(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クランクケース(11)内に設けられるクランクシャフト(10)、及び、動弁系(45f,45r)を有するエンジン(1)に設けられ、前記クランクシャフト(10)から受けた動力を前記動弁系(45f,45r)に伝達するアイドルギヤ(62)と、前記クランクシャフト(10)と平行に設けられ、前記アイドルギヤ(62)を回転自在に支持するアイドルシャフト(63)と、前記クランクケース(11)を側方から覆うケースカバー(39)とを備えたエンジンの動弁系駆動装置において、
前記クランクケース(11)の壁面(20b)に形成され、前記アイドルシャフト(63)の一端(63b)を支持するクランクケース側ボス部(90)と、前記ケースカバー(39)の内側に形成され、前記アイドルシャフト(63)の他端(63c)を支持するケースカバー側ボス部(91,291)とを備え、
前記ケースカバー側ボス部(91,291)及び前記アイドルシャフト(63)の前記他端(63c)には、互いに係合する継手部(128,111)が形成され、当該継手部(128,111)が互いに係合することで前記アイドルシャフト(63)が回転不能とされ、
前記アイドルシャフト(63)内には油路(112)が形成され、当該油路(112)は、前記クランクケース(11)の壁面(20b)に形成された油路(58)と前記アイドルシャフト(63)の前記一端(63b)で接続され、前記アイドルシャフト(63)の前記他端(63c)と前記ケースカバー側ボス部(91,291)との間には、弾性部材(95)が介装されていることを特徴とするエンジンの動弁系駆動装置。
前記アイドルギヤ(62)は、軸受部材(92a,92b)を介して前記アイドルシャフト(63)に回転自在に支持され、前記アイドルシャフト(63)内には油路(112)が形成され、当該油路(112)は、前記クランクケースの前記壁面(20b)に形成された油路(58)と前記アイドルシャフト(63)の前記一端(63b)で接続され、
前記ケースカバー側ボス部(91,291)は、前記軸受部材(92a)と軸方向に当接する当接面(123)を有し、当該当接面(123)の外周には、凹形状のオイル溜まり(124)が設けられることを特徴とする請求項1記載のエンジンの動弁系駆動装置。
前記当接面(123)には、当該当接面(123)と前記オイル溜まり(124)とを連通させる切欠部(125,225)が設けられ、当該切欠部(125,225)によって、前記アイドルシャフト(63)内の前記油路(112)と前記オイル溜まり(124)とが連通することを特徴とする請求項2記載のエンジンの動弁系駆動装置。
前記オイル溜まり(124)の外周には第2の当接面(122)が設けられ、当該第2の当接面(122)は、前記当接面(123)よりも軸方向に突出していることを特徴とする請求項2または3に記載のエンジンの動弁系駆動装置。
前記第2の当接面(122)と前記アイドルギヤ(62)との間には、スラスト軸受(94)が介装されていることを特徴とする請求項4記載のエンジンの動弁系駆動装置。
前記第2の当接面(122)には、前記オイル溜まり(124)を、前記ケースカバー側ボス部(91,291)の外側の空間に連通させる第2の切欠部(126,226)が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの動弁系駆動装置。
前記当接面(123)には、当該当接面(123)と前記オイル溜まり(124)とを連通させる切欠部(125,225)が設けられ、前記切欠部(125,225)と前記第2の切欠部(126,226)とは、ケースカバー側ボス部(91,291)の周方向において互いに異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項6記載のエンジンの動弁系駆動装置。
前記切欠部(125)は、環状の前記当接面(123)上において径方向に互いに対向する配置で一対設けられ、前記第2の切欠部(126)は、環状の前記第2の当接面(122)上において互いに対向する配置で一対設けられ、 一対の前記切欠部(125)を繋ぐ直線(L1)と、一対の前記第2の切欠部(126)を繋ぐ直線(L2)とは略直交することを特徴とする請求項7記載のエンジンの動弁系駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のエンジンの動弁系駆動装置では、上記アイドルシャフトを支持するためにクランクケースカバーにホルダ部材を設けるため、エンジンのコンパクト化、軽量化及び単純化に課題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、エンジンをコンパクト化、軽量化及び単純化可能なエンジンの動弁系駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、クランクケース(11)内に設けられるクランクシャフト(10)、及び、動弁系(45f,45r)を有するエンジン(1)に設けられ、前記クランクシャフト(10)から受けた動力を前記動弁系(45f,45r)に伝達するアイドルギヤ(62)と、前記クランクシャフト(10)と平行に設けられ、前記アイドルギヤ(62)を回転自在に支持するアイドルシャフト(63)と、前記クランクケース(11)を側方から覆うケースカバー(39)とを備えたエンジンの動弁系駆動装置において、前記クランクケース(11)の壁面(20b)に形成され、前記アイドルシャフト(63)の一端(63b)を支持するクランクケース側ボス部(90)と、前記ケースカバー(39)の内側に形成され、前記アイドルシャフト(63)の他端(63c)を支持するケースカバー側ボス部(91,291)とを備え、前記ケースカバー側ボス部(91,291)及び前記アイドルシャフト(63)の前記他端(63c)には、互いに係合する継手部(128,111)が形成され、当該継手部(128,111)が互いに係合することで前記アイドルシャフト(63)が回転不能とされ
