特許第6244330号(P6244330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244330遮水壁構造の漏水量測定装置および測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244330
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】遮水壁構造の漏水量測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20171127BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G01M3/02 C
   G01M3/26 T
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-108826(P2015-108826)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-223849(P2016-223849A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松井 良典
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】鶴ヶ崎 和博
(72)【発明者】
【氏名】栗城 裕二
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−094563(JP,A)
【文献】 特開平04−102037(JP,A)
【文献】 特開昭57−037240(JP,A)
【文献】 特開昭57−037239(JP,A)
【文献】 特開平06−294699(JP,A)
【文献】 米国特許第05372031(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための装置であって、
前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定される開口部を有する容器からなる採水手段と、
前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部と、前記容器と同じ高さにある前記遮水壁構造の他方の側面との間に、前記容器の設置水深と前記容器の内部の気圧状態に応じた水頭差を作り出す圧力調整手段とを備えることを特徴とする遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項2】
前記圧力調整手段は、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部の水を抜いて、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする請求項1に記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項3】
前記圧力調整手段によって所定の気圧状態にされた前記容器の内部に前記開口部を通じて入り込む、前記遮水壁構造からの漏水量を測定する漏水量測定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項4】
前記圧力調整手段は、前記容器の内部を大気圧またはそれ以下の気圧状態にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項5】
前記容器の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように前記容器を構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項6】
前記圧力調整手段を、一端が前記容器の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホースと、一端が前記容器の内部に連通して、他端が前記容器の外部に設けた貯水槽に連通した水抜き用ホースと、前記貯水槽に接続した真空ポンプとを含んで構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項7】
前記遮水壁構造は、継手を介して連結された鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁であり、
前記容器の前記開口部は、前記継手の部分を跨ぐ態様で配置され、前記継手の部分を含めて前記鋼矢板または鋼管矢板に水密に固定可能な形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項8】
前記容器の前記開口部の縁を、遮水壁に追従し、かつ変形しない硬度を備えた弾性体で構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定装置。
【請求項9】
水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための方法であって、
前記遮水壁構造の一方の側面に、開口部を有する容器からなる採水手段の前記開口部を固定した後、前記容器の内部と、前記容器と同じ高さにある前記遮水壁構造の他方の側面との間に、前記容器の設置水深と前記容器の内部の気圧状態に応じた水頭差を作り出すことを特徴とする遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項10】
前記遮水壁構造の一方の側面に前記開口部を固定した後、前記容器の内部の水を抜いて、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする請求項9に記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項11】
