特許第6244238号(P6244238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244238
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】冷媒温度調整装置、及び車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/04 20060101AFI20171127BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B60H1/04ZHV
   B60H1/22 611D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-58709(P2014-58709)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-182497(P2015-182497A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100167520
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 良太
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−024238(JP,A)
【文献】 特開平10−114215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/04
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房時に、第1熱源体を暖房用加熱部に熱的に接続可能な第1冷媒サイクルと、
第2熱源体の熱を放熱器によって放熱可能な第2冷媒サイクルと、
前記第2冷媒サイクルの第2冷媒流路を循環する冷媒の放熱量を調整可能な放熱調整手段と、
前記第1冷媒サイクルの第1冷媒流路と、前記第2冷媒流路とを連通、または遮断する流路切替手段とを備え、
前記放熱調整手段は、暖房時に、前記第1冷媒流路の冷媒温度と、前記第2冷媒流路の冷媒温度との温度差が所定温度差以下となると、前記第2冷媒サイクルにおける放熱を抑制し、
前記流路切替手段は、暖房時に、前記第1冷媒流路の冷媒温度が、前記第2冷媒流路の冷媒温度よりも低くなると、前記第1冷媒流路と前記第2冷媒流路とを連通する、
ことを特徴とする冷媒温度調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷媒温度調整装置であって、
前記放熱調整手段は、前記第2冷媒流路における冷媒の循環流量を調整する流量調整手段を備え、
前記流量調整手段は、前記温度差が前記所定温度差以下となると、前記第2冷媒流路における単位時間当たりの冷媒の循環流量を減少させる、
ことを特徴とする冷媒温度調整装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷媒温度調整装置であって、
前記放熱調整手段は、前記放熱器を通過する風量を調整する風量調整手段を備え、
前記風量調整手段は、前記温度差が前記所定温度差以下となると、前記放熱器を通過する風量を制限する、
ことを特徴とする冷媒温度調整装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の冷媒温度調整装置と、
前記第1冷媒サイクルを循環する冷媒と熱交換する蒸発器を有する冷凍サイクルと、
前記冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換する熱交換器と、前記暖房用加熱部とを有する暖房用空調サイクルと、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒温度調整装置、及び車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリの熱に加えて、インバータやモータなどのパワーモジュールの廃熱を用いて車室内の暖房を行う車両用空調装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−13066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーモジュールの廃熱を暖房時に利用することで、車室内の暖房時に用いられる装置、例えば電気ヒータの使用時間を少なくし、消費される電力を少なくすることができる。