、前記アイドルシャフト(63)内には油路(112)が形成され、当該油路(112)は、前記クランクケース(11)の壁面(20b)に形成された油路(58)と前記アイドルシャフト(63)の前記一端(63b)で接続され、前記アイドルシャフト(63)の前記他端(63c)と前記ケースカバー側ボス部(91,291)との間には、弾性部材(95)が介装されていることを特徴とする。
本発明によれば、クランクケースの壁面に形成されるクランクケース側ボス部とケースカバーの内側に形成されるケースカバー側ボス部とでアイドルシャフトの一端及び他端を支持するとともに、アイドルシャフトの他端の継手部によってアイドルシャフトを回転不能にできるため、アイドルシャフトを支持する構造を簡単にできる。このため、エンジンをコンパクト化、軽量化及び単純化できる。
また、アイドルシャフト内の油路を通るオイルの油圧に変動が生じた場合であっても、アイドルシャフトを弾性部材によって軸方向に支持でき、アイドルシャフトの振動に起因する音の発生を防止できる。
【0006】
また、本発明は、前記アイドルギヤ(62)は、軸受部材(92a,92b)を介して前記アイドルシャフト(63)に回転自在に支持され、前記アイドルシャフト(63)内には油路(112)が形成され、当該油路(112)は、前記クランクケースの前記壁面(20b)に形成された油路(58)と前記アイドルシャフト(63)の前記一端(63b)で接続され、前記ケースカバー側ボス部(91,291)は、前記軸受部材(92a)と軸方向に当接する当接面(123)を有し、当該当接面(123)の外周には、凹形状のオイル溜まり(124)が設けられることを特徴とする。
本発明によれば、ケースカバー側ボス部の当接面の外周側のオイル溜まりから軸受部材に油を供給でき、簡単な構造で軸受部材に給油できる。
【0007】
また、本発明は、前記当接面(123)には、当該当接面(123)と前記オイル溜まり(124)とを連通させる切欠部(125,225)が設けられ、当該切欠部(125,225)によって、前記アイドルシャフト(63)内の前記油路(112)と前記オイル溜まり(124)とが連通することを特徴とする。
本発明によれば、オイル溜まりのオイルを切欠部を介して軸受部材に十分に供給できる。
さらに、本発明は、前記オイル溜まり(124)の外周には第2の当接面(122)が設けられ、当該第2の当接面(122)は、前記当接面(123)よりも軸方向に突出していることを特徴とする。
本発明によれば、オイル溜まりの容量を大きくでき、軸受部材に効果的に給油できる。
【0008】
また、本発明は、前記第2の当接面(122)と前記アイドルギヤ(62)との間には、スラスト軸受(94)が介装されていることを特徴とする。
本発明によれば、オイル溜まりからスラスト軸受に給油できる。
また、本発明は、前記第2の当接面(122)には、前記オイル溜まり(124)を、前記ケースカバー側ボス部(91,291)の外側の空間に連通させる第2の切欠部(126,226)が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、オイル溜まりへのオイルの供給が過剰になった場合に、オイルをケースカバー側ボス部の外側の空間に排出できる。
【0009】
また、本発明は、前記当接面(123)には、当該当接面(123)と前記オイル溜まり(124)とを連通させる切欠部(125,225)が設けられ、前記切欠部(125,225)と前記第2の切欠部(126,226)とは、ケースカバー側ボス部(91,291)の周方向において互いに異なる位置に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、オイル溜まりにオイルを満遍なく供給でき、オイル溜まりの容量を効率良く活用できる。
さらに、本発明は、前記切欠部(125)は、環状の前記当接面(123)上において径方向に互いに対向する配置で一対設けられ、前記第2の切欠部(126)は、環状の前記第2の当接面(122)上において互いに対向する配置で一対設けられ、一対の前記切欠部(125)を繋ぐ直線(L1)と、一対の前記第2の切欠部(126)を繋ぐ直線(L2)とは略直交することを特徴とする。
本発明によれば、オイル溜まりにオイルを満遍なく供給でき、オイル溜まりの容量を効率良く活用できる。
また、本発明は、
クランクケース(11)内に設けられるクランクシャフト(10)、及び、動弁系(45f,45r)を有するエンジン(1)に設けられ、前記クランクシャフト(10)から受けた動力を前記動弁系(45f,45r)に伝達するアイドルギヤ(62)と、前記クランクシャフト(10)と平行に設けられ、前記アイドルギヤ(62)を回転自在に支持するアイドルシャフト(63)と、前記クランクケース(11)を側方から覆うケースカバー(39)とを備えたエンジンの動弁系駆動装置において、前記クランクケース(11)の壁面(20b)に形成され、前記アイドルシャフト(63)の一端(63b)を支持するクランクケース側ボス部(90)と、前記ケースカバー(39)の内側に形成され、前記アイドルシャフト(63)の他端(63c)を支持するケースカバー側ボス部(91,291)とを備え、前記ケースカバー側ボス部(91,291)及び前記アイドルシャフト(63)の前記他端(63c)には、互いに係合する継手部(128,111)が形成され、当該継手部(128,111)が互いに係合することで前記アイドルシャフト(63)が回転不能とされ、前記アイドルギヤ(62)は、軸受部材(92a,92b)を介して前記アイドルシャフト(63)に回転自在に支持され、前記アイドルシャフト(63)内には油路(112)が形成され、当該油路(112)は、前記クランクケースの前記壁面(20b)に形成された油路(58)と前記アイドルシャフト(63)の前記一端(63b)で接続され、前記ケースカバー側ボス部(91,291)は、前記軸受部材(92a)と軸方向に当接する当接面(123)を有し、当該当接面(123)の外周には、凹形状のオイル溜まり(124)が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るエンジンの動弁系駆動装置では、エンジンをコンパクト化、軽量化及び単純化できる。
また、簡単な構造で軸受部材に給油できる。
また、オイル溜まりのオイルを切欠部を介して軸受部材に十分に供給できる。
さらに、オイル溜まりの容量を大きくでき、軸受部材に効果的に給油できる。