前記容器の内部を所定の気圧状態にした後、前記開口部を通じて前記容器の内部に入り込む前記遮水壁構造からの漏水量を測定することを特徴とする請求項9または10に記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項12】
前記容器の内部を大気圧またはそれ以下の気圧状態にすることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項13】
前記容器の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように前記容器を構成したことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項14】
前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に仮固定した後、前記容器の内部の水を吸引して、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定するとともに、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項15】
一端が前記容器の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホースと、一端が前記容器の内部に連通して、他端が前記容器の外部に設けた貯水槽に連通した水抜き用ホースと、前記貯水槽に接続した真空ポンプとを有する構成において、前記真空ポンプを作動して前記貯水槽および前記水抜き用ホースを介して前記容器の内部の水を吸引し、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定するとともに、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項16】
前記遮水壁構造は、継手を介して連結された鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁であり、
前記容器の前記開口部は、前記継手の部分を跨ぐ態様で配置され、前記継手の部分を含めて前記鋼矢板または鋼管矢板に水密に固定可能な形状であることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【請求項17】
前記容器の前記開口部の縁を、遮水壁に追従し、かつ変形しない硬度を備えた弾性体で構成したことを特徴とする請求項9〜16のいずれか一つに記載の遮水壁構造の漏水量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば廃棄物海面処分場などの高い遮水性能が要求される遮水壁構造の漏水量を測定する装置および方法に関するものであり、特に、継手を有する鋼矢板などからなる鉛直遮水壁構造の漏水量を現地で測定するための漏水量測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物海面処分場などの建設においては、多数の鋼矢板や鋼管矢板などを海中に隣接配置することにより、処分場を取り囲む鉛直遮水壁を設置している。この鉛直遮水壁は継手を介して連結された多数の鋼矢板や鋼管矢板によって形成されるものであるから、適切に施工しなければ継手部分から漏水が発生するおそれがある。そのため、遮水壁設置完了後に確実に遮水できていることを確認する必要があるが、継手形状が複雑なことから、これまで例えば以下の(1)〜(3)のような方法が適用されてきた。
【0003】
(1)一般的な方法としては、図10(a)〜(c)に示すように、鉛直遮水壁1の設置が完了した後に、鉛直遮水壁1によって締め切られた内側の水をポンプ2などで排出して鉛直遮水壁1の内外に水位差を作り出し、鉛直遮水壁1の継手部分3からの漏水Wの有無を、海中に潜ったダイバー4が目視や触診などにより確認する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
(2)ダイバーの目視等に頼らない方法としては、上記の(1)と同様にして鉛直遮水壁の内外で水位差を作り、流量検出装置を継手の上下方向に垂らして継手部分からの漏水量(流量)を検出する方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
(3)その他の方法としては、トレーサーを用いた漏水検知方法や観測井戸を設ける方法などがある(例えば、特許文献2および3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−94563号公報
【特許文献2】特開2006−150202号公報
【特許文献3】特開2004−49959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の(1)の方法では、鉛直遮水壁を構成する全ての鋼矢板または鋼管矢板の設置完了後でなければ締め切り側の抜水ができないため、例えば年度工事などで分割された施工区間毎に異なる業者が施工する場合等や施工途上では水位差の形成が困難となり、漏水の確認作業が難しく、施工品質に対する責任が不明瞭となるといった問題がある。
【0008】
また、廃棄物処分場の遮水壁には通常、遮水性能の基準値が設けられている。例えば透水係数が1.0×10−6cm/sかつ厚さが50cm以上と規定されている。このとき、例えば30kPaの水圧(3mの水位差に相当)で1m2の壁から1分間にしみでてくる水の量は、3.6cm3となる。鋼矢板や鋼管矢板などを用いた鉛直遮水壁では、漏水は継手部分のみで発生すると考えられるため、上記の例で言えば遮水性能を満たしていることを測定により明らかにするためには、1m2の壁に含まれる継手部分からの漏水量が1分間に3.6cm3より小さいことを証明する必要がある。このように、漏水量が少ない場合には、ダイバーによる目視確認では定量的な漏水量の把握が困難であるといった問題もある。
【0009】
また、上記の(2)の方法では、流量計を用いるため定量的な漏水量の把握は可能である。しかしながら、こうした流量計はそもそも海面処分場などの高い遮水性能が要求される鉛直遮水壁を対象としておらず、上述しているような微量の漏水量では検知が不可能である。
