特許第6244341号(P6244341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244341
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】接続具
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20171127BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20171127BHJP
   E04B 1/18 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   E04B1/58 E
   E04H9/02 311
   E04B1/18 F
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-187660(P2015-187660)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-61799(P2017-61799A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398042576
【氏名又は名称】三恵工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】市田 裕樹
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−001329(JP,U)
【文献】 実開昭57−054713(JP,U)
【文献】 実開昭56−107002(JP,U)
【文献】 再公表特許第2007/037505(JP,A1)
【文献】 特開昭61−286470(JP,A)
【文献】 特開2004−298520(JP,A)
【文献】 特開2015−040460(JP,A)
【文献】 特開2005−220660(JP,A)
【文献】 特開2014−037844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/18
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装着部を備えた接続具本体と、前記接続具本体の前記複数の装着部の各々に装着された可動連結体とを具備し、前記可動連結体は、前記接続具本体の対応する装着部に装着された支持部材と、前記支持部材に所定方向に揺動自在に支持されたロッド状部材とを備えており、
前記可動連結体の前記支持部材には貫通開口が設けられ、前記貫通開口の底部に受部が設けられ、また前記ロッド状部材の一端部にはボール状部が設けられ、前記ロッド状部材の前記ボール状部は、前記ロッド状部材の他端側を前記支持部材の前記貫通開口を通して挿通することによって、前記支持部材の前記受部に任意の方向に揺動自在に支持され、前記ロッド状部材の他端側に引張り部材が連結されることを特徴とする接続具。
【請求項2】
前記可動連結体の前記支持部材における前記貫通開口の開口側には、前記ロッド状部材の前記ボール状部の一部を受け入れる受けシートが配設され、更に、前記貫通開口の開口部には、これを閉塞するためのカバー部材が装着されていることを特徴とする請求項に記載の接続具。
【請求項3】
前記可動連結体の前記受けシートと前記カバー部材との間には、前記受けシートを前記ロッド状部材の前記ボール状部側に弾性的に偏倚するための弾性部材が介在されていることを特徴とする請求項に記載の接続具。
【請求項4】
前記可動連結体の前記ロッド状部材の他端部には連結部材が連結され、前記連結部材に前記引張り部材の一端部が連結され、前記連結部材と前記引張り部材の前記一端部との連結部が、長手方向に長さ調整自在にねじ接合されていることを特徴とする請求項1に記載の接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震用ブレース構造などに用いる接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の建造物の柱梁構造体の強度を高めるために、各種の耐震用ブレース構造が提案されている。この耐震用ブレース構造の一例として、三つの装着部を有する接続具本体を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この耐震用ブレース構造では、引張り部材としてのブレース部材の一端側が接続具本体の対応する装着部に連結され、その他端側が柱梁構造体の所定部位に連結され、ブレース部材の連結の際に引張力を加えることにより、地震の際の揺れが抑えられ、耐震強度を高めることができる。
【0003】
