特許第6244295号(P6244295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244295
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】加速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/12 20060101AFI20171127BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20171127BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20171127BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G01P15/12 D
   G01P15/08 101C
   G01P15/18
   H01L29/84 A
【請求項の数】10
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-247866(P2014-247866)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-109575(P2016-109575A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】511071234
【氏名又は名称】株式会社トライフォース・マネジメント
(74)【代理人】
【識別番号】100091476
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和廣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 美穂
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−13562(JP,A)
【文献】 特許第5503796(JP,B2)
【文献】 特開平8−285883(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0111031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00−15/18
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状筐体と、前記枠状筐体の内部に収容された重錘体と、前記重錘体と前記枠状筐体とを接続する可撓性接続体と、前記可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子と、前記検出素子による検出結果に基づいて前記枠状筐体に作用した加速度を示す信号を出力する検出回路と、を備えた加速度センサであって、
前記可撓性接続体は、第1のアーム部と第2のアーム部とを有し、
XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記第1のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第1のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第1のY軸平行橋梁部と、を有しており、前記第1のアーム部の根端部は前記枠状筐体の所定箇所に固定され、前記第1のアーム部の先端部は前記重錘体の所定箇所に接続されており、
前記第2のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第2のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第2のY軸平行橋梁部と、を有しており、前記第2のアーム部の根端部は前記枠状筐体の所定箇所に固定され、前記第2のアーム部の先端部は前記重錘体の所定箇所に接続されており、
前記検出素子は、前記第1のアーム部の所定箇所に固定された第1グループの検出素子と前記第2のアーム部の所定箇所に固定された第2グループの検出素子とを有し、
前記枠状筐体が、X軸に平行な一対の対辺とY軸に平行な一対の対辺とを有する矩形状の構造体をなし、XY平面上に配置されており、
前記第1のアーム部の根端部が、前記枠状筐体のX軸に平行な一辺の所定箇所に固定され、前記第2のアーム部の根端部が、前記枠状筐体のY軸に平行な一辺の所定箇所に固定されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の加速度センサにおいて、
枠状筐体の4隅にそれぞれ隅点を定義し、枠状筐体の各部について最近接隅点を求め、同一の最近接隅点を有する部分を同一の属性領域と定義したときに、第1のアーム部の根端部と第2のアーム部の根端部とが、枠状筐体の同一属性領域に固定されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項3】
枠状筐体と、前記枠状筐体の内部に収容された重錘体と、前記重錘体と前記枠状筐体とを接続する可撓性接続体と、前記可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子と、前記検出素子による検出結果に基づいて前記枠状筐体に作用した加速度を示す信号を出力する検出回路と、を備えた加速度センサであって、
前記可撓性接続体は、第1のアーム部と第2のアーム部とを有し、
XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記第1のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第1のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第1のY軸平行橋梁部と、を有しており、前記第1のアーム部の根端部は前記枠状筐体の所定箇所に固定され、前記第1のアーム部の先端部は前記重錘体の所定箇所に接続されており、
前記第2のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第2のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第2のY軸平行橋梁部と、を有しており、前記第2のアーム部の根端部は前記枠状筐体の所定箇所に固定され、前記第2のアーム部の先端部は前記重錘体の所定箇所に接続されており、
前記検出素子は、前記第1のアーム部の所定箇所に固定された第1グループの検出素子と前記第2のアーム部の所定箇所に固定された第2グループの検出素子とを有し、
前記枠状筐体が、X軸に平行な一対の対辺とY軸に平行な一対の対辺とを有する矩形状の構造体をなし、XY平面上に配置されており、
前記第1のアーム部の根端部が、前記枠状筐体のX軸に平行な一辺の所定箇所に固定され、前記第2のアーム部の根端部が、前記枠状筐体のX軸に平行な一辺の所定箇所に固定されており、
前記枠状筐体の4隅にそれぞれ隅点を定義し、前記枠状筐体の各部について最近接隅点を求め、同一の最近接隅点を有する部分を同一の属性領域と定義したときに、前記第1のアーム部の根端部と前記第2のアーム部の根端部とが、前記枠状筐体の同一属性領域に固定されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の加速度センサにおいて、
第1のアーム部の先端部と第2のアーム部の先端部とが相互に接続されており、これら両先端部の接続点の近傍に重錘体が接続されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項5】
枠状筐体と、前記枠状筐体の内部に収容された重錘体と、前記重錘体と前記枠状筐体とを接続する可撓性接続体と、前記可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子と、前記検出素子による検出結果に基づいて前記枠状筐体に作用した加速度を示す信号を出力する検出回路と、を備えた加速度センサであって、
前記可撓性接続体は、第1のアーム部と第2のアーム部とを有し、
XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記第1のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第1のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第1のY軸平行橋梁部と、を有しており、前記第1のアーム部の根端部は前記枠状筐体の所定箇所に固定され、前記第1のアーム部の先端部は前記重錘体の所定箇所に接続されており、
前記第2のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第2のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第2のY軸平行橋梁部と、を有しており、前記第2のアーム部の根端部は前記枠状筐体の所定箇所に固定され、前記第2のアーム部の先端部は前記重錘体の所定箇所に接続されており、
前記検出素子は、前記第1のアーム部の所定箇所に固定された第1グループの検出素子と前記第2のアーム部の所定箇所に固定された第2グループの検出素子とを有し、
前記第1のアーム部の先端部と前記第2のアーム部の先端部とが相互に接続されており、これら両先端部の接続点の近傍に前記重錘体が接続されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の加速度センサにおいて、
重錘体の周囲を第1のアーム部と第2のアーム部とが取り囲み、更に、第1のアーム部と第2のアーム部の周囲を枠状筐体が取り囲む構造を有することを特徴とする加速度センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の加速度センサにおいて、
第1のアーム部および第2のアーム部の所定箇所の外側側面とこれに対向する枠状筐体の所定箇所の内側側面との距離が、各アーム部に弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合に、前記外側側面と前記内側側面とが当接することにより前記許容範囲を越える変形を抑止するのに適した距離に設定されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の加速度センサにおいて、
重錘体の下方に所定距離をおいて配置され、枠状筐体に固定された下方基板と、重錘体の上方に所定距離をおいて配置され、枠状筐体に固定された上方基板と、を備え、
前記下方基板と前記重錘体との距離および前記上方基板と前記重錘体との距離が、各アーム部に弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合に、前記下方基板の上面と前記重錘体の下面とが当接することにより、もしくは、前記上方基板の下面と前記重錘体の上面とが当接することにより、前記許容範囲を越える変形を抑止するのに適した距離に設定されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の加速度センサにおいて、
枠状筐体と、重錘体と、第1のアーム部と、第2のアーム部とが、同一の材質から構成されており、第1のアーム部および第2のアーム部のZ軸方向の厚みを、枠状筐体および重錘体のZ軸方向の厚みよりも小さく設定することにより、第1のアーム部および第2のアーム部を可撓性接続体として機能させることを特徴とする加速度センサ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の加速度センサにおいて、
可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子として、各アーム部の所定箇所における長手方向に関する伸縮状態を検出するピエゾ抵抗素子を用いることを特徴とする加速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサに関し、特に、所定の座標軸方向に作用した加速度を個々の軸方向成分ごとに検出する機能をもった加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
各種車両、船舶、航空機などでは、姿勢制御やナビゲーションの情報を得るために加速度センサが利用されている。また、ロボットや産業機械においても、その動きを的確に制御するため、様々な箇所に加速度センサが取り付けられている。このようなセンサのうち、装置筐体内に可撓性部材を介して重錘体を取付け、この重錘体の慣性を利用して加速度の検出を行うタイプのセンサは、一般に慣性センサと呼ばれている。
【0003】
慣性センサでは、作用した加速度に基づいて装置筐体が移動すると、内部の重錘体は慣性により元の位置に留まろうとするため、重錘体は装置筐体に対して相対的な変位を生じる。この変位を電気的に検出することにより、作用した加速度を検出することができる。
【0004】
このような慣性センサでは、装置筐体内に重錘体を支持するための様々な支持構造が提案されており、また、作用した加速度を電気信号として検出するために、様々な検出素子が利用されている。たとえば、下記の特許文献1には、ダイアフラムの中央部に重錘体を垂下させ、ダイアフラムの周囲部を台座によって装置筐体に支持固定する構造を採用した加速度センサが開示されている。この加速度センサでは、ダイアフラムの所定位置に形成したピエゾ抵抗素子を利用して、作用した加速度の特定の軸方向成分を電気信号として検出することができる。また、特許文献2には、慣性センサを角速度センサに応用した技術として、重錘体を1本の橋梁部によって支持した状態で振動させ、角速度を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−174571号公報
【特許文献2】WO2008/035683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の特許文献1に開示されているように、重錘体をダイアフラムの中央に垂下させ、ダイアフラムの周囲を台座で固定する支持構造を採用している従来の加速度センサは、構造が非常に単純であるため、製造コストを大幅に低減できるというメリットがある。しかも、重錘体の周囲を取り囲むように配置されたダイアフラムの撓みを検出することにより、重錘体の変位検出が可能になるため、比較的感度の高い検出を行うことができる。しかしながら、ダイアフラムの周囲が台座によって装置筐体に固定されているため、利用時に装置筐体に何らかの応力が加わると、当該応力が台座を介してダイアフラムまで伝達され、検出結果に影響を与えるという問題がある。
【0007】
たとえば、利用時の温度環境により装置筐体が膨張したり収縮したりすると、当該応力がダイアフラムまで伝達され、検出結果に悪影響を及ぼすことになる。また、装置筐体を何らかの測定対象物に実装するために、接着剤やネジで固定したとすると、当該実装時に装置筐体に応力が加わる可能性があり、当該応力により検出結果に悪影響が及ぶことになる。
【0008】
これに対して、前掲の特許文献2に開示されているように、重錘体を1本のアームによって支持する片持ち梁構造を採用すると、1本のアームの根端部が装置筐体に固定されるだけなので、装置筐体に生じた応力に基づく検出結果への悪影響はほとんど無視できる。しかしながら、装置筐体内での重錘体の変位を、1本のアームの撓みによって検出せざるを得ないので、効率的な検出を行うことができず、検出感度が低下することは否めない。
【0009】
そこで本発明は、温度や取付状態などの利用環境による悪影響を排除しつつ、高い検出感度をもって加速度を検出することが可能な加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、枠状筐体と、この枠状筐体の内部に収容された重錘体と、重錘体と枠状筐体とを接続する可撓性接続体と、可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子と、検出素子による検出結果に基づいて枠状筐体に作用した加速度を示す信号を出力する検出回路と、を備えた加速度センサにおいて、
可撓性接続体が、第1のアーム部と第2のアーム部とを有するようにし、
XYZ三次元座標系を定義したときに、
第1のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第1のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第1のY軸平行橋梁部と、を有しており、第1のアーム部の根端部は枠状筐体の所定箇所に固定され、第1のアーム部の先端部は重錘体の所定箇所に接続されており、
第2のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第2のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第2のY軸平行橋梁部と、を有しており、第2のアーム部の根端部は枠状筐体の所定箇所に固定され、第2のアーム部の先端部は重錘体の所定箇所に接続されており、
