【実施例】
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
実施例1
反応容器内に、トチュウの葉(乾燥物、細断品)を50g投入し、これに30%(V/V)エタノール水溶液1リッターを加え、ときどき撹拌しながら、25℃で24時間抽出後、JIS P3801に規定されるNo5Cの濾紙を用いて濾過し、これを凍結乾燥した。
【0023】
実施例2
反応容器内に、トチュウの葉(乾燥物、細断品)を50g投入し、これに30%(V/V)エタノール水溶液1リッターを加え、ときどき撹拌しながら、25℃で24時間抽出後、限外濾過(アドバンテック ウルトラフィルター Q0100 分画分子量10,000)した。
膜透過液(実施例2−1)と膜不透過液(実施例2−2)を別々に凍結乾燥した。
【0024】
実施例3
反応容器内に、トチュウの葉(乾燥物、細断品)を50g投入し、これに30%(V/V)エタノール水溶液1リッターを加え、ときどき撹拌しながら、25℃で24時間抽出後、限外濾過(ミリポア ウルトラセル−PL公称分画分子量1,000)し、膜不透過液を凍結乾燥した。
【0025】
得られた抽出物について、以下の確認試験を行った。
確認試験
2継代目のヒト包皮由来表皮細胞(クラボウ)を50−70%コンフルエントとなるようHuMedia−KG2培地(フェノールレッド不含)で培養後、前日にカルシウム濃度を1.8mMに変更したHuMedia−KG2培地に、各実施例を添加し、37℃、5%CO
2インキュベータ中で2日間培養した。
【0026】
<RNAの抽出>
細胞からの Total RNAの抽出は、トリプシン/EDTAで剥離後、SV Total RNA Isolation System(プロメガ社)を用い、プロメガ社の添付マニュアル(日本語プロトコールNoTM048J2001年6月作成)に従い調製した。RNA濃度は、NanoDrop1000(Thermo SCIENTIFIC)を用い算出した。
【0027】
<RT反応およびリアルタイムPCR>
2.5μgのTotal RNAを使い、MMLV Reverse Transcriptase RNaseH−(東洋紡社)を用い、東洋紡社推奨プロトコール(TOYOBO BIOCHEMICALS FOR LIFE SCIENCE 2008/2009のページ1−42)に従いRT反応を行った。
リアルタイムPCRはAppliedBiosystems 7500 リアルタイムPCR Systemを用い、以下のように実施した。SYBR Green法を用い(THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix,東洋紡社)、7500 リアルタイムPCR Systemの操作マニュアル(AppliedBiosystems)を用いて、Comparative CT(△△CT)法(n=3)により遺伝子発現比較を実施した。内部標準としてGAPDHを使用した。
【0028】
<使用プライマー>
フィラグリン:フォワードプライマーがGGCAAATCCTGAAGAATCC(配列番号1)の塩基配列と、リバースプライマーがTGCTTTCTGTGCTTGTGTCC(配列番号2)の塩基配列とのセット
ロリクリン:フォワードプライマーがGGAGTTGGAGGTGTTTTCCA(配列番号3)の塩基配列と、リバースプライマーがACTGGGGTTGGGAGGTAGTT(配列番号4)の塩基配列とのセット
コルネオデスモシン:フォワードプライマーがCCCATCTCTGAGGGCAAATA(配列番号5)の塩基配列と、リバースプライマーがCTAGAACTGCTGGGGACTCG(配列番号6)の塩基配列とのセット
GAPDH:フォワードプライマーがGAGTCAACGGATTTGGTCGT(配列番号7)の塩基配列と、リバースプライマーがTTGATTTTGGAGGGATCTCG(配列番号8)の塩基配列とのセット
【0029】
図1および
図2にリアルタイムPCRの結果を示す。
図1は、実施例1の終濃度0.1質量%での確認試験結果であり、フィラグリンの遺伝子発現量を示す図である。
図2は、実施例1の終濃度0.1質量%での確認試験結果であり、ロリクリン、コルネオデスモシンの遺伝子発現量を示す図である。
図1および
図2において、縦軸は実施例1を添加していない場合の遺伝子発現量を1としたときの遺伝子発現量を相対値で表している。また*印はt検定において有意水準5%で有意であることを示している。
図1および
図2に示すように、実施例1は0.1質量%濃度で、フィラグリンの遺伝子発現量を約4倍に、ロリクリンの遺伝子発現量を約3.5倍に、コルネオデスモシンの遺伝子発現量を約2.5倍に、それぞれ増加させることがわかった。
【0030】
図3は、フィラグリンの遺伝子発現増加量を指標に限外濾過による分画の効果を確認するため、実施例1、実施例2−1、実施例2−2の終濃度0.2質量%での確認試験結果である。縦軸は各実施例を添加していない場合の遺伝子発現量を1としたときの遺伝子発現量を相対値で表している。
図3に示すように、実施例2−2の遺伝子発現量が他の実施例より増加量が多く、有効性成分の多くが、限外濾過で分画した場合に分子量10,000以上の分画に存在することがわかった。
【0031】
図4は、タンパク質レベルでの増加も確認するため、実施例3でのフィラグリン0.1質量%に対する特異抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示す図である。
図4に示すように、タンパク質レベルでも明らかな増加が認められた。
【0032】
図5は、実施例1を0.1質量%濃度で細胞に作用させたときのMTT試験結果である。
図5に示すように、実施例1を配合しないコントロールを1として比較したところ、両者に差がなく、実施例1に細胞毒性がないことを確認した。
なお、MTT活性の確認方法は以下のように行った。
