(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244350
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ヒト化およびキメラ抗因子Bb抗体、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20171127BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20171127BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20171127BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20171127BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20171127BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20171127BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20171127BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20171127BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20171127BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20171127BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20171127BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20171127BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20171127BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
C07K16/18ZNA
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P7/04
A61P37/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P27/02
A61P11/06
A61P11/00
A61P31/06
A61P11/02
A61P31/12
A61P33/00
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-504681(P2015-504681)
(86)(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公表番号】特表2015-514111(P2015-514111A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013034982
(87)【国際公開番号】WO2013152020
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】61/619,858
(32)【優先日】2012年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514165152
【氏名又は名称】ノーベルメッド セラピューティクス インコーポレイテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バンサル,レカ
【審査官】
厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/029669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号14、配列番号16、および配列番号18のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む重鎖可変ドメインと、配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む軽鎖可変ドメインとを含む、単離された抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
ヒト化フレームワーク領域を含み、前記ヒト化フレームワーク領域が配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のヒト化フレームワーク領域から選択される、請求項1に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
ヒト化または非天然フレームワーク領域を含み、前記ヒト化または非天然フレームワーク領域が、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号24、および配列番号26から選択される、請求項1に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
ヒト化または非天然フレームワーク領域を含み、前記ヒト化または非天然フレームワーク領域が、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号30、および配列番号26から選択される、請求項1に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
ヒト化または非天然フレームワーク領域を含み、前記ヒト化または非天然フレームワーク領域が、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号19、配列番号20、配列番号34、配列番号35、および配列番号26から選択される、請求項1に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