しかし、この耐震用ブレース構造では、各装着部が接続具本体と一体的に構成され、接続具本体に対して各装着部が固定的に設けられているので、ブレース部材を張る際にその引張り方向が決まってしまうという問題がある。換言すると、建造物の柱梁構造体毎にブレース部材の角度と長さを算定し、その柱梁構造体に合った専用の接続具を製作しなければならない問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解消するために、上述のような接続具を省略したものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この耐震用ブレース構造では、柱梁構造体の所定部位間に、引張り部材としての第1ブレース部材が張られ、かく張られた第1ブレース部材の中間部にフックなどのブレース用連結具が連結され、このブレース用連結具が引張り部材としての第2ブレース部材を介して柱梁構造体に緊張手段を介して連結され、この緊張手段でもって緊張力を付与することにより、地震の際の耐震強度を高めている。また、ブレース用連結具と第1ブレース部材との連結部(即ち、フックの係止位置)が第1ブレース部材の長手方向に滑り移動可能であるので、この連結部を移動させてその位置を変えることによって、第1ブレース部材及び/又は第2ブレース部材の張り角度なども変えることができ、その結果、第1ブレース部材及び第2ブレース部材の設置に対する自由度が増し、これら第1ブレース部材及び第2ブレース部材が建築物の窓、ドアなどに架からないように設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−148245号公報
【特許文献2】特開2015−86554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この耐震用ブレース構造においては、ブレース用連結具と第1ブレース部材との連結部(フックの係止位置)が滑り移動可能である故に、例えばブレース用連結具に外部からの力が加わると、この連結部の位置が第1ブレース部材の長手方向にずれて第1ブレース部材及び/又は第2ブレース部材の張り角度などが変化し、柱梁構造体を安定的に補強することができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、接続具本体に連結される引張り部材の引張り方向を変えることができる、耐震用ブレース構造に好適な接続具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の接続具は、複数の装着部を備えた接続具本体と、前記接続具本体の前記複数の装着部の各々に装着された可動連結体とを具備し、前記可動連結体は、前記接続具本体の対応する装着部に装着された支持部材と、前記支持部材に所定方向に揺動自在に支持されたロッド状部材とを備えており、
前記可動連結体の前記支持部材には貫通開口が設けられ、前記貫通開口の底部に受部が設けられ、また前記ロッド状部材の一端部にはボール状部が設けられ、前記ロッド状部材の前記ボール状部は、前記ロッド状部材の他端側を前記支持部材の前記貫通開口を通して挿通することによって、前記支持部材の前記受部に任意の方向に揺動自在に支持され、前記ロッド状部材の他端側に引張り部材が連結されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項に記載の接続具では、前記可動連結体の前記支持部材における前記貫通開口の開口側には、前記ロッド状部材の前記ボール状部の一部を受け入れる受けシートが配設され、更に、前記貫通開口の開口部には、これを閉塞するためのカバー部材が装着されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項に記載の接続具では、前記可動連結体の前記受けシートと前記カバー部材との間には、前記受けシートを前記ロッド状部材の前記ボール状部側に弾性的に偏倚するための弾性部材が介在されていることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項に記載の接続具では、前記可動連結体の前記ロッド状部材の他端部には連結部材が連結され、前記連結部材に前記引張り部材の一端部が連結され、前記連結部材と前記引張り部材の前記一端部との連結部が、長手方向に長さ調整自在にねじ接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の接続具によれば、接続具本体の装着部にはそれぞれ可動連結体が装着され、可動連結体は、接続具本体の対応する装着部に装着された支持部材とこの支持部材に揺動自在に支持されたロッド状部材とを備え、このロッド状部材に引張り部材が連結されるので、接続具本体に対するロッド状部材の相対的角度位置、即ち引張り部材の引張り方向を変えることができ、この接続具を汎用的に用いることができる。また、可動連結体の支持部材に設けられた貫通開口の底部に受部が設けられ、またロッド状部材の一端部にボール状部が設けられ、ロッド状部材のボール状部が支持部材の受部に任意の方向に揺動自在に支持されるので、ロッド状部材に大きな引張力を作用させてもそのボール状部を支持部材の受部でもって所要の通り支持することができる