【0010】
上記の(3)のトレーサーを用いた検知方法は、微量の漏水量でも漏水検知が可能であるが、定量的な漏水量の把握が困難である。観測井戸を設置する方法では、井戸を設置した場所だけしか測定できないといった問題がある。
【0011】
また、上記の(2)、(3)いずれの方法においても、鉛直遮水壁の内外に水位差を作り出す必要があることから、処分場を囲む鉛直遮水壁全体の設置が完了した後でなければ測定できないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、水位差がなくても、微量な漏水量を定量的に測定することができる遮水壁構造の漏水量測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置は、水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための装置であって、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定される開口部を有する容器からなる採水手段と、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部を所定の気圧状態にする圧力調整手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記圧力調整手段は、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部の水を抜いて、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記圧力調整手段によって所定の気圧状態にされた前記容器の内部に前記開口部を通じて入り込む、前記遮水壁構造からの漏水量を測定する漏水量測定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記圧力調整手段は、前記容器の内部を大気圧またはそれ以下の気圧状態にすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記容器の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように前記容器を構成したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記圧力調整手段を、一端が前記容器の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホースと、一端が前記容器の内部に連通して、他端が前記容器の外部に設けた貯水槽に連通した水抜き用ホースと、前記貯水槽に接続した真空ポンプとを含んで構成したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記遮水壁構造は、継手を介して連結された鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁であり、前記容器の前記開口部は、前記継手の部分を跨ぐ態様で配置され、前記継手の部分を含めて前記鋼矢板または鋼管矢板に水密に固定可能な形状であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置は、上述した発明において、前記容器の前記開口部の縁を、遮水壁に追従し、かつ変形しない硬度を備えた弾性体で構成したことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法は、水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための方法であって、前記遮水壁構造の一方の側面に、開口部を有する容器からなる採水手段の前記開口部を固定した後、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記遮水壁構造の一方の側面に前記開口部を固定した後、前記容器の内部の水を抜いて、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記容器の内部を所定の気圧状態にした後、前記開口部を通じて前記容器の内部に入り込む前記遮水壁構造からの漏水量を測定することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記容器の内部を大気圧またはそれ以下の気圧状態にすることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記容器の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように前記容器を構成したことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に仮固定した後、前記容器の内部の水を吸引して、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定するとともに、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、一端が前記容器の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホースと、一端が前記容器の内部に連通して、他端が前記容器の外部に設けた貯水槽に連通した水抜き用ホースと、前記貯水槽に接続した真空ポンプとを有する構成において、前記真空ポンプを作動して前記貯水槽および前記水抜き用ホースを介して前記容器の内部の水を吸引し、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定するとともに、前記容器の内部を所定の気圧状態にすることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記遮水壁構造は、継手を介して連結された鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁であり、前記容器の前記開口部は、前記継手の部分を跨ぐ態様で配置され、前記継手の部分を含めて前記鋼矢板または鋼管矢板に水密に固定可能な形状であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した発明において、前記容器の前記開口部の縁を、遮水壁に追従し、かつ変形しない硬度を備えた弾性体で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための装置であって、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定される開口部を有する容器からなる採水手段と、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部を所定の気圧状態にする圧力調整手段とを備えるので、容器の内部を所定の気圧状態(例えば大気圧)にすることによって、容器の内部と、容器と同じ深さにある遮水壁構造の他方の側面との間に、容器の設置水深と気圧状態に応じた水頭差を作り出すことができる。この水頭差によって遮水壁構造の他方の側面から容器の開口部に向かう浸透流が発生し、漏水として容器の内部に溜まっていく。所定時間当たりの容器への貯留量を測定すれば漏水量を測定可能である。したがって、本発明によれば、遮水壁構造の内外に水位差がなくても、遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置および測定方法の実施の形態を説明する側面断面図であり、(1)は鉛直遮水壁の内外に水位差がない場合、(2)水位差がある場合、(3)は本発明によって水頭差を作り出した場合の図である。
図2図2は、鋼矢板からなる鉛直遮水壁の平面断面図である。
図3図3は、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置の実施の形態を示す概略斜視図である。
図4図4は、開口部から見た容器の概略斜視図である。
図5図5は、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法の実施の形態を示す工程1の図である。
図6図6は、仮固定手段で容器を仮固定する場合の一例を示した概略斜視図である。
図7図7は、容器の上端部の隙間をコーキング材で塞いだ状態を示す概略斜視図である。
図8図8は、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法の実施の形態を示す工程2の図である。
図9図9は、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法の実施の形態を示す工程3の図である。
図10図10は、従来の鉛直遮水壁からの漏水の有無を確認する方法の説明図であり、(a)は鉛直遮水壁で閉合した状態を示す上面図、(b)は鉛直遮水壁の部分拡大図、(c)は鉛直遮水壁を外部から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置および測定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0033】
[遮水壁構造の漏水量測定装置]
まず、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置について説明する。
【0034】
図1(1)に示すように、海底地盤Gから海面WL上にかけて鉛直遮水壁10(遮水壁構造)が立設されている。この鉛直遮水壁10は、図2に示すように、側部の継手12同士を嵌合して連結された多数の鋼矢板14からなる。
【0035】
図1(1)に示すように、鉛直遮水壁10によって海中(水中)は外側16と内側18とに仕切られており、内側18の領域は将来的に廃棄物によって埋め立てられ、廃棄物海面処分場となる。鉛直遮水壁10を立設した直後は、外側16と内側18とに水頭差Δhは生じていないので鉛直遮水壁10からの漏水はない。
【0036】
図1(2)に示すように、内側18の水位を下げ水頭差Δhを作り出すと、鉛直遮水壁10の外側16から内側18への漏水Wが生じるようになる。従来はこの状態を作り出し、漏水量を測定していた。
【0037】
これに対し、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置100は、図1(3)に示すように、鉛直遮水壁10の内側の側面10aに水密に固定される開口部20を有する容器22からなる採水手段24と、容器22の内部を所定の気圧状態にする図示しない圧力調整手段とを備えるものである。本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置100を用いれば、外側16と内側18とに図1(2)のような水位差を形成せずとも、外側16と容器22の内部との間に水頭差Δhを作り出すことが可能である。この漏水量測定装置100の構成について以下具体的に説明する。
【0038】
図3は、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置100の構成図である。この図に示すように、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置100は、鉛直遮水壁10の内側の側面10aに水密に固定される開口部20を有する容器22からなる採水手段24と、容器22の内部を所定の気圧状態にする圧力調整手段26とを備える。
【0039】
図4は、採水手段24の容器22を開口部20から見たものである。この図および図3に示すように、容器22は、一方の側面が開口した直方体箱状のものであり、容器22の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように透明のアクリルで構成してある。こうすることで、容器22の内部の設置状況や漏水状況を外部より容易に確認することができる。
【0040】
