特許第6244265号(P6244265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244265繊維強化複合体の製造方法及び繊維強化複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244265
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】繊維強化複合体の製造方法及び繊維強化複合体
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B29C65/02
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-113009(P2014-113009)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-226997(P2015-226997A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】福永 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】人見 一迅
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−134913(JP,A)
【文献】 特開平07−178859(JP,A)
【文献】 特開2013−227483(JP,A)
【文献】 特開平05−293842(JP,A)
【文献】 特開2000−135754(JP,A)
【文献】 特開2010−158866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂材と樹脂発泡体とを積層し、前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させる積層工程を実施して前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とが一体化された繊維強化複合体を製造する繊維強化複合体の製造方法であって、
前記繊維強化樹脂材及び前記樹脂発泡体が熱可塑性樹脂を含み、前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体との熱融着によって前記接着を行う積層工程を実施し、
前記樹脂発泡体は、前記繊維強化樹脂材が接着される表面を有し、該表面に対する垂直方向が厚み方向となっており、
前記熱融着は、記樹脂発泡体の表面を該樹脂発泡体の前記厚み方向における中心部よりも高温に加熱して実施し、
製造される前記繊維強化複合体は、熱融着されている前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材との界面から前記樹脂発泡体の中心部までの距離を「D(mm)」とし、前記界面から前記中心部に向けて「D/2.5(mm)」深さまでを前記樹脂発泡体の第1領域とし、前記中心部から前記第1領域までの間を前記樹脂発泡体の第2領域とした際に、下記式(1)によって求められる前記樹脂発泡体の気泡の平均アスペクト比が前記第1領域において0.1以上0.5以下であり、且つ前記第2領域において0.7以上1.0以下である繊維強化複合体の製造方法。

平均アスペクト比 = D2/D1 ・・・(1)

(但し、式中のD1は、樹脂発泡体を中心部に向けて切断した断面において観察される気泡の長径であり、D2は、該気泡の長径(D1)に直交する方向における短径である。)
【請求項2】
前記樹脂発泡体の主となる樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、該ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点を「Tm(℃)」、ガラス転移点を「Tg1(℃)」とした際に、前記熱融着は、前記樹脂発泡体の前記表面の温度を(Tm+5)℃〜(Tm+100)℃とし且つ前記中心部の温度を前記ガラス転移点(Tg1)以下にして実施する請求項1記載の繊維強化複合体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂発泡体の主となる樹脂がアクリル樹脂であり、該アクリル樹脂のガラス転移点を「Tg2(℃)」とした際に、前記熱融着は、前記樹脂発泡体の前記表面の温度を(Tg2+50)℃〜(Tg2+150)℃とし且つ前記中心部の温度を前記ガラス転移点(Tg2)以下にして実施する請求項1記載の繊維強化複合体の製造方法。
【請求項4】
繊維強化樹脂材と樹脂発泡体とが積層一体化されてなり、該樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とが熱可塑性樹脂を含み、前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とが熱融着によって積層一体化されてなり、
前記樹脂発泡体は、前記繊維強化樹脂材が接着される表面を有し、該表面に対する垂直方向が厚み方向となっており、
熱融着されている前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材との界面から前記樹脂発泡体の前記厚み方向における中心部までの距離を「D(mm)」とし、前記界面から前記中心部に向けて「D/2.5(mm)」深さまでを前記樹脂発泡体の第1領域とし、前記中心部から前記第1領域までの間を前記樹脂発泡体の第2領域とした際に下記式(1)によって求められる前記樹脂発泡体の気泡の平均アスペクト比が前記第1領域において0.1以上0.5以下であり、且つ前記第2領域において0.7以上1.0以下である繊維強化複合体。

平均アスペクト比 = D2/D1 ・・・(1)

(但し、式中のD1は、樹脂発泡体を中心部に向けて切断した断面において観察される気泡の長径であり、D2は、該気泡の長径(D1)に直交する方向における短径である。)
【請求項5】
樹脂発泡体が、樹脂発泡粒子を型内発泡成形させてなる成形体である請求項記載の繊維強化複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合体の製造方法及び繊維強化複合体に関し、より詳しくは、繊維強化樹脂材を樹脂発泡体に積層してこれらが一体化された繊維強化複合体を製造する繊維強化複合体の製造方法及び繊維強化樹脂材と樹脂発泡体とが積層一体化されてなる繊維強化複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維で強化された繊維強化樹脂材は、軽量で且つ高い機械的強度を有していることから、自動車分野、船舶分野、航空機分野などの高い機械的強度及び軽量性が求められる分野において使用される機会が増大している。
前記繊維強化樹脂材は、上記のような分野の中でも特に自動車用途においては、機械的強度及び軽量性のみならず衝撃吸収性を有していることが求められている。
【0003】
上述の要望を満たすものとして、芯材に樹脂発泡体を用い、芯材の表面に繊維強化樹脂材を積層一体化させてなる繊維強化複合体が提案されている。
【0004】
この種の繊維強化複合体の製造方法としては、例えば、下記特許文献1において、複合サンドイッチコア成形部材の成形法であって、熱弾性硬質フォームコア(発泡コア)を所望形状に成形し、予備成形フォームコアを織布で包んだ後、型内に予備成形フォームコアを置いた後、予備成形フォームコアの周りに包まれた織布を包囲しかつ湿潤化するように、液状熱硬化性樹脂を注入し、しかる後、硬質フォームコアを膨張させフォームコアの織布包囲面を型の内部制約面に対して押しつけた後、硬質フォームコアの加熱を終了させる方法が提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、芯材の外周面のうち少なくとも上面の大部分に、強化繊維を含んで構成されるプリプレグシートを複数積層して、プリプレグシートの積層体を形成する積層工程と、前記積層工程で形成された積層部材を加熱し熱硬化させて芯材と一体化したFRP部材を形成する加熱工程と、を含んで構成されるロボットハンド部材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−162207号公報
【特許文献2】特開2002−292592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような繊維強化複合体は、繊維強化樹脂材を熱硬化性樹脂製のものとし、該熱硬化性樹脂の熱硬化反応時において発揮される接着性を利用して繊維強化樹脂材と樹脂発泡体とを積層一体化させる方法によって作製されている。
しかしながら、熱硬化性樹脂製の繊維強化樹脂材を使用した繊維強化複合体の製造方法においては、この熱硬化性樹脂が硬化するまでに比較的長い時間を要し、繊維強化複合体の生産効率を十分に向上させることが難しいという問題を有している。
このような問題を解決すべく反応性の高い熱硬化性樹脂を使用することも考え得るが、反応性の高い熱硬化性樹脂は、一般に常温でも硬化反応が進行するために作製から一定以上の期間を経たプリプレグシートなどでは十分な接着性が発揮されないおそれがある。
また、繊維強化複合体の製造時に繊維材に液状の熱硬化性樹脂を含浸させるような場合においては、2液タイプの熱硬化性樹脂を採用することで硬化反応の進行による接着不足に係る問題は回避可能であるが、反応性の高い2液タイプの熱硬化性樹脂は、一般に硬化収縮が激しく、所望の形状を有する繊維強化複合体が得られにいという問題を発生させるおそれが有る。
【0008】
また、上記のような問題に対し、樹脂発泡体や繊維強化樹脂材を熱可塑性樹脂を含んだものとしてこれらを熱融着させて繊維強化複合体を製造することが考えられる。
即ち、樹脂発泡体や繊維強化樹脂材に含有される熱可塑性樹脂を軟化させて樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との熱融着を実施すれば、これらの積層一体化に要する時間を熱硬化性樹脂を利用する場合に比べて短縮させ得る。
【0009】
その一方で熱可塑性樹脂を含む樹脂発泡体を用いると、熱融着に際して樹脂発泡体が軟化してしまい、繊維強化樹脂材との間に十分な圧力を生じさせることが難しくなり、無理に圧力を生じさせようとすると樹脂発泡体が圧縮変形されてしまい所望の形状を有する繊維強化複合体が得られにくくなるおそれを有する。
【0010】
