(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記マイクロ波導入部の内部であって、かつ、前記流路および前記プラズマ発生空間の外周側の少なくとも一部に、誘電体部が備えられている、請求項5に記載のプラズマ発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、液中プラズマによると、プラズマ発生のためのエネルギーが低減されてはいるものの、それでもなお多量のエネルギーを投入する必要があり、かかる投入エネルギーにより被処理液が加熱されてエネルギー損失が大きいという問題があった。また、液体中の微小な領域でプラズマを発生させる技術では、プラズマを発生させるための電極の消耗が激しく高コストであることに加え、プラズマ発生領域も狭い範囲に限定されてしまい、一度に多くの液体を処理することができなかった。さらには、液中で発生されたプラズマを安定に保つには、主としてバッチ方式で処理する必要があり、インライン処理等には不向きであった。
【0005】
本発明は上記の従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、流体のプラズマ処理に好適に用いることができ、マイクロ波励起プラズマを安定して発生することのできる、新規なプラズマ発生装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、かかるプラズマ発生装置を用いてなる流体処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するものとして、プラズマ発生装置を提供する。かかるプラズマ発生装置は、流体を流通させる流路と、上記流路に連通し、上記流体の流れ方向に対し直交する方向の外側に広がるプラズマ発生空間と、上記プラズマ発生空間に設けられ、上記流路から上記直交方向外側に離間して配置された円環状のプラズマ発生部と、上記プラズマ発生部にマイクロ波を伝播するマイクロ波導入部と、を備えている。ここで、上記プラズマ発生部は、間隙をもって対向配置された一対の環状凸部により構成されている。そして、このプラズマ発生装置は、上記流路を流れる上記流体により減圧状態とされた上記プラズマ発生空間に生成される気体状の上記流体を、上記マイクロ波導入部から導入されたマイクロ波により上記プラズマ発生部でプラズマ化することを特徴としている。
【0007】
このように、このプラズマ発生装置は、流路を取り囲むように設けられたプラズマ発生空間に円環状のプラズマ発生部を備えている。そして流路を流れる流体により、プラズマ発生空間は自ずと減圧状態とされる。かかる減圧化されたプラズマ発生空間には、流路を流れる流体が気体となって導入される。これにより、一対の環状凸部により構成されているプラズマ発生部は、流体中に浸漬されることなく、また、流体の流れ場の状態の直接的な影響を受けることなく、プラズマ発生電極としてプラズマ発生空間において安定してプラズマを発生させることができる。好ましくは、かかるプラズマ発生部は、それ自体がスロットアンテナを形成しており、これによりプラズマ発生に伴う消耗が低減される。
さらに、かかるプラズマ発生装置はプラズマの励起にマイクロ波を用いており、例えば従来のプラズマ励起に用いられていた高周波(典型的には、周波数1MHz以上の電波)励起プラズマと比べて、同じ投入エネルギーで密度の濃いプラズマを励起することができる。また、プラズマ中の電子温度が低くエネルギーも小さいため、電極等のプラズマ周辺部材の消耗が抑制される。
【0008】
加えて、プラズマ発生空間は減圧状態にあるため、放電開始電圧が低下される。かかる減圧状態は、流路を流れる流体の流速を高めることでより一層低減することができる。したがって、さらに少ない投入電力でプラズマを発生させることができる。また、減圧環境下で発生されたプラズマ中の活性種は、粒子間の衝突頻度が低減されているため寿命を長く維持することができる。したがって、かかる活性種を失活させることなく、より高濃度なプラズマを発生することができる。これにより、発生されたプラズマ活性種が、高濃度で、かつ、均一に、流路に供給され、単位時間により多量の流体にプラズマ活性種を接触させることができる。
なお、本明細書において、「マイクロ波」とは、波長1m〜100μm、周波数300MHz〜3THzの電波(極超短波)を意味し、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波等を包含する用語である。
【0009】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、上記流路と上記プラズマ発生空間との連通部分近傍を流れる上記流体の圧力が、200hPa以下となるよう構成されていることを特徴としている。
プラズマの放電開始電力には圧力依存性があり、環境圧力が低い少ないエネルギーでプラズマを発せさせることが可能となる。また、液体を気化させるのに要するエネルギーも低減することができる。かかる構成によると、マイクロ波により投入されるエネルギーの多くをプラズマ生成エネルギーとして利用することができ、より少ない投入エネルギーでプラズマを発生することができる。
【0010】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、上記流路は、上記流れ方向の上流側から上記連通部分に向けて、断面積が減少していることを特徴としている。
