(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄系材料で構成された歯部(14,114,214,314,414)と、軽金属で構成され、前記歯部(14,114,214,314,414)を支持する円板部(13,113,213,313,471)とを備えたスプロケットにおいて、
前記歯部(14,114,214,314,414)は、前記円板部(13,113,213,313,471)の外周面(18,118,218,318,418)に突き当てられて、レーザー溶接または電子ビーム溶接によって前記円板部(13,113,213,313,471)に異材接合され、
前記歯部(14,114,214,314,414)及び前記円板部(13,113,213,313,471)は、プレス加工で打ち抜かれて形成されるものであり、
前記歯部(14,114,214,314,414)及び前記円板部(13,113,213,313,471)は、前記プレス加工の打ち抜き方向が一致する向きで配置され、
前記プレス加工のダレ(113a,114a)側から、レーザーまたは電子ビームが照射されて形成される溶接部を備えることを特徴とするスプロケット。
複数設けられる前記歯部(114,214,314)は、一つ一つが別体で形成され、前記円板部(113,213,313)に溶接されることを特徴とする請求項1記載のスプロケット。
前記円板部(213)と前記歯部(214)との溶接部(225)が、前記円板部(213)の径方向に距離を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスプロケット。
前記円板部(313)と前記歯部(314)との溶接部(325a,325b)が、前記スプロケットと同心且つ互いに異なる半径を有する複数の円(C1,C2)上に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスプロケット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るスプロケットについて図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスプロケットの平面図である。
図2は、
図1のII−II断面図である。
スプロケット10は、自動二輪車(不図示)の駆動輪である後輪に設けられる従動スプロケットである。自動二輪車は、エンジンの出力軸に設けられる駆動スプロケット(不図示)と、スプロケット10と、上記駆動スプロケットとスプロケット10との間に巻き掛けられる無端ループ状の駆動チェーン(不図示)とを備える。エンジンの出力は、駆動スプロケット及び駆動チェーンを介してスプロケット10に伝達され、後輪はスプロケット10と一体に回転する。駆動チェーンは、ローラーチェーンであり、炭素鋼等の鉄系材料で構成される。
【0011】
図2に二点鎖線で示すように、後輪のホイールは、後輪の車軸が挿通されるハブ11を有し、ハブ11は、スプロケット10が取り付けられるスプロケット固定部12を有する。スプロケット固定部12は、スプロケット10を車軸の軸方向に受けるフランジ部12aと、スプロケット10の内周部に嵌合するボス部12bとを備える。
【0012】
スプロケット10は、スプロケット固定部12に取り付けられる円板状の円板部13と、円板部13の外周に結合される環状の歯部14とを備える。なお、歯部14は全周に亘って同様の形状を有するため、
図1では、歯部14の形状は一部のみが示され、残りの部分の形状は省略されている。
また、スプロケット10は、フランジ部12aに当接する側の内側面10aと、内側面10aの反対側の外側面10bとを有する。内側面10a及び外側面10bは、スプロケット10の略全体に亘り略平行であり、スプロケット10は略平坦な板である。
円板部13は、アルミ合金により構成されている。ここで、円板部13は、軽金属により構成されていれば良く、軽金属としては、例えば、アルミ合金、マグネシウム合金及びチタン合金、純アルミニウム、及び、純チタンが挙げられる。
【0013】
円板部13は、中心に設けられてボス部12bの外周に嵌合する中央孔15と、中央孔15の周縁部に互いに周方向に略等間隔をあけて設けられる複数の固定孔16と、隣接する各固定孔16間に設けられる複数の肉抜き孔17とを備える。また、スプロケット10の中心の軸線は、中央孔15の軸線Aである。スプロケット10は、中央孔15がボス部12bに嵌合されて位置決めされ、固定孔16に挿通される各固定ボルト(不図示)によって、フランジ部12aに締結固定される。
円板部13は、歯部14が溶接で固定される外周面18を備える。外周面18は、平面視では、略真円状であり、その面は、軸線Aの軸方向に略平行に延びる。
円板部13は、板材を金型によるプレス加工で打ち抜いて円板状に形成されている。外周面18はプレス加工によって形成される。
【0014】
