(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244327
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】金箔及び金箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
A45D 44/22 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
A45D44/22 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-85000(P2015-85000)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-202370(P2016-202370A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年2月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397017755
【氏名又は名称】箔座株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高岡 昇
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−24895(JP,A)
【文献】
特開2009−120500(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/053063(WO,A1)
【文献】
特開2002−220319(JP,A)
【文献】
特開2004−91908(JP,A)
【文献】
特開平11−81185(JP,A)
【文献】
特開2002−294598(JP,A)
【文献】
特開平8−207498(JP,A)
【文献】
特開2009−67455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/22
B21C 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、金箔を製造する工程及び美容成分を含有させる工程を含むことを特徴とする美容成分を含有する金箔の製造方法であって、
前記金箔を製造する工程は、
前記金箔の材料をロール圧延機で圧延し、延金を作成する延金作成工程と、
前記延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する第一の紙仕込み工程と、
前記澄打紙と前記延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する澄打ち工程と、
前記上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する第二の紙仕込み工程と、
前記箔打紙と前記上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、金箔を得る箔打ち工程と、
を含み、
前記第一の紙仕込み工程または前記第二の紙仕込み工程の少なくとも一方で実施され、前記澄打紙及び/または前記箔打紙に前記美容成分を添加する添加工程を更に含み、
前記美容成分を含有させる工程は、前記澄打ち工程または前記箔打ち工程の少なくとも一方で実施される、美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項2】
前記第一の紙仕込み工程は、前記澄打紙の元となる和紙に水を含ませる紙漬け工程を少なくとも一回含み、
前記添加工程は、前記紙漬け工程において、前記美容成分を混合した前記水を前記和紙に含ませることにより実施され、
前記澄打ち工程において、前記美容成分が添加された澄打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記上澄に前記美容成分を含有させることを特徴とする請求項1記載の美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項3】
前記第二の紙仕込み工程は、前記箔打紙の元となる和紙に灰汁を含ませる灰汁漬け工程を少なくとも一回含み、
前記添加工程は、前記灰汁漬け工程において、前記美容成分を混合した前記灰汁を前記和紙に含ませることにより実施され、
前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させることを特徴とする請求項1または2記載の美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項4】
前記灰汁漬け工程が複数回繰り返される場合に、前記添加工程は、少なくとも最後に行われる灰汁漬け工程において実施されることを特徴とする請求項3記載の美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項5】
前記第二の紙仕込み工程は、カーボンをグラシン紙に塗布する塗布工程を少なくとも一回含み、
前記添加工程は、前記塗布工程において、前記グラシン紙に対して前記美容成分を添加することにより実施され、
前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させることを特徴とする請求項1または2記載の美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項6】
