特許第6244110号(P6244110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244110
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20171127BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20171127BHJP
   B60T 17/18 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   B60R16/02 650R
   B60L3/00 H
   !B60T17/18
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-116318(P2013-116318)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-234061(P2014-234061A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩上 直記
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−276706(JP,A)
【文献】 特開2010−074915(JP,A)
【文献】 特開2013−161240(JP,A)
【文献】 特開2000−194403(JP,A)
【文献】 実開平01−146739(JP,U)
【文献】 特開2000−108887(JP,A)
【文献】 特開2007−198995(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−16/08
B60L 3/00− 3/12
B60T 7/12− 8/96
B60T 17/18−17/22
B62D 5/04− 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載バッテリに第1のラインを介して接続されると共に、第2のラインを介して接続される、負荷への電力供給遮断用のフェールセーフリレーと、
一端が前記第2のラインに接続され、他端が接地された容量性素子と、
前記フェールセーフリレーを挟んで前記第1のラインと前記第2のラインのそれぞれの電圧を監視する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第2のラインに接続される負荷の駆動時に、前記フェールセーフリレーの遮断を解除し、
前記第2のラインに接続される負荷の非駆動時に、前記フェールセーフリレーを所定時間遮断したときの、前記第1のラインの第1の電圧と前記第2のラインの第2の電圧との差に基づき、前記第2のラインの任意の部位で発生する短絡故障を診断することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記短絡故障が検出された場合に、前記フェールセーフリレーを遮断し、前記短絡故障が検出されなかった場合に、前記フェールセーフリレーの前記所定時間の遮断を解除することを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記短絡故障の診断を一定周期にて所定回数行い、前記短絡故障が所定回数連続して検出された場合に前記検出の結果を確定して外部に報知することを特徴とする請求項1または2記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記フェールセーフリレーの遮断前と遮断後における前記第1のラインの電圧の変動の幅によっては前記短絡故障の診断を禁止することを特徴とする請求項3記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回生ブレーキ機能を有する車両に搭載される電動サーボブレーキシステムに用いて好適な電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回生ブレーキ機能を有する車両において、駆動モータは、車両走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ね、減速時には減速エネルギーを電力に変換して回生制動力を生成する。具体的に、ドライバがアクセルペダルから足を離した瞬間に電気の回収が始まり、ブレーキペダルを踏むと駆動モータによる減速を強めることで更に多くの電気を作り出して車載バッテリに充電を行う。また、車両には、回生ブレーキ機能を実現するため、駆動用ECUと協調し、回生制御の一端を担う電動サーボブレーキシステムが備わっている。