すなわち、流路は、プラズマ発生空間との連通部分において断面積が減少して括れた形態となっている。換言すると、プラズマ発生空間との連通部分より上流側の流路は、より広い断面積を有するよう構成されている。これにより、かかる流路がベンチュリ管として作用し、当該連通部分(括れ部分)において低圧力領域が形成される。また、かかる連通部分と連通するプラズマ発生空間もさらに減圧される。したがって、より少量のエネルギーでプラズマを発生することができ、プラズマの発生効率を高めることができる。また、連通部分より上流側の流路をより太くすることで、流路に高流量の流体を流すことが可能となる。
【0011】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、上記流路の内部には、上記連通部分から上流側に流速制御部材が備えられており、上記流速制御部材は、流れ方向の上流側から上記連通部分に向けて断面積が減少する絞部を備えていることを特徴としている。
かかる構成によると、流路内を流れる流体の量および流速等を詳細に制御することができる。これによって、高濃度なプラズマをより安定して発生させることができる。
【0012】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、上記流路は円管形状であって、上記マイクロ波導入部は矩形管状であって、上記プラズマ発生空間は、上記マイクロ波導入部の内部に設けられていることを特徴としている。好ましい一実施形態においては、上記流路は、上記マイクロ波導入部を貫通するよう配設されている。また、上記流路と上記マイクロ波導入部とは、略直角に交わって配設されている。
かかる構成によると、マイクロ波導入部を伝播するマイクロ波を、流路を通じてプラズマ発生部に効率的に導入することができる。
【0013】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、さらに、上記マイクロ波導入部の内部であって、かつ、上記流路および上記プラズマ発生空間の外周側の少なくとも一部に、誘電体部が備えられていることを特徴とする。
かかる構成によると、プラズマ発生空間を低圧に保持することができ、プラズマ発生空間に均一にプラズマを発生させることができる。また、マイクロ波は、マイクロ波導入部から誘電体を経由することで流路およびプラズマ発生空間に伝播するため、誘電体を介した低圧領域にマイクロ波エネルギーを導入することができる。
【0014】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、一の上記流路に対し、上記プラズマ発生空間、上記プラズマ発生部および上記マイクロ波導入部が上記流れ方向に沿って複数備えられていることを特徴とする。
かかる構成によると、流路を流れる流体に対してより多量のプラズマ活性種を供給することができる。例えば、流路の複数の位置に活性種を失活させることなく確実に供給することができる。
【0015】
ここに開示されるプラズマ発生装置の好ましい一態様において、上記マイクロ波導入部は、同軸導波管からなる円形導波管と、上記円形導波管の管軸に対し各々直交する方向に連結された複数の矩形導波管とを備えている。ここで、上記複数の矩形導波管は、上記円形導波管の管軸を中心として対称位置(軸対称となる位置)に配置されている。そして、上記流路、上記プラズマ発生空間および上記プラズマ発生部は、各々の上記矩形導波管の内部に設けられていることを特徴としている。かかる構成によると、一のマイクロ波導入部に対して、複数のプラズマ発生部を備えることができ、少量の投入エネルギーでより多量のプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生装置が実現される。
【0016】
他の側面において、本発明は、流体処理装置を提供する。かかる流体処理装置は、上記のいずれかに記載のプラズマ発生装置と、循環路と、ポンプとを備えている。そして上記プラズマ発生装置における上記流路は、上記循環路と接続されていることを特徴としている。
かかる流体処理装置によると、プラズマ発生装置において被処理物である流体の周囲のプラズマ発生空間において安定してプラズマを発生させることができる。これにより、より少ないエネルギーで安定して効率良くプラズマ処理を行うことができる。また、バッチ方式ではなく、インライン方式にてプラズマ処理を行うことができ、より高効率な流体処理装置が提供される。
【0017】
また、さらに他の側面において、本発明は、流体処理方法を提供する。かかる流体処理方法は、上記のいずれかに記載のプラズマ発生装置を用いた流体処理方法であって、被処理流体を上記プラズマ発生装置の上記流路に導入し、上記プラズマ発生部で発生させたプラズマを照射することで上記被処理流体をプラズマ処理することを特徴としている。かかる流体処理方法によると、被処理流体の周囲にプラズマ発生空間を形成して、かかるプラズマ発生空間にて安定してプラズマを発生させ、発生された流体を活性状態で流体に供給することができる。これにより、より少ないエネルギーで安定して効率良く被処理流体のプラズマ処理を行うことができる。また、バッチ方式ではなく、インライン方式にてプラズマ処理を行うこともでき、より高効率な流体処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のプラズマ処理方法について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(プラズマ発生装置の各構成要素に係る一般的事項等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るプラズマ発生装置の一実施形態を具体的に説明するが、本発明がかかる形態に限定されることを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置を概略的に示す構成図である。