少なくとも、金箔を製造する工程及び美容成分を含有させる工程を含むことを特徴とする美容成分を含有する金箔の製造方法であって、
前記金箔を製造する工程は、
前記金箔の材料をロール圧延機で圧延し、延金を作成する延金作成工程と、
前記延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する第一の紙仕込み工程と、
前記澄打紙と前記延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する澄打ち工程と、
前記上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する第二の紙仕込み工程と、
前記箔打紙と前記上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、金箔を得る箔打ち工程と、
を含み、
作成された前記澄打紙に対して前記美容成分を添加する添加工程を更に含み、
前記澄打ち工程において、前記美容成分が添加された澄打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記上澄に前記美容成分を含有させる、美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項7】
前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させることを特徴とする請求項6記載の美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項8】
少なくとも、金箔を製造する工程及び美容成分を含有させる工程を含むことを特徴とする美容成分を含有する金箔の製造方法であって、
前記金箔を製造する工程は、
前記金箔の材料をロール圧延機で圧延し、延金を作成する延金作成工程と、
前記延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する第一の紙仕込み工程と、
前記澄打紙と前記延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する澄打ち工程と、
前記上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する第二の紙仕込み工程と、
前記箔打紙と前記上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、金箔を得る箔打ち工程と、
を含み、
作成された前記箔打紙に対して前記美容成分を添加する添加工程を更に含み、
前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させる、美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項9】
少なくとも、金箔を製造する工程及び美容成分を含有させる工程を含むことを特徴とする美容成分を含有する金箔の製造方法であって、
前記金箔を製造する工程において製造された金箔を所望のサイズに裁断する裁断工程と、
裁断された前記金箔と透明フィルム若しくは紙とを順に重ねてパッケージングを行うパッケージング工程と、
を含み、
前記美容成分を含有させる工程は、前記パッケージングにより、前記透明フィルム若しくは前記紙に付着した美容成分を前記金箔に付着させることで実施される、美容成分を含有する金箔の製造方法。
【請求項10】
前記美容成分はコラーゲンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の美容成分を含有する金箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容成分を含有する金箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金箔は、たとえば、特許文献1に記載されている通り、皮膚表面に擦り込むことによって金の微粒子が生体内に取り込まれ、生体における新陳代謝およびエネルギー変換を促進し、皮膚の健康を保持しうるとされている。
【0003】
このような効果が期待できることから、金箔は化粧品として幅広く利用されている。たとえば、特許文献2には金箔で作られたフェイスパックが開示されている。また、洗顔後、化粧水などで肌を整え、美容液やクリームをつけた状態で、肌にのせ、指の腹を使って、こすらず肌の上をすべらせながらゆっくりとなじませることにより、美容効果を得るための金箔シートが数多く販売されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−225699号公報
【特許文献2】特許第5551607号
【非特許文献1】“HAKUZA Online Shop”、[online]、箔座株式会社、[平成27年3月20日検索]、インターネット<URL:http://shop2.genesis-ec.com/search/list.asp?shopcd=17251&itemgrp1cd=02&itemgrp2cd=02>
【0005】
従来の化粧品として使用されている金箔は、金(及び微量の銀、銅、プラチナ等の金属)のみから構成されている。
【0006】