また、オイル溜まりからスラスト軸受に給油できる。
また、オイル溜まりへのオイルの供給が過剰になった場合に、オイルをケースカバー側ボス部の外側の空間に排出できる。
また、オイル溜まりにオイルを満遍なく供給でき、オイル溜まりの容量を効率良く活用できる。
また、アイドルシャフトの振動に起因する音の発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るエンジンの動弁系駆動装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の動弁系駆動装置を備えたエンジン1の側面図である。
図1では、エンジン1の一部が断面で示されている。
図1に示すように、エンジン1は自動二輪車(不図示)に搭載されるV型4気筒エンジンである。エンジン1は、クランクシャフト10が収納されるクランクケース11と、クランクケース11の上部から前傾して前上方に延びる第1バンク12fと、クランクケース11の上部から後傾して後上方に延びる第2バンク12rとを備える。第1バンク12f及び第2バンク12rは、シリンダブロック13f,13rと、シリンダブロック13f,13rの上面に連結されるシリンダヘッド14f,14rと、シリンダヘッド14f,14rの上面を塞ぐヘッドカバー15f,15Rとをそれぞれ備える。
【0013】
クランクケース11は、上下割りで構成されており、上部ケース11aと、上部ケース11aの下面に連結される下部ケース11bとを備える。シリンダブロック13f,13rは、上部ケース11aに一体に形成される。
下部ケース11bの下面には、オイルを貯留するオイルパン40が設けられている。下部ケース11bの前面には、オイルを冷却するオイルクーラ41が設けられている。
エンジン1は、クランクシャフト10が車幅方向を指向する向き、且つ、オイルクーラ41がエンジン1の前面に位置する向きで自動二輪車に搭載される。
【0014】
図2は、エンジン1をクランクシャフト10の軸方向に横切る面で切断した断面図である。ここで、第1バンク12f及び第2バンク12rは、同様に構成されているため、
図2では、第1バンク12fの断面を示し、第2バンク12rの断面の図示は省略する。
図1及び
図2に示すように、クランクシャフト10は、クランクケース11の前部のクランク室16に収納され、クランク室16の上方のシリンダブロック13f,13rには、一対のシリンダボア17,17がそれぞれ設けられる。シリンダボア17,17には、ピストン18,18が設けられ、ピストン18,18はコンロッド19,19を介してクランクシャフト10に連結される。
【0015】
クランクシャフト10は、クランクケース11の左右の側壁20a,20bに設けられたクランク支持部21,21、及び、クランク室16内の内部壁20cに設けられたクランク支持部22によって支持されている。クランク支持部21,21,22は、上部ケース11aと下部ケース11bとの結合部に設けられる。
クランクシャフト10は、左側(一側)の側壁20aから外側に突出する突出部23を一端に有し、突出部23には、発電機24が設けられる。発電機24は、側壁20aに取り付けられる発電機カバー25によって覆われる。
クランクシャフト10は、右側(他側)の側壁20b(クランクケースの壁面)から外側に突出する突出部26を他端に有し、突出部26には、プライマリドライブギヤ27が設けられる。
【0016】
クランクケース11の後部には、変速機室28が設けられ、変速機室28には、常時噛合い式の歯車変速機29が収納されている。変速機室28とクランク室16とは、隔壁30によって前後に区画されている。
歯車変速機29は、クランクシャフト10に平行に設けられるメイン軸31と、メイン軸31に平行に設けられるカウンタ軸32と、メイン軸31及びカウンタ軸32に設けられる歯車列群33とを備える。カウンタ軸32は、側壁20aから外側に突出する端部を有し、この端部には、後輪のドリブンスプロケットをチェーンを介して駆動するドライブスプロケット34が設けられる。
【0017】
メイン軸31は、側壁20bから外側に突出するクラッチ支持部35を備え、クラッチ支持部35には、クラッチ装置36が設けられる。クラッチ装置36は、クラッチ支持部35上にメイン軸31に対し相対回転可能に設けられるクラッチアウタ36aと、メイン軸31に固定されるクラッチインナ36bと、クラッチインナ36bとクラッチアウタ36aとの間に設けられる摩擦板36cと、クラッチスプリング37dとを備える周知のものである。クラッチアウタ36aには、プライマリドライブギヤ27に噛み合うプライマリドリブンギヤ38が固定される。
クラッチ装置36及びプライマリドライブギヤ27は、クランクケース11の側面に取り付けられるクラッチカバー39(ケースカバー)によって覆われる。
プライマリドライブギヤ27の上方には、側壁20bに沿ってヘッドカバー15f,15r側までエンジン1内を上下に延びる一対のカムチェーン室43f,43rがそれぞれ形成されている。カムチェーン室43f,43rは下部で合流し、突出部26の近傍では一つの室となっている。
【0018】
シリンダヘッド14f,14rの上部には、動弁機構45f,45r(動弁系)がそれぞれ設けられている。動弁機構45f,45rは、第1バンク12fと第2バンク12rとで同様に構成されているため、第1バンク12fの動弁機構45fを主にして説明し、動弁機構45rにおいて動弁機構45fと同様に構成されるものには同一の符号を付す。
動弁機構45fは、吸気弁46及び排気弁47と、吸気弁46及び排気弁47を閉弁方向に付勢するバルブスプリング48と、吸気弁46及び排気弁47を開弁方向に押圧するバルブリフタ51と、吸気側に設けられる吸気カムシャフト49と、排気側に設けられる排気カムシャフト50とを備える。吸気弁46及び排気弁47は、各気筒に対し、それぞれ一対設けられる。
【0019】
吸気カムシャフト49は、所定の高さ及び位相で設けられたカム山49aを有し、吸気カムシャフト49の回転に伴ってカム山49aがバルブリフタ51を介して吸気弁46を押圧することで、吸気弁46が移動し、シリンダヘッド14f,14rの吸気ポート55が開閉される。