このプラズマ発生装置1には、本質的に、流体を流通させる流路10と、この流路10の周囲に離間して配置された円環状のプラズマ発生部30と、が備えられている。具体的には、流路10には、当該流路10に連通しつつ、流体の流れ方向に対し直交する方向(以下、単に「直交方向」という場合がある。)の外側に広がるようにプラズマ発生空間20が設けられている。そして、このプラズマ発生空間20の内部に、円環状のプラズマ発生部30が設けられている。すなわち、プラズマ発生部30も、流路10から直交方向外側に離間して配置される。このプラズマ発生部30は、例えば
図2に示されるように、間隙(ギャップ)をもって対向配置された一対の環状凸部30a,30bによりスロットアンテナを形成するよう構成されている。ここで、環状凸部30a,30bは、プラズマ発生電極として機能する。そしてプラズマ発生装置1には、このプラズマ発生部30にマイクロ波を伝播するためのマイクロ波導入部40が備えられている。
なお、ここで、流路10に対する「直交方向」とは、流路に対して厳密に90°の角度をなす場合を指すものではなく、概ね90°で交わっていると判断し得る状態をも意味する。例えば、流路10に対して90°±20°程度、より好適には90°±10°(例えば、90°±5°程度)の角度で配置する場合をも含み得る。
【0021】
かかる構成のプラズマ発生装置1においては、流路10に流体を流通させることにより、流路10と連通するプラズマ発生空間20は特段の処理を施さずとも自ずと減圧状態となり得る。このように減圧化されたプラズマ発生空間20では、蒸気圧が低下するため、流路10を流れる流体が揮発し、気体(気相)となって導入される。すなわち、プラズマ発生空間20は気相状態にある流体により満たされている。換言すると、プラズマ発生装置1は、例えば、ガス導入装置等の特別な設備を必須とせずに流体の気相を形成することができる。
また、放電開始電圧には圧力依存性があることが知られており、低圧環境下では絶縁破壊電圧が低下する。そのため、減圧化されたプラズマ発生空間20ではより低い電圧でプラズマの発生が可能とされている。なお、流路10を流通する流体の流速が高いほど減圧の度合いが高まり、より少量の電圧でプラズマを発生させることができる。
また、かかるプラズマ発生空間20においては、プラズマ発生部30にマイクロ波電力を導入することで、一対の環状凸部30a,30b間に電位差が生じて電圧に比例した電界が放射される。この電界は環状凸部30a,30bにより集中され、絶縁破壊電圧以上の電圧が発生したときに環状凸部30a,30b間にプラズマを発生させ得る。以上のことから、かかるプラズマ発生装置1によって、流体を構成する分子等に由来したプラズマを発生させることができる。
なお、かかるプラズマ発生装置1においては、単位時間により多量の流体を流すことでより効率的にプラズマを発生することができる。そのため、一度に大量の流体に対し、より少ない電力でプラズマ活性種を供給することができる。
【0022】
かかるプラズマ発生装置1において、プラズマ発生空間20は流体とは隔離した形成され、プラズマ発生部30は流体に浸漬されない。これにより、流体の流れ場の状態に直接的に影響されることなく、プラズマ発生空間20において安定してプラズマを発生させることができる。
また、プラズマ発生部30は、流体中に浸漬されないことから、電極たるプラズマ発生部30の腐蝕が抑制されており、電極材料の溶出等の問題が生じ難い。かかるプラズマ発生部30は、プラズマ発生電極、ここではスロットアンテナを形成しており、例えば針状電極などと比較してプラズマの発生に伴う消耗が低減されている。これにより、耐久性に優れたプラズマ発生装置1が提供されることとなる。
【0023】
さらに、プラズマ発生空間20に発生されたプラズマの活性種は、流体の流れによる吸引作用により流路10へと輸送される。従って、かかるプラズマ発生装置1によると、特段の処置を施さなくとも、発生されたプラズマ活性種を速やかにかつ効率よく流体に接触させることができる。例えば、寿命の短い活性種であっても失活前に流体と接触させることができる。
【0024】
なお、以上の構成のプラズマ発生装置1においては、流路10を流れる流体の流速が速ければ速い程、プラズマ発生空間20の圧力が低減される傾向にあり、より少ないマイクロ波電力(投入エネルギー)でプラズマを発生することができる。かかるプラズマ発生空間20の減圧状態は、例えば、
図2に示されるように、流路10をプラズマ発生空間20との連通部分近傍において絞る、ないしは括れさせることで、容易に実現することができる。すなわち、ここに開示されるプラズマ発生装置1においては、流路10の流れ方向の上流側から連通部分に向けて、流路10の断面積を減少させることが好ましい態様であり得る。