検出素子は、第1のアーム部の所定箇所に固定された第1グループの検出素子と第2のアーム部の所定箇所に固定された第2グループの検出素子とを有するようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る加速度センサにおいて、
枠状筐体が、X軸に平行な一対の対辺とY軸に平行な一対の対辺とを有する矩形状の構造体をなし、XY平面上に配置されており、
第1のアーム部の根端部が、枠状筐体のX軸に平行な一辺の所定箇所に固定され、第2のアーム部の根端部が、枠状筐体のY軸に平行な一辺の所定箇所に固定されているようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1の態様に係る加速度センサにおいて、
枠状筐体が、X軸に平行な一対の対辺とY軸に平行な一対の対辺とを有する矩形状の構造体をなし、XY平面上に配置されており、
第1のアーム部の根端部が、枠状筐体のX軸に平行な一辺の所定箇所に固定され、第2のアーム部の根端部が、枠状筐体のX軸に平行な一辺の所定箇所に固定されているようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第2または第3の態様に係る加速度センサにおいて、
枠状筐体の4隅にそれぞれ隅点を定義し、枠状筐体の各部について最近接隅点を求め、同一の最近接隅点を有する部分を同一の属性領域と定義したときに、第1のアーム部の根端部と第2のアーム部の根端部とが、枠状筐体の同一属性領域に固定されているようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第4の態様に係る加速度センサにおいて、
第1のアーム部の先端部と第2のアーム部の先端部とが相互に接続されており、これら両先端部の接続点の近傍に重錘体が接続されているようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第4の態様に係る加速度センサにおいて、
第1のアーム部の先端部が重錘体の第1の支持点に接続され、第2のアーム部の先端部が重錘体の上記第1の支持点とは異なる第2の支持点に接続されているようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係る加速度センサにおいて、
第1のアーム部が、第1のX軸平行橋梁部と第1のY軸平行橋梁部との間を接続する第1の中間接続部を有し、
第2のアーム部が、第2のX軸平行橋梁部と第2のY軸平行橋梁部との間を接続する第2の中間接続部を有し、
各アーム部について、重錘体に近い側を内側、枠状筐体に近い側を外側と定義したときに、
第1の中間接続部が、第1のX軸平行橋梁部の第1の中間接続部に対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部と、第1のY軸平行橋梁部の第1の中間接続部に対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部と、を有し、
第2の中間接続部が、第2のX軸平行橋梁部の第2の中間接続部に対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部と、第2のY軸平行橋梁部の第2の中間接続部に対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部と、を有するようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第5の態様に係る加速度センサにおいて、
第1のアーム部が、第1のY軸平行橋梁部の先端部と重錘体とを接続する第1の重錘体接続部を有し、
第2のアーム部が、第2のX軸平行橋梁部の先端部と重錘体とを接続する第2の重錘体接続部を有し、
第1の重錘体接続部と第2の重錘体接続部とは相互に接続されており、
各アーム部について、重錘体に近い側を内側、枠状筐体に近い側を外側と定義したときに、
第1の重錘体接続部が、第1のY軸平行橋梁部の第1の重錘体接続部に対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部を有し、
第2の重錘体接続部が、第2のX軸平行橋梁部の第2の重錘体接続部に対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部を有するようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第6の態様に係る加速度センサにおいて、
重錘体が、第1のアーム部の先端部の側面よりも外側に突き出した庇構造部と、第2のアーム部の先端部の側面よりも外側に突き出した庇構造部と、を有するようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係る加速度センサにおいて、
重錘体の周囲を第1のアーム部と第2のアーム部とが取り囲み、更に、第1のアーム部と第2のアーム部の周囲を枠状筐体が取り囲む構造を採用したものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第10の態様に係る加速度センサにおいて、
第1のアーム部および第2のアーム部の所定箇所の外側側面とこれに対向する枠状筐体の所定箇所の内側側面との距離が、各アーム部に弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合に、上記外側側面と上記内側側面とが当接することにより許容範囲を越える変形を抑止するのに適した距離に設定されているようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第1〜第11の態様に係る加速度センサにおいて、
重錘体の下方に所定距離をおいて配置され、枠状筐体に固定された下方基板と、重錘体の上方に所定距離をおいて配置され、枠状筐体に固定された上方基板と、を更に設け、
下方基板と重錘体との距離および上方基板と重錘体との距離が、各アーム部に弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合に、下方基板の上面と重錘体の下面とが当接することにより、もしくは、上方基板の下面と重錘体の上面とが当接することにより、許容範囲を越える変形を抑止するのに適した距離に設定されているようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第12の態様に係る加速度センサにおいて、
枠状筐体と、重錘体と、第1のアーム部と、第2のアーム部とが、同一の材質から構成されており、第1のアーム部および第2のアーム部のZ軸方向の厚みを、枠状筐体および重錘体のZ軸方向の厚みよりも小さく設定することにより、第1のアーム部および第2のアーム部を可撓性接続体として機能させるようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第1〜第13の態様に係る加速度センサにおいて、
可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子として、各アーム部の所定箇所における長手方向に関する伸縮状態を検出するピエゾ抵抗素子を用いるようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係る加速度センサにおいて、
第1グループの検出素子が、第1のアーム部の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第1の根端部素子と、第1のアーム部の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第1の先端部素子と、を有し、
第2グループの検出素子が、第2のアーム部の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第2の根端部素子と、第2のアーム部の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第2の先端部素子と、を有するようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第15の態様に係る加速度センサにおいて、
各アーム部に関して、その長手方向に沿った中心線を境界として、枠状筐体に近い側を外側、枠状筐体から遠い側を内側と定義したときに、
第1の根端部素子が、第1のアーム部の根端部近傍の中心線上に配置された第1の根端部中心素子と、第1のアーム部の根端部近傍の内側に配置された第1の根端部内側素子と、第1のアーム部の根端部近傍の外側に配置された第1の根端部外側素子と、を有し、
第1の先端部素子が、第1のアーム部の先端部近傍の中心線上に配置された第1の先端部中心素子と、第1のアーム部の先端部近傍の内側に配置された第1の先端部内側素子と、第1のアーム部の先端部近傍の外側に配置された第1の先端部外側素子と、を有し、
第2の根端部素子が、第2のアーム部の根端部近傍の中心線上に配置された第2の根端部中心素子と、第2のアーム部の根端部近傍の内側に配置された第2の根端部内側素子と、第2のアーム部の根端部近傍の外側に配置された第2の根端部外側素子と、を有し、
第2の先端部素子が、第2のアーム部の先端部近傍の中心線上に配置された第2の先端部中心素子と、第2のアーム部の先端部近傍の内側に配置された第2の先端部内側素子と、第2のアーム部の先端部近傍の外側に配置された第2の先端部外側素子と、を有するようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第16の態様に係る加速度センサにおいて、
検出回路が、
Y軸に平行な方向を長手方向とするアーム部の一部分に配置された内側素子および外側素子を用いて、作用した加速度のX軸方向成分を検出する第1のブリッジ回路と、
X軸に平行な方向を長手方向とするアーム部の一部分に配置された内側素子および外側素子を用いて、作用した加速度のY軸方向成分を検出する第2のブリッジ回路と、
中心素子を用いて、作用した加速度のZ軸方向成分を検出する第3のブリッジ回路と、
を有するようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第14の態様に係る加速度センサにおいて、
第1グループの検出素子が、
第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第1のX軸平行根端部素子と、
第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第1のX軸平行先端部素子と、
第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第1のY軸平行根端部素子と、
第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第1のY軸平行先端部素子と、を有し、
第2グループの検出素子が、
第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第2のX軸平行根端部素子と、
第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第2のX軸平行先端部素子と、
第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第2のY軸平行根端部素子と、
第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部の長手方向に関する伸縮状態を検出する第2のY軸平行先端部素子と、を有するようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第18の態様に係る加速度センサにおいて、
各アーム部に関して、その長手方向に沿った中心線を境界として、枠状筐体に近い側を外側、枠状筐体から遠い側を内側と定義したときに、
第1のX軸平行根端部素子が、第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第1のX軸平行根端部中心素子と、第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第1のX軸平行根端部内側素子と、第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第1のX軸平行根端部外側素子と、を有し、
第1のX軸平行先端部素子が、第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第1のX軸平行先端部中心素子と、第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第1のX軸平行先端部内側素子と、第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第1のX軸平行先端部外側素子と、を有し、
第1のY軸平行根端部素子が、第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第1のY軸平行根端部中心素子と、第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第1のY軸平行根端部内側素子と、第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第1のY軸平行根端部外側素子と、を有し、
第1のY軸平行先端部素子が、第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第1のY軸平行先端部中心素子と、第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第1のY軸平行先端部内側素子と、第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第1のY軸平行先端部外側素子と、を有し、
第2のX軸平行根端部素子が、第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第2のX軸平行根端部中心素子と、第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第2のX軸平行根端部内側素子と、第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第2のX軸平行根端部外側素子と、を有し、
第2のX軸平行先端部素子が、第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第2のX軸平行先端部中心素子と、第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第2のX軸平行先端部内側素子と、第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第2のX軸平行先端部外側素子と、を有し、
第2のY軸平行根端部素子が、第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第2のY軸平行根端部中心素子と、第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第2のY軸平行根端部内側素子と、第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第2のY軸平行根端部外側素子と、を有し、
第2のY軸平行先端部素子が、第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第2のY軸平行先端部中心素子と、第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第2のY軸平行先端部内側素子と、第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第2のY軸平行先端部外側素子と、を有するようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第14の態様に係る加速度センサにおいて、
各アーム部に関して、その長手方向に沿った中心線を境界として、枠状筐体に近い側を外側、枠状筐体から遠い側を内側と定義したときに、
第1グループの検出素子が、
第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第1のX軸平行根端部中心素子と、第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第1のX軸平行根端部内側素子と、第1のX軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第1のX軸平行根端部外側素子と、
第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第1のX軸平行先端部中心素子と、第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第1のX軸平行先端部内側素子と、第1のX軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第1のX軸平行先端部外側素子と、
