(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
桟橋と、前記桟橋に取り付けられた請求項1から3までのいずれかに記載のインバートコンクリート打設装置と、を備えることを特徴とするインバートコンクリート打設システム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る、トンネル内に配置した状態のコンクリート打設システムの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、コンクリート打設システムの平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、トンネル内に配置した状態のコンクリート打設システムの断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、打設配管移動装置の回動側の打設状態における背面図及び側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、打設配管移動装置の回動側の収納状態における側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、コンクリート打設システムの打設配管移動装置の打設状態と収納状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る、打設配管移動装置の打設状態と収納状態について、回動機構に着目して拡大して示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る、打設配管移動装置の回動支承部の構造を示す背面図及び平面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る、コンクリート打設システムを用いてトンネル内にインバートコンクリートを打設する手順を示す平面図及び側面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る、コンクリート打設システムを用いてトンネル内にインバートコンクリートを打設する手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は本実施形態に係るコンクリート打設システム10がトンネル1内に設置された状態を示した側面図である。
図2はコンクリート打設システム10の平面図である。また、
図3はトンネル内に配置した状態のコンクリート打設システムの断面図であって、
図1及び
図2の矢印A視(A−A断面図)に対応する。
図3の断面図においては、トンネル1のトンネル側面4には吹き付けコンクリートが打設された状態で、右側のトンネル側面4には吊りチェーンを備える吊り下げブラケット6が取り付けられている。トンネル底面2にインバートコンクリート3が打設された後に、トンネル側面4には覆工コンクリート5が打設される。
【0012】
コンクリート打設システム10は、インバート桟橋11と、インバート桟橋11に設置された打設配管移動装置20とを備える。ここで、打設配管移動装置20は、インバートコンクリート打設装置として機能する。
【0013】
インバート桟橋11は、インバートコンクリート3を断面略逆アーチ状のトンネル底面2に打設する際に、ダンプトラック91等の車両が通過可能に用いられる移動式桟橋であって、中央水平部分の桟橋本体11aと、桟橋本体の軸方向前後に設けられた乗り上がり台11bとを有する一般的な構成を呈している。ここでは、インバート桟橋11の前側はトンネル1の切羽側に配置され、後側は坑口側に配置され、ダンプトラック91等の車両が通過する。また、通常、桟橋本体11aの幅は、車両が一台通過できる程度になっている。
【0014】
インバート桟橋11の桟橋本体11aには打設配管移動装置20が取り付けられている。具体的には、打設配管移動装置20は、第1及び第2のレール21、22と、梁部材25と、回動支承部30と、を備える。
【0015】
第1のレール21及び第2のレール22は、桟橋本体11aの両側面の底面よりの位置に平行に取り付けられている。第1のレール21及び第2のレール22は、軸方向、つまり前後方向に延びるI形鋼(Iビーム鋼)であって、右側面に配置されるものが第1のレール21、左側面に配置されるものが第2のレール22である。
【0016】
桟橋本体11aの横断方向には、第1のレール21及び第2のレール22を渡すように梁部材25が設置されている。なお、梁部材25は、軸方向移動部40によって第1のレール21及び第2のレール22に沿って軸方向(前後方向)に移動可能に構成されている。軸方向移動部40は、第1のレール21に取り付けられる第1のトロリ41及び第2のレール22に取り付けられる第2のトロリ42とを有する。