かかる断面積の減少具合は、所望の流体の流速およびプラズマ発生空間20の減圧状態に応じて適宜設計することができる。例えば、かかる流路10におけるベンチュリ効果を考慮して、プラズマ発生空間20との連通部分近傍において所望の流速およびプラズマ発生空間20の圧力とが実現されるよう、構成することができる。おおよその目安として、プラズマ発生空間20の圧力を、大気圧(1013.25hPa)の約1/5(例えば、200hPa程度)以下、より好ましくは約1/10(例えば、100hPa程度)以下、さらには1/100(例えば、10hPa程度)以下とすることで、より少ない投入エネルギーで効率的にプラズマの発生が可能となる。
【0025】
なお、かかる流路10の断面積を容易かつ精密に減少させるために、流路10の内部に流速制御部材24を備えるようにしても良い。かかる流速制御部材24は、流路10の流れ方向の上流側から連通部分に向けて断面積が減少する絞部を備えているものであれば、その他の構成は特に制限されない。例えば、典型的には、円錐形状、角錐形状等の錐体部からなる絞部を備える流速制御部材24を考慮することができる。かかる流速制御部材24が連通部分から上流側に備えられていることにより、より急峻に流路10の断面積を減少させることができる。これにより、例えば、一定の流量の流体を流す場合等に、連結部近傍における断面積の減少具合を高くすることができ、プラズマ発生空間20をより高度に減圧することが可能となる。また、流速制御部材24は、流路10の流れ方向に沿って位置を調整可能に構成されていても良い。かかる構成によると、流体の特性等によって流路の断面積を簡便に調整することができる。例えば、流体の粘度、分散物の有無やその大きさ等により、当該流体に最適な流路の幅(寸法)を実現することができる。
【0026】
以下、プラズマ発生装置1の各構成要素について、
図1の例を参考にして、より詳細に説明する。本実施形態のプラズマ発生装置1において、流路10と、マイクロ波導入部40とは、流路10がマイクロ波導入部40内を貫通するように配設されている。そしてプラズマ発生空間20は、マイクロ波導入部40の内部に設けられている。
[流路]
流路10は、ここに開示されるプラズマ発生装置1に流体を導入する経路であり、かかる流路10に流体を流通させることにより、連通するプラズマ発生空間20を減圧させることを可能とする。本実施形態において、流路10は、主として円管状の形状を有している。そして、
図1において括れ部22として示したように、後述するプラズマ発生空間20との連通部分およびその近傍において、断面積が減少して括れた形態に形成されている。これにより、流路10を流れる流体の流速は、ベンチュリ効果によって括れ部22とその上流側とを比較すると、括れ部22における方が速い。また、流路10を流れる流体の圧力は、ベンチュリ効果によって括れ部22とその上流側とを比較すると、括れ部22における方が低い。かかる括れ部22の流速および圧力は、断面積の減少具合により調整することができる。すなわち、括れ部22の断面の形態を制御することで、プラズマ発生空間20の圧力状態を所望の状態に調整することができる。
【0027】
ここで、本実施形態において、流路10は、プラズマ発生空間20との連通部分の上流側と下流側とで異なる部材により構成されている。すなわち、連通部分の上流側の流路10であって、マイクロ波導入部40の内部に位置する部分は、当該流路10の形態に対応する内部空間(典型的には、下流側に凸の円錐形の空間)を備え、プラズマ発生空間20にマイクロ波電力を伝播し得る上部電極部材12により構成されている。また、連通部分の下流側の流路10であって、マイクロ波導入部40の内部に位置する部分は、当該流路10の形態に対応する内部空間(典型的には、上流側に凸の円錐形の空間)を備え、プラズマ発生空間20にマイクロ波電力を伝播し得る下部電極部材14により構成されている。これら上部電極部材12および下部電極部材14は、流路10に連通するプラズマ発生空間20の上流側壁および過流側壁をも構成することができる。
かかる流路10は、特に制限されるものではないが、マイクロ波導入部40の内部に位置する部分は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)あるいはこれらの合金等からなる部材により構成することができる。かかる部材は、上部電極部材12および下部電極部材14であり得る。マイクロ波導入部40の外部に位置する部分については特に制限されることなく、各種の樹脂材料、金属材料、無機材料等の任意の材料から構成することができる。
【0028】
[流速制御部材]
なお、上記の括れ部22の断面の形態を制御するために、流路10の連通部分から上流側に流速制御部材24を設けることができる。流速制御部材24は、流れ方向の上流側からプラズマ発生空間20との連通部分に向けて断面積が減少する絞部を備えている。かかる絞部における断面積の減少具合は、一定であっても良いし、変化されていても良い。例えば、流れ方向の上流側から連通部分に向かうにつれて、断面積の減少具合が大きくなるよう構成されていてもよい。また、例えば、
図1に例示されるように、断面積の減少具合が一定であって、例えば絞部が円錐形状あるいは角錐形状等の錐体から構成されていても良い。流路10内にかかる流速制御部材24を設置することで、流速制御部材24を備えない場合に比べて流体が流れ得る流路10の断面積をより大きく減少させることができ、連通部分およびその近傍の流体の流速をより効果的に高めることができる。ひいては、プラズマ発生空間20の圧力をより効果的に低減させることができる。
かかる速制御部材24は、特に制限されるものではないが、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)あるいはこれらの合金(典型的には、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼)等からなる部材により構成することができる。