【0005】
しかし、パワーモジュールは、機能維持のため放熱器などを用いて冷却されており、パワーモジュールの廃熱を暖房に利用可能となるまで、パワーモジュールを昇温しなければならない場合がある。このような場合であっても、パワーモジュールの昇温を開始する直前まで、パワーモジュールの廃熱は放熱器などによって放熱されており、放熱された廃熱を暖房時に用いることができると、パワーモジュールを昇温する時間を短くすることができる。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、パワーモジュールの廃熱の利用を促進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る冷媒温度調整装置は、暖房時に、第1熱源体を暖房用加熱部に熱的に接続可能な第1冷媒サイクルと、第2熱源体の熱を放熱器によって放熱可能な第2冷媒サイクルと、第2冷媒サイクルの第2冷媒流路を循環する冷媒の放熱量を調整可能な放熱調整手段と、第1冷媒サイクルの第1冷媒流路と、第2冷媒流路とを連通、または遮断する流路切替手段とを備え、放熱調整手段は、暖房時に、第1冷媒流路の冷媒温度と、第2冷媒流路の冷媒温度との温度差が所定温度差以下となると、第2冷媒サイクルにおける放熱を抑制し、流路切替手段は、暖房時に、第1冷媒流路の冷媒温度が、第2冷媒流路の冷媒温度よりも低くなると、第1冷媒流路と第2冷媒流路とを連通する。
【発明の効果】
【0008】
この態様によると、第1冷媒流路の冷媒温度と第2冷媒流路の冷媒温度との温度差が所定温度差以下となると、第2冷媒流路における放熱を抑制することで、第2冷媒流路の冷媒の温度を高くし、第1冷媒流路と第2冷媒流路とを連通するタイミングを早くすることができ、第2冷媒サイクルの熱を早期に暖房に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電動車両の空調装置のシステム構成図である。
図2】暖房時に、バッテリの熱を用いた場合の冷却水、冷媒の流れを示す図である。
図3】暖房時に、パワーモジュールで発生した熱を用いた場合の冷却水、冷媒の流れを示す図である。
図4】暖房時の温調制御を説明するフローチャートである。
図5】暖房時のバッテリの温度と、パワーモジュールの温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は電動車両の車両空調装置1のシステム構成図である。
【0011】
車両空調装置1は、冷媒が循環する冷凍サイクル2と、冷却水が循環する低水温サイクル3と、冷却水が循環する高水温サイクル4と、コントローラ5とから構成される。冷却水は、例えば不凍液で構成される。
【0012】
冷凍サイクル2は、コンプレッサ20と、コンデンサ21と、エバポレータ22と、冷媒−水熱交換器23と、第1電磁弁24と、第2電磁弁25と、第1膨張弁26と、第2膨張弁27と、これらを冷媒が循環可能となるように接続する冷媒流路28とから構成される。
【0013】
冷凍サイクル2では、冷媒がコンプレッサ20によって加圧され、高温、高圧となった冷媒は、コンデンサ21によって冷却水との間で熱交換を行い、冷却されて液化する。液化した冷媒は、第1膨張弁26、第2膨張弁27を介してエバポレータ22、冷媒−水熱交換器23内に噴射されて蒸発し、再びコンプレッサ20によって加圧される。
【0014】
第1膨張弁26、及び第2膨張弁27は、冷媒を減圧する温度式膨張弁であり、エバポレータ22、及び冷媒−水熱交換器23の出口側に感温筒部(図示せず)を有し、エバポレータ22、及び冷媒−水熱交換器23の出口側のスーパーヒート(冷媒過熱度)に応じて開度が調整され、開度に応じて冷媒をエバポレータ22、または冷媒−水熱交換器23内に噴射する。
【0015】
エバポレータ22によって冷媒が蒸発する時に、エバポレータ22の外部の空気が冷却される。エバポレータ22によって冷却された空気は、冷房(除湿)時の車内空調に使用される。また、冷媒−水熱交換器23によって冷媒が蒸発する時に、冷媒−水熱交換器23内を流れる低水温サイクル3の冷却水が冷却される。
【0016】
なお、第1膨張弁26の上流に第1電磁弁24が設けられ、第2膨張弁27の上流に第2電磁弁25が設けられる。第1電磁弁24、及び第2電磁弁25は、コントローラ5からの信号に基づいて開閉する。
【0017】
低水温サイクル3は、バッテリサイクル6と、パワーモジュールサイクル7とによって構成される。