なお、容器22はダイバーによって鉛直遮水壁10に設置される。このため、容器22の大きさと重さは人力で持ち運び可能なサイズと重さであることが好ましいが、継手12の全長部分の漏水量を測定可能なサイズとすることも可能である。ただし、小さ過ぎると測定対象とする継手の長さが短くなることから漏水量が少なくなり測定に時間を要したり、継手全長を測定する場合は測定回数が増えるので適度な大きさ(例えば高さ30cm、幅20cm、奥行き15cm程度)が望ましい。
【0041】
容器22の開口部20は、図3に示すように、継手12の部分を跨ぐ態様で配置されることから、継手12の部分の形状に合わせて段差状に形成され、継手12の部分を含めて鋼矢板14に水密に固定可能な形状となっている。
【0042】
ただし、鉛直遮水壁10の継手12は施工性を考慮して嵌合部に余裕をもたせているため、全ての継手12で同じ形状とはならず、開口部20は様々な継手12の形状に密着できる構造とする必要がある。そこで鉛直遮水壁10の側面10aに接触する開口部20の縁には、所定の変形性能を有し、側面10aに当接配置した際に水密性を確保可能なゴム28を取り付けている。ゴム28を取り付けることで、容器22の周囲の水は容器22の内部に入り込むことがない。
【0043】
このゴム28は硬すぎると継手12の形状に密着せず、柔らかすぎると容器22の内部の水を抜いた際に、容器22の外部の水圧によって変形するおそれがある。このため、ゴム28は、日本ゴム協会標準規格SRISO101のアスカーC(Asker C)硬度で10度程度のゴムで構成することが望ましい。このようにすれば、継手12の部分を跨って開口部20を水密に固定する際にゴム28が継手12の部分の形状に応じて変形して密着性を高めるとともに、その後、容器22の内部を所定の気圧状態にした際にゴム28が過剰に変形するのを抑制することができる。
【0044】
容器22の上面22aにはバルブを内蔵したカプラ32が設けてあり、容器22の下面22bにはバルブを内蔵したカプラ36が設けてある。また、容器22の上面22aには持ち運び可能なようにU字状の把持部30が設けてある。こうすることで、ダイバーなどの人力によって容器22を容易に鉛直遮水壁10の側面10aに固定することが可能である。
【0045】
圧力調整手段26は、鉛直遮水壁10の側面10aに水密に固定された採水手段24の容器22の内部の水を抜いて、容器22の内部を所定の気圧状態にするためのものである。この圧力調整手段26は、一端がカプラ32を介して容器22の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホース34と、一端がカプラ36を介して容器22の内部に連通して、他端が容器22の外部に設けた貯水槽40に連通した水抜き用ホース38と、貯水槽40に接続した真空ポンプ42とを含んで構成してある。真空ポンプ42には駆動用のポータブル発電機44が接続してある。本発明は、こうした簡単な構成で鉛直遮水壁10からの微量な漏水量を定量的に測定することが可能である。
【0046】
また、この漏水量測定装置100は、圧力調整手段26によって所定の気圧状態にされた容器22の内部に開口部20を通じて入り込む、鉛直遮水壁10からの漏水量を測定する図示しない漏水量測定手段をさらに備えている。
【0047】
この漏水量測定手段としては、容器22の側面に内部に溜まった水量を測定するための目盛を付けておき、所定経過時間毎に目盛から読み取った水量を除算して漏水量を測定する方式を用いることができる。また、容器22の下面22bに目盛付の有底円筒などの集水枡を設けておき、この集水桝によって漏水量を測定する方式でもよい。
【0048】
上記構成の動作および作用を説明する。
鉛直遮水壁10の側面10aの継手12の部分を跨るように容器22を固定した後、真空ポンプ42を作動して貯水槽40および水抜き用ホース38を介して容器22の内部の水を吸引し、容器22の開口部20を鉛直遮水壁10の側面10aに水密に固定するとともに、容器22の内部を所定の気圧状態(例えば大気圧)にする。
【0049】
こうすることで、図1(3)に示すように、容器22の内部と、容器22と同じ深さにある鉛直遮水壁10の他方の側面との間に、容器22の設置水深と気圧状態に応じた水頭差Δhを容易に作り出すことができる。
【0050】
また、この水頭差Δhによって鉛直遮水壁10の内側18から容器22の開口部20に向かう浸透流による漏水Wが発生し、容器22の内部に溜まっていく。所定時間当たりの容器22への貯留量を測定すれば漏水量を測定可能である。したがって、本発明によれば、鉛直遮水壁10の内外に水位差がなくても、鉛直遮水壁10からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。このため、海面処分場建設計画において、全ての鉛直遮水壁が完成していない段階でも、継手の部分からの漏水量の測定が可能となる。
【0051】
また、鉛直遮水壁10の側面10aに水密に固定された容器22の内部の水を抜く際に、容器22の内部に比べて外部の水圧が相対的に大きくなり、容器22を側面10aに押し付ける力が強くなるので、側面10aに対する容器22の開口部20の密着性を高めることができる。これにより、継手12の部分からの漏水量のみを効率よく測定することが可能となる。
【0052】
上記の実施の形態において、圧力調整手段26は、カプラ32、36に内蔵されたバルブの開度を開閉調整したり、真空ポンプ42の出力を調整することで容器22の内部を大気圧以下の気圧状態にしてもよいが、いずれにしても漏水量測定中の容器22の内部の気圧は一定状態に保つ必要がある。こうすることで、所望の水頭差を作り出すことができる。大気圧よりも小さくすればより大きな水頭差を作り出すことが可能となり、鉛直遮水壁10からの漏水の吸い出し力が高まって漏水量は増大する。漏水量が増大することで、漏水量の測定時間を短くすることができる。
【0053】