図3は、溶接する前の段階の円板部13及び歯部14の一部を示す拡大図である。
図1〜
図3に示すように、歯部14は、円板部13の外周面18に結合される円環状の環状部20と、環状部20の外周から径方向外側に突出する複数の歯21とを備える。
歯21は、周方向に略等間隔をあけて環状部20の外周上に放射状に配置されており、隣接する各歯21の間には、谷部22が形成されている。前記駆動チェーンのローラーは、谷部22に配置されて歯21に噛み合う。
【0015】
環状部20は、平面視で略真円状の内周面23を有する。内周面23は、軸線Aの軸方向に略平行に延びる。内周面23は、円板部13の外周面18に対し径方向に突き当てられて溶接される面であり、その内径は、外周面18の外径と同等或いは外周面18の外径よりも僅かに大径に形成される。
歯部14は、炭素鋼等の鉄系材料により構成されている。歯部14は、板材をプレス加工で打ち抜いて円環状に形成されている。内周面23はプレス加工によって形成される。歯部14の板厚は、円板部13の板厚に略等しい。
【0016】
図4は、
図2の溶接部の拡大図である。
ここで、
図1〜
図4を参照し、円板部13に歯部14を溶接する手順について説明する。
まず、円板部13の外周面18に対し、歯部14の内周面23が嵌め込まれ、これにより、内周面23と外周面18とが突き当てられた突き当て部24が形成される。次いで、レーザー溶接機により、軸線Aに対し略平行なレーザー光Lが一方向から突き当て部24に照射され、突き当て部24の微小な隙間にレーザー光が入り込む。これにより、突き当て部24で鉄系材料の内周面23とアルミ合金の外周面18とが溶け合い、円板部13と歯部14とが異材接合される。内周面23と外周面18とが溶け合う溶接部は、スプロケット10の板厚方向の略全体に形成される。
【0017】
レーザー溶接は、レーザー光を微小スポットに収束させて高いエネルギー密度が得られるため、鉄系材料とアルミ合金とを強固に接合することができる。
このように、レーザー溶接によって、円板部13に歯部14を強固に溶接するため、円板部13及び歯部14の板厚を厚くしなくとも十分な接合強度を得ることができ、スプロケット10を軽量化することができる。
【0018】
図1に示すように、突き当て部24の溶接箇所は、歯21に対応する部分のみであり、谷部22に対応する部分には、レーザー溶接の溶接部である溶接ビード25は形成されていない。このように、体積の大きな歯21に対応する部分に溶接ビード25を設け、体積の小さな谷部22では溶接をしていないため、歯部14に対する溶接の熱影響を低減できる。また、溶接箇所を低減できるため、省エネルギー化及び溶接時間の短縮化を図ることができる。なお、溶接ビード25は、突き当て部24の全周に亘って連続して形成しても良い。
また、溶接ビード25は、平面視で略真円の突き当て部24上に形成されるため、溶接の際には、レーザー溶接機のトーチを円状に移動させるか、或いは、固定したレーザー溶接機のトーチに対し、スプロケット10を軸線Aを中心に回転すれば良く、レーザー溶接の送りの制御が容易である。
【0019】
レーザー溶接の後、溶接ビード25においてスプロケット10の内側面10a及び外側面10bに突出した部分が機械加工によって除去される。その後、歯部14には、一対の斜面部26,26が機械加工によって形成される。歯部14は、斜面部26,26が形成されることで、先端側ほど板厚方向に先細る形状となる。
【0020】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、スプロケット10は、鉄系材料で構成された歯部14と、軽金属のアルミ合金で構成され、歯部14を支持する円板部13とを備え、歯部14は、円板部13の外周面18に突き当てられて、レーザー溶接によって円板部に異材接合されるため、レーザー溶接によって、歯部14と円板部13との突き当て部24で高い溶接強度を得られる。このため、結合強度を高くするためにスプロケット10の板厚を厚くする必要がなく、スプロケット10を軽量化できる。
【0021】
[第2の実施の形態]
以下、
図5〜
図7を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、歯部14は、環状部20と歯21とを備えるものとして説明したが、本第2の実施の形態は、歯部114の一つ一つが別体で形成される点が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0022】
図5は、第2の実施の形態におけるスプロケット110の一部を拡大した平面図である。
スプロケット110は、円板部113と、円板部113の外周に結合される複数の歯部114とを備える。円板部113は、軽金属製であり、例えばアルミ合金により構成される。円板部113は、中央孔15と、固定孔16と、肉抜き孔17とを備える。
円板部113は、歯部114が溶接で固定される外周面118を備える。外周面118は、平面視では、略真円状であり、その面は、軸線Aの軸方向に略平行に延びる。
