特許第6244283号(P6244283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244283
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】エレベータの地震訓練運転システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20171127BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20171127BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20171127BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B66B5/02 P
   B66B5/00 G
   B66B3/00 Q
   G09B9/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-194074(P2014-194074)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-64883(P2016-64883A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮一
(72)【発明者】
【氏名】金 政和
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−215019(JP,A)
【文献】 特開2012−162359(JP,A)
【文献】 特開2014−172723(JP,A)
【文献】 特開2000−242322(JP,A)
【文献】 特開2012−201504(JP,A)
【文献】 特開2001−261250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/02
B66B 3/00 − 3/02
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震発生時を想定した訓練用のエレベータの運転を行うエレベータの地震訓練運転システムにおいて、
前記訓練用の前記エレベータの運転が実行されるスケジュールを設定するスケジュール設定部と、
前記スケジュール設定部によって設定された前記スケジュールに従って、前記エレベータの運転を通常運転から前記訓練用の地震管制運転に切替える制御を行う制御装置と、を備え
前記スケジュールは、所定の日付及び時刻以降に前記訓練用の前記エレベータの運転を実行させる予定日時情報と、前記訓練用の前記エレベータの運転を即時に実行させる即時実行情報と、を含み、
前記スケジュール設定部は、通信回線を介して接続され、前記スケジュールの入力を行う機能を有する端末装置に含まれる
ことを特徴とするエレベータの地震訓練運転システム。
【請求項2】
請求項に記載のエレベータの地震訓練運転システムにおいて、
前記制御装置に接続され、地震の揺れを検出して動作する地震計を備え、
前記制御装置は、
前記地震計が動作していないときに、前記スケジュール設定部によって設定された前記スケジュールに従って前記エレベータの運転を前記通常運転から前記訓練用の地震管制運転に切替え、
前記エレベータの運転を前記訓練用の地震管制運転に切替えてから所定の時間が経過した後に前記地震計が動作している場合には、前記訓練用の地震管制運転を継続する
ことを特徴とするエレベータの地震訓練運転システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベータの地震訓練運転システムにおいて、
前記エレベータは、
昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごに設けられ、前記制御装置によって前記エレベータの運転が前記通常運転から前記訓練用の地震管制運転に切替えられたとき、地震発生に対する訓練が実施されている旨を報知する報知部とを含む
ことを特徴とするエレベータの地震訓練運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時を想定した訓練用のエレベータの運転を行うエレベータの地震訓練運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の利用者に対して行われる地震等の災害や火事を模擬した訓練においては、利用者はエレベータを利用せずに階段を利用して避難する。一方、エレベータを利用している間に地震が発生したことを想定する訓練を実施するためには、エレベータに接続された地震計を動作させてエレベータの運転を行う必要があった。
【0003】
