特許第6244294号(P6244294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244294細胞を培養するための動物性タンパク質非含有培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244294
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】細胞を培養するための動物性タンパク質非含有培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20171127BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C12N5/10
   C12P21/02 C
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-245252(P2014-245252)
(22)【出願日】2014年12月3日
(62)【分割の表示】特願2013-100500(P2013-100500)の分割
【原出願日】2003年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-83005(P2015-83005A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2014年12月24日
(31)【優先権主張番号】60/394,243
(32)【優先日】2002年7月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515351758
【氏名又は名称】バクスアルタ ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】315010787
【氏名又は名称】バクスアルタ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100156111
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ライター
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ムント
(72)【発明者】
【氏名】レオポルト・グリルベルガー
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ・クラウス
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/003000(WO,A2)
【文献】 国際公開第01/023527(WO,A1)
【文献】 特表2002−506636(JP,A)
【文献】 特表2000−517188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の細胞培養物を培養する方法であって、該方法は、以下の工程:
.05%(w/v)〜1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および0.05%(w/v)〜0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含み、該ダイズ加水分解物の3重量部が該酵母加水分解物の1重量部に対して存在する、動物性タンパク質非含有培地を提供する工程;および
該細胞を該培地中で増殖させて、該細胞培養物を形成する工程
を包含し、該細胞が第VIII因子を発現する組換えCHO細胞である、方法。
【請求項2】
細胞をバッチ培養または灌流培養で増殖させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該細胞培養物が、バイオリアクタ中の大規模生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該細胞が、攪拌醗酵槽中のマイクロキャリアに接着して増殖された接着性細胞であり、該マイクロキャリアは、デキストラン、コラーゲン、プラスチック、ゼラチンまたはセルロースに基づいていてよい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該細胞が37℃にて細胞インキュベーター中、pHが6.8〜7.6の範囲の培養培地で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該細胞の継代および継代培養が、非動物由来のプロテアーゼとともに実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該培地が、0.2%(w/v)〜0.6%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および0.05%(w/v)〜0.2%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む、請求項1に記載の方法
【請求項8】
該酵母加水分解物が限外濾過精製された酵母加水分解物であり、該酵母加水分解物の少なくとも40%が500ダルトン以下の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該ダイズ加水分解物が限外濾過精製されたダイズ加水分解物であり、該ダイズ加水分解物の少なくとも40%が500ダルトン以下の分子量を有する、請求項1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物の組み合わせを含む動物性タンパク質非含有細胞培養培地に関する。本発明はまた、動物性タンパク質非含有培養プロセスに関し、このプロセスにおいて、細胞は、動物性タンパク質なしに培養され、増殖され、そして継代され得る。これらのプロセスは、細胞(例えば、組換え細胞またはウイルス感染細胞)を培養するにあたって、および細胞培養プロセスによって生物学的製品を生成するために有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
細胞(特に、真核生物細胞、およびより具体的には哺乳動物細胞)を培養するために、細胞の効率的な増殖および所望されるタンパク質もしくはウイルスの生成に必要な栄養素物質および増殖栄養素物質を利用可能にする特別の培養培地を使用することが、一貫して必要である。細胞培養培地処方物は、ある範囲の添加物(ウシ胎仔血清(FCS)、いくつかの動物由来のタンパク質および/またはウシ起源のタンパク質加水分解物のような規定されていない成分を含む)が補充されている。
【0003】
一般に、血清または血清由来物質(例えば、アルブミン、トランスフェリンまたはインスリン)は、培養物およびこれらから得られた生物学的生成物を汚染し得る所望でない物質を含み得る。さらに、ヒト血清由来の添加物は、血清によって伝播され得る肝炎およびHIVを含め、全ての既知脳いつ巣について試験されなければならない。さらに、ウシ血清およびこれらに由来する生成物(例えば、トリプシン)は、BSE汚染の危険性をはらんでいる。さらに、全ての血清由来生成物は、未知の因子によって汚染されている可能性がある。細胞培養におけるヒトまたは他の動物源に由来する血清またはタンパク質添加物の場合、多くの問題(例えば、異なるバッチにより品質および組成が変動すること、なら
びにマイコプラズマ、ウイルスまたはBSEによる汚染の危険性)があり、特に、これらの細胞がヒト投与のための医療的薬剤またはワクチンを生成するために使用される場合は、問題である。
【0004】
従って、血清も他の動物性タンパク質化合物も必要としない効率的な宿主系および培養条件を提供しようとする多くの試みがなされてきた。単純な無血清培地は、代表的には、栄養素的に複雑な培地を作製するために、基本培地、ビタミン、アミノ酸、有機塩および無機塩、ならびにおそらくさらなる成分を含む。しかし、このような培地は、しばしば、栄養素的に不十分であり、かつ動物由来のタンパク質補充物または細胞培養において使用されるタンパク質の組換え版(例えば、インスリン、インスリン様増殖因子、または他の増殖因子)が補充されなければならない。
【0005】
無血清細胞培養培地における動物性タンパク質補充物の使用を避けるために、タンパク質を完全に含有しない細胞培養培地を提供しようとするいくらかの試みがなされてきた。
【0006】
Cinatlら,Cell Biology International 17:885−895(1993)は、ポリビニルホルマール(PVF)培養表面でのVERO細胞の連続増殖に特異的な培地(PFK−1)の開発を開示する。
【0007】
WO96/15231は、脊椎動物細胞の増殖およびウイルス生成プロセスのための合成最小必須培地および候補抽出物から構成される無血清培地を開示する。
【0008】
コメペプチドおよび酵母抽出物もしくはその酵素消化物、ならびに/または動物細胞の増殖のための植物液を含む基本細胞培養培地から構成される培地処方物は、WO98/15614において開示される。
組換え細胞の培養のための精製ダイズ加水分解物を含む培地は、WO01/23527において開示される。
【0009】
WO00/03000は、ダイズ加水分解物および酵母抽出物を含む培地を開示するが、動物性タンパク質(例えば、増殖因子)の組換え形態の存在をやはり要する。
生物学的生成物(例えば、ウイルスまたは組換えタンパク質)の効率的な生成のために、最適な細胞密度が達成されて最大生成物収量を得ることは重要である。