本発明は、このような問題を解決することを課題としており、寸法精度に優れた繊維強化複合体を容易に製造可能な製造方法を提供し、且つ、均質な状態に製造容易な繊維強化複合体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る繊維強化複合体の製造方法は、繊維強化樹脂材と樹脂発泡体とを積層し、前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とを接着させる積層工程を実施して前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体とが一体化された繊維強化複合体を製造する繊維強化複合体の製造方法であって、前記繊維強化樹脂材及び前記樹脂発泡体が熱可塑性樹脂を含み、前記繊維強化樹脂材と前記樹脂発泡体との熱融着によって前記接着を行う積層工程を実施し、前記熱融着は、前記樹脂発泡体が接着される前記樹脂発泡体の表面を該樹脂発泡体の中心部よりも高温に加熱して実施する。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明に係る繊維強化複合体は、繊維強化樹脂材と樹脂発泡体とが積層一体化されてなり、該樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とが熱可塑性樹脂を含み、前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とが熱融着によって積層一体化されてなり、熱融着されている前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材との界面から前記樹脂発泡体の中心部までの距離を「D(mm)」とし、前記界面から前記中心部に向けて「D/2.5(mm)」深さまでを前記樹脂発泡体の第1領域とし、前記中心部から前記第1領域までの間を前記樹脂発泡体の第2領域とした際に下記式(1)によって求められる前記樹脂発泡体の気泡の平均アスペクト比が前記第1領域において0.1以上0.5以下であり、前記第2領域において0.7以上1.0以下である。

平均アスペクト比 = D2/D1 ・・・(1)

(但し、式中のD1は、樹脂発泡体を中心部に向けて切断した断面において観察される気泡の長径であり、D2は、該気泡の長径(D1)に直交する方向における短径である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、寸法精度に優れた繊維強化複合体を容易に製造可能な製造方法が提供され得る。
また、本発明によれば、均質な状態に製造容易な繊維強化複合体が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】樹脂発泡粒子の製造装置の一例を示した模式断面図である。
図2】マルチノズル金型を正面から見た模式図である。
図3】繊維強化樹脂材を構成している繊維の配向性を示した図である。
図4】繊維強化樹脂材を構成している繊維の配向性を示した図である。
図5】積層体を示した断面図である。
図6】繊維強化複合体の製造要領を示した模式断面図である。
図7】繊維強化複合体の他の製造要領を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、作製する繊維強化複合体が角柱状である場合を例にして以下に説明する。
本実施形態の繊維強化複合体は、角柱状の芯材と該芯材を覆うシート状の被覆材とによって構成されている。
前記繊維強化複合体は、前記芯材が樹脂発泡体からなり、前記被覆材が繊維強化樹脂材からなるものである。
即ち、本実施形態の繊維強化複合体は、表層部に繊維強化樹脂材からなる繊維強化樹脂層を有している。
前記繊維強化複合体は、前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材との両方に熱可塑性樹脂を含んでおり、前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材とがこれらの接触界面において熱融着されている。
【0016】
以下に前記芯材を構成するための樹脂発泡体について説明する。
前記樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂を含むものであれば特に限定されず、該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
前記樹脂発泡体に含有させる熱可塑性樹脂は、1種単独である必要はなく、2種類以上であっても良い。
また、樹脂発泡体は、1種以上の熱可塑性樹脂のみによって構成される必要はなく、要すれば、少量のゴムや熱硬化性樹脂など含んでいても良い。
前記樹脂発泡体の主となる熱可塑性樹脂は、作製する繊維強化複合体に優れた機械的強度及び衝撃吸収性を発揮させる上においてポリエステル樹脂又はアクリル樹脂であることが好ましい。
なかでも樹脂発泡体に含まれる熱可塑性樹脂は、成形工程において、樹脂発泡体の結晶化度を上昇させて耐熱性を有する芯材とすることができるので、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂がより好ましい。
なお、ここで「主となる樹脂」とは、樹脂発泡体に最も高い質量割合で含まれる樹脂を意味する。
【0017】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ジカルボン酸と多価アルコールとが、縮合反応を行った結果得られた高分子量の線状ポリエステルを採用することができる。
該ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸系樹脂などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0018】
芳香族ポリエステル樹脂は、通常、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂などが挙げられる。
本実施形態の樹脂発泡体に含有させる芳香族ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0019】
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
【0020】
また、樹脂発泡体に含有させる芳香族ポリエステル樹脂は、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル材料でもよい。
【0021】
樹脂発泡体に含有させる芳香族ポリエステル樹脂は、熱可塑性が発揮される範囲内であれば部分架橋が施されていても良い。
ポリエチレンテレフタレート樹脂などの芳香族ポリエステル樹脂を架橋するための架橋剤としては、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。
なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0022】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を架橋剤によって架橋する場合には、押出機にポリエチレンテレフタレート樹脂と共に架橋剤を供給し該押出機内で動的架橋すればよい。
押出機に供給する架橋剤の量は、少なすぎると、ポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融粘度を不足させるおそれがある。
即ち、架橋剤の量が少なすぎると架橋後のポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融粘度が低すぎて樹脂発泡体の形成時において破泡が生じ易くなるおそれがある。
一方で、架橋剤の量が多すぎると、ポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて、樹脂発泡体を押出発泡によって製造する場合などにおいて押出発泡が困難となるおそれがある。
従って、前記芯材を構成するための樹脂発泡体のベース樹脂を架橋ポリエチレンテレフタレート樹脂とする場合、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して架橋剤を0.01〜5質量部の割合で用いて架橋させたものを採用することが好ましい。
また、前記割合は、0.1〜1質量部であることがより好ましい。
【0023】
前記ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸がエステル結合により重合された樹脂を用いることができる。
樹脂発泡体に含有させる熱可塑性樹脂をポリ乳酸系樹脂とする場合、商業的な入手容易性及び発泡性付与の容易性の観点から、該ポリ乳酸系樹脂は、D−乳酸(D体)及びL−乳酸(L体)の共重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選択される1又は2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
ポリ乳酸系樹脂は、乳酸以外の単量体成分として、脂肪族多価アルコールなどを含有していてもよい。
該脂肪族多価アルコールとしては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などの脂肪族多価カルボン酸;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどが挙げられる。
【0025】
ポリ乳酸系樹脂は、例えば、アルキル基、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基などの官能基を備えていてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、イソシアネート系架橋剤などによって架橋されていてもよく、エステル結合以外の結合を主鎖や側鎖に備えていてもよい。
【0026】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系モノマーを重合させてなるものを採用することができる。
なお、「(メタ)アクリル」とは、ここでは、「アクリル」と「メタクリル」との双方を意味する用語として用いている。
【0027】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0028】
樹脂発泡体に含有させるアクリル樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマー以外にこれと共重合可能なモノマー成分を含有していてもよい。
このようなモノマーとしては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
【0029】
該樹脂発泡体は、前記芯材として用いる際に繊維強化樹脂材との間に優れた接着性を発揮させる上において、熱融着に際して繊維強化樹脂材との間に高い圧力を作用させ得るように形成されていることが好ましい。
このようなことから、樹脂発泡体は、熱融着時に加熱されることによって再発泡可能であることが好ましい。
より具体的には、樹脂発泡体は、加熱することで20%以上の寸法変化(体積増加)を示す状態となっていることが好ましい。
このように樹脂発泡体に備わっていることが好ましい寸法変化に係る能力は、当該樹脂発泡体が繊維強化樹脂材に熱融着される前において備わっていればよく、繊維強化複合体となった後の樹脂発泡体にまで備わっている必要はない。
樹脂発泡体をこのような体積変化を示す状態とするには、例えば、後述する発泡剤を当該樹脂発泡体中に0.1〜5.0質量%残存させるようにすればよい。
そして、前記のように芯材として用いる際に繊維強化樹脂材との間に高い圧力を作用させるためには、前記樹脂発泡体は、20%の寸法変化を示す再加熱温度において0.1〜20mN/mmの膨張圧力を示すことが好ましい。
該樹脂発泡体は、この再発泡条件(20%の寸法変化を示す温度)において、その発泡力(膨張圧力)が0.1〜10mN/mmであることがより好ましく、該発泡力が0.2〜1mN/mmであることが特に好ましい。
