(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244103
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】反応性スパッタ堆積のための方法および反応性スパッタ堆積システム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20171127BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20171127BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20171127BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20171127BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
C23C14/34 M
H01L21/316 Y
H01L21/31 D
H05H1/46 A
H05H1/24
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-96735(P2013-96735)
(22)【出願日】2013年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-241677(P2013-241677A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2016年4月25日
(31)【優先権主張番号】61/642,752
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ジェイ. オケンフス
【審査官】
山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−297367(JP,A)
【文献】
特開2000−187892(JP,A)
【文献】
特開平10−079145(JP,A)
【文献】
特表平04−507266(JP,A)
【文献】
特開2000−192237(JP,A)
【文献】
特開平06−293536(JP,A)
【文献】
特開2005−042200(JP,A)
【文献】
特開2011−225992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/31
H01L 21/316
H05H 1/24
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上への誘電体化合物層の反応性スパッタ堆積のための方法であって、
反応性スパッタ堆積チャンバから空気をポンプで排気するステップ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバ内にスパッタリング・ガスを付与するステップ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバの反応性ガス源に反応性ガスを供給するステップ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバの前記反応性ガス源に供給される前記反応性ガスに水蒸気を添加するステップ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバの前記反応性ガス源から前記反応性スパッタ堆積チャンバ内に前記反応性ガスを放出するステップ、ならびに、
前記スパッタリング・ガスをイオン化し、前記スパッタリング・ガスの陽イオンをカソード・ターゲットに的中させるために、前記カソード・ターゲットに負電圧を印加するステップであって、前記カソード・ターゲットの原子が、前記基板に向かって飛行し、前記基板に付着し、前記反応性ガスと、および前記水蒸気と反応することを引き起こすことにより、前記基板上に前記誘電体化合物層を形成するステップを含み、
前記水蒸気が、前記水蒸気を添加しない場合と比べ、前記誘電体化合物層の紫外線の光透過に実質的に影響を与えることなく、前記誘電体化合物層の堆積速度の上昇を可能にする方法。
【請求項2】
前記反応性ガスが酸素ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水蒸気が、5*10−6Torrから5*10−4Torrの間の分圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水蒸気が、1*10−5Torrから5*10−5Torrの間の分圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水蒸気を付与するために水を蒸発させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
水バブラを通して酸素ガスを給送することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応性ガス源がプラズマ活性化反応性ガス源である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応性スパッタ堆積チャンバがアノードを含み、前記アノードを通して前記反応性ガスが添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カソード・ターゲットがケイ素を含み、