従って、生物学的生成物(例えば、ヒトにおいて医薬またはワクチンとして使用されるもの)の生成のために、細胞の増殖、代謝活性および密度を増大させ、動物性タンパク質なしの最適な細胞培養培地を提供することが現在でも必要である。さらに、動物性タンパク質が培地中に存在しなければ、後に続く処置(例えば、培養培地からの所望の生成物の精製)は、より費用効果的であり、かつ時間効率的であり得る。さらに、所望でない免疫原性動物性タンパク質が、有害な免疫学的反応を誘導し得るが、本発明の実施では、この反応は避けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO96/15231
【特許文献2】WO98/15614
【特許文献3】WO01/23527
【特許文献4】WO00/03000
【特許文献5】米国出願番号第10/006,223号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Cinatlら,Cell Biology International 17:885−895(1993)
【非特許文献2】Butlerら.BIOS Scientific Publisher p.1−24(1992)
【非特許文献3】Butler,Spier&Griffiths,Animal cell Biotechnology 3:283−303(1988)
【非特許文献4】Schcarfeら、Biotechnologie in LaborPraxis 10:1096−1103 1988
【非特許文献5】Sanfordら、J.Nat’l Cancer Inst.11:773−795 (1951)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、動物性タンパク質非含有培養培地を提供することである。この目的および他の目的を達成するにあたって、本発明の一局面に従って、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有細胞培養培地が提供される。このダイズ加水分解物は、少なくとも0.05%(w/v)の濃度で存在し得、酵母加水分解物は、少なくとも0.05%(w/v)の濃度で存在する。必要に応じて、このダイズ加水分解物は、1.0%(w/v)未満の濃度で存在し得、酵母加水分解物は、0.3%(w/v)未満の濃度で存在し得る。必要に応じて、このダイズ加水分解物は、約0.2%(w/v)〜約0.6%(w/v)の間の濃度で存在し得、酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.2%(w/v)の間の濃度で存在し得る。必要に応じて、ダイズ加水分解物は、約0.25%(w/v)〜約0. 35%(w/v)の間の濃度で存在し得、酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.15%(w/v)の間の濃度で存在し得る。必要に応じて、このダイズ加水分解物は、約0.3%(w/v)の濃度で存在し得、この酵母加水分解物は、約0.1%(w/v)の濃度で存在し得る。必要に応じて、培地は、1重量部の酵母加水分解物に対して3重量部のダイズ加水分解物を含む。酵母加水分
解物は、限外濾過で精製された酵母加水分解物であり得、ここで酵母加水分解物の少なくとも40%は、500ダルトン以下の分子量を有する。同様に、ダイズ加水分解物は、限外濾過で精製されたダイズ加水分解物であり得、ここでダイズ加水分解物の少なくとも40%は、500ダルトン以下の分子量を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。(項目2)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物は、少なくとも0.05%(w/v)の濃度で存在し、酵母加水分解物は、少なくとも0.05%(w/v)の濃度で存在する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目3)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物は、1.0%(w/v)未満の濃度で存在し、前記酵母加水分解物は、0.3%(w/v)未満の濃度で存在する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目4)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物は、約0.2%(w/v)〜約0.6%(w/v)の間の濃度で存在し、前記酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.2%(w/v)の間の濃度で存在する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目5)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物は、約0.25%(w/v)〜約0.35%(w/v)の間の濃度で存在し、前記酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.15%(w/v)の間の濃度で存在する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目6)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物は、約0.3%(w/v)の濃度で存在し、前記酵母加水分解物は、約0.1%(w/v)の濃度で存在する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目7)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物の3重量部が、前記酵母加水分解物の1重量部に対して存在する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目8)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記酵母加水分解物は、限外濾過精製された酵母加水分解物であり、該酵母加水分解物の少なくとも40%が、500ダルトン以下の分子量を有する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目9)
項目1に記載の動物性タンパク質非含有細胞培養培地であって、前記ダイズ加水分解物は、限外濾過精製されたダイズ加水分解物であり、該ダイズ加水分解物の少なくとも40%が、500ダルトン以下の分子量を有する、動物性タンパク質非含有細胞培養培地。
(項目10)
動物性タンパク質非含有細胞培養培地を生成する方法であって、いかなる動物性タンパク質も含まない基本培地は、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物が補充される、方法。(項目11)
項目10に記載の方法であって、前記ダイズ加水分解物の濃度は、少なくとも0.05%(w/v)であり、前記酵母加水分解物の濃度は、少なくとも0.05%(w/v)である、方法。
(項目12)
項目10に記載の方法であって、前記ダイズ加水分解物の濃度は、1.0%(w/v)未満であり、前記酵母加水分解物の濃度は、0.3%(w/v)未満である、方法。
(項目13)
細胞の細胞培養物を培養する方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む培地を提供する工程;ならびに
該細胞を該培地中で増殖させて、該細胞培養物を形成する工程、
を包含する、方法。
(項目14)
項目13に記載の方法であって、前記細胞は、昆虫細胞、鳥類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される動物細胞である、方法。
(項目15)
項目13に記載の方法であって、前記細胞は組換え細胞である、方法。
(項目16)
項目13に記載の方法であって、前記細胞は、BSC−1細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、COS−細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、RK−細胞、TCMK−1細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、LLC−RK細胞、MDOK細胞、BHK−21細胞、CHO細胞、NS−1細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、BHK細胞、およびRK−細胞からなる群より選択される、方法。
(項目17)
動物性タンパク質非含有コンフルエント細胞培養プロセスであって、該プロセスは、以下の工程:
ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地を提供する工程;
該培地中で該細胞を増殖させる工程;ならびに
非動物由来プロテアーゼと接触させながら該培地中で増殖させた細胞を継代および継代培養して、コンフルエントな細胞培養物を得る工程、
を包含する、プロセス。
(項目18)
動物性タンパク質非含有培地中で培養された細胞の培養物であって、該培地は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む、培養物。
(項目19)
項目18に記載の細胞の培養物であって、前記細胞は、昆虫細胞、鳥類細胞、および哺乳動物細胞からなる群より選択される動物細胞である、細胞の培養物。
(項目20)
項目18に記載の細胞の培養物であって、前記細胞は組換え細胞である、細胞の培養物。(項目21)