【0003】
上記した回生ブレーキ機能を有する電動サーボブレーキシステムのように、モータ負荷を有する電子制御装置では、車載バッテリのB+端子に接続される負荷電源ラインに、リップル除去用の、一端が接地された電解コンデンサが設けられている。同じく、負荷電源ラインには、緊急時に車載バッテリからの電力を遮断するフェールセーフリレーが接続されており、このフェールセーフリレーが作動することによってモータ負荷が車載バッテリから切り離され、結果的に負荷回路を過電流等の異常から保護することができる。
【0004】
ところで、上記した電子制御装置において、負荷電源ラインの任意の部位で発生する地絡故障が知られている。ここでいう負荷電源ラインとは、フェールセーフリレーの下流からモータ負荷に至る電源ラインをいう。この負荷電源ラインの任意の部位で地絡故障が発生すると、一定の抵抗成分が負荷電源ラインの任意の部位と接地された車体との間に設定される。従来、この地絡部位に流れる電流を、シャント抵抗やホール素子等、専用の電流検出器で監視することにより検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、地絡部位の電圧低下を監視することで検出する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−108887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電流検出器による地絡検出方法によれば、電流検出機能を有する専用回路が必要になるため、コストや部品実装密度の観点から不利である。また、地絡部位の電圧を監視する方法によれば、一定の抵抗成分を持つ地絡により検出閾値まで電圧が低下しない場合には検出性能が低下する。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、電流検出のための専用回路を不要とし、かつ抵抗成分を持つ短絡の検出性能の向上をはかった、電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車載バッテリに第1のライン(例えば、図2の正極電源ライン56)を介して接続されると共に、第2のライン(例えば、図2の負荷電源ライン57)を介して接続される、負荷(例えば、図2の外部負荷12としての電動サーボモータ)への電力供給遮断用のフェールセーフリレー(例えば、図2のFSR53)と、一端が前記第2のラインに接続され他端が接地された容量性素子(例えば、図2の電解コンデンサ54)と、前記フェールセーフリレーを挟んで前記第1のラインと前記第2のラインのそれぞれの電圧を監視する制御部(例えば、図2の制御部51)とを備え、前記制御部は、前記第2のラインに接続される負荷の駆動時に、前記フェールセーフリレーの遮断を解除し、前記第2のラインに接続される負荷の非駆動時に、前記フェールセーフリレーを所定時間遮断したときの、前記第1のラインの第1の電圧と前記第2のラインの第2の電圧との差に基づき、前記第2のラインの任意の部位で発生する短絡故障の診断を行うことを特徴とする電子制御装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の電子制御装置において、前記制御部は、前記短絡故障が検出された場合に、前記フェールセーフリレーを遮断し、前記短絡故障が検出されなかった場合に、前記フェールセーフリレーの前記所定時間の遮断を解除することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の電子制御装置において、前記制御部は、前記短絡故障の診断を一定周期にて所定回数行い、前記短絡故障が所定回数連続して検出された場合に前記検出の結果を確定して外部に報知することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の電子制御装置において、前記制御部は、前記フェールセーフリレーの遮断前と遮断後における前記第1のラインの電圧の変動の幅によっては前記短絡故障の診断を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、制御部は、負荷の非駆動時にフェールセーフリレーを所定時間だけ遮断し、第1のラインの第1の電圧と、第2のラインの第2の電圧との差に基づき第2のラインの短絡故障の診断を行なう。