【0015】
また、本発明の請求項に記載の接続具によれば、可動連結体の支持部材における貫通開口の開口側に受けシートが配設され、更にこの貫通開口の開口部にカバー部材が装着されているので、貫通開口の開口側からのゴミ、埃などの侵入を防止することができる。
【0016】
また、本発明の請求項に記載の接続具によれば、可動連結体の受けシートとカバー部材との間に弾性部材が介在され、この弾性部材は受けシートをロッド状部材のボール状部側に偏倚するので、受けシートがロッド状部材のボール状部の表面に弾性的に密着され、これによって、このボール状部と受けシートとの間にゴミ、埃などが侵入するのをより確実に防止することができる。
【0017】
更に、本発明の請求項に記載の接続具によれば、可動連結体のロッド状部材の他端部に連結部材が連結され、この連結部材に引張り部材の一端部がねじ接合されているので、ねじ接合の長さを調整することによって、引張り部材の長さを調整することができるとともに、引張り部材に付与する引張力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に従う接続具の第1の実施形態を示す正面図。
図2図1におけるII−II線による断面図。
図3図1の接続具における可動連結体を示す正面図。
図4図3におけるIV−IV線による断面図。
図5図3の可動連結体におけるロッド状部材の揺動移動を説明するための図。
図6図1の接続具を用いた第1の耐震用ブレース構造の一例を示す簡略図。
図7図6の耐震用ブレース構造における接続具及びその近傍を示す断面図。
図8図6の耐震用ブレース構造におけるブレース部材の取付構造を示す部分拡大図。
図9図6の耐震用ブレース構造の設置例を建造物との関連で説明するための図。
図10図6の耐震用ブレース構造の他の設置例を建造物との関連で説明するための図。
図11】可動連結体の第1の変形形態を示す正面図。
図12図11におけるXIIーXII線による断面図。
図13】可動連結体の第2の変形形態の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
図14】本発明に従う接続具の第2の実施形態を用いた第2の耐震用ブレース構造の一例を示す図。
図15】本発明に従う接続具の第3の実施形態を用いた第3の耐震用ブレース構造の一例を示す図。
図16】本発明に従う接続具の第4の実施形態を用いた第4の耐震用ブレース構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う接続具の各種実施形態について説明する。
【0020】
〔第1の実施形態〕
まず、図1図10を参照して、第1の実施形態の接続具について説明する。図1図5において、図示の接続具2は、例えば、鉄、鋼鉄などの鉄合金又は非鉄金属などの金属材料から形成される接続具本体4を備えている。この形態では、接続具本体4は正六角柱状であり、6つの側部のうちの3つの側部5a,5b,5c(一つおきの3側部)に装着部6a,6b,6c(図1図2及び7参照)が設けられている。具体的には、接続具本体4の中央部には、その軸方向(図1及び図7において紙面に対して垂直方向、図2において左右方向)に貫通する中央貫通開口8が設けられ、また3つの側部5a,5b,5cには中央貫通開口8に連通する取付貫通開口10a,10b,10cが設けられ、これら取付貫通開口10a,10b,10cが装着部6a,6b,6cとして機能する。
【0021】
接続具本体4の各装着部6a,6b,6cには、可動連結体12a,12b,12cが装着される。可動連結体12a,12b,12cは実質上同一の構成であり、それらの一つの可動連結体12a(12b,12c)について説明する。
【0022】
主として図2図5及び図7を参照して、可動連結体12a(12b,12c)は、接続具本体4の対応する装着部6a(6b,6c)に装着される支持部材14と、この支持部材14に揺動自在に支持されたロッド状部材16とを備えている。支持部材14は略円筒状であり、その中央部には、軸方向(図4において左右方向)に貫通して貫通開口18が設けられている。この貫通開口18の底部には受部20が設けられ、この受部20の内面は略半球状に形成され、貫通開口18はこの受部20を貫通して設けられている。
【0023】