項目18に記載の細胞の培養物であって、前記細胞は、ウイルスが感染している、細胞の培養物。
(項目22)
項目18に記載の細胞の培養物であって、前記細胞は、BSC−1細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、COS−細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、RK−細胞、TCMK−1細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、LLC−RK細胞、MDOK細胞、BHK−21細胞、CHO細胞、NS−1細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、BHK細胞、およびRK−細胞からなる群より選択される、細胞の培養物。
(項目23)
ウイルスを生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、該ウイルスを増殖させる工程、
を包含する、方法。
(項目24)
項目21に記載の方法であって、前記細胞は、昆虫細胞、鳥類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される動物細胞である、方法。
(項目25)
ワクシニアウイルスを生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.0
5%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にワクシニアウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、ワクシニアウイルスを増殖させる工程、
を包含する、方法。
(項目26)
コロナウイルスを生成するための方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にコロナウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、コロナウイルスを増殖させる工程;
を包含する、方法。
(項目27)
オルソミクソウイルスを生成するための方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞に、オルソミクソウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、オルソミクソウイルスを増殖させる工程、
を包含する、方法。
(項目28)
項目27に記載の方法であって、前記オルソミクソウイルスは、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスまたはインフルエンザC型ウイルスである、方法。
(項目29)
ロス川ウイルスを生成するための方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にロス川ウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、ロス川ウイルスを増殖させる工程、
を包含する、方法。
(項目30)
フラビウイルスを生成するための方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にフラビウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、フラビウイルスを増殖させる工程、
を包含する、方法。
(項目31)
項目30に記載の方法であって、前記フラビウイルスは、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルスおよびC型肝炎ウイルスからなる群より選択される、方法。
(項目32)
ピコルナウイルスを生成するための方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にピコルナウイルスを感染させる工程;ならびに
該感染させた細胞をインキュベートして、ピコルナウイルスを増殖させる工程、
を包含する、方法。
(項目33)
項目32に記載の方法であって、前記ピコルナウイルスは、ポリオウイルスおよびA型肝炎ウイルスである、方法。
(項目34)
ウイルスまたはウイルス抗原を含む免疫原性組成物を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;
該細胞にウイルスを感染させる工程;
該感染させた細胞をインキュベートして、ウイルスを増殖させる工程;
生成された該ウイルスまたはウイルス抗原を回収する工程;
該回収されたウイルスまたはウイルス抗原から免疫原性組成物を調製する工程、
を包含する、方法。
(項目35)
項目34に記載の方法であって、前記回収されたウイルスまたはウイルス抗原は、精製に供される、方法。
(項目36)
ウイルスまたはウイルス抗原を含む免疫原性組成物を生成する方法であって、該方法は、以下の工程:
哺乳動物細胞の培養物を提供する工程であって、該細胞は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培養培地中で増殖させた、サル腎臓細胞、ウシ腎臓細胞、イヌ腎臓細胞、ブタ腎臓細胞、マウス腎臓細胞、ラット腎臓細胞、ヒツジ腎臓細胞、ハムスター腎臓細胞およびヒト細胞の群から選択される、工程;
該細胞に、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルスおよびアデノウイルスの群から選択されるウイルスを感染させる工程;
該細胞の培養物をインキュベートして、該ウイルスを増殖させる工程;
このように生成された該ウイルスまたはウイルス抗原を回収する工程;ならびに
該回収されたウイルスまたはウイルス抗原から免疫原性組成物を調製する工程、
を包含する、方法。
(項目37)
オルソミクソウイルスを感染させた細胞の培養物であって、該細胞は、動物性タンパク質非含有培地中で培養され、該培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、細胞の培養物。
(項目38)
項目37に記載の培養物であって、前記ダイズ加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度であり、前記酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度である、培養物。
(項目39)
ポックスウイルスを感染させた細胞の培養物であって、該細胞は、動物性タンパク質非含有培地中で培養され、該培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、培養物。
(項目40)
項目39に記載の培養物であって、前記ダイズ加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度であり、前記酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度である、培養物。
(項目41)
ヘルペスウイルスを感染させた細胞の培養物であって、該細胞は、動物性タンパク質非含有培地中で培養され、該培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、培養物。
(項目42)
項目41に記載の培養物であって、前記ダイズ加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度であり、前記酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度である、培養物。
(項目43)
動物性タンパク質を含まないオルソミクソウイルス調製物であって、該調製物は、動物性タンパク質非含有培地中でインフルエンザウイルスに感染させた細胞を培養することによって得られ、該培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、調製物。
(項目44)
動物性タンパク質を含まないヘルペスウイルス調製物であって、該調製物は、動物性タンパク質非含有培地中でインフルエンザウイルスに感染させた細胞を培養することによって得られ、該培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、調製物。
(項目45)
動物性タンパク質を含まないポックスウイルス調製物であって、該調製物は、動物性タンパク質非含有培地中でインフルエンザウイルスに感染させた細胞を培養することによって得られ、該培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む、調製物。
【0014】
本発明はまた、細胞の培養物を培養する方法を提供し、この方法は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む培地を提供する工程;およびその細胞をこの場位置中で増殖させて、細胞培養物を形成する工程を包含する。上記で例示される加水分解物の他の濃度もまた、本発明に従って使用され得る。この細胞は、動物細胞(例えば、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、幹細胞、および好ましくは、インビトロでのウイルス生成に使用される細胞)であり得る。これらの細胞はまた、組換え細胞であり得る。例示的な細胞としては、BSC−1細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、COS−細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、RK−細胞、TCMK−1細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、LLC− RK細胞、MDOK細胞、BHK−21細胞、CHO細胞、NS−1細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、BHK細胞、293細胞およびRK−細胞からなる群より選択される細胞が挙げられる。