そこで、このような状況を考慮して訓練を実施する従来技術の1つとして、エレベータの運転制御を行うエレベータ運転制御装置と、乗場に設置され、乗りかご呼び登録を検出する乗場呼び検出装置と、乗りかご内に設置され、利用者の呼び登録を検出する乗りかご呼び検出装置と、エレベータ運転制御装置に接続され、擬似的な火災検出信号を発生する模擬火災検出信号発生装置とを備えたエレベータ救助運転訓練システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−162359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のエレベータ救助運転訓練システムが開示された特許文献1には、火災のみならず、地震等の災害による非常事態に適用可能である旨が記載されているが、通常、消防士がエレベータに対して救助運転における操作を行うので、エレベータに関する専門的な知識の習得が必要となる。また、救助運転が完了しなければ、エレベータの運転が通常運転に復帰されないので、万一、訓練の途中で救助運転の操作が分からなくなった場合に、当該操作に関してエレベータの保守会社に問い合わせる等の手間がかかる。従って、従来技術のエレベータ救助運転訓練システムは、地震発生時を想定した1回の体験や訓練に対して長時間を要することが問題になっている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、専門的な知識を必要とせず、地震発生時を想定した訓練を容易に実施することができるエレベータの地震訓練運転システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベータの地震訓練運転システムは、地震発生時を想定した訓練用のエレベータの運転を行うエレベータの地震訓練運転システムにおいて、前記訓練用の前記エレベータの運転が実行されるスケジュールを設定するスケジュール設定部と、前記スケジュール設定部によって設定された前記スケジュールに従って、前記エレベータの運転を通常運転から前記訓練用の地震管制運転に切替える制御を行う制御装置と、を備え、前記スケジュールは、所定の日付及び時刻以降に前記訓練用の前記エレベータの運転を実行させる予定日時情報と、前記訓練用の前記エレベータの運転を即時に実行させる即時実行情報と、を含み、前記スケジュール設定部は、通信回線を介して接続され、前記スケジュールの入力を行う機能を有する端末装置に含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエレベータの地震訓練運転システムによれば、専門的な知識を必要とせず、地震発生時を想定した訓練を容易に実施することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るエレベータの地震訓練運転システムの一実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
図2】本実施形態に係る顧客情報データベースに格納された顧客情報の構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る訓練情報データベースに格納された訓練情報の構成を示す図である。
図4】本実施形態に係る顧客PC、監視センタ、監視端末、及びエレベータの各制御処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータの地震訓練運転システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明に係るエレベータの地震訓練運転システムの一実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【0012】
本発明に係るエレベータの地震訓練運転システムの一実施形態は、例えば図1に示すように、建物に設置されたエレベータ1と、このエレベータ1の異常を監視して通報を行う監視端末2と、この監視端末2とインターネット等の通信回線5を介して接続され、監視端末2から通報を受信してエレベータ1を遠隔的に監視する監視センタ3とを備えている。
【0013】
また、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムは、監視センタ3と通信回線5を介して接続され、エレベータ1の保守会社の顧客となる建物のオーナーが所有し、監視センタ3に対してエレベータ1の運転に関する各種の設定を行う端末装置としての顧客PC4を備えている。
【0014】
そして、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムは、地震発生時を想定した訓練用のエレベータ1の運転を行うものである。なお、本実施形態では、図1に示すエレベータ1以外に複数のエレベータが通信回線5に接続されているが、これらの複数のエレベータの構成は図1のエレベータ1と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0015】
エレベータ1は、昇降路6内を昇降する乗りかご7と、一端が乗りかご7に取付けられた主ロープ8と、この主ロープ8の他端が取付けられ、昇降路6内に吊り下げられた釣合い錘9とを含んでいる。
【0016】