この支持部材14の軸方向中間部には、径方向外方に突出する環状当接突部22が設けられ、またこの一端側(図3及び図4において、環状当接突部22よりも左端側)の外周面には雄ねじ部24が設けられ、その他端側(図3及び図4において、環状当接突部22よりも右端側)に六角状のナット部25が設けられている。また、この支持部材14の雄ねじ部24に対応して、接続具本体4の取付貫通開口10a(10b,10c)の内周面には雌ねじ部26が設けられ、支持部材14側の雄ねじ部22を貫通開口10a(10b,10c)側の雌ねじ部26に螺着することによって、可動連結体12a(12b、12c)が、接続具本体4の対応する装着部6a(6b,6c)に取り付けられ、このように取り付けた状態では、可動連結体12a(12b,12c)の支持部材14の環状当接突部22が接続具本体4の側部5a(5b、5c)に当接する(図1図2及び図7参照)。
【0024】
また、ロッド状部材16の一端部(図4において左端部)にはボール状部28が設けられ、またその軸方向(図4において左右方向)中間部には、径方向外方に突出する環状当接突部30が設けられ、更にその他端側(図3及び図4において、環状当接突部30よりも右端側)の外周面には雄ねじ部32が設けられている。このロッド状部材16は、図4から理解されるように、その他端側(雄ねじ部32側)を支持部材14の貫通開口18の開口側(図4において左側)からこの貫通開口18を挿通することによって支持部材14の受部20に支持され、かく支持された状態では、ボール状部28が受部20の内周面に沿って任意の方向に摺動することができる。従って、このロッド状部材16は、例えば、図5(b)に示す中立状態から矢印34で示す方向(図5において左方)に傾斜した図5(a)に示す第1傾斜状態と、矢印36で示す方向(図5において右方)に傾斜した図5(c)に示す第2傾斜状態との間を揺動自在となり、このようなロッド状部材16の揺動は、任意の方向に可能である。
【0025】
このように支持部材14に対してロッド状部材16が揺動自在に構成されているので、両者の摺動面に、即ち支持部材14側の受部20の内周面及びロッド状部材16側のボール状部28の外周面に、強度を高めるための表面処理を施すのが好ましい。尚、支持部材14及びロッド状部材16は、接続具4と同様に、例えば、鉄、鋼鉄などの鉄合金又は非鉄金属などの金属材料から形成することができる。
【0026】
この実施形態では、可動連結体12a(12b,12c)における支持部材14の貫通開口18の開口側に受けシート38が配設されている。図示の受けシート38は中空短円筒状であり、その内端面(図4において右端面)には、略半球状の受部40が設けられ、かかる受部40の内面は、支持部材14側の受部20の内面と協働して、ロッド状部材16のボール状部28を受け入る略球状の収容受部を規定する。
【0027】
この受けシート38は、支持部材14の貫通開口18に例えば圧入により装着され、かく装着した状態においては、ロッド状部材16のボール状部28の先端側を覆う。尚、この受けシート38は、例えば、鉄、鋼鉄などの金属材料、合成樹脂材料などから形成される。
【0028】
この支持部材14の貫通開口18の開口端部(具体的には、受けシート38の装着部位よりも外側部位)には、更に、貫通開口18を閉塞するためのカバー部材41が配設されている。このカバー部材41は円板状に形成され、支持部材14の貫通開口18の開口端に例えばかしめ加工することによって、支持部材14の貫通開口18に取り付けられ、このようにカバー部材41を設けることにより、貫通開口18内にゴミ、埃などが侵入するのを防止することができる。尚、このカバー部材41は、鉄、鋼鉄などの鉄合金から形成される。
【0029】
主として図1図2図6及び図7を参照して、接続具本体4の装着部6a(6b,6c)に装着された可動連結体12a(12b,12c)は、連結部材42を介して第1引張り部材44(第2引張り部材46,第3引張り部材48)の一端側に連結される。連結部材42には、その軸方向に貫通して貫通孔50が設けられ、この貫通孔50の一端側(接続具本体4側)に第1雌ねじ部52が設けられ、その他端側(第1引張り部材44側(第2引張り部材46側、第3引張り部材48側))に第2雌ねじ部54が設けられている。
【0030】
連結部材42の第1雌ねじ部52は、可動連結体12a(12b,12c)におけるロッド状部材16の雄ねじ部32に対応し、この雄ねじ部32とこの第1雌ねじ部52とを螺着することにより、可動連結体12a(12b,12c)のロッド状部材16に連結部材42が連結され、かかる連結状態においては、連結部材42の一端部がロッド状部材16の環状当接突部30に当接する。
【0031】