このため、地絡発生時に第2のラインの第2の電圧を容量性素子により一定の傾きで低下させることができ、この電圧(第2の電圧)と第1の電圧との差分から短絡による故障診断が可能になる。このとき、容量性素子は既存のハードウエアを使用し、かつ、診断をソフトウエアで実現することで電流検出のための専用回路を不要とし、したがって、コスト低減、部品実装密度の削減に寄与することができる。また、故障診断は負荷の非駆動時に実行されるため診断処理が負荷の動作に影響を与えることがない。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、診断により短絡故障が検出された場合にフェールセーフリレーを遮断するため、第2のラインに接続される負荷および装置内部の回路保護が可能である。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、短絡故障の診断を一定周期にて所定回数行い、短絡故障が所定回数連続して検出された場合に結果を確定するため、信頼性の高い短絡故障の診断を行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、フェールセーフリレー遮断中に車載バッテリの電圧が変動した場合でもその変動幅によっては一時的に短絡故障の診断を禁止するため、故障診断の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る電子制御装置を搭載した車両の概略構造を模式的に示した図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電子制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電子制御装置の診断前処理の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態に係る電子制御装置の診断処理の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に係る電子制御装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る電子制御装置(電動サーボブレーキ用ECU)を搭載した車両1の概略構造を模式的に示している。図1に示すように、車両1は、車両前方に配設された左右一対の前輪2と、車両後方に配設された左右一対の後輪3とを有する。左右の前輪2に連結された前輪車軸4には駆動モータ5がトルク伝達可能に連結されている。なお、前輪車軸4に設けられる差動機構は図示省略してある。
【0019】
駆動モータ5には比較的大容量の駆動用バッテリ70が接続されている。駆動用バッテリ70の電力は駆動モータに供給されると共に、駆動モータ5による発電電力が駆動用バッテリ70に対して電力供給(充電)されるように駆動用ECU60によって制御される。これにより、駆動モータ5は、車両走行用の電動機と回生用の発電機とを兼ね、減速時には減速エネルギーを電力に変換して回生制動力を生成する。具体的に、ドライバがアクセルペダルから足を離した瞬間に電気の回収が始まり、ブレーキペダル11を踏むと駆動モータによる減速を強めることで更に多くの電気を作り出して駆動用バッテリ70に充電を行う。
【0020】
駆動用ECU60は、内蔵のCPUにより、回生制動と油圧制動とを組み合わせた回生協調制御を行う。なお、電気車両の場合にはこの構成のまま、又は後輪3を駆動する後輪用の駆動モータを設けてもよいが、ハイブリッド車両の場合には前輪車軸4には図の二点鎖線で示されるエンジン(内燃機関)Eの出力軸が連結される。図のエンジンEの場合には前輪駆動の例であるが、四輪駆動とすることもできる。
【0021】
前輪2及び後輪3の各車輪には、車輪(前輪2・後輪3)と一体のディスク2a・3aとホイールシリンダ2b・3bを備えるキャリパとにより構成される公知のディスクブレーキが設けられている。ホイールシリンダ2b・3bには、公知のブレーキ配管を介してブレーキ液圧発生装置8が接続されている。ブレーキ液圧発生装置8の下流には、図示省略したVSA(Vehicle Stability Assist)システムが配置されており、当該VSAシステムが車輪別にブレーキ圧を増減させている。
【0022】
なお、ブレーキペダル11にはブレーキペダル11の位置であるペダル位置を検出するペダル位置センサ11aが設けられている。ペダル位置センサ11aは、運転者にブレーキペダルが踏み込まれていない状態を初期状態(ペダル位置=0)として、運転者の踏み込み量であるペダル操作量(ブレーキ操作量)を検出することができる。このペダル位置センサ11aの各検出信号は電動サーボブレーキ用ECU(以下、単にECU50という)に供給されている。