【0017】
梁部材25は、I形鋼を2つ並べて一体とした構成となっている。また、梁部材25は、第1の梁部26と第2の梁部27とに分離し、回動支承部30によって水平面内において鉛直軸方向に屈曲可能に構成されている。
【0018】
第1の梁部26は、桟橋本体11aの幅より若干長く、端部より若干内側部分で軸方向移動部40(第1のトロリ41及び第2のトロリ42)を介して第1のレール21及び第2のレール22に取り付けられる。
【0019】
梁部材25の右側端部、つまり、第2の梁部27の右側端部には、第1の鉛直吊り上げ部28が設けられている。第1の鉛直吊り上げ部28は、第2の梁部27の端部から鉛直上方に所定長だけ延びる鉛直柱状部材及びその上端部で外方向(右側方向に)に所定長だけ延びる水平延出部とを有する。水平延出部には、第1の固定モートルブロック61が取り付けられている。
【0020】
梁部材25の左側端部、つまり、第1の梁部26の左側端部には、第1の鉛直吊り上げ部28と同構造の第2の鉛直吊り上げ部29が設けられている。第2の鉛直吊り上げ部29には第2の固定モートルブロック62が取り付けられている。
【0021】
梁部材25には、第1の移動モートルブロック71及び第2の移動モートルブロック72が移動可能に取り付けられている。第1の移動モートルブロック71は、梁部材25の右側領域を左右方向に移動する。第2の移動モートルブロック72は、梁部材25の左側領域を移動する。なお、第1の移動モートルブロック71及び第2の移動モートルブロック72の移動領域を規制するための所定の中央ストッパー53及びサイドストッパー54が梁部材25に設けられている。
【0022】
図4は打設配管移動装置20の右側、つまり第2の梁部27が屈曲して回動する側の打設状態を示しており、
図4(a)は背面図であり、
図4(b)は側面図である。また、
図5は、打設配管移動装置20の回動側の収納状態における側面図を示す。
【0023】
上述の様に、梁部材25(第1の梁部26)は軸方向移動部40によって第1及び第2のレール21、22に移動可能に取り付けられている。図示では、第1のレール21と第1のトロリ41との取り付け態様について示しており、第2のレール22と第2のトロリ42の取り付け態様についても同様となっている。
【0024】
例えば
図5に示すように、第1のトロリ41は前後に並ぶ2つのトロリを1セットとして構成されており、それぞれアーム形状の部材を介して連接バー43の上面に取り付けられている。連接バー43の下面には第1の梁部26が取り付けられている。また、第1のトロリ41は、第1のレール21を構成するI形鋼のフランジ部に配置され転動することで、梁部材25、つまり、打設配管移動装置20を前後方向(桟橋軸方向)に移動させる。
【0025】
作業者95は、第1及び第2の固定モートルブロック61、62と第1及び第2の移動モートルブロック71、72を適宜選択し、配管ホース80を吊り下げて配管ホース80の吐出口を所望の位置に移動させ、インバートコンクリート3の打設作業を行う。
【0026】
ここで、
図6に梁部材25の折れ曲がり構造に着目した平面図を示す。また、
図7に、回動支承部30部分を拡大して示す。第1の梁部26の右側端部には、回動支承部30によって、第2の梁部27の左端部が折れ曲がり可能に取り付けられている。インバートコンクリート3を打設する作業時は、
図7(a)に示すように、第1の梁部26及び第2の梁部27は一直線上に固定される。また、例えばインバート桟橋11の移動時等のような打設作業をしない時には、
図7(b)に示すように、第2の梁部27が乗り上がり台11b側に折れ曲がって収納状態になる。
【0027】
図8は回動支承部30の構造を示しており、
図8(a)は分解平面図であり、
図8(b)は分解背面図である。図示のように、回動支承部30は、第1の梁部26が取り付けられる固定ベース部31と、第2の梁部27が取り付けられる回動部35とを有する。なお、回動支承部30は、第1の梁部26と第2の梁部27の分離部分の剛性確保の観点から、第1の梁部26と第2の梁部27との分離部分の上側に設けられている。こうすることにより、第2の梁部27に作用する第1の移動モートルブロック71の自重、配管ホース80の自重などによって第2の梁部27の分離部分側に生じる曲げモーメントが、回動部35、回動軸ピン39a、固定ピン39b、固定ベース部31を通じ、引っ張り力として第1の梁部26に伝達されるので、分離部分の剛性を確保することが可能となる。また、第2の梁部27に作用する第1の移動モートルブロック71の自重、配管ホース80の自重などによって第2の梁部27の分離部分側に生じるせん断力も、回動部35と固定ベース部31を通じ、支点反力として第1の梁部26に伝達されるので、分離部分の剛性を確保することが可能となる。さらに、回動支承部30は、第1の梁部26と第2の梁部27の分離部分上側に設けられているので、ローラー支承が第1の梁部26と第2の梁部27のウェブ、下フランジに接するように設置されている第1の移動モートルブロック71の走行、移動を妨げない。