また、第1引張り部材44(第2引張り部材46,第3引張り部材48)の一端部には、雄ねじ部56(58,60)が設けられており、連結部材42の第2雌ねじ部54は、第1引張り部材44(第2引張り部材46、第3引張り部材48)の雄ねじ部56(58,60)に対応し、この雄ねじ部56(58,60)とこの第2雌ねじ部54とを螺着することにより、連結部材42の他端側に第1引張り部材44(第2引張り部材46,第3引張り部材48)が連結される。
【0032】
この実施形態では、第1引張り部材44(第2引張り部材46、第3引張り部材48)側の雄ねじ部56(58,60)と連結部材42側の第2雌ねじ部54との螺合範囲が軸方向に長くなっており、このように構成することにより、この軸方向の螺合状態を変えて第1引張り部材44(第2引張り部材46、第3引張り部材48)の長さを調整することができるとともに、第1引張り部材44(第2引張り部材46、第3引張り部材48)に付与する引張力を調整することができる。尚、第1引張り部材44(第2引張り部材46、第3引張り部材48)の雄ねじ部56(58,60)には、この雄ねじ部56(58,60)と連結部材42の第2雌ねじ部54との螺合状態の緩みを防止するための緩み防止ナット62が螺着される。
【0033】
このような構成の接続具2は、図6及び図7に示すように、建造物の柱梁構造体64の耐震性を高めるための耐震用ブレース構造65に好都合に適用することができる。この実施形態では、柱梁構造体64における相互に直角に連結された柱部材72及び梁部材74に関連して第1ブレース構造66aが設置され、相互に直交に連結された柱部材76及び梁部材74に関連して第2ブレース構造66bが設置されている。第1及び第2ブレース構造66a,66bは、実質上同一の構成で、図6において左右対称の構成であり、以下、第1ブレース構造66aについて説明する。
【0034】
接続具2の可動連結体12aに連結部材42を介して連結された第1引張り部材44(第1ブレース部材として機能する)は、梁部材74の一端部(図6において左端部)に第1連結ブラケット78を介して連結され、その可動連結体12bに連結部材42を介して連結された第2引張り部材46(第2ブレース部材として機能する)は、梁部材74の他端部(図6において右端部)に第2連結ブラケット80を介して連結され、またその可動連結体12cに連結部材42を介して連結された第3引張り部材48(第3ブレース部材として機能する)は、第3連結ブラケット82を介して柱部材72の下端部に連結されている。
【0035】
第1引張り部材44と第1梁部材74との連結は、例えば、図8に示すように行われ、第2引張り部材46と梁部材74との連結及び第3引張り部材48と柱部材72との連結も同様に行われる。
【0036】
図8において、第1連結ブラケット78の取付けは、例えば、この取付部84及び梁部材74を通して取り付けた取付ボルト86にナット(図示せず)を螺着することによって行われる。また、第1連結ブラケット78の連結部88と第1引張り部材44との連結は、例えば、この連結部88を通して第1引張り部材44の端部を突出させ、この突出端部にナット90を螺着することによって行われる。
【0037】
このような第1及び第2ブレース構造66a,66bでは、上述した記載から容易に理解される如く、第1〜第3連結ブラケット78、80,82における、第1〜第3引張り部材44,46,48(第1〜第3ブレース部材)とナット90との螺合状態(即ち、螺着位置)を調整することによって、第1〜第3引張り部材44,46,48の長さを調整することができるとともに、第1〜第3引張り部材44,46,48に加える引張力を調整することができる。また、接続具4の可動連結体12a,12b,12cに連結された連結部材42と第1〜第3引張り部材44,46,48との螺合状態(即ち、螺着位置)を調整することによっても、第1〜第3引張り部材44,46,48の長さを調整することができるとともに、第1〜第3引張り部材44,46,48に加える引張力を調整することができる。このような耐震用ブレース構造66a,66bを用いた場合、柱梁構造体64の振動を抑えことができ、これによって、柱梁構造体64の耐震強度のアップを図ることができる。
【0038】
このような耐震用ブレース構造65(第1及び第2ブレース構造66a,66b)は、例えば、図9に示すように設置するのが望ましい。図9において、柱梁構造体64Aに窓枠92が取り付けられ、この窓枠92内に、例えば左右のガラス窓94,96が開閉自在に取り付けられる。このように窓枠92が取り付けられた柱梁構造体64Aにおいては、第1及び第2ブレース構造66a,66bの一部、例えば接続具2、第1〜第3引張り部材44,46,48(第1〜第3ブレース部材)などが左右のガラス窓94,96に重なることのないように設置するのが好ましく、このように設置することにより、ガラス窓94,96からの景観を害することなく既設の柱梁構造体64Aに耐震用ブレース構造65を設置することができる。
【0039】