また、エレベータ1は、昇降路6の上方に位置する機械室10に設けられ、乗りかご7及び釣合い錘9を駆動する巻上機11と、この巻上機11の近傍に配置されたそらせ車12と、乗りかご11の内壁に設けられ、乗りかご11の昇降動作やドア(図示せず)の開閉動作の操作を行う操作盤13と、機械室10に設けられ、当該エレベータ1の運転を制御する制御装置14と、この制御装置14に接続され、地震の揺れを検出して動作する地震計15と、乗りかご7内の利用者に対して各種の情報を報知する報知部16とを含んでいる。
【0017】
巻上機11は、主ロープ8が巻き掛けられた駆動シーブ11Aと、この駆動シーブ11Aを回転させる電動機11Bと、駆動シーブ11Aの回転を制動するブレーキ装置(図示せず)とを有している。地震計15は、例えば、昇降路6の下部に設置され、地震の震度が所定値以上であるときに動作し、その地震の揺れを検出したことを示す地震検出信号を制御装置14へ送信する。
【0018】
制御装置14は、図示しないテールコードを介して操作盤13に接続されると共に、巻上機11の電動機11Bに接続されており、操作盤13の操作や乗場17に設置された乗場釦(図示せず)の操作に応じて、巻上機11の電動機11Bを駆動することにより、乗りかご7を釣合い錘9に対して相対的に昇降させるようにしている。
【0019】
また、制御装置14は、地震計15から地震検出信号を受信すると、エレベータ1の運転を通常運転から地震管制運転へ切替える。これにより、乗りかご7が通常運転の速度よりも低速で最寄階の乗場17へ走行し、乗りかご7が当該最寄階の乗場17に到着してドアを開放した後、エレベータ1の運転は休止状態となる。なお、地震発生時を想定した訓練用のエレベータ1の運転に関する制御装置14の機能の構成については、後で詳細に述べる。
【0020】
報知部16は、例えば、乗りかご7に設けられ、文字と画像を含む映像により情報を表示する液晶ディスプレイ16Aと、乗りかご7に設けられ、音声や信号音を発するスピーカ16Bとから構成されている。
【0021】
監視端末2は、制御装置14に通信接続され、制御装置14から受信した各種の信号を処理する処理装置21と、通信回線5に接続され、この通信回線5を介して監視センタ3と通信を行う通信装置22とを含んでいる。
【0022】
処理装置21は、例えば図示しないが、エレベータ1の異常を監視するための各種の処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによる処理を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置と、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)とを含むハードウェアから構成されている。
【0023】
また、処理装置21は、制御装置14によるエレベータ1の制御指令の内容を示すエレベータ制御情報を読出し、このエレベータ制御情報に基づいて、エレベータ1の異常の有無を検出する。そして、処理装置21は、エレベータ1の異常を検出すると、通信装置22及び通信回線5を経由し、その旨を監視センタ3へ通報する。さらに、処理装置21は、制御装置14に対してエレベータ1の制御指令を送信する機能を有している。通信装置22は、監視センタ3との間で各種の信号の送受信を行う通信インターフェースとして機能する。
【0024】
顧客PC4は、例えば、図示しないが、ユーザーが操作するマウスやキーボード等の操作装置、及び映像を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置を含んでおり、当該操作装置の操作を通じてユーザーによる後述のスケジュール等の入力を受け付けたり、表示装置の映像を通じてエレベータ1の運転に関する各種の情報をユーザーに提供したりするユーザーインターフェースとして機能する。
【0025】
本実施形態では、顧客PC4は、訓練用のエレベータ1の運転が実行されるスケジュールを設定するスケジュール設定部4Aを含んでいる。このスケジュール設定部4Aによって設定されるスケジュールには、後述するように、所定の日付及び時刻以降に訓練用のエレベータ1の運転を実行させる予定日時情報と、訓練用のエレベータ1の運転を即時に実行させる即時実行情報とがスケジュール実行区分として区分けされて含まれている(図3参照)。
【0026】
監視センタ3は、通信回線5に接続され、この通信回線5を介して監視端末2及び顧客PC4と通信を行う通信装置31と、この通信装置31に接続され、監視端末2及び顧客PC4から受信した各種の信号や情報を処理する処理装置32と、この処理装置32に対して各種の入力操作を行う操作卓33と、顧客情報を格納する顧客情報データベース34と、地震発生時を想定した訓練に関する訓練情報を格納する訓練情報データベース35とを含んでいる。なお、監視センタ3は、例えば、エレベータ1を定期的に保守・管理する上述のエレベータ1の保守会社内に設置されている。
【0027】
通信装置31は、監視端末2及び顧客PC4との間で各種の信号の送受信を行う通信インターフェースとして機能する。処理装置32は、例えば図示しないが、エレベータ1を遠隔的に監視するための各種の処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによる処理を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置と、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)とを含むハードウェアから構成されている。