【0023】
電動サーボブレーキシステム10は、ECU50を含み、回生ブレーキ機能を実現するため、駆動用ECU60と協調して回生制御の一端を担う。ECU50は、ブレーキペダル11の操作量をペダルセンサ11aによって検出し、その検出値に基づいてブレーキ液圧発生装置8が有するモータ駆動シリンダ(図示省略)を駆動してブレーキ液圧を発生させる。このため、ブレーキ液圧発生装置8は電動サーボモータ(以下、外部負荷12という)を含む。ECU50は、車載バッテリ40によって電力が供給される。ECU50は、後述する第2のライン(図2の負荷電源ライン57)に接続される外部負荷12の非駆動時に、フェールセーフリレー(図2のFSR(53))を所定時間遮断したときの、第1のライン(図2の正極電源ライン56)の第1の電圧と第2のラインの第2の電圧との差に基づき、第2のラインの任意の部位で発生する短絡故障を診断する「制御部」としても機能する。詳細は後述する。
【0024】
図2は、図1に示すECU50の内部回路構成を示すブロック図である。図2に示すように、ECU50は、制御部51と、フェールセーフリレー駆動回路(以下、FSR駆動回路52という)と、フェールセーフリレー(以下、FSR53という)と、電解コンデンサ54(容量性素子)と、負荷駆動回路55とを含み構成される。
【0025】
FSR53は、緊急時の電源遮断用に設けられ、一端が車載バッテリ40のBATT+端子に接続される正極電源ライン56に、他端が負荷電源ライン57に接続される。また、電解コンデンサ54は、主に平滑用に使用され、一端が負荷電源ライン57に接続され、他端が接地されている。
【0026】
制御部51は、FSR53両端の正極電源ライン56と負荷電源ライン57のそれぞれの電圧を監視する。具体的に、制御部51は、負荷電源ライン57に接続される駆動モータ等の外部負荷の非駆動時に、FSR53を所定時間遮断したときの、正極電源ライン56の第1の電圧(BATT電圧)と、負荷電源ライン57の第2の電圧(MOT−SRC電圧)との差に基づき、負荷電源ライン57の任意の部位で発生する短絡故障を診断する。ここで、負荷電源ライン57の任意の部位で発生する短絡故障とは、例えば、ECU50内で発生する、インピーダンスSzを有する地絡故障A、外部負荷12として接続される電動サーボモータの各相ラインのいずれかで発生する、インピーダンスSzを有する地絡故障Bをいう。
【0027】
このため、制御部51は、演算制御部51aと、入出力制御部51bとを含み構成される。演算制御部51aは、診断実行タイマ(DT),診断実行フラグ(DF),フェールカウンタ(FC)、バッテリ電圧前回値(BBR)をプログラムに割り当てたRAM等により管理する。また、演算制御部51aは、負荷電源ライン57に接続される駆動モータの非駆動時に、FSR53を所定時間遮断したときの正極電源ライン56の第1の電圧と、負荷電源ライン57の第2の電圧との差に基づき、負荷電源ライン57の任意の部位で発生する短絡故障を診断する。このため、演算制御部51aは、入出力制御部51bを介してFSR駆動回路52の制御を行い、かつ、入出力制御部51bを介して、第1の電圧(BATT電圧)と第2の(MOT−SRC電圧)の取り込みを行なう。
【0028】
負荷駆動回路55は、外部負荷12である電動サーボモータを駆動する、例えば、3相ブリッジ回路である。負荷駆動回路55は、例えば、6個の半導体スイッチング素子を含み、正極電源ライン57に接続されている。なお、3相ブリッジ回路は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等、FET以外の複数のスイッチングトランジスタで構成してもよい。なお、外部負荷12は、電動サーボモータ以外に、ブレーキ液圧発生装置8が有するソレノイドバルブも含む。
【0029】
なお、入出力制御部51bには、更に、車両メータ等の表示器80が接続されている。演算制御部51aは短絡故障の診断を一定周期内に所定回数行い、短絡故障が所定回数連続して検出された場合に検出の結果を確定して外部に報知するが、このとき、表示器80に報知される。
【0030】
(実施形態の動作)
以下、図3図4のフローチャートを参照しながら、図1図2に示す本実施形態に係るECU50の診断処理動作について詳細に説明する。図3は、診断前処理の動作を、図4は、診断処理の動作を示す。
【0031】