また、連通部分を流れる流体の流速をより一層高めてプラズマ発生空間20の圧力をより一層低減させるために、流路10には、必要に応じて、ダイアフラムポンプやロータリーポンプ等の流体圧送手段を備えていても良い。かかる構成は必須ではないものの、より簡便に、プラズマ発生空間20の圧力を低減させることができ、少ない投入エネルギーで安定したプラズマを発生させることが可能となる。
【0029】
[マイクロ波導入部]
マイクロ波導入部40は、典型的には、例えば、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部(図示せず)と、マイクロ波発生部において発生させたマイクロ波をプラズマ発生空間20の内部に設けられたプラズマ発生部30に導波する導波路とから構成することができる。
マイクロ波発生部は、所定の周波数を有するマイクロ波を発生させ、導波路に伝播する。かかるマイクロ波発生部は、例えば、クライストロン、マグネトロン、ジャイロトロン等により構成することができる。発生させるマイクロ波の周波数は厳密には制限されないものの、例えば、300MHz〜3THzの範囲とすることができる。具体的には、例えば、433MHz,2.45GHz,5.8GHz等とすることが例示される。かかるマイクロ波発生部により発生されたマイクロ波によりプラズマを励起させることにより、例えば高周波(典型的には、周波数1MHz以上の電波)を導入する場合と比べて、同じ投入エネルギーで密度の濃いプラズマを励起することができる。また、マイクロ波により発生されるプラズマは電子温度が低く、エネルギーも小さいため、後述のプラズマ発生部30等のプラズマ周辺部材の消耗が抑制される。
【0030】
導波路は、典型的には、例えば、同軸ケーブルや、円管状、矩形管状等の導体(電気伝導性材料)からなる中空の管状体により構成することができる。本実施形態において、マイクロ波導入部40は、例えば矩形管状の導波路を備えている。マイクロ波導入部40は、例えば、導波路の一方の端部にマイクロ波発生部を備え、他方の端部に、マイクロ波を反射させることが可能な可動壁部材46を備えていてもよい。なお、導波路の形状および寸法等は、特に制限されず、所望の管内波長が実現されるよう設計することができる。例えば、管内波長が十分長くなる導波管条件を満たすよう構成することで、一様性の高いプラズマを発生させることができる。ここで可動壁部材46は、導波路の導波方向に略垂直な壁面を有するとともに、該壁面が導波方向に沿って移動可動に構成されている。例えば、可動壁部材46は、プランジャ等により構成することができる。かかる可動壁部材46を備えることで、導波路を安定したプラズマを生成させ得る長さに設定することができる。また、かかる可動壁部材46を移動させることで、プラズマ生成時にマイクロ波の反射位置を周期的に移動させて定在波の位相を変化させることができ、時間平均でより均一なプラズマを形成することができる。
マイクロ波導入部40における、導波路、可動壁部材46等は各種の動体から構成することができ、特に制限されるものではないが、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)あるいはこれらの合金(典型的には、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼)等からなる部材により構成することが好ましい例として示される。なお、導波路には、特に図示していないものの、例えば、マイクロ波の進行方向を制御するアイソレータや、導波路のインピーダンスを整合させる整合器等が備えられていても良い。
【0031】
[プラズマ発生空間]
プラズマ発生空間20は、上記流路10に連通するよう設けられた空間であって、プラズマ発生部30を備えている。すなわち、プラズマ発生空間20は、ここに開示されるプラズマ発生装置におけるプラズマ生成の場であり得る。かかるプラズマ発生空間20には、連通する流路10に流体が流れることにより、自然発生的に、プラズマの生成に供するプラズマ源たる気相が供給されるとともに、プラズマの生成を容易とする減圧環境が提供され得る。また、プラズマ発生部30で発生されたプラズマ活性種を速やかに流路10に供給することができる。
かかるプラズマ発生空間20の形態は特に制限されないものの、例えば、流路10を軸とした円盤形状に形成することができる。また、上述のように、プラズマ発生空間20の上流側壁および下流側壁を上部電極部材12および下部電極部材14により構成することで、プラズマ発生空間20内の電界強度を高めることができる。これにより、プラズマ発生部30により強度の高い電界と磁場とを発生し得る形態でマイクロ波を導入することができる。なお、プラズマ発生空間20の側壁については、特に限定するものではないが、例えば、誘電体等により構成することができる。
【0032】
[プラズマ発生部]