【0028】
処理装置32は、監視端末2がエレベータ1の異常を監視して通報を行うための初期設定を行ったり、エレベータ1の運転状態等を示すエレベータ1の稼働情報を監視端末2から収集して管理したりする機能を有している。また、処理装置32は、顧客PC4のスケジュール設定部4Aによって設定されたスケジュールから訓練情報を作成して登録するスケジュール登録部32Aを有している。
【0029】
操作卓33は、監視センタ3内のユーザーが操作するマウスやキーボード等の操作装置、及び映像を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置を含むパソコンから構成されており、このパソコンの操作装置の操作を通じてユーザーの入力を受け付けたり、表示装置の映像を通じて顧客情報データベース34及び訓練情報データベース35にそれぞれ格納された情報等をユーザーに提供したりするユーザーインターフェースとして機能する。
【0030】
ここで、新設の建物にエレベータ1が設置されると、顧客である建物のオーナーとエレベータ1の保守会社との間でエレベータ1の保守・管理に関する保守契約が結ばれる。そして、エレベータ1の保守会社によってエレベータ1に監視装置2が設置された後、エレベータ1の保守会社内で待機している作業員が監視センタ3の操作卓33を操作することにより、顧客情報を作成して顧客情報データベース34に登録する。
【0031】
一方、エレベータ1の保守会社は、地震発生時を想定した訓練用のエレベータ1の運転を実行するために、保守契約を結んだ建物のオーナーが自分の顧客PC4から通信回線5を介して監視センタ3に接続するのに必要なユーザーIDとパスワードを当該建物のオーナーに対して発行する。
【0032】
処理装置32のスケジュール登録部32Aは、建物のオーナーが顧客PC4の操作装置を操作することにより、顧客PC4から通信回線5を介して受信したユーザーIDとパスワードを用いて当該顧客PC4と監視センタ3との接続の認証を行った後、スケジュール設定部4Aによって設定されたスケジュールを顧客PC4から受信する。そして、スケジュール登録部32Aは、受信したスケジュールに従って訓練情報を作成して訓練情報データベース35に登録する。
【0033】
図2は顧客情報データベース34に格納された顧客情報の構成を示す図である。
【0034】
顧客情報データベース34は、例えば、情報を固定的に記憶するHDD等の記憶装置から構成されている。そして、顧客情報データベース34は、図2に示す顧客情報として、保守契約を結んだ顧客の建物を識別する管理番号34a、顧客の名称を示す顧客名34b、当該建物の郵便番号34c、当該建物の住所34d、当該建物に設置された監視端末2を識別する監視端末識別コード34e、当該監視端末2の電話番号34f、監視センタ3に接続するために顧客に割り当てられた固有の名称を示すユーザーID34g、監視センタ3への接続の認証を得るために入力する文字列を示すパスワード34hの情報を格納している。
【0035】
図3は訓練情報データベース35に格納された訓練情報の構成を示す図である。
【0036】
訓練情報データベース35は、例えば、情報を固定的に記憶するHDD等の記憶装置から構成されている。そして、訓練情報データベース35は、図3に示す訓練情報として、保守契約を結んだ顧客の建物を識別する管理番号35a、顧客の名称を示す顧客名35b、当該建物に設置された監視端末2を識別する監視端末識別コード35c、当該監視端末2の電話番号35d、スケジュール設定部32Aによって設定されたスケジュールに含まれるスケジュール実行区分35e、及び訓練用のエレベータ1の運転を実行させる日付と時刻を示す実行日時35fの情報を格納している。
【0037】
次に、地震発生時を想定した訓練用のエレベータ1の運転に関する制御装置14の機能の構成について詳細に説明する。
【0038】
本実施形態では、制御装置14は、スケジュール設定部4Aによって設定されたスケジュールに基づいて、エレベータ1の運転を通常運転及び訓練用の地震管制運転のいずれかに切替える制御を行う。
【0039】
さらに、制御装置14は、地震計15が動作していないときに、スケジュール設定部4Aによって設定されたスケジュールに従ってエレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に切替え、エレベータ1の運転を訓練用の地震管制運転に切替えてから所定の時間が経過した後に、訓練用の地震管制運転から通常運転に切替えるようにしている。
【0040】
そして、制御装置14は、エレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に切替えたとき、当該訓練が実施されている旨の情報を乗りかご7の液晶ディスプレイ16Aに表示すると共に、当該情報を乗りかご7のスピーカ16Bから出力する。
【0041】