ヒト化または非天然フレームワーク領域を含み、前記ヒト化または非天然フレームワーク領域が、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号19、配列番号46、配列番号40、配列番号41、および配列番号42から選択される、請求項1に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
前記抗Bb抗体またはその抗原結合部分が、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、および配列番号51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する因子Bb上に位置するペプチド領域に結合する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合部分抗体が、PC3bBb複合体の形成の阻害によりC3bの形成を阻害する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合部分抗体が、新たに産生されるC3a、C5a、SC5b−9の形成を阻害する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合部分が、好中球、単球、および血小板の活性化を阻害する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合部分が赤血球の溶解を阻害する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
処置有効量の請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物。
【請求項13】
炎症性障害の処置のための請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分であって、C3a、C5a、またはC5b−9を含む炎症媒介物質の異常なレベルが前記障害で見出される、抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
前記炎症性障害が、自己免疫疾患、関節リウマチ、若年性関節炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、および身体の免疫系が調整を受ける他の自己免疫疾患を含む群から選択される自己免疫疾患である、請求項13に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
補体活性化が疾病病状に関与する、眼障害の処置における請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
前記眼疾患が、湿潤型および乾燥型加齢黄斑変性症、脈絡膜血管新生、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、糖尿病性網膜症、眼のヒストプラスマ症、糖尿病性網膜症、脈絡膜新血管形成(CNV)、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、地図状萎縮、結晶腔疾患(drusen disease)、および網膜血管新生を含む群から選択される、請求項15に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
補体関連障害の処置のための請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分であって、前記障害が、喘息性または気道炎症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気腫、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症(bronchiecstasis)、嚢胞性線維症(cyctic fibrosis)、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、サルコイド、反応性気道疾患症候群、間質性肺疾患、好酸球増多症候群、鼻炎、副鼻腔炎、運動誘発喘息、公害誘発喘息、咳喘息、寄生虫性肺疾患、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、パラインフルエンザウイルス(PIV)感染、ライノウイルス(RV)感染、およびアデノウイルス感染を含む群から選択される気道炎症を含む群から選択される、抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
副経路が疾病病状に関与しているか、あるいは副経路が状態もしくは疾患の原因となる少なくとも1つの症状を悪化させているような状態もしくは疾患に罹患しているか、または前記状態もしくは疾患を発症するリスクのある哺乳類での副経路活性化の阻害において使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗Bb抗体またはその抗原結合部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2012年4月3日出願の米国特許仮出願第61/619,858号の優先権を主張し、その主題が全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、エフェクター機能および免疫原性が低下したヒト化およびキメラ抗体ならびにその抗原結合フラグメントに関する。本発明はさらに、C3/C5コンベルターゼにおける因子Bのタンパク質分解活性をさらに阻害する、C3bBbまたはPC3bBb複合体の活性を阻害するための因子Bの抗体の使用に関する。本発明のヒト化およびキメラモノクローナル抗体は、古典的活性経路を阻害することなく、PC3bB複合体に対する因子Bbの結合を選択的にブロックする。これらの抗体は因子Bに対するC3bの相互作用を阻害せず、したがって特有の機能を有する。そのような抗体は、補体副経路が病理学的役割を果たす疾患徴候の有用な処置である。
【背景技術】
【0003】
補体系は、古典的経路、レクチン経路および補体副経路(AP)の3つの異なる経路によって活性化される。古典的経路は、抗原−抗体複合体によって活性化される。レクチン経路は古典的経路の変形であり、副経路は異物、人工表面、壊死組織、細菌、死んだ酵母細胞によって活性化される。