【0015】
本発明はまた、動物性タンパク質非含有コンフルエント細胞培養プロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を包含する:ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地を提供する工程;その細胞を培地中で増殖させる工程;ならびに非動物由来プロテアーゼと接触させながらその培地中で増殖させた細胞を継代および継代培養して、コンフルエントな細胞培養物を得る工程。その細胞は、動物細胞、組換え細胞および/またはウイルス感染細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0016】
さらに、本発明は、動物性タンパク質非含有培地中で培養される細部の培養物を提供し、ここでこの培地は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度の酵母加水分解物を含む。上記で例示される加水分解物の他の濃度もまた、本発明に従って使用され得る。この細胞は、動物細胞、組換え細胞および/またはウイルス感染細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0017】
さらに、本発明は、ウイルスを生成するための方法を提供し、この方法は、ダイズ加水
分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にウイルスを感染させる工程;ならびに感染させた細胞をインキュベートして、ウイルスを増殖させる工程を包含する。この細胞は、動物細胞および/または組換え細胞、特に哺乳動物細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。培養細胞で生成されるべきウイルスは、培養細胞型に感染することが公知のある範囲のウイルスから選択され得る。例えば、哺乳動物細胞培養物を利用する場合、ウイルスは、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルスおよびアデノウイルスの属から選択され得る。使用されるウイルスは、野生型ウイルス、弱毒化ウイルス、再集合体ウイルス、または組換えウイルスであり得る。さらに、ウイルスを細胞に感染させるために使用される実際のビリオンの代わりに、感染性核酸クローンが、ウイルス学の分野の当業者に公知の感染性クローントランスフェクション方法に従って利用され得る。
【0018】
本発明は、ポックスウイルス(ワクシニアウイルスを含む)を生成するための方法をさらに提供し、この方法は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にポックスウイルスを感染させる工程;ならびに感染させた細胞をインキュベートして、ポックスウイルスを増殖させる工程を包含する。この細胞は、哺乳動物細胞および/または組換え細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0019】
さらに、本発明は、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスを含む)を生成する方法をさらに提供し、この方法は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にコロナウイルスを感染させる工程;ならびに感染させた細胞をインキュベートして、コロナウイルスを増殖させる工程を包含する。この細胞は、哺乳動物細胞および/または組換え細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0020】
さらに、本発明は、オルソミクソウイルスを生成するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する。ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にオルソミクソウイルスを感染させる工程;ならびに感染させた細胞をインキュベートして、オルソミクソウイルスを増殖させる工程を包含する。このオルソミクソウイルスは、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスまたはインフルエンザC型ウイルスであり得る。この細胞は、哺乳動物細胞および/または組換え細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0021】
本発明はさらに、ロス川ウイルスを生成するための方法を提供し、この方法は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にロス川ウイルスを感染させる工程;ならびに感染させた細胞をインキュベートして、ロス川ウイルスを増殖させる工程を包含する。この細胞は、哺乳動物細胞および/または組換え細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0022】
本発明はまた、フラビウイルスを生成するための方法を提供し、この方法は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にフラビウイルスを感染させる工程;ならびに感染させた細胞をインキュベートして、フラビウイルスを増殖させる工程を包含する。このフラビウイルスは、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス
およびC型肝炎ウイルスからなる群より選択され得る。この細胞は、哺乳動物細胞および/または組換え細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。
【0023】
本発明はさらに、ウイルスまたはウイルス抗原を含む免疫原性組成物を生成する方法を提供し、この方法は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖させた細胞の培養物を提供する工程;細胞にウイルスを感染させる工程;感染させた細胞をインキュベートして、ウイルスを増殖させる工程;生成されたウイルスまたはウイルス抗原を回収する工程;回収されたウイルスまたはウイルス抗原から免疫原性組成物を調製する工程を包含する。この細胞は、動物細胞および/または組換え細胞であり得る。本明細書中に記載される培地の特徴および細胞型は、ここでも適用可能である。回収されたウイルスまたはウイルス抗原は、精製に供され得る。
【0024】
本発明はまた、ウイルスまたはウイルス抗原を含む免疫原性組成物を生成する方法を提供し、この方法は、哺乳動物細胞の培養物を提供する工程であって、この細胞が、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培養培地中で増殖させた、サル腎臓細胞、ウシ腎臓細胞、イヌ腎臓細胞、ブタ腎臓細胞、マウス腎臓細胞、ラット腎臓細胞、ヒツジ腎臓細胞、ハムスター腎臓細胞およびヒト細胞の群から選択される、工程;
この細胞に、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルスおよびアデノウイルスの群から選択されるウイルスを感染させる工程;この細胞の培養物をインキュベートして、ウイルスを増殖させる工程;このように生成されたウイルスまたはウイルス抗原を回収する工程;ならびに回収されたウイルスまたはウイルス抗原から免疫原性組成物を調製する工程を包含する。
【0025】
さらに、本発明は、オルソミクソウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスまたはアデノウイルスを感染させた細胞の培養物を提供し、この細胞は、動物性タンパク質非含有培地中で培養され、この培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む。このダイズ加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約1%(w/v)の濃度であり得、酵母加水分解物は、約0.05%(w/v)〜約0.3%(w/v)の濃度であり得る。上記で例示される加水分解物の他の濃度もまた、本発明に従って使用され得る。
本発明はさらに、培地からの、動物性タンパク質を含まない、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルスまたはアデノウイルス(これらの組み換え的に生成されたバージョンを含む)の調製物を提供し、この調製物は、動物性タンパク質非含有培地中で、インフルエンザウイルスを感染させた細胞を培養することによって得ることができ、ここで、この培地はダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含む。ダイズ加水分解物は、0.05%(w/v)〜1.0%(w/v)の濃度であり得、そして酵母加水分解物は、0.05%(w/v)〜0.3%(w/v)の濃度であり得る。上記で例示される加水分解物の他の濃度もまた、本発明に従って使用され得る。これらのウイルス調製物は、ウイルス抗原およびさらに処理した後にワクチンを作製するための使用に適切である。