排気カムシャフト50は、所定の高さ及び位相で設けられたカム山(不図示)を有し、排気カムシャフト50の回転に伴ってカム山がバルブリフタ51を介して排気弁47を押圧することで、排気弁47が移動し、シリンダヘッド14f,14rの排気ポート56が開閉される。
【0020】
図3は、動弁機構45f,45rの周辺構造を示す側面図である。
図1〜
図3を参照し、吸気カムシャフト49及び排気カムシャフト50は、クランクシャフト10に平行に設けられている。
第1バンク12fでは、吸気カムシャフト49は、カムチェーン室43f内に突出した部分に、吸気側従動スプロケット52を備える。排気カムシャフト50は、カムチェーン室43f内に突出した部分に、排気側従動スプロケット53を備える。
また、第2バンク12rでは、吸気カムシャフト49は、カムチェーン室43r内に突出した部分に、吸気側従動スプロケット52を備える。排気カムシャフト50は、カムチェーン室43r内に突出した部分に、排気側従動スプロケット53を備える。
【0021】
動弁機構45f,45rは、エンジン1に設けられる動弁系駆動装置60によって駆動される。
動弁系駆動装置60は、クランクシャフト10の突出部26に設けられるアイドラドライブギヤ61と、アイドラドライブギヤ61に噛み合うアイドルギヤ62と、アイドルギヤ62を回転自在に支持するアイドルシャフト63と、アイドルギヤ62の回転を第1バンク12fの吸気側従動スプロケット52及び排気側従動スプロケット53に伝達する第1バンク側カムチェーン64fと、アイドルギヤ62の回転を第2バンク12rの吸気側従動スプロケット52及び排気側従動スプロケット53に伝達する第2バンク側カムチェーン64rとを備える。
第1バンク12fと第2バンク12rとは、クランクシャフト10の軸方向に互いにオフセットして配置されており、これに対応して、第1バンク側カムチェーン64fと第2バンク側カムチェーン64rとも、車幅方向に互いにオフセットして配置されている。
【0022】
アイドラドライブギヤ61は、プライマリドライブギヤ27よりも小径に形成され、プライマリドライブギヤ27よりもクランクシャフト10の軸端側に配置されている。
アイドルギヤ62は、アイドラドライブギヤ61を介して
図3の回転方向Rの方向に回転させられる。
カムチェーン室43fには、第1バンク側カムチェーン64fの緊張側の外周に接するチェーンガイド65fと、第1バンク側カムチェーン64fの弛緩側の外周に接するチェーンテンショナ66fとが設けられる。
カムチェーン室43rには、第2バンク側カムチェーン64rの緊張側の外周に接するチェーンガイド65rと、第2バンク側カムチェーン64rの弛緩側の外周に接するチェーンテンショナ66rとが設けられる。
【0023】
チェーンガイド65f,65r及びチェーンテンショナ66f,66rの下端部は、クランクシャフト10近傍のアイドルギヤ62よりも側壁20b寄りに位置し、側面視ではアイドルギヤ62に重なる。
また、カムチェーン室43fには、チェーンテンショナ66fを第1バンク側カムチェーン64f側に付勢するテンショナリフタ67fが設けられ、カムチェーン室43rには、チェーンテンショナ66rを第2バンク側カムチェーン64r側に付勢するテンショナリフタ67rが設けられる。
【0024】
図1に示すように、クランクケース11の下部には、クランクシャフト10の動力で駆動されるオイルポンプ70が設けられている。オイルポンプ70には、オイルパン40の底部まで延びるオイルストレーナ57が接続されており、オイルポンプ70は、オイルストレーナ57から吸い込んだオイルをエンジン1の各部に送る。
オイルポンプ70から吐出されたオイルは、クランクケース11の前部のオイル通路71を通ってオイルフィルタ72に達し、オイルフィルタ72を通過して浄化された後、オイルクーラ41に流入して冷却される。オイルクーラ41を通過したオイルは、クランクシャフト10の下方でクランクシャフト10と略平行に延びるメインギャラリ73に流れ、メインギャラリ73から各潤滑箇所に分岐して流れる。
【0025】
メインギャラリ73から分岐したオイルの一部は、隔壁30内の油路74を通り、歯車変速機29に供給される。また、メインギャラリ73から分岐したオイルの一部は、クランクケース11に設けられた複数の油路75から上方に送られ、クランク支持部21,21,22を潤滑する。また、クランク支持部21,21,22に達したオイルの一部は、クランクケース11の上部でメインギャラリ73と略平行に設けられる上部油路76に流れ、上部油路76のオイルの一部は、ピストン18,18に向けて噴射される。さらに、上部油路76のオイルの一部は、第1バンク12f及び第2バンク12r内を上下に通る油路77を通って動弁機構45f,45rに供給される。
【0026】
また、メインギャラリ73から分岐したオイルの一部は、油路85(
図5)を通り、クラッチカバー39の内側に設けられたオイル室78(
図3)に達する。詳細には、オイル室78は、クラッチカバー39に設けられた筒状部78aと、筒状部78aの端を閉じるシール部材78bとを備える。オイル室78のオイルは、シール部材78bを貫通してクランクシャフト10の軸端に接続されるパイプ79を通り、クランクシャフト10内の軸部油路80に達する。軸部油路80のオイルは、クランクシャフト10とコンロッド19,19との連結部等に供給される。
【0027】
図4は、クラッチカバー39の周辺部を外側から見た斜視図である。
図5は、クラッチカバー39を内側から見た図である。ここで、
図4ではシリンダヘッド14f,14rを取り外した状態が示されている。
図2、
図4及び
図5に示すように、クラッチカバー39は、クランクシャフト10の突出部26及びアイドラドライブギヤ61等を外側方から覆う略平板状の側面カバー部81と、側面カバー部81の後方でクラッチ装置36を外側から覆うクラッチカバー部82とを一体に備える。
側面カバー部81は、シリンダブロック13f,13r近傍のクランクケース11の上部からクランクケース11の下部までを覆う。クラッチカバー部82は、クラッチ装置36に沿う有底円筒状に形成されており、側面カバー部81よりも外側方に膨出している。