樹脂発泡体は、その発泡力が低すぎると、繊維強化樹脂材との熱融着を行うべく、例えば、繊維強化樹脂材とともに金型内に仕込まれた際に十分な圧力でもって繊維強化樹脂材を金型に向けて押圧できなくなるおそれがある。
即ち、樹脂発泡体の発泡力が低すぎると、得られる繊維強化複合体の繊維強化樹脂材の表面平滑性が低下する、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できない、芯材(樹脂発泡体)と被覆材(繊維強化樹脂材)との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が十分なものにならないなどといったおそれを生じさせ得る。
一方、樹脂発泡体の発泡力が必要以上に高すぎると、樹脂発泡体による繊維強化樹脂材の金型内面への押圧力が大きくなりすぎて、繊維強化樹脂材に含まれている熱可塑性樹脂が必要以上に金型外に流出してしまい、繊維強化樹脂材を構成している繊維が外部に露出し易くなる。
即ち、樹脂発泡体の発泡力が必要以上に高すぎると、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が低下する、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できない、芯材と繊維強化樹脂材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になるなどのおそれがある。
【0030】
樹脂発泡体の発泡力は、前記のように残存ガス量(発泡剤含有量)を調整する方法などに加え、表面層の結晶化度、見掛け密度、連続気泡率などを調整することによっても調整することができる。
例えば、樹脂発泡体は、通常、その表面層の結晶化度を上昇させることによって発泡力を低くすることができる一方で表面層の結晶化度を低下させることによって発泡力を高くすることができる。
【0031】
なお、樹脂発泡体の発泡力は、「発泡プラスチック−硬質材料の圧縮試験」で使用される万能試験機を用いて、樹脂発泡体が加熱により膨張(発泡)する時に生じる荷重を連続的に測定し、測定開始後の所定時間で検知された最小荷重を試験片体積(初期状態における体積)で除した値として求められる。
【0032】
具体的には、発泡力は、以下のようにして求めることができる。
<発泡力(膨張圧力)の求め方>
樹脂発泡体から一辺が50mmの立方体形状の試験片を切り出す。
試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で24時間以上に亘って放置した後、測定を行う。
測定は、万能試験機、テンシロン付帯高低温度恒温槽及び万能試験機データ処理ソフトを用いて行う。
樹脂発泡体の再発泡時の温度(20%の寸法変化を示す温度)に設定した恒温槽内で、上部圧縮板と下部圧縮板との間に挟み込まれた試験片が50mmから膨張(発泡)することにより該発生する荷重を測定する。
測定は1800秒間に亘って連続して行い、測定開始から600秒経過した時点から1800秒経過した時点までの間に測定された最小荷重F(mN)を試験片体積で除した値を発泡力とする。
なお、万能試験機は、例えば、オリエンテック社から商品名「UCT−10T」にて市販されている装置を用いることができる。
テンシロン付帯高低温度恒温槽としては、例えば、T.S.E.社から市販されているものを用いることができる。
万能試験機データ処理ソフトは、UTPS−STDソフトブレーン社から市販されているものを用いることができる。
発泡力(mN/mm)=最小荷重F(mN)/試験片の体積(mm
【0033】
なお、「20%の寸法変化を示す温度」とは、前記のように一辺が50mmの立方体形状の試験片を内部まで均一な温度になるように加熱した際に、一辺が60mmの立方体となるような体積膨張を示す温度を意味する。
ここで試験片が縦、横、高さのそれぞれの方向に均等に膨張しないような場合においては、試験片の体積が1.2(1.728)倍に膨張する温度を「加熱寸法変化率が20%となる温度」としてみなすことができる。
また、樹脂発泡体が20%の寸法変化を示す温度において0.1〜20mN/mmの発泡力を示すかどうかを確認する際には、必ずしも、樹脂発泡体が20%の寸法変化を示す温度を厳密に求めて測定を行う必要はなく、樹脂発泡体が20%よりも僅かに低い寸法変化を示す温度と、樹脂発泡体が20%よりも僅かに高い寸法変化を示す温度とを求め、この両方の温度で前記のようにして発泡力を測定し、これらがいずれも0.1〜20mN/mmの範囲内であれば、当該樹脂発泡体は、20%の寸法変化を示す温度においても0.1〜20mN/mmの発泡力を示すものであるとみなすことができる。
【0034】
前記樹脂発泡体は、その圧縮強度が10kPa以上であることが好ましく、100kPa以上であることがより好ましく、1000kPa以上であることが特に好ましい。
前記樹脂発泡体の圧縮強度は、低すぎると、繊維強化複合体の破壊応力が減少し、その結果、繊維強化複合体の衝撃吸収性が低下するおそれを有する。
【0035】
前記樹脂発泡体の圧縮強度は、樹脂発泡体の表面層の結晶化度、樹脂発泡体の見掛け密度、残存ガス量、連続気泡率などを調整することによって制御することができる。
例えば、前記樹脂発泡体の表面層の結晶化度を上昇させることによって樹脂発泡体の圧縮強度を高くすることができる一方、樹脂発泡体の表面層の結晶化度を低下させることによって樹脂発泡体の圧縮強度を低くすることができる。
【0036】
なお、樹脂発泡体の圧縮強度は、JIS K7220:1999「発泡プラスチック-硬質材料の圧縮試験」記載の方法に準拠して測定した5%圧縮時の圧縮強度をいう。
即ち、前記圧縮強度は、例えば、樹脂発泡体から縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体形状の試験片を切り出し、圧縮速度10mm/分の条件下にて5%圧縮時の試験片の圧縮強度を測定することによって求めることができる。
【0037】
樹脂発泡体を構成している熱可塑性樹脂が結晶性を有している場合、樹脂発泡体の表面層の結晶化度は、高すぎると、繊維強化樹脂材との熱融着時における再発泡が阻害されて、繊維強化樹脂材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が不十分となる、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できない、芯材と被覆材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になるなどのおそれがある。
従って、樹脂発泡体の表面層の結晶化度は、24%未満が好ましく、23%未満がより好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0038】
樹脂発泡体を構成している熱可塑性樹脂が結晶性を有している場合、樹脂発泡体の内層の結晶化度は、高すぎると、繊維強化複合体の形成時における樹脂発泡体の再発泡が阻害されて、繊維強化樹脂材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が不十分になる、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できない、芯材と被覆材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になるなどといった虞れを生じさせ得る。
このことから、樹脂発泡体の内層の結晶化度は、24%未満が好ましく、低すぎると、樹脂発泡体が柔軟になりすぎて再発泡によって繊維強化樹脂材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できない場合があるので、5〜23%が好ましい。
【0039】
樹脂発泡体の表面層とは、樹脂発泡体の表面に対して垂直な方向における当該樹脂発泡体の厚みを「T(mm)」とした時に、前記表面から0.05T(mm)深さまでの部分をいう。
また、樹脂発泡体の内層とは、樹脂発泡体の表面層を除いた部分の全てをいう。
【0040】
なお、樹脂発泡体の表面層及び内層の結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定する。
【0041】
前記結晶化度を求めるには、測定対象となる層から切り出した好ましくは直方体形状の試料を約6mg採取し、この試料に対して熱分析を行えばよい。
なお、樹脂発泡体の内層から試料を切り出す場合、原則的には、樹脂発泡体の重心を含むように試料を切り出すものとする。
【0042】
具体的には、結晶化度は、以下のようにして求めることができる。
【0043】
(結晶化度の求め方)
示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用い、アルミニウム製の測定容器の底に前記試料を隙間のないように、充填して、試料を窒素ガス流量30mL/分の条件下にて30℃で2分間に亘って保持する。
しかる後、試料を速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温した時のDSC曲線を得る。
その時の基準物質はアルミナを用いる。
樹脂発泡体の表面層及び内層の結晶化度は、融解ピークの面積から求められる融解熱量(mJ/mg)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(mJ/mg)の差を結晶性熱可塑性樹脂の完全結晶の理論融解熱量ΔHで徐して求められる。
例えば、ポリエチレンテレフタレートのΔHは140.1mJ/mgである。
樹脂発泡体の測定対象となる層の結晶化度は下記式に基づいて算出される。

樹脂発泡体の測定対象となる層の結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/ΔH(mJ/mg)
【0044】
別に4個の樹脂発泡体を更に用意し、それぞれの樹脂発泡体の表面層及び内層の結晶化度を上述と同様の要領で測定し、5個の樹脂発泡体のそれぞれの表面層の結晶化度の相加平均値を樹脂発泡体の表面層の結晶化度とし、5個の樹脂発泡体のそれぞれの内層の結晶化度の相加平均値を樹脂発泡体の内層の結晶化度とする。
【0045】
樹脂発泡体の表面層の結晶化度の調整方法としては、例えば、発泡直後の樹脂発泡体における表面の冷却速度を遅くすることによって樹脂発泡体の表面層の結晶化度を上昇させることができる一方、発泡直後の樹脂発泡体における表面の冷却速度を速くすることによって樹脂発泡体の表面層の結晶化度を低くすることができる。
【0046】
樹脂発泡体の内層の結晶化度の調整方法としては、例えば、後述する合成樹脂発泡粒子を用いた型内発泡成形によって樹脂発泡体を製造する時に熱媒体の金型内への流入圧力を上昇させて、金型の内部に充填した合成樹脂発泡粒子を十分に加熱することによって樹脂発泡体の内層の結晶化度を上昇させることができる。
一方、型内発泡成形によって樹脂発泡体を製造する時に熱媒体の金型内への流入圧力を低下させて、金型の内部に充填した合成樹脂発泡粒子の加熱を抑制することによって樹脂発泡体の内層の結晶化度を低くすることができる。
【0047】