本発明の目的は、化粧品として使用される金箔に更なる美容効果を付加する技術を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、少なくとも、金箔を製造する工程及び美容成分を含有させる工程を含む。
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項1記載の方法であって、前記金箔を製造する工程は、前記金箔の材料をロール圧延機で圧延し、延金を作成する延金作成工程と、前記延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する第一の紙仕込み工程と、前記澄打紙と前記延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する澄打ち工程と、前記上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する第二の紙仕込み工程と、前記箔打紙と前記上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、金箔を得る箔打ち工程と、を含み、前記第一の紙仕込み工程または前記第二の紙仕込み工程の少なくとも一方で実施され、前記澄打紙及び/または前記箔打紙に前記美容成分を添加する添加工程を更に含み、前記美容成分を含有させる工程は、前記澄打ち工程または前記箔打ち工程の少なくとも一方で実施される。
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項2記載の方法であって、前記第一の紙仕込み工程は、前記澄打紙の元となる和紙に水を含ませる紙漬け工程を少なくとも一回含み、前記添加工程は、前記紙漬け工程において、前記美容成分を混合した前記水を前記和紙に含ませることにより実施され、前記澄打ち工程において、前記美容成分が添加された澄打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記上澄に前記美容成分を含有させる。
また、上記課題を解決するために、請求項4に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項2または3記載の方法であって、前記第二の紙仕込み工程は、前記箔打紙の元となる和紙に灰汁を含ませる灰汁漬け工程を少なくとも一回含み、前記添加工程は、前記灰汁漬け工程において、前記美容成分を混合した前記灰汁を前記和紙に含ませることにより実施され、前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させる。
また、上記課題を解決するために、請求項5に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項4記載の方法であって、前記灰汁漬け工程が複数回繰り返される場合に、前記添加工程は、少なくとも最後に行われる灰汁漬け工程において実施される。
また、上記課題を解決するために、請求項6に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項2または3記載の方法であって、前記第二の紙仕込み工程は、カーボンをグラシン紙に塗布する塗布工程を少なくとも一回含み、前記添加工程は、前記塗布工程において、前記グラシン紙に対して前記美容成分を添加することにより実施され、前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させる。
また、上記課題を解決するために、請求項7に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項1記載の方法であって、前記金箔を製造する工程は、前記金箔の材料をロール圧延機で圧延し、延金を作成する延金作成工程と、前記延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する第一の紙仕込み工程と、前記澄打紙と前記延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する澄打ち工程と、前記上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する第二の紙仕込み工程と、前記箔打紙と前記上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、金箔を得る箔打ち工程と、を含み、作成された前記澄打紙に対して前記美容成分を添加する添加工程を更に含み、前記澄打ち工程において、前記美容成分が添加された澄打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記上澄に前記美容成分を含有させる。
また、上記課題を解決するために、請求項8に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項1または7記載の方法であって、前記金箔を製造する工程は、前記金箔の材料をロール圧延機で圧延し、延金を作成する延金作成工程と、前記延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する第一の紙仕込み工程と、前記澄打紙と前記延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する澄打ち工程と、前記上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する第二の紙仕込み工程と、前記箔打紙と前記上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、金箔を得る箔打ち工程と、を含み、作成された前記箔打紙に対して前記美容成分を添加する添加工程を更に含み、前記箔打ち工程において、前記美容成分が添加された箔打紙を用い、前記打ち機で叩くことにより、前記金箔に前記美容成分を含有させる。
