特許第6244139号(P6244139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244139
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】遠隔サーバ
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20171127BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20171127BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G06Q50/10
   A01D41/12 B
   F02D29/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-176841(P2013-176841)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-46006(P2015-46006A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】大内田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】江口 慎悟
【審査官】 青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−188183(JP,A)
【文献】 特開2006−302096(JP,A)
【文献】 特開2010−156152(JP,A)
【文献】 特開2003−120405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
A01D 41/12
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式作業機械から作業部の稼働・非稼働情報、作業日情報、移動速度情報およびエンジン負荷率情報を受信する遠隔サーバにおいて、
前記移動式作業機械の全ての作業部が非稼働で前記移動式作業機械の移動速度が所定移動速度以上のときのエンジン負荷率の平均値を所定期間毎に演算し、ある期間のエンジン負荷率の平均値が当該期間よりも前の期間のエンジン負荷率の平均値に対して所定の相違状態である場合に当該移動式作業機械の移動用の動力伝達機構に異常が発生していると判定する、
遠隔サーバ。
【請求項2】
移動式作業機械から機種情報、作業期間情報、位置情報、移動速度情報およびエンジン負荷率情報を受信する遠隔サーバにおいて、
位置情報に基づいて作業地域を特定し、前記特定した作業地域において同一作業日に作業を行う複数の同一機種の移動作業式機械について移動速度が所定移動速度以上のときのエンジン負荷率の平均値を算出し、前記複数の同一機種の移動式作業機械のうち一の移動式作業機械のエンジン負荷率の平均値が、当該一の移動式作業機械以外のエンジン負荷率の平均値と対比して、所定値以上高い状態が所定期間持続する場合に当該移動式作業機械の動力伝達機構に異常が発生していると判定する、
遠隔サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達機構の異常発生を判定する遠隔サーバの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔サーバとは、遠方のユーザーに対して何らかのサービスを提供するものである。近年、作業機械を販売した後であっても、作業機械の稼働状況を遠隔サーバによって遠隔監視し、ユーザーに対してメンテナンス情報等を提供している。例えば、特許文献1には、遠隔サーバで作業機械の部品寿命を管理する構成が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、CVT変速装置のベルトのすべりを検知する構成が開示されている。しかし、特許文献2に開示される構成では、変速比の理論値と実測値との差や比と比較するための閾値を予め準備する必要がある。また、特許文献1に開示される遠隔サーバでは、動力伝達系の異常を検知する構成を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−100305号公報
【特許文献2】特開2004−301230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、予め閾値を用いることなく動力伝達系の異常発生を判定できる遠隔サーバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、移動式作業機械から作業部の稼働・非稼働情報、作業日情報、移動速度情報およびエンジン負荷率情報を受信する遠隔サーバにおいて、前記移動式作業機械の全ての作業部が非稼働で前記移動式作業機械の移動速度が所定移動速度以上のときのエンジン負荷率の平均値を所定期間毎に演算し、ある期間のエンジン負荷率の平均値が当該期間よりも前の期間のエンジン負荷率の平均値に対して所定の相違状態である場合に当該移動式作業機械の移動用の動力伝達機構に異常が発生していると判定するものである。
【0008】
請求項2においては、移動式作業機械から機種情報、作業期間情報、位置情報、移動速度情報およびエンジン負荷率情報を受信する遠隔サーバにおいて、位置情報に基づいて作業地域を特定し、前記特定した作業地域において同一作業日に作業を行う複数の同一機種の移動作業式機械について移動速度が所定移動速度以上のときのエンジン負荷率の平均値を算出し、前記複数の同一機種の移動式作業機械のうち一の移動式作業機械のエンジン負荷率の平均値が、当該一の移動式作業機械以外のエンジン負荷率の平均値と対比して、所定値以上高い状態が所定期間持続する場合に当該移動式作業機械の動力伝達機構に異常が発生していると判定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、非作業かつ高速移動状態のエンジン負荷率を、所定期間毎に平均値を演算して平均値間で対比するので、予めしきい値を準備することなく移動用の動力伝達機構の異常発生を判定できる。
