(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244237
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ドア
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20171127BHJP
E06B 7/32 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B7/32 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-55910(P2014-55910)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178716(P2015-178716A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 知之
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−227552(JP,A)
【文献】
特開2014−034843(JP,A)
【文献】
特開2014−204866(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0028543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00−5/20
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠および横枠により構成された矩形のドア枠内に、ドア本体が開閉可能に取付けられ、前記ドア本体は、室内外に表面板を有し、
前記ドア本体の開口にポストが取付けられたドアにおいて、
前記ポストは、前記ドア本体の室内外方向に連通した連通口を備えたボックス状をなすポスト芯材と、前記ポスト芯材を前記ドア本体に固定する合成樹脂製成形材でなる室内側固定具と、を有し、
前記ポスト芯材の室内側端部および室外側端部には、それぞれ見付方向に延びる鍔部を備え、
前記ポスト芯材の室内側端部の鍔部と内側表面板の裏面との間に加熱発泡材が設けられ、
前記ポスト芯材の室外側端部の周辺の鍔部と外側表面板の裏面との間に加熱発泡材が設けられ、
前記ポスト芯材の上板部の下面と前記室内側固定具との間、および、左右の側板部の相互に対向面と前記室内側固定具との間にそれぞれ加熱発泡材が設けられていることを特徴とするドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アパートや一般住宅等に用いられるドアに係わり、特にその防火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
玄関ドア等のドアにおいては、特許文献1に示すように、郵便受けとしてのポストが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−234089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アパート等に設置するドアとして、ポストを設けたものは、火災発生時にこのポストにおける隙間から可燃性ガス等が流出、流入しやすくなり、これが延焼を生じる原因となることがある。特にドア内部に発泡ポリスチレンなどの断熱材を設けたものにおいては、発泡ポリスチレンは加熱により溶融して可燃性ガスを発生するので、ポストが設けられたドアの場合、この可燃性ガスがポスト取付け部分の隙間、もしくはポスト口から流出して引火しやすくなり、延焼を生じやすくなる。
【0005】
本発明は、ドア本体に設けるポストの部分からの可燃性ガスの通過を防止し、延焼を防止しうる構成のドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のドアは、縦枠および横枠により構成された矩形のドア枠内に、ドア本体
が開閉可能に取付け
られ、前記ドア本体は、室内外に表面板を有し、
前記ドア本体の開口にポスト
が取付け
られたドアにおいて、
前記ポストは、前記ドア本体の室内外方向に連通した連通口を備えたボックス状をなすポスト芯材
と、前記ポスト芯材を前記ドア本体に固定する合成樹脂製成形材でなる室内側固定具と、を有し、
前記ポスト芯材の室内側端部および室外側端部には、それぞれ見付方向に延びる鍔部を
備え、
前記ポスト芯材の室内側端部の鍔部と内側表面板の裏面との間に加熱発泡材
が設け
られ、
前記ポスト芯材の室外側端部の周辺の鍔部と外側表面板の裏面との間に加熱発泡材
が設け
られ、
前記ポスト芯材の上板部の下面と前記室内側固定具との間、および、左右の側板部の相互に対向面と前記室内側固定具との間にそれぞれ加熱発泡材
が設け
られていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、火災発生時にドア本体に設けられるポスト部分からの可燃性ガス流出、流入による延焼を防止することができる。
【0008】
また、火災発生時の熱により、ポスト内面の開口部が閉塞され、室内外方向の火炎や熱気が遮断されるため、延焼をより良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態のドアを室外側から見た図である。
【