前記反応性ガスが酸素を含み、
前記誘電体化合物が二酸化ケイ素を含み、
前記スパッタリング・ガスが、ネオン、クリプトン、キセノン、またはアルゴンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記負電圧が、DC電圧、パルスDC電圧、AC電圧、またはRF電圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水蒸気が、1*10−5Torrから5*10−5Torrの間の圧力である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
反応性スパッタ堆積チャンバの反応性ガス源に反応性ガスを供給するステップ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバの前記反応性ガス源に供給される前記反応性ガスに水蒸気を添加するステップ、および
前記反応性スパッタ堆積チャンバの前記反応性ガス源から前記反応性スパッタ堆積チャンバ内に前記反応性ガスを放出するステップを含み、
前記水蒸気が、前記水蒸気を添加しない場合と比べ、250から750nmの間の波長範囲で誘電体酸化膜の光吸収を実質的に増大することなく、前記誘電体酸化膜の堆積速度の上昇を可能にする方法。
【請求項13】
前記水蒸気を付与するために水を蒸発させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応性ガスが水素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記反応性ガスが、5*10−6Torrから5*10−4Torrの間の圧力での水蒸気を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記反応性ガスが、1*10−5Torrから5*10−5Torrの間の圧力での水蒸気を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記誘電体酸化膜が二酸化ケイ素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
誘電体コーティングによって基板をコーティングするための反応性スパッタ堆積システムであって、
反応性スパッタ堆積チャンバ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバ内部のカソード・ターゲット、
前記カソード・ターゲットに対向して配設される、前記反応性スパッタ堆積チャンバ内部の前記基板を保持するための基板ホルダ、
前記反応性スパッタ堆積チャンバ内部に既定のスパッタリング・ガス圧を生成するためのスパッタリング・ガス入口、
前記反応性スパッタ堆積チャンバ内部の反応性ガス源、それは前記反応性ガス源に供給される反応性ガスを受け取り、前記反応性ガス源に供給される前記反応性ガスに添加される水蒸気を受け取り、および前記反応性ガス源から前記反応性スパッタ堆積チャンバ内に前記反応性ガスを放出するものであり、前記水蒸気が、前記水蒸気を添加しない場合と比べ、前記誘電体コーティングの紫外線の光透過に実質的に影響を与えることなく、前記誘電体コーティングの堆積速度の上昇を可能にするものであり、ならびに、
前記水蒸気および前記反応性ガスの混合物を包含するための、前記反応性ガス源に動作可能に結合される貯蔵器
を備えるシステム。
【請求項19】
前記貯蔵器に結合される水蒸気源をさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜堆積に関し、特に誘電体膜の反応性スパッタ堆積のためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ堆積プロセスでは基板が、低圧で「スパッタリング・ガス」と呼ぶアルゴンなどのガスが充満した真空チャンバ内に配置される。「ターゲット」と呼ぶスパッタリングされることになる材料が、基板の近傍に配設され、陰極すなわちカソードに電気的に接続される。陽極すなわちアノードは、真空チャンバ内部で近傍に配設される。−100から−1000ボルトの間の負の高電圧がカソードに印加され、そのことが、スパッタリング・ガスのイオン化およびカソード・ターゲット上方でのプラズマ放電形成を引き起こす。正に帯電したスパッタリング・ガス・イオンは負に帯電したカソード・ターゲットに衝突し、そのことが、ターゲットの原子が、空間に発射(スパッタリング)され、基板に向かって飛行し、基板に付着することを引き起こす。反応性スパッタ堆積と呼ぶ種々のスパッタ堆積では、酸素などの反応性ガスが、新たに付着した原子との化学反応を直ちに開始して酸化膜などの化学化合物膜を形成するように、基板表面の近傍にさらに付与される。金属ターゲットを、金属原子をスパッタリングするために使用することができる。酸素が基板に付着された原子を酸化するときに、金属酸化膜が形成される。
【0003】