【0004】
古典的経路の活性化によって、宿主防御に反応して様々な細胞を活性化するC3a、C4a、C5aおよびC5b−9分子を生成させる。病的状態では、副経路の活性化の結果として、アナフィラトキシンC3a、C5aが形成され、これらは細胞および、組織に損傷を与える膜侵襲複合体(MAC)としても知られるC5b−9分子を活性化する。まとめると、これらの分子は、細胞活性化および炎症仲介物質の放出によって炎症を媒介する。溶解性孔形成複合体としてのC5b−9の役割に加えて、亜溶解性(sublytic)MACの沈着が炎症において重要な役割を果たす可能性があることの強力な証拠がある。
【0005】
古典的補体経路は、病原体に対する宿主防御に重要である。補体副経路は病的炎症で活性化される。高レベルのC3a、C5a、およびC5b−9は、複数の急性および慢性疾患状態と関連することが見出された。したがって、疾患で誘発されるAP活性化の阻害は、補体活性化が疾患病状に関与する疾患での臨床的有益性に重要である。
【0006】
免疫防御におけるその基本的役割に加えて、補体系は多くの臨床症状で組織損傷の一因となる。補体生化学的カスケードに含まれる活動は、宿主組織にとって潜在的脅威となる。一例には、宿主細胞溶解を引き起こし得る破壊酵素の無差別放出が含まれる。したがって、処置効果のある補体阻害物質を開発し、これらの有害作用を防止することが差し迫って必要とされる。
【0007】
AP活性化が疾患病状の一因となる疾患状態では、高レベルのC3a、C5aおよびC5b−9分子が血清、血漿、血液または疾患の代表的な他の体液中で見出される。異なるメカニズムによるこれらの分子の産生および阻害は、疾患にとって重要である。PC3bBb複合体の形成を阻害するための1つの可能なメカニズムは、抗Bb抗体の使用による。このように、Bbの枯渇、Bbの中和、またはBbの不活性化によるAP活性化のブロック/阻害は、依然として重要な処置方針である。
【0008】
本発明は、新規であり、因子Bbに対する標的化結合を提供する、開発されたヒト化およびキメラ抗体配列に関する。そのようなヒト化/キメラ抗体の因子Bbに対する結合は、コンベルターゼの活動を妨げる。そのような抗体はまた、PC3bB複合体の因子B上の因子D切断部位を結合することによりPC3bBのPC3bBbへの変換を妨げる。これらの抗体はC3bに対するプロバージン結合を阻害しない。Bbと結合し、PC3bBb活性を妨げ、新規C3コンベルターゼの形成を妨げる抗因子Bbとしては、限定するものではないが、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラ、ヒト化、完全ヒト、およびナノ抗体、完全長およびそのフラグメント、例えばIgG、Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびIgGが挙げられる。本発明の抗体は、炎症を引き起こし、またAP活性化プロセスを増幅するC3a、C5a、およびC5b−9の形成を阻害する。
【0009】
アプタマー、小分子、およびSiRNAも、PC3bB複合体に対するBb結合を妨げることができる。その結果、細胞活性化、炎症および炎症仲介物質の放出も防止される。AP活性化は様々な急性および慢性ヒト疾患と関連づけられるので、抗因子Bbでのブロックも炎症プロセスを妨げ、抗Bbモノクローナル抗体で処置される哺乳類に臨床的な有益性を提供する。
【0010】
補体は病因に関与するいくつかの因子のうちの1つであり、臨床的制御のための有効な特質を提供する重要な病理学的メカニズムであり得る。有効な補体阻害薬の必要性は、様々な疾患状態における補体介在性組織傷害の重要性に関する認識の高まりによって示される。それにもかかわらず、現在、補体活性化を特異的に標的とし、阻害するヒト用の承認薬は一切存在しない。
【0011】
因子Bは、C3コンベルターゼ(PC3bBb)の触媒サブユニット(Bb)を提供するので、副経路の増幅ループにおいて重要な役割を果たす。Baに対するC3b結合を阻害する抗体が開発されているが、そのうちのいずれもBbの活性を阻害しない。因子Bはそれ自体、既知触媒活性のないチモーゲンである。PC3b複合体に結合した後、因子Bは因子Dによって切断されて、Baを放出する。因子BはBaおよびBbサブユニットの各々で見出される領域によりC3bと結合することが示された。因子B結合剤の阻害物質は、因子B機能の選択的阻害の結果であり、それによって多くの有害効果の原因となるC3a、C5aおよびC5b−9の形成を防止する。
【0012】
本特許出願で記載される結果に基づいて、本発明者らは、因子Bの触媒ドメインと結合し、PC3bBbの活性を妨げ、Bb上の因子D切断部位と結合し、さらなるPC3bBb分子の形成を防止する、ヒト化およびキメラ抗体を開発した。これらの抗体は因子Bに対するC3b結合を阻害しない。そのような結合事象は因子BのBaドメインによって媒介されることが示されているからである。本願は、(a)PC3bBb活性をブロックすることによって因子B機能を妨げる、および/または(b)Bb生成を妨げる因子B切断を抑制するヒト化およびキメラ抗Bb特異的阻害物質または阻害方法を開発した。これらの阻害物質は、C3bとの因子B相互作用を妨害することのないC3コンベルターゼ酵素活性の不活性化剤であるように思われる。本発明者らは、抗因子Bb抗体の阻害活性を、AP活性化のブロックにおけるそれらの潜在的役割について評価した。これらの抗体は、インビトロと全血中の両方で因子B機能を妨げる。他の抗因子Baモノクローナル抗体も開発され、疾患の動物モデルで試験されたが、本発明の一部ではない。これらの抗Ba抗体はC3bに対する因子B結合を妨げ、したがって補体カスケードの活性化をブロックする。
【0013】
本発明は、抗Bb抗体の使用によって、病的状態におけるBbの機能活性、およびその進行作用を阻害するように設計される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、PC3bBbおよびC3bBb上のBb部位をブロックし、因子D介在性因子B切断を制限することによって、Bb依存的補体活性化を阻害する方法に関する。Bbと結合し、古典的経路を阻害することなく副経路活性化だけを阻害する抗体は、本発明に包含される。因子B依存的補体活性化は、アプタマーおよびSiRNAなどの抗体以外の因子B阻害物質分子によって阻害され得る。因子B阻害物質分子抗体は、全またはフラグメント化抗因子B抗体を含み得る。フラグメント化抗因子B抗体は、F