図4】本実施の形態のドア本体の枢着部を示す縦断面図である。
【
図5】本実施の形態において、ポスト部分を示す縦断面図である。
【
図6】本実施の形態において、ポスト部分を示す横断面図である。
【
図7】本実施の形態のポストの構成部品を示す分解斜視図である。
【
図8】
図7に示すポスト芯材を拡大して示す斜視図である。
【
図10】本実施の形態において、加熱発泡材の発泡後の状態を示す縦断面図である。
【
図11】本実施の形態において、加熱発泡材の発泡後の状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明のドアの一実施の形態を室内側から見た図、
図2、
図3はそれぞれ
図1のドアの縦断面図および横断面図である。
図1ないし
図3において、1はドア枠、2はドア枠1内に取付けられるドア本体である。ドア枠1は、アルミニウム合金等の金属製押出形材でなる吊元側縦枠3と戸先側縦枠4と上側の横枠(上枠)5と下側の横枠(下枠)6とをタッピングねじ(図示せず)により組み合わせて矩形に構成する。本実施の形態においては、縦枠3,4および上枠5は室外側部材3a,4a,5aと室内側部材3b,4b,5bとの間をゴム等の断熱性のブリッジ材3c,4c,5cとでそれぞれ結合し、断熱性を高めている。また、下枠6の室内側の表面は合成樹脂材表面材6aで覆われている。
【0011】
図1において、7はドア本体2の戸先側に設けた開閉用ハンドル、8a,8bは上下のシリンダー錠である。9は郵便物等を入れるためにドア本体2に設けたポストである。
【0012】
本実施の形態のドア本体2は、金属製、例えば、鋼製の内側表面板10および外側表面板11とでボックス状に構成される外装板内にパネル状の断熱材12を挟み、断熱材12を内側表面板10と外側表面板11に接着して構成している。なお、内側表面板10と外側表面板11は、その各両側部、上端部、下端部をそれぞれL字形に折り曲げ、各L字形の折曲げ端部を突き合わせてボックス状に構成している。断熱材12には例えば発泡ポリスチレン等の発泡材を用いる。14は縦枠3,4、上枠5および下枠6に取付けられた気密材であり、ドア本体2の周囲の室内側の面を当接させて気密性を保つものである。
【0013】
図4は本実施の形態のドア本体2の枢着部を示す縦断面図である。
図4に示すように、ドア本体2の吊元側には、金属製、例えば、鋼製の芯材15をドア本体2の上下全長にわたって設け、内側表面板10または外側表面板11の少なくともいずれか一方にリベット16により固定する。芯材15の上下端部には枢着用のプレート17,18を固定する。下枠6の吊元側縦枠3側には枢着軸19を取付け、その枢着軸19を、筒状スペーサ20と、プレート18に設けた枢着孔18aに回動可能に嵌合する。また、芯材15の上面に固定したプレート17には上方に突出させて枢着軸21を設ける。一方、上枠5の吊元側縦枠3側には、金属製、例えば、鋼製の軸受部材22を設け、この軸受部材22に枢着孔22aを設ける。そして枢着軸21を軸受部材22の枢着孔22aに回動可能に嵌合する。これにより、ドア本体2をドア枠1に開閉可能に取付ける。なお、ドア本体2は縦枠3に蝶番により開閉可能に取付けてもよい。
【0014】
図5はポスト9の取付け構造を示す縦断面図、
図6はその横断面図、
図7はポスト9を構成する分解斜視図である。このポスト9は、
図7に示すように、主体となるポスト芯材25と、このポスト芯材25をドア本体2に固定するための
室内側固定具26および室外側固定金具27と、この室外側固定金具27に形成される室外側の開口部を開閉するために取付ける蓋板28と、蓋板28を室外側固定金具27に取付けるための取付け金具30、ばね部材31および芯棒32と、ポスト9の室内側開口部を塞ぎ、手紙等がポスト9の内部から落下することを防止するすだれ状の落下防止部材33と、この落下防止部材33を
室内側固定具26に取付ける
取付け具34と、内側表面板10の裏面とポスト芯材25との間に設ける加熱発泡材36a〜36cと、外側表面板11の裏面とポスト芯材25との間に設ける加熱発泡材37a〜37cと、ポスト芯材25の内面に固着する加熱発泡材38a,38bと、室外側固定金具27と外側表面板11との間に設ける気密材39とにより大略構成される。なお、
室内側固定具26と
取付け具34は、合成樹脂成形材でなる。
【0015】
このポスト芯材25は、
図8に示すように、上板部25aと、左右の側板部25bと、左右の側板部25b,25b間に室外側から室内側が下がるように傾斜して一体に設けられた下板部25c(
図5参照)とからなる構造、すなわち室内外方向に連通する連通口を有する矩形のボックス形状を有する。
【0016】
このポスト芯材25の室内側、室外側には、それぞれ見付方向に延びる鍔部25d,25e,25fと、25g,25h,25jを有する。すなわちポスト芯材25の上板部25aの室内側から上方に延びる鍔部25dと、左右の側板部25bからポスト9の側方に延びる鍔部25eと、下板部25cから下方に延びる鍔部25f(
図5参照)を有する。また、ポスト芯材25の室外側端部の周辺には、上板部25aから上方に延びる鍔部25gと、左右の側板部25bからポスト9の側方に延びる鍔部25hと、下板部25cから下方に延びる鍔部25jとを有する。
【0017】
図5、
図6に示すように、ポスト芯材25の上板部25aの下面および側板部25bの相互の対向面には、それぞれシート状をなす加熱発泡材38a,38bを両面テープや接着もしくはビス等の固定具を用いて固着する。