プラズマ発生部30は、高い電界と磁場とを形成し得るプラズマ発生空間20に備えられ、一対の環状凸部により構成されている。プラズマ発生部30において環状凸部30a,30bは、間隙を持って、かつ、突出部が互いに対向するように配置されている。この環状凸部30a,30b間に電界を集中させることで、プラズマ発生空間20内の気相を絶縁破壊して、プラズマを形成することができる。具体的には、まず、気相に存在する電子を電界により加速して、気相を構成する分子等の中性粒子との衝突させることにより、かかる中性粒子は電離して電荷を帯びる。この電離により生じた電子が、さらに次々と中性粒子に衝突してゆき、加速度的に電子が増加すること(電子雪崩)で、気相中に発光を伴い大きな電流が流れる(絶縁破壊)ようになる。これにより、電荷を帯びた粒子(荷電粒子)を含む気体としてのプラズマが形成される。なお、ここで形成されるプラズマは、プラズマ発生部30の形状に対応した円環状であって、流路10から直交方向外側に離間した位置に形成される。
【0033】
特に制限されるものではないが、プラズマ発生部30において環状凸部30a,30bは、均一でかつより高強度の電界を発生し得るよう、例えば、環状凸部30a,30bの間隔が0.2mm〜1mm程度の均一な間隔で(すなわち、互いに略平行に)配置されているのが好ましい。より好ましい形態においては、プラズマ発生部30の環状凸部30a,30bの可動壁部材46部からの寸法、すなわち、典型的にはプランジャから放電部までの距離は、プラズマ発生空間20に発生するマイクロ波電界を制御し得る寸法であり得る。例えば、具体的には、プラズマ発生部30の環状凸部30a,30bの可動壁部材46部からの寸法は、マイクロ波の導波管管内波長の約1/4とされており、スロットアンテナを形成しているのが好ましい。かかる構成とすることで、マイクロ波導入部40から導入されたマイクロ波を共振させることができ、環状凸部30a,30b間の電界強度をさらに高めることができる。これにより、高い電界と磁場とを発生し得る形態のマイクロ波をプラズマ発生部30に導入することが可能とされ、プラズマの放電着火、プラズマの維持が容易となって、より少ない投入電力で効率よくプラズマを発生させることができる。
また、特に制限されるものではないが、プラズマ発生部30は、流路10から1mm〜10mm程度離れた位置に円環状に設けられることが好ましい。かかる流路10からの離間距離は、例えば、流路10の寸法(径)や流路10内を流通させる流体の流速等を考慮して適宜設定することができる。
プラズマ発生部30は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)あるいはこれらの合金(典型的には、アルミニウム合金、銅合金、ステンレス鋼)等からなる部材により構成することができる。好ましくは、より純度の高いアルミニウム(Al)または銅(Cu)であり得る。
【0034】
[誘電体部]
なお、必須の構成部材ではないが、マイクロ波導入部40の内部であって、かつ、流路10およびプラズマ発生空間20の外周側に、誘電体部50を備えることができる。かかる誘電体部50は、マイクロ波導入部40の内部で、かつ、流路10およびプラズマ発生空間20の外周側の少なくとも一部に、好ましくは全部に備えることができる。かかる誘電体部50を備えることで、プラズマ発生空間20と外部との絶縁を図ることができるとともに、流路10およびプラズマ発生空間20からマイクロ波導入部40へと流体の気相が流出するのを防ぐことができる。また、マイクロ波導入部40から誘電体部50を介してプラズマ発生空間20へのマイクロ波の伝播を可能とし、より多くのマイクロ波をプラズマ発生空間20、ひいてはプラズマ発生部30に導入することができる。
かかる誘電体部は、各種の誘電体により構成することができる。例えば、具体的には、石英、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等の誘電体で構成することが好ましい例として示される。
【0035】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る上述したプラズマ発生装置を用いた流体処理装置と流体処理方法の好適な一実施形態について説明する。ただし、本発明がかかる形態に限定されることを意図するものではない。
図3は、本発明の実施形態に係る流体処理装置を概略的に示す構成図である。
本発明が提供する流体処理装置100は、処理対象である流体(被処理流体)にプラズマを照射してプラズマ処理するものである。かかる流体処理装置100は、本質的に、上記のいずれかのプラズマ発生装置1と、循環路110と、ポンプ120とを備えている。
図3の例では、循環路110の途中に、さらに、被処理流体を貯留しておく貯留タンク130と、被処理流体を冷却するための冷却器140が備えられている。そして、プラズマ発生装置1における流路10は、この循環路110と接続されていることを特徴としている。なお、この流体処理装置100において、プラズマ発生装置1の構成については、上記の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
かかる構成においては、プラズマ発生装置1の流路10が循環路110と接続されていることから、被処理流体を連続的に流路10に導入することができる。すなわち、例えば、貯留タンク130に貯留されている被処理流体は、圧送ポンプ等のポンプ120の作用により、循環路110を通ってプラズマ発生装置1の流路10に送られる。そして、被処理流体が流路10とプラズマ発生空間20との連結部分近傍を通過することで、かかる被処理流体にプラズマ発生部30で発生させたプラズマを照射することができる。すなわち、被処理流体とプラズマ活性種との接触を図ることが可能となる。また、プラズマ発生装置1を通過した被処理流体は、流路10からポンプ120の作用により、循環路110を通って貯留タンク130に送られる。なお、プラズマの照射により被処理流体が発熱する場合には、例えば、貯留タンク130に設置された冷却器140等で被処理流体を冷却することができる。このようにして、流体処理装置100に被処理流体を連続的に循環させることにより、被処理流体に対して所望の頻度でプラズマ処理を簡便に施すことが可能となる。かかる流体処理の方法によると、バッチ方式ではなく、インライン方式にてプラズマ処理を行うこともでき、より高効率な流体処理を実施することができる。また、一度に大量の流体をより簡便にプラズマ処理することができる。