【0026】
本発明のこれらおよび他の局面は、下記の説明およびデータを参照すれば、当業者に明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
それらの種々の文法的形態にある用語「動物性タンパク質非含有培地」とは、高等の多細胞性非植物真核生物(すなわち、脊椎動物)に由来するタンパク質およびタンパク質成分を補充していない培地をいい、これらの培地は、天然に存在するとおりのそのタンパク質に特徴的な二次構造、三次構造および四次構造を有する。避けられる代表的なタンパク質は、血清および血清由来物質(例えば、アルブミン、トランスフェリン、インスリンおよび他の増殖因子)中に見出されるものである。組換え生成版の動物性タンパク質は、免疫原性の細菌成分を含み得、本発明によればやはり避けられ、本発明の動物性タンパク質非含有培地中に存在しない。動物性タンパク質およびタンパク質成分は、非動物性タンパク質、低分子ポリペプチドならびに植物(例えば、ダイズ)および下等真核生物(例えば、酵母)から得られ得るオリゴペプチド(通常、約10〜30アミノ酸長)から区別されなければならない。当然のことながら、一旦培地が細胞と接触し、増殖されるべき細胞に接種されると、その培地は、これらの細胞により流されるかもしくは分泌されるタンパク質(このような細胞が培養される場合に、遺伝的に改変された細胞により発現される任意の組換えタンパク質を含む)を含む。従って、用語、動物性タンパク質非含有培地、ならびに生物学的物質およびそれによって生成される調製物は、培地中で増殖させた細胞により流されるかまたは分泌されるタンパク質がないことを要すると解釈されるべきでないが、むしろ、動物性タンパク質および動物源から得られるタンパク質成分または組換え生成されるタンパク質もしくはタンパク質成分を培地に直接補充することはないということに言及する。
【0028】
種々の文法的形態にある用語「基本」培地とは、合成培地(例えば、DMEM、HAM’s F12、Medium 199もしくはRPMI、またはこれらの組み合わせ)お
よび文献から公知の他の培地または市販の培地をいう。本発明に従って、あらゆる合成培地は、動物性タンパク質を含まず、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物の組み合わせとともに使用され得る。基本培地は、多くの成分(アミノ酸、ビタミン、有機塩および無機塩、炭水化物源を含み、各成文は、インビトロで細胞の培養を指示する量で存在する)を含み得る。例えば、基本培地として、DMEM/HAM’s F12(1:1)培地が使用され得る。この培地は、機械的ストレスに対処するための補助物質(例えば、炭酸水素ナトリウムのような緩衝物質、酸化安定化剤、安定化剤)またはプロテアーゼインヒビターを含み得る。必要であれば、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリプロピレングリコール(PLURONIC F−61、PLURONIC F−68、SYNPERONIC F−68、PLURONIC F−71またはPLURONIC F−108)が、消泡剤として培地に添加され得る。これらの薬剤は、一般に、細胞を通気の負の影響から保護するために使用される。なぜなら、界面活性剤を添加しない場合、上昇し、破裂する気泡は、これらの気泡の表面に位置する細胞に損傷を与え得るからである(「スパージング」)。非イオン性界面活性剤の量は、好ましくは、約0.05g/Lと約10g/Lとの間、代表的には、約0.1g/Lと約5g/Lとの間である。さらに、この培地はまた代表的には、約0.001g/Lと約1g/Lとの間のシクロデキストリンまたはその誘導体を含み得る。
【0029】
本発明に従って、培地は、ダイズ加水分解物および酵母加水分解物を含み、これらは、基本培地に添加され得る。用語「加水分解物」とは、ダイズペプトンまたは酵母抽出物の酵素消化物を含む。この加水分解物は、それぞれ、複数のダイズペプトンまたは酵母抽出調製物から得られ得る。これらは、さらに酵素消化され得るか(例えば、パパインにより)、そして/または自己分解、熱分解および/もしくは原形質分解によって形成され得る。加水分解物(例えば、Hy−Soy、Hy−Yeast 412およびHi−Yeast 444)はまた、市場から(Quest International,Norwich,New York,OrganoTechnie,S.A.France;またはDeutsche Hefewerke GmbH,Germanyのような供給源から)得られ得る。酵母抽出物の供給源はまた、WO98/15614に開示される。酵母抽出物およびダイズ加水分解物の供給源はまた、WO00/03000に開示される。
【0030】
本発明の培地において使用される加水分解物は、好ましくは、粗分画により生成される。なぜなら、効率的な培養を妨害し得る不純物は、この精製の間に好ましくは排除され、それによって加水分解物の粘度を改善するからである。精製は、限外濾過またはセファデックスクロマトグラフィー(例えば、セファデックスG25またはセファデックスG10またはその等価な物質を用いる)、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは「逆相」クロマトグラフィーによってであり得る。これらのプロセスは、当該分野で公知である。これらの方法を使用すると、規定分子量(好ましくは、1000ダルトン以下、より好ましくは、500ダルトン以下、なおより好ましくは、350ダルトン以下)のダイズ加水分解物または酵母加水分解物を含む画分が選択される。これらの加水分解物の少なくとも90%は、好ましくは、1000ダルトン以下の分子量である。ダイズ加水分解物または酵母加水分解物の平均分子量は、好ましくは、約220ダルトンと375ダルトンとの間である。ダイズ加水分解物および酵母加水分解物のpH値は、約6.5と7.5との間の範囲にあるべきである。総窒素含有量は、約8%と11%との間、好ましくは、9.0%と10.0%との間、灰分含有量は、18%以下であるべきである。有利な加水分解物は、約5%と30%との間の遊離アミノ酸含有量を有するという特徴によって特徴付けられる。エンドトキシン含有量は、あるとすれば、500U/g未満であるべきである。
【0031】
本発明に従う1つの培地は、以下の構成要素を有する:合成最少培地(DMEM/HAM’s F12(1:1)培地(1〜25g/L)、ダイズ加水分解物(0.5〜10g/L)および酵母加水分解物(0.5〜3g/L)、L−グルタミン(0.05〜1g/L)、NaHCO3(0.1〜10g/L)。培地のpHは、pH6.8と7.6とのあいだ、好ましくは、pH7.0と7.3との間である。
【0032】
当業者に明らかなように、用語「約」とは、数値および範囲の文脈において、記載された値または範囲に近似するまたは近い値をいい、その結果、本発明は、本明細書中に含まれる教示から明らかなように、示される所望される程度の細胞増殖を促進させるように実施され得、全ての値に適用される。従って、この用語は、系統的誤差から生じる値を超える値を含む。
【0033】
驚くべきことに、先行技術において記載された培地と比較して、本発明に従う範囲内の酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を補充した動物性タンパク質非含有基本培地は、細胞増殖速度、細胞代謝活性、および最終的な細胞密度により好都合であることが見出された。このことは、高等植物ペプチド濃度が最適未満であることを示すWO98/15614の教示を鑑みても、なお驚くべきことであった。本明細書中に記載の酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む本発明の動物性タンパク質非含有培地を用いると、細胞は、ダイズ加水分解物または酵母加水分解物単独いずれかを含む培地と比較すると、培地に単独で添加される酵母加水分解物またはダイズ加水分解物の最終濃度が組み合わされた加水分解物濃度の合計に等しいとしても、より高い増殖速度、バイオマスのより高い最終細胞密度、および増大した代謝活性(酸素消費(%/分)で表される)を示した。例えば、培地中単独で約0.4%(w/v)酵母加水分解物の最終濃度は、細胞増殖および細胞密度に対して阻害効果を有した。0.4%(w/v)以上のより高い濃度のダイズ加水分解物を含む培地は、せいぜい0.3%(w/v)を含む培地の細胞密度にしか達しなかった。しかし、0.4%(w/v)の最終総加水分解物濃度のダイズ加水分解物および酵母加水分解物の組み合わせを含む培地は、細胞代謝活性、細胞増殖および最終細胞密度において有意な増大を示した。
【0034】
本発明に従って、培地中のダイズ加水分解物および酵母加水分解物の量の合計は、酵母加水分解物と比較して培地中でより高い割合のダイズ加水分解物を有する、約0.2%(w/v)と約0.6%(w/v)との間であるべきである。ダイズ加水分解物と酵母加水分解物との間の最適な比は、それぞれ、約3:1(ダイズ/酵母)であるはずである。
【0035】
本明細書中に記載されるように、本発明の培地は、細部培養するために特に有用である。本発明の範囲内において、用語「細胞」とは、一般的用語を意味し、個々の細胞、組織、器官、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、初代細胞、継続的な細胞株、幹細胞および/または遺伝子操作細胞(例えば、異種ポリペプチドまたはタンパク質を発現する組換え細胞)の培養物を含む。組換え細胞としては、例えば、異種ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、増殖因子または血液因子)を発現するCHO細胞またはBHK細胞が挙げられる。ウイルスの増殖のためにしばしば使用される細胞としては、VERO細胞およびCV−1細胞が挙げられる。