【0018】
バッテリサイクル6は、バッテリ60と、冷媒−水熱交換器23と、第1ウォーターポンプ61と、これらを冷却水が循環可能となるように接続する第1冷却水流路62とを備える。
【0019】
バッテリ60は、パワーモジュール70などに電力を供給する二次電池であり、充放電する際に熱が発生する。バッテリ60は、冷却水によって冷却される。
【0020】
第1ウォーターポンプ61は、バッテリ60から供給される電力によって駆動する。第1ウォーターポンプ61は、第1冷却水流路62を流れる冷却水の流量を調整することができる。
【0021】
パワーモジュールサイクル7は、パワーモジュール70と、第2ウォーターポンプ71と、サブラジエータ72と、これらを冷却水が循環可能となるように接続する第2冷却水流路73と、ラジエータシャッタ74とを備える。
【0022】
パワーモジュール70は、例えばインバータやモータであり、作動時、作動中に熱が発生する。パワーモジュール70は、冷却水との熱交換によって冷却される。
【0023】
サブラジエータ72は、パワーモジュール70との熱交換によって温度が高くなった冷却水を、外部を流れる空気によって冷却する。
【0024】
ラジエータシャッタ74は、サブラジエータ72の前方に設けられる。ラジエータシャッタ74が開くと走行風がサブラジエータ72に向けて導入され、閉じると走行風が遮断される。ラジエータシャッタ74は開度を調整可能であり、開度が小さくなると走行風の風量が少なくなる。ラジエータシャッタ74の開度はコントローラ5からの信号に基づいて調整される。
【0025】
第2ウォーターポンプ71は、バッテリ60から供給される電力によって駆動する。第2ウォーターポンプ71は、第2冷却水流路73を流れる冷却水の流量を調整することができる。
【0026】
低水温サイクル3では、第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とが、第1三方弁30、第2三方弁31、及び2つの接続流路32a、32bを介して連通可能となっている。接続流路32aは、第1ウォーターポンプ61の下流側の第1冷却水流路62と第2ウォーターポンプ71の上流側の第2冷却水流路73とを接続しており、第1冷却水流路62との接続部に第1三方弁30が設けられている。接続流路32bは、バッテリ60と第1三方弁30との間の第1冷却水流路62と、パワーモジュール70とサブラジエータ72との間の第2冷却水流路73とを接続しており、第2冷却水流路73との接続部に第2三方弁31が設けられている。
【0027】
低水温サイクル3では、第1三方弁30、及び第2三方弁31を切り替えることで、第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とが連通、または遮断される。
【0028】
高水温サイクル4は、コンデンサ21と、メインヒーター40と、ヒーターコア41と、第3ウォーターポンプ42と、これらを冷却水が循環可能となるように接続する第3冷却水流路43と、ラジエータ44と、冷却水をラジエータ44に循環可能にする第4冷却水流路45とから構成される。第3冷却水流路43と第4冷却水流路45とは、第3三方弁46を介して接続している。
【0029】
メインヒーター40は、バッテリ60から供給される電力によって発熱し、冷却水を温める。
【0030】
ヒーターコア41は、コンデンサ21、メインヒーター40などにより温められた冷却水とヒーターコア41周囲の空気との間で熱交換を行い、空気を温める。ヒーターコア41によって温められた空気は、暖房時の車内空調に使用される。暖房がOFFとなっている場合には、エアミックスドア47によってヒーターコア41に空気が当たることを防ぎ、空気が温められることを防止する。なお、ヒーターコア41をバイパスするようにバイパス通路を設けてもよい。
【0031】
第3ウォーターポンプ42は、バッテリ60から供給される電力によって駆動する。第3ウォーターポンプ42は、第3冷却水流路43を流れる冷却水の流量を調整することができる。
【0032】
ラジエータ44は、外部を流れる空気と冷却水との間で熱交換を行い、冷却水を冷却する。
【0033】
高水温サイクル4では、第3三方弁46を切り替えることで、第3冷却水流路43と第4冷却水流路45とが連通、または遮断される。
【0034】
コントローラ5は、CPU、ROM、RAMなどによって構成され、ROMに記憶されたプログラムをCPUによって読み出すことで、車両空調装置1の各種機能が発揮される。