クラッチカバー39は、周縁部に固定孔部39aを複数備え、固定孔部39aに挿通されるカバー固定ボルト(不図示)によってクランクケース11の側面に固定される。クランクケース11の側面には、上記カバー固定ボルトが締結される固定穴部11cが複数設けられている。
【0028】
側面カバー部81の外面には、前後方向に延びる管状部83と、管状部83の後端から上方に延びる管状部84とが形成されている。管状部83及び管状部84の内側には油路85が形成されている。油路85は、メインギャラリ73に接続されるとともに、管状部84の上端部を介して上部油路76に接続されている。また、油路85は、管状部83の前端部でオイル室78に連通しており、メインギャラリ73のオイルの一部は、油路85を通ってオイル室78に供給される。
【0029】
図6は、アイドルギヤ62の周辺部の断面図である。
図7は、アイドルギヤ62の周辺部を側方から見た斜視図である。
図8は、アイドルギヤ62の平面図である。
図2、
図3、及び
図6〜
図8を参照し、アイドルシャフト63は、クランクケース11の側壁20bに設けられるクランクケース側ボス部90と、クラッチカバー39に設けられるケースカバー側ボス部91とによって両端を支持されている。
アイドルギヤ62は、アイドルシャフト63の外周63aに嵌合する一対のベアリング92a,92b(軸受部材)を介してアイドルシャフト63に回転自在に軸支されている。
ここで、ベアリング92a,92bは、例えば、円筒状のケースと、このケースの外周部に保持される複数のローラーとを備えたローラーベアリングである。
【0030】
アイドルギヤ62の一端とクランクケース側ボス部90との間には、リング状のケース側スラストベアリング93が介装されている。また、アイドルギヤ62の他端とケースカバー側ボス部91との間には、リング状のカバー側スラストベアリング94(スラスト軸受)が介装されている。さらに、アイドルシャフト63とケースカバー側ボス部91との間には、アイドルシャフト63を軸方向に付勢するコイル状のスプリング95(弾性部材)が設けられている。
【0031】
アイドルギヤ62は、ベアリング92a,92bの外周に嵌合する円筒状の軸部96と、軸部96の外周に設けられてアイドラドライブギヤ61に噛み合うアイドラドリブンギヤ97と、軸部96に設けられて第1バンク側カムチェーン64fに噛み合う第1バンク側駆動スプロケット98fと、軸部96に設けられて第2バンク側カムチェーン64rに噛み合う第2バンク側駆動スプロケット98rとを一体に備える。
第1バンク側カムチェーン64fは、第1バンク側駆動スプロケット98f、第1バンク12fの吸気側従動スプロケット52及び排気側従動スプロケット53に掛け渡される。第2バンク側カムチェーン64rは、第2バンク側駆動スプロケット98r、第2バンク12rの吸気側従動スプロケット52及び排気側従動スプロケット53に掛け渡される。すなわち、動弁機構45f,45rは、クランクシャフト10の上方に設けられる一つのアイドルギヤ62に駆動される第1バンク側カムチェーン64f及び第2バンク側カムチェーン64rによって駆動される。このように、クランクシャフト10の上方のアイドルギヤ62で動弁機構45f,45rを駆動することで、第1バンク側カムチェーン64f及び第2バンク側カムチェーン64rを短くして軽量化できる。
【0032】
アイドラドリブンギヤ97はアイドルギヤ62の他端側に設けられ、第2バンク側駆動スプロケット98rはアイドルギヤ62の一端側に設けられ、第1バンク側駆動スプロケット98fはアイドラドリブンギヤ97と第2バンク側駆動スプロケット98rとの間に設けられる。第1バンク側駆動スプロケット98f及び第2バンク側駆動スプロケット98rは、アイドラドリブンギヤ97よりも小径である。
【0033】
また、アイドラドリブンギヤ97には、アイドラドリブンギヤ97と同一の歯数及び略同一の径を有して軸部96に嵌合するサブギヤ99が、アイドラドリブンギヤ97の外面に当接するように設けられている。サブギヤ99とアイドラドリブンギヤ97との間には、アイドラドリブンギヤ97の周方向に延びるばね100が複数個所に介装されている。詳細には、ばね100は、アイドラドリブンギヤ97に設けられた凹部97aと、サブギヤ99に設けられた孔部99aとに跨って設けられている。ばね100が撓むことで、サブギヤ99はアイドラドリブンギヤ97に対して相対回転する。
【0034】
サブギヤ99とカバー側スラストベアリング94との間には、軸部96に嵌合するリング状のワッシャー101が介装されている。ワッシャー101は、カバー側スラストベアリング94に押圧されてサブギヤ99をアイドラドリブンギヤ97に当接させる。また、ワッシャー101は、ばね100の外側に位置し、ばね100を抜け止めする。
軸部96の内周面にはベアリング92a,92bが嵌合するベアリング嵌合部96aが設けられ、軸部96の一端の内周面には、ベアリング92a,92bの位置を軸方向に規制する凸部96bが設けられている。凸部96bによって位置決めされると、外側のベアリング92aの端面の位置は、凸部96bの反対側の軸部96の端面に略一致する。
【0035】
図9は、クランクケース側ボス部90の周辺部を示す斜視図である。
図6及び
図9に示すように、クランクケース側ボス部90は、カムチェーン室43f,43rの下部においてアイドラドライブギヤ61の上方に設けられている。クランクケース側ボス部90は、クランクシャフト10と平行に側壁20bからクラッチカバー39側へ突出する円筒状に形成されている。
側壁20bには、メインギャラリ73から分岐して側壁20b内を上下に延びるケース側油路58(クランクケースの壁面に形成された油路)が設けられている。クランクケース側ボス部90の内周部は、ケース側油路58に連通するオイル通路105となっている。
【0036】
クランクケース側ボス部90は、ケース側スラストベアリング93に当接する略平坦な当接面106を先端に有し、当接面106には、クランクケース側ボス部90の内側を外側に連通させる先端切欠部107,107が設けられている。先端切欠部107,107は、互いに対向する位置関係でクランクケース側ボス部90の上部及び下部に一対設けられており、オイル通路105に圧送されてきたオイルの一部は、クランクケース側ボス部90とアイドルシャフト63との隙間を経て、先端切欠部107,107からケース側スラストベアリング93に供給される。