【0018】
加熱発泡材36a,36b,36cは、ポスト芯材25の室内側端部の周辺の鍔部25a,25e,25fにおける内側表面板10の裏面に対向する面に、それぞれ両面テープや接着により固着する。加熱発泡材37a,37b,37cは、ポスト芯材25の室外側端部の周辺の鍔部25g,25h,25jにおける外側表面板11の裏面に対向する面に、それぞれ両面テープや接着により固着する。
【0019】
図5に示すように、蓋板28を取付けるための取付け金具30は、室外側固定金具27の上部の室内側の面に溶接する。この取付け金具30に、蓋板28を回動可能に取付け、かつばね31を巻装した芯棒32を取付ける。このばね31は蓋板28の室内側の面を押圧して蓋板28を室外側固定金具27に気密材39を介して押し当て、閉塞状態を維持するものである。
【0020】
図5に示すように、すだれ状の落下防止部材33を取付ける
取付け具34は、
室内側固定具26の裏面にビス41により取付けられ、落下防止部材33は、
室内側固定具26と
取付け具34との間で上部を挟持されて取付けられる。
【0021】
43,44はこれらの部材をドア本体2に設けた開口部2aに一体化して取付けるための筒状ナットおよびボルトである。筒状ナット43は室外側固定金具27に溶接される。
図7に示すように、気密材39、加熱発泡材37b、ポスト芯材25の室外側端部の鍔部25hにはそれぞれ筒状ナット43を通すための孔39a,37d,25kを設ける。また、
室内側固定具26、加熱発泡材36b、ポスト芯材25の室内側端部の鍔部25eにはそれぞれボルト44を通す孔26a,36d,25mを設ける。
【0022】
このポスト9のドア本体2の開口部2aに対する取付けを行なう場合は、ポスト芯材25に加熱発泡材36a〜36c,37a〜37c,38a,38bを固着しておき、
図5および
図6に示すように、加熱発泡材37a〜37cを外側表面板11の裏面、すなわち断熱材12側の面に当接させ、加熱発泡材36a〜36cを内側表面板10の裏面、すなわち断熱材12側の面に当接させておく。
【0023】
室外側固定金具27には、予め、蓋板28を取付けておき、かつ気密材39を固着しておき、
室内側固定具26にも落下防止部材33を予め取付けておく。
【0024】
そして、
図9に示すように、気密材39の孔39a、外側表面板11の孔11a、加熱発泡材37bの孔37dおよび鍔部25hの孔25kに室外側固定金具27に設けた筒状ナット43を通して室外側固定金具27を外側表面板11の表面に当てる。また、
室内側固定具26を内側表面板10の表面に当て、ボルト44を
室内側固定具26の孔26a、内側表面板10の孔10a、加熱発泡材36bの孔36d、鍔部25eの孔25mに通して筒状ナット43に螺入して締結することにより、ポスト9をドア本体2に取付ける。
【0025】
このように、本実施の形態のポスト9は、ポスト芯材25の室内側端部の鍔部25d〜25fと内側表面板10との間に加熱発泡材36a〜36cを介装し、ポスト芯材25の室外側端部の鍔部25g〜25jと外側表面板11との間に加熱発泡材37a〜37cを介装した構造である。
【0026】
このため、火災発生時には、
図10、
図11の縦断面図および横断面図に示すように、これらの加熱発泡材36a〜36c,37a〜37cが発泡するため、ポスト芯材25の鍔部25d〜25f、25g〜25jと内外の表面板10,11の裏面との間の隙間が閉塞される。このため、内外の表面板10,11の間に収容する断熱材12として、加熱により溶融して可燃性ガスを発生する発泡ポリスチレン等の材質のものを用いても、ポスト芯材25と表面板10,11との間からの可燃性ガスの流出を防止することができる。このため、可燃性ガス流出による延焼を防止することができる。また、発泡ポリスチレン等は断熱性が例えば水酸化アルミニウムコア等に比較して格段に高いため、断熱性の高いドアの提供が可能となる。
【0027】
また、本実施の形態においては、ポスト芯材25の上板部25aの下面、側板部25bの相互の対向面にも加熱発泡材38a,38bを固着したので、
図10、
図11に示すように、火災発生時にこれらの加熱発泡材38a,38bも発泡する。このため、ドア本体2の室内外方向の火炎や熱気が遮断されるため、延焼をより良好に防止することができる。
【0028】
上記実施の形態においては、ポスト9の室内側にポスト収容物の落下防止部材33を取付けた構成について示したが、この落下防止部材33の代わりにボックス状の収容箱をポスト芯材25の室内側に取付ける構成にも本発明を適用できる。また、本発明は、内外の表面板10,11内に断熱材12を有しないものにも適用できる。その他、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、構成部材やその組み合わせについて、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1:ドア枠、2:ドア本体、2a:開口部、3:吊元側縦枠、4:戸先側縦枠、5:上枠、6:下枠、7:ハンドル、8a,8b:シリンダー錠、10:内側表面板、11:外側表面板、12:断熱材、19,21:枢着軸、25:ポスト芯材、26:
室内側固定具、27:室外側固定金具、28:蓋板、33:落下防止部材、36a〜36c,37a〜37c,38a,38b:加熱発泡材、39:気密材、43:筒状ナット、44:ボルト