【0011】
請求項2においては、同一作業状態のエンジン負荷率の平均値を、同一作業地域での他の同一機種の同様の平均値と対比するので、予めしきい値を準備することなく動力伝達機構の異常発生を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】遠隔サーバシステムの構成を示した模式図。
図2】遠隔サーバシステムの構成を示した別の模式図。
図3】作業日とエンジン平均負荷率との相関を示すグラフ図。
図4】実施形態1の異常判定制御の流れを示すフロー図。
図5】作業車毎のエンジン平均負荷率との相関を示すグラフ図。
図6】実施形態2の異常判定制御の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を用いて、遠隔サーバシステム100について説明する。なお、図1では、遠隔サーバシステム100を模式的に表している。
【0014】
遠隔サーバシステム100は、本発明の遠隔サーバの実施形態に係るシステムである。遠隔サーバシステム100とは、遠方のユーザーに対して何らかのサービスを提供するシステムである。本実施形態の遠隔サーバシステム100は、農業機械としてのコンバイン3を使用するユーザーに対し、世界各国の海外通信会社130と国内の国内通信会社120とを介して、遠隔情報センター110よりサービスを提供するシステムである。
【0015】
図2を用いて、遠隔サーバシステム100についてさらに説明する。なお、図2では、遠隔サーバシステム100を模式的に表している。
【0016】
本実施形態の遠隔サーバシステム100は、コンバイン3を使用するユーザーに対し、コンバイン3の動力伝達機構の異常発生を判定し、異常発生があれば警告するシステムである。
【0017】
遠隔サーバシステム100は、例えば、遠隔情報センター110(図1参照)に設けられた遠隔サーバ5と、コンバイン3に設けられた端末サーバ6とが通信可能に構築されている。遠隔サーバ5は、多数のコンバイン3・・・・3に設けられた端末サーバ6・・・・6と通信可能に構築されている。
【0018】
本実施形態では、端末サーバ6は、少なくとも、コンバイン3の運転日情報として運転した年月日及び稼働時間、作業部の稼働・非稼働情報としての各作業部(刈取部、搬送部、脱穀部等)のクラッチのON・OFF、移動速度情報としての走行速度V、エンジンの回転数情報としてエンジン回転数Ne及びエンジンの負荷率情報としてエンジン負荷率Lを遠隔サーバ5に送信するものとする。
【0019】
エンジン回転数Neは、エンジン回転数センサーによって検出されるエンジン回転数Neが遠隔サーバ5に送信される。
【0020】
エンジン負荷率Lは、ECU(Engine Control Unit)が指令する噴射量についての、そのエンジン回転数Neにおける最大噴射量に対する割合が遠隔サーバ5に送信される。例えば、機械ガバナ式エンジンでは、ラック位置センサーによって検出されるラック位置がエンジン負荷率Lとなる。また、電子ガバナ式エンジンでは、アクセル開度センサーによって検出されるアクセル回動量がエンジン負荷率Lとなる。
[実施形態1]
【0021】
図3を用いて、作業日とエンジン負荷率Lとの相関について説明する。なお、図3では、横軸に作業日を表し、縦軸にエンジン負荷率Lの1日の平均値Lmを表し、作業日とエンジン負荷率Lとの相関をグラフによって表している。
【0022】
グラフ中のエンジン負荷率Lの平均値Lmは、対象の稼働日における、コンバイン3の各作業部(刈取部、搬送部、脱穀部等)のクラッチがOFF状態であって、かつ、走行速度Vが所定走行速度Va以上の場合のエンジン負荷率Lの平均値Lmを表している。
【0023】
言い換えると、グラフ中のエンジン負荷率Lの平均値Lmは、所定走行速度Va以上で走行のみを行うコンバイン3のエンジン負荷率Lの1日の平均値Lmを表している。そして、7/20〜8/9までのデータが示すように、コンバイン3では、各作業部のクラッチがOFF状態であって、かつ、所定走行速度Va以上で走行していれば、エンジン負荷率Lの1日の平均値Lmが略同一である。
【0024】
しかし、8/9以降のデータが示すように、明らかに8/9以降では、エンジン負荷率Lの1日の平均値Lmが上昇している。このとき、コンバイン3では、エンジンが走行系の動力伝達機構に対してのみ仕事をしていることから、走行系の動力伝達機構に異常が発生していることが推測できる。
【0025】
図4を用いて、異常判定制御S100の流れについて説明する。なお、図4では、異常判定制御S100の流れをフローチャートによって表している。
【0026】
異常判定制御S100は、本発明の遠隔サーバよって行われる実施形態1の制御である。異常判定制御S100は、コンバイン3の走行系の動力伝達機構の異常発生を判定する制御である。
【0027】
ステップS110において、遠隔サーバ5は、対象の稼働日における、コンバイン3の各作業部(刈取部、搬送部、脱穀部等)のクラッチがOFF状態であって、かつ、走行速度Vが所定走行速度Va以上の場合のエンジン負荷率Lを取得する。そして、取得したエンジン負荷率Lの平均値Lmを算出する。
【0028】