【0036】
本発明の細胞培養培地中での培養に適した哺乳動物細胞としては、ヒト起源の細胞が挙げられ、これらの細胞は、組織サンプル由来の初代細胞、二倍体細胞株、形質転換細胞または樹立細胞株であってもよい。哺乳動物細胞は、ヒト細胞および非ヒト細胞などであり得る。非ヒト起源の哺乳動物細胞は、サル腎臓細胞、ウシ腎臓細胞、イヌ腎臓細胞、ブタ腎臓細胞、ウサギ腎臓細胞、マウス腎臓細胞、ラット腎臓細胞、ヒツジ腎臓細胞、ハムスター腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞または任意の組織由来の動物細胞であり得る。特に、培養培地中で培養され得る哺乳動物細胞は、BSC−1細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、COS−細胞、COS−1細胞、COS−3細胞、COS−7細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、RK−細胞、TCMK−1細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、LLC−RK細胞、MDOK細胞、BHK−21細胞、CHO細胞、293細胞、NS−1細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、BHK細胞、293細胞およびRK−細胞であり得る。組換え細胞の例としては、例えば、第VIII因子、第II因子、第IX因子、第X因子、フォン・ビルブラント因子を発現するCHO細胞が挙げられ、これらの因子は全て、当業者に公知である。
【0037】
種々の文法的な形態にある用語「連続的な細胞」または「連続的な細胞株」(CCL)とは
、無限に複製し、かつ懸濁培養またはバイオリアクタでの大規模培養において増殖し得る培養細胞を意味する。CCLの非制限的増殖は、標準化細胞基質からの長期間培養および低コストを可能にする。哺乳動物細胞株は、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、LLK−MK2細胞、NS−1細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、BHK細胞、CV−1細胞、ウサギ腎臓(RK)細胞およびButlerら.BIOS Scientific Publisher p.1−24(1992)(これは、本明細書中に参考として援用される)に開示される他の細胞株の群から選択され得る。CCLは、好ましくは、外来因子(例えば、細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物およびウイルス)の非存在について試験される。
【0038】
種々の文法的形態にある用語「細胞培養物」とは、懸濁液、ローラーボトル、フラスコなどで増殖された細胞をいう。大規模アプローチ(例えば、攪拌醗酵槽中のマイクロキャリに接着して増殖された接着性細胞を含むバイオリアクタ)もまた、含まれる。さらに、表面依存性細胞を培養することのみならず、本発明の培地を用いて懸濁培養技術を利用することもまた、可能である。細胞がマイクロキャリア上で増殖される場合、このマイクロキャリアは、デキストラン、コラーゲン、プラスチック、ゼラチン、およびセルロースならびにButler,Spier&Griffiths,Animal cell Biotechnology 3:283−303(1988)に記載されるような他のものに基づくマイクロキャリアの群から選択され得る。多孔性キャリア(例えば、Cytoline(登録商標)またはCytopore(登録商標))、ならびにデキストランベースのキャリア(例えば、DEAE−デキストラン(Cytodex1(登録商標))、四級アミンコーティングデキストラン(Cytodex 2(登録商標))またはゼラチンベースのキャリア(例えば、(Cytodex3(登録商標))が適切である。これらのキャリアは、Pharmaciaから入手可能である。
【0039】
細胞は、好ましくは、アンプルから動物性タンパク質非含有培地中のバイオマスへと増殖され、細胞培養増殖および生成物生成プロセスの間に培養培地条件下で維持される。培地に既に適合された細胞が、好ましくは使用される。このような予め適合された細胞を用いて増大した収量が達成されるだけでなく、それらの培養の安定性もまた、本発明に従う培地を使用することによって明らかに改善されることが見出された。
【0040】
種々の文法的形態にある用語「培養」とは、増殖および連続した生存性が認められる条件下で細胞をインビトロで維持することをいう。哺乳動物細胞は、代表的には、約37℃で細胞インキュベーター中で培養され、培養培地は、約6.8〜7.6の範囲、好ましくは、7.0と7.3との間の範囲の至適pHを有する。バッチ培養物中の細胞は、約2〜3日毎に、または必要であれば多かれ少なかれより頻繁に完全に培地交換され得る。灌流培養(例えば、バイオリアクタまたは醗酵槽中)における細胞は、連続再循環を基本として新たな培地に交換され得る。培養アプローチは、状況および必要性に応じて、細胞の継代培養、継代および増殖を含み得る。
【0041】
本発明は、それ故、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む基本培地中で細胞を増殖する工程を包含する細胞を培養する方法を提供する。好ましくは、細胞は、0.05%(W/V)〜1.0%(W/V)の濃度のダイズ加水分解物および0.05%(W/V)〜0.3%(W/V)の濃度の酵母加水分解物を含む培地中で細胞を増殖する。本発明のこの局面によれば、細胞は、本発明の動物性タンパク質非含有培地中で小スケールから大スケールバイオマスに増殖する。細胞培養バイオマスを得るための細胞の継代および継代培養は、好ましくは、プロナーゼまたはその精製フラクションのような非動物由来のプロテアーゼとともに実施される。1つのプロテアーゼは、その全体が参考として本明細書中に援用される米国出願番号第10/006,223号に記載のようなStreptomyces griseus(SGT)の精製されたトリプシン様フラクションである。細胞培養の培養の間、特に、キャリアに付着されて増殖する接着細胞の培養の間に動物由来の材料を避けるために、このキャリアは、好ましくは、合成キャリア、または非動物由来の材料でコートされたマイクロキャリアである。例えば、DEAE−デキストランまたは四級アミンでコートされたマイクロキャリアである。
【0042】
本発明はまた、動物性タンパク質非含有細胞培養プロセスを提供し、ここで、細胞は、動物性タンパク質のない条件下で培養、継代培養、および継代される。このプロセスは、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地を提供する工程、この培地で細胞を増殖する工程、非動物由来プロテアーゼを用い、その培地中で増殖した上記細胞を継代および継代培養する工程、さらに、この継代培養された細胞を、コンフルエント細胞密度に到達するまで増殖する工程および所望の最終細胞培養バイオマスに到達するまで細胞の継代培養および増殖の工程を繰り返する工程を包含する。このプロセスは、動物性タンパク質非含有培地中の細胞の増殖、非動物由来のプロテアーゼ、好ましくは、Streptomyces griseus(SGT)の精製されたトリプシン様フラクションを用いる細胞の継代培養および継代を含む。キャリアに付着されて増殖する接着細胞の培養の間、このキャリアは、好ましくは、合成キャリア、または非動物由来の材料でコートされたマイクロキャリアである。
【0043】
本発明の動物性タンパク質非含有培地中の増殖に適切な細胞は、制限されないで、BSC−1細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK
細胞、CRFK細胞、RAF細胞、TCMK−1細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、LLC−RK細胞、MDOK細胞、RK−細胞、BHK−21細胞、WI−38細胞、293細胞および/またはMRC−5細胞を含む。これらの細胞は、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルスおよび当業者に公知のその他のウイルスで感染され得る。より詳細には、細胞培養物を感染するために用いられるウイルスは、インフルエンザウイルス、ワクシニアウイルスおよび痘瘡、鶏痘ウイルス、牛痘ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBE)、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ロス川ウイルス、黄熱病ウイルスおよびそれら由来のキメラウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、風疹ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン‐バーウイルス(EBV)、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV)であり得る。ウイルスおよびこのウイルスが増殖され得る細胞を選択することは当業者の知識内である。これら細胞は、本発明の培地中で培養され得、そして個々のウイルスでの感染前に最適細胞密度に到達するように増殖する。驚くべきことに、本発明の動物性タンパク質非含有培地中で増殖および増殖した細胞培養は、ウイルス収量生産性の有意な増加を示す。本発明の培地で培養かつ増殖された細胞で増殖した異なるウイルスの例は、単に酵母抽出物を含む培地と比較して2〜5倍のウイルス収量の増加を示した。これは、このシステムを、先行技術に記載のシステムより、細胞増殖およびウイルス産生プロセスのために好適にする。