ab、F
(ab)2、F
v、または単鎖F
vであり得る。抗因子B抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、または脱免疫化(de−immunized)であってよく、因子Bおよびそのフラグメントと結合する能力を有してもよい。本発明は、補体活性化によって調整されるいくつかの炎症性障害の処置のためのBb抗体を開示し、抗Ba抗体の使用は開示しない。
【0015】
一態様において、本発明は、対象におけるBb依存的補体活性化の有害作用を阻害する方法に関する。この方法は、Bb依存的補体活性化を阻害するために有効な量のBb阻害剤を対象に投与することを含む。これに関連して「Bb依存的補体活性化」という語句は、3つの補体経路全ての活性化を指す。本発明のある態様では、Bb阻害剤は抗因子Bb抗体またはそのフラグメントであり、他の態様では、抗因子Bb抗体 は低下したエフェクター機能を有する。さらに別の態様では、Bb阻害剤はBb阻害ペプチドである。本発明の方法、組成物、および薬剤は、不適切な活性化が疾患病状に関与する、急性または慢性病的状態にあるヒトなどの哺乳類対象においてインビボでBb依存的補体活性化の有害作用を阻害するために有用である。
【0016】
別の態様において、本発明は、相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)、およびフレームワーク領域(FR1〜FR4)の様々な組み合わせを含む抗因子Bb抗体を作製する。CDRは、軽鎖および重鎖の組み合わせを含む。CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3およびフレームワーク領域は、補体が関与する上記疾患状態の処置のために用いられる。可変領域のアミノ酸配列内で任意の順序でCDRを含む抗体は本発明に含まれる。このように、本発明は、検討される配列を、90%配列同一性が維持される限りCDRまたはフレームワーク領域における任意の配列変化と同様に包含する。そのような抗体は1:1の化学量論比でBb分子だけと結合し、このことは、抗体を使用することにより、血漿の試料における活性化率(パーセント)を見積もることができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】古典補体経路および副補体経路の2つの補体経路を示す。この図は、2つの経路を分けており、C3bで2つの経路を一本化していない。
【
図2】Bタンパク質に対するヒト化抗Bb抗体の結合親和性を示す。
【
図3】Bbタンパク質に対するヒト化抗Bb抗体の結合親和性を示す。
【
図4】ヒト化抗Bb抗体がC3bに対する因子B結合を阻害しないことを示す。
【
図5】ヒト化抗Bbが、新規C3/C5コンベルターゼを形成する新規C3b分子の形成を阻害することを示す。
【
図6】ヒト化抗Bbが新規PC3b複合体の形成を阻害することを示す。
【
図7】ヒト化抗BbがC3/C5コンベルターゼと関連する新規因子B/Bb分子の形成を阻害することを示す。
【
図8】ヒト化抗Bbが、赤血球溶解および組織傷害に必要とされるC5b−9の形成を阻害することを示す。
【
図9】ヒト化抗Bb抗体が赤血球の副経路依存的溶解を阻害することを示す。
【
図10】ヒト化抗Bb抗体が古典的活性経路を阻害しないことを示す。
【
図11】ヒト化抗体がPNH血清におけるウサギ赤血球の溶解を阻害することを示す。
【
図12】マウス抗Bb抗体の配列(配列番号1および配列番号2)を示す。ヒト化抗体の配列(配列番号3〜配列番号12)を示す。
【
図13】
図13−CDRおよびフレームワーク領域の配列番号を示す。
【
図14】
図13−CDRおよびフレームワーク領域の配列番号を示す。
【
図15】
図13−CDRおよびフレームワーク領域の配列番号を示す。
【
図16】
図13−CDRおよびフレームワーク領域の配列番号を示す。
【
図17】
図13−CDRおよびフレームワーク領域の配列番号を示す。
【
図18】マウスおよびヒト化抗Bb結合の原因となるBbタンパク質中のペプチドモチーフを示す。
【0018】
当業者によって使用されるものを含む標準的用語は一般的かつ標準的であり、本願全体にわたって無条件で使用している。
【0019】
以下の定義は、本発明を記載するために、用語が本明細書および特許請求の範囲で使用される際に、その用語に関して明確にするために示されている。
【0020】
本明細書中で用いられる場合、「副経路」という用語は補体活性化を指し、これは例えば、真菌および酵母細胞壁、グラム陰性外膜からのリポ多糖(LPS)、およびウサギ赤血球、ならびに多くの純粋な多糖、ウサギ赤血球、ウイルス、細菌、動物腫瘍細胞、寄生生物および損傷細胞からのザイモサンによる補体因子C3からのC3bのタンパク質分解的生成から生じると伝統的に考えられてきた。
【0021】
本明細書中で用いられる場合、「抗体」という用語は、Bbまたはそのポリペプチドもしくは一部と特異的に結合する抗体および抗体フラグメントを包含し、ここで、抗体は任意の抗体を産生する哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒトを含む霊長類)由来である。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナルおよび組換え抗体;多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体;マウス抗体、キメラ(すなわち、マウス−ヒト、マウス−霊長類、霊長類−ヒト)、モノクローナル抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびに脱免疫化抗体が挙げられ、任意のインタクト分子またはそのフラグメントであり得る。
【0022】
本明細書中で用いられる場合、「抗体フラグメント」という用語は、概してその抗原結合または可変領域を含む完全長抗因子Bb抗体に由来するかまたは関連する部分を指す。抗体フラグメントの実例としては、Fab、Fab’、F(ab)
2、F(ab’)