樹脂発泡体の加熱寸法変化率は、低すぎると、樹脂発泡体の再発泡によって繊維強化樹脂材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化樹脂材の表面平滑性が低下する、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できなかったり、樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との一体化が不十分となったりして得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になる、繊維強化樹脂材に含まれている空気や、繊維強化樹脂材と金型内面との隙間に存在する空気が残存し易くなって、繊維強化複合体の表面平滑性が不十分になるといったおそれを生じさせ得る。
樹脂発泡体の加熱寸法変化率は、高すぎると、樹脂発泡体による繊維強化樹脂材の金型内面への押圧力が大きくなりすぎて、繊維強化樹脂材に含浸させている熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が必要以上に金型外に流出してしまい、繊維強化樹脂材を構成している繊維が外部に露出し易くなり、得られる繊維強化複合体の表面平滑性及び機械的強度が低下する虞れを生じさせ得る。
【0048】
樹脂発泡体の加熱寸法変化率は、樹脂発泡体に含まれている残存発泡剤量を調整することによって制御することができる。
即ち、樹脂発泡体に含まれている残存発泡剤量を多くすることによって樹脂発泡体の加熱寸法変化率を高くすることができる。
【0049】
樹脂発泡体の見掛け密度は、0.01〜0.7g/cmであることが好ましく、0.03〜0.7g/cmであることがより好ましい。
なお、樹脂発泡体の密度は、JIS K7222「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に準拠して測定される値をいう。
【0050】
樹脂発泡体の見掛け密度は、低すぎると、樹脂発泡体が柔らかくなりすぎて、樹脂発泡体の再発泡によって繊維強化樹脂材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が不十分になる、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できない、樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になるといったおそれを生じさせ得る。
【0051】
樹脂発泡体の見掛け密度は、高すぎると、樹脂発泡体の柔軟性が低下し、樹脂発泡体を金型内面に沿った状態に正確に再発泡させることができないため、樹脂発泡体によって繊維強化樹脂材を金型内面に沿って正確に且つ十分に押圧することができず、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が不十分になる、樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との一体化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になるといった虞れを生じさせ得る。
【0052】
樹脂発泡体は、その連続気泡率が高すぎると、繊維強化樹脂材に含まれている熱可塑性樹脂が内部に浸透し易くなるため、繊維強化樹脂材と良好なる接着を行うために繊維強化樹脂材に過剰な熱可塑性樹脂を担持させる必要が生じるおそれがある。
言い換えると、樹脂発泡体は、その連続気泡率が高すぎると、得られる繊維強化複合体の表面において繊維強化樹脂材の繊維を露出させ易くなって繊維強化複合体の表面平滑性を不十分なものとするおそれがある。
従って、樹脂発泡体の連続気泡率は、30%未満であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
なお、樹脂発泡体の連続気泡率の調整は、当該樹脂発泡体を発泡性の合成樹脂粒子を型内発泡成形法によって製造する場合、合成樹脂粒子を製造する際の押出発泡温度や押出機に供給する発泡剤量を調整することによって行うことができる。
【0053】
ここで、樹脂発泡体の連続気泡率はASTM D−2856に記載の測定方法に準拠して下記の要領で測定される。
先ず、樹脂発泡体の見掛け上の体積を測って見掛け体積V(cm)とする。
次に、樹脂発泡体の実際試料体積V(cm)を体積測定空気比較式比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。
なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されているものを用いることができる。
【0054】
そして、樹脂発泡体の見掛け体積V(cm)と、樹脂発泡体の実際試料体積V(cm)に基づいて下記式により発泡体の連続気泡率を算出することができる。
連続気泡率(%)=100×(V−V)/V
【0055】
樹脂発泡体中の残存発泡剤量は、少なすぎると、樹脂発泡体の再発泡によって繊維強化樹脂材を金型内面に十分な圧力でもって押圧できないので、得られる繊維強化複合体の繊維強化樹脂材表面における平滑性が不十分になる、繊維強化樹脂材を所望形状に成形できない、樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との一体化が不十分となって得られる繊維強化複合体の機械的強度が不十分になるといった虞れを生じさせ得る。
このことから、樹脂発泡体中の残存発泡剤量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。
ただし、樹脂発泡体中の残存発泡剤量は、多すぎると、樹脂発泡体による繊維強化樹脂材の金型内面への押圧力が大きくなりすぎて、繊維強化樹脂材に含まれている熱可塑性樹脂が必要以上に金型外に流出してしまい、繊維強化樹脂材を構成している繊維が外部に露出し易くなり、得られる繊維強化複合体の表面平滑性が低下することがあるので、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0056】
樹脂発泡体中の残存発泡剤量は、例えば、押出発泡による樹脂発泡体の製造時に合成樹脂に混合させる発泡剤を多くすることによって樹脂発泡体中の残存発泡剤量を多くする方法、型内発泡成形による樹脂発泡体の製造時に用いられる合成樹脂発泡粒子に含浸している発泡剤の量を多くすることによって樹脂発泡体中の残存発泡剤量を多くする方法、樹脂発泡体に発泡剤を更に含浸させて樹脂発泡体中の残存発泡剤量を多くする方法、樹脂発泡体の製造時の発泡のための加熱を少なくして樹脂発泡体中の残存発泡剤量を多くする方法、樹脂発泡体の加熱雰囲気下で一定時間置くなどの養生工程を設けて樹脂発泡体中の残存発泡剤量を少なくする方法などの方法によって制御することができる。
【0057】
なお、樹脂発泡体中の残存発泡剤量は、ガスクロマトグラフを使って測定することができる。
具体的には、残存発泡剤量は、例えば発泡剤がブタンなどの炭化水素であるような場合には、以下のようにして測定することができる。
<発泡剤残存量の測定方法>
樹脂発泡体から採取した試料10〜20mgを精秤し、熱分解炉PYR−1A(島津製作所製)の分解炉入口にセットして15秒ほどキャリアーガス(ヘリウムガス)でパージを行ない、試料セット時の混合ガスを排出する。
その後、試料を炉心まで挿入して加熱することによりガスを放出させ、この放出ガスを島津製作所製ガスクロマトグラフを用いて測定し、得られたクロマトチャートのピーク面積からそれぞれの標準ガス検量線を使用して試料中の残存発泡剤を定量する。
〔ガスクロマトグラフ条件〕
測定装置:ガスクロマトグラフ GC−14B(島津製作所製)
カラム:ポラパックQ(80/100)3mmφ×1.5m(ジーエルサイエンス社製)
データ処理装置:C−R3A
検出器:TCD
カラム温度:100℃
注入口温度:120℃
検出器温度:120℃
キャリアーガス:ヘリウム
キャリアーガス流量:1mL/min
〔加熱炉条件〕
測定装置:熱分解炉PYR−1A(島津製作所製)
加熱炉温度:240℃
〔算出条件〕
検量線標準ガス:i−ブタン、n−ペンタン
算出方法:絶対検量線法により、i−ブタン、n−ペンタンの検量線を予め作成し、得られた試料の残存発泡剤量を標準ガス毎の検量線により算出した。結果において、n−ブタンガス量はi−ブタン換算量、i−ペンタンガス量はn−ペンタン換算量とした。
【0058】
樹脂発泡体の製造方法としては、特に限定されることなく、公知の製造方法を用いることができる。
具体的には、樹脂発泡体の製造方法としては、例えば、(1)熱可塑性樹脂発泡粒子を金型内に充填し、熱水や水蒸気などの熱媒体によって熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して発泡させ、熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡圧によって発泡粒子どうしを融着一体化させて所望形状を有する樹脂発泡体を製造する方法(型内発泡成形法)、(2)熱可塑性樹脂を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤などの発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させて樹脂発泡体を製造する方法(押出発泡法)、(3)熱可塑性樹脂及び化学発泡剤を押出機に供給して化学発泡剤の分解温度未満にて溶融混練し押出機から発泡性樹脂成形体を製造し、この発泡性樹脂成形体を発泡させて樹脂発泡体を製造する方法、(4)化学発泡剤を含有した塊状重合体を製造した後、加熱発泡させて樹脂発泡体を製造する方法(バルク発泡法)、(5)ミキシングヘッドなどで単量体と発泡剤を混ぜて混合物を作製した後、混合物を吐出し重合させながら発泡を行い、型内に混合物を注入し発泡体を製造し、重合反応、発泡工程が終了した後、型から取出して樹脂発泡体を製造する方法などが挙げられる。
これらのなかでも樹脂発泡体の製造方法は、所望形状のものを容易に製造することができることから、上記(1)の型内発泡成形法が好ましい。
【0059】
上記(1)の型内発泡成形法で用いられる熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法としては、(1)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から熱可塑性樹脂押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して熱可塑性樹脂発泡粒子を製造する方法、(2)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡してストランド状の熱可塑性樹脂押出物を製造し、この熱可塑性樹脂押出物を所定間隔毎に切断して熱可塑性樹脂発泡粒子を製造する方法、(3)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって熱可塑性樹脂発泡粒子を製造する方法、(4)懸濁重合などで熱可塑性樹脂粒子を作製し、オートクレーブなどで発泡剤を含浸させた発泡性粒子を製造した後、水蒸気などの熱媒体を供給できる予備発泡機を用いて加熱発泡させて熱可塑性樹脂発泡粒子を製造する方法、(5)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出してストランド状の熱可塑性樹脂押出物を製造し、この熱可塑性樹脂押出物を所定間隔毎に切断して熱可塑性樹脂粒子を製造し、それをオートクレーブなどで発泡剤を含浸させ発泡性粒子を製造した後、水蒸気などの熱媒体を供給できる予備発泡機を用いて加熱発泡させて熱可塑性樹脂発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