第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第1のY軸平行根端部中心素子と、第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第1のY軸平行根端部内側素子と、第1のY軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第1のY軸平行根端部外側素子と、
第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第1のY軸平行先端部中心素子と、第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第1のY軸平行先端部内側素子と、第1のY軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第1のY軸平行先端部外側素子と、
によって構成される検出素子群の中から選択された複数の検出素子を有し、
第2グループの検出素子が、
第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第2のX軸平行根端部中心素子と、第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第2のX軸平行根端部内側素子と、第2のX軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第2のX軸平行根端部外側素子と、
第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第2のX軸平行先端部中心素子と、第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第2のX軸平行先端部内側素子と、第2のX軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第2のX軸平行先端部外側素子と、
第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍の中心線上に配置された第2のY軸平行根端部中心素子と、第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍の内側に配置された第2のY軸平行根端部内側素子と、第2のY軸平行橋梁部の根端部近傍の外側に配置された第2のY軸平行根端部外側素子と、
第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍の中心線上に配置された第2のY軸平行先端部中心素子と、第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍の内側に配置された第2のY軸平行先端部内側素子と、第2のY軸平行橋梁部の先端部近傍の外側に配置された第2のY軸平行先端部外側素子と、
によって構成される検出素子群の中から選択された複数の検出素子を有するようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19または第20の態様に係る加速度センサにおいて、
検出回路が、
第1もしくは第2のX軸平行根端部内側素子と、第1もしくは第2のX軸平行根端部外側素子と、第1もしくは第2のX軸平行先端部内側素子と、第1もしくは第2のX軸平行先端部外側素子と、を用いて、作用した加速度のX軸方向成分を検出する第1のブリッジ回路と、
第1もしくは第2のY軸平行根端部内側素子と、第1もしくは第2のY軸平行根端部外側素子と、第1もしくは第2のY軸平行先端部内側素子と、第1もしくは第2のY軸平行先端部外側素子と、を用いて、作用した加速度のY軸方向成分を検出する第2のブリッジ回路と、
中心素子を用いて、作用した加速度のZ軸方向成分を検出する第3のブリッジ回路と、
を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る加速度センサでは、枠状筐体内に収容された重錘体が2本のアーム部によって支持される。このため、重錘体の周囲をダイアフラムで取り囲む構造をもった従来の加速度センサに比べて、利用時の温度環境や取付環境に起因して生じた装置筐体の応力が検出結果に悪影響を及ぼす問題を低減することができる。特に、2本のアーム部の根端部を枠状筐体の特定の隅点近傍に配置した態様を採用すれば、その効果を更に高めることができる。しかも、2本のアーム部は、いずれもX軸平行橋梁部とY軸平行橋梁部を有しているため、様々な座標軸方向に作用した加速度成分に基づいて効率的な撓みを生じさせることができ、1本のアーム部によって重錘体を支持する純然たる片持ち梁構造を採用した場合に比べ、より良好な検出感度を確保することができる。かくして、本発明によれば、温度や取付状態などの利用環境による悪影響を排除しつつ、高い検出感度をもって加速度を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態に係る加速度センサに用いる基本構造体100の平面図(図(a) )およびその上下に基板を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図(図(b) )である。
図2図1(a) に示す基本構造体100の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図(図(a) )、およびその上下に基板を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図(図(b) )である(図(a) のハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。また、図(b) は側断面図であるが、寸法を示す便宜上、断面を示すハッチングは省略する。)。
図3図1(a) に示す基本構造体100にピエゾ抵抗素子を配置した状態を示す平面図(図(a) )およびその上下に基板を付加した構造体を切断線La−Lbに沿って切断した側断面図(図(b) )である。
図4図3に示す基本構造体100の重錘体140に対して、各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzが作用した状態を示す平面図である。
図5図3に示す重錘体140に対して、力Fx,Fy,Fzが作用した場合の個々のピエゾ抵抗素子x11〜y23の伸縮状態を示す表である(+は伸張、−は収縮、0は有意な変化なしの状態を示す)。
図6図3(b) に示す検出回路400を構成する各ブリッジ回路の回路図である。
図7図1に示す第1の実施形態に庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体100Aの平面図(図(a) )およびその上下に基板を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図(図(b) )である。
図8図7に示す基本構造体100Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図(図(a) )、およびその上下に基板を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図(図(b) )である(図(a) のハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。また、図(b) は側断面図であるが、寸法を示す便宜上、断面を示すハッチングは省略する。)。
図9図7に示す基本構造体100Aにピエゾ抵抗素子を配置した状態を示す平面図(図(a) )およびその上下に基板を付加した構造体を切断線La−Lbに沿って切断した側断面図(図(b) )である。
図10図9に示す重錘体140Aに対して、力Fx,Fy,Fzが作用した場合の個々のピエゾ抵抗素子x31〜y46の伸縮状態を示す表である(+は伸張、−は収縮、(+)は僅かな伸張、(−)は僅かな収縮、0は有意な変化なしの状態を示す)。
図11図9(b) に示す検出回路400Aを構成する各ブリッジ回路の第1のバリエーションを示す回路図である。
図12図9(b) に示す検出回路400Aを構成する各ブリッジ回路の第2のバリエーションを示す回路図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る基本構造体500の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
図14図13に示す第2の実施形態に庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体500Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
図15】本発明の第3の実施形態に係る基本構造体600の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
図16図15に示す第3の実施形態に庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体600Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
図17】本発明の第4の実施形態に係る基本構造体700の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
図18図17に示す第4の実施形態に庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体700Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
図19】本発明に係る枠状筐体810の属性領域を示す平面図である(ハッチングは枠状筐体810の部分を示すものであって、断面を示すものではない。)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、枠状筐体と、この枠状筐体の内部に収容された重錘体と、重錘体と枠状筐体とを接続する可撓性接続体と、可撓性接続体の撓みを電気的に検出する検出素子と、検出素子による検出結果に基づいて枠状筐体に作用した加速度を示す信号を出力する検出回路と、を備えた加速度センサに係るものである。
【0034】
本発明の基本的な技術思想は、このような加速度センサにおいて、可撓性接続体として第1のアーム部と第2のアーム部とを用い、XYZ三次元座標系を定義したときに、第1のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第1のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第1のY軸平行橋梁部と、を有しており、第1のアーム部の根端部は枠状筐体の所定箇所に固定され、第1のアーム部の先端部は重錘体の所定箇所に接続されるようにし、第2のアーム部は、X軸に平行な方向に伸びる第2のX軸平行橋梁部と、Y軸に平行な方向に伸びる第2のY軸平行橋梁部と、を有しており、第2のアーム部の根端部は枠状筐体の所定箇所に固定され、第2のアーム部の先端部は重錘体の所定箇所に接続されているようにし、検出素子を、第1のアーム部の所定箇所に固定された第1グループの検出素子と第2のアーム部の所定箇所に固定された第2グループの検出素子とによって構成した点にある。
【0035】
以下、このような基本的な技術思想に基づく本発明を、図面を参照しながら、いくつかの実施形態について具体的に説明する。
【0036】
<<< §1. 本発明の第1の実施形態 >>>
<1−1. 第1の実施形態に用いられる基本構造体>
図1(a) は、本発明の第1の実施形態に係る加速度センサに用いられる基本構造体100を上方から見た平面図である。ここでは、便宜上、図示の位置に原点Oをとり、図の右方にX軸、図の上方にY軸、紙面垂直手前方向にZ軸をそれぞれとり、XYZ三次元直交座標系を定義して以下の説明を行うことにする。
【0037】
図1(a) に示すとおり、この基本構造体100の主要な構成要素は、枠状筐体110と、その内部に配置された2本のL字状のアーム部120,130と、重錘体140である。枠状筐体110は、X軸に平行な一対の対辺(図の上下の辺)とY軸に平行な一対の対辺(図の左右の辺)とを有する矩形状の構造体をなし、XY平面上に配置されている。図示の実施例の場合、枠状筐体110は正方形状をしている。
【0038】
図1(b) は、図1(a) に示す基本構造体100の上下にそれぞれ基板を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図である。具体的には、図1(b) に示す構造体は、基本構造体100の下方に下方基板200を付加し、上方に上方基板300を付加したものである。下方基板200は、正方形の板状基板であり、その上面周囲部には、枠状筐体110の下面が固定されている。一方、上方基板300は、正方形の板状基板である天板部310とその下面周囲部に連接された側壁部320とを有し、側壁部320の下面は枠状筐体110の上面に固定されている。
【0039】
このように、枠状筐体110、下方基板200、上方基板300は、重錘体140の周囲を取り囲む構造体をなし、全体として、この加速度センサの装置筐体として機能する。重錘体140は、この装置筐体の内部に宙吊り状態になるように、2本のアーム部120,130によって支持されている。図1(b) に示すとおり、2本のアーム部120,130は、他の部材に比べて厚みが小さく、しかも細長い橋梁構造を有しているため、弾性変形に基づいて撓みを生じる可撓性接続部材としての役割を果たす。
【0040】
一方、重錘体140は、加速度検出に必要な質量を備えており、装置筐体に対して加速度が作用すると、これに応じた慣性力を受け、2本のアーム部120,130が撓みを生じることによって装置筐体内で変位する。本発明に係る加速度センサは、この重錘体140の装置筐体内での変位に基づいて、作用した加速度の検出を行う。そこで、ここでは、図1(b) に示すとおり、重錘体140の重心位置にXYZ三次元座標系の原点Oを定義する。基本構造体100の上面、下方基板200の上面、上方基板300の上面は、いずれもXY平面に平行な平面になり、Z軸が中心軸となるように配置されている。
【0041】
図2(a) は、図1に示す基本構造体100の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。図示のとおり、枠状筐体110は、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部111、左辺枠部112、上辺枠部113、右辺枠部114の4辺を有している。
【0042】
第1のアーム部120は、図に斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第1の固定部121、第1のX軸平行橋梁部122、第1のY軸平行橋梁部123、第1の重錘体接続部124を有している。第1の固定部121は、接続点P1において枠状筐体110の下辺枠部111に接続されており、第1のX軸平行橋梁部122へと連なる。第1のX軸平行橋梁部122は、X軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、第1のY軸平行橋梁部123へと連なる。第1のY軸平行橋梁部123は、Y軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、第1の重錘体接続部124へと連なる。
【0043】
一方、第2のアーム部130は、第1のアーム部120とは逆向きの斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第2の固定部131、第2のY軸平行橋梁部132、第2のX軸平行橋梁部133、第2の重錘体接続部134を有している。第2の固定部131は、接続点P2において枠状筐体110の左辺枠部112に接続されており、第2のY軸平行橋梁部132へと連なる。第2のY軸平行橋梁部132は、Y軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、第2のX軸平行橋梁部133へと連なる。第2のX軸平行橋梁部133は、X軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、第2の重錘体接続部134へと連なる。
【0044】
そして、第1の重錘体接続部124と第2の重錘体接続部134とは相互に接続されており、両者が接続される接続点P3に重錘体140も接続されている。重錘体140は、網目状のハッチングを施して示すとおり、正方形状の領域からなり、接続点P3において、2本のアーム部120,130によって支持されている。図2(a) の平面図を見れば明らかなように、この基本構造体100は、重錘体140の周囲を第1のアーム部120と第2のアーム部130とが取り囲み、更に、第1のアーム部120と第2のアーム部130の周囲を枠状筐体110が取り囲む構造を有しているため、空間的な占有効率を向上させることができ、装置の薄型化を図ることができる。