制御部51(演算制御部51a)は、診断処理に先立ち、図3に示すように、内部のカウンタ、フラグ、レジスタ類に初期設定を行う。ここでは、診断実行タイマDTに初期値"0",診断実行フラグDFにデフォルト値"0",フェールカウンタFCに初期値"0"、バッテリ電圧前回値BBRに初期値"0"、規定値1に100[ms]、規定値2に5[回]を設定する(ステップS100)。すなわち、演算制御部51aは、診断周期を100[ms]とし、5回連続して短絡故障が検出された場合に、負荷電源ライン57の地絡故障による異常を確定するというものである。
【0032】
診断処理を実行するにあたり、演算制御部51aは、図4に示すように、診断実行タイマDTによるタイムカウントを開始する(ステップS101)。演算制御部51aは、規定値100[ms]とタイムカウント値との比較を行い(ステップS102)。タイムカウント値が規定値1以上であれば(ステップS102"Yes")、更に、外部負荷12が駆動しているか否かを判定する(ステップS103)。演算制御部51aは、タイムカウント値が規定値1未満であれば(ステップS102"No")、診断実行フラグDFをOFFして遮断信号の解除状態を維持し、FSR駆動回路52を制御してFSR53に対して供給されている遮断信号を解除する(ステップS115)。
【0033】
演算制御部51aは、駆動モータの駆動状態を判別する(ステップS103)。演算制御部51aは、外部負荷12の駆動時(ステップS103"No")、診断処理を一時停止するために診断フラグDFをOFFしてFSR53への遮断信号を解除するとともに、フェールカウンタFCをクリアする(ステップS114)。
【0034】
続いて、演算制御部51aは、診断実行フラグDFがONしているか否かを判定する(ステップS104)。診断実行フラグDFがONしていなければ(ステップS104"No")、演算制御部51aは、FSR53遮断前にBATT電圧の測定値を前回値レジスタBBRに設定し(ステップS112)、診断フラグDFをONしてFSR53を遮断すべく入出力制御部51b経由で遮断信号を出力する。診断実行フラグDFがONしていれば(ステップS104"Yes")、演算制御部51aは、BATT電圧と、前回値+閾値1とを比較することにより、オルタネータ発電によるBATT電圧の上昇を監視する(ステップS105)。
【0035】
ステップS105で、BATT電圧が(前回値+閾値1)超過であれば(ステップS105"No")、演算制御部51aは、短絡故障を誤検知してしまうことを防ぐために、演算制御部51aによる診断処理を禁止し、診断実行フラグ(DF)をOFFすることにより診断処理を禁止するとともに、FSR遮断信号を解除し、更に、フェールカウンタFCをクリアする(ステップS111)。これは、BATT電圧が上昇することにより見掛け上MOT−SRC電圧がBATT電圧に対して低くなるために、FSR53遮断前後のBATT電圧の変動幅によって診断処理を一時的に禁止するための処置である。
【0036】
一方、BATT電圧が前回値+閾値1以下であれば(ステップS105"Yes")、演算制御部51aは、更に、BATT電圧から負荷電源ライン57のMOT−SRC電圧を減算した値と閾値2とを比較する(ステップS106)。ここで、BATT電圧から負荷電源ライン57のMOT−SRC電圧を減算した値が閾値2以上であれば(ステップS106"Yes")、演算制御部51aは、フェールカウンタ(FC)をカウントして診断処理を繰り返し(ステップS107)、閾値2未満であれば(ステップS106"No")、フェールカウンタFCをクリアする(ステップS110)。
【0037】
そして、演算制御部51aは、診断実行タイマ(DT)をクリア、診断実行フラグ(DF)をOFF、FSR遮断信号を解除して(ステップS116)診断処理を繰り返す。
【0038】
ステップS107でフェールカウンタFCが更新されると、演算制御部51aは、フェールカウンタFCの値と規定値"5"とを比較する(ステップS108)。ここで、フェールカウンタFCが規定値2超過の場合(ステップS108"Yes")、異常確定処理を実行して診断処理を終了する(ステップS109)。ここで、異常確定処理とは、入出力制御部51bを介してFSR駆動回路52によりFSR53を遮断して表示器80に短絡故障を報知する処理をいう。フェールカウンタFCが規定値2未満の場合(ステップS108"No")、演算処理部51aは、診断実行タイマ(DT)をクリアし、診断実行フラグ(DF)をOFFし、そしてFSR遮断信号を解除して(ステップS116)診断処理を繰り返す。
【0039】