また、上記の実施の形態において、図6に示すように、容器22の開口部20を鉛直遮水壁10の側面10aに仮固定するための仮固定手段50をさらに備えてもよい。仮固定手段50は、例えばU字状のアーム46とその両端部に設けた磁石48で構成することができる。アーム46を容器22の後面から側面10aに向けて押し付ければ、容器22は磁石48の磁力によって側面10aに容易に仮固定される。こうすることで、作業初期段階における容器22の固定作業を容易に行うことができる。
【0054】
また、上記の実施の形態において、図7に示すように、容器22の開口部20が水密に固定される継手12の部分の上端部12aの隙間、および図示しない下端部の隙間にコーキング材52などを塗布してこの隙間を塞ぐことが好ましい。継手12の部分の上下端部には、隙間が生じやすいからである。隙間を塞ぐことで、この隙間から容器22の内部への水の浸入が防止され、容器22の水密性をより確実にすることができる。
【0055】
[遮水壁構造の漏水量測定方法]
次に、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法について説明する。
【0056】
本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法は、上述した遮水壁構造の漏水量測定装置100を用いて鉛直遮水壁10からの漏水量を測定するための方法である。この方法は、図1(3)に示すように、鉛直遮水壁10の側面10aに容器22の開口部20を固定した後、容器22の内部を所定の気圧状態にし、開口部20を通じて容器22の内部に入り込む鉛直遮水壁10からの漏水量を測定するものである。
【0057】
本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法の具体的手順について説明する。
【0058】
まず、継手への容器22の密着性を確保するため、鉛直遮水壁10の側面10aに生じている錆や付着物をたわし等で除去しておく。
【0059】
そして、図5の工程1に示すように、ダイバーの手作業によって、海面WL付近において、鉛直遮水壁10の継手12の部分を跨ぐ態様で側面10aに採水手段24の容器22の開口部20を仮固定する。
【0060】
なお、海面下の位置に容器22を仮固定すれば、容器22の内部は水で満たされた状態となる。鉛直遮水壁10の内外は同一水位であることから容器22の内部と鉛直遮水壁10の外側16との間に水頭差はない。また、干潮時に海面WL付近で容器22を仮固定すれば、その後の潮位の上昇によって容器22全体を完全没水させることが可能であるとともに、所望の設置水深が作り出せることから、作業安全上望ましい。
【0061】
また、容器22の仮固定は、図6に示すように、U字状のアーム46とその両端部に設けた磁石48からなる仮固定手段50によって行ってもよい。この場合、アーム46を容器22の後面から側面10aに向けて押し付ければ、容器22は磁石48の磁力によって側面10aに容易に仮固定される。こうすることで、作業初期段階における容器22の固定作業を容易に行うことができる。
【0062】
また、図7に示すように、容器22の開口部20が水密に固定される継手12の部分の上端部12aの隙間、および図示しない下端部の隙間にコーキング材52などを塗布してこの隙間を予め塞いでおくことが好ましい。継手12の部分の上下端部には、隙間が生じやすいからである。隙間を塞ぐことで、この隙間から容器22の内部への水の浸入が防止され、容器22の水密性をより確実にすることができる。
【0063】
続いて、図8の工程2に示すように、容器22の上下面の図示しないカプラに空気入れ用ホース34および水抜き用ホース38をそれぞれ接続する。空気入れ用ホース34の端部は気中に出しておく。
【0064】
続いて、図9の工程3に示すように、ボート等で貯水槽40、真空ポンプ42、ポータブル発電機44を容器22のそばまで運搬し、水抜き用ホース38の端部を貯水槽40に接続する。
【0065】
その後の潮位の上昇等によって容器22全体が海面下に完全没水した状態において、真空ポンプ42を作動する。これにより貯水槽40の中を真空にさせ、水抜き用ホース38を介して容器22の内部の水を抜く。空気入れ用ホース34から空気が入り込んで、容器22の内部に大気圧状態が作り出される。
【0066】
こうすることで、鉛直遮水壁10の外側16と容器22の内部との間には、海面から容器22の底面までの水深分の水頭差が形成されることになり、容器22の内部に開口部20を介して継手12の部分からの漏水が入り込むようになる。一方、容器22には周囲の水によって容器22を継手12側に押す方向の水圧が作用する。この水圧は作り出した水頭差に応じた大きさのものとなる。この作用水圧によって、周囲の水は容器22の内部に入りにくくなり、容器22の周囲の水に対する水密性が確保される。
【0067】
なお、上記の実施の形態において、容器22の内部を必ずしも大気圧状態にする必要はなく、さらに気圧を下げて継手12からの漏水を促進させてもよいが、容器22の内部の気圧は一定状態に保つ必要がある。
【0068】
また、真空ポンプ42で容器22の水を抜き始める初期段階は、ダイバーにて軽く容器22を鉛直遮水壁10に押し当て、外部から容器22の内部に水が入らないよう密着性を保つことが望ましい。
【0069】
容器22の内部の水が完全に抜けた時点から、一定時間までの間に漏水した水量を測定することにより遮水性能の指標となる換算透水係数を以下の式(1)により把握することができる。
【0070】
K=Q/(i×A) ・・・式(1)
ただし、
K:50cm壁厚とした場合の換算透水係数
Q:漏水速度で累積漏水量÷経過時間
i:動水勾配。水頭差Δhの場合、i=Δh/50
A:評価面積。A=容器の高さ×遮水壁の継手間隔。
【0071】
例えば、容器22の高さが30cm、鉛直遮水壁10の継手間隔が60cm、水頭差が200cmの場合で2時間後の漏水量が10cm3であれば、50cm壁厚の換算透水係数は、上記の式(1)より1.93×10−7cm/sとなる。
【0072】
