特許第6244230号(P6244230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244230
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】クローズドブリーザシステム
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20171127BHJP
   F01M 13/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F01M13/00 F
   F01M13/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-44648(P2014-44648)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169125(P2015-169125A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石澤 晶
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−076709(JP,U)
【文献】 実開昭59−190916(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00−13/06
F02M 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンブロックに側方に向けて開通するガス導入口を穿設し、該ガス導入口を通しブローバイガスをオイルセパレータに直接取り込んでオイルミストを分離回収し、該オイルミストを除去されたブローバイガスを吸気管へ導くようにしたクローズドブリーザシステムであって、前記ガス導入口内に袋小路の通気空間を周囲に確保するように嵌挿されて上側部分にのみ複数の通気孔を開口し且つ下側部分には必要最小限のドレイン口を開口したスプラッシュガードを備えたことを特徴とするクローズドブリーザシステム。
【請求項2】
前記スプラッシュガードを前記ガス導入口の軸心方向に延びる筒状を成すように形成すると共に、前記スプラッシュガードにおけるエンジンブロック側の端部を閉塞し且つ反エンジンブロック側の端部を開放して該端部の周囲に前記通気空間を塞ぐフランジ部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のクローズドブリーザシステム。
【請求項3】
前記ガス導入口からオイルセパレータの入口に到るブローバイガスの経路中での最小流路断面積以上となるように前記各通気孔の総開口面積を設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクローズドブリーザシステム。
【請求項4】
前記スプラッシュガードのエンジンブロック側の端部下側に、エンジンブロックの内側から見てドレイン口が隠れるように遮蔽板を垂下させたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のクローズドブリーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローズドブリーザシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮・燃焼行程で燃焼室からクランクケース内に漏れ出るブローバイガスは、クランクケースの内部圧力を上昇させてガスシール等に損傷を及ぼす虞れがあるため、クランクケース内から適宜に抜き取りを行う必要があるが、ブローバイガス中には、ミスト状のオイルが含まれていて大気汚染の原因にもなり得るため、大気開放せずにオイルセパレータを通してオイルを分離回収した後に吸気系に戻して再燃焼させるようにしている。
【0003】
オイルセパレータ内部の表面温度が低下している時に、高温のブローバイガスがオイルセパレータ内部を通過すると、前記ブローバイガス中に含まれる水分が結露し、その結露水が寒冷時に凍結して流路閉塞等の不具合を招く虞れがあったため、エンジンブロックの側面の比較的暖かい場所にオイルセパレータを設置し、前記エンジンブロックの側方に向けて開通するガス導入口からブローバイガスを前記オイルセパレータに直接取り込んでオイルミストを分離回収することが考えられている。
【0004】
一般的に、ブローバイガスをクローズドサーキットで処理するシステムはクローズドブリーザシステムと称されているが、この種のクローズドブリーザシステムに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−278523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したようにエンジンブロックの側面にオイルセパレータを設置してガス導入口を介しブローバイガスを直接取り込むようにした場合、オイルパン内のオイルが振動や傾斜等の影響によりスプラッシュとなって前記ガス導入口に勢い良く飛び込むことがあり、オイルセパレータの分離回収能力を超えた量のオイルがブローバイガスと共に取り込まれ、吸気系に戻されるブローバイガスにオイルが随伴して吸気管に入り込むことで吸気系を汚してしまう虞れがあった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、エンジンブロックの側面にオイルセパレータを設置してガス導入口を介しブローバイガスを直接取り込むようにしても、吸気系に戻されるブローバイガスにオイルが随伴してしまうことのないクローズドブリーザシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジンブロックに側方に向けて開通するガス導入口を穿設し、該ガス導入口を通しブローバイガスをオイルセパレータに直接取り込んでオイルミストを分離回収し、該オイルミストを除去されたブローバイガスを吸気管へ導くようにしたクローズドブリーザシステムであって、前記ガス導入口内に袋小路の通気空間を周囲に確保するように嵌挿されて上側部分にのみ複数の通気孔を開口し且つ下側部分には必要最小限のドレイン口を開口したスプラッシュガードを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにすれば、オイルパン内のオイルが振動や傾斜等の影響によりスプラッシュとなってガス導入口に押し寄せても、そのオイルのスプラッシュは、スプラッシュガードの下側部分に下から突き上げて衝突し、これにより速度が著しく低下して勢いを失い、そのオイルがスプラッシュガードの上側部分の各通気孔や下側部分のドレイン口を通過してなおオイルセパレータ内にまで侵入するような事象は起こらなくなる。