【0023】
外周面118は、外周面118の最外周から径方向内側に一段窪む凹部140を複数備える。凹部140は、外周面118の周方向に略等間隔をあけて全周に亘り複数形成されており、各凹部140には、歯部114が溶接される。歯部114が溶接される凹部140の底面140aは、軸線Aを中心とする同一の仮想円上に配置されており、各底面140aは、円弧状に形成されている。
円板部113は、板材をプレス加工で打ち抜いて円板状に形成されている。外周面118はプレス加工によって形成される。
【0024】
歯部114は、平面視で略三角形状に形成されており、外周面118の底面140aに溶接される溶接面123と、前記駆動チェーンのローラーに当接する一対の歯面141,141とを備える。溶接面123は、底面140aの形状に沿う円弧状に形成されている。隣接する歯部114の間には谷部22が形成されている。
歯部114は、炭素鋼等の鉄系材料により構成されている。歯部114は、その一つ一つが、金型によるプレス加工で打ち抜かれて別体で形成される。
【0025】
図6は、スプロケット110の溶接工程を示す図である。
歯部114の溶接の際には、まず、円板部113の凹部140に対し、歯部114が嵌め込まれ、これにより、歯部114の溶接面123と底面140aとが突き当てられた突き当て部124が形成される。この際、歯部114及び円板部113は、プレス加工の打ち抜き方向が一致する向きで配置される。すなわち、突き当て部124では、歯部114プレス加工のダレ部114a(ダレ)と、円板部113のプレス加工のダレ部113a(ダレ)とが互いに向き合うように、歯部114と円板部113とが配置される。
また、歯部114を凹部140に嵌めることで、歯部114を周方向及び径方向に位置決めできるため、溶接が容易である。
【0026】
図7は、
図6の突き当て部124の拡大図である。
ダレ部114aとダレ部113aとが互いに向き合うように配置されることで、突き当て部124のダレ部113a,114a側には、隙間Sが形成される。隙間Sは、ダレ部113a,114aと反対側に行くほど幅が狭くなる略V字形状に形成される。
【0027】
次いで、レーザー溶接機により、軸線Aに対し略平行なレーザー光Lが、ダレ部113a,114a側から突き当て部124に入射するように照射され、隙間Sにレーザー光が入り込む。隙間Sは奥側ほど狭くなっているため、隙間Sに入射したレーザー光Lは、入射方向側には反射せず、隙間Sの奥側へ進む。これにより、突き当て部124をレーザー光Lで効率良く溶かすことができるため、円板部113と歯部114とを強固に異材接合することができる。溶接面123と底面140aとが溶け合う溶接部は、スプロケット110の板厚方向の略全体に形成される。
【0028】
レーザー溶接の溶接ビード125は突き当て部124に沿って形成される。溶接ビード125は、軸線Aを中心とする同一の仮想円上において底面140aに沿うように形成される。このため、溶接の際には、レーザー溶接機のトーチを円状に移動させるか、或いは、固定したレーザー溶接機のトーチに対し、スプロケット110を軸線Aを中心に回転すれば良く、レーザー溶接の送りの制御が容易である。
レーザー溶接の後、溶接ビード125においてスプロケット110の内側面10a及び外側面10bに突出した部分が機械加工によって除去される。その後、歯部114には、一対の斜面部26,26が機械加工によって形成される。
【0029】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、複数設けられる歯部114は、一つ一つが別体で形成され、円板部113に溶接されるため、鉄系材料で構成される歯部114の体積を小さくでき、スプロケット110の軽量化を図ることができる。また、歯部114は、一つ一つが別体でプレス加工によって打ち抜かれるため、一枚の板材から多数の歯部114を打ち抜くことができ、材料の歩留まりが良い。さらに、歯部114は、一つ一つが別体で形成されるため、歯部114を溶接する個数を変更することで、スプロケット110の全体の歯数を変更できる。
【0030】
また、歯部114及び円板部113は、プレス加工で打ち抜かれて形成され、歯部114及び円板部113は、プレス加工の打ち抜き方向が一致する向きで配置され、プレス加工のダレ部113a,114a側から、レーザー光Lが照射される。これにより、突き当て部124にダレ部113a,114a側から侵入したレーザー光Lが外側に反射することを防止でき、レーザー光を効果的に突き当て部124内で多重反射させて溶接することができる。このため、溶接のエネルギーを節約できるとともに、溶接時間を短縮できる。
【0031】
[第3の実施の形態]
以下、