【0044】
本発明の実施形態によれば、細胞は、VERO細胞であり、そしてウイルスは、インフルエンザウイルス、TBEウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ロス川ウイルス、黄熱病ウイルスおよびそれ由来のキメラウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、風疹ウイルス、HCV、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、HSV、CMV、EBV、ロタウイルスからなる群から選択される。VERO細胞中で増殖することが知られるその他のウイルスもまた、用いられ得る。
【0045】
本発明はまた、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む動物性タンパク質非含有培地中で増殖および培養された細胞の培養を提供する工程、この細胞をワクシニアウイルスで感染する工程、およびこの細胞の培養をワクシニアウイルスを増殖するためにインキュベートする工程による、ワクシニアウイルスの産生を提供する。好ましくは、この細胞は、約0.05%(W/V)〜約1.0%(W/V)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(W/V)〜約0.3%(W/V)の濃度の酵母加水分解物を含む培地中で細胞を増殖する。本発明のこの局面によれば、細胞は、VERO細胞、CV−1細胞、RK細胞、BHK−21細胞、MRC−5細胞、またはワクシニアウイルスが増殖し得る任意の細胞である。ワクシニアウイルスは、天然に存在するワクシニアウイルス、痘瘡ウイルスワクチン株、毒性ワクシニア株、弱毒化ワクシニアウイルスおよび組換えワクシニアウイルスであり得る。
【0046】
また、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む基本培地から作製される動物性タンパク質非含有培地中で培養および増殖された細胞の培養を提供する工程、この細胞をオルソミクソウイルスで感染する工程、およびこの細胞の培養をオルソミクソウイルスを増殖するためにインキュベートする工程による、オルソミクソウイルスの産生を提供する。好ましくは、この細胞は、約0.05%(W/V)〜約1.0%(W/V)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(W/V)〜約0.3%(W/V)の濃度の酵母加水分解物を含む培地中で細胞を増殖する。本発明のこの局面によれば、細胞は、BSC−1細胞、CV−1細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MDOK細胞、BHK−21細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞、またはオルソミクソウイルスが増殖し得る任意の細胞である。オルソミクソウイルスは、インフルエンザA、BまたはCのような
インフルエンザウイルスであり得る。
【0047】
また、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む基本培地から作製される動物性タンパク質非含有培地中で培養および増殖された細胞の培養を提供する工程、この細胞をロス川ウイルスで感染する工程、およびこの細胞の培養をロス川ウイルスを増殖するためにインキュベートする工程による、ロス川ウイルスの産生を提供する。好ましくは、この細胞は、約0.05%(W/V)〜約1.0%(W/V)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(W/V)〜約0.3%(W/V)の濃度の酵母加水分解物を含む培地中で細胞を増殖する。細胞は、BSC−1細胞、CV−1細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、BHK−21細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞、またはロス川ウイルスが増殖し得る任意の細胞である。
【0048】
さらに、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む基本培地から作製される動物性タンパク質非含有培地中で培養および増殖された細胞の培養を提供する工程、この細胞をフラビウイルスで感染する工程、およびこの細胞の培養をフラビウイルスを増殖するためにインキュベートする工程による、フラビウイルスの産生を提供する。好ましくは、この細胞は、約0.05%(W/V)〜約1.0%(W/V)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(W/V)〜約0.3%(W/V)の濃度の酵母加水分解物を含む培地中で細胞を増殖する。フラビウイルスは、黄熱病ウイルス、またはそのキメラ誘導体の組換え体、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、およびC型肝炎ウイルスであり得る。
【0049】
酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む基本培地から作製される動物性タンパク質非含有培地中で培養および増殖された細胞の培養を提供する工程、この細胞をピコルナウイルスで感染する工程、およびこの細胞の培養をピコルナウイルスを増殖するためにインキュベートする工程による、ピコルナウイルスの産生を提供する。好ましくは、この細胞は、約0.05%(W/V)〜約1.0%(W/V)の濃度のダイズ加水分解物および約0.05%(W/V)〜約0.3%(W/V)の濃度の酵母加水分解物を含む培地中で細胞を増殖する。ピコルナウイルスは、ポリオウイルスまたはA型肝炎ウイルスである。本明細書中で識別された細胞型は、ピコルナウイルスの増殖のために用いられ得る。
【0050】
本発明はまた、ウイルスまたはウイルス抗原を含む免疫原性組成物を生成する方法を提供し、この方法は、動物細胞の培養を提供する工程であって、ここで、この細胞は、本発明の培地で増殖された、サル腎臓細胞、ウシ腎臓細胞、イヌ腎臓細胞、ブタ腎臓細胞、マウス腎臓細胞、ラット腎臓細胞、ヒツジ腎臓細胞、ウサギ腎臓細胞、ハムスター腎臓細胞およびヒト細胞からなる群から選択される工程、この細胞を、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルスおよびアデノウイルスからなる群から選択されるウイルスで感染する工程、ウイルスを増殖するためにこの細胞の培養をインキュベートする工程、産生されたウイルスを回収する工程およびこの回収されたウイルスから免疫原性組成物を調製する工程を包含する。産生されたかつ回収されたウイルスは、イオン交換またはゲル濾過のような当該分野で公知の方法を用いて精製され得る。
【0051】
ここで、本発明を一般的に説明したが、本発明は、例示の目的であって、かついかなる様式においても制限的でない、以下の実施例を参照することによりさらに理解される。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
(培養培地の処方)
動物性タンパク質非含有培地は、無機塩類、アミノ酸類、ビタミン類およびその他の成
分が補充される基本DMEM/HAM F12(1:1)培地を用いて調製される。また添加されるのは、重炭酸ナトリウム(1〜3g/L)、L−グルタミン(0.1〜1g/L)および変化する濃度のダイズ加水分解物(Quest Technologies、New York)または酵母加水分解物(Deutsche Hefewerke、Germany)またはその組み合わせである。
【0053】
(実施例2)
(動物性タンパク質非含有培地における細胞の増殖)
(動物性タンパク質非含有培地におけるVERO細胞)
VERO細胞(アフリカミドリザル、Cercopthecus aethiops、腎臓)を細胞株として用いた。この細胞は、American Type Cell Culture Collection、Rockville、Marylandから、命名ATCC CCL 81の下、継代数124で得た。細胞を、本明細書に記載のように種々の培地で増殖した。
【0054】
作業細胞バンクの細胞を、分割比1:6〜1:8でTフラスコおよびローラーボトルおよびマイクロキャリアシステム中で増殖した。細胞は、37℃で6〜8日増殖させた。酸素飽和20%+/−10%およびpH7.1+/−0.35の培養条件は、一定に保った。細胞がコンフルエント増殖に到達したときバイオマス生産の終期に、細胞密度および酸素消費速度を決定した。
【0055】
バイオマス産生の終期における、細胞培養物のバイオマスの細胞数を、Schcarfeら、Biotechnologie in LaborPraxis 10:1096−1103 1988によって記載されるように、細胞のトリプシン処理およびCASY(登録商標)細胞カウンターを用いる計数法(方法A)、またはSanfordら、J.Nat’l Cancer Inst.11:773−795 (1951)に記載されるように、クエン酸およびクリスタルバイオレット処理、その後の、ヘマトサイトメーターを用いる計数法(方法B)を用いて、決定する。