24well plateで、確認試験と同一条件で培養した後、培地を交換し、1/10量の5mg/ml 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイドを添加してさらに4時間培養後、等量の0.04N塩酸を含むイソプロパノールを添加して完全に溶解する。この溶液をリファレンス波長630nm、測定波長560nmで測定して、コントロールに対する相対値として算出した。
【0033】
実施例4
反応容器内に、エゾウコギの根(乾燥物、細断品)を50g投入し、これに50%(V/V)エタノール水溶液1リッターを加え、ときどき撹拌しながら、25℃で24時間抽出後、JIS P3801に規定されるNo5Cの濾紙を用いて濾過し、これを凍結乾燥した。
【0034】
得られた抽出物について、実施例1と同様な方法で確認試験を行った。なお、RT反応およびリアルタイムPCRにおける使用プライマーとして、以下のプライマーを追加して使用した。
インボルクリン:フォワードプライマーがGATGTCCCAGCAACACACAC(配列番号9)の塩基配列と、リバースプライマーがTGCTCACATTCTTGCTCAGG(配列番号10)の塩基配列とのセット
【0035】
図6および
図7にリアルタイムPCRの結果を示す。
図6は、実施例4の終濃度0.01質量%および0.02質量%での確認試験結果であり、フィラグリンの遺伝子発現量を示す図である。
図7は、実施例4の終濃度0.01質量%での確認試験結果であり、ロリクリン、コルネオデスモシン、インボクリンの遺伝子発現量を示す図である。
図6および
図7において、縦軸は実施例4を添加していない場合の遺伝子発現量を1としたときの遺伝子発現量を相対値で表している。また*印はt検定において有意水準5%で有意であり、**印は有意水準1%で有意であることをそれぞれ示している。
図6に示すように、実施例4はフィラグリンの遺伝子発現量を、0.01質量%で約10倍に、0.02質量%で約20倍に増加させることがわかった。
また、
図7に示すように、ロリクリンの遺伝子発現量を約8.5倍に、コルネオデスモシンの遺伝子発現量を約3.5倍に、インボルクリンの遺伝子発現量を約1.5倍に、それぞれ増加させることがわかった。
【0036】
実施例5
反応容器内に、大葉月橘の葉および/または葉軸(乾燥物、細断品)を30g投入し、これに50%(V/V)エタノール水溶液1リッターを加え、ときどき撹拌しながら、25℃で24時間抽出後、JIS P3801に規定されるNo5Cの濾紙を用いて濾過し、これを凍結乾燥した。
【0037】
実施例6
実施例5と同様に抽出した液(実施例5の凍結乾燥前)を限外濾過(ミリポア社製ウルトラセルPL・分画分子量1,000)した。
膜透過液(実施例6−1)と膜不透過液(実施例6−2)を別々に凍結乾燥した。
【0038】
図8〜
図10にリアルタイムPCRの結果を示す。
図8は、実施例5の終濃度0.1質量%での確認試験結果であり、コルネオデスモシンの遺伝子発現量を示す図である。
図9は、実施例5の終濃度0.1質量%での確認試験結果であり、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンの遺伝子発現量を示す図である。
図10は、フィラグリンの遺伝子発現増加量を指標に限外濾過による分画の効果を確認するため、実施例6−1の終濃度0.1質量%、実施例6−2の終濃度0.02質量%での確認試験結果である。
図8〜
図10において、縦軸は各実施例を添加していない場合の遺伝子発現量を1としたときの遺伝子発現量を相対値で表している。
図8および
図9に示すように、実施例5は0.1質量%で作用させたとき、コルネオデスモシンの遺伝子発現量を約23倍に、フィラグリン、ロリクリンの遺伝子発現量を約3倍に、インボルクリン遺伝子発現量を約6倍に増加させることがわかった。
また、
図10に示すように、分子量1,000で限外濾過を用いて分画したところ、分子量1,000以上の分画が、分画前、あるいは分子量1,000以下の分画より1/5の濃度(0.02質量%)でも遺伝子発現量はさらに3倍以上の発現量を示した。
【0039】
実施例7〜実施例9、比較例1
実施例1で得られた抽出物を有効成分とする花粉症の予防・治療するための飲料を実施例7として、同実施例4で得られた抽出物を有効成分とする飲料を実施例8として、同実施例5で得られた抽出物を有効成分とする飲料を実施例9として、以下の成分表の割合で配合して均一に撹拌して作製した。なお、比較例1の飲料は実施例1、実施例4または実施例5で得られた抽出物を精製水に置き換えたものである。
飲料の成分表
実施例1、実施例4または実施例5で得られた抽出物 1g
キシリトール 10g
ビタミンB
1塩酸塩 0.5mg
ビタミンB
2 0.2mg
ビタミンC 500mg
ナイアシン 1.0mg
パントテン酸カルシウム 1.0mg
精製水 100g
【0040】
花粉症を発症している男性被験者9名を3名ずつ第一、第二、第三の3グループに分けて、第一のグループには実施例7の飲料を、第二のグループには実施例8の飲料を、第三のグループには実施例9の飲料を、朝昼夕の3回、飲料50mlをそれぞれ飲用してもらった。試験は7日間行い、起床から就寝までを1日とし、クシャミの回数(1回を1点とする)、鼻をかんだ回数(1回を1点とする)、喉の違和感の程度(0〜3点、違和感がひどいと点数が高い)により花粉症の症状を判定した。7日間の合計点数を算出し、3名の平均値として評価した。試料の飲用を止め何も処置をせずに過ごすと、3日後には試験以前の状態に戻ったので、試験終了後7日間を空けて、比較例1による試験を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
表1に示すように、実施例7〜9の飲料の飲用期間において、明らかな花粉症の諸症状の改善が認められた。