【0010】
この結果、オイルセパレータの分離回収能力を超えた量のオイルがブローバイガスと共に取り込まれてしまうことが防止され、吸気系に戻されるブローバイガスにオイルが随伴してしまうことがなくなり、オイルが吸気管に入り込むことで吸気系を汚してしまう心配がなくなる。
【0011】
尚、勢いを失いながらも通気孔やドレイン口からスプラッシュガード内に進入してしまったオイルは、スプラッシュガードの下側部分に開口した必要最小限のドレイン口から排出されてオイルパンに戻されることになる。
【0012】
また、本発明においては、前記スプラッシュガードを前記ガス導入口の軸心方向に延びる筒状を成すように形成すると共に、前記スプラッシュガードにおけるエンジンブロック側の端部を閉塞し且つ反エンジンブロック側の端部を開放して該端部の周囲に前記通気空間を塞ぐフランジ部を形成することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、スプラッシュガードをガス導入口の軸心方向に延ばすことで通気孔の形成範囲を大きく確保することが可能となり、通気孔の個々の開口面積を極力小さくしてオイルの進入を防ぎながらも数を増やして十分な総開口面積を確保し、スプラッシュガードの配置による圧力損失の上昇を抑えてブローバイガスの流れを極力阻害しないように保つことが可能となる。
【0014】
また、スプラッシュガードにおけるエンジンブロック側の端部を閉塞することでオイルのスプラッシュを衝突させて勢いを失わせる大きな衝突面を形成することが可能となり、しかも、反エンジンブロック側の端部の周囲に形成したフランジ部をガス導入口に内嵌させることでスプラッシュガードの設置と同時に周囲の通気空間を塞いで袋小路とすることが可能となる。
【0015】
更に、本発明においては、前記ガス導入口からオイルセパレータの入口に到るブローバイガスの経路中での最小流路断面積以上となるように前記各通気孔の総開口面積を設定することが好ましく、このようにすれば、より確実に圧力損失の上昇を抑えることが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、前記スプラッシュガードのエンジンブロック側の端部下側に、エンジンブロックの内側から見てドレイン口が隠れるように遮蔽板を垂下させることが好ましく、このようにすれば、オイルパンからガス導入口に向かうオイルのスプラッシュが遮蔽板に先に衝突することでドレイン口への直接的な衝突が阻止され、該ドレイン口からのオイルの進入が生じ難くなる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明のクローズドブリーザシステムによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、エンジンブロックの側面にオイルセパレータを設置してガス導入口を介しブローバイガスを直接取り込むようにしても、吸気系に戻されるブローバイガスにオイルが随伴してしまうことを阻止し、吸気系がオイルミストにより汚れてしまうことを確実に防止することができる。
【0019】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、通気孔の個々の開口面積を極力小さくしてオイルの進入を防ぎながらも数を増やして十分な総開口面積を確保することができるので、スプラッシュガードの配置による圧力損失の上昇を抑えてブローバイガスの流れを極力阻害しないように保つことができる。
【0020】
(III)本発明の請求項2に記載の発明によれば、スプラッシュガードにおけるエンジンブロック側の端部を閉塞することでオイルのスプラッシュを衝突させて勢いを失わせる大きな衝突面を形成することができ、しかも、反エンジンブロック側の端部の周囲に形成したフランジ部をガス導入口に内嵌させることでスプラッシュガードの設置と同時に周囲の通気空間を塞いで袋小路とすることができる。
【0021】
(IV)本発明の請求項3に記載の発明によれば、ガス導入口からオイルセパレータの入口に到るブローバイガスの経路中での最小流路断面積以上となるように各通気孔の総開口面積を設定することにより、より確実に圧力損失の上昇を抑えることができる。
【0022】
(V)本発明の請求項4に記載の発明によれば、オイルパンからガス導入口に向かうオイルのスプラッシュを遮蔽板に先に衝突させてドレイン口への直接的な衝突を阻止することができるので、該ドレイン口からのオイルの進入を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す全体図である。
図2図1のII−II矢視の断面図である。
図3図2のスプラッシュガードの詳細を示す斜視図である。