【0037】
また、プラズマ発生装置1においては、マイクロ波で、流路10を取り囲む環状にプラズマを励起するため、被処理流体に対して均一に発生されたプラズマを安定的に供給することができる。また、減圧環境下でプラズマが発生されるため、プラズマ中の活性種は衝突頻度が低減されて失活することなくより高濃度な状態で被処理流体と接触され得る。したがって、かかる流体処理方法によると、より処理効率の良い流体処理を行うことができる。
【0038】
<第3実施形態>
以下、本発明に係るプラズマ発生装置1の構成に関する他の実施形態について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置1の主要部分を概略的に示す構成図である。かかるプラズマ発生装置1においては、一の流路10に対し、プラズマ発生空間20、プラズマ発生部30およびマイクロ波導入部40が流れ方向に沿って複数(
図4では三つ)備えられている。すなわち、第一の実施形態で例示した構成のマイクロ波導入部40が流路10に複数設けられ、その各々のマイクロ波導入部40の内部にプラズマ発生空間20およびプラズマ発生部30が設けられている。複数のマイクロ波導入部40には、各々にマイクロ波発生部が備えられていても良いし、いくつか(例えば、二つまたは三つ)のマイクロ波導入部40に一つのマイクロ波発生部が設けられていても良い。なお、流路10、プラズマ発生空間20、プラズマ発生部30およびマイクロ波導入部40の具体的な形態については、第1実施形態において説明したため、ここでは省略する。かかる構成によると、一の流路10に流体を流すことで複数(例えば三つ)のプラズマ発生部30においてプラズマを発生させることができる。このため、例えば、より少ないスペースでより多くのプラズマを発生させることができる。また、一の流路10に所定の体積の流体を流す際に、より多くのプラズマを発生させることができる。したがって、例えば、流体処理装置100がかかるプラズマ発生装置1を備えることにより、より一層効率的に被処理流体のプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0039】
<第4実施形態>
以下、本発明に係るプラズマ発生装置1の構成に関するさらに他の実施形態について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置1の主要部分を概略的に示す構成図である。かかるプラズマ発生装置1において、マイクロ波導入部40は、円形導波管42と、この円形導波管42の管軸に対し各々直交する方向に連結された複数の矩形導波管44とを備えている。ここで、円形導波管42と、複数の矩形導波管44とは、同軸構造である。また、複数の矩形導波管44は、円形導波管42の管軸を中心として対称位置に配置されている。
図5の例では、矩形導波管44が六つの場合を例示しているが、矩形導波管44の数は限定されず、例えば、二つ、三つ、四つ、五つ、七つ、八つ等の対象性を有する構成を実現し得れば特に制限されない。マイクロ波発生部は、いずれかの円形導波管42および矩形導波管44の二つ以上が備えられていても良い。しかしながら、これらは同軸構造であるため、一つのマイクロ波発生部がいずれかの導波管42,44に備えられており、マイクロ波発生部で発生されたマイクロ波をかかる導波管42,44を介して他の導波管42,44に分配するのが好ましい。例えば、円形導波管42にマイクロ波発生部を備えておき、このマイクロ波発生部で発生されたマイクロ波を円形導波管42から各矩形導波管44に等価に伝播させる形態が好ましい。
【0040】
そして、流路10は、円形導波管42から各矩形導波管44の内部を通過するように構成されている。かかる流路10は、円形導波管42から各矩形導波管44へと分岐された後に再び合流するよう構成されていても良い。あるいは、一つの流路10が円形導波管42から各矩形導波管44を順に通過するようした後は再び円形導波管42を通過するように構成されていても良い。そして、矩形導波管44の内部には、この流路10に連通するプラズマ発生空間20と、プラズマ発生部30とが設けられている。なお、流路10、プラズマ発生空間20、プラズマ発生部30およびマイクロ波導入部40の具体的な形態については、第1実施形態において説明したため、ここでは省略する。
かかる構成によると、例えば、一つのマイクロ波発生部で発生させたマイクロ波を用いて、複数(例えば六つ)のプラズマ発生部30においてプラズマを発生させることができる。すなわち、例えば、一つの電源を使用して、複数の矩形導波管44に等価にマイクロ波を導入してプラズマを発生させることが可能となる。これにより、より少ないエネルギーでより多くのプラズマを発生させることができる。また、より少ないスペースでより多くのプラズマを発生させることができる。さらに、例えば、流路10が各矩形導波管44を巡回する構成のプラズマ発生装置1においては、一の流路10に対し複数(例えば六つ)のプラズマ発生部30を備え得るため、省スペースであるとともに、例えば、一の流路10に所定の体積の流体を流す際に、より多くのプラズマを発生させることができる。