次に、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムにおける訓練用のエレベータ1の運転を実行するための制御処理について、図4のシーケンス図を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図4は顧客PC4、監視センタ3、監視端末2、及びエレベータ1の各制御処理の流れを示すシーケンス図である。
【0043】
図4に示すように、まず建物のオーナー又は管理者は、所有する顧客PC4を操作し、通信回線5を介して監視センタ3に接続してログイン認証を行う(ステップ(以下、Sと記す)1)。このとき、ログインが許可されなければ(S1/NO)、顧客PC4の制御処理を終了する。
【0044】
一方、S1において、ログインが許可されると(S1/YES)、建物のオーナー又は管理者が顧客PC4を操作することにより、地震発生時を想定した訓練用のエレベータ1の運転を実行するためのスケジュール実行区分として、予定日時情報又は即時実行情報を指定する。これにより、顧客PC4のスケジュール設定部4Aは、訓練用のエレベータ1の運転が実行されるスケジュールを設定した後(S2)、通信回線5を介して当該スケジュールを監視センタ3へ送信し、顧客PC4の制御処理を終了する。
【0045】
次に、監視センタ3の処理装置32は、顧客PC4から通信回線5及び通信装置31を介してスケジュールを受信すると、顧客情報データベース34から監視端末2と通信するために必要な情報を取得する。次に、処理装置32のスケジュール登録部32Aは、受信したスケジュールに従って訓練情報を作成して訓練情報データベース35に登録する(S3)。
【0046】
そして、処理装置32は、通信装置31及び通信回線5を介して訓練情報データベース35に格納されている訓練情報のうちスケジュール実行区分35e及び実行日時35fの情報を監視端末2へ送信し(S4)、監視センタ3の制御処理を終了する。
【0047】
監視端末2の処理装置21は、監視センタ3から通信回線5及び通信装置22を介して受信したスケジュール実行区分35eの情報を確認し、このスケジュール実行区分35eにおいて予定日時情報が指定されているかどうかを判断する(S5)。このとき、処理装置21は、スケジュール実行区分35eにおいて予定日時情報が指定されておらず、すなわち即時実行情報が指定されていると判断すると(S5/NO)、後述のS7の制御処理が行われる。
【0048】
一方、S5において、処理装置21は、スケジュール実行区分35eにおいて予定日時情報が指定されていると判断すると(S5/YES)、監視センタ3から通信回線5及び通信装置22を介して受信した実行日時35fの情報を確認する。そして、処理装置21は、現在の時刻が実行日時35fの日付及び時刻以降であるかどうかを判断する(S6)。このとき、処理装置21は、現在の時刻が実行日時35fの日付及び時刻以降でないと判断すると(S6/NO)、S6の制御処理が繰返される。
【0049】
S6において、処理装置21は、現在の時刻が実行日時35fの日付及び時刻以降であると判断すると(S6/YES)、制御装置14から地震計15の動作状態を取得し、地震計15が動作しているかどうかを判断する(S7)。このとき、処理装置21は、地震計15が動作していると判断すると(S7/YES)、訓練用のエレベータ1の運転を実行することなく、監視端末2の制御処理を終了する。一方、処理装置21は、地震計15が動作していないと判断すると(S7/NO)、訓練用のエレベータ1の運転を実行させる旨の訓練用運転制御指令を制御装置14へ送信し(S8)、監視端末2の制御処理を終了する。
【0050】
次に、エレベータ1の制御装置14は、監視端末2から訓練用運転制御指令を受信すると、エレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に切替えることにより、訓練用の地震管制運転を実行する(S9)。そして、制御装置14は、S9において訓練用の地震管制運転を実行してから所定の時間が経過したかどうかを判断する(S10)。このとき、制御装置14は、所定の時間が経過していないと判断すると(S10/NO)、S10の制御処理が繰返される。
【0051】
一方、S10において、制御装置14は、所定の時間が経過したと判断すると(S10/YES)、地震計15の動作状態を取得し、地震計15が動作しているかどうかを判断する(S11)。このとき、制御装置14は、地震計15が動作していると判断すると(S11/YES)、訓練用の地震管制運転から通常運転に切替えることなく、制御装置14の制御処理を終了する。
【0052】
S11において、制御装置14は、地震計15が動作していないと判断すると(S11/NO)、訓練用の地震管制運転から通常運転に切替えた後(S12)、制御装置14の制御処理を終了する。
【0053】