上昇した堆積速度およびより低い動作圧を達成するために、磁気強化型ターゲットが使用されてきた。プレーナ・マグネトロンではカソードは、閉ループに配置構成され、平坦なターゲット板に対して固定位置に取り付けられた永久磁石の配列を含む。したがって磁場によって電子は、一般に「レース・トラック」と称する閉ループ内を進行し、このレース・トラックが確定する経路または領域に沿って、ターゲット材料のスパッタリングまたはエロージョンが起こる。マグネトロンのカソードでは磁場が、グロー放電プラズマを閉じ込め、電場の影響を受けて移動する電子の経路長を増大する。このことによってガス原子−電子衝突確率が上昇する結果となり、それによってスパッタリング速度は、磁気閉じ込めを使用せずに得られるものよりはるかに高くなる。さらにスパッタリング・プロセスを、はるかに低いガス圧で実現することができる。
【0004】
反応性ガスをスパッタ堆積チャンバ内に導入することが、問題を引き起こすことが知られている。反応性ガスは、堆積膜と反応するだけでなく、ターゲットの露出した金属とも反応し、ターゲット金属を酸化し、スパッタリング効率を低減する。このことにより、反応性ガス濃度には実用的な上限がある。その反応性ガス濃度の限度が今度は、スパッタリング速度に関して上限を加える、その理由は、スパッタリング速度が高すぎるときは、反応性ガスがすべてのスパッタリングされた原子と反応せず、そのことが堆積膜の劣化を引き起こすというものである。その結果反応性スパッタ堆積は、たいていは対応する非反応性スパッタ堆積よりはるかに低速のプロセスである。
【0005】
反応性ガス流量が低減し、スパッタリング・ガス流量が増大し、またはカソード電力が増大すると、反応性スパッタリング・プロセスでの堆積速度は上昇するが、膜内に部分的に非酸化の金属が存在するので、堆積膜での光吸収がより大きくなる結果になる。酸化の不足は、酸素流量がより大きくても補償されるのはほんの一部にすぎない場合がある、その理由は、酸素流速がより高くなると、上記で説明したようにスパッタリング効率が低減するので堆積速度の低下を引き起こすというものである。
【0006】
反応性金属化合物の低速の堆積速度に対する様々な解決策が提案されてきた。例えば米国特許第4,851,095号においてScobeyらは、堆積および酸化のプロセスを分離するための、すなわち、堆積および酸化の区域間で反応性ガスの動的な圧力差を生成することにより酸化ガスが堆積区域に入ることを防止するための「分圧(partial pressure)」技法を開示している。この目的を実現するために、堆積および反応の両方の区域が、細長く作製され、垂直ドラムの形態での動く基板キャリアの周辺部に近接して配設される。
【0007】
欧州特許出願第EP0970261A1号においてChaplinらは、高められた速度での金属酸化物または他の化合物のスパッタ堆積のための方法および装置を開示しており、スパッタ堆積ターゲットが基板から通常より大きな距離で配置され、一方でターゲット金属エロージョン・トラックが、従来技術のシステムで典型的なものより狭い幅に閉じ込められる。ターゲットのエロージョン経路の幅を低減することにより、エロージョン経路での未反応金属に対する反応した金属の比を低減することができる。基板から通常より著しくさらに離してターゲットを移動させることによって、基板上の単位面積あたりの堆積速度は低減する。堆積速度のこの低下は、反応が望ましい基板上で起こるべき反応のためのさらなる時間をもたらす。同時に、上方で堆積が起こっている総面積は増大される。ターゲットと基板との間の距離を増大し、単位面積あたりの堆積速度を低減し、ただし堆積が起こる面積を増大することにより、ターゲットに近接して移動する基板上の膜厚は実質的に同じままであるが、より多くの反応が膜で起こる。
【0008】
不利益には、ScobeyおよびChaplinの手法は非常に大きな真空チャンバを必要とする。さらにChaplinの堆積システムにおいてエロージョン・ターゲットの幅を低減することによって、コーティングの均一性が、使用する幾何形状に応じて場合によっては低減する可能性がある。エロージョン・トラックがより狭いとターゲットの利用度が低減し、さらにはエロージョン・トラックが狭いとターゲットでの電力密度が増大する場合があり、そのことによって、ターゲット内の温度勾配がより大きくなるため、ターゲットの裂開さらには剥離が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,851,095号
【特許文献2】欧州特許出願第EP0970261A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、堆積膜の光特性および組成を実質的に損なうことなく、堆積速度の上昇を可能にすることになる、単純な反応性スパッタ堆積の方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
反応チャンバ内に水蒸気などの触媒ガスが存在すると、反応性ガス圧とスパッタリング速度との間の平衡が変化し、より高い全体的な堆積速度が可能になることが見出されている。特にスパッタ堆積チャンバに低い分圧で水蒸気を添加すると、結果として得られる膜の化学組成および光透過(optical transmission)を実質的に損なうことなく、堆積速度を上昇させることができる。
【0012】