ステップS120において、遠隔サーバ5は、対象の稼働日の前日までにおける、コンバイン3の各作業部(刈取部、搬送部、脱穀部等)のクラッチがOFF状態であって、かつ、走行速度Vが所定走行速度Va以上の場合のエンジン負荷率Lを取得する。そして、取得したエンジン負荷率Lの平均値LMを算出する。
【0029】
ステップS130において、遠隔サーバ5は、対象の稼働日における平均値Lmと、前日までにおける平均値LMとの差を算出し、算出した差が所定値よりも大きいかどうか判定する。差が所定値よりも大きい場合には、ステップS140に移行する。差が所定値以下の場合には、コンバイン3は正常であって異常判定制御S100を終了する。
【0030】
ステップS140において、遠隔サーバ5は、コンバイン3の走行系の動力伝達機構に異常が発生していると判定し、異常発生についてユーザーに警告し、異常判定制御S100を終了する。ユーザーに警告する手段としては、端末サーバ6を介してコンバイン3の操作パネルに走行系の動力伝達機構に異常ありと表示する、或いは、直接ユーザーに連絡する等が考えられる。
【0031】
遠隔サーバ5及び異常判定制御S100の効果について説明する。遠隔サーバ5及び異常判定制御S100によれば、コンバイン3の非作業かつ所定走行速度Va以上の場合のエンジン負荷率Lを、作業日毎に平均値LMを演算して平均値間で対比するので、予めしきい値を準備することなく走行系の動力伝達機構の異常発生を判定できる。
[実施形態2]
【0032】
図5を用いて、機種毎のエンジン負荷率Lの相関について説明する。なお、図5の左上では、横軸に機種を表し、縦軸にエンジン負荷率Lの1日の平均値Lmを表し、機種とエンジン負荷率Lとの相関をグラフによって表している。また、図5の右下には、圃場10で作業するコンバイン3A・・・3Eを模式的に表している。
【0033】
図5の右下に示すように、一の圃場10で複数台(5台)のコンバイン3A・・・3Eが作業しているものとする。このように一の圃場で作業する複数台のコンバイン3A・・・3Eは、通常同じ作業(単なる走行、刈取作業、脱穀作業等)を行っているものである。また、同じ作業をする複数台のコンバイン3A・・・3Eのそれぞれの走行速度Vは、通常略同一である。
【0034】
図5の左上に示すように、グラフ中のエンジン負荷率Lの平均値Lmは、対象の稼働日における、コンバイン3A・・・3Eの走行速度Vが所定走行速度Vb以上の場合の、コンバイン3A・・・3Eのそれぞれのエンジン負荷率Lの平均値Lmを表している。例えば、コンバイン3A・・・3Eは、刈取作業を行っているものとする。
【0035】
グラフから明らかなように、一の圃場10で同一作業を行っているコンバイン3A・・・3Eのうち、コンバイン3Dのエンジン負荷率Lの平均値Lmが高い割合を示している。このとき、コンバイン3A・・・3Eは、エンジンが走行系及び刈取系の動力伝達機構に対してのみ仕事をしているため、コンバイン3Dの走行系又は刈取系の動力伝達機構に異常が発生していることが推測できる。
【0036】
図6を用いて、異常判定制御S200の流れについて説明する。なお、図6では、異常判定制御S200の流れをフローチャートによって表している。
【0037】
異常判定制御S200は、本発明の遠隔サーバよって行われる実施形態2の制御である。異常判定制御S200は、コンバイン3の何れかの動力伝達機構の異常発生を判定する制御である。
【0038】
ステップS210において、遠隔サーバ5は、例えば、コンバイン3Aの位置情報から一の圃場10を特定する。
【0039】
ステップS220において、遠隔サーバ5は、特定した一の圃場10において、同時に作業を行っている、例えばコンバイン3B・・・3Eを特定する。
【0040】
ステップS230において、遠隔サーバ5は、対象の稼働日における、コンバイン3Aの走行速度Vが所定走行速度Va以上の場合のエンジン負荷率Lを取得する。そして、取得したエンジン負荷率Lの平均値Lmを算出する。
【0041】
ステップS240において、遠隔サーバ5は、対象の稼働日における、一の圃場10で作業する全てのコンバイン3A・・・3Eの走行速度Vが所定走行速度Va以上の場合の、それぞれのエンジン負荷率Lを取得する。そして、取得したエンジン負荷率Lの平均値LMを算出する。
【0042】
ステップS250において、遠隔サーバ5は、コンバイン3Aの平均値Lmと、コンバイン3A・・・3Eの平均値LMとの差を算出し、算出した差が所定期間において所定値よりも大きいかどうか判定する。差が所定値よりも大きい場合には、ステップS140に移行する。差が所定値以下の場合には、コンバイン3Aは正常であって異常判定制御S200を終了する。
【0043】
ステップS260において、コンバイン3Aの何れかの動力伝達機構に異常が発生していると判定し、異常発生についてユーザーに警告し、異常判定制御S200を終了する。ユーザーに警告する手段としては、端末サーバ6を介してコンバイン3Aの操作パネルに走行系又は刈取系の動力伝達機構に異常ありと予測表示する、或いは、直接ユーザーに連絡する等が考えられる。
【0044】
遠隔サーバ5及び異常判定制御S200の効果について説明する。遠隔サーバ5及び異常判定制御S200によれば、同一作業状態のエンジン負荷率の平均値を、同一作業地域での他の同一機種の同様の平均値と対比するので、予めしきい値を準備することなく動力伝達機構の異常発生を判定できる。
【0045】
なお、本実施形態では、コンバイン3を使用するユーザーに対し動力伝達機構の異常発生を判定する構成としたが、これに限定されない。例えば、トラクタ又は田植機等を使用するユーザーに対し動力伝達機構の異常発生を判定する構成としても良い。
【符号の説明】
【0046】
3 コンバイン
5 遠隔サーバ
6 端末サーバ
10 圃場
100 遠隔サーバシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6