図4】本発明の別の形態例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、図1及び図2に示すように、エンジンブロック1の側面に沿わせてオイルセパレータ2を設置し、前記エンジンブロック1の側方に向けて開通するガス導入口3からブローバイガス4を前記オイルセパレータ2に直接取り込んでオイルミストを分離回収し、該オイルミストを除去されたブローバイガス4をガス戻し管5を介し吸気管6へ導くようにしたクローズドブリーザシステムに関し、前記ガス導入口3内に袋小路の通気空間7を周囲に確保するように嵌挿されて上側部分にのみ複数の通気孔8を開口し且つ下側部分には必要最小限のドレイン口9を開口したスプラッシュガード10を備えたことを特徴としている。
【0026】
図3に示している例では、前記スプラッシュガード10が前記ガス導入口3の軸心方向に延びる筒状を成すように形成されており、より具体的には、扁平な楕円断面を有する筒状を成すようになっている。このスプラッシュガード10におけるエンジンブロック1側の端部は、オイルのスプラッシュの衝突面11として閉塞されており、反エンジンブロック1側の端部は、開放されていて、該端部の周囲に前記通気空間7を塞いで袋小路とするフランジ部12が形成されており、該フランジ部12を前記ガス導入口3に内嵌させて固定することで前記スプラッシュガード10の設置が行われるようになっている。
【0027】
そして、前記通気孔8は、前記スプラッシュガード10における胴回りの上側部分にのみ開口されていて、前記衝突面11には全く開口されておらず、また、前記ドレイン口9は、前記スプラッシュガード10における胴回りの下側部分の幅方向中央にスリット状に開口されるようになっている。
【0028】
ここで、前記各通気孔8の総開口面積は、前記ガス導入口3からオイルセパレータ2の入口に到るブローバイガス4の経路中での最小流路断面積以上となるように設定されており、前記スプラッシュガード10の配置による圧力損失の上昇を極力抑え得るようにしてある。
【0029】
而して、このようにすれば、オイルパン内のオイルが振動や傾斜等の影響によりスプラッシュとなってガス導入口3に押し寄せても、そのオイルのスプラッシュは、スプラッシュガード10の下側部分に下から突き上げて衝突し、これにより速度が著しく低下して勢いを失い、そのオイルがスプラッシュガード10の上側部分の各通気孔8や下側部分のドレイン口9を通過してなおオイルセパレータ2内にまで侵入するような事象は起こらなくなる。
【0030】
この結果、オイルセパレータ2の分離回収能力を超えた量のオイルがブローバイガス4と共に取り込まれてしまうことが防止され、吸気系に戻されるブローバイガス4にオイルが随伴してしまうことがなくなり、オイルが吸気管6に入り込むことで吸気系を汚してしまう心配がなくなる。
【0031】
また、特に本形態例の場合には、スプラッシュガード10をガス導入口3の軸心方向に延ばすことで通気孔8の形成範囲を大きく確保することが可能となり、通気孔8の個々の開口面積を極力小さくしてオイルの進入を防ぎながらも数を増やして十分な総開口面積を確保し、スプラッシュガード10の配置による圧力損失の上昇を抑えてブローバイガス4の流れを極力阻害しないように保つことが可能となる。
【0032】
更に、スプラッシュガード10におけるエンジンブロック1側の端部を閉塞することでオイルのスプラッシュを衝突させて勢いを失わせる大きな衝突面11を形成することが可能となり、しかも、反エンジンブロック1側の端部の周囲に形成したフランジ部12をガス導入口3に内嵌させることでスプラッシュガード10の設置と同時に周囲の通気空間7を塞いで袋小路とすることも可能となる。
【0033】
尚、勢いを失いながらも通気孔8やドレイン口9からスプラッシュガード10内に進入してしまったオイルは、スプラッシュガード10の下側部分に開口した必要最小限のドレイン口9から排出されてオイルパンに戻されることになる。
【0034】
従って、上記形態例によれば、エンジンブロック1の側面にオイルセパレータ2を設置してガス導入口3を介しブローバイガス4を直接取り込むようにしても、吸気系に戻されるブローバイガス4にオイルが随伴してしまうことを阻止し、吸気系がオイルミストにより汚れてしまうことを確実に防止することができる。
【0035】
また、通気孔8の個々の開口面積を極力小さくしてオイルの進入を防ぎながらも数を増やして十分な総開口面積を確保することができるので、スプラッシュガード10の配置による圧力損失の上昇を抑えてブローバイガス4の流れを極力阻害しないように保つことができ、特に本形態例においては、ガス導入口3からオイルセパレータ2の入口に到るブローバイガス4の経路中での最小流路断面積以上となるように各通気孔8の総開口面積を設定しているので、より確実に圧力損失の上昇を抑えることができる。
【0036】
更に、本形態例の如きスプラッシュガード10の形状を採用すれば、該スプラッシュガード10におけるエンジンブロック1側の端部を閉塞することでオイルのスプラッシュを衝突させて勢いを失わせる大きな衝突面11を形成することができ、しかも、反エンジンブロック1側の端部の周囲に形成したフランジ部12をガス導入口3に内嵌させることでスプラッシュガード10の設置と同時に周囲の通気空間7を塞いで袋小路とすることができる。
【0037】
また、図4は本発明の別の形態例を示すもので、本形態例においては、前記スプラッシュガード10のエンジンブロック1側の端部下側に、エンジンブロック1の内側から見てドレイン口9が隠れるように遮蔽板13を垂下させた構造となっており、このようにすれば、オイルパンからガス導入口3に向かうオイルのスプラッシュを遮蔽板13に先に衝突させてドレイン口9への直接的な衝突を阻止することができるので、該ドレイン口9からのオイルの進入を生じ難くすることができる。
【0038】
尚、本発明のクローズドブリーザシステムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 エンジンブロック
2 オイルセパレータ
3 ガス導入口
4 ブローバイガス
5 ガス戻し管
6 吸気管
7 通気空間
8 通気孔
9 ドレイン口
10 スプラッシュガード
11 衝突面
12 フランジ部
13 遮蔽板
図1
図2
図3
図4