このように構成した本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムによれば、制御装置14は、スケジュール設定部4Aによって設定されたスケジュールに基づいて、エレベータ1の運転を通常運転及び訓練用の地震管制運転のいずれかに切替える制御を行うことにより、建物のオーナー又は管理者が、地震計15を動作させたり、エレベータ1の通常運転への復旧手順を行う等のエレベータ1に関する専門的な知識を習得しなくても、地震発生時を想定した訓練用のエレベータの運転を安全かつ容易に行うことができる。これにより、建物の住民や利用者が地震発生時に実行される地震管制運転を体験できるので、地震に対する効果的な非難訓練を実施することができる。
【0054】
特に、本実施形態では、訓練用のエレベータ1の運転を実行するのに地震計15を動作させる必要がないので、建物のオーナーや管理人が、通常、エレベータ1の保守会社によって実施される地震計15の復旧作業を行わなくて済む。従って、エレベータ1の保守会社と保守契約を結んだ建物のオーナーや管理人であっても、訓練用のエレベータ1の運転を円滑に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムは、訓練情報データベース35に格納された訓練情報のスケジュール実行区分35eにおいて予定日時情報が指定されると、制御装置14は、建物のオーナーや管理人が希望する日付及び時刻以降に、エレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に切替えて実行させることができる。これにより、建物のオーナーや管理人が計画した通りに地震に対する非難訓練を行うことができるので、優れた利便性を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムは、訓練情報データベース35に格納された訓練情報のスケジュール実行区分35eにおいて即時実行情報が指定されると、制御装置14は、エレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に迅速に切替えて即時に実行させることができる。これにより、建物のオーナーや管理人は、エレベータ1の利用状況及び建物の住民や利用者の都合等を考慮して、訓練用のエレベータ1の運転をタイミング良く開始させることができる。
【0057】
また、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムでは、制御装置14は、地震計15が動作していないときに限り、スケジュール設定部4Aによって設定されたスケジュールに従ってエレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に切替えるようにしているので、地震計15の動作中にエレベータ1の通常運転が実行される誤作動を抑制することができる。これにより、地震発生時のエレベータ1の運転に対して高い信頼性を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムでは、建物のオーナー又は管理人は、所有する顧客PC4の操作装置を操作することにより、訓練用のエレベータ1の運転が実行されるスケジュールを意図通りに設定することができる。これにより、建物のオーナーや管理人にとって使い勝手がよいシステムを提供することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るエレベータ1の地震訓練運転システムでは、制御装置14は、エレベータ1の運転を通常運転から訓練用の地震管制運転に切替えたとき、地震に対する訓練が実施されている旨の情報を乗りかご7の液晶ディスプレイ16Aに表示すると共に、当該情報を乗りかご7のスピーカ16Bから出力することにより、乗りかご7内の利用者に対して訓練中であることを容易に知らせることができる。これにより、地震に対する訓練の実施を知らされていなかった利用者の動揺を緩和することができる。
【0060】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0061】
また、本実施形態では、スケジュール設定部4Aは、顧客が所有する顧客PC4に含まれる場合について説明したが、この場合に限らず、エレベータ1に設けられた操作装置として、例えば、乗りかご7の操作盤13に含まれていてもよい。この場合、建物のオーナー又は管理人が顧客PC4を使用しなくても、乗りかご7の操作盤13によりスケジュールの設定を迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 エレベータ
2 監視端末
3 監視センタ
4 顧客PC
4A スケジュール設定部
5 通信回線
6 昇降路
7 乗りかご
13 操作盤
14 制御装置
15 地震計
16 報知部
16A 液晶ディスプレイ
16B スピーカ
21 処理装置
22 通信装置
31 通信装置
32 処理装置
32A スケジュール登録部
33 操作卓
34 顧客情報データベース
34a 管理番号
34b 顧客名
34c 郵便番号
34d 住所
34e 監視端末識別コード
34f 電話番号
34g ユーザーID
34h パスワード
35 訓練情報データベース
35a 管理番号
35b 顧客名
35c 監視端末識別コード
35d 電話番号
35e スケジュール実行区分
35f 実行日時
図1
図2
図3
図4