【0060】
次に、上記熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法の一例について説明する。
先ず、熱可塑性樹脂発泡粒子を押出発泡で製造する場合に用いられる製造装置の一例について図を参照しつつ説明する。
ここで、図1は、発泡材を含むポリエステル系樹脂粒子などの熱可塑性樹脂発泡粒子を押出機と、該押出機の前端に取り付けられたノズル金型1とを用いて作製する様子を示したものである。
図2に示したように、ノズル金型1の前端面10には、ノズルの出口部11、11・・・が複数個、同一仮想円A上に等間隔毎に形成されている。
【0061】
そして、ノズル金型1の前端面10におけるノズルの出口部11、11・・・で囲まれた部分には、回転軸2が前方に向かって突出した状態に配設されており、この回転軸2は、後述する冷却部材4を構成する冷却ドラム41の前部41aを貫通してモータなどの駆動部材3に連結されている。
【0062】
更に、上記回転軸2の後端部の外周面には一枚又は複数枚の回転刃5、5・・・が一体的に設けられており、全ての回転刃5は、その回転時には、ノズル金型1の前端面10に常時、接触した状態となる。
なお、回転軸2に複数枚の回転刃5、5・・・が一体的に設けられている場合には、複数枚の回転刃5、5・・・は回転軸2の周方向に等間隔毎に配列されている。
又、図2では、一例として、四個の回転刃5、5・・・を回転軸2の外周面に一体的に設けた場合を示した。
【0063】
そして、回転軸2が回転することによって回転刃5、5・・・は、ノズル金型1の前端面10に常時、接触しながら、ノズルの出口部11、11・・・が形成されている仮想円A上を移動し、ノズルの出口部11、11・・・から押出されたポリエステル系樹脂押出発泡物を順次、連続的に切断可能に構成されている。
【0064】
又、ノズル金型1の少なくとも前端部と、回転軸2とを包囲するように冷却部材4が配設されている。
この冷却部材4は、ノズル金型1よりも大径な正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設された円筒状の周壁部41bとを有する有底円筒状の冷却ドラム41とを備えている。
【0065】
更に、冷却ドラム41の周壁部41bにおけるノズル金型1の外方に対応する部分には、冷却液42を供給するための供給口41cが内外周面間に亘って貫通した状態に形成されている。
冷却ドラム41の供給口41cの外側開口部には冷却液42を冷却ドラム41内に供給するための供給管41dが接続されている。
【0066】
冷却液42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給されるように構成されている。
そして、冷却液42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進む。
そして、冷却液42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却液42によって全面的に被覆された状態となるように構成されている。
【0067】
なお、冷却液42としては、ポリエステル系樹脂発泡粒子を冷却することができれば、特に限定されず、例えば、水、アルコールなどが挙げられるが、使用後の処理を考慮すると、水が好ましい。
【0068】
そして、冷却ドラム41の周壁部41bの前端部下面には、その内外周面間に亘って貫通した状態に排出口41eが形成されている。
排出口41eの外側開口部には排出管41fが接続されている。
ポリエステル系樹脂発泡粒子及び冷却液42を連続的に排出口41eを通じて排出できるように構成されている。
【0069】
熱可塑性樹脂と、好ましくは架橋剤とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して熱可塑性樹脂を好ましくは架橋剤によって架橋した後、押出機の前端に取り付けたノズル金型1から熱可塑性樹脂を押出発泡させて得られた押出発泡物を回転刃5によって切断し熱可塑性樹脂粒子を製造することができる。
【0070】
前記化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
なお、化学発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0071】
前記物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。
なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0072】
前記樹脂発泡体の表面に部分的に又は全面的に積層される繊維強化樹脂材は、その形成に道いられる繊維が特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。
なかでも繊維強化樹脂材の繊維は、優れた機械的強度及び耐熱性を有していることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
【0073】
繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として繊維強化樹脂材の形成に用いられることが好ましい。
強化繊維基材としては、繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。
織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
【0074】
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。
複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材などが用いられる。
なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0075】
上記(1)の積層強化繊維基材において、織物を複数枚、積層してなる積層強化繊維基材の場合、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向が織物の平面方向からみて放射状に配列されていることが好ましい。
具体的には、図3及び図4に示したように、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向をそれぞれ1a、1b・・・としたとき、これら経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・が放射状に配列されていることが好ましく、経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・のうちの任意の経糸(緯糸)の長さ方向1aを特定したとき、特定の経糸(緯糸)の長さ方向1aを中心にして他の経糸(緯糸)の長さ方向1b、1C・・・が線対称となるように配列していることがより好ましい。
【0076】
また、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・どうしの交差角度は、繊維強化樹脂材の強度が一方向に偏らず任意の方向において略同一の機械的強度を付与することができるので、織物を二枚重ね合わせる場合には90°が好ましく、織物を三枚以上重ね合わせる場合には45°が好ましい。
【0077】
上記(2)の積層強化繊維基材において、各繊維基材を構成している繊維束の繊維の長さ方向が繊維基材の平面方向からみて放射状に配列されていることが好ましい。
具体的には、図3及び図4に示したように、各繊維基材を構成している繊維束の繊維の長さ方向をそれぞれ1a、1b・・・としたとき、これら繊維の長さ方向1a、1b・・・が放射状に配列されていることが好ましく、繊維の長さ方向1a、1b・・・のうちの任意の長さ方向1aを特定したとき、特定の長さ方向1aを中心にして線対称となるように他の長さ方向1b、1c・・・が配列していることがより好ましい。
【0078】
また、各繊維基材を構成している繊維束の繊維の長さ方向1a、1b・・・どうしの交差角度は、繊維強化樹脂材の強度が一方向に偏らず任意の方向において略同一の機械的強度を付与することができることから、繊維基材を二枚重ね合わせる場合には90°が好ましく、繊維基材を三枚以上重ね合わせる場合には45°が好ましい。
【0079】
繊維強化樹脂材は、例えば、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸させてなるものが採用可能である。
熱可塑性樹脂を含浸させることによって、強化繊維どうしが接着一体化され、繊維強化樹脂材は、通常、強化繊維基材単体や、樹脂単体によりも優れた強度を有している。
強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
前記樹脂発泡体との接着性又は繊維強化樹脂材を構成している強化繊維どうしの接着性に優れていることから、ポリエステル樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。
また、繊維強化樹脂材の主たる樹脂は、後述するような理由から、熱可塑性ポリウレタン樹脂などの熱可塑性エラストマーであってもよい。
ここで繊維強化樹脂材の「主となる樹脂」とは、強化繊維を除いた部分において最も高い質量割合で含まれている樹脂を意味する。
なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0080】
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物どうしの重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。
具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。
なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0081】
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0082】
前記ポリアミド樹脂としては、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2・2・4−または2・4・4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1・3−または1・4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミンのような脂肪族、脂環族、芳香族等のジアミンとアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸のような脂肪族、脂環族、芳香族等のジカルボン酸とから製造されるポリアミド樹脂、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のようなアミノカルボン酸から製造されるポリアミド樹脂、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタムのようなラクタムから製造されるポリアミド樹脂およびこれらの成分からなる共重合ポリアミド樹脂、これらポリアミド樹脂の混合物等が例示されるが、これに限定されるものではない。