図8を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、歯部14は、環状部20と歯21とを備えるものとして説明したが、本第2の実施の形態は、歯部114の一つ一つが別体で形成される点が、上記第1の実施の形態と異なる。また、本第3の実施の形態は、歯部214と円板部213との溶接部が径方向に距離を有して形成される点が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0032】
図8は、第3の実施の形態におけるスプロケット210の一部を拡大した平面図である。
スプロケット210は、円板部213と、円板部213の外周に結合される複数の歯部214とを備える。円板部213は、軽金属製であり、例えばアルミ合金により構成される。円板部213は、歯部214が溶接で固定される外周面218を備える。外周面218は、平面視では、略真円状であり、その面は、軸線Aの軸方向に略平行に延びる。円板部213は、外周面218の構成を除き、上記第1の実施の形態の円板部13と同一に形成されている。
【0033】
外周面218は、外周面218の最外周から径方向内側に一段窪む凹部240を複数備える。凹部240は、外周面218の周方向に略等間隔をあけて全周に亘り複数形成されており、各凹部240には、歯部214が溶接される。
凹部240は、円板部213の径方向外側ほど互いの間隔が広くなる一対の傾斜面245,245と、円弧状に窪む底面246とを備え、平面視では略V字状に形成されている。傾斜面245,245は、円板部213の径方向に延びる面であり、歯部214は、傾斜面245,245に溶接される。
円板部213は、板材をプレス加工で打ち抜いて円板状に形成されている。外周面218はプレス加工によって形成される。
【0034】
歯部214は、前記駆動チェーンに噛み合う歯250と、凹部240に嵌合する嵌合部251とを一体に備える。嵌合部251は、凹部240の傾斜面245,245に沿うように傾斜して形成される一対の溶接面252,252と、溶接面252,252の端を周方向に繋ぐ内側面253とを備える。
歯部214は、炭素鋼等の鉄系材料により構成されている。歯部214は、その一つ一つが、金型によるプレス加工によって打ち抜かれて別体で形成される。
【0035】
歯部214の溶接の際には、まず、円板部213の凹部240に対し、歯部214が嵌め込まれ、これにより、歯部214の溶接面252,252と傾斜面245,245とが突き当てられた突き当て部224,224が形成される。
次いで、レーザー溶接機により、軸線Aに対し略平行なレーザー光が、一方向から突き当て部224,224に入射するように照射され、傾斜面245,245と溶接面252,252とがレーザー溶接によって異材接合される。傾斜面245,245と溶接面252,252とのレーザー溶接の溶接ビード225,225(溶接部)は、突き当て部224,224に沿ってスプロケット210の径方向に延び、スプロケット210の径方向に距離を有している。
【0036】
以上説明したように、本発明を適用した第3の実施の形態によれば、円板部213と歯部214との溶接部である溶接ビード225,225が、円板部213の径方向に距離を有するため、溶接ビード225,225にかかる負荷を分散させて耐荷重性を向上させることができ、溶接ビード225,225を短くしても十分な結合強度を得ることができる。
また、歯部214にかかる径方向の荷重を円板部213の傾斜面245,245で受けることができ、結合部の耐荷重性を向上させることができる。
【0037】
[第4の実施の形態]
以下、
図9を参照して、本発明を適用した第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、歯部14は、環状部20と歯21とを備えるものとして説明したが、本第2の実施の形態は、歯部314の一つ一つが別体で形成される点が、上記第1の実施の形態と異なる。また、本第4の実施の形態は、歯部314と円板部313との溶接部が径方向で異なる複数の位置で周方向に延びて形成される点が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0038】
図9は、第4の実施の形態におけるスプロケット310の一部を拡大した平面図である。
スプロケット310は、円板部313と、円板部313の外周に結合される複数の歯部314とを備える。円板部313は、軽金属製であり、例えばアルミ合金により構成される。円板部313は、歯部314が溶接で固定される外周面318を備える。外周面318は、平面視では、略真円状であり、その面は、軸線Aの軸方向に略平行に延びる。円板部313は、外周面318の構成を除き、上記第1の実施の形態の円板部13と同一に形成されている。
【0039】
外周面318は、外周面318から径方向内側に窪む凹部340を複数備える。凹部340は、外周面318の周方向に略等間隔をあけて全周に亘り複数形成されており、各凹部340には、歯部314が溶接される。