クランクケース側ボス部90の先端部の内周面には、オイル通路105の奥側よりも大径に形成されたシャフト嵌合部108が設けられており、アイドルシャフト63の一端63bはシャフト嵌合部108に嵌合する。また、シャフト嵌合部108は、アイドルシャフト63の一端63bが突き当てられる段部108aを底部に有する。
【0037】
図10は、クランクケース側ボス部90にアイドルシャフト63を取り付けた状態を示す斜視図である。
図6及び
図10に示すように、アイドルシャフト63は、クランクシャフト10に対し平行に延びる断面円形の軸本体部110と、軸本体部110から軸方向に突出するシャフト側継手部111(継手部)とを備える。
軸本体部110は、その軸線の位置に略一致して軸方向に延びる軸内油路112(油路)を有する。軸内油路112は、一端63bでオイル通路105に連通する。また、軸内油路112は、シャフト側継手部111の近傍まで延びて止まっており、アイドルシャフト63の他端63cでは軸方向に貫通していない。アイドルシャフト63は、軸内油路112の内径がオイル通路105の内径よりも小さくされることで厚肉に形成されており、強度及び剛性が確保されている。
【0038】
軸本体部110は、径方向に延びてオイル通路105を外周63aに連通させる複数の油路113a,113b,113cを有する。組み付け状態において、油路113aは他端63cの先端側に設けられ、油路113bはアイドラドリブンギヤ97の近傍に設けられ、油路113cは第1バンク側駆動スプロケット98fの近傍に設けられる。また、軸本体部110は、アイドルギヤ62よりも軸方向に長く形成されている。
他端63c側の軸本体部110の先端部には、略平坦な端面114が設けられ、シャフト側継手部111は、端面114の中央から軸方向に突出している。シャフト側継手部111は、軸方向視では略長方形の矩形状に形成されている。
【0039】
図11は、ケースカバー側ボス部91の平面図である。
図5、
図6及び
図11に示すように、ケースカバー側ボス部91は、クラッチカバー39の側面カバー部81の内面に設けられ、オイル室78の上方に位置している。ケースカバー側ボス部91は、クランクシャフト10と平行に側面カバー部81から側壁20b側へ突出する円筒状に形成されている。
ケースカバー側ボス部91は、アイドルシャフト63よりも大径な円筒部120と、円筒部120の中央に設けられる嵌合穴部121とを備える。
図4及び
図5に示すように、管状部84内の油路85は、ケースカバー側ボス部91に重なるように設けられているが、油路85は嵌合穴部121に連通していない。
【0040】
円筒部120の先端部には、円筒部120の外周部側で軸方向に突出する平面視で円環状の外側当接面122(第2の当接面)と、円筒部120の内周部側で軸方向に突出する平面視で円環状の内側当接面123(当接面)とを備える。外側当接面122は、内側当接面123よりも軸方向に大きく突出している。
また、外側当接面122と内側当接面123との間には、内側当接面123よりも軸方向に窪んだ平面視で円環状のオイル溜まり124が形成されている。
【0041】
外側当接面122は、軸方向視で、カバー側スラストベアリング94に重なる大きさの径を有し、カバー側スラストベアリング94に対して軸方向に当接する。内側当接面123は、ベアリング92aに重なる大きさの径を有し、外側のベアリング92の軸方向の端面に当接する。オイル溜まり124は、ベアリング92a、軸部96及びカバー側スラストベアリング94に重なる大きさの径を有し、ベアリング92a、軸部96及びカバー側スラストベアリング94に軸方向で対向する。
【0042】
内側当接面123は、内側当接面123とオイル溜まり124とを連通させる内側切欠部125,125(切欠部)を備える。オイル溜まり124は、内側切欠部125,125を介して油路113aに連通する。内側切欠部125,125は、軸方向視において互いに略対向する位置関係で内側当接面123の上部及び下部に一対設けられている。
外側当接面122は、オイル溜まり124をケースカバー側ボス部91の外側の空間に連通させる外側切欠部126,126(第2の切欠部)を備える。外側切欠部126,126は、軸方向視において互いに略対向する位置関係で外側当接面122の左右の側部に一対設けられている。一対の内側切欠部125,125を繋ぐ直線L1と、一対の外側切欠部126,126を繋ぐ直線L2とは略直交する。
【0043】
ケースカバー側ボス部91の嵌合穴部121には、アイドルシャフト63の軸本体部110の端面114側の部分が嵌合し、嵌合穴部121内には、シャフト側継手部111が位置する。
嵌合穴部121は、その穴の底部127に、シャフト側継手部111が係合するカバー側継手部128(継手部)を有する。カバー側継手部128は、平面視で略円形の底部127の中心を通って上下に延びる略長方形状の溝であり、シャフト側継手部111がカバー側継手部128に嵌まることでアイドルシャフト63がケースカバー側ボス部91に結合される。カバー側継手部128は、直線L1に重なって上下に延びている。
スプリング95は、嵌合穴部121内でシャフト側継手部111の外周に嵌合して配置され、底部127とアイドルシャフト63の端面114との間で圧縮される。
【0044】
アイドルギヤ62をクランクケース11に組み付ける際には、まず、アイドルシャフト63に、ベアリング92a,92b、アイドルギヤ62、サブギヤ99、ばね100、ワッシャー101、カバー側スラストベアリング94、ケース側スラストベアリング93、及び、スプリング95を仮組みした小組体が形成される。
次いで、クランクケース側ボス部90のシャフト嵌合部108にアイドルシャフト63の一端63bを嵌合させるとともに一端63bを段部108aに突き当てるようにして、上記小組体をクランクケース側ボス部90に仮組みする。これにより、アイドルシャフト63が段部108aに当接して軸方向に位置決めされるとともに、アイドラドリブンギヤ97及びサブギヤ99がアイドラドライブギヤ61に噛み合う。また、アイドルシャフト63の端面114及びシャフト側継手部111は、軸部96の外端よりも外側に突出している。さらに、第1バンク側駆動スプロケット98fには第1バンク側カムチェーン64fが巻き掛けられ、第2バンク側駆動スプロケット98rには第2バンク側カムチェーン64rが巻き掛けられる。