【0035】
コントローラ5は、A/Cスイッチ(図示せず)からの信号などに基づいて第1電磁弁24などを開閉する。コントローラ5は、第1温度センサ50からの信号、第2温度センサ51からの信号などに基づいて、暖房時の温調制御を行う。
【0036】
車両空調装置1は、暖房時に、低水温サイクル3のバッテリサイクル6を高水温サイクル4のヒーターコア41と熱的に接続可能となっており、バッテリ60に蓄えられた熱、またはパワーモジュール70で発生した熱(廃熱)を、冷凍サイクル2を介してヒーターコア41に伝達することができる。
【0037】
図2に、暖房時にバッテリ60の熱をヒーターコア41に伝達する場合の冷却水、冷媒の流れを示す。冷却水、冷媒が流れている流路を実線で示し、冷却水、冷媒が流れていない流路を波線で示す。
【0038】
低水温サイクル3では、第1三方弁30、及び第2三方弁31によって第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とが遮断されており、第1冷却水流路62、及び第2冷却水流路73を冷却水が独立して循環する。バッテリ60と熱交換を行うことで温められた冷却水は、冷媒−水熱交換器23によって冷媒と熱交換を行う。これにより、冷凍サイクル2の冷媒が温められる。
【0039】
冷凍サイクル2では、第1電磁弁24が閉じ、第2電磁弁25が開いており、冷媒は冷媒−水熱交換器23にのみ噴射される。冷媒−水熱交換器23によって温められた冷媒は、コンデンサ21において高水温サイクル4の冷却水と熱交換を行う。これにより、高水温サイクル4の冷却水が温められる。
【0040】
高水温サイクル4では、コンデンサ21によって温められた冷却水は、ヒーターコア41によって、ヒーターコア41周囲の空気との間で熱交換を行う。これにより、ヒーターコア41周囲の空気が温められ、温められた空気は、車室内に吹き出される。
【0041】
図3に、暖房時にパワーモジュール70で発生した熱をヒーターコア41に伝達する場合の冷却水、冷媒の流れを示す。
【0042】
低水温サイクル3では、第1三方弁30、第2三方弁31、及び接続流路32a、32bを介して第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とが連通されており、第1冷却水流路62の一部、接続流路32a、第2冷却水流路73の一部、接続流路32bによって1つの冷却水流路が形成され、形成された流路を冷却水が循環する。パワーモジュール70を冷却することで温度が高くなった冷却水は、冷媒−水熱交換器23によって冷媒と熱交換を行う。なお、この場合、冷却水はサブラジエータ72には流れない。
【0043】
冷凍サイクル2、高水温サイクル4における冷媒、冷却水の流れは、図2の場合と同じである。このようにして、パワーモジュール70の廃熱を暖房時に利用することができる。
【0044】
なお、バッテリ60の熱、またはパワーモジュール70の廃熱を用いてヒーターコア41で、車室内に吹き出される空気を設定温度まで温めることができない場合には、メインヒーター40によって冷却水を温めて、車室内に吹き出される空気を温める。
【0045】
次に、暖房時の温調制御について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
ステップS100では、コントローラ5は、第2ウォーターポンプ71を作動させる。第2ウォーターポンプ71による単位時間当たりの冷却水の循環流量は予め設定されており、固定流量としてもよく、パワーモジュール70の負荷に応じた可変流量としてもよい。
【0047】
ステップS101では、コントローラ5は、第2冷却水流路73を独立して冷却水が循環するように、第2三方弁31を制御する。具体的には、コントローラ5は、パワーモジュール70の下流側で、第2三方弁31によって第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とを遮断する。これにより、第2冷却水流路73を冷却水が循環し、パワーモジュール70を冷却水によって冷却し、この冷却によって温度が高くなった冷却水をサブラジエータ72によって冷却する。
【0048】