【0045】
上述したとおり、各アーム部120,130は、枠状筐体110と重錘体140とを接続する可撓性接続体としての機能を果たすことになるが、本願では、各アーム部に沿った接続路を考えたときに、枠状筐体110に近い側を根端部と呼び、重錘体140に近い側を先端部と呼ぶことにする。
【0046】
結局、第1のアーム部120は、X軸に平行な方向に伸びる第1のX軸平行橋梁部122と、Y軸に平行な方向に伸びる第1のY軸平行橋梁部123と、を有しており、第1のアーム部120の根端部は枠状筐体110の所定箇所(接続点P1)に固定され、第1のアーム部120の先端部は重錘体140の所定箇所(接続点P3)に接続されている。同様に、第2のアーム部130は、Y軸に平行な方向に伸びる第2のY軸平行橋梁部132と、X軸に平行な方向に伸びる第2のX軸平行橋梁部133と、を有しており、第2のアーム部130の根端部は枠状筐体110の所定箇所(接続点P2)に固定され、第2のアーム部130の先端部は重錘体140の所定箇所(接続点P3)に接続されている。
【0047】
別言すれば、第1のアーム部120の根端部(図示の例では、第1の固定部121)は、枠状筐体110のX軸に平行な一辺(図示の例では、下辺枠部111)の所定箇所(接続点P1)に固定され、第2のアーム部130の根端部(図示の例では、第2の固定部131)が、枠状筐体110のY軸に平行な一辺(図示の例では、左辺枠部112)の所定箇所(接続点P2)に固定されている。そして、第1のアーム部120の先端部(図示の例では、第1の重錘体接続部124)と第2のアーム部130の先端部(図示の例では、第2の重錘体接続部134)とは相互に接続されており、これら両先端部の接続点P3の近傍に重錘体140が接続されている。
【0048】
図2(b) は、図2(a) に示す基本構造体100に基板200,300を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図である(寸法を示す便宜上、断面を示すハッチングは省略)。図2(b) には、各部の寸法が符号t1〜t7で示されているが、図2(a) の平面図において、同一のハッチングが施された領域は、同一の厚みを有する。
【0049】
具体的には、基本構造体100については、図2(b) に示すとおり、枠状筐体110の厚みt1が最も大きく、次に重錘体140の厚みt2が大きく、2本のアーム部120,130の厚みt3が最も小さく設定されている。また、下方基板200の厚みt4は、その上に積載される各部品(実質的に、下方基板200以外の全部品)の重量を支えるだけの堅牢性を維持するのに適切な厚みに設定すれば足り、上方基板300の厚みt5は、装置筐体の天板として必要な堅牢性を維持するのに適切な厚みに設定すれば足る。
【0050】
重錘体140の厚みt2を枠状筐体110の厚みt1より小さく設定しているのは、重錘体140の下面と下方基板200の上面との間に所定の空隙寸法t6を確保するためである。一方、側壁部320は、重錘体140の上面と天板部310の下面との間に空隙寸法t7を確保する役割を果たす。結局、重錘体140は、下方および上方に、空隙寸法t6およびt7に応じた自由度で変位可能になる。
【0051】
ここに示す実施例の場合、基本構造部100は、同一の材質(具体的には、シリコン)によって構成されている。すなわち、図2(a) の平面図に示されている枠状筐体110と、重錘体140と、第1のアーム部120と、第2のアーム部130とは、すべて同一の材質(シリコン)から構成されている。ただ、図2(b) に示すように、第1のアーム部120および第2のアーム部130のZ軸方向の厚みt3は、枠状筐体110のZ軸方向の厚みt1や重錘体140のZ軸方向の厚みt2よりも小さく設定されているため、枠状筐体110および重錘体140が剛体に近い振る舞いをするのに対して、第1のアーム部120および第2のアーム部130は弾性体としての振る舞いを見せ、可撓性接続体として機能することになる。
【0052】
要するに、枠状筐体110の厚みt1、下方基板200の厚みt4、天板部310の厚みt5は、装置筐体として必要な剛性を確保するのに十分な寸法に設定すればよく、重錘体140の厚みt2は、加速度の作用により重錘体140が検出に十分な変位を生じる質量を確保するのに必要な寸法に設定すればよい。また、2本のアーム部120,130の厚みt3は、検出に必要な可撓性が確保できるように設定すればよく、重錘体140の上下に生じる空隙寸法t6,t7は、センサとしての検出レンジ内の加速度が作用したときに、重錘体140が下方基板200の上面や上方基板300の下面に接触しないのに十分な空隙が確保できるように設定すればよい。
【0053】
たとえば、ここに示す実施例の場合、基本構造部100を、一辺1mm角、厚み0.4mmのシリコン基板に対して成形工程を施すことにより構成し、t1=0.4mm、t2=0.39mm、t3=5μmに設定している。また、下方基板200および上方基板300もシリコン基板によって構成し、t4=0.2mm、t5=0.2mmとしている。その結果、2本のアーム部120,130は、幅0.1mm、厚み5μmのシリコンからなる板状橋梁構造体となり、加速度センサとして必要な可撓性を有する部材になっている。なお、図面上の各部の寸法比は、図示の便宜上、上述した実寸比を正確に反映したものにはなっていない。もちろん、各部の寸法は任意に設定することができ、適正な設計寸法は各部の材質やセンサの用途に応じて適宜決められるべきものである。たとえば、各アーム部120,130に必要な可撓性が得られるならば、t2=t3に設定してもかまわない。
【0054】
<1−2. 第1の実施形態における検出素子および検出回路>
本発明の第1の実施形態に係る加速度センサは、図1(b) に示す構造体(基本構造体100に、下方基板200および上方基板300を付加したもの)に、検出素子および検出回路を付加することにより構成される。そこで、ここでは、検出素子の具体的な配置と、これら検出素子を用いて構成される具体的な検出回路について述べる。
【0055】
本発明に用いる検出素子としては、可撓性接続体(第1のアーム部120および第2のアーム部130)の撓みを電気的に検出する機能をもった素子であれば、どのような素子を用いてもかまわない。ただ、実用上は、検出素子として、各アーム部の所定箇所における長手方向に関する伸縮状態を検出することができるように配置されたピエゾ抵抗素子を用いるのが好ましい。また、作用した加速度を示す信号を出力する検出回路としては、ピエゾ抵抗素子を組み合わせて構成されたブリッジ回路を用いるのが好ましい。したがって、以下、検出素子としてピエゾ抵抗素子を用い、検出回路としてブリッジ回路を用いた例を説明することにする。
【0056】
図3(a) は、図1(a) に示す基本構造体100に、12組のピエゾ抵抗素子を配置した状態を示す平面図である。ここで、一点鎖線で示す直線L1〜L4は、各アーム部の長手方向に沿った中心線である。具体的には、中心線L1は、第1のX軸平行橋梁部122の中心線であり、中心線L2は、第1のY軸平行橋梁部123の中心線であり、中心線L3は、第2のY軸平行橋梁部132の中心線であり、中心線L4は、第2のX軸平行橋梁部133の中心線である。
【0057】
前述したように、本発明では、第1のアーム部120の所定箇所に固定された第1グループの検出素子と第2のアーム部130の所定箇所に固定された第2グループの検出素子とが用いられる。
【0058】
図3に示す実施例の場合、第1グループの検出素子は、第1のアーム部120の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部120の長手方向(中心軸L1方向)に関する伸縮状態を検出する第1の根端部素子x11〜x13と、第1のアーム部120の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部120の長手方向(中心軸L2)に関する伸縮状態を検出する第1の先端部素子y11〜y13と、を有している。
【0059】
一方、第2グループの検出素子は、第2のアーム部130の根端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部130の長手方向(中心軸L3方向)に関する伸縮状態を検出する第2の根端部素子y21〜y23と、第2のアーム部130の先端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部130の長手方向(中心軸L4方向)に関する伸縮状態を検出する第2の先端部素子x21〜x23と、を有している。
【0060】
図3(b) は、図3(a) に示す基本構造体100の上下にそれぞれ基板200,300を付加した構造体を、図3(a) に示す切断線La−Lbに沿って切断した側断面図であり、ちょうど第2の根端部素子y21〜y23を切断した断面が示されている。上述したとおり、ここに示す実施例の場合、基本構造体100はシリコン基板により構成されており、各検出素子はピエゾ抵抗素子によって構成されている。したがって、実際には、ピエゾ抵抗素子は、シリコン基板の表面部分に不純物を導入した領域として形成することができる。このような構造は、量産型の加速度センサを製造する上で好適である。
【0061】
図3(b) に黒い領域として示されている検出素子y21〜y23は、板状のシリコンからなる第2のアーム部130の上面に不純物を導入することによって構成されたピエゾ抵抗素子である。各ピエゾ抵抗素子は、いずれもその配置位置におけるアーム部の長手方向に沿って伸びるように配置されており、その両端部から検出回路400に対して配線がなされることになる(図3(a) では、各ピエゾ抵抗素子に対する配線は省略されている。)。なお、基本構造体100をシリコン基板によって構成しておけば、その一部の領域に半導体集積回路として、検出回路400を形成することが可能である。このように検出回路400を基本構造体100上に設けるようにすると、各検出素子に対する配線を基本構造体100の上面に形成された配線層によって構成することができる。実用上は、基本構造体100を構成するシリコン基板上にピエゾ抵抗素子と検出回路400とを半導体集積回路の製造プロセスを利用して形成するのが好ましい。
【0062】
以下、説明の便宜上、各アーム部120,130に関して、その長手方向に沿った中心線L1〜L4を境界として、枠状筐体110に近い側を外側、枠状筐体110から遠い側(重錘体140に近い側)を内側と定義することにする。
【0063】
上記定義に従えば、図3(a) に示す12組のピエゾ抵抗素子のうち、第1の根端部素子は、第1のアーム部120の根端部近傍の中心線L1上に配置された第1の根端部中心素子x12と、第1のアーム部120の根端部近傍の内側に配置された第1の根端部内側素子x11と、第1のアーム部120の根端部近傍の外側に配置された第1の根端部外側素子x13と、を有している。また、第1の先端部素子は、第1のアーム部120の先端部近傍の中心線L2上に配置された第1の先端部中心素子y12と、第1のアーム部120の先端部近傍の内側に配置された第1の先端部内側素子y11と、第1のアーム部120の先端部近傍の外側に配置された第1の先端部外側素子x13と、を有している。
【0064】
同様に、第2の根端部素子は、第2のアーム部130の根端部近傍の中心線L3上に配置された第2の根端部中心素子y22と、第2のアーム部130の根端部近傍の内側に配置された第2の根端部内側素子y21と、第2のアーム部130の根端部近傍の外側に配置された第2の根端部外側素子y23と、を有している。また、第2の先端部素子は、第2のアーム部130の先端部近傍の中心線L4上に配置された第2の先端部中心素子x22と、第2のアーム部130の先端部近傍の内側に配置された第2の先端部内側素子x21と、第2のアーム部130の先端部近傍の外側に配置された第2の先端部外側素子x23と、を有している。
【0065】
続いて、図3に示す基本構造体100において、重錘体140に対して各座標軸方向の力が作用した場合に、第1のアーム部120および第2のアーム部130にどのような撓みが生じるかを説明する。図4は、図3に示す基本構造体100の重錘体140に対して、各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzが作用した状態を示す平面図である。
【0066】
前述したとおり、ここでは、重錘体140の重心位置にXYZ三次元座標系の原点Oを定義しているため、加速度センサの装置筐体(枠状筐体110)に対して、各座標軸方向への加速度が作用すると、重錘体140の原点Oの位置に各座標軸方向への力(加速度に基づく慣性力)が作用することになる。そこで、ここでは、図4に示すとおり、重錘体140の原点Oの位置に、X軸方向の力Fxが作用した場合と、Y軸方向の力Fyが作用した場合と、Z軸方向の力Fz(紙面垂直上方への力)が作用した場合と、について、第1のアーム部120および第2のアーム部130にどのような撓みが生じるかを考えてみる。
【0067】
図5は、図3に示す基本構造体100において、枠状筐体110を固定した状態において、重錘体140に対して、力Fx,Fy,Fzが作用した場合の個々のピエゾ抵抗素子x11〜y23の伸縮状態(作用する応力)を示す表である。表の各欄において、「+」は伸張応力が作用することを示し、ピエゾ抵抗素子には長手方向に引っ張る向きの応力が加わる。一方、「−」は圧縮応力が作用することを示し、ピエゾ抵抗素子には長手方向に縮める向きの応力が加わる。また、「0」は、「+」や「−」に比べて有意な変化が生じないことを示している。この図5の表は、コンピュータシミュレーションによって得られたものである。
【0068】
たとえば、表の「+Fx」の行の各欄には、枠状筐体110を固定した状態において、重錘体140に対してX軸正方向の力+Fxが作用した場合に、12組のピエゾ抵抗素子に加わる応力の符号が記載されている。力+Fxは、図3(a) において、重錘体140を図の右方向に変位させる力になるが、図5の表の「+Fx」の行の各欄を参照すれば、このような変位が生じた場合、X軸に沿った方向を長手方向とする抵抗素子x11〜x13や、抵抗素子x21〜x23には、有意な伸縮応力は加わらないことがわかる。また、Y軸に沿った方向を長手方向とする抵抗素子でも、中心軸上に配置された抵抗素子y12,y22についても、有意な伸縮応力は加わらない。その一方で、抵抗素子y13,y23の欄には「+」が記されており、伸張応力が作用することになる。また、抵抗素子y11,y21の欄には「−」が記されており、圧縮応力が作用することになる。
【0069】
同様に、表の「+Fy」の行の各欄には、枠状筐体110を固定した状態において、重錘体140に対してY軸正方向の力+Fyが作用した場合に、各抵抗素子に加わる応力の符号が記載されており、表の「+Fz」の行の各欄には、枠状筐体110を固定した状態において、重錘体140に対してZ軸正方向の力+Fzが作用した場合に、各抵抗素子に加わる応力の符号が記載されている。また、表の「−Fx」の行の各欄、「−Fy」の行の各欄、「−Fz」の行の各欄には、各座標軸の負方向への力が作用した場合に、各抵抗素子に加わる応力の符号が記載されている。図示のとおり、正方向への力が作用した場合と、負方向への力が作用した場合とでは、符号が逆転する。
【0070】
一般に、p型のピエゾ抵抗素子では、長手方向に対して伸張応力が加わると抵抗値は増大し、圧縮応力が加わると抵抗値は減少する。したがって、図5の表に示すような結果が得られることを踏まえれば、12組のp型のピエゾ抵抗素子x11〜y23を用いて、図6に示す3組のブリッジ回路411,412,413からなる検出回路400を構成しておけば、重錘体140に作用したX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fzを電気的に検出することができる。ここで、重錘体140に作用した力Fx,Fy,Fzは、装置筐体に作用した加速度αに起因して生じる慣性力であるから、加速度αのX軸方向成分αx、Y軸方向成分αy、Z軸方向成分αzに対応するものである。したがって、図6に示す3組のブリッジ回路411,412,413は、それぞれ作用した加速度のX軸方向成分αx、Y軸方向成分αy、Z軸方向成分αzを出力する回路ということになる。
【0071】
具体的には、図6(a) に示す第1のブリッジ回路411は、Y軸に平行な方向を長手方向とするアーム部の一部分に配置された内側素子y11,y21および外側素子y13,y23を用いて、作用した加速度のX軸方向成分αxを検出する回路である。この第1のブリッジ回路411は、内側素子y11,y21を一方の対辺とし、外側素子y13,y23を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T11,T12間に電圧Vxを出力する機能を有する。この電圧Vxは、作用した加速度αのX軸方向成分αxを示している。
【0072】
一方、図6(b) に示す第2のブリッジ回路412は、X軸に平行な方向を長手方向とするアーム部の一部分に配置された内側素子x11,x21および外側素子x13,x23を用いて、作用した加速度のY軸方向成分αyを検出する回路である。この第2のブリッジ回路412は、内側素子x11,x21を一方の対辺とし、外側素子x13,x23を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T13,T14間に電圧Vyを出力する機能を有する。この電圧Vyは、作用した加速度αのY軸方向成分αyを示している。