本発明によれば、基板上への誘電体化合物層の反応性スパッタ堆積のための方法が提供され、方法は、
(a)カソード・ターゲットおよび基板を中に有する反応性スパッタ堆積チャンバを用意するステップ、
(b)チャンバから空気をポンプで排気するステップ、
(c)チャンバ内にスパッタリング・ガスおよび反応性ガスを付与するステップ、
(d)好ましくは5*10
−6Torrから5*10
−4Torrの間の分圧で、水蒸気などの酸化触媒をチャンバ内に添加するステップ、ならびに、
(e)スパッタリング・ガスをイオン化し、スパッタリング・ガスの陽イオンをターゲットに的中させるために、カソードに電圧を印加するステップであって、ターゲットの原子が、基板に向かって飛行し、基板に付着し、反応性ガスと、および酸化触媒と反応することを引き起こすことにより、基板上に誘電体化合物層を形成するステップを含み、
ステップ(d)が、誘電体化合物層の紫外線の光透過に実質的に影響を与えることなく、誘電体化合物層の堆積速度の上昇を可能にする。
【0013】
本発明の別の態様によれば、スパッタリング・ガスおよび反応性ガスを使用する誘電体酸化膜の反応性スパッタ堆積のための方法がさらに提供され、方法は、250から750nmの間の波長範囲で誘電体酸化膜の光吸収を実質的に増大することなく、誘電体酸化膜の堆積速度を上昇させるために、水蒸気、オゾン、または水素を、スパッタリング・ガスまたは反応性ガスに添加するステップを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、誘電体コーティングによって基板をコーティングするための反応性スパッタ堆積システムがさらに提供され、システムは、
反応性スパッタ堆積チャンバ、
チャンバ内部のカソード・ターゲット、
カソード・ターゲットに対向して配設される、チャンバ内部の基板を保持するための基板ホルダ、
チャンバ内部に既定のスパッタリング・ガス圧を生成するためのスパッタリング・ガス入口、
反応性ガスを付与するためのカソード・ターゲット内部の反応性ガス源、ならびに、
水蒸気および反応性ガスの混合物を包含するための、反応性ガス源に動作可能に結合される貯蔵器
を備える。
【0015】
次に例示的な実施形態を、図面とともに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の反応性スパッタ堆積システムの概略図である。
【
図2】
図1の反応性スパッタ堆積システムを使用する、本発明による反応性スパッタ堆積のための方法のフローチャートである。
【
図3】通常の、および上昇した堆積速度での、水蒸気の添加を伴う、
図1のシステムを使用して成長したSiO
2層の光透過のグラフである。
【
図4】通常の、および上昇した堆積速度での、水蒸気の添加を伴わない、
図1の反応性スパッタ堆積システムを使用して成長したSiO
2層の光透過のグラフである。
【
図5】
図1の反応性スパッタ堆積システムの実施形態の3次元部分切欠図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本教示を様々な実施形態および例とともに説明するが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。それとは反対に本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、修正、および等価物を包含する。
【0018】
図1を参照すると、誘電体コーティング104によって基板102をコーティングするための反応性スパッタ堆積システム100は、スパッタリング・チャンバ106、チャンバ106内部に配設される随意のアノード108、およびカソード・ターゲット110を含む。基板102を保持するための基板ホルダ112が、カソード・ターゲット110に対向してチャンバ106内部に配設される。スパッタリング・ガス入口114および水蒸気入口116が、チャンバ106の底部壁118に配設される。プラズマ活性化反応性ガス源120が、基板102の隣に配置される。真空ポンプ122が、真空チャンバ106に連結される。
【0019】
動作中、基板102は基板ホルダ112に装着され、真空ポンプ122は、矢印124により指示するように空気をポンプで排気するために起動される。スパッタリング・ガス、本例ではアルゴンが、スパッタリング・ガス入口114を通して、チャンバ106内部の既定の圧力まで注入される。反応性ガス、本例では酸素が、プラズマ活性化反応性ガス源120に供給される。カソード・ターゲット110は、本例ではケイ素ターゲットである。DC、パルスDC、AC、またはRFの電圧が、ケイ素カソード・ターゲット110に印加され、アルゴンのイオン化を引き起こす。AC印加電圧の場合、2つのカソード・ターゲット110が典型的には使用され、アノード108は必要とされない。正に帯電したアルゴン・イオン(Ar
+)は、点線125によって示すようにカソード・ターゲット110に的中し、カソード・ターゲット110のケイ素原子が、破線126によって示すように基板102に向かって飛行し、基板102に付着することを引き起こす。プラズマ活性化反応性ガス源120は、既定の圧力レベルで酸素を放出する。酸素は、基板102に付着されたケイ素原子126と反応して、基板102上に二酸化ケイ素層104を形成する。酸化は、カソード・ターゲット110と基板102との間のガス相でも起こり得る。