また、図10に示すような柱梁構造物64Bにおいては、図10に実線で示すように耐震用ブレース構造65B(第1及び第2ブレース構造66Ba,66Bb)を設置するのが望ましい。図10において、この柱梁構造体64Bにおいては、一対の柱部材72,76間の左部(図10において左側)にドア枠102が設けられ、このドア枠102内に開閉扉104が開閉自在に取り付けられている。また、一対の柱部材72,76間の中央から右部にわたって(図10において中央から右側にわたって)窓枠106が取り付けられ、この窓枠106内に、例えば左右のガラス窓108,110が開閉自在に取り付けられている。
【0040】
このようにドア枠102及び窓枠106が取り付けられた柱梁構造体64Bにおいては、例えば、図9に示す耐震用ブレース構造65を設置した場合、図10に破線で示す通りとなり、第1ブレース構造66aの第2引張り部材46(第2ブレース部材)の一部が開閉扉104に重なり、開閉扉104を開放しようとしてもこの開閉扉104の上端部が第2引張り部材46に当接して開放することができなく、また第2ブレース部材66bの第2引張り部材46(第2ブレース部材)の一部が右のガラス窓110に重なり、右の窓ガラス110を開放したときに第2引張り部材46の一部が見え、外側の景観を損なうようになる。
【0041】
このような場合、例えば、図10に実線で示すように耐震用ブレース構造65Bを設置することによって、上述した問題を解消することができる。即ち、図10から理解される如く、第1及び第2ブレース構造66Ba,66Bbにおいて、第1引張り部材44(第1ブレース部材)については、図9のものよりも短いものを用い、また第2及び第3引張り部材(第2及び第3ブレース部材)については、図9のもよりも長いものを用いるようにすればよい。上述した接続具2を用いた場合、接続具本体4に対して可動連結体12a,12b,12cが任意の方向に揺動自在に連結されているので、第1〜第3引張り部材44B,46B,48Bの長さが変わることによるそれらの引張方向の角度変化は、可動連結体12a,12b,12cの揺動でもって対応することができ、従って、接続具2(接続具本体4及び可動連結体12a,12b,12c)については同じものを用いることができ、接続具2としては一つの種類で対応することが可能となる。
【0042】
接続具の可動連結体については、図11及び図12に示すように構成してもよい。可動連結体の第1の変形形態を示す図11及び図12において、図示の可動連結体12Dは、接続具本体4の装着部6a,6b,6c(図1図2及び図7参照)に装着される支持部材14と、この支持部材14に揺動自在に支持されるロッド状部材16とを備えているが、支持部材14及びロッド状部材16並びにこれらに関連する構成は、上述したものと実質上同一である。
【0043】
この第1の変形形態では、支持部材14からロッド状部材16にわたってダストカバー122が設けられている。このダストカバー122は略カップ状であり、合成ゴム、合成樹脂などの弾性変形可能な材料から形成される。このダストカバー122の中央部には取付孔124が設けられ、この取付孔124にロッド状部材16の軸部126が挿通され、その開放端部128(図11及び図12において左端部)が支持部材14の環状当接突部22に当接するように装着され、その取付孔124側の端部130がロッド状部材16の環状当接突部30に当接するように装着される。
【0044】
可動連結体12Dにおいては、支持部材14の貫通開口18のロッド状部材16側がダストカバー122により覆われるために、外部からのゴミ、埃などが支持部材14の貫通開口18内(具体的には、支持部材14の受部20とロッド状部
材16のボール状部28との間)に侵入するのを防止することができる。
【0045】
この可動連結体については、図13に示すように構成することもできる。第2の変形形態を示す図13において、図示の可動連結体12Eでは、接続具本体4の装着部6a,6b,6c(図1図2及び図7参照)に装着される支持部材14の貫通開口18の開口側に装着された受けシート38とカバー部材41との間に弾性部材132が介在されている。弾性部材132は、例えば皿ばね134から構成され、この皿ばね134は、受けシート38に作用してロッド状部材16(図12参照)のボール状部材28側に向けて弾性的に偏倚する。
【0046】
この弾性部材132を備えた可動連結体12Eにおいては、弾性部材132の作用により受けシート38がロッド状部材16のボール状部28に弾性的に密接され、これによって、ゴミ、埃などが受けシート38とボール状部28との間に侵入することが確実に防止することができる。
【0047】