したがって、例えば、流体処理装置100がかかるプラズマ発生装置1を備えることにより、より少ないエネルギーで、より一層効率的に被処理流体のプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0041】
<試験例>
上記第2実施形態で示した構成の流体処理装置を用い、メチレンブルー(MB)水溶液を被処理流体として、プラズマ処理によるMBの分解を行った。具体的には、まず、メチレンブルー(C
16H
18ClN
3S、キシダ化学株式会社、000−494724)を純水に溶解させることで8mg/LのMB水溶液を8L調製し、貯留タンクに供給した。このMB水溶液を、流体処理装置の流路に13.7L/minの流量で流通させた状態で、プラズマ発生部にマイクロ波を導入してプラズマを発生させた。マイクロ波の出力条件は、進行波出力Pf(forward power):955W、反射波出力Pr(reflected power):73Wとなるよう調整した。なお、MB水溶液の水温は、適宜冷却器を用い、貯留タンクにおいて28±3℃に保つようにした。そして、貯留タンクのMB水溶液のMB濃度の経時変化を調べることで、発生されたマイクロ波プラズマによるMBの分解状況を評価した。
なお、MB濃度は、プラズマの照射開始から5分間隔で所定量のMB水溶液を採取し、紫外・可視吸光(UV−Vis)分光光度計にて655nm付近のメチレンブルーの最大吸光度ピークを測定することで調べた。その結果を
図6(a)に示した。
図6の縦軸は、MB水溶液の初期濃度に対する濃度の低下割合を、MBの分解率(%)として示している。
【0042】
なお、比較のために、同様の出力条件で発生させたマイクロ波プラズマを、(b)バッチ処理方式でMB水溶液に照射した場合、および、さらに(c)かかるバッチ処理に出力500Wの超音波照射を併用した場合についても、MBの分解率(%)を調べ、その結果を併せて
図6に(b)(c)としてそれぞれ示した。なお、MB濃度の測定は、プラズマの照射開始から10分間隔で行った。
【0043】
図6の(a)に示されるように、ここに開示される流体処理装置を用いたプラズマ処理により、マイクロ波プラズマの照射と共に655nm付近のメチレンブルーの最大吸光度ピークが低下し、メチレンブルーが分解されて退色してゆくのが確認できた。また、プラズマのバッチ処理方式(b)や、バッチ処理と超音波照射とを併用する方法(c)と比較して、同じマイクロ波発生エネルギーでより高効率なMBの分解が可能であることが確認された。
そこで、MBの分解の様子を、下式(1)に基づく分解モデルに基づいて疑似一次反応速度定数(α)を算出することで、定量的に評価した。
n=n
0×exp(−αH) …(1)
ここで式(1)中、n
0はMBの初期濃度(8mg/L)であり、nはプラズマ照射時間(サンプリング時間)tにおけるメチレンブルー濃度である。また、Hは単位体積あたりに導入したマイクロ波エネルギーであり、H=59.7kWh/m
3を外挿した。得られた反応速度定数(分解速度定数)(α)を、下記表1に示した。
【0045】
表1から判るように、ここに開示される連続処理型の流体処理装置によると、バッチ処理による方法に比べて反応定数αがおおよそ二桁も上昇し、バッチ処理と超音波照射とを併用する方法に比べても、反応定数αは一桁以上高い値であった。このことから、ここに開示される連続処理型の流体処理装置によると、同じエネルギーで効率よくプラズマが発生できるとともに、発生させたプラズマを失活させることなく良好に被処理流体に導入することができ、極めて効率よく流体のプラズマ処理を行えることが確認できた。
【0046】
次いで、上記と同じ流体処理装置を用い、MB水溶液の流量(流速)を(1)13.7L/min,(2)11L/min,(3)9L/minと変化させ、その他の条件は同様にしてプラズマ処理を行った。かかるプラズマ処理によるMBの分解状況について調べ、その結果を
図7に示した。
図7に示されるように、ここに開示される流体処理装置によると、MB水溶液の流量を増大させればさせるほど、MBの分解効率が上がることが解った。そこで、最も低流量である(3)9L/minで60分間の処理をしたときを基準として、かかる条件でのMB水溶液の処理サイクル数(処理流速×処理時間÷処理体積=67.8サイクル)に達するまでに要する、処理時間と、その時のMB分解率とを調べた。その結果を下記の表2に示した。
【0048】
表2に示されるとおり、流量を増大させた場合に、1サイクル当たりのMB分解率が高くなり、より効率の良い流体処理が可能であることが確認できた。すなわち、ここに開示される流体処理装置によると、マイクロ波励起プラズマは流体中には発生されない。また、サイクル速度を高くすることで、流体の流速が高まり、プラズマ発生空間の圧力をより低減することができる。つまり、単位エネルギーあたりでより高濃度なプラズマを発生させることができる。そのため、流体の流速を高めた場合でも、安定してより高濃度なプラズマを均一性良く発生させることができる。これにより、ここに開示される流体処理装置を用いることにより、安定で、より高効率なプラズマ処理が可能となることが示された。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。