また、上記課題を解決するために、請求項9に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項1記載の方法であって、前記金箔を製造する工程において製造された金箔を所望のサイズに裁断する裁断工程を含み、前記美容成分を含有させる工程は、前記裁断工程で裁断された金箔に対して前記美容成分を付着することにより実施される。
また、上記課題を解決するために、請求項10に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項1記載の方法であって、前記金箔を製造する工程において製造された金箔を所望のサイズに裁断する裁断工程と、裁断された前記金箔と透明フィルム若しくは紙とを順に重ねてパッケージングを行うパッケージング工程と、を含み、前記美容成分を含有させる工程は、前記パッケージングにより、前記透明フィルム若しくは前記紙に付着した美容成分を前記金箔に付着させることで実施される。
また、上記課題を解決するために、請求項11に係る美容成分を含有する金箔の製造方法は、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法であって、前記美容成分はコラーゲンである。
また、上記課題を解決するために、請求項12に係る金箔は、美容成分を含有する。
また、上記課題を解決するために、請求項13に係る金箔は、請求項12に記載の金箔であって、前記美容成分はコラーゲンである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、化粧品として使用される金箔に美容成分を含有させることができるため、金箔に更なる美容効果を付加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、美容成分を含有する金箔及びその製造方法に係る。
【0011】
==金箔==
本実施形態における金箔は、美容成分を含み、化粧品として利用可能なものである。金箔は、一定サイズ(たとえば、54×35mm)に裁断したシートとして用いてもよいし、顔面サイズに合わせたフェイスパックとして用いることも可能である。
【0012】
本実施形態における金箔は金を主成分とする。金箔は、合金率が純金100%の24K金箔、金以外に銀や銅を含有する金箔(所謂、5毛色〜定色)、または合金率が純金99%、純プラチナ1%のプラチナ金箔を含む。
【0013】
==美容成分==
美容成分は、人間の肌に美容効果(保湿作用、柔軟化作用、肌荒れ・シワ改善作用等、肌の状態を改善する或いは肌の状態を保つ効果)を与える成分である。美容成分は、たとえば、コラーゲンや、アロエエキス、化粧品原料である「ファーメンテージ シャルドネB」や「ヨーグルトエキスB」(いずれも一丸ファルコス株式会社製)を用いることができる。以下、美容成分としてコラーゲンを例に説明を行う。
【0014】
==金箔の製造方法==
本発明に係る金箔の製造は、少なくとも金箔を製造する工程及び美容成分を含有させる工程を含んでいれば特に限定されるものではないが、以下、縁付箔の製造方法及び断切箔の製造方法について説明を行う。
【0015】
<縁付箔の製造方法>
図1は、縁付箔の製造工程を示す工程図である。縁付箔の製造工程は、金合わせ工程、延金作成工程、第一の紙仕込み工程、澄打ち工程、第二の紙仕込み工程、箔打ち工程、箔移し工程を含む。
【0016】
(金合わせ工程)
金合わせ工程は、金合金を作成する工程である。具体的には、金箔の材料(たとえば、金、銀、銅)をるつぼに入れ、熱を加えることにより材料を溶融させる。そして、溶融した金箔の材料を型に流し込み、冷却させることにより金合金を作成する。
【0017】
(延金作成工程)
延金作成工程は、金箔の材料(金合わせ工程で作成された金合金)をロール圧延機で圧延し、延金を作成する工程である。ロール圧延機は、金合金を延伸させ、帯状の延金を作成する。延金の厚さは約100分の5〜6mmである。作成された延金は、澄打ち工程で使用できるよう、所定のサイズにカットされる。
【0018】
(第一の紙仕込み工程)
第一の紙仕込み工程は、延金を加工する際に使用する澄打紙を作成する工程である。第一の紙仕込み工程は、複数の工程を含んでいる。
図2は、第一の紙仕込み工程の詳細を示す図である。第一の紙仕込み工程は、初灰汁工程〜四灰汁工程までを含む。灰汁工程は、和紙(たとえば、雁皮紙)に水や灰汁を含ませることにより、澄打ち工程で使用可能な強度を持った澄打紙を作成するための工程である。
【0019】
初灰汁工程〜四灰汁工程はそれぞれ、紙漬け工程、紙絞り工程、灰汁打ち工程を含む。
【0020】
紙漬け工程は、澄打紙の元となる和紙に水を含ませる工程である。本実施形態では各紙漬け工程において、コラーゲンを混合した水(たとえば、水10リットルに対してコラーゲン100cc)を和紙に含ませる。具体例として、コラーゲンを混合した水をタンクに充填し、紙に対して所定量滴下させる。この工程は、「添加工程」の一例である。
【0021】