負荷電源ライン57が地絡故障をしていない場合、MOT−SRC電圧はBATT電圧に対して低下せず、地絡故障が発生している場合、MOT−SRC電圧は、FSR53をOFFする時間と、地絡電流と、電解コンデンサ54の容量とによって決まる電圧分だけ低下する。この電圧の低下を演算処理部51aによる診断処理によって検出し、フェールカウンタFCによって規定された回数だけ演算制御部51aによる診断処理を繰り返すことで地絡故障による異常を確定するものである。
【0040】
図5に本実施形態に係るECU50の動作がタイミングチャートで示されている。図5によれば、制御部51は、診断処理を開始するにあたり、駆動モータ(外部負荷)の非駆動時に、例えば、2[ms]の一定期間、FSR53を遮断すべくFSR駆動回路52に対してFSR駆動信号(遮断)を出力する(図5(a)(d))。そして、一定時間(2[ms])経過後、BATT電圧と負荷電源ライン57のMOT−SRC電圧とを監視し、FSR駆動回路52に対する遮断信号を解除する。
【0041】
そして、負荷電源ライン57が地絡故障をしていない場合、MOT−SRC電圧はBATT電圧に対して低下せず、地絡故障が発生している場合、MOT−SRC電圧は、FSR53をOFFする時間と、地絡電流と、電解コンデンサ54の容量とによって決まる電圧分だけ低下する(図5(e)(f))。この電圧の低下を制御部51が規定数である5回の診断処理によって検出し、地絡故障による異常を診断する(図5(b)(c))。
【0042】
なお、FSR53が遮断中、オルタネータ発電によりBATT電圧が上昇した場合、MOT−SRC電圧がBATT電圧より低下することになり、地絡故障として誤判定することを防ぐために、FSR53遮断前後のBATT電圧の変動幅によって診断処理を一時的に禁止する処理が含まれる。また、診断周期は、駆動モータの正常動作に影響がなく、例えば、1[S]間に1回の頻度等、負荷電源ライン57が過電流等を許容できる範囲で異常確定のために診断処理を繰り返している。
【0043】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係るECU50によれば、制御部51は、外部負荷としての駆動モータの非駆動時にFSR53を所定時間だけ遮断し、第1のライン(正極電源ライン56)の第1の電圧と、第2のライン(負荷電源ライン57)の第2の電圧との差に基づき第2のラインの短絡故障の診断を行なう。このため、例えば、地絡発生時に第2のラインに印加される第2の電圧を容量性素子(電解コンデンサ54)により一定の傾きで低下させることができ、この電圧(第2の電圧)と第1のラインに係る第1の電圧との差分から故障診断が可能になる。このとき、容量性素子として、既存のリップル除去用の電解コンデンサ54を使用することができ、かつ、診断をソフトウエアで実現することで、電流検出のための専用回路を不要とし、したがって、コスト低減、部品実装密度の削減に寄与することができる。また、故障診断は外部負荷の非駆動時に実行されるため診断が外部負荷12の動作に影響を与えることがない。
【0044】
また、本実施形態に係るECU50によれば、制御部51は、診断により短絡故障が検出された場合にFSR53を遮断し、第2のラインに接続される負荷、および装置内部の回路保護が可能である。また、短絡故障の診断を一定周期にて所定回数行い、短絡故障が所定回数連続して検出された場合に結果を確定するため、信頼性の高い短絡故障の診断を行うことができる。更に、FSR53遮断中にオルタネータ発電により車載バッテリ40の電圧が変動した場合でもその変動幅によっては一時的に短絡故障の診断を禁止するため、故障診断の信頼性が向上する。
【0045】
(変形例)
なお、本実施形態に係るECU50によれば、外部負荷12(電動サーボモータ)を駆動する場合についてのみ例示したが、ソレノイドバルブを制御する場合も同様であり、この場合、負荷電源ライン57が許容できる範囲内で診断周期を選択することで外部負荷に影響を与えることなく診断処理が実現できる。また、本実施形態に係るECU50によれば、地絡故障に対する診断処理についてのみ例示したが、短絡故障についても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・車両、12・・・外部負荷(電動サーボモータ)、40・・・車載バッテリ、50・・・電子制御装置(電動サーボブレーキ用ECU)、51・・・制御部、52・・・フェールセーフリレー(FSR)駆動回路、53・・・フェールセーフリレー(FSR)、54・・・容量性素子(電解コンデンサ)、55・・・負荷駆動回路、56・・・正極電源ライン、57・・・負荷電源ライン、60・・・駆動用ECU、70・・・駆動用バッテリ、80・・・表示器
図1
図2
図3
図4
図5