凹部340は、外周面318の最外周から径方向に一段窪む外側凹部360と、外側凹部360から径方向内側に一段窪む内側凹部361とを備える。
【0040】
外側凹部360は、軸線Aを中心とする同一の仮想円C1上に配置されて円弧状に形成された外側底面360aを有する。
内側凹部361は、外側凹部360の周方向の中央部に形成されており、外側凹部360は、内側凹部361に分断されるようにしての内側凹部361の周方向の両側に位置する。内側凹部361は、軸線Aを中心とする同一の仮想円C2上に配置されて円弧状に形成された内側底面361aを有する。仮想円C2の径は、仮想円C1の径よりも小さく、内側底面361aは、外側底面360aよりも径方向内側に位置する。
また、内側凹部361は、外側底面360aと内側底面361aとを繋ぐ一対の側面361b,361bを有する。側面361b,361bは、軸線Aを通る内側凹部361の幅方向の中心線Mに対し略平行に延びる。
円板部313は、板材をプレス加工で打ち抜いて円板状に形成されている。外周面318はプレス加工によって形成される。
【0041】
歯部314は、平面視で略三角形状の歯350と、内側凹部361に嵌合する嵌合部351とを一体に備える。嵌合部351は、略三角形状の歯350の底辺の中央部から歯350とは反対方向に突出している。歯350の底辺において嵌合部351の両側の部分は、周方向に延びるフランジ状の外側溶接面352となっている。外側溶接面352は、外側凹部360の外側底面360aに沿う円弧状に形成されている。
【0042】
嵌合部351は、内側凹部361の内側底面361aに当接する内側溶接面353と、内側溶接面353と外側溶接面352とを径方向に繋ぐ一対の嵌合部側面354,354とを備える。内側溶接面353は、内側凹部361の内側底面361aに沿う円弧状に形成されている。嵌合部側面354,354は、内側凹部361の側面361b,361bに対し略平行に形成されており。側面361b,361bに嵌まる。
歯部314は、炭素鋼等の鉄系材料により構成されている。歯部314は、その一つ一つが、金型によるプレス加工によって打ち抜かれて別体で形成される。
【0043】
歯部314の溶接の際には、まず、円板部313の凹部340に対し、歯部314が嵌め込まれる。これにより、外側溶接面352と外側底面360aとが突き当てられた外側突き当て部324aと、内側溶接面353と内側底面361aとが突き当てられた内側突き当て部324bとが形成される。歯部314は凹部340に嵌合することで、適な位置に位置決めされる。
次いで、レーザー溶接機により、軸線Aに対し略平行なレーザー光が、一方向から外側突き当て部324a及び内側突き当て部324bに入射するように照射される。これにより、外側突き当て部324a及び内側突き当て部324bが、レーザー溶接によってそれぞれ異材接合される。
【0044】
外側突き当て部324aのレーザー溶接の溶接ビード325a(溶接部)は、外側突き当て部324aに沿ってスプロケット310の周方向に延びる。内側突き当て部324bのレーザー溶接の溶接ビード325b(溶接部)は、内側突き当て部324bに沿ってスプロケット310の周方向に延びる。
溶接ビード325a及び溶接ビード325bは、仮想円C1に沿う外側突き当て部324a上、及び、仮想円C2に沿う内側突き当て部324b上に形成されるため、溶接の際には、レーザー溶接機のトーチを円状に移動させるか、或いは、固定したレーザー溶接機のトーチに対し、スプロケット310を軸線Aを中心に回転すれば良く、レーザー溶接の送りの制御が容易である。
また、溶接ビード325aと溶接ビード325bとは、円板部313の径方向に互いに離間しており、径方向に距離を有して設けられている。このため、溶接ビード325a,325bにかかる負荷を分散させて耐荷重性を向上させることができ、溶接ビード325a,325bを短くしても十分な結合強度を得ることができる。
【0045】
以上説明したように、本発明を適用した第4の実施の形態によれば、円板部313と歯部314との溶接部である溶接ビード325a及び溶接ビード325bが、スプロケット310と同心且つ互いに異なる半径を有する仮想円C1上及び仮想円C2上にそれぞれ形成されるため、レーザー溶接による結合強度を向上できるとともに、レーザー溶接の送り方向を単純化でき、容易に溶接できる。
【0046】
[第5の実施の形態]
以下、
図10及び
図11を参照して、本発明を適用した第5の実施の形態について説明する。
上記第1の実施の形態では、円板部13は、軽金属により構成されるものとして説明したが、本第5の実施の形態は、円板部413が、中心部に、鉄系材料で構成される内側円板部470を備える点等が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0047】
図10は、第5の実施の形態におけるスプロケット410の平面図である。
図11は、
図10のXI−XI断面図である。