【0020】
水蒸気などの触媒をチャンバ106に添加することによって、堆積した二酸化ケイ素膜104の光吸収スペクトルに実質的に影響を及ぼすことなく、二酸化ケイ素膜104の堆積速度を上昇させることが可能になることを発明者らは見出している。水蒸気は、5*10
−6Torrから5*10
−4Torrの間の分圧レベルで、水蒸気入口116を通してチャンバ106に添加された。
【0021】
図2を参照すると、基板102上への誘電体化合物層、本例では二酸化ケイ素膜104の反応性スパッタ堆積のための方法200は、反応性スパッタリング・チャンバ106を用意するステップ202を含む。ステップ204では、空気がチャンバ106からポンプで排気される。ステップ206では、スパッタリング・ガス(例えばアルゴン)および反応性ガス(例えば酸素)がチャンバ106内に付与される。ステップ208では、好ましくは5*10
−6Torrから5*10
−4Torrの間の分圧で、およびより好ましくは1*10
−5Torrから5*10
−5Torrの間の分圧で、水蒸気などの酸化触媒がチャンバ106内に添加される。ステップ210では、アルゴン・ガスをイオン化し、アルゴン・イオンをカソード・ターゲット110に的中させるために、カソード・ターゲット110に電圧が印加され、カソード・ターゲット110のケイ素原子が、基板102に向かって飛行し、基板102に付着し、酸素および水蒸気と反応することを引き起こすことにより、基板102上に二酸化ケイ素膜104を形成する。ステップ208では水蒸気を、水バブラ(water bubbler)を通して酸素ガスを給送することにより添加することができる。
【0022】
ステップ208での水蒸気を添加するステップが、二酸化ケイ素層104の紫外線の光透過に実質的に影響を与えることなく、二酸化ケイ素層104の堆積速度を上昇させることがわかっている。
図3を参照すると、測定した光スペクトル301は、3.5*10
−7Torrの全圧で水蒸気が添加されない状態での、0.84nm/sの速度での堆積の30分後に得られた二酸化ケイ素サンプルに対応する。光スペクトル302は、3*10
−5Torrの水蒸気分圧で、0.92mn/sに10%だけ上昇した堆積速度での堆積の30分後に得られた二酸化ケイ素サンプルに対応する。光透過スペクトルは、270nmから800nmの間の波長で実質的に影響を受けていないことが明確にわかる。250nmから270nmの間の光透過は、実際に改善されている。水蒸気を用いて得られたスペクトル302の波長の脈動周期がより小さいことは、上昇した堆積速度での堆積の30分で、より厚い二酸化ケイ素層104が実際に形成されたことを指し示す。この結果は、反応性スパッタリング・チャンバ106に水蒸気を添加することによって、二酸化ケイ素膜104内の非酸化のケイ素原子の割合を上昇させることなく、少なくとも10%だけ堆積速度が向上することを指し示す。
【0023】
上昇した堆積速度が実際に水蒸気の存在に起因することを検証するために、水蒸気が存在しない場合にスパッタリング速度が上昇された対照実験を遂行した。次に
図4に目を向けると、光スペクトル301が比較のために
図3から再掲されている。対照光スペクトル402は、0.92nm/sの上昇した堆積速度での、ただし水蒸気の添加なしでの堆積の30分後に得られた二酸化ケイ素サンプルに対応する。対照実験での光透過が、特に250nmから450nmの紫外線の波長範囲で相当により劣っていたことがわかる。一方で、
図3の第2の透過スペクトル302のUV波長範囲は本質的に影響を受けていない。したがって、5*10
−6Torrから5*10
−4Torrの間の分圧で水蒸気を添加することによって、二酸化ケイ素層104の紫外線の光透過に実質的に影響を与えることなく、二酸化ケイ素層104の堆積速度の上昇が可能になる。
【0024】
1*10
−5Torrから5*10
−5Torrの間の水蒸気分圧範囲が好ましい。すべての場合でポンプの排気速度は約10,800l/sであり、その結果20sccmから30sccmの間のガス流量となったが、25sccm±2sccmのガス流量がSiO
2に対して最適であることがわかった。
【0025】
水蒸気を、制御可能な少量の液体水を供給するために、ニードル・バルブを通してチャンバ106内に導入することができる。図示しないニードルは、チャンバの内側に突出する場合があり、図示しない遮蔽物、例えば保護箔の後側に隠される場合がある。水蒸気を、少量の水を蒸発させ、プラズマ活性化酸素源120に供給される酸素に蒸気を添加することにより、チャンバ106の外側でさらに得ることができる。あらかじめ形成した水蒸気を、アノード108
を通してさらに給送することができる。プロセス制御目的では、水蒸気を他のプロセス・ガスとともに、特に反応性ガスとともに導入し、反応性ガスおよび水蒸気の混合物をプラズマ活性化ガス源120に給送することが有利である。
【0026】
カソード・ターゲット110は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ならびに他の金属もしくは半導体を含み得る。スパッタリング・ガスは、アルゴンだけでなく別の、好ましくは不活性の、ネオン、クリプトン、またはキセノンなどのガスを含み得る。スパッタリング・ガスは、スパッタリング・イオンがターゲット110の原子と衝突する際に機械的衝撃をより良く伝達するために、可能な限り近くターゲット材料の原子質量に一致するように選択される。