2およびFvフラグメント、scFvフラグメント、二重特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子および抗体フラグメントから形成される多特異的抗体が挙げられる。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、「Bb阻害剤」という用語は、Bbと結合または相互作用し、Bb依存的補体活性化を効果的に阻害する任意の薬剤、例えば抗Bb抗体およびそのBb結合フラグメント、天然および合成ペプチドを指す。本発明の方法で有用なBb阻害剤はBb依存的補体活性化、したがって全ての活性化を20%超減少させることができる。1つの実施形態において、Bb阻害剤は補体活性化を90%超減少させる。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、「キメラ抗体」は、非ヒト種(例えば、げっ歯類)抗体由来の可変ドメインおよび相補性決定領域(「complimentarity determining region」)を含む組換えタンパク質であり、一方、抗体分子の残りはヒト抗体由来である。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、「古典的経路」という用語は、(1)異物粒子と結合する抗体によって誘発され、認識分子Clqの結合を必要とするCI−複合体の補体活性化と、さらに(2)抗原−抗体複合体形成によって起こる補体活性化との両方を指す。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、「ヒト化抗体」は、ヒト抗体フレームワーク中に移植された非ヒト免疫グロブリン由来の特異的相補性決定領域と一致する最小配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、典型的には、抗体相補性決定領域だけが非ヒト起源のものである組換えタンパク質である。
【0027】
本明細書中で用いられる場合、「膜侵襲複合体」(「MAC」)は、膜中に侵入し、膜を破壊する5つの終末補体成分(C5〜C9)の複合体を指す。MACは、C5b−9、およびSC5b−9とも呼ばれる可能性がある。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、「対象」としては、限定するものではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、ヒト、非ヒト霊長類、およびげっ歯類を含む全ての哺乳類が挙げられる。副経路は、補体活性化の独立経路として広く受け入れられているその役割に加えて、最初に古典的およびレクチン経路によって誘発される補体活性化の増幅ループを提供し得る。
【0029】
本明細書中で用いられる場合、「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、ポリペプチド単鎖中に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによって、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成することが可能になる。
【0030】
本発明の抗体は、ヒト疾患の処置のためのキメラおよびヒト化抗Bbモノクローナル抗体(mAb)、および抗原結合フラグメントである。本発明の抗体は、この要求を満たすために有用な高親和性抗体を提供する。本発明の抗Bbモノクローナル抗体はPC3bBb複合体中のBbの触媒活性を中和し、PC3bB複合体中の因子B上の因子D切断部位を保護する。
【0031】
PC3bB複合体と結合し、PC3bB複合体に対するBb結合を阻害する特徴的なCDRを有する動物および植物由来の抗Bbモノクローナル抗体はいずれも本発明に含まれる。本発明の抗体のCDR間で60%を上回る相同性を有するCDRは本発明に含まれる。キメラおよびヒト化抗Bb抗体を生成させるために用いられるマウスモノクローナル抗体は本発明に含まれる。
【0032】
本発明の抗体は、この抗体がa)C3bに対する因子Bの結合を阻害せず、b)因子B上の因子D切断部位と結合し、c)古典的補体経路に影響を及ぼさず、d)1:1モル等量でBbと結合する点で、先行技術とは異なる。
【0033】
ヒト化およびマウス抗Bb抗体は、正常および疾患由来の血清中のうさぎ赤血球の溶解を阻害する。
【0034】
ヒト化およびマウス抗Bb抗体は、C3a、C5a、C5b−9およびTNFアルファの産生を阻害する。これらの抗体はBbに対して生成され、したがって、インタクトBa分子のフラグメントであるBaと交差反応しない。
【0035】
本発明の抗体は、新しいC3b、PC3b、PC3bB、およびPC3bBbの形成を阻害する。これらの抗体は、古典的経路の増幅ループに影響を及ぼすことなく副経路だけを阻害する。
【0036】
抗因子Bb抗体は、副経路の活性化によって生成するBbを中和するそれらの能力に基づいて選択することができる。1:1のモル等量は、Bbの全てが抗Bb抗体によって中和されることを指す。
【0037】
本発明の抗体は古典的活性経路に影響を及ぼさない。したがって、本発明のモノクローナル抗体は古典的経路を阻害しない。副経路(増幅ループ)の阻害は、古典的経路に影響を及ぼすはずであるが、これらの抗体は、両経路が概して活性化される状況でも古典的活性経路に対して影響を示さない。
【0038】
本発明の別の態様は、mAbの重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはそれらの組み合わせを含む抗体に関する。可変重鎖CDR1、2および3領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号14、16、および18で示される。可変軽鎖CDR1、2および3領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号21、23、および25で示され、ここで、抗体はヒトBbおよびBと特異的に結合する。
【0039】
抗体は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。可変領域内のCDRは90%類似から約99%類似まで及ぶ可能性がある。
【0040】
本発明の抗体、本発明のCDR、および本発明のフレームワークを
図12〜17に記載する。
【0041】
