出力軸4の周りを傾斜方向を変えるようにして偏心回転する。従って、この駆動軸9と一体に回転自在に支持された駆動体70の各駆動子15が順次上下に揺動し、ダイヤフラム25の各ダイヤフラム部26も順次昇降するので、各ポンプ室49は順次拡縮しポンプ動作を行う。
【0045】
このようなポンプ動作が行われている間、駆動体70の油溜め用溝77に溜められた油(潤滑油)が油溜め用溝部77bのスリット79から軸孔75に固着されている駆動軸9に対し2方向から満遍なく供給される。これにより駆動軸9の周面には常時十分な量の油(潤滑油)が満遍なく供給されることになり、摩擦による焼き付きが防止される。
【0046】
また駆動体70では、油溜め用溝77がボス71の端面にまで到達しておらず、両端がボス71の端面と蓋81とで塞がれているため、油溜め用溝77の油が遠心力によりボス71の端面から外部へ漏れることが一切無く、駆動軸9の周面に常時十分な量の油を供給することができる。
【0047】
また、油溜め用溝77の油は、油溜め用溝部77a、77bからスリット79を介して少量づつ常時供給されることになるため、過剰な量ではなく必要十分な量の油が駆動軸9の周面に確実に供給されることになる。これにより、駆動軸9の外周面と駆動体70の軸孔75の内周面との間には、長期間の使用に対しても油(潤滑油)が補給された状態を維持することができるので、油(潤滑油)が不足することに起因する油切れが起きず焼き付きを起こすことがなく、ダイヤフラムポンプ100の耐久性を向上させることができる。
【0048】
<他の実施の形態>
なお、上述した第1の実施の形態においては、図3に示したように、油蓄積部52cから同一幅の油補給路52bを介して油補給口52aから油を供給するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図9に示すように、油蓄積部57cからテーパー状に次第に細くなるように形成された油補給路57bを介して油補給口57aから油を供給するようにしても良い。
【0049】
また、上述した第1および第2の実施の形態においては、駆動軸9とクランク台8とを別部材とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、駆動軸9とクランク台8とを一体に形成するようにしても良い。
【0050】
さらに、上述した第1の実施の形態においては、軸孔51の周囲であって120度ずつ位相をずらした位置に、当該軸孔51と空間連結された3個の油溜め用溝52、53、54がそれぞれ形成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、180度ずつ位相をずらした位置に2個の油溜め用溝を設けたり、90度ずつ位相をずらした位置に4個の油溜め用溝を設けたり、任意の数の油溜め用溝を設けるようにしても良い。
【0051】
さらに、上述した第1の実施の形態においては、軸受部50を成形品として構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、金属製の軸受部を構成するようにしても良い。
【0052】
上述した第2の実施の形態においては、本体72の他方の端面に設けられた凹部76に蓋81(図8)が取り付けられるようにした場合について述べた。
【符号の説明】
【0053】
1…ダイヤフラムポンプ、2…モータ、3…ケース、4…出力軸、5…底部、6…穴、7…ねじ、8…クランク台(回転体)、9…駆動軸、10、70…駆動体、13、71…ボス、14、72…本体、15、73…駆動子、16、74…ダイヤフラム部取付孔、20…ダイヤフラムホルダー、21…天井部、22…ダイヤフラム保持孔、25…ダイヤフラム、26…ダイやフラム部、28…ピストン、29…首部、30…凸部、31…第2の弁体、35…バルブホルダー、41…筒体、42…中空部、43…吐出口、44…第1の弁体取付孔、47…第1の弁体。61…蓋体、62…ガスケット、38…弁室、49…ポンプ室、50…軸受部、51、75…軸孔、60…ばね、61…筒体押さえ板、62…ガスケット、52〜54、76…凹部、77…油溜め用溝、79…スリット。
図1
図2
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図9