このように、本発明によれば継手12の部分に水密に固定した容器22の内部の水を抜くことによって、図1(3)に示すように、容器22の内部と、容器22と同じ深さにある鉛直遮水壁10の他方の側面との間に、容器22の設置水深と気圧状態に応じた水頭差Δhを容易に作り出すことができる。また、容器22の内部の水を抜くと外水圧により容器22が鉛直遮水壁10により密着するので、継手12の部分からの漏水量のみを効率よく測定することが可能となる。
【0073】
また、この水頭差Δhによって鉛直遮水壁10の外側16から容器22の開口部20に向かう浸透流による漏水Wが発生し、容器22の内部に溜まっていく。所定時間当たりの容器22への貯留量を測定すれば漏水量を測定可能である。したがって、本発明によれば、鉛直遮水壁10の内外に水位差がなくても、鉛直遮水壁10からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。このため、海面処分場建設計画において、全ての鉛直遮水壁が完成していない段階でも、継手の部分からの漏水量の測定が可能となる。
【0074】
なお、上記の実施の形態においては、鋼矢板14からなる鉛直遮水壁10の場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば継手で連結された多数の鋼管矢板からなる鉛直遮水壁や、継手による継ぎ目のない遮水壁やコンクリート、セメント系材料あるいは他の材料などからなる遮水壁に対して適用することも可能であり、いずれにしても本発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための装置であって、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定される開口部を有する容器からなる採水手段と、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部を所定の気圧状態にする圧力調整手段とを備えるので、容器の内部を所定の気圧状態(例えば大気圧)にすることによって、容器の内部と、容器と同じ深さにある遮水壁構造の他方の側面との間に、容器の設置水深と気圧状態に応じた水頭差を作り出すことができる。この水頭差によって遮水壁構造の他方の側面から容器の開口部に向かう浸透流が発生し、漏水として容器の内部に溜まっていく。所定時間当たりの容器への貯留量を測定すれば漏水量を測定可能である。したがって、本発明によれば、遮水壁構造の内外に水位差がなくても、遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0076】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記圧力調整手段は、前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定された前記採水手段の前記容器の内部の水を抜いて、前記容器の内部を所定の気圧状態にするので、容器の内部と、容器と同じ深さにある遮水壁構造の他方の側面との間に、容易に水頭差を作り出すことができる。また、容器の内部に比べて外部の水圧が相対的に大きくなるので、側面に対する容器の開口部の密着性を高めることができる。
【0077】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記圧力調整手段によって所定の気圧状態にされた前記容器の内部に前記開口部を通じて入り込む、前記遮水壁構造からの漏水量を測定する漏水量測定手段をさらに備えるので、遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0078】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記圧力調整手段は、前記容器の内部を大気圧またはそれ以下の気圧状態にするので、所望の水頭差を作り出すことができる。大気圧よりも小さくすればより大きな水頭差を作り出すことが可能となり、遮水壁構造からの漏水の吸い出し力が高まって漏水量は増大する。漏水量が増大することで、漏水量の測定時間を短くすることができる。
【0079】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記容器の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように前記容器を構成したので、容器の内部の漏水状況を外部より容易に確認することができる。
【0080】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記圧力調整手段を、一端が前記容器の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホースと、一端が前記容器の内部に連通して、他端が前記容器の外部に設けた貯水槽に連通した水抜き用ホースと、前記貯水槽に接続した真空ポンプとを含んで構成したので、簡単な構成で遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0081】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記遮水壁構造は、継手を介して連結された鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁であり、前記容器の前記開口部は、前記継手の部分を跨ぐ態様で配置され、前記継手の部分を含めて前記鋼矢板または鋼管矢板に水密に固定可能な形状であるので、鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁の内外に水位差がなくても、継手の部分からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0082】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定装置によれば、前記容器の前記開口部の縁を、遮水壁に追従し、かつ変形しない硬度を備えた弾性体で構成したので、例えば継手の部分を跨って開口部を水密に固定する際にゴムが継手の部分の形状に応じて変形して密着性を高めるとともに、その後、容器の内部を所定の気圧状態にした際にゴムが過剰に変形するのを抑制することができる。