本発明の抗体を使用して、急性または慢性の病的傷害(pathological injury)に苦しむヒトなどの対象においてインビボで副経路による補体活性化を阻害することができる。本発明を、限定するものではないが、以下の疾患、障害、傷害、および処置に関連して使用することができる。
【0042】
体外循環疾患および障害:心肺バイパス術後炎症(Post−心肺バイパス inflammation)、術後肺機能不全、心肺バイパス、血液透析、白血球フェレーシス,血漿交換、血小板フェレーシス、ヘパリン起因性体外LDL沈殿(HELP)、体外循環後症候群、膜型人工肺体外循環(ECMO)、両心バイパス(CPB)、体外循環後症候群、全身性炎症反応および多臓器不全。
【0043】
心血管疾患および障害:急性冠動脈症候群、川崎病(動脈炎)、高安動脈炎、紫斑病腎炎(Henoch−Schonlein purpura nephritis)、脈管漏出症候群、経皮的冠動脈介入(PCI)、心筋梗塞、急性心筋梗塞後の虚血−再灌流傷害、アテローム動脈硬化症、血管炎、免疫複合体血管炎、関節リウマチに関連する血管炎(悪性関節リウマチとも呼ばれる)、全身性エリテマトーデス関連性血管炎、敗血症、動脈炎、動脈瘤、心筋症、拡張型心筋症、心臓手術、末梢脈管疾患(peripheral vascular conditions)、腎血管性疾患(renovascular conditions)、心血管疾患(cardiovascular conditions)、脳血管性疾患(cerebrovascular conditions)、腸間膜/腸脈管疾患(mesenteric/enteric vascular conditions)、糖尿病血管症、静脈基体塞栓(VGE)、ヴェゲナー肉芽腫症、ヘパリン誘発性膜型人工肺体外循環、およびベーチェット症候群。
【0044】
骨/筋骨格系疾患および障害:関節炎、炎症性関節炎、非炎症性関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性若年性関節リウマチ、骨関節炎、骨粗鬆症、全身性エリテマトーデス(SLE)、ベーチェット症候群およびシェーグレン症候群。
【0045】
移植病および障害:移植拒絶、異種移植片拒絶反応、移植片対宿主病、器官または移植片の異種移植、器官または移植片の同種移植、および超急性拒絶反応。
【0046】
目/眼疾患および障害:湿潤型および乾燥型加齢性黄斑変性(AMD)、脈絡膜神経血管化(choroidal neurovascularization :CNV)、網膜損傷、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜微小血管障害、目のヒストプラスマ症、ブドウ膜炎、糖尿病性黄斑の浮腫、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜微小血管障害、病的近視、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜新血管形成、網膜新血管形成、網膜色素上皮(RPE)、目のヒストプラスマ症、およびプルチャー網膜症。
【0047】
溶血性/血液疾患および障害:敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、出血ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、劇症性抗リン脂質抗体症候群(CAPS)、寒冷凝集疾患(CAD)、自己免疫血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、内毒血症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、敗血症、敗血症性ショック、鎌状赤血球性貧血、溶血性貧血、好酸球増多症候群および抗リン脂質抗体症候群(APLS)。
【0048】
呼吸器/肺疾患および障害:喘息、ヴェゲナー肉芽腫症、輸血関連性急性肺傷害(TRALI)、抗糸球体基底膜疾患(グッドパスチャー病)、好酸球性肺炎、過敏性肺炎、アレルギー気管支炎気管支拡張症(bronchiecstasis)、反応気道疾患症候群、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、パラインフルエンザウイルス感染、ライノウイルス感染症、アデノウイルス感染、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、結核、寄生虫性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、気腫、気管支炎、嚢胞性線維症、間質性肺疾患、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、輸血関連の急性肺傷害、虚血/再灌流急性肺損傷、ビシノーシス、ヘパリン誘発性膜型人工肺体外循環、アナフィラキシーショックおよびアスベスト誘発性炎症。
【0049】
中枢および末梢神経系/神経疾患ならびに障害:多発性硬化症(MS)、重症筋無力症(MG)、重症筋無力症、多発硬化、ギラン・バレー症候群、ミラー・フィッシャー症候群、卒中、卒中後の再灌流、アルツハイマー病、多病巣性運動神経障害(MMN)、脱髄、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、変形性椎間板疾患(DDD)、髄膜炎、髄膜炎による頭部神経損傷、変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)、特発性多発性ニューロパシー、脳/脳外傷(限定するものではないが、出血、炎症および浮腫を含む)、および神経障害性疼痛。
【0050】
外傷誘発性傷害および障害:出血ショック、循環血液量減少性ショック、脊髄損傷、ニューロン損傷、脳外傷、脳虚血再灌流、圧挫、創傷癒合、重篤な熱傷、および凍傷。
【0051】
腎疾患および障害:腎臓再灌流傷害、溶連菌感染後糸球体腎炎(PSGN)、グッドパスチャー病、膜質腎炎、ベルガー病/IgA腎症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎(間質性毛細管性糸球体腎炎)、急性感染後糸球体腎炎、クリオグロブリン血症糸球体腎炎、狼瘡性腎炎、紫斑病腎炎および腎皮質壊死(RCN)。
【0052】