なお、本実施形態では、第一の紙仕込み工程における灰汁工程を4回としているが、灰汁工程は少なくとも一回あればよい。また、第一の紙仕込み工程で美容成分を添加することは必須ではない。また、灰汁工程(紙漬け工程)が複数回ある場合において、少なくとも一回の工程で美容成分を添加させることでよい。
【0022】
紙絞り工程は、水を含んだ和紙を脱水する工程である。なお、紙絞り工程では、完全な脱水を行わず、和紙にある程度の水を含ませた状態とする。
【0023】
灰汁打ち工程は、水を絞った和紙に更に灰汁を含ませ、打ち機で叩く工程である。打ち機は、筒状のハンマーを有し、対象物(ここでは和紙)に対してハンマーを連続で叩きつけることにより、対象物を所望の状態(形状、厚さ等)に変形させる装置である。ハンマーを叩きつける速度や強さは任意に設定することができる。和紙は、叩かれることにより、その繊維が裁断され且つ灰汁が染み込むため、強度が高くなる。なお、本実施形態において、和紙はコラーゲンを混合した水を含むため、叩くことによってコラーゲンも和紙に染み込ませることができる。
【0024】
このように、所定回数の灰汁工程を経ることによりコラーゲンが添加された澄打紙が完成する。
【0025】
(澄打ち工程)
澄打ち工程は、澄打紙と延金とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する工程である。澄打ち工程は、延金が所望の厚さ(1000分の1〜2mm。すなわち、上澄)になるまで澄打紙を換えて複数回行われる。澄打ち工程で使用する打ち機は、灰汁打ち工程で使用する打ち機と機構は同様であるが、ハンマーの径や叩く速度が異なっている。本実施形態では、コラーゲンが添加された澄打紙と延金とを重ねて叩くことにより、澄打紙に含まれるコラーゲンが延金に付着する。すなわち、完成した上澄は、コラーゲンを含有している。本実施形態における澄打ち工程は、「美容成分を含有させる工程」を含んでいる。
【0026】
(第二の紙仕込み工程)
第二の紙仕込み工程は、上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する工程である。第一の紙仕込み工程と同様、第二の紙仕込み工程も複数の工程を含んでいる。
図3は、第二の紙仕込み工程の詳細を示す図である。第二の紙仕込み工程は、のべ工程、初灰汁工程〜六灰汁工程までを含む。第二の紙仕込み工程における灰汁工程は、和紙(たとえば、雁皮紙)に灰汁や柿渋を含ませることにより、箔打ち工程で使用可能な強度を持った箔打紙を作成するための工程である。
【0027】
のべ工程は、灰汁漬け工程、灰汁打ち工程を含む。また、初灰汁工程〜六灰汁工程はそれぞれ、灰汁漬け工程、紙絞り工程、灰汁打ち工程を含む。
【0028】
灰汁漬け工程は、箔打紙の元となる和紙に灰汁(及び柿渋)を含ませる工程である。本実施形態では各灰汁漬け工程において、コラーゲンを混合した灰汁(たとえば、灰汁10リットルに対してコラーゲン100cc)を和紙に含ませる。具体例として、コラーゲンを混合した灰汁をタンクに充填し、紙に対して所定量滴下させる。この工程は、「添加工程」の一例である。
【0029】
なお、本実施形態では、第二の紙仕込み工程における灰汁工程を6回としているが、灰汁工程は少なくとも一回あればよい。また、第二の紙仕込み工程で美容成分を添加することは必須ではない。また、灰汁工程(灰汁漬け工程)が複数回ある場合において、少なくとも一回の工程で美容成分を添加させることでよい。更に、この場合、少なくとも最後の灰汁漬け工程において美容成分の添加が行われることが好ましい。
【0030】
紙絞り工程は、灰汁を含んだ和紙を絞る工程である。なお、紙絞り工程では、灰汁を完全に絞らず、和紙にある程度含ませた状態とする。
【0031】
灰汁打ち工程は、灰汁を絞った和紙を打ち機で叩く工程である。灰汁打ち工程で使用する打ち機は、澄打ち工程等で使用する打ち機と機構は同様であるが、ハンマーの径や叩く速度が異なっている。和紙は、叩かれることにより、その繊維が裁断され且つ灰汁が染み込むため、強度が高くなる。なお、本実施形態において、灰汁にはコラーゲンが混合されているため、和紙を叩くことにより、和紙にコラーゲンも染み込む。
【0032】
このように、所定回数の灰汁工程を経ることによりコラーゲンが添加された箔打紙が完成する。
【0033】
(箔打ち工程)
箔打ち工程は、箔打紙と上澄とを交互に重ねた状態で、打ち機で叩くことにより、上澄を作成する工程である。箔打ち工程は、上澄が所望の厚さ(10000分の1〜2mm。すなわち、金箔)になるまで箔打紙を換えて複数回行われる。箔打ちで使用する打ち機は、灰汁打ち工程等で使用する打ち機と機構は同様であるが、ハンマーの径や叩く速度が異なっている。本実施形態では、コラーゲンが添加された箔打紙と上澄とを重ねて叩くことにより、箔打紙に含まれるコラーゲンが上澄に付着する。すなわち、完成した金箔は、コラーゲンを含有している。本実施形態における箔打ち工程は、「美容成分を含有させる工程」を含んでいる。
【0034】
(箔移し工程)
箔移し工程は、箔打ちされた金箔を所望のサイズに裁断する工程(裁断工程)である。具体的には、箔移し工程は、箔打ちされた金箔を一枚ずつ革板に移し、裁断機で裁断する。このような工程により、任意のサイズや形状の金箔を作成することができる。
【0035】
なお、上述の通り、箔打ち工程を経た上澄は既に金箔として所望の厚さとなっている。すなわち、「延金作成工程」から「箔打ち工程」までの工程が、「金箔を製造する工程」の例である。
【0036】