ステップS102では、コントローラ5は、第1温度センサ50からの信号に基づいてバッテリ60を冷却した後の冷却水の温度(以下、バッテリ60の温度という。)Tbを検出し、バッテリ60の温度Tbが所定温度T1よりも高いかどうか判定する。所定温度T1は、バッテリ60の熱を用いて、ヒーターコア41によって車室内に吹き出される空気を温めることができる温度であり、車室内の設定温度に応じて変更される。処理は、バッテリ60の温度Tbが所定温度T1よりも高い場合にはステップS103に進み、バッテリ60の温度Tbが所定温度T1以下の場合にはステップS109に進む。なお、第1ウォーターポンプ61を一時的に作動させて、バッテリ60の温度Tbを検出してもよい。
【0049】
ステップS103では、コントローラ5は、第1冷却水流路62を独立して冷却水が循環するように、第1三方弁30を制御する。具体的には、コントローラ5は、第1ウォーターポンプ61の下流側で、第1三方弁30によって第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とを遮断する。これにより、第1冷却水流路62、及び第2冷却水流路73が独立して形成される。
【0050】
ステップS104では、コントローラ5は、第1ウォーターポンプ61を作動させる。これにより、第1冷却水流路62を冷却水が循環し、バッテリ60の熱を、冷凍サイクル2を介して、高水温サイクル4のヒーターコア41に伝達し、ヒーターコア41周囲の空気を温め、車室内に吹き出される空気を温める。
【0051】
ステップS105では、コントローラ5は、第2温度センサ51からの信号に基づいてパワーモジュール70を冷却した後の冷却水の温度(以下、パワーモジュール70の温度という。)Tmを検出し、バッテリ60の温度Tbがパワーモジュール70の温度Tmよりも低いかどうか判定する。処理は、バッテリ60の温度Tbがパワーモジュール70の温度Tmよりも低い場合にはステップS106に進み、バッテリ60の温度Tbがパワーモジュール70の温度Tm以上である場合にはステップS107に進む。
【0052】
ステップS106では、コントローラ5は、第1冷却水流路62と第2冷却水流路73とを連通し、第1冷却水流路62の一部、接続流路32a、第2冷却水流路73の一部、及び接続流路32bによって図3に示す1つの冷却水流路が形成されるように、第1三方弁30、及び第2三方弁31を制御する。これにより、パワーモジュール70を冷却して温度が高くなった冷却水が冷媒−水熱交換器23へ流れ、パワーモジュール70の廃熱を、冷凍サイクル2を介して、高水温サイクル4のヒーターコア41に伝達し、ヒーターコア41周囲の空気を温める。
【0053】
ステップS107では、コントローラ5は、バッテリ60の温度Tbとパワーモジュール70の温度Tmとの温度差ΔTを算出し、温度差ΔTが所定温度差ΔT1以下であるかどうか判定する。所定温度差ΔT1は、パワーモジュール70の機能維持が可能な温度(すなわち、パワーモジュール70の使用上限温度)におけるバッテリ60の温度Tbとパワーモジュール70の温度Tmとの温度差である。処理は、温度差ΔTが所定温度差ΔT1以下である場合にはステップS108に進み、温度差ΔTが所定温度差ΔT1よりも大きい場合にはステップS102に戻り、上記制御が繰り返される。
【0054】
ステップS108では、コントローラ5は、パワーモジュールサイクル7における冷却水の放熱を抑制する。具体的には、コントローラ5は、ラジエータシャッタ74の開度を小さくし、走行風の風量を制限する、または第2ウォーターポンプ71による単位時間当たり冷却水の循環流量を減少する。なお、これら両方を行ってもよい。これにより、第2冷却水流路73内の冷却水の温度が高くなり、その後、ステップS105において、パワーモジュール70の温度Tmがバッテリ60の温度Tb以上となるタイミングが早くなり、パワーモジュール70の廃熱を利用して、ヒーターコア41周囲の空気を温めることが可能となるタイミングが早くなる。
【0055】
ステップS109では、コントローラ5は、第1ウォーターポンプ61を停止する。
【0056】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0057】
暖房時に、バッテリ60の温度Tbとパワーモジュール70の温度Tmとの温度差ΔTが所定温度差ΔT1以下となると、第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制する。これにより、図5に示すように、温度差ΔTが所定温度差ΔT1以下となった後のパワーモジュール70の温度Tmが高くなり、第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制しない場合(図5中、波線)よりもパワーモジュール70の温度Tmがバッテリ60の温度Tbよりも高くなるタイミングが早くなる(t1’→t1)。そのため、暖房時に、パワーモジュール70の廃熱を利用して、車室内の空気を温めるタイミングが早くなり、パワーモジュール70の廃熱利用を促進することができる。