限定するものではないが、心臓、脳、腎臓、および肝臓を含む器官の再灌流傷害および障害。
【0053】
生殖および泌尿性器疾患および障害:痛みを伴う膀胱疾患および障害、感覚性膀胱疾患および障害、自然流産、不妊性由来の男性および女性の疾患、妊娠由来の疾患、胎児母性耐性、子癇前症、泌尿性器炎症性疾患、胎盤機能不全由来の疾患および障害、流産由来の疾患および障害、慢性無菌性膀胱炎ならびに間質性膀胱炎。
【0054】
皮膚/皮膚科疾患および障害:熱傷、乾癬、アトピー性皮膚炎(AD)、好酸球性海綿状態、じんま疹、熱傷、類天疱瘡、後天性表皮水疱症、自己免疫水疱症、水疱性類天疱瘡、強皮症、血管性浮腫、遺伝性血管神経性浮腫(HAE)、多形紅斑、妊娠性疱疹、シェーグレン症候群、皮膚筋炎および疱疹状皮膚炎。
【0055】
胃腸疾患および障害:クローン病、セリアック病/グルテン過敏性腸症、ウィップル病、腸管虚血、炎症性大腸疾患、および潰瘍性大腸炎。
【0056】
内分泌疾患および障害:橋本病、若年性リンパ球性甲状腺炎、ストレス不安、およびプロラクチン、成長またはインスリン様成長因子、副腎皮質刺激ホルモン放出、膵臓炎、アジソン病、1型および2型糖尿病、1型糖尿病、サルコイドーシス、糖尿病性網膜微小血管障害、非肥満性糖尿病(IDDM)、脈管症、IDDMまたは2型糖尿病の神経障害または網膜症合併症、ならびにインスリン抵抗性に影響を及ぼす他の疾患。
【0057】
悪性疾患の処置:化学療法および放射線療法から生じる疾患および障害。
【0058】
本発明の抗体は処置できであり得る。マウス、キメラ、ヒト化、および霊長類化抗体が現在検討されている処置である。しかしながら、科学における近年の進歩で、抗体はさらに、抗体様分子の相互作用が低pMoleから高pMoleから低nMoleの範囲内であり得る他の種類の抗体によって置換することもできる。
【0059】
キメラ抗体およびヒト化抗体はいずれもヒトフレームワーク定常領域を有する。前記CDR領域の親和性および有効性を増大させるために、ヒト化およびヒトのフレームワーク領域は、天然ヒトフレームワーク領域または改変ヒトフレームワーク領域のいずれかである。定常領域は、前記抗体中に存在していてもよいし、存在していなくてもよい。植物、細菌および哺乳類細胞系において定常領域の有無を問わず抗体を産生するために様々な方法が利用可能である。
【0060】
抗Bb抗体の機能活性は、抗Bb抗体が古典的経路の増幅ループに影響を及ぼすことなくAP活性化だけを阻害する能力として定義される。これらの抗体は、(1)PC3bB複合体の触媒活性を阻害し、(2)PC3bBb形成および/またはC3bBb形成を減少させ、(3)遊離C3bの濃度を減少させ、(4)C3bの形成を減少させ、(5)C3a、C5aおよびC5b−9の形成を減少させ、(6)単球CD11b発現を減少させ、(7)好中球CD11b発現を減少させ、(8)血小板CD62P発現を減少させ、(9)白血球−血小板複合体(conjugate)形成を減少させ、(10)腫瘍壊死因子アルファ(TNF)を減少させ、(11)好中球エラスターゼ形成を減少させる。
【0061】
(i)2つの抗体であって、Bbに対する特異性を有する1つの抗体と、一緒に結合する第2分子に対して特異性を有するもう1つの抗体、(ii)Bbに対して特異的な1つの鎖と、第2分子に対して特異的な第2の鎖とを有する単一抗体、または(iii)Bbおよび他の分子に対して特異性を有する単鎖抗体を含み得る二重特異性抗体を生成させることができる。そのような二重特異性抗体は、当該技術分野で周知の技術を用いて生成させることができる。
【0062】
抗Bb抗体またはそのフラグメントを、補体副経路の成分、および/または補体副経路の活性化後に生成する因子によって、直接的または間接的に媒介される疾患の予防的および処置的処置のための処置方法で使用することができる。
【0063】
本発明はさらに、副経路由来のBb依存的補体活性化の阻害の有害作用を阻害する方法も提供する。Bb阻害剤は一次療法として単独で、または他の処置の利益を増強するための補足として他の方法と組み合わせて用いることができる。
【0064】
阻害剤は、小分子、アプタマー、DNAフラグメント、CDRドメインを示す小ペプチド、SiRNAであり得る。これらの阻害剤は、C3、C5、C9、およびC5b−9に対するPC3bBb結合を阻害する。
【0065】
Bb阻害剤は、動脈内、頭蓋内、静脈内、皮下、筋肉内、または他の非経口投与により様々な方法で投与することができる。非ペプチド作動性阻害物質について潜在的には経口で、もっとも好適には動脈内または静脈内投与による。投与は、最適の処置効果を得るために医師によって決定されるように定期的に繰り返してもよい。
【実施例】
【0066】
特段の断りのない限り、全ての試薬は入手可能なハイグレードのものであった。全ての補体タンパク質、副経路および古典的経路緩衝液、検出抗体、および赤血球は、Complement Technologies(テキサス州タイラー所在)またはQuidel Corporation(カリフォルニア州サンディエゴ所在)によって供給されたものであった。フローサイトメトリー抗体はカリフォルニア州サンノゼのBD Biosciencesから得た。TMB基質は、メリーランド州ゲイザースバーグのKirkegaard & Perry Limitedから得た。全ての二次抗体は、カリフォルニア州サンクレメンテ所在のAmerican Qualexから得、BSAおよび試薬は全てミズーリ州セントルイス所在のSigma−Aldrichから得た。
【0067】
ELISAプレートリーダー(SpectraMax 190および250)はMolecular Devicesから得、フローサイトメーターはFACS Caliburであった。Varity 3Dプログラムをデータ分析のために使用し、MicroCal Originプログラムを用いて曲線適合を実施した。溶血動態アッセイはSectraMax(Molecular Devices)を用いて実施した。ELISAプレートはマサチューセッツ州ローウェル所在のCorning Costarから得た。
【0068】