【0073】
そして、図6(c) に示す第3のブリッジ回路413は、各中心素子x12,x22,y12,y22を用いて、作用した加速度のZ軸方向成分を検出する回路である。この第3のブリッジ回路413は、中心素子x12,y22を一方の対辺とし、中心素子x22,y12を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T15,T16間に電圧Vzを出力する機能を有する。この電圧Vzは、作用した加速度αのZ軸方向成分αzを示している。
【0074】
この図6に示す検出回路によって、加速度αの各座標軸成分の検出が可能になる理由は、図5の表を参照することにより、個々のブリッジ回路を構成するピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を考慮して個々のブリッジ回路の動作を考えれば、容易に理解できよう。たとえば、図6(a) に示す第1のブリッジ回路411について、力+Fxを生じさせる加速度αが作用したときの動作を考えると、表の「+Fx」の行の「y11」,「y21」の欄は「−」であり抵抗値は減り、「y13」,「y23」の欄は「+」であるから抵抗値は増える。したがって、出力端子T12からT11に対して電圧降下が生じるような出力電圧Vxが得られ、その絶対値は作用した加速度αの大きさに応じたものになる。
【0075】
逆に、力−Fxを生じさせる加速度αが作用したときの動作を考えると、表の「−Fx」の行の「y11」,「y21」の欄は「+」であり抵抗値は増え、「y13」,「y23」の欄は「−」であるから抵抗値は減る。したがって、出力端子T11からT12に対して電圧降下が生じるような出力電圧Vxが得られ、その絶対値は作用した加速度αの大きさに応じたものになる。したがって、出力電圧Vxの符号は、作用した加速度のX軸方向成分αxの向きを示し、出力電圧Vxの絶対値は、作用した加速度のX軸方向成分αxの大きさを示すものになる。
【0076】
なお、図5に示す表の「+Fy」,「−Fy」の行における「y11」,「y21」,「y13」,「y23」の欄は「0」であるから、加速度αのY軸方向成分αyは第1のブリッジ回路411の出力電圧Vxには影響を与えない。また、図5に示す表の「+Fz」,「−Fz」の行における「y11」,「y21」,「y13」,「y23」の欄は「+」もしくは「−」であるものの、対辺同士の抵抗素子の符号が逆になるため相殺され、加速度αのZ軸方向成分αzは第1のブリッジ回路411の出力電圧Vxには影響を与えない。このように、図6(a) に示す第1のブリッジ回路411の出力電圧Vxは、作用した加速度αのX軸方向成分αxのみを示すものになり、他軸成分αy,αzの干渉を受けることはない。
【0077】
同様の理由により、図6(b) に示す第2のブリッジ回路412の出力電圧Vyは、作用した加速度αのY軸方向成分αyのみを示すものになり、他軸成分αx,αzの干渉を受けることはない。また、図6(c) に示す第3のブリッジ回路413の出力電圧Vzは、作用した加速度αのZ軸方向成分αzのみを示すものになり、他軸成分αx,αyの干渉を受けることはない。特に、図3(a) に示す実施例では、基本構造部100および12組のピエゾ抵抗素子の構造および配置が、X軸に対して45°をなす軸を含みXY平面に垂直な対称面について対称性を有しているため、他軸成分の干渉要素は効果的に相殺される。
【0078】
もっとも、本発明を実施するにあたり、上述した対称性をもたせた設計は必須要件ではない。たとえば、何らかのバイアス回路を付加して、ブリッジ電圧の零点を調整して出力するようにすれば、必ずしも対称性をもたせた設計を行う必要はない。もちろん、ブリッジ電圧の絶対値が、作用した加速度の値に対して線形性を有していなくても、デジタル処理等により最終的には線形出力を得ることが可能である。
【0079】
また、これまでの説明は、各ピエゾ抵抗素子が、いずれもp型の素子である場合の説明であるが、もちろん、p型のピエゾ抵抗素子の代わりにn型のピエゾ抵抗素子を採用してもかまわない。この場合、抵抗値の増減の関係が、これまでの説明と逆転することになるので、各出力電圧の符号と作用した加速度の方向を示す符号との関係が逆転するが、基本的な検出原理に相違はない。
【0080】
もちろん、必要があれば、p型のピエゾ抵抗素子とn型のピエゾ抵抗素子とを混在させることも可能である。この場合、図5の表の各欄の符号(個々の特定箇所の伸縮状態を示す符号)とピエゾ抵抗素子のタイプを考慮して、正しい検出値が得られるようなブリッジ回路を組むようにすればよい。
【0081】
<1−3. 庇構造部を付加した変形例の構造>
ここでは、§1−1,§1−2で述べた第1の実施形態の変形例を述べる。図7(a) は、図1に示す第1の実施形態に庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体100Aを上方から見た平面図であり、図7(b) は、この基本構造体100Aの上下に基板200,300を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図である。
【0082】
この変形例に用いられる下方基板200および上方基板300は、上述した第1の実施形態における下方基板200および上方基板300と全く同一であり、ここでは説明を省略する。この変形例の特徴は、図1(a) に示す基本構造体100の代わりに、図7(a) に示す基本構造体100Aを用いる点である。図7(a) に示す基本構造体100Aの個々の構成要素は、図1(a) に示す基本構造体100の個々の構成要素に類似している。そこで、図7(a) に示す各構成要素の符号には、図1(a) の対応する構成要素の符号末尾にAを付したものを用いることにする。
【0083】
基本構造体100Aの主要な構成要素は、図7(a) に示すとおり、枠状筐体110Aと、その内部に配置された2本のアーム部120A,130Aと、重錘体140Aである。枠状筐体110Aは、図1(a) に示す枠状筐体100とほぼ同じ形状の構造体であり、外側形状は正方形である。ただ、内側形状は、2本のアーム部120A,130Aの外側形状に合わせて入り組んだ形になっている。2本のアーム部120A,130Aも、基本的には、図1(a) に示す2本のアーム部120,130とほぼ同じ構造を有しているが、外側側面の一部分が、更に外側に突き出す構造部(後述するように、本願では庇構造部と呼ぶ)を形成している。重錘体140Aは、図1(a) に示す重錘体140と全く同じ形状を有する正方形状の板である。
【0084】
図7(b) は、図7(a) に示す基本構造体100Aの下方に下方基板200を付加し、上方に上方基板300を付加したものである。上述したように、下方基板200および上方基板300は、図1(b) に示すものと全く同じである。枠状筐体110A、下方基板200、上方基板300は、重錘体140Aの周囲を取り囲む構造体をなし、全体として、この加速度センサの装置筐体として機能する。重錘体140Aは、この装置筐体の内部に宙吊り状態になるように、2本のアーム部120A,130Aによって支持されている。2本のアーム部120A,130Aが、弾性変形に基づいて撓みを生じる可撓性接続部材としての役割を果たす点は、これまで述べた実施形態と同じである。
【0085】
図8(a) は、図7に示す基本構造体100Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。ここでも、枠状筐体110Aは、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部111A、左辺枠部112A、上辺枠部113A、右辺枠部114Aの4辺を有している。この変形例の場合、この枠状筐体110Aの内側形状は入り組んだ形をしており、図8(a) の平面図では、内側輪郭線が凹凸構造を有している。これは、後述するように、枠状筐体110Aの内側輪郭線を、2本のアーム部120A,130Aの外側輪郭線に沿わせる形状にすることにより、ストッパとしての機能をもたせるためである。
【0086】
この変形例の場合、第1のアーム部120Aは、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第1のアーム部120Aは、第1の固定部121A、第1のX軸平行橋梁部122A、第1の中間接続部125A、第1のY軸平行橋梁部123A、第1の重錘体接続部124Aを有している。第1の固定部121Aは、接続点P1において枠状筐体110Aの下辺枠部111Aに接続されており、第1のX軸平行橋梁部122Aへと連なる。第1のX軸平行橋梁部122Aは、X軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、その先端部は第1の中間接続部125Aに接続されている。また、第1のY軸平行橋梁部123Aは、Y軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、その根端部は第1の中間接続部125Aに接続され、その先端部は第1の重錘体接続部124Aに接続されている。
【0087】
一方、第2のアーム部130Aも、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第2のアーム部130Aは、第2の固定部131A、第2のY軸平行橋梁部132A、第2の中間接続部135A、第2のX軸平行橋梁部133A、第2の重錘体接続部134Aを有している。第2の固定部131Aは、接続点P2において枠状筐体110Aの左辺枠部112Aに接続されており、第2のY軸平行橋梁部132Aへと連なる。第2のY軸平行橋梁部132Aは、Y軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、その先端部は第2の中間接続部135Aに接続されている。また、第2のX軸平行橋梁部133Aは、X軸に平行な方向に伸びる細長い橋梁構造を有する部材であり、その根端部は第2の中間接続部135Aに接続され、その先端部は第2の重錘体接続部134Aに接続されている。
【0088】
そして、第1の重錘体接続部124Aと第2の重錘体接続部134Aとは相互に接続されており、両者が接続される接続点P3に重錘体140Aも接続されている。重錘体140Aが、接続点P3において、2本のアーム部120A,130Aによって支持されている点は、これまで述べた実施形態と同様である。この図8に示す変形例の特徴は、図に波線ハッチングを施して示す各中間接続部125A,135Aおよび各重錘体接続部124A,134Aに、庇構造部e1〜e6が設けられている点である。
【0089】
ここでも、各アーム部120A,130Aについて、重錘体140Aに近い側を内側、枠状筐体110Aに近い側を外側と定義して、庇構造部e1〜e6の詳細構造を説明する。庇構造部e1〜e6は、後述するように、各アーム部120A,130Aの特定箇所に応力を集中させる効果を生じさせ、検出感度を向上させる機能を果たす。
【0090】
まず、第1のアーム部120Aは、第1のX軸平行橋梁部122Aと第1のY軸平行橋梁部123Aとの間を接続する第1の中間接続部125Aを有している。そして、この第1の中間接続部125Aが、第1のX軸平行橋梁部122Aの第1の中間接続部125Aに対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部e1と、第1のY軸平行橋梁部123Aの第1の中間接続部125Aに対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部e2と、を有している。
【0091】
同様に、第2のアーム部130Aは、第2のY軸平行橋梁部132Aと第2のX軸平行橋梁部133Aとの間を接続する第2の中間接続部135Aを有している。そして、この第2の中間接続部135Aが、第2のY軸平行橋梁部132Aの第2の中間接続部135Aに対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部e3と、第2のX軸平行橋梁部133Aの第2の中間接続部135Aに対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部e4と、を有している。
【0092】
更に、第1のアーム部120Aは、第1のY軸平行橋梁部123Aの先端部と重錘体140Aとを接続する第1の重錘体接続部124Aを有し、第2のアーム部130Aは、第2のX軸平行橋梁部133Aの先端部と重錘体140Aとを接続する第2の重錘体接続部134Aを有している。そして、第1の重錘体接続部124Aと第2の重錘体接続部134Aとは相互に接続されており、第1の重錘体接続部124Aは、第1のY軸平行橋梁部123Aの第1の重錘体接続部124Aに対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部e5を有し、第2の重錘体接続部134Aは、第2のX軸平行橋梁部133Aの第2の重錘体接続部134Aに対する接続端近傍の側面よりも外側に突き出した庇構造部e6を有している。
【0093】
図8(b) は、図8(a) に示す基本構造体100Aに基板200,300を付加した構造体をXZ平面に沿って切断した側断面図である(寸法を示す便宜上、断面を示すハッチングは省略)。図8(b) には、各部の寸法が符号t1〜t9で示されているが、図8(a) の平面図において、同一のハッチングが施された領域は、同一の厚みを有する。また、斜線ハッチングを施した領域と波線ハッチングを施した領域(すなわち、各アーム部120A,130Aを構成する領域)も同一の厚み(厚みt3)を有する。各部の厚みt1〜t5および空隙寸法t6,t7については、既に図2(b) で説明したとおりである。なお、図8(a) の平面図において、波線ハッチングを施した領域(中間接続部および重錘体接続部を構成する領域)については、必ずしも斜線ハッチングを施した領域(各橋梁部を構成する領域)と同一の厚みt3にする必要はなく、たとえば、重錘体140Aと同一の厚みt2に設定してもかまわない。このように、本願におけるアーム部は、必ずしも全体が可撓性を有している必要はない。
【0094】
図8(b) には、更に、空隙寸法t8,t9が示されている。空隙寸法t8は、第2のアーム部130Aの外側側面とこれに対向する枠状筐体110Aの内側側面との距離を示し、空隙寸法t9は、第1のアーム部120Aの外側側面とこれに対向する枠状筐体110Aの内側側面との距離を示している。この例では、t8=t9である。図8(a) の平面図に示されているとおり、この変形例の場合、枠状筐体110Aの内側輪郭線を、2本のアーム部120A,130Aの外側輪郭線に沿わせる形状にしてあり、各アーム部120A,130Aの庇構造部を含めた外側側面とこれに対向する枠状筐体110Aの内側側面との距離が、ほぼ一定(空隙寸法t8,t9)となるような構成を採っており、枠状筐体110Aがストッパとしての機能を果たす。
【0095】
すなわち、図8(a) の平面図に示す構造を採用すれば、この加速度センサに過度の加速度が作用した場合でも、変形した各アーム部120A,130Aの外側側面の所定箇所が枠状筐体110Aの内側側面に接触し、それ以上の変形が抑止される。具体的には、X軸方向への加速度αxもしくはY軸方向への加速度αyが作用した場合、重錘体140Aに対して、X軸方向へ移動させる力FxもしくはY軸方向へ移動させる力Fyが加わることになる。このような場合、庇構造部e1〜e6の外側側面のいずれかの箇所が、枠状筐体110Aの内側側面と接触することになり、それ以上の変位が生じることを抑制できる。
【0096】
前述したとおり、各アーム部120A,130Aは、可撓性が得られる程度の寸法に設定される。たとえば、上例の場合、各橋梁部122A,123A,132A,133Aは、幅0.1mm、厚み5μmのシリコンからなる板状橋梁構造体によって構成されている。このため、弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合、過度の変形が生じて破損するおそれがある。上記構造を採用すれば、そのような破損が生じる前の段階で、枠状筐体110Aがストッパとしての機能を果たすことができる。
【0097】
要するに、枠状筐体110Aにストッパとしての機能を果たさせるには、第1のアーム部120Aおよび第2のアーム部130Aの所定箇所の外側側面とこれに対向する枠状筐体110Aの所定箇所の内側側面との距離を適切な値に設定すればよい。具体的に言えば、各アーム部120A,130Aに弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合に、その外側側面とこれに対向する枠状筐体の内側側面とが当接することにより当該許容範囲を越える変形を抑止するのに適した距離に設定すればよい。
【0098】
なお、図8(b) に示す空隙寸法t6,t7を同様に適切な値に設定すれば、下方基板200および上方基板300にもストッパとしての機能をもたせることが可能である。具体的には、Z軸方向への加速度αzが作用した場合、重錘体140Aに対して、Z軸方向へ移動させる力Fzが加わることになる。このような場合、重錘体140Aのいずれかの箇所が、下方基板200の上面もしくは上方基板300の下面と接触することにより、それ以上の変位が生じることを抑制できる。