【0028】
固定ベース部31の内部に回動部35が収容される構造となっており、収容状態において2点でピン固定される。具体的には、固定ベース部31はピン固定用の構造として、鉛直方向に連通された開口である固定側軸部32と第1の固定ピン挿入部33と第2の固定ピン挿入部34とを備える。固定側軸部32と第1の固定ピン挿入部33は、第1の梁部26を挟んで前後方向に所定長だけ離間して形成されている。また、第2の固定ピン挿入部34は、固定側軸部32から横方向に前記の所定長と同距離だけ離間して形成されている。つまり、第2の固定ピン挿入部34は、固定側軸部32を中心に第1の固定ピン挿入部33を90度回転させた位置に形成されている。
【0029】
回動部35は平面視で略等脚台形で所定高さの形状を呈している。台形の底辺側の端部が第2の梁部27の左端部に位置するように回動部35と第2の梁部27が固定されている。また、台形形状の底辺の両端近傍に、鉛直方向に連通された開口である回動側軸部36及び固定ピン挿入部37が形成されている。回動側軸部36と固定ピン挿入部37の離間長は、固定ベース部31における固定側軸部32と第1の固定ピン挿入部33と同じである。
【0030】
固定ベース部31に回動部35が収容された状態で、固定側軸部32と回動側軸部36とが一致し所定の回動軸ピン39aで回動可能に取り付けられる。第1の梁部26と第2の梁部27とを一直線にする場合には(例えば
図8(a)の状態の場合)、第1の固定ピン挿入部33と固定ピン挿入部37とが所定の固定ピン39bで固定される。また、第2の梁部27を切羽側に折り曲げて収納状態とした場合には(例えば
図8(b)の状態の場合)、第2の固定ピン挿入部34と固定ピン挿入部37とが固定ピン39bで固定される。
【0031】
なお、固定ベース部31の底面には所定大きさの開口部31aが形成されている。また、回動部35と第2の梁部27とは、所定形状の連結部35aを介して溶接接続されている。固定ベース部31に回動部35が収容されて固定側軸部32を中心に回動する場合に、連結部35aが開口部31a内を移動することで、第2の梁部27は円滑に回動することができる。
【0032】
つぎに、
図9及び
図10を参照して、本実施形態のコンクリート打設システム10によるインバートコンクリート3の打設作業手順について説明する。
図9及び
図10はコンクリート打設システム10を用いてトンネル1内の左側(B区画及びD区画側)にインバート桟橋11を設置してインバートコンクリート3を打設する手順を示す図である。
図9(a)が側面図、
図9(b)が平面図である。また、
図10が断面図である。
【0033】
なお、図示では、インバートコンクリート3を打設する作業領域をA〜D区画に分割している。A区画が坑口側で右側の区画、B区画が坑口側で左側の区画、C区画が切羽側で右側の区画、D区画が切羽側で左側の区画である。コンクリートポンプ車92は、フレッシュコンクリートを離れた場所に圧送するためのブーム輸送管93を備えており、ここではA区画坑口側近傍の打設済みの領域に位置している。
【0034】
ここで、インバートコンクリート3を打設する前工程であるトンネル底版を最終掘削する工程について説明する。底版を最終掘削している間、切羽と坑口の動線を確保するためにインバート桟橋11が使用される。まず、インバート桟橋11が右側(A、C区画側)に寄せられた状態で、左側(B、D区画側)が掘削される。このとき、例えば
図6の2点鎖線や
図7(b)に示すように、第2の梁部27は折り曲げられてインバート桟橋11横に収められている。したがって、インバート桟橋11をトンネル側面4に十分に寄せることができ、左側(B、D区画側)の掘削スペースを十分に確保できる。左側(B、D区画側)の掘削が終了すると、インバート桟橋11は左側(B、D区画側)に寄せられ、右側(A、C区画側)が掘削される。この時も、掘削作業の障害とならないように、第2の梁部27はインバート桟橋11横に収められたままである。
【0035】
右側(A、C区画側)の掘削が終了すると、
図7(a)や
図10に示すように、第2の梁部27が真っ直ぐに伸ばされ、インバートコンクリート3が打設される。右側(A、C区画側)のコンクリート打設は、基本的にはコンクリートポンプ車92から直接なされる。インバート桟橋11の下となるB、D区画のコンクリート打設には、コンクリート打設システム10(打設配管移動装置20)が使用される。なお、C区間において、コンクリートポンプ車92から直接打設が難しい場合には、本コンクリート打設システム10の打設配管移動装置20が使用されてもよい。特に、右側のインバートコンクリート3のサイド端部7を打設するときは、第1の固定モートルブロック61を使用する。