具体的にはポリカプラミド(ポリアミド6)、ポリドデカノアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド6・6)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ポリアミド6・9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド6・10)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(ポリアミド6・12)、ポリキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリフェニレンフタラミド、ポリアミド6/6・6、ポリ(キシリレンアジパミド/ヘキサメチレンアジパミド)等が挙げられる。
【0083】
繊維強化樹脂材は、熱可塑性樹脂とともに熱硬化性樹脂を含有していても良い。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂を予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、弾性率及び耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0084】
繊維強化樹脂材中における強化用の樹脂の含有量は、20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
強化用樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維どうしの接着性や、繊維強化樹脂層と芯材との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチック層の機械的強度や、繊維強化複合体の機械的強度又は衝撃吸収性を十分に向上させることができない虞れがある。
又、強化用樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化樹脂層の機械的強度が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。
【0085】
繊維強化樹脂材の厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。
厚みが上記範囲内である熱可塑性樹脂繊維強化材は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
【0086】
繊維強化樹脂材の目付は、50〜4000g/mが好ましく、100〜1000g/mがより好ましい。
繊維強化樹脂材の目付が上記範囲内であることで、繊維強化複合体は、繊維強化樹脂層が軽量で強度に優れた状態とされ得る。
【0087】
繊維強化樹脂材中に合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)前記繊維基材を合成樹脂中に浸漬して該繊維基材に合成樹脂を含浸させる方法、(2)前記繊維基材に合成樹脂を塗布し、該繊維基材に合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。
【0088】
なお、前記繊維基材や、該繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化樹脂材は市販されているものを用いることができる。
前記繊維基材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィル」にて市販されているものなどが挙げられる。
前記繊維強化樹脂材は、例えば、長瀬ケムテック社から商品名「NNGF60−03s」にて市販されているものなどが挙げられる。
【0089】
繊維強化複合体を製造するには、図5に示したように、樹脂発泡体6の表面に、繊維強化樹脂材7を積層して積層体Mを形成するとともに樹脂発泡体6と繊維強化樹脂材7とを熱融着させる工程(積層工程)を実施する。
該積層工程においては、樹脂発泡体の表層部のみを選択的に加熱し、樹脂発泡体の表面を該樹脂発泡体の中心部よりも高温に加熱する発泡体加熱工程と、繊維強化樹脂材を加熱する繊維強化材加熱工程とを実施した後に、樹脂発泡体の加熱面と繊維強化樹脂材の加熱面とを所定の圧力で当接させてこれらを熱融着させる融着工程を実施する。
【0090】
発泡体加熱工程や 繊維強化材加熱工程は、ヒーターなどの加熱装置を用いて実施可能である。
該繊維強化材加熱工程や前記発泡体加熱工程に用いられる加熱装置としては、例えば、
赤外線ヒーター、カーボンヒーター、熱風乾燥機、加熱板などが使用できる。
ここで発泡体加熱工程で樹脂発泡体の表面のみを選択的に加熱するためには加熱板を使用することが好ましい。
なお、加熱された繊維強化樹脂材を加熱板として使用し、該繊維強化樹脂材を樹脂発泡体に積層し、該繊維強化樹脂材からの熱伝達によって樹脂発泡体の表面のみを選択的に加熱させるようにしてもよい。
【0091】
この繊維強化樹脂材を加熱板として使用する場合、発泡体加熱工程のために特別な装置を設ける必要性がない。
また、この場合、繊維強化樹脂材を樹脂発泡体との熱融着が可能な温度以上に加熱しておいて、繊維強化樹脂材と樹脂発泡体との間に所定以上の圧力を作用させることで前記融着工程を発泡体加熱工程と同時並行的に実施することができる。
従って、繊維強化樹脂材を加熱板として使用する場合、繊維強化複合体の製造に要する装置が大掛かりになることを防止できるとともに繊維強化複合体の製造工程を簡略化させ得る。
【0092】
また、前記融着工程は、加圧装置によって繊維強化複合体に所望の形状を付与する成形工程と並行実施させることができる。
該加圧装置としては、一般的な熱プレスを採用することができる。
即ち、前記融着工程は、例えば、図6に示すような熱プレス装置を用いて実施することができる。
図6に示すような熱プレス装置を用いた成形工程では、例えば、シート状の繊維強化樹脂材を角柱状の樹脂発泡体の周囲に巻き付ける形で積層した積層体Mを用意し、積層体Mよりも僅かに大きな内部空間を有する雌型Bxに積層体Mを配設した後に前記雌型Bxの内部空間の上方開口を雄型Byで閉止し、これらの金型Bを熱プレスの上下熱板P1,P2間に挟み込み、該金型を介して積層体Mに圧力を加え繊維強化複合体を作製することができる。
なお、樹脂発泡体の主となる樹脂のガラス転移点以下の温度における樹脂発泡体の圧縮応力を「A(MPa)」とした場合、繊維強化複合体は、「A±1(MPa)」の範囲にて積層体Mをプレス成形し、繊維強化樹脂材の積層界面から中心部に向けて深さ2mmまでの範囲の見掛け密度が0.1〜1.5g/cmとなるように熱プレスして作製されることが好ましい。
繊維強化樹脂材と樹脂発泡体との積層体Mをプレス成形する際の圧力については、樹脂発泡体の主たる樹脂のガラス転移点温度以下での樹脂発泡体の圧縮応力を参考にして決定することが好ましい。
樹脂発泡体の主たる樹脂のガラス転移点温度は、低すぎると繊維強化樹脂材が急激に冷却されて表面性が低下してしまい、高すぎると繊維強化樹脂材の冷却に時間がかかり生産サイクルが低下することから、40〜150℃であることが好ましく、50〜100℃がより好ましい。
プレス成形時の圧力は、低すぎると繊維強化樹脂材と樹脂発泡体との一体性が低くなり、高すぎると、樹脂発泡体が圧縮されてしまい、所望の成形品を得ることが出来なくなるおそれを有する。
そのため、プレス成形圧力は、前記圧縮応力(A)に対して所定の範囲内であることが好ましく、具体的には、0.1MPa〜(A+1MPa)の範囲内であることが好ましく、0.2MPa〜(A+0.8MPa)の範囲内であることが特に好ましい。
なお、このような熱プレスを利用する方法に代えて、例えば、図7に示すようなオートクレーブ式の加圧装置を用いて実施することができる。
図7に示すような静水圧プレスによる成形工程では、例えば、シート状の繊維強化樹脂材を角柱状の樹脂発泡体の周囲に巻き付ける形で積層した積層体Mを用意し、積層体Mよりも僅かに大きなキャビティB1を有する金型Bに積層体Mを配設した後にキャビティB1を閉止し、更に金型Bを包囲するようにリリースフィルムCを金型Bの外面に巻き付けるなどして積層した上で、リリースフィルムC上に更にブリーザークロスDを巻き付け、これを袋状にしたバギングフィルムEに収容し、該バギングフィルム内の空間部Hを減圧するとともに該バギングフィルム外のオートクレーブ内の空間を加圧状態にすることで、繊維強化複合体を角柱状に成形することができる。
このとき、例えば、繊維強化樹脂材をあらかじめ加熱された状態にしておけば、この成形工程と前記融着工程とは、並行実施させることができる。
【0093】
繊維強化樹脂材を加熱板として使用する発泡体加熱工程は、樹脂発泡体の材質などにもよるが、樹脂発泡体がポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、該ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点を「Tm(℃)」とした場合、前記繊維強化樹脂材による樹脂発泡体の加熱温度を(Tm+5)℃〜(Tm+100)℃の範囲内とすることが好ましい。
このとき樹脂発泡体を形成しているポリエチレンテレフタレート樹脂の融点を超えた表面温度を有する繊維強化樹脂材が樹脂発泡体に当接され、しかも、繊維強化樹脂材と樹脂発泡体との間に圧力が加えられることでこれらの熱融着が行われる。
前記熱融着に際しては、繊維強化樹脂材との当接によって樹脂発泡体全体が圧縮されてしまうことを防止するとともに繊維強化樹脂材と樹脂発泡体との接触面に強い圧力を作用させることが好ましい。
このことから樹脂発泡体の中心部は、ある程度以下の温度を保っていることが好ましい。
具体的には、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移点を「Tg1(℃)」とした場合、樹脂発泡体の中心部は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移点以下、好ましくは(Tg1−5(℃))以下の温度とすることが好ましい。
【0094】
また、前記樹脂発泡体がアクリル樹脂製で、該アクリル樹脂のガラス転移温度を「Tg2(℃)」とした場合、前記熱融着は、前記樹脂発泡体の前記表面の温度を(Tg2+50)℃〜(Tg2+150)℃とし且つ前記中心部の温度を前記ガラス転移点(Tg2)以下として実施することが好ましい。
【0095】
なお、ここでガラス転移温度及び融点(発熱ピーク温度)については、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定される値を意図している。
但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下のように行う。
示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、試料を30℃から−40℃まで降温した後に10分間に亘って保持した後、試料を−40℃から290℃まで昇温(1st Heating)し290℃に10分間に亘って保持した後に290℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間に亘って保持した後に−40℃から290℃まで昇温(2nd Heating)しDSC曲線を得る。
なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。
得られた曲線の変曲点をガラス転移温度とし、発熱ピークトップの温度を発熱ピーク温度(融点)とする。
なお、示差走査熱量分析計としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量分析計を用いることができる。
【0096】
前記のような温度条件に樹脂発泡体の表面を加熱しようとした場合、通常、繊維強化樹脂材を同じ温度に加熱する必要がある。
繊維強化樹脂材に含有させる熱可塑性樹脂として前記温度において過度に低粘度となる樹脂を選択すると融着工程に際して繊維強化樹脂材の繊維を表面露出させたりしてしまうおそれがある。
例えば、図6に示したような方法で繊維強化樹脂材と樹脂発泡体との融着を実施した場合、繊維強化樹脂材に含まれている熱可塑性樹脂が低粘度である場合、この熱可塑性樹脂の多くが繊維強化樹脂材の外部に排出されてしまい熱融着後の繊維強化樹脂層に熱可塑性樹脂が不足する状態となり得る。
このようなことから、繊維強化樹脂材に含有させる熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂製やアクリル樹脂製の樹脂発泡体の表面を前記のような温度に加熱するために必要な温度条件においてある程度以上の粘度を有することが好ましい。
このような高い温度域で一般的なポリエステル樹脂やアクリル樹脂に比べて高い粘度を発揮する点において、繊維強化樹脂材に含有させる熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーが好ましい。
なかでも、繊維強化樹脂材に含有させる熱可塑性エラストマーは、樹脂発泡体をポリエステル樹脂製やアクリル樹脂製とする場合を考慮し、これらの樹脂への親和性を考慮すると熱可塑性ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0097】
なお、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂は、上記のように高温においても高い粘度を示すために、繊維強化樹脂材の形成に際して強化繊維基材に対して十分に含浸させることが難しい。
即ち、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む繊維強化樹脂材は、気泡を内在させ易い。
この繊維強化樹脂材内の気泡は、オートクレーブによる成形時において、繊維強化樹脂材と金型Bとの界面などに空気溜まりを形成させる原因となり得る。
この空気溜まりは、得られる繊維強化複合体に対して、外観不良や強度不足などの問題を生じさせるおそれがあることから、成形時に際しては樹脂発泡体側からの押圧力を繊維強化樹脂材に対して十分に作用させることが好ましい。
【0098】
このような点において、樹脂発泡体は、成形時に高い膨張圧力を発揮する状態となっていることが好ましい。
即ち、前記樹脂発泡体は、繊維強化樹脂材との間に高い圧力を作用させるために、20%の寸法変化を示す加熱温度において0.1〜20mN/mmの膨張圧力を示すことが好ましい。
言い換えれば、樹脂発泡体に圧力などが加わらないようにして樹脂発泡体を加熱した際に、当該樹脂発泡体が膨張して20%以上の寸法変化を示す温度を「T20(℃)」とした場合、前記熱プレスなどによる成形時には、繊維強化樹脂材が熱融着される樹脂発泡体の表面を「T20(℃)」以上に加熱することが好ましい。
【0099】
また、本実施形態においては、樹脂発泡体の中心部が表面よりも低い温度となっている状態で当該樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との熱融着を実施する。
そのため、得られる繊維強化複合体の芯材は、その中心部から繊維強化樹脂層との積層界面に向かう方向において、気泡の形状がある程度の領域までは比較的安定しており、前記積層界面付近において急に横広がり状態へと変化する状態となる。
即ち、中心部まで十分な加熱がなされた状態で樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との熱融着を実施すると、この熱融着時の圧力が樹脂発泡体の中心近くにまで作用し易く、得られる繊維強化複合体の芯材は、中心部から繊維強化樹脂層との積層界面に向かう方向において、気泡の形状を早い段階で横広がりに変化させることになる。
これに対して本実施形態の繊維強化複合体は、上記のように積層界面の近傍までは気泡形状が比較的安定し、前記積層界面近傍において大きくその形状を異ならせることになる。
このため本実施形態の繊維強化複合体は、強度などにおいて優れた特性が発揮されることになる。
【0100】
なお、繊維強化複合体は、上記のような観点から、熱融着されている前記樹脂発泡体と前記繊維強化樹脂材との界面から前記樹脂発泡体(芯材)の中心部までの距離を「D(mm)」とし、前記界面から前記中心部に向けて「D/2.5(mm)」深さまでを前記樹脂発泡体の第1領域とし、前記中心部から前記第1領域までの間を前記樹脂発泡体の第2領域とした際に下記式(1)によって求められる前記樹脂発泡体の気泡の平均アスペクト比が前記第1領域において0.1以上0.5以下であり、且つ前記第2領域において0.7以上1.0以下であることが好ましい。

平均アスペクト比 = D2/D1 ・・・(1)

(但し、式中のD1は、樹脂発泡体を中心部に向けて切断した断面において観察される気泡の長径であり、D2は、該気泡の長径(D1)に直交する方向における短径である。)
【0101】
なお、前記第1領域と前記第2領域とにおける気泡の平均アスペクト比の好ましい関係は、少なくとも繊維強化複合体の一部において成立していれば、当該箇所においてその効果が発揮されることになる。
しかし、第1領域の平均アスペクト比と第2領域の平均アスペクト比とを上記に示した比率とすることで発揮される高強度化に係る効果は、広範囲において発揮させることが好ましい。
したがって、繊維強化複合体は、繊維強化樹脂材で覆われている部分の50%以上において、第1領域の平均アスペクト比が0.1以上0.5以下で、第2領域の平均アスペクト比が0.7以上1.0以下となっていることが好ましく、繊維強化樹脂材による被覆領域の80%以上がこのような状態になっていることが特に好ましい。
なかでも、繊維強化樹脂材が平坦な状態になっている部分は、その50%以上において、第1領域の平均アスペクト比が0.1以上0.5以下で、第2領域の平均アスペクト比が0.7以上1.0以下となっていることが好ましく、80%以上がこのような状態になっていることが特に好ましい。
なお、前記第1領域と前記第2領域とにおける気泡の平均アスペクト比が好ましい状態になっているかどうかについては、例えば、繊維強化樹脂材が平坦な状態になっている領域に対して次のような測定を実施して確認することができる。
【0102】
(平均アスペクト比の確認方法)
まず、繊維強化複合体を芯材の気泡が変形しないように注意しつつ厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡を用いて200倍で撮影する。
次に、これにより得られた撮影像において、前記第1領域の気泡を無作為に30個選択し、各気泡についてアスペクト比を測定し、その相加平均値を平均アスペクト比とする。
また、前記第2領域の気泡も無作為に選択した30個の気泡についてアスペクト比を測定し、その相加平均値を平均アスペクト比とする。
なお、「アスペクト比」とは、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径を長径で除することにより得られた値とする。そして、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。
また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。
なお、繊維強化樹脂材が平坦な状態になっている領域以外についても上記と同様の方法により平均アスペクト比を測定し得る。
【0103】
前記第1領域で、芯材と繊維強化樹脂層との積層界面から芯材の中心部に向けた方向と直交するする方向に気泡が長く伸びた状態になっているということは、界面近傍のみが強く圧縮されたことを意味する。
即ち、このことは、樹脂発泡体と繊維強化樹脂材とを熱融着させて繊維強化複合体を製造するのに際し、樹脂発泡体と繊維強化樹脂材との間に強い圧力が作用したことを示すものである。
従って、繊維強化複合体には、その製造時に用いた金型の形状が忠実に反映され得る。
即ち、本実施形態に係る繊維強化複合体の製造方法においては、例えば、作製する繊維強化複合体の形状が板状であるような場合に、局所的に本来の厚みよりも薄い部分が形成されたりすることが抑制されることになる。
しかも、本実施形態に係る繊維強化複合体の製造方法においては、熱可塑性樹脂を含んだ樹脂発泡体と繊維強化樹脂材とを熱融着させることで繊維強化複合体が作製されるため、熱硬化性樹脂の硬化反応を利用して樹脂発泡体と繊維強化樹脂材とを接着させる場合などに比べて手軽に効率良く繊維強化複合体を作製することができる。
【0104】
なお、本実施形態においては、繊維強化複合体やその製造方法を上記のように例示しているが、本発明の繊維強化複合体やその製造方法は上記例示に限定されるものではなく、上記例示に対して種々の変更を加え得るものである。
【実施例】
【0105】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、図1及び図2に示した製造装置を用い樹脂発泡粒子を作製した。
先ず、1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(イーストマン社製、商品名「EN099」、融点:238.5℃)100質量部、ポリエチレンテレフタレート樹脂にタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート樹脂含有量:60質量%、タルク含有量:40質量%)1.8質量部及び無水ピロメリット酸0.26質量部を含む1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を口径が65mmで且つL/D比が35の単軸押出機に供給して290℃にて溶融混練した。
【0106】
続いて、押出機の途中から、イソブタン35質量%及びノルマルブタン65質量%からなる混合ブタンを1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の総量100質量部に対して0.9質量部となるように溶融状態の1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に圧入して、1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の混合物(以下、単に「変性ポリエチレンテレフタレート樹脂」という)中に均一に分散させた。
【0107】