【0083】
また、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、水中に立設された遮水用の遮水壁構造からの漏水量を測定するための方法であって、前記遮水壁構造の一方の側面に、開口部を有する容器からなる採水手段の前記開口部を固定した後、前記容器の内部を所定の気圧状態にするので、容器の内部を所定の気圧状態(例えば大気圧)にすることによって、容器の内部と、容器と同じ深さにある遮水壁構造の他方の側面との間に、容器の設置水深と気圧状態に応じた水頭差を作り出すことができる。この水頭差によって遮水壁構造の他方の側面から容器の開口部に向かう浸透流が発生し、漏水として容器の内部に溜まっていく。所定時間当たりの容器への貯留量を測定すれば漏水量を測定可能である。したがって、本発明によれば、遮水壁構造の内外に水位差がなくても、遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0084】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記遮水壁構造の一方の側面に前記開口部を固定した後、前記容器の内部の水を抜いて、前記容器の内部を所定の気圧状態にするので、容器の内部と、容器と同じ深さにある遮水壁構造の他方の側面との間に、容易に水頭差を作り出すことができる。また、容器の内部に比べて外部の水圧が相対的に大きくなるので、側面に対する容器の開口部の密着性を高めることができる。
【0085】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記容器の内部を所定の気圧状態にした後、前記開口部を通じて前記容器の内部に入り込む前記遮水壁構造からの漏水量を測定するので、遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0086】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記容器の内部を大気圧またはそれ以下の気圧状態にするので、所望の水頭差を作り出すことができる。大気圧よりも小さくすればより大きな水頭差を作り出すことが可能となり、遮水壁構造からの漏水の吸い出し力が高まって漏水量は増大する。漏水量が増大することで、漏水量の測定時間を短くすることができる。
【0087】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記容器の内部に入り込む漏水を外部より視認可能なように前記容器を構成したので、容器の内部の漏水状況を外部より容易に確認することができる。
【0088】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に仮固定した後、前記容器の内部の水を吸引して、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定するとともに、前記容器の内部を所定の気圧状態にするので、容器の固定が容易になる。
【0089】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、一端が前記容器の内部に連通して、他端が気中に配置された空気入れ用ホースと、一端が前記容器の内部に連通して、他端が前記容器の外部に設けた貯水槽に連通した水抜き用ホースと、前記貯水槽に接続した真空ポンプとを有する構成において、前記真空ポンプを作動して前記貯水槽および前記水抜き用ホースを介して前記容器の内部の水を吸引し、前記容器の前記開口部を前記遮水壁構造の一方の側面に水密に固定するとともに、前記容器の内部を所定の気圧状態にするので、簡単な構成で遮水壁構造からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0090】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記遮水壁構造は、継手を介して連結された鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁であり、前記容器の前記開口部は、前記継手の部分を跨ぐ態様で配置され、前記継手の部分を含めて前記鋼矢板または鋼管矢板に水密に固定可能な形状であるので、鋼矢板または鋼管矢板によって構成された鉛直遮水壁の内外に水位差がなくても、継手の部分からの微量な漏水量を定量的に測定することができる。
【0091】
また、本発明に係る他の遮水壁構造の漏水量測定方法によれば、前記容器の前記開口部の縁を、遮水壁に追従し、かつ変形しない硬度を備えた弾性体で構成したので、例えば継手の部分を跨って開口部を水密に固定する際にゴムが継手の部分の形状に応じて変形して密着性を高めるとともに、その後、容器の内部を所定の気圧状態にした際にゴムが過剰に変形するのを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明に係る遮水壁構造の漏水量測定装置および測定方法は、例えば廃棄物海面処分場などの高い遮水性能が要求される継手を有する鋼矢板などからなる鉛直遮水壁構造の漏水量を現地で測定するのに有用であり、特に、水位差がなくても、微量な漏水量を定量的に測定するのに適している。
【符号の説明】
【0093】
10 鉛直遮水壁(遮水壁構造)
10a 側面
12 継手
12a 上端部
14 鋼矢板
16 外側
18 内側
20 開口部
22 容器
22a 上面
22b 下面
24 採水手段
26 圧力調整手段
28 ゴム
30 把持部
32 カプラ
34 空気入れ用ホース
36 カプラ
38 水抜き用ホース
40 貯水槽
42 真空ポンプ
44 ポータブル発電機
46 アーム
48 磁石
50 仮固定手段
52 コーキング材
100 遮水壁構造の漏水量測定装置
G 海底地盤
WL 海面
W 漏水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10