【0099】
要するに、重錘体140Aの下方に所定距離をおいて、枠状筐体110Aに固定された下方基板200を配置し、重錘体140Aの上方に所定距離をおいて、枠状筐体110Aに固定された上方基板300を配置するようにし、下方基板200と重錘体140Aとの距離t6および上方基板300と重錘体140との距離t7を適切な値に設定すればよい。具体的に言えば、各アーム部120A,130Aに弾性変形の許容範囲を越える変形を生じさせる過度の加速度が作用した場合に、下方基板200の上面と重錘体140Aの下面とが当接することにより、もしくは、上方基板300の下面と重錘体140Aの上面とが当接することにより、当該許容範囲を越える変形を抑止するのに適した距離に設定すればよい。
【0100】
なお、上述したストッパとしての機能の適用対象は、必ずしも庇構造体を設けた変形例(図7図8)に限定されるものではなく、§1−1,§1−2で述べた第1の実施形態(図1図2)にも適用可能である。すなわち、庇構造体の有無にかかわらず、各アーム部の外側側面とこれに対向する枠状筐体の内側側面との距離や、重錘体と上下の基板との距離を適切な値に設定すれば、ストッパとしての機能を付加することが可能である。
【0101】
<1−4. 変形例に用いる検出素子および検出回路>
続いて、§1−3で述べた庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体100Aを用いて加速度センサを構成する場合に適した検出素子および検出回路を説明する。§1−2では、図3を参照しながら、基本構造体100に12組の検出素子を配置した例を述べた。もちろん、庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体100Aの場合も、図3とほぼ同様の位置に12組の検出素子を配置した加速度センサを構成することが可能であり、その場合は、図6に示す検出回路を用いて加速度検出を行うことができる。
【0102】
ただ、上述したとおり、庇構造部を設けると、各アーム部120A,130Aの特定箇所に応力が集中するようになり、検出感度を向上させる効果が得られる。具体的には、庇構造部e1〜e6を形成することにより、各橋梁部122A,123A,132A,133Aの接続端近傍に応力集中が見られるようになる。
【0103】
たとえば、図8(a) に示す例の場合、庇構造部e1を設けたことにより、第1のX軸平行橋梁部122Aの先端部近傍に応力が集中する。また、庇構造部e2を設けたことにより、第1のY軸平行橋梁部123Aの根端部近傍に応力が集中し、庇構造部e5を設けたことにより、第1のY軸平行橋梁部123Aの先端部近傍に応力が集中する。同様に、庇構造部e3を設けたことにより、第2のY軸平行橋梁部132Aの先端部近傍に応力が集中する。また、庇構造部e4を設けたことにより、第2のX軸平行橋梁部133Aの根端部近傍に応力が集中し、庇構造部e6を設けたことにより、第2のX軸平行橋梁部133Aの先端部近傍に応力が集中する。
【0104】
更に、図8(a) に示す例の場合、第1の固定部121Aが庇構造部と同様の機能を果たすため、第1のX軸平行橋梁部122Aの根端部近傍にも応力が集中する。同様に、第2の固定部131Aが庇構造部と同様の機能を果たすため、第2のY軸平行橋梁部132Aの根端部近傍にも応力が集中する。したがって、これらの応力集中箇所に検出素子を配置すると、効率的な撓み検出を行うことができるようになり、検出感度を向上させることができる。そこで、以下、これら8箇所の応力集中箇所にピエゾ抵抗素子を配置し、検出回路としてブリッジ回路を用いた加速度センサの具体例を説明する。
【0105】
図9(a) は、図7(a) に示す基本構造体100Aに、24組のピエゾ抵抗素子x31〜x46,y31〜y46を配置した状態を示す平面図である。これら24組のピエゾ抵抗素子は、いずれも上述した応力集中箇所に配置されている。ここでも、中心線L1は、第1のX軸平行橋梁部122Aの中心線であり、中心線L2は、第1のY軸平行橋梁部123Aの中心線であり、中心線L3は、第2のY軸平行橋梁部132Aの中心線であり、中心線L4は、第2のX軸平行橋梁部133Aの中心線である。
【0106】
図9に示す変形例の場合、第1グループの検出素子は、第1のX軸平行橋梁部122Aの根端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部120Aの長手方向(中心軸L1方向)に関する伸縮状態を検出する第1のX軸平行根端部素子x31〜x33と、第1のX軸平行橋梁部122Aの先端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部120Aの長手方向(中心軸L1方向)に関する伸縮状態を検出する第1のX軸平行先端部素子x34〜x36と、第1のY軸平行橋梁部123Aの根端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部120Aの長手方向(中心軸L2方向)に関する伸縮状態を検出する第1のY軸平行根端部素子y34〜y36と、第1のY軸平行橋梁部123Aの先端部近傍に配置され、当該配置位置における第1のアーム部120Aの長手方向(中心軸L2方向)に関する伸縮状態を検出する第1のY軸平行先端部素子y31〜y33と、を有している。
【0107】
また、第2グループの検出素子は、第2のY軸平行橋梁部132Aの根端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部130Aの長手方向(中心軸L3方向)に関する伸縮状態を検出する第2のY軸平行根端部素子y41〜y43と、第2のY軸平行橋梁部132Aの先端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部130Aの長手方向(中心軸L3方向)に関する伸縮状態を検出する第2のY軸平行先端部素子y44〜y46と、第2のX軸平行橋梁部133Aの根端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部130Aの長手方向(中心軸L4方向)に関する伸縮状態を検出する第2のX軸平行根端部素子x44〜x44と、第2のX軸平行橋梁部133Aの先端部近傍に配置され、当該配置位置における第2のアーム部130Aの長手方向(中心軸L4方向)に関する伸縮状態を検出する第2のX軸平行先端部素子x41〜x43と、を有している。
【0108】
図9(b) は、図9(a) に示す基本構造体100Aの上下にそれぞれ基板200,300を付加した構造体を、図9(a) に示す切断線La−Lbに沿って切断した側断面図であり、ちょうどピエゾ抵抗素子y41〜y43を切断した断面が示されている。この変形例の場合も、基本構造体100Aはシリコン基板により構成されており、各ピエゾ抵抗素子は、シリコン基板の表面部分に不純物を導入した領域として形成されている。各ピエゾ抵抗素子は、いずれもその配置位置におけるアーム部の長手方向に沿って伸びるように配置されており、その両端部から検出回路400Aに対して配線がなされる
【0109】
ここでも、説明の便宜上、各アーム部120A,130Aに関して、その長手方向に沿った中心線L1〜L4を境界として、枠状筐体110Aに近い側を外側、枠状筐体110Aから遠い側(重錘体140Aに近い側)を内側と定義することにする。
【0110】
上記定義に従えば、図9(a) に示す24組のピエゾ抵抗素子のうち、第1のX軸平行根端部素子は、第1のX軸平行橋梁部122Aの根端部近傍の中心線L1上に配置された第1のX軸平行根端部中心素子x32と、第1のX軸平行橋梁部122Aの根端部近傍の内側に配置された第1のX軸平行根端部内側素子x31と、第1のX軸平行橋梁部122Aの根端部近傍の外側に配置された第1のX軸平行根端部外側素子x33と、を有しており、第1のX軸平行先端部素子は、第1のX軸平行橋梁部122Aの先端部近傍の中心線L1上に配置された第1のX軸平行先端部中心素子x35と、第1のX軸平行橋梁部122Aの先端部近傍の内側に配置された第1のX軸平行先端部内側素子x34と、第1のX軸平行橋梁部122Aの先端部近傍の外側に配置された第1のX軸平行先端部外側素子x36と、を有している。
【0111】
また、第1のY軸平行根端部素子は、第1のY軸平行橋梁部123Aの根端部近傍の中心線上L2に配置された第1のY軸平行根端部中心素子y35と、第1のY軸平行橋梁部123Aの根端部近傍の内側に配置された第1のY軸平行根端部内側素子y34と、第1のY軸平行橋梁部123Aの根端部近傍の外側に配置された第1のY軸平行根端部外側素子y36と、を有しており、第1のY軸平行先端部素子は、第1のY軸平行橋梁部123Aの先端部近傍の中心線上L2に配置された第1のY軸平行先端部中心素子y32と、第1のY軸平行橋梁部123Aの先端部近傍の内側に配置された第1のY軸平行先端部内側素子y31と、第1のY軸平行橋梁部123Aの先端部近傍の外側に配置された第1のY軸平行先端部外側素子y33と、を有している。
【0112】
一方、第2のY軸平行根端部素子は、第2のY軸平行橋梁部132Aの根端部近傍の中心線L3上に配置された第2のY軸平行根端部中心素子y42と、第2のY軸平行橋梁部132Aの根端部近傍の内側に配置された第2のY軸平行根端部内側素子y41と、第2のY軸平行橋梁部132Aの根端部近傍の外側に配置された第2のY軸平行根端部外側素子y43と、を有しており、第2のY軸平行先端部素子は、第2のY軸平行橋梁部132Aの先端部近傍の中心線L3上に配置された第2のY軸平行先端部中心素子y45と、第2のY軸平行橋梁部132Aの先端部近傍の内側に配置された第2のY軸平行先端部内側素子y44と、第2のY軸平行橋梁部132Aの先端部近傍の外側に配置された第2のY軸平行先端部外側素子y46と、を有している。
【0113】
そして、第2のX軸平行根端部素子は、第2のX軸平行橋梁部133Aの根端部近傍の中心線L4上に配置された第2のX軸平行根端部中心素子x45と、第2のX軸平行橋梁部133Aの根端部近傍の内側に配置された第2のX軸平行根端部内側素子x44と、第2のX軸平行橋梁部133Aの根端部近傍の外側に配置された第2のX軸平行根端部外側素子x46と、を有しており、第2のX軸平行先端部素子は、第2のX軸平行橋梁部133Aの先端部近傍の中心線L4上に配置された第2のX軸平行先端部中心素子x42と、第2のX軸平行橋梁部133Aの先端部近傍の内側に配置された第2のX軸平行先端部内側素子x41と、第2のX軸平行橋梁部133Aの先端部近傍の外側に配置された第2のX軸平行先端部外側素子x43と、を有している。
【0114】
図10に示す表は、図5に示す表と同様に、図9に示す基本構造部100Aにおいて、枠状筐体110Aを固定した状態において、重錘体140Aに対して、力Fx,Fy,Fzが作用した場合の個々のピエゾ抵抗素子x31〜x46,y31〜y46の伸縮状態(作用する応力)を示している。この表でも、「+」は伸張応力が作用することを示し、「−」は圧縮応力が作用することを示し、「0」は、有意な変化が生じないことを示している。また、「(+)」は「+」に比べると小さい伸張応力が作用することを示し、「(−)」は「−」に比べると小さい圧縮応力が作用することを示している。このように庇構造部を付加することにより、アーム部の各位置の応力分布は若干変化する。
【0115】
もっとも、実際に発生する応力の絶対値は、アーム部を構成する個々の橋梁部の長さ、幅、厚み、庇構造部の有無や大きさなどによって変動する。したがって、図10の表において、「(+)」もしくは「(−)」と記されている欄は、「0」になるケースもあるし、場合によっては、符号が逆転して「(−)」もしくは「(+)」になるケースもある。ただ、本願発明者がコンピュータシミュレーションを行った例では、「+」もしくは「−」欄の応力(伸縮量)の絶対値は、「(−)」もしくは「(+)」欄の絶対値の5〜10倍程度になる有意差をもっており、実用上は、「(+)」もしくは「(−)」と記されている欄を「0」の欄と同等に取り扱っても支障はない。
【0116】
ここでも、各ピエゾ抵抗素子がいずれもp型のピエゾ抵抗素子であるとすると(もちろん、n型のピエゾ抵抗素子が混在していても検出は可能である)、長手方向に対して伸張応力が加わると抵抗値は増大し、圧縮応力が加わると抵抗値は減少する。したがって、図10の表に示すような結果が得られることを踏まえれば、図9に示す加速度センサについて、図11に示す3組のブリッジ回路421,422,423からなる検出回路400Aを構成しておけば、重錘体140Aに作用したX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fzを電気的に検出することができる。結局、図11に示す3組のブリッジ回路421,422,423は、それぞれ作用した加速度のX軸方向成分αx、Y軸方向成分αy、Z軸方向成分αzを出力する回路ということになる。
【0117】
具体的には、図11(a) に示す第1のブリッジ回路421は、第1のX軸平行根端部内側素子x31と、第1のX軸平行根端部外側素子x33と、第1のX軸平行先端部内側素子x34と、第1のX軸平行先端部外側素子x34と、を用いて、作用した加速度のX軸方向成分αxを検出する回路である。この第1のブリッジ回路421は、内側素子x31,x34を一方の対辺とし、外側素子x33,x36を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T11,T12間に電圧Vxを出力する機能を有する。この電圧Vxは、作用した加速度αのX軸方向成分αxを示している。
【0118】
一方、図11(b) に示す第2のブリッジ回路422は、第2のY軸平行根端部内側素子y41と、第2のY軸平行根端部外側素子y43と、第2のY軸平行先端部内側素子y44と、第2のY軸平行先端部外側素子y46と、を用いて、作用した加速度のY軸方向成分αyを検出する回路である。この第2のブリッジ回路422は、内側素子y41,y44を一方の対辺とし、外側素子y43,y46を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T13,T14間に電圧Vyを出力する機能を有する。この電圧Vyは、作用した加速度αのY軸方向成分αyを示している。
【0119】
そして、図11(c) に示す第3のブリッジ回路423は、各中心素子x32,x42,y32,y42を用いて、作用した加速度のZ軸方向成分を検出する回路である。この第3のブリッジ回路423は、中心素子x32,y42を一方の対辺とし、中心素子x42,y32を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T15,T16間に電圧Vzを出力する機能を有する。この電圧Vzは、作用した加速度αのZ軸方向成分αzを示している。
【0120】
この図11に示す検出回路によって、加速度αの各座標軸成分の検出が可能になる理由は、図10の表を参照することにより、個々のブリッジ回路を構成するピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を考慮して個々のブリッジ回路の動作を考えれば、容易に理解できよう。たとえば、図11(a) に示す第1のブリッジ回路421について、力+Fxを生じさせる加速度αが作用したときの動作を考えると、表の「+Fx」の行の「x31」,「x34」の欄は「+」であり抵抗値は増え、「x33」,「x36」の欄は「−」であるから抵抗値は減る。したがって、出力端子T11からT12に対して電圧降下が生じるような出力電圧Vxが得られ、その絶対値は作用した加速度αの大きさに応じたものになる。
【0121】
逆に、力−Fxを生じさせる加速度αが作用した場合は、出力電圧Vxの符号が逆転する。したがって、出力電圧Vxの符号は、作用した加速度のX軸方向成分αxの向きを示し、出力電圧Vxの絶対値は、作用した加速度のX軸方向成分αxの大きさを示すものになる。同様に、図11(b) に示す第2のブリッジ回路422の出力電圧Vyの符号は、作用した加速度のY軸方向成分αyの向きを示し、出力電圧Vyの絶対値は、作用した加速度のY軸方向成分αyの大きさを示すものになる。また、図11(c) に示す第3のブリッジ回路423の出力電圧Vzの符号は、作用した加速度のZ軸方向成分αzの向きを示し、出力電圧Vzの絶対値は、作用した加速度のZ軸方向成分αzの大きさを示すものになる。
【0122】
なお、図10の表に示されている結果を踏まえると、図11(a) 〜(c) に示す各ブリッジ回路によって出力される出力電圧Vx,Vy,Vzは、若干、他軸成分の影響を受けることになるが、必要があれば、相互の出力電圧を利用して補正を行うことができるため、実用上の問題は生じない。
【0123】
図12は、図9に示す加速度センサについて適用可能な別な検出回路の例を示す回路図である。具体的には、図12(a) に示す第1のブリッジ回路431は、第2のX軸平行先端部内側素子x41と、第2のX軸平行先端部外側素子x43と、第2のX軸平行根端部内側素子x44と、第2のX軸平行根端部外側素子x46と、を用いて、作用した加速度のX軸方向成分αxを検出する回路である。この第1のブリッジ回路431は、内側素子x41,x44を一方の対辺とし、外側素子x43,x46を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T11,T12間に電圧Vxを出力する機能を有する。この電圧Vxは、作用した加速度αのX軸方向成分αxを示している。