【0058】
また、第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制しない場合、パワーモジュール70の温度Tmが高くなるタイミング(図5中、t1’)が、本実施形態を用いた場合(図5中、t0)よりも遅くなる。車室内に吹き出される空気をバッテリ60の熱、パワーモジュール70の廃熱のみで十分に温めることができない場合には、高水温サイクル4のメインヒーター40によって冷却水を温め、車室内に吹き出される空気を温めている。しかし、高水温サイクル4のメインヒーター40によって冷却水を温めた場合には、メインヒーター40によって電力が消費されるので電費が悪くなる。そのため、パワーモジュール70の温度Tmを高くするタイミングが遅れる分だけ、メインヒーター40で電力が消費され、電費が悪くなる。メインヒーター40によって冷却水を温めずに車室内に空気を吹き出すことも可能である。この場合、電費は悪くならないが、車室内に吹き出される空気の温度が低くなる。
【0059】
本実施形態では、第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制することで、第2冷却水流路73の冷却水の温度を高くし、メインヒーター40による電力消費を抑制し、電費を向上することができ、かつ車室内に吹き出される空気の温度を高くすることができる。
【0060】
パワーモジュール70は機能保持のために冷却する必要があるが、暖房時にバッテリ60の温度が高く、バッテリ60の熱を用いてヒーターコア41によって車室内に吹き出される空気を温めることができる場合には、サブラジエータ72によって第2冷却水流路73の冷却水を冷却することで、パワーモジュール70の温度が高くなることを抑制し、パワーモジュール70の機能を保持することができる。一方、暖房時にバッテリ60の温度Tbが低くなると、パワーモジュール70の廃熱を利用して車室内に吹き出される空気を温めることで、パワーモジュール70の機能を保持しつつ、メインヒーター40による電力消費を抑制し、電費を向上することができる。
【0061】
第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制する場合、第2ウォーターポンプ71における単位時間当たりの冷却水の循環流量を減少させることで、第2ウォーターポンプ71で消費される電力を抑制することができ、電費を向上することができる。
【0062】
第2冷却水流路73における冷却水の放熱量は、サブラジエータ72による放熱量が大きい。そのため、第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制する場合、ラジエータシャッタ74の開度を小さくすることで、走行風の風量を制限し、第2冷却水流路73における冷却水の放熱を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0064】
上記実施形態では、接続流路32bをバッテリ60と第2三方弁31との間の第1冷却水流路62に接続したが、バッテリ60と冷媒−水熱交換器23との間に接続してもよい。この場合、第1温度センサ50よりも上流側に接続流路32bを接続する。これにより、パワーモジュール70の廃熱を暖房に利用する場合、冷媒−水熱交換器23における冷媒の加熱量を大きくすることができる。
【0065】
なお、車両空調装置1をハイブリッド車両に用いてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車内空調装置(冷媒温度調整装置)
2 冷凍サイクル
3 低水温サイクル
4 高水温サイクル(暖房用空調サイクル)
5 コントローラ
6 バッテリサイクル(第1冷媒サイクル)
7 パワーモジュールサイクル(第2冷媒サイクル)
21 コンデンサ(熱交換器)
23 冷媒−水熱交換器(蒸発器)
41 ヒーターコア(暖房用加熱部)
62 第1冷却水流路(第1冷媒流路)
73 第2冷却水流路(第2冷媒流路)
71 第2ウォーターポンプ(流量調整手段)
74 サブラジエータ(風量調整手段)
図1
図2
図3
図4
図5