【0045】
次に、クラッチカバー39が、複数の固定孔部39aに挿通されるボルト(不図示)によって、外側からクランクケース11に固定される。詳細には、クラッチカバー39の組み付けの際、アイドルシャフト63の他端63cは、ケースカバー側ボス部91の嵌合穴部121に嵌合され、シャフト側継手部111がカバー側継手部128に結合される。すなわち、アイドルシャフト63は、一端63b及び他端63cがクランクケース側ボス部90及びケースカバー側ボス部91に嵌合して支持されるとともに、シャフト側継手部111がカバー側継手部128に結合することで回転不能に固定される。また、アイドルシャフト63は、シャフト側継手部111がカバー側継手部128に結合することで、回転方向に位置決めされ、これにより、油路113aが内側切欠部125,125に連通する。
【0046】
また、シャフト側継手部111の先端面とカバー側継手部128の底面との間には、軸方向に隙間Sが設けられている。スプリング95は、底部127と端面114との間で圧縮されており、隙間Sを確保するように、アイドルシャフト63をクランクケース側ボス部90側に付勢している。
図6に示すように、アイドルシャフト63は、オイル通路105から軸内油路112に流れるオイル流Fによって、クラッチカバー39側に移動する方向の力を受ける。本実施の形態では、軸内油路112の内径をオイル通路105の内径よりも小さくして強度を確保しているため、一端63b側でのオイル流Fの影響を受け易いが、スプリング95でアイドルシャフト63をクランクケース側ボス部90側に付勢しているため、アイドルシャフト63がオイル流Fによって軸方向に大きく移動してしまうことを防止できる。このため、オイル流Fに変動があった場合でもアイドルシャフト63の軸方向の振動を防止でき、打音の発生を防止できる。さらに、底部127と端面114との間に隙間Sを設けるため、シャフト側継手部111及びカバー側継手部128の軸方向の寸法精度を厳しく管理する必要がなく、製造が容易である。
また、オイル流Fによってアイドルシャフト63がスプリング95に抗して軸方向に僅かに移動することで、クランクケース側ボス部90とアイドルシャフト63との隙間が大きくなる。これにより、上記隙間を通って先端切欠部107,107に流れるオイル量が増加するため、ケース側スラストベアリング93に効果的にオイルを供給できる。
【0047】
クラッチカバー39が取り付けられた状態では、ケースカバー側ボス部91の外側当接面122は、カバー側スラストベアリング94に当接し、内側当接面123は、ベアリング92aの端面に当接する。すなわち、外側当接面122及び内側当接面123は、カバー側スラストベアリング94及びベアリング92aを介してアイドルシャフト63をクランクケース側ボス部90側へ押圧している。この押圧力により、ケース側スラストベアリング93は、当接面106とアイドルギヤ62との間に挟まれる。
アイドルギヤ62は、軸方向ではケース側スラストベアリング93及びカバー側スラストベアリング94によって支持され、径方向ではベアリング92a,92bによって支持されて、アイドルシャフト63上で回転する。
また、ワッシャー101は、カバー側スラストベアリング94を介してサブギヤ99に押し付けられている。
【0048】
オイル通路105からアイドルシャフト63側に供給されるオイルは、
図6中の矢印のように流れる。詳細には、オイル通路105から軸内油路112に供給されたオイルの一部は、油路113b,113cを通って、ベアリング92a,92bに供給される。また、軸内油路112のオイルの一部は、油路113aから内側切欠部125,125を通り、オイル溜まり124に流れる。オイル溜まり124のオイルは、ベアリング92a,92b、カバー側スラストベアリング94及びアイドラドリブンギヤ97に供給されるとともに、外側切欠部126,126を通ってケースカバー側ボス部91の外側の空間に排出され、下方に落下してオイルパン40に戻る。詳細には、オイル溜まり124のオイルは、ベアリング92aの軸方向の端面側の隙間からベアリング92a内に流入する。
【0049】
図11に示すように、ケースカバー側ボス部91では、外側切欠部126,126が外側当接面122の左右の側部に設けられているため、オイル溜まり124内にオイルを多量に溜めておくことができる。また、内側当接面123の内側切欠部125,125は、直線L1が直線L2に略直交するように外側切欠部126,126に対して周方向に異なる位置に設けられているため、内側切欠部125,125からオイル溜まり124に供給されたオイルが外側切欠部126,126からすぐに排出されることを防止でき、オイル溜まり124内に満遍なくオイルを貯留することができる。このため、給油箇所に適切に給油できる。
【0050】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、動弁系駆動装置60はクランクケース11内に設けられるクランクシャフト10及び動弁機構45f,45rを有するエンジン1に設けられ、クランクシャフト10から受けた動力を動弁機構45f,45rに伝達するアイドルギヤ62と、クランクシャフト10と平行に設けられ、アイドルギヤ62を回転自在に支持するアイドルシャフト63と、クランクケース11を側方から覆うクラッチカバー39とを備え、クランクケース11の側壁20bに形成され、アイドルシャフト63の一端63bを支持するクランクケース側ボス部90と、クラッチカバー39の内側に形成され、アイドルシャフト63の他端63cを支持するケースカバー側ボス部91とを備え、ケースカバー側ボス部91及びアイドルシャフト63の他端63cには、互いに係合するカバー側継手部128及びシャフト側継手部111が形成され、カバー側継手部128及びシャフト側継手部111が互いに係合することでアイドルシャフト63が回転不能とされる。これにより、クランクケース11の側壁20bに形成されるクランクケース側ボス部90とクラッチカバー39に形成されるケースカバー側ボス部91とでアイドルシャフト63の一端63b及び他端63cを支持するとともに、他端63c側のシャフト側継手部111及びカバー側継手部128によってアイドルシャフト63を回転不能にできるため、アイドルシャフト63を支持する構造を簡単にできる。このため、エンジン1をコンパクト化、軽量化及び単純化できる。