【0056】
ベロ細胞を、酵母加水分解物(0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%(w/v)の濃度)またはダイズ加水分解物(0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%(w/v)の濃度)、あるいは、ダイズ加水分解物と酵母加水分解物(酵母対ダイズの濃度(酵母/ダイズ)が、0.05%/0.05%(w/v)、0.1%/0.2%(w/v)、0.1%/0.3%(w/v)、0.2%/0.2%(w/v)、0.3%/0.2%(w/v)、または0.2%/1.0%(w/v))を含む、動物性タンパク質非含有培地中で、成長させた。種々の濃度のダイズ加水分解物、酵母加水分解物またはそれらの組み合わせを含む、動物性タンパク質非含有培地中でのバイオマス産生の終期の細胞培養の細胞密度を、方法AおよびBによって、計算した。
【0057】
結果は、酵母加水分解物およびダイズ加水分解物単独で、細胞増殖を支持したことを実証する。0.1%の酵母加水分解物の濃度において、約11.8×105細胞/mlの細胞密度が達成されたが、酵母加水分解物の0.3%(w/v)を超える増加は、細胞増殖に対して、負の効果を有し、その結果、細胞密度に対して負の効果を有した。ダイズ加水分解物単独の濃度が0.1%(w/v)〜0.2%(w/v)の間である場合、ダイズ加水分解物が0.3%(w/v)〜0.4%(w/v)である場合よりも少ない細胞増殖および細胞密度を示した。そうであるにも関わらず、0.3%(w/v)〜0.4%(w/v)のダイズ加水分解物を含む培地中の細胞培養物の細胞密度および酸素消費は顕著には異ならず、そして、約1%(w/v)までの高濃度のダイズ加水分解物は、細胞増殖に対して、正の効果を有さなかった。ダイズ加水分解物単独の最適な濃度を、0.2%(w/
v)〜1.0%(w/v)であると決定した。基本培地にダイズ加水分解物と酵母加水分解物との組み合わせを補充することによって、最終的な細胞密度が、ダイズ加水分解物単独または酵母加水分解物単独を含む培地と比較して、顕著に増加した。0.05%(w/v)のダイズ加水分解物および0.05%(w/v)の酵母加水分解物の濃度において達成された細胞密度は、約12.1×105細胞/mlであり、0.1%(w/v)のダイズ加水分解物単独(10×105細胞/ml)または0.1%(w/v)の酵母加水分解物単独(11.8×105細胞/ml)のいずれかを単独で含む培地中で増殖する細胞と比較して、より高い細胞培養細胞密度を有した。0.2%(w/v)の酵母加水分解物および1.0%(w/v)のダイズ加水分解を含む培地中での細胞培養増殖の細胞密度は、0.05%(w/v)のダイズ加水分解物および0.05%(w/v)の酵母加水分解物を含む培地において得られた密度と同様であった。
【0058】
細胞増殖に対する最も顕著な効果は、酵母加水分解物と比較した場合のダイズ加水分解物の濃度が約2〜3倍高い場合であった。約0.3%(w/v)の濃度のダイズ加水分解物および0.1%(w/v)の酵母加水分解物を含む培地における細胞増殖は、約21.0×105細胞/mlの細胞密度に達し、そして、そのために、約0.4%(w/v)のダイズ加水分解物単独での細胞増殖と比較して約2倍高い細胞密度を示し、約0.4%(w/v)の酵母加水分解物単独での細胞増殖と比較して約2.5倍高い細胞密度を示した。酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を含む培地中で培養した細胞の代謝活性はまた、酵母加水分解物単独またはダイズ加水分解物単独で含む培地中での細胞増殖と比較して、より高かった。0.1%(w/v)の酵母加水分解物を含む培地中では、酸素消費速度は、1.5(%/分)であり、0.4%(w/v)の酵母加水分解物単独またはダイズ加水分解物単独を含む培地中では1.0(%/分)未満であった。0.1%(w/v)の酵母加水分解物および0.3%(w/v)のダイズ加水分解物を含む培地中では、酸素消費は、約2.9(%/分)であり、これは、ダイズ加水分解物単独または酵母加水分解物単独を含む培地中で培養した細胞よりも、約2倍高かった。
【0059】
さらに、細胞周期(酵母加水分解物単独またはダイズ加水分解物単独を補充した動物性タンパク質非含有培地中では7日間)が、加水分解物組み合わせ(ダイズおよび酵母)培地では、6日間である。
【0060】
(実施例3)
(組換え細胞の増殖)
組換え哺乳動物細胞の細胞培養物(例えば、rFVIII−CHO細胞)を、10Lの攪拌タンク中で、潅流しながら、培養した。実施例1の培地を、培養増殖培地として使用する。細胞を、多孔性マイクロキャリア(Cytopore(登録商標),Pharmacia)に固定化して、少なくとも6週間培養した。灌流速度は、1日あたり4容量交換であり;pHは6.9〜7.2であり;O2濃度は、約20〜50%であり、温度は37℃である。細胞密度を決定する。
【0061】
(実施例4)
(酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を補充した培地中でのベロ細胞増殖におけるウイルス抗原の産生の比較)
(a.細胞培養バイオマスの産生)
規定された継代数を有するベロ細胞を、液体窒素から融解し、そしてルーおよびローラーボトル中で継代し、1.5リットルのバイオリアクターに接種するのに十分な細胞を産生した。実施例1および2に記載のように、細胞を、酵母加水分解物を補充した基本培地、または酵母加水分解物とダイズ加水分解物との組み合わせを補充した基本培地のいずれかにおいて、増殖させた。最終濃度1.5×106細胞/mlのコンフルエントに達した後、細胞を、米国特許出願第10/006,223号に記載されるように、プロナーゼ(
S.griseusトリプシン(SGT))の精製画分を用いて、マイクロキャリアから放出し、そして、10リットルのバイオリアクターに移した。これを次に、3.0g/lのマイクロキャリア濃度を有する100リットルのバイオリアクターのための接種材料として用いた。107細胞を含む作業(working)細胞バンクのアンプルから開始して、最後の発酵容器中での最終的なコンフルエントのベロ細胞バイオマスに達するために、約30世代が必要であった。細胞を37℃で増殖した。酸素飽和20%+/−10%、およびpH7.1+/−0.35の培養条件を、ウイルス増殖プロセスの間、一定に維持した。
【0062】
ベロ細胞の生きている(working)細胞バンクの細胞を、1:6の分配比で、Tフラスコおよびローラーボトル中で拡大した。細胞のさらなる増殖を、Cytodex1(登録商標)マイクロキャリアを付着基材として使用するバイオリアクターとしての1.5、10および50リットルの攪拌した醗酵槽中で、行った。細胞を、37℃で増殖した。酸素飽和20%+/−10%、およびpH7.1+/−0.35の培養条件を、ウイルス増殖プロセスの間、一定に維持した。
【0063】
(b.インフルエンザウイルスの増殖)
ベロ細胞を、2つの異なるインフルエンザ株(New Caledonia A/H1N1およびPanama A/H3N2)に感染させ、そしてそれぞれの培地中で増殖させた。ウイルス増殖プロセスの終期において、ウイルスを含む明澄化した上清を、超遠心にて精製した。酵母加水分解物を単独で含むか、または酵母加水分解物とダイズ加水分解物を含む、採取したベロ細胞培養物を、容量での抗原産生性(総SRD、単純放射免疫拡散法)、および培養の終期での上清の抗原含量(密度勾配精製抗原)を基礎に比較した。両方の培地組成での収量を比較して、表1にまとめた。
【0064】
【表1】
【0065】
酵母加水分解物とダイズ加水分解物との組み合わせは、酵母加水分解物単独と比較して、改善を示す。
【0066】
(c.ポックスウイルスの産生)
ベロ細胞を、0.1〜0.3の感染効率(m.o.i.)での何回かの継代による動物性タンパク質非含有ベロ細胞中での増殖に適合した、天然痘ワクチン産生株(Dryvax,Wyeth Vaccines,Acambis,Inc.より入手。永久細胞株における増殖に適合したウシリンパワクチン株)で感染させた。2〜4日、37℃での細胞のインキュベーションの後、細胞を、採取して、ウイルスを細胞から回収した。
【0067】
表2は、酵母加水分解物単独を補充したか、または酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を補充した基本培地におおて増殖した細胞において得られたウイルスの収量の結果を示す。
【0068】
【表2】
【0069】
酵母加水分解物とダイズ加水分解物との組み合わせは、酵母加水分解物単独よりも顕著な改善を示す。
【0070】
(d.ロス川ウイルスの産生)
本明細書に記載されるように得たベロ細胞培養物を、ロス川ウイルスに0.1〜0.3の感染効率(m.o.i.)で感染させた。2〜4日、37℃での細胞のインキュベーションの後、細胞を、採取して、ウイルスを細胞から回収した。表3は、酵母加水分解物単独を補充したか、または酵母加水分解物およびダイズ加水分解物を補充した基本培地におおて増殖した細胞において得られたウイルスの収量の結果を示す。
【0071】
【表3】
【0072】
酵母加水分解物とダイズ加水分解物との組み合わせは、酵母加水分解物単独よりも顕著な改善を示す。
【0073】
例示的な実施形態を示す、説明、具体的な実施例およびデータは、説明の目的で与えられ、そして本発明を限定することを意図しないことが、理解されるべきである。本発明内の種々の変更および改変が、本明細書に含まれる考察、開示およびデータから当業者によって明らかとなり、従って、そのような変更および改変は本発明の一部である。