また、箔打ちされた金箔(製造された金箔)或いは、裁断された金箔に対して直接コラーゲンを付着(液状のコラーゲンを金箔に塗布する。パウダー状のコラーゲンを金箔に噴霧する等)することでもよい。この作業は、「美容成分を含有させる工程」の一例である。
【0037】
<断切箔の製造方法>
次に、より簡素な製造方法である断切箔の製造方法について述べる。
図4は、断切箔の製造工程を示す工程図である。断切箔の製造工程は、金合わせ工程、延金作成工程、第一の紙仕込み工程、澄打ち工程、第二の紙仕込み工程、箔打ち工程、断切工程を含む。金合わせ工程〜澄打ち工程、及び箔打ち工程は、縁付箔の製造方法と同様であるため詳細な説明を省略する。但し、以下の例では、第一の紙仕込み工程において、美容成分を添加する工程を含まないものとする。
【0038】
(第二の紙仕込み工程)
第二の紙仕込み工程は、上澄を加工する際に使用する箔打紙を作成する工程である。ここで、断切箔における第二の紙仕込み工程は、グラシン紙にカーボンを塗布する塗布工程を少なくとも一回有する。このように、断切箔の製造方法においては、グラシン紙にカーボンを塗布するだけで箔打紙を作成する。よって、箔打紙を作成する時間を短縮できることから、作業効率が向上する。
【0039】
(断切工程)
断切工程は、箔打ちされた金箔を所望のサイズに裁断する工程(裁断工程)である。断切工程において、裁断機は、箔打ちされた金箔と和紙を交互に重ねた束を所望のサイズに裁断する。断切工程により、任意のサイズや形状の金箔を複数枚同時に作成することができる。
【0040】
本実施形態においては、断切りされた金箔に対して直接コラーゲンを付着(液状のコラーゲンを金箔に塗布する。パウダー状のコラーゲンを金箔に噴霧する等)することにより、金箔にコラーゲンを含有させる。この作業は、「美容成分を含有させる工程」の一例である。なお、箔打ちされた金箔(断切工程前の金箔)に対してコラーゲンを付着させることにより、金箔にコラーゲンを含有させてもよい。
【0041】
なお、断切箔の製造工程における第一の紙仕込み工程において美容成分を添加させてもよいことは当然である。また、第二の紙仕込み工程の塗布工程において、コラーゲンをグラシン紙に添加することも可能である。この工程は、「添加工程」の一例である。塗布工程が複数回ある場合において、美容成分の添加は、少なくとも一回の塗布工程で行われればよい。
【0042】
==その他==
金箔同士を直接重ねると貼り付いて容易に取れなくなる。よって、裁断された金箔を化粧品として販売等する場合、パッケージングが必要となる。すなわち、裁断された金箔と透明フィルム若しくは紙とを順に重ねてパッケージングを行う工程が必要となる。ここで、透明フィルム若しくは紙に美容成分を予め付着させておくことができる。この場合、パッケージングにより、透明フィルム若しくは紙に付着した美容成分を金箔に付着させることができる。これは、「美容成分を含有させる工程」の一例である。
【0043】
また、上記例では、澄打紙または箔打紙を作る工程で美容成分を添加する例について述べたがこれに限られない。すなわち、作成された澄打紙または箔打紙に対し、美容成分を付着させることにより、美容成分を添加することも可能である。なお、美容成分を付着させた澄打紙や箔打紙が湿っている場合、乾燥させてから使用することが望ましい。
【0044】
上記の例では、様々なタイミングで美容成分を添加及び/または含有させる例について述べてきたが、美容成分を添加及び/または含有する工程は、いずれかのタイミングで少なくとも一回行われればよい(複数回行われてもよいことは当然である)。
【0045】
また、打ち機で叩くことにより熱が発生するため、美容成分が熱分解する可能性もありうる。よって、打ち機を用いる工程において、打ち機は、叩く速度、タイミング(一定期間叩くことを停止させて冷却する)等を調整するようプログラミングされていてもよい。
【0046】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。それらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例】
【0047】
本発明に係る美容成分を含有する金箔(金箔A)、及び美容成分を含有しない金箔(金箔B)について、複数の女性を対象とするモニター試験を行った。なお、モニター対象としては、日常的に金箔Bを使用している女性を選択した。
【0048】
金箔Aは、第二の紙仕込み工程において初灰汁工程〜六灰汁工程までの各工程でコラーゲンを添加することにより作成したものである。金箔Bは、市販されている化粧品用金箔(「美容金箔」箔座株式会社製)である。
【0049】
モニターは、まず、金箔Aを左右の頬に1枚ずつ貼り付け、肌に馴染ませた。そして、その2日後に再度、金箔Aを左右の頬に1枚ずつ貼り付け、肌に馴染ませた。その3日後に使い始めからの肌の状態をチェックした。その後、金箔Bについても同様のステップで使用し、使い始めからの肌の状態をチェックした。チェックは使用者にアンケート(「使用感」、「肌の潤い」、「肌のつや」及び「肌への馴染み」の4項目)を実施することにより行った。
【0050】
その結果、「肌の潤い」及び「肌のつや」の項目において、金箔Aのほうが金箔Bよりも優位な結果が得られた。また、「使用感」及び「肌への馴染み」については、金箔Bのほうが優位な結果が得られたが、これは金箔Bの使用に慣れているためであると考えられる。以上より、金箔Aは、肌の潤いや肌のつやといった美容効果において、従来の金箔よりも優れているといえる。