しかる後、押出機の前端部において、溶融状態の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を280℃に冷却した後、押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型1の各ノズルから変性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を押出発泡させた。
【0108】
なお、マルチノズル金型1は、出口部11の直径が1mmのノズルを20個有しており、ノズルの出口部11が全てマルチノズル金型1の前端面10に想定した直径139.5mmの仮想円A上に等間隔毎に配設されているものを用いた。
【0109】
そして、前記装置としては、回転軸2の後端部外周面に2枚の回転刃5が回転軸2の周方向に180°の位相差でもって一体的に設けられており、各回転刃5がマルチノズル金型1の前端面10に常時、接触した状態で仮想円A上を移動するように構成されるものを用いた。
【0110】
更に、前記装置としては、冷却部材4が、正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設され且つ内径が320mmの円筒状の周壁部41bとからなる冷却ドラム41を備えているものを用いた。
そして、供給管41d及び冷却ドラム41の供給口41cを通じて冷却ドラム41内に20℃の冷却水42を供給して前記樹脂発泡粒子を作製した。
なお、冷却ドラム41内の容積は17684cmであった。
【0111】
供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって冷却水42を冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進行させ、該冷却水42を、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却水42によって全面的に被覆された状態とさせた。
【0112】
そして、マルチノズル金型1の前端面10に配設した回転刃5を2500rpmの回転数で回転させて、マルチノズル金型1の各ノズルの出口部11から押出発泡された変性ポリエチレンテレフタレート押出物を回転刃5によって切断して略球状の変性ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡粒子を製造した。
変性ポリエチレンテレフタレート押出物は、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の状態を維持している未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。
そして、変性ポリエチレンテレフタレート押出物は、ノズルの出口部11の開口端において切断されており、変性ポリエチレンテレフタレート押出物の切断は未発泡部において行われていた。
【0113】
なお、上述の型内発泡成形用変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子の製造にあたっては、先ず、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付けず且つ冷却部材4をマルチノズル金型1から退避させておいた。
この状態で、押出機から変性ポリエチレンテレフタレート押出物を押出発泡させ、変性ポリエチレンテレフタレート押出物が、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなることを確認した。
次に、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付け且つ冷却部材4を所定位置に配設した後、回転軸2を回転させ、変性ポリエチレンテレフタレート押出物をノズルの出口部11の開口端において回転刃5で切断して変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子を製造した。
【0114】
この変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子は、回転刃5による切断応力によって外方或いは前方に向かって飛ばされ、冷却部材4の冷却ドラム41の内面に沿って流れている冷却水42にこの冷却水42の流れの上流側から下流側に向かって冷却水42を追うように冷却水42の表面に対して斜交する方向から衝突し、変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子は冷却水42中に進入して直ちに冷却された。
【0115】
冷却された変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子は、冷却ドラム41の排出口41eを通じて冷却水42と共に排出された後、脱水機にて冷却水42と分離された。
【0116】
変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子は、嵩密度が0.14g/cmであった。
【0117】
金型(雄金型と雌金型)を備えた型内発泡成形機を用意した。
雄金型と雌金型とを型締めした状態において、雌雄金型間には内法寸法が縦30mm×横400mm×高さ50mmの直方体形状のキャビティが形成されていた。
【0118】
型内発泡成形機の金型のキャビティ内に変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子を充填して金型を型締めした。
しかる後、水蒸気を一方の金型からキャビティ内に導入し、他方の金型に通過させる一方加熱工程において0.03MPaのゲージ圧力の水蒸気にて変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子を30秒間に亘って加熱し、次に、水蒸気を両方の金型からキャビティ内に導入し、キャビティ内に供給した水蒸気を排出しない両面加熱工程において変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子を0.03MPaのゲージ圧力の水蒸気にて30秒間に亘って加熱して変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子を二次発泡させ、変性ポリエチレンテレフタレート発泡粒子を二次発泡させて得られた発泡粒子どうしをこれらの発泡圧力によって、発泡粒子同士の一部を熱融着させた後に水蒸気の供給だけを止めて金型を大気放冷させる3秒間の保熱工程を経て、縦30mm×横400mm×厚み50mmの直方体形状の発泡体を得た。
【0119】
炭素繊維からなる織物から形成された強化繊維樹脂材(BOND LAMINATES社製、商品名「TEPEX dynalite108」、強化用合成樹脂:熱可塑性ポリウレタン(TPU)、目付:400g/m、厚み:0.5mm)を2枚、用意した。
繊維強化樹脂材には、熱可塑性樹脂としてTPU樹脂が45質量%含有されていた。
この繊維強化樹脂材を構成している強化繊維基材は、経糸の長さ方向が順次0°、90°となるようにあらかじめ重ね合わせて厚み0.5mmとしている。
【0120】
用意した繊維強化樹脂材を2枚、赤外線ヒーターにて280℃で10秒間加熱を行った。
この加熱状態の2枚の繊維強化樹脂材で、樹脂発泡体を厚み方向上下から挟み、下から順に、繊維強化樹脂層/芯材/繊維強化樹脂層の積層順となる積層体を作製した。
なお、加熱された繊維強化樹脂材を樹脂発泡体に積層することにより、上記樹脂発泡体の表面のみが熱伝導によって加熱されることになる。
【0121】
次に、樹脂発泡体のガラス転移点温度以下の70℃に金型温度を設定したプレス機の金型に積層体を配し、積層体を0.6MPaの押圧にてプレスを行った。
繊維強化樹脂材を積層した面を主表面をとした樹脂発泡体は、繊維強化樹脂材からの熱伝導により表面が柔軟になっているので、積層した面を主表面をとした発泡体の厚み方向から深さ2mmまでの発泡体密度が0.25g/cmとなるように発泡体表面を1分間圧縮し、熱可塑性繊維強化複合体を取り出した。
【0122】
(厚み均一性)
繊維強化複合体の任意の15カ所の厚みを測定し、下記基準に基づいて評価した。
厚み均一性(%)=100×(最大厚み−最小厚み)/平均厚み

○・・・10%未満であった。
△・・・10%以上で且つ20%未満であった。
×・・・20%以上であった。
【0123】
(軽量化効果)
得られた熱可塑性繊維強化複合体は、成形により発泡体を圧縮しているので、熱可塑性繊維強化複合体の軽量化効果を下記の基準に基づいて評価した。
軽量化効果(%)=100×(可塑性繊維強化複合体成形後発泡体厚み/発泡体厚み)

○・・・80%以上であった。
△・・・60%以上で且つ80%未満であった。
×・・・60%未満であった。
【0124】
(樹脂発泡体の気泡観察)
繊維強化複合体を厚み方向に切断し、断面を電子顕微鏡により観察した。
そして、樹脂発泡体の第1領域、及び、第2領域における気泡の平均アスペクト比を測定した。
また、樹脂発泡体の第1領域、及び、中心部の見掛け密度を前記の方法によって測定した。
【0125】
(実施例2〜4、6〜9、参考例1〜3)
その他の実施例、参考例については、実施例1と同様に表のように実施した。
なお、実施例5、参考例4においては、樹脂発泡体の作製を以下のように実施した。
【0126】
(実施例5、参考例4)
変性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の代わりに、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(スチレン単位:45.9質量%、メタクリル酸メチル単位:21.5質量%、無水マレイン酸単位:32.6質量%、電気化学工業社製、商品名「レジスファイR100」、ガラス転移温度Tg:140.7℃)100質量部、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(スチレン単位:45.9質量%、メタクリル酸メチル単位:21.5質量%、無水マレイン酸単位:32.6質量%、電気化学工業社製 商品名「レジスファイR200」、ガラス転移温度Tg:140.7℃)にタルクを含有させてなるマスターバッチ(スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体含有量:60質量%、タルク含有量:40質量%)1.8質量部及び無水ピロメリット酸0.26質量部を含むスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体樹脂組成物を単軸押出機に供給して発泡粒子を作製し、樹脂発泡体を作製した。
それ以外は表の通りに、繊維強化複合体を製造した。
なお、表において、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体は、「アクリル」と表記した。
【0127】
以上の結果を、表1に示す。
【表1】
【0128】
このことからも、本発明によれば、寸法精度に優れた繊維強化複合体を容易に製造可能な製造方法が提供され得ることがわかる。
【符号の説明】
【0129】
6:樹脂発泡体
7:繊維強化樹脂材
B:金型
C:リリースフィルム
D:ブリーザークロス
E:バギングフィルム
F:封止材
G:バックバルブ
H:空間部
M:積層体
P1,P2:熱板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7