【0124】
一方、図12(b) に示す第2のブリッジ回路432は、第1のY軸平行先端部内側素子y31と、第1のY軸平行先端部外側素子y33と、第1のY軸平行根端部内側素子y34と、第1のY軸平行根端部外側素子y36と、を用いて、作用した加速度のY軸方向成分αyを検出する回路である。この第2のブリッジ回路422は、内側素子y31,y34を一方の対辺とし、外側素子y33,y36を他方の対辺とするブリッジ回路であり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T13,T14間に電圧Vyを出力する機能を有する。この電圧Vyは、作用した加速度αのY軸方向成分αyを示している。
【0125】
そして、図12(c) に示す第3のブリッジ回路433は、各中心素子x32,x42,y32,y42を用いて、作用した加速度のZ軸方向成分を検出する回路であり、図11(c) に示す第3のブリッジ回路423と同一の回路である。前述したとおり、電圧源Eから電圧を印加することにより、出力端子T15,T16間に電圧Vzを出力する機能を有する。この電圧Vzは、作用した加速度αのZ軸方向成分αzを示している。
【0126】
このように、図9に示す加速度センサについて適用可能な検出回路には、図11に示す回路や図12に示す回路など、種々のバリエーションが存在する。図11図12に示す検出回路を総括すると、第1もしくは第2のX軸平行根端部内側素子と、第1もしくは第2のX軸平行根端部外側素子と、第1もしくは第2のX軸平行先端部内側素子と、第1もしくは第2のX軸平行先端部外側素子と、を用いて、作用した加速度のX軸方向成分を検出する第1のブリッジ回路と、第1もしくは第2のY軸平行根端部内側素子と、第1もしくは第2のY軸平行根端部外側素子と、第1もしくは第2のY軸平行先端部内側素子と、第1もしくは第2のY軸平行先端部外側素子と、を用いて、作用した加速度のY軸方向成分を検出する第2のブリッジ回路と、中心素子を用いて、作用した加速度のZ軸方向成分を検出する第3のブリッジ回路と、を有する検出回路と言うことができる。
【0127】
なお、図9(a) に示す変形例の場合も、基本構造部100Aおよび24組のピエゾ抵抗素子の構造および配置が、X軸に対して45°をなす軸を含みXY平面に垂直な対称面について対称性を有している。このような対称性をもたせた設計は、本発明を実施する上で必須要件ではないが、X軸方向の検出値αxおよびY軸方向の検出値αyに対称性をもたせる上では、対称性をもった構造体を採用するのが好ましい。
【0128】
ところで、図9に示す例の場合、合計24組のピエゾ抵抗素子x31〜x46,y31〜y46が設けられているが、図11に示す検出回路では、そのうちの12組のピエゾ抵抗素子を用いてブリッジ回路が構成されており、残りの12組のピエゾ抵抗素子は利用されていない。図12に示す検出回路も同様である。すなわち、図9に示す例のように、合計24組のピエゾ抵抗素子x31〜x46,y31〜y46を設けたとしても、実際の検出回路では、その一部しか利用されていないことになる。別言すれば、図9に示す例のように、合計24組のピエゾ抵抗素子x31〜x46,y31〜y46を有するセンサ本体部を用意しておけば、検出回路の設計者は、これら24組のピエゾ抵抗素子の中から必要なものを選択し、選択されたピエゾ抵抗素子を用いてブリッジ回路を構成すれば足りる。
【0129】
換言すれば、基本構造体100Aには、必ずしも図9に示すように24組のピエゾ抵抗素子を設けておく必要はなく、少なくとも検出に必要なピエゾ抵抗素子が設けられていれば足りる。たとえば、図11に示す検出回路を採用するのであれば、当該検出回路を構成する3組のブリッジ回路の構成に必要なピエゾ抵抗素子のみを形成しておけば足りる。また、これまで述べてきた例は、作用した加速度αの3軸成分αx,αy,αzのすべてを検出する機能をもっていたが、特定の1軸成分のみを検出する機能をもった加速度センサの場合は、当該1軸検出に必要なピエゾ抵抗素子を設けておけば足りる。
【0130】
これは、§1−1,§1−2で述べた基本的実施形態に係る加速度センサの場合も同様であり、図3(a) に示す12組のピエゾ抵抗素子のうち、検出動作に必要な一部のピエゾ抵抗素子のみを設けるようにしてもかまわない。もちろん、§1−1,§1−2で述べた基本的実施形態に係る加速度センサについて、図9に示す24組のピエゾ抵抗素子を形成し、図11または図12に示す検出回路を利用するようにしてもかまわない。
【0131】
<<< §2. 本発明の第2の実施形態 >>>
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。§1−1,§1−2で述べた第1の実施形態との相違は、基本構造体100の代わりに基本構造体500を用いる点だけである。図13は、この第2の実施形態に係る基本構造体500の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
【0132】
図13に示す第2の実施形態に係る基本構造体500と、図2に示す第1の実施形態に係る基本構造体100とを比較するとわかるように、両者の相違は、第2のアーム部の根端部の接続点P2の位置だけである。すなわち、第1の実施形態の場合、図2(a) に示すとおり、接続点P2は、左辺枠部112上に設けられているが、第2の実施形態の場合、図13に示すとおり、接続点P2は、下辺枠部511上に設けられている。
【0133】
このように、基本構造体100と基本構造体500との構造上の差はわずかであるため、ここでは、基本構造体500の各部分の符号として、基本構造体100の対応する部分の符号の100番台を500番台に変更したものを用いることにする。
【0134】
図13に示すとおり、枠状筐体510は、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部511、左辺枠部512、上辺枠部513、右辺枠部514の4辺を有している。
【0135】
第1のアーム部520は、図に斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第1の固定部521、第1のX軸平行橋梁部522、第1のY軸平行橋梁部523、第1の重錘体接続部524を有しており、図2に示す第1のアーム部120と全く同じ構成である。これに対して、第2のアーム部530は、第1のアーム部520とは逆向きの斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第2のY軸平行橋梁部532、第2のX軸平行橋梁部533、第2の重錘体接続部534を有している。枠状筐体510に対する接続点P2が、下辺枠部511上に位置するため、第2のY軸平行橋梁部532の根端部が直接下辺枠部511に接続されている。
【0136】
第1の重錘体接続部524と第2の重錘体接続部534とが相互に接続され、両者の接続点P3に重錘体540が接続されている点は、基本構造体100と同様である。また、網目状のハッチングを施して示すとおり、正方形状の領域からなる重錘体540が、接続点P3において、2本のアーム部520,530によって支持されている点も、基本構造体100と同様である。
【0137】
本発明の第2の実施形態に係る加速度センサは、この図13に示す基本構造体500の下面に下方基板200を接合し、上面に上方基板300を接合し、更に、各アーム部520,530の所定箇所に検出素子(ピエゾ抵抗素子)を配置し、検出回路を付加することにより構成される。検出素子の配置および検出回路の構成については、これまで述べてきた第1の実施形態とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0138】
要するに、図2(a) に示す第1の実施形態に係る基本構造体100の場合、第1のアーム部120の根端部が、枠状筐体110のX軸に平行な一辺の所定箇所P1に固定され、第2のアーム部130の根端部が、枠状筐体110のY軸に平行な一辺の所定箇所P2に固定されていたのに対し、図13に示す第2の実施形態に係る基本構造体500の場合、第1のアーム部520の根端部が、枠状筐体510のX軸に平行な一辺の所定箇所P1に固定され、第2のアーム部530の根端部も、枠状筐体510のX軸に平行な一辺の所定箇所P2に固定されていることになる。
【0139】
§1−3,§1−4では、第1の実施形態の変形例として、庇構造部を付加した構造を述べたが、この第2の実施形態についても、同様に庇構造部を付加した構造を採用することができる。図14は、この庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体500Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。なお、この図14に示す各構成要素の符号には、図13の対応する構成要素の符号末尾にAを付したものを用いることにする。
【0140】
この変形例の場合、枠状筐体510Aは、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部511A、左辺枠部512A、上辺枠部513A、右辺枠部514Aの4辺を有している。ただ、枠状筐体510Aの内側形状は入り組んだ形をしており、2本のアーム部520A,530Aの外側側面に接触して、前述したストッパとしての機能を果たすことができる。
【0141】
図14に示すとおり、第1のアーム部520Aは、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第1のアーム部520Aは、第1の固定部521A、第1のX軸平行橋梁部522A、第1の中間接続部525A、第1のY軸平行橋梁部523A、第1の重錘体接続部524Aを有している。第1の固定部521Aは、接続点P1において枠状筐体510Aの下辺枠部511Aに接続されている。
【0142】
一方、第2のアーム部530Aも、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第2のアーム部530Aは、第2のY軸平行橋梁部532A、第2の中間接続部535A、第2のX軸平行橋梁部533A、第2の重錘体接続部534Aを有している。枠状筐体510Aに対する接続点P2が、下辺枠部511A上に位置するため、第2のY軸平行橋梁部532Aの根端部が直接下辺枠部511Aに接続されている。
【0143】
図示のとおり、第1の中間接続部525Aには、庇構造部e1,e2が設けられており、第2の中間接続部535Aには、庇構造部e3,e4が設けられている。また、第1の重錘体接続部524Aには、庇構造部e5が設けられており、第2の重錘体接続部534Aには、庇構造部e6が設けられている。これら庇構造部e1〜e6が、各アーム部の特定箇所に応力を集中させる機能を果たし、検出感度を向上させる効果が得られるようになる点は、既に述べたとおりである。
【0144】
この図14に示す基本構造体500Aを利用した変形例に用いる検出素子の配置および検出回路の構成は、前述した第1の実施形態の変形例とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0145】
<<< §3. 本発明の第3の実施形態 >>>
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。これまで述べた各実施形態では、2本のアーム部の先端部が接続点P3で相互に接続され、この接続点P3に重錘体を接続して支持する方法が採用されていた。ここで述べる第3の実施形態の特徴は、2本のアーム部の先端部を、重錘体のそれぞれ異なる接続点P3,P4に接続する構造を採用する点である。図15は、この第3の実施形態に係る基本構造体600の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
【0146】
図15に示す第3の実施形態に係る基本構造体600と、図2に示す第1の実施形態に係る基本構造体100とを比較するわかるように、両者の相違は、重錘体の形状と両アーム部の先端部の接続点の位置だけである。すなわち、第1の実施形態の場合、図2(a) に示すとおり、重錘体140は平面が正方形状をしており、両アーム部120,130の先端部は接続点P3で接続され、重錘体140は、この接続点P3の位置で両アーム部120,130に支持されている。これに対して、第3の実施形態の場合、図15に示すとおり、重錘体640は瓢箪型をしており、第1のアーム部620の先端部は重錘体640の第1の支持点P3に接続され、第2のアーム部630の先端部は重錘体640の第2の支持点P4(第1の支持点P3とは異なる点)に接続されている。
【0147】
このように、基本構造体100と基本構造体600との構造上の差はわずかであるため、ここでは、基本構造体600の各部分の符号として、基本構造体100の対応する部分の符号の100番台を600番台に変更したものを用いることにする。
【0148】
なお、これまでの実施形態では、XYZ三次元座標系の原点Oを、重錘体の重心位置にとっていたが、この第3の実施形態(後述する第4の実施形態も同様)では、重錘体640が瓢箪型になるため、原点Oは重錘体の重心位置ではなく、これまでの実施形態と同じ位置にとることにする。具体的には、図15の平面図において、原点Oは、枠状筐体610の外側輪郭線からなる正方形の中心点に位置する。
【0149】
図15に示すとおり、枠状筐体610は、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部611、左辺枠部612、上辺枠部613、右辺枠部614の4辺を有している。
【0150】
第1のアーム部620は、図に斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第1の固定部621、第1のX軸平行橋梁部622、第1のY軸平行橋梁部623を有しており、第2のアーム部630は、第1のアーム部620とは逆向きの斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第2の固定部631、第2のY軸平行橋梁部632、第2のX軸平行橋梁部633を有している。一方、網目状のハッチングを施して示すとおり、重錘体640は、2組の正方形を部分的に重ねた瓢箪型の平面形状をしている。そして、第1のY軸平行橋梁部623の先端部は接続点P3において重錘体640に接続され、第2のX軸平行橋梁部633の先端部は接続点P4において重錘体640に接続されている。
【0151】
本発明の第3の実施形態に係る加速度センサは、この図15に示す基本構造体600の下面に下方基板200を接合し、上面に上方基板300を接合し、更に、各アーム部620,630の所定箇所に検出素子(ピエゾ抵抗素子)を配置し、検出回路を付加することにより構成される。検出素子の配置および検出回路の構成については、第1の実施形態とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0152】
このように、第1の実施形態では(第2の実施形態も同様)、重錘体140が1箇所(接続点P3)において2本のアーム部120,130によって支持されているのに対して、第3の実施形態では、重錘体640が2箇所(接続点P3,P4)においてそれぞれのアーム部620,630によって支持されていることになるので、重錘体をより安定して支持することができる。
【0153】
なお、§1−3,§1−4では、第1の実施形態の変形例として、庇構造部を付加した構造を述べたが、この第3の実施形態についても、同様に庇構造部を付加した構造を採用することができる。図16は、この庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体600Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。この図16に示す各構成要素の符号には、図15の対応する構成要素の符号末尾にAを付したものを用いることにする。
【0154】
この変形例の場合、枠状筐体610Aは、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部611A、左辺枠部612A、上辺枠部613A、右辺枠部614Aの4辺を有している。ただ、枠状筐体610Aの内側形状は入り組んだ形をしており、2本のアーム部620A,630Aの外側側面に接触して、前述したストッパとしての機能を果たすことができる。
【0155】
図16に示すとおり、第1のアーム部620Aは、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第1のアーム部620Aは、第1の固定部621A、第1のX軸平行橋梁部622A、第1の中間接続部625A、第1のY軸平行橋梁部623Aを有している。第1の固定部621Aは、接続点P1において枠状筐体610Aの下辺枠部611Aに接続されている。
【0156】