スプロケット410は、自動二輪車のエンジンの出力軸に固定される駆動スプロケットである。エンジンの出力は、駆動チェーンを介して後輪の従動スプロケットに伝達される。
スプロケット410は、エンジンの出力軸に固定される円板部413と、円板部413の外周に結合される環状の歯部414とを備える。歯部414は鉄系材料製であり、歯数が異なる点以外は上記第1の実施の形態の歯部14と同様に構成されているため、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0048】
円板部413は、エンジンの出力軸に嵌合して固定される内側円板部470と、内側円板部470の外周に結合される円環状の外側円板部471(円板部)とを備える。
内側円板部470は、エンジンの出力軸に嵌合するスプライン嵌合孔部472を中心に備える。内側円板部470は、エンジンの出力軸からの力を直接受けるスプライン嵌合孔部472を備えるため、強度の高い炭素鋼等の鉄系材料で構成されている。スプロケット410の軸線Bは、スプライン嵌合孔部472の軸線に一致する。
内側円板部470は、平面視で略真円状の内側外周面470aを有する。内側外周面470aは、軸線Bの軸方向に略平行に延びる。外側円板部471は、内側外周面470aに溶接される。
【0049】
外側円板部471は、内側外周面470aに嵌合する内周面471aと、歯部14の内周面23に嵌合する外周面418とを有する。外側円板部471は、径方向の中央部に、板厚方向に窪む平面視で円環状の凹部477を備える。凹部477は、外側円板部471の表裏にそれぞれ形成されている。内周面471a及び外周面418は、軸線Bの軸方向に略平行に延びる。
外側円板部471は、軽金属製であり、例えばアルミ合金により構成される。また、外側円板部471は、板材をプレス加工で打ち抜いて円板状に形成されている。
【0050】
外側円板部471と内側円板部470とのレーザー溶接の際、外側円板部471は内側円板部470に嵌合され、これにより、内周面471aと内側外周面470aとが突き当てられた内側突き当て部473が形成される。レーザー溶接機により、軸線Bに対し略平行なレーザー光が一方向から内側突き当て部473に照射されると、内側突き当て部473はレーザー溶接によって異材接合される。内側突き当て部473のレーザー溶接の溶接ビード474は、周方向に略等間隔をあけて複数形成される。
なお、溶接ビード474は、内側突き当て部473の全周に亘って連続して形成しても良い。
【0051】
外側円板部471と歯部414とのレーザー溶接の際、歯部414は外側円板部471に嵌合され、これにより、内周面23と外周面418とが突き当てられた外側突き当て部475が形成される。レーザー溶接機により、軸線Bに対し略平行なレーザー光が一方向から外側突き当て部475に照射されると、外側突き当て部475はレーザー溶接によって異材接合される。外側突き当て部475のレーザー溶接の溶接ビード476は、周方向に略等間隔をあけて複数形成される。
なお、溶接ビード476は、外側突き当て部475の全周に亘って連続して形成しても良い。
【0052】
本第5の実施の形態によれば、高強度が要求されるスプライン嵌合孔部472を備えた円板部413は、スプライン嵌合孔部472を有する鉄系材料製の内側円板部470と、内側円板部470の内側外周面470aに結合される軽金属製の外側円板部471とを備え、鉄系材料製の歯部414は、外側円板部471の外周面418にレーザー溶接される。このため、スプライン嵌合孔部472及び歯部414の強度を確保しながら、スプロケット410の軽量化を図ることができる。
【0053】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記第1〜第5の実施の形態では、スプロケット10,110,210,310,410は、レーザー溶接によって異材接合されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザー溶接と同様の特性を備えた電子ビーム溶接によって異材接合されても良い。
また、上記第1〜第5の実施の形態では、円板部13,113,213,313、外側円板部471及び歯部14,114,214,314,414は、プレス加工で打ち抜かれて形成されるものとして説明したが、これに限らず、例えば切削加工や鋳造等の他の加工方法によって形成されても良い。
また、上記第2の実施の形態では、プレス加工のダレ部113a,114a側から、レーザー光Lが照射されるものとして説明したが、この方法を、上記第1及び第3〜第5の実施の形態に適用しても良い。
また、上記第1〜第5の実施の形態では、スプロケット10,110,210,310,410は、自動二輪車用であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、自転車、三輪車、四輪以上の車輪を有する自動車などの各種車両や、産業機械等にも適用可能である。