接続具としては、図14に示す形態のもの、図15に示す形態のもの、図16に示す形態のものなどを用いることもできる。第2の実施形態を示す図14において、この接続具2Fを用いた耐震用ブレース構造65Fでは、正六角柱状の接続具本体4Fの4つの側部(片側2つの側部と他側2つの側部)に、上述したと同様の装着部(図示せず)が設けられ、これら4つの側部に、上述したと同様の構成の可動連結体12Fa,12Fb,12Fc,12Fdが揺動自在に装着される。例えば、片側の2つの可動連結体12Fa,12Fbは、対応する連結部材42を介して引張り部材152a,152bに連結され、これら引張り部材152a,152bは、柱梁構造体64Fの梁部材154、156に取り付けられた連結ブラケット158a,158bに上述したようにして連結される。また、他側の2つの可動連結体12Fc,12Fdは、対応する連結部材42を介して引張り部材152c,152dに連結され、これら引張り部材152c,152dは、梁部材154、156に取り付けられた連結ブラケット158c,158dに上述したようにして連結される。
【0048】
第3の実施形態を示す図15において、この接続具2Gを用いた耐震用ブレース構造65Gでは、正四角柱状の接続具本体4Gの各側部に、上述したと同様の装着部(図示せず)が設けられ、これら各側部に、上述したと同様の構成の可動連結体12Ga,12Gb,12Gc,12Gdが揺動自在に装着される。例えば、可動連結体12Ga(12Gb,12Gc,12Gd)は、連結部材42を介して引張り部材162a(162b,162c,162d)に連結され、引張り部材162a(162b,162c,162d)は、柱梁構造体65Gの梁部材164(166)に取り付けられた連結ブラケット168a(168b,168c,169d)に上述したようにして連結される。
【0049】
第2(第3)の実施形態の接続具2F(2G)を備えた耐震用ブレース構造65F(65G)では、接続具本体4F(4G)に4つの可動連結体12Fa〜12Fd(12Ga〜12Gd)が装着され、これら可動連結体12Fa〜12Fd(12Ga〜12Gd)に連結された引張り部材152a〜152d(162a〜162d)を介して付与される引張力が柱梁構造体64F,64Gに作用して耐震強度を高めることができる。
【0050】
また、第4の実施形態を示す図16において、この接続具2Hを用いた耐震用ブレース構造65Hでは、正六角柱状の接続具本体4Hの各側部に、上述したと同様の装着部(図示せず)が設けられ、これら各側部に、上述したと同様の構成の可動連結体12Ha,12Hb,12Hc,12Hd,12He,12Hfが揺動自在に装着される。例えば、可動連結体12Ha(12Hb〜12Hf)は、連結部材42を介して引張り部材172a(172b〜172f)に連結され、引張り部材172a(172b〜172f)は、柱梁構造体64Hに取り付けられた連結ブラケット174a(174b〜174f)に上述したようにして連結される。
【0051】
第4の実施形態の接続具2Hを備えた耐震用ブレース構造65Hでは、接続具本体4Hに6つの可動連結体12Ha〜12Hfが装着され、これら可動連結体12Ha〜12Hfに連結された引張り部材172a〜172fを介して付与される引張力が柱梁構造体64Hに作用して耐震強度を高めることができる。
【0052】
以上、本発明に従う接続具の各種実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、可動連結体の支持部材に対してロッド状部材が任意の方向に揺動自在となるように構成されているが、このような構成に限定されず、複数の引張り部材により規定される平面内において所定方向に揺動自在となるように構成しても同様の作用効果が得られる。
【0054】
また、上述した実施形態では、接続具本体を正六角柱状又は正四角柱状に形成しているが、正八角形状などのその他の適宜の形状に形成することができ、またこの接続具本体に3つ、4つ又は6つの可動連結体を装着しているが、装着する可動連結体の個数についても5つ又は7つ以上の適宜の個数とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
2,2F,2G,2H 接続具
4,4F,4G,4H 接続具本体
6a,6b,6c 装着部
12a,12b,12c,12D,12E,12Fa〜12Fd,12Ga〜12Gd,12Ga〜12Gf 可動連結体
14 支持部材
16 ロッド状部材
20 受部
28 ボール状部
38 受けシート
41 カバー部材
42,44,46,152a〜152d,162a〜162d,172a〜172f 引張り部材
64,64F,64G,64H 柱梁構造体
65,65F,65G,65H 耐震用ブレース構造
66a,66b ブレース構造
132 弾性部材











図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16