一方、第2のアーム部630Aも、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第2のアーム部630Aは、第2の固定部631A、第2のY軸平行橋梁部632A、第2の中間接続部635A、第2のX軸平行橋梁部633Aを有している。第2の固定部631Aは、接続点P2において枠状筐体610Aの左辺枠部612Aに接続されている。
【0157】
図示のとおり、第1の中間接続部625Aには、庇構造部e1,e2が設けられており、第2の中間接続部635Aには、庇構造部e3,e4が設けられている。一方、重錘体640には、第1のアーム部620Aの先端部の側面よりも外側に突き出した庇構造部e11と、第2のアーム部630Aの先端部の側面よりも外側に突き出した庇構造部e12が設けられている。これら庇構造部e1〜e4,e11,e12が、各アーム部620A,630Aの特定箇所に応力を集中させる機能を果たし、検出感度を向上させる効果が得られるようになる点は、既に述べたとおりである。
【0158】
この図16に示す基本構造体600Aを利用した変形例に用いる検出素子の配置および検出回路の構成は、前述した第1の実施形態の変形例とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0159】
<<< §4. 本発明の第4の実施形態 >>>
最後に、本発明の第4の実施形態を説明する。この第4の実施形態と、§3で述べた第3の実施形態との相違は、基本構造体600の代わりに基本構造体700を用いる点だけである。図17は、この第4の実施形態に係る基本構造体700の個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。
【0160】
図17に示す第4の実施形態に係る基本構造体700と、図15に示す第3の実施形態に係る基本構造体600とを比較するとわかるように、両者の相違は、第2のアーム部の根端部の接続点P2の位置だけである。すなわち、第3の実施形態の場合、図15に示すとおり、接続点P2は、左辺枠部612上に設けられているが、第4の実施形態の場合、図17に示すとおり、接続点P2は、下辺枠部711上に設けられている。
【0161】
このように、基本構造体600と基本構造体700との構造上の差はわずかであるため、ここでは、基本構造体700の各部分の符号として、基本構造体600の対応する部分の符号の600番台を700番台に変更したものを用いることにする。
【0162】
図17に示すとおり、枠状筐体710は、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部711、左辺枠部712、上辺枠部713、右辺枠部714の4辺を有している。
【0163】
第1のアーム部720は、図に斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第1の固定部721、第1のX軸平行橋梁部722、第1のY軸平行橋梁部723を有しており、図15に示す第1のアーム部620と全く同じ構成である。これに対して、第2のアーム部730は、第1のアーム部720とは逆向きの斜線によるハッチングを施して示す領域からなり、第2のY軸平行橋梁部732および第2のX軸平行橋梁部733を有している。枠状筐体710に対する接続点P2が、下辺枠部711上に位置するため、第2のY軸平行橋梁部732の根端部が直接下辺枠部711に接続されている。
【0164】
網目状のハッチングを施して示すとおり、重錘体740は、2組の正方形を部分的に重ねた瓢箪型の平面形状をしており、第1のY軸平行橋梁部723の先端部が、接続点P3において重錘体740に接続され、第2のX軸平行橋梁部733の先端部が、接続点P4において重錘体740に接続されている点は、基本構造体600と同様である。
【0165】
本発明の第4の実施形態に係る加速度センサは、この図17に示す基本構造体700の下面に下方基板200を接合し、上面に上方基板300を接合し、更に、各アーム部720,730の所定箇所に検出素子(ピエゾ抵抗素子)を配置し、検出回路を付加することにより構成される。検出素子の配置および検出回路の構成については、これまで述べてきた第1の実施形態とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0166】
要するに、図15に示す第3の実施形態に係る基本構造体600の場合、第1のアーム部620の根端部が、枠状筐体610のX軸に平行な一辺の所定箇所P1に固定され、第2のアーム部630の根端部が、枠状筐体610のY軸に平行な一辺の所定箇所P2に固定されていたのに対し、図17に示す第4の実施形態に係る基本構造体700の場合、第1のアーム部720の根端部が、枠状筐体710のX軸に平行な一辺の所定箇所P1に固定され、第2のアーム部730の根端部も、枠状筐体710のX軸に平行な一辺の所定箇所P2に固定されていることになる。
【0167】
§3では、第3の実施形態の変形例として、庇構造部を付加した構造を述べたが、この第4の実施形態についても、同様に庇構造部を付加した構造を採用することができる。図18は、この庇構造部を付加した変形例に係る基本構造体700Aの個々の構成要素に対応する領域を、それぞれ異なるハッチングを施して示した平面図である(ハッチングは各領域を示すものであって、断面を示すものではない。)。この図18に示す各構成要素の符号には、図17の対応する構成要素の符号末尾にAを付したものを用いることにする。
【0168】
この変形例の場合、枠状筐体710Aは、図にドットによるハッチングを施して示す領域からなり、下辺枠部711A、左辺枠部712A、上辺枠部713A、右辺枠部714Aの4辺を有している。ただ、枠状筐体710Aの内側形状は入り組んだ形をしており、2本のアーム部720A,730Aの外側側面に接触して、前述したストッパとしての機能を果たすことができる。
【0169】
図18に示すとおり、第1のアーム部720Aは、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第1のアーム部720Aは、第1の固定部721A、第1のX軸平行橋梁部722A、第1の中間接続部725A、第1のY軸平行橋梁部723Aを有している。第1の固定部721Aは、接続点P1において枠状筐体710Aの下辺枠部711Aに接続されている。
【0170】
一方、第2のアーム部730Aも、図に斜線によるハッチングを施して示す領域および波線によるハッチングを施して示す領域からなる。具体的には、第2のアーム部730Aは、第2のY軸平行橋梁部732A、第2の中間接続部735A、第2のX軸平行橋梁部733Aを有している。第2のY軸平行橋梁部732Aの根端部は、接続点P2において枠状筐体710Aの下辺枠部711Aに接続されている。
【0171】
図示のとおり、第1の中間接続部725Aには、庇構造部e1,e2が設けられており、第2の中間接続部735Aには、庇構造部e3,e4が設けられている。一方、重錘体740Aには、第1のアーム部720Aの先端部の側面よりも外側に突き出した庇構造部e11と、第2のアーム部730Aの先端部の側面よりも外側に突き出した庇構造部e12が設けられている。これら庇構造部e1〜e4,e11,e12が、各アーム部720A,730Aの特定箇所に応力を集中させる機能を果たし、検出感度を向上させる効果が得られるようになる点は、既に述べたとおりである。
【0172】
この図18に示す基本構造体700Aを利用した変形例に用いる検出素子の配置および検出回路の構成は、前述した第1の実施形態の変形例とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0173】
<<< §5. 2本のアーム部の根端部の接続点に関する特徴 >>>
ここでは、これまで述べてきた各実施形態における2本のアーム部の接続点に関する特徴とそのメリットを述べておく。図19は、本発明に係る枠状筐体810の属性領域を示す平面図である(ハッチングは枠状筐体810の部分を示すものであって、断面を示すものではない。)。
【0174】
この枠状筐体810は、これまで述べてきた種々の実施形態の枠状筐体を代表するものであり、下辺枠部811,左辺枠部812,上辺枠部813,右辺枠部814の4辺を有する矩形状をしている。そして、この枠状筐体810の外側輪郭線からなる正方形の中心点に、XYZ三次元座標系の原点Oが定義されている。ここでは、枠状筐体810を、X軸およびY軸で分割し、下辺枠部を領域811a,811bに分け、左辺枠部を領域812a,812bに分け、上辺枠部を領域813a,813bに分け、右辺枠部を領域814a,814bに分けて考えることにする。また、説明の便宜上、図示のように、XY座標系上に第1象限<I>,第2象限<II>,第3象限<III>,第4象限<IV>を定義する。
【0175】
そうすると、領域813b,814aは第1象限<I>に位置する領域、領域812b,813aは第2象限<II>に位置する領域、領域811b,812aは第3象限<III>に位置する領域、領域811a,814bは第4象限<IV>に位置する領域ということになる。ここで、これまで述べてきた第1の実施形態〜第4の実施形態およびそれらの変形例について、2本のアーム部の根端部の接続点P1,P2の位置を参照してみると、いずれの場合も、2組の接続点P1,P2は、第3象限<III>に位置する領域811b,812aに配置されていることがわかる。ここで重要な点は、2組の接続点P1,P2を、同一の象限内に配置するということである(すなわち、必ずしも第3象限である必要はない)。
【0176】
別言すれば、矩形状の枠状筐体810の4隅にそれぞれ隅点C1〜C4を定義し、枠状筐体810の各部について最近接隅点を求め、同一の最近接隅点を有する部分を同一の属性領域と定義すると、第1象限<I>に位置する領域813b,814aは、同一の隅点C1を最近接隅点とする第1の属性領域になり、第2象限<II>に位置する領域812b,813aは、同一の隅点C2を最近接隅点とする第2の属性領域になり、第3象限<III>に位置する領域811b,812aは、同一の隅点C3を最近接隅点とする第3の属性領域になり、第4象限<IV>に位置する領域811a,814bは、同一の隅点C4を最近接隅点とする第4の属性領域になる。
【0177】
これまで述べてきた各実施形態やその変形例では、第1のアーム部の根端部と第2のアーム部の根端部とが、枠状筐体810の同一属性領域に固定されていることになる。より具体的には、これまで述べてきた例では、第1のアーム部の根端部の接続点P1および第2のアーム部の根端部の接続点P2は、いずれも、図19の左下に示されている隅点C3を最近接隅点とする第3の属性領域に固定されている。
【0178】
このように、2組の接続点P1,P2を、同一の属性領域(同一の隅点を最近接隅点とする領域)に配置すると、2本のアーム部により重錘体を支持する構造が、片持ち梁構造に近いものになるため、利用時の温度環境や取付環境に起因して生じた装置筐体の応力が検出結果に悪影響を及ぼす問題を効果的に低減することができる。
【0179】
たとえば、装置筐体の一部として機能する下方基板200を何らかの物体に取り付け、当該物体に作用する加速度検出を行う場合を考えてみる。この場合、当該物体の材質と下方基板200の材質との間に熱膨張係数の差があると、温度環境の変化により下方基板200を介して枠状筐体810に応力が加わることになる。また、下方基板200を当該物体に接着剤を用いて接着して取り付けたような場合には、その取付環境に応じて、やはり枠状筐体810に応力が加わることになる。
【0180】
しかしながら、枠状筐体810にこのような外的要因に基づく応力歪みが発生したとしても、2組の接続点P1,P2を同一の属性領域に配置すれば、当該応力歪みが各アーム部にまで伝達されることを抑制することができ、検出結果に及ぶ悪影響を低減することができる。
【0181】
たとえば、図2(a) に示す基本構造体100の場合、2組の接続点P1,P2は、いずれも枠状筐体110の左下隅点の近傍に配置されているため、たとえ枠状筐体110に応力歪みが発生したとしても、接続点P1,P2間に生じる応力歪みは比較的小さくなるため、各アーム部120,130に生じる応力歪みの影響も小さく抑えることができる。図13に示す基本構造体500のように、2組の接続点P1,P2を隣接配置した場合も同様である。
【0182】
結局、これまで述べてきた各実施形態や各変形例に係る加速度センサによれば、温度や取付状態などの利用環境による悪影響を排除しつつ、高い検出感度をもって加速度を検出することが可能になる。
【0183】
もっとも、本発明は、これまで述べてきた各実施形態や各変形例に限定されるものではなく、上記§5で述べた「2本のアーム部の根端部の接続点に関する特徴」は、本発明を実施する上での必須構成要素ではない。別言すれば、本発明を実施するにあたり、第1のアーム部の根端部と第2のアーム部の根端部とは、必ずしも枠状筐体の同一属性領域に固定する必要はない。たとえば、これまで述べてきた各実施形態や各変形例において、第1のアーム部の根端部を下辺枠部の接続点P1に固定しつつ、第2のアーム部の根端部を上辺枠部の接続点P2に固定する、という構造を採用することも可能である。この場合、接続点P1の最近接隅点と接続点P2の最近接隅点とは異なるので、これまで述べてきた各実施形態や各変形例に比べると、両接続点P1,P2の間隔が広くなることになるが、前掲の特許文献1に開示されているようなダイアフラム式の加速度センサに比べれば、温度や取付状態などの利用環境による悪影響を低減する効果が得られる。
【符号の説明】
【0184】
100,100A:基本構造体
110,110A:枠状筐体
111,111A:下辺枠部
112,112A:左辺枠部
113,113A:上辺枠部
114,114A:右辺枠部
120,120A:第1のアーム部
121,121A:第1の固定部
122,122A:第1のX軸平行橋梁部
123,123A:第1のY軸平行橋梁部
124,124A:第1の重錘体接続部
125A:第1の中間接続部
130,130A:第2のアーム部
131,131A:第2の固定部
132,132A:第2のY軸平行橋梁部
133,133A:第2のX軸平行橋梁部
134,134A:第2の重錘体接続部
135A:第2の中間接続部
140,140A:重錘体
200:下方基板
300:上方基板
310:天板部
320:側壁部
400,400A:検出回路
411〜413:ブリッジ回路
421〜423:ブリッジ回路
431〜433:ブリッジ回路
500,500A:基本構造体
510,510A:枠状筐体
511,511A:下辺枠部
512,512A:左辺枠部
513,513A:上辺枠部
514,514A:右辺枠部
520,520A:第1のアーム部
521,521A:第1の固定部
522,522A:第1のX軸平行橋梁部
523,523A:第1のY軸平行橋梁部
524,524A:第1の重錘体接続部
525A:中間接続部
530,530A:第2のアーム部
532,532A:第2のY軸平行橋梁部
533,533A:第2のX軸平行橋梁部
534,534A:第2の重錘体接続部
535A:中間接続部
540,540A:重錘体
600,600A:基本構造体
610,610A:枠状筐体
611,611A:下辺枠部
612,612A:左辺枠部
613,613A:上辺枠部
614,614A:右辺枠部
620,620A:第1のアーム部
621,621A:第1の固定部
622,622A:第1のX軸平行橋梁部
623,623A:第1のY軸平行橋梁部
625A:中間接続部
630,630A:第2のアーム部
631,631A:第2の固定部
632,632A:第2のY軸平行橋梁部
633,633A:第2のX軸平行橋梁部
635A:中間接続部
640,640A:重錘体
700,700A:基本構造体
710,710A:枠状筐体
711,711A:下辺枠部
712,712A:左辺枠部
713,713A:上辺枠部
714,714A:右辺枠部
720,720A:第1のアーム部
721,721A:第1の固定部
722,722A:第1のX軸平行橋梁部
723,723A:第1のY軸平行橋梁部
725A:中間接続部
730,730A:第2のアーム部
732,732A:第2のY軸平行橋梁部
733,733A:第2のX軸平行橋梁部
735A:中間接続部
740,740A:重錘体
810:枠状筐体
811a〜814b:枠状筐体の各領域
C1〜C4:枠状筐体の隅点
E:電圧源
e1〜e6,e11,e12:庇構造部
Fx:X軸方向に作用する力
Fy:Y軸方向に作用する力
Fz:Z軸方向に作用する力
L1,L4:X軸平行橋梁部の中心軸
L2,L3:Y軸平行橋梁部の中心軸
La−Lb:切断位置
O:X:XYZ三次元座標系の原点
P1〜P4:接続点
T11〜T16:出力端子
t1〜t9:各部の厚み/空隙寸法
Vx:作用した加速度αのX軸方向成分αxを示す電圧
Vy:作用した加速度αのY軸方向成分αyを示す電圧
Vz:作用した加速度αのZ軸方向成分αzを示す電圧
X:XYZ三次元座標系の座標軸
x11〜x46:X軸方向を長手方向とするピエゾ抵抗素子
Y:XYZ三次元座標系の座標軸
y11〜y46:Y軸方向を長手方向とするピエゾ抵抗素子
Z:XYZ三次元座標系の座標軸
図1
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