【0027】
水分子の様々な原子団が、反応性スパッタリング・プロセスの酸化効率を向上させるために触媒の働きをすることができる。カソード・ターゲット110に負の高電圧を印加することによって、カソード・ターゲット110の前部にプラズマが生成し、そこでは正に帯電したアルゴン・イオンが負に帯電したカソード・ターゲット110に向かって加速される。プラズマ活性化酸素源120で生成されたプラズマに対して追加的なプラズマの第2の機能は、活性化された原子状酸素および酸素イオンを生成することである。これらの励起された酸素種は、O
2分子よりはるかに効率的に金属を酸化することができる。次に水が、プラズマ内で解離し、H
+、H
2、O
*、O
−、またはHO
−の種を形成することができる。酸素を含有するもののすべてが、酸化効率を向上させる。
【0028】
1つのあり得る機構は、H
2O分子がH
2およびOに解離するというもの、ならびに、原子状酸素Oが、分子状酸素O
2より容易にスパッタリング・ブルーム内の金属原子と結び付くというものである。オゾン(O
3)を添加することでもまた、指定した波長範囲で光吸収スペクトルに影響を及ぼすことなく、堆積効率を上昇させることができる。別の起こり得ることは、OH−が、プラズマ内で形成され、負に帯電したカソード・ターゲット110から離れるように加速されることになり、ターゲット表面でではなく、スパッタ・ブルーム内で、または基板102もしくはチャンバ106の壁上のいずれかで再結合することになり、成長する膜104を酸化する確率が上昇するということである。別の考えられる機構は、H
2O分子の解離に基づく水素の形成が、膜104の酸化の助力となり得るというものである。したがって水素を、
図2の方法200によって動作させられる
図1のシステム100での水蒸気の代わりに使用することができる。基板102上に誘電体酸化膜104を堆積させるために、酸化膜材料に応じて、250から750nmの間、または少なくとも420nmから750nmの間の波長範囲で膜104の光吸収を実質的に増大することなく、誘電体酸化膜104の堆積速度を上昇させるために、水蒸気、オゾン・ガス、または水素ガスが反応性ガスに添加される。
【0029】
次に
図1をさらに参照しながら
図5に目を向けると、反応性スパッタリング堆積システム100の好ましい実施形態500が提示されている。反応性マグネトロン・スパッタリング堆積システム500のマルチ基板ホルダ512が、複数の基板102上への、図示しないコーティングの同時堆積のためにチャンバ506内部で垂直軸を中心に回転する。1対のリング・カソード・ターゲット510が、単一のカソード・ターゲット110の代わりに使用される。反応性ガスおよび水蒸気の混合物が、対応するリング・カソード・ターゲット510の中央に配設される1対の入口520を通して給送される。入口520は貯蔵器530に連結され、貯蔵器530内では反応性ガスが、水蒸発器を含み得る随意の水蒸気源536により付与される水蒸気とプレミックスされる。随意の搬入口532は、基板ハンドラ534によってゲート・バルブ550を通してチャンバ506内に後で運び入れるための余分の基板のカセット102Aを包含する。ターボ・ポンプ522は、チャンバ506の外に空気をポンプで排気する。反応性ガスおよび水蒸気の混合物を、アノード108
を通してさらに添加することができる。
【0030】
本発明の1つまたは複数の実施形態の上述の説明は、例示および説明の目的で提示したものである。網羅的であること、または本発明を開示した正確な形態に限定することは意図されない。多くの修正および変形が、上記の教示を考慮して考えられる。本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ本明細書に添付した特許請求の範囲によって限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
100 反応性スパッタ堆積システム、システム、反応性スパッタリング堆積システム
102 基板
102A カセット
104 誘電体コーティング、二酸化ケイ素層、二酸化ケイ素膜、膜、誘電体酸化膜
106 スパッタリング・チャンバ、チャンバ、真空チャンバ、反応性スパッタリング・チャンバ
108 アノード
110 カソード・ターゲット、ケイ素カソード・ターゲット、ターゲット
112 基板ホルダ
114 スパッタリング・ガス入口
116 水蒸気入口
118 底部壁
120 プラズマ活性化反応性ガス源、プラズマ活性化酸素源、プラズマ活性化ガス源
122 真空ポンプ
124 矢印
125 点線
126 破線、ケイ素原子
200 方法
202、204、206、208、210 ステップ
301 光スペクトル
302 光スペクトル、透過スペクトル、スペクトル
402 対照光スペクトル
500 好ましい実施形態、反応性マグネトロン・スパッタリング堆積システム
506 チャンバ
510 リング・カソード・ターゲット
512 マルチ基板ホルダ
520 入口
522 ターボ・ポンプ
530 貯蔵器
532 搬入口
534 基板ハンドラ
536 水蒸気源
550 ゲート・バルブ