【0036】
インバート桟橋11の下側の領域であるB区画及びD区画にインバートコンクリート3を打設する場合、インバート桟橋11の右側(A、C区画側)から配管ホース80を配索して、筒口を所望の位置に持って行く。コンクリートポンプ車92からの配管ホース80は、基本的には第2の梁部27の先端側に下りるようにする。これは打設時の安全性確保を考慮して、コンクリートポンプ車92からの配管ホース80の下りをなるべくインバート桟橋11から離れるようにすることと、インバート桟橋11の下の配管ホース80の収まりが収まり良くするためである。配管ホース80は、非常に重く曲げにくく、インバート桟橋11の下に配管するために十分な距離が必要とされるためである。
【0037】
このとき、第1の移動モートルブロック71及び第2の移動モートルブロック72によって配管ホース80が吊り下げられる。さらに、インバートコンクリート3の左側のサイド端部7を打設する場合には、逆アーチ状に若干上方向に向けた形状にする必要があることから、所定の型枠を設けて上から流し込むようにインバートコンクリート3を打設する作業がなされる。その場合には、必要に応じて第2の鉛直吊り上げ部29の第2の固定モートルブロック62が使用される。
【0038】
このように、トンネル底面2にインバートコンクリート3を打設する場合に、大幅な労力の削減ができる。すなわち、打設配管移動装置20によって、配管ホース80の取り回し作業の労力が緩和されるため、作業時間の短縮が可能となる。特に、インバートコンクリート3の打設に用いられる配管ホース80は、フレッシュコンクリートを高圧で圧送することから、重量が非常にあるものになっており、従来であれば苦渋作業であった配管ホース80の取り回し等の労力が大幅に緩和される。また、作業人員数の削減も可能となる。近年では、作業員の確保が難しい場合もあり、その結果、工期が大幅に遅れたり、場合によっては工事受注が困難になるケースもあった。しかし、そのような事態を回避できる。さらに、配管ホース80の取り回しが容易になることにより、作業効率が向上するので、打設品質の確保が容易となる。
【0039】
また、従来であれば、インバート桟橋11の下側の領域においてインバートコンクリート3の打設作業をする場合、配管ホース80の取り回しを作業者95の人力のみでする必要があり、狭い空間での打設作業に伴う作業効率の低下やインバートコンクリート3の品質低下を防ぐために、一旦インバート桟橋11を移動させた上で行われるケースもあった。インバート桟橋11を移動させる場合、インバート桟橋11をダンプトラック91等が通過することが出来なくなり、掘削した土砂運搬ができなくなることから切羽側での掘削作業が一時的に停止したりするなど効率が著しく低下してしまうという問題が生じた。また、インバート桟橋11を移動させることに伴い、インバートコンクリート3の打設作業を一旦停止することになることから、インバートコンクリート3の品質の確保、より具体的には均一性を確保することが難しいという問題が生じ、掘削作業やダンプトラック91の通過を含めた各種作業の調整を含めた打設作業の管理が非常に煩わしかった。
【0040】
しかし、本実施形態では、インバート桟橋11の下側領域の打設作業であっても、配管ホース80の取り回しが容易となり、あえてインバート桟橋11を移動させる必要がない。また、インバートコンクリート3のサイド端部7を打設する場合に、第1の鉛直吊り上げ部28や第2の鉛直吊り上げ部29が配管ホース80の筒口を吊り上げるので、従来必要とされた人力による労力を大幅に削減できる。
【0041】
さらに、インバート桟橋11下のコンクリートを打設するために、インバート桟橋11を移動させる必要がないので、インバート桟橋11の移動に伴う掘削作業の停止を回避できる。また、通過車両の調整等を含む打設作業の管理業務を大幅に削減できるので、当該業務に係る労力も削減できる。
【0042】
またさらに、配管ホース80を第1の移動モートルブロック71や第2の移動モートルブロック72等に吊り下げることによって、フレッシュコンクリート供給時において配管ホース80が脈動等によって大きく振れてしまうことを防止できる。配管ホース80が大きく振れると、事故に繋がったりすることがあるが、本実施形態では、その観点における作業の安全性の確保や作業性の向上にも貢献することができる。
【0043】
以上、実施形態をもとに本発明を説明したが、この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0044】
例えば、実施形態では梁部材25の屈曲部分が片側だけであったが、両側に設けられてもよい。また、回動支承部30における屈曲は90度であったが、例えば45度ごと2段階といったように複数段階で屈曲するように構成されてもよい。