【0051】
また、アイドルギヤ62は、ベアリング92a,92bを介してアイドルシャフト63に回転自在に支持され、アイドルシャフト63内には軸内油路112が形成され、軸内油路112は、クランクケース11の側壁20bに形成されたケース側油路58とアイドルシャフト63の一端63bで接続され、ケースカバー側ボス部91は、ベアリング92a,92bと軸方向に当接する内側当接面123を有し、内側当接面123の外周には、凹形状のオイル溜まり124が設けられる。このため、ケースカバー側ボス部91の内側当接面123の外周側のオイル溜まり124からベアリング92a,92bに油を供給でき、簡単な構造でベアリング92a,92bに給油できる。
【0052】
また、内側当接面123には、内側当接面123とオイル溜まり124とを連通させる内側切欠部125,125が設けられ、内側切欠部125,125によって、アイドルシャフト63内の油路113aとオイル溜まり124とが連通するため、オイル溜まり124のオイルを内側切欠部125,125を介してベアリング92a,92bに十分に供給できる。
さらに、オイル溜まり124の外周には外側当接面122が設けられ、外側当接面122は、内側当接面123よりも軸方向に突出しているため、オイル溜まり124の容量を大きくでき、ベアリング92a,92bに効果的に給油できる。
【0053】
また、外側当接面122とアイドルギヤ62との間には、カバー側スラストベアリング94が介装されているため、オイル溜まり124からカバー側スラストベアリング94に給油できる。
また、外側当接面122には、オイル溜まり124を、ケースカバー側ボス部91の外側の空間に連通させる外側切欠部126,126が設けられているため、オイル溜まり124へのオイルの供給が過剰になった場合に、オイルを外側切欠部126,126からケースカバー側ボス部91の外側の空間に排出できる。
また、内側切欠部125,125と外側切欠部126,126とは、ケースカバー側ボス部91の周方向において互いに異なる位置に設けられている。このため、オイル溜まり124にオイルを満遍なく供給でき、オイル溜まり124の容量を効率良く活用できる。
【0054】
さらに、内側切欠部125,125は、環状の内側当接面123上において径方向に互いに対向する配置で一対設けられ、外側切欠部126,126は、環状の外側当接面122上において互いに対向する配置で一対設けられ、一対の内側切欠部125,125を繋ぐ直線L1と、一対の外側切欠部126,126を繋ぐ直線L2とは略直交する。このため、オイル溜まり124にオイルを満遍なく供給でき、オイル溜まり124の容量を効率良く活用できる。
また、アイドルシャフト63内には軸内油路112が形成され、軸内油路112は、クランクケース11の側壁20bに形成されたケース側油路58とアイドルシャフト63の一端63bで接続され、アイドルシャフト63の他端63cとケースカバー側ボス部91との間には、スプリング95が介装されている。このため、アイドルシャフト63内の軸内油路112を通るオイルの油圧に変動が生じた場合であっても、アイドルシャフト63をスプリング95によって軸方向に支持でき、アイドルシャフト63の振動に起因する音の発生を防止できる。
【0055】
上記実施の形態においては、一対の内側切欠部125,125を繋ぐ直線L1と、一対の外側切欠部126,126を繋ぐ直線L2とは略直交するものとして説明したが、願発明はこれに限定されるものではなく、切欠部の位置を変更しても良い。この場合について、変形例として説明する。なお、この変形例において、上記実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0056】
[変形例]
図12は、実施の形態の変形例におけるケースカバー側ボス部291の平面図である。
ケースカバー側ボス部291は、円筒部120、嵌合穴部121、外側当接面122、内側当接面123、オイル溜まり124、底部127、及び、カバー側継手部128を備える。
内側当接面123は、内側当接面123とオイル溜まり124とを連通させる内側切欠部225(切欠部)を備える。オイル溜まり124は、内側切欠部225を介して油路113aに連通する。内側切欠部225は、軸方向視において内側当接面123の左右方向の側部に設けられている。
外側当接面122は、オイル溜まり124をケースカバー側ボス部91の外側の空間に連通させる外側切欠部226(第2の切欠部)を備える。外側切欠部226は、軸方向視において、内側切欠部225とは周方向に略180°だけ位置が異なる外側当接面122の側部に設けられている。
【0057】
ケースカバー側ボス部291では、外側切欠部226が外側当接面122の左右の側部に設けられているため、オイル溜まり124内にオイルを多量に溜めておくことができる。また、内側当接面123の内側切欠部225が、外側切欠部226とは周方向に略180°だけ異なる外側切欠部226から遠い位置に設けられるため、内側切欠部225からオイル溜まり224に供給されたオイルが外側切欠部226からすぐに排出されることを防止できる。このため、オイル溜まり124内に満遍なくオイルを貯留することができ、給油箇所に適切に給油できる。
【0058】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、アイドルシャフト63を軸方向に付勢する弾性部材としてコイル状のスプリング95を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、ゴム等の弾性部材でアイドルシャフト63を軸方向に付勢しても良い。
また、上記実施の形態では、アイドルギヤ62をクランクケース11に組み付ける際には、小組体を形成するものとして説明したが、これに限らず、各部品を個別に組み付けても良い。