ヒト化およびキメラ抗体は、本願で存在する親マウスモノクローナル抗体の配列、配列(配列番号1および配列番号2)のCDRを含む。マウスにヒトBb(テキサス州タイラー所在のComplement Technology)を注射し、マウス血清をBb結合およびAP阻害活性についてスクリーニングした。標準操作法を使用してプロペルジン陽性マウス由来の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させた。限界希釈技術を使用して、融合細胞を単細胞集団にクローン化させた。96ウェルプレート中の細胞を増殖させ、プロペルジン結合および副経路阻害を用いて上清を試験した。AP活性化をブロックする細胞を特定し、C5b−9形成を阻害するものを用いてさらにスクリーニングした。これらのクローンを、赤血球溶解を阻害する1D3で分類した。抗体分泌細胞系を配列させて、配列番号1および配列番号2で示されるアミノ酸配列を生成させた。重および軽鎖両方からのCDRをヒトフレームワーク中にグラフトして、配列番号3〜配列番号12の様々なヒト化抗体配列を生成させた。配列番号9〜12の抗体を哺乳類CHO細胞中で産生し、発現し、分泌し、精製して、完全IgGlkを産生した。抗体は以下で示されるように特性化された。
【0069】
実施例1:ヒト化抗Bb抗体は高い親和性で因子BおよびBbタンパク質と結合する
抗BbIgGlおよびその抗原結合フラグメントのヒト因子Bおよび因子Bbに対する親和性は低pM抗体の範囲内である。Bbに対する抗体結合は、PC3bBb(C3/C5コンベルターゼ)の触媒活性を中和する。抗Bbのヒト因子Bに対する結合は、因子B上の因子D切断部位をブロックする。これらの実験を実施するために、ポリスチレンマイクロタイタープレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中ヒト因子Bおよび因子Bb(ウェルあたり2.0μg/50μl)で一晩4℃にてコーティングした。プロペルジン溶液を吸引した後、1%のウシ血清アルブミン(BSA)(ミズーリ州セントルイス所在のSigma−Aldrich)を含有するPBSで1時間室温にてウェルをブロックした。ペプチドまたはプロペルジンコーティングのないウェルは、バックグラウンド対照としての役割を果たした。ヒト化抗因子BbのアリコートをBおよびBbでコーティングされたウェルに添加し、1時間インキュベートして、結合を起こさせた。室温にて1時間のインキュベーション期間の後、プレートをPBSで5回リンスし、1:2000希釈検出ペルオキシダーゼ複合ヤギ抗ヒトモノクローナル抗体とともにインキュベートした。このインキュベーション後、プレートをリンスし、TMB試薬を用いて結合したペルオキシダーゼを特定した。
【0070】
図2および3で示されるように、ヒト化抗Bbは因子B(
図2)およびBb(
図3)とピコモル親和性で結合する。
【0071】
実施例2:ヒト化抗Bbモノクローナル抗体はC3bに対する因子B結合を阻害しない
先の発明の抗因子B抗体は典型的にはC3bとのB相互作用を阻害した。この新規抗体は因子BのC3bに対する結合を阻害しない。典型的な実験では、ポリスチレンマイクロタイタープレートウェル(96ウェル培地結合プレート、マサチューセッツ州ケンブリッジ所在のCorning Costar)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4中C3b(2μg/50μl/ウェル、テキサス州タイラー所在のcomplement technology)で一晩4℃にてコーティングした。C3b溶液を吸引した後、1%のウシ血清アルブミン(BSA;Sigma Chemical)を含有するPBSで1時間室温にてウェルをブロックする。C3bコーティングのないウェルはバックグラウンド対照としての役割を果たす。ヒト化抗Bbのありコートを、一定濃度の因子Bを含有する溶液に添加した。1時間室温にてインキュベーションした後、ウェルをPBSで充分にすすぐ。総結合「B」はポリクローナル抗B抗体で検出された。
図4で示されるように、ヒト化抗Bb濃度のいずれも因子BのC3bに対する結合を阻害しなかった。
【0072】
施例3:ヒト化抗因子Bbは補体副経路のC3/C5コンベルターゼ(PC3bBb)の形成を阻害する
補体副経路を腸チフス菌(Salmonella Typhosa)由来のリポ多糖により正常ヒト血清中で活性化する。本発明者らは本発明の抗プロペルジン抗体がPC3bBbの形成を阻害するかどうかを示すためにこのパラダイムを利用した。本発明者らは、ヒト化抗Bb抗体の存在下および非存在下でP、C3b、Bb、およびC5b−9の沈着を測定した。沈着したP、C3b、Bb、およびC5b−9は、適切な抗体で検出された。ヒト化抗Bb抗体の存在下で、P、C3b、Bb、およびC5b−9分子のそれぞれの沈着の阻害によって示されるように、C3およびC5コンベルターゼ形成の用量依存的阻害はわかる。
【0073】
典型的なアッセイでは、ポリスチレンマイクロタイタープレートウェルをLPS(腸チフス菌由来のリポ多糖)でPBS中2μg/50μlにて一晩コーティングした。ウェルをPBS中1%のBSAとともにインキュベートして、ウェル中の非占有部位をブロックした。室温で2時間ブロックし、PBSでリンスした後、AP緩衝液中正常ヒト血清(10%)を様々な濃度の抗体およびフラグメントと混合した。混合物をLPSでコーティングされたウェル上でインキュベートした。プレートを2時間37℃にてインキュベートして、補体AP活性化を起こさせた。インキュベーション後、プレートをPBSで充分に洗浄し、C3コンベルターゼの成分を適切な抗体で検出した。本発明者らは、ブロッキング溶液中1:2000のウサギ抗ヒトC3c、ブロッキング溶液中1:2000のヤギ抗ヒトPおよびブロッキング溶液中1:500のヤギ抗ヒト因子Bbおよびブロッキング溶液中1:2000のHRPO複合抗ヒトC5b−9でC3bを検出した。プレートをそれらのそれぞれの抗体とともに1時間室温にてインキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSでリンスし、結合した抗体を、C3bについては1:2000のペルオキシダーゼで標識されたヤギ抗ウサギで、P検出についてはブロッキング溶液中1:2000のペルオキシダーゼで標識されたウサギ抗ヤギで検出した。全てのプレートをPBSで充分に洗浄した後にTMBで発現させた。青色を1Mのオルトリン酸でクエンチした。C3b、PおよびBbならびにMACの存在はあわせてC3/C5コンベルターゼ形成を示すものである。
【0074】
5は、C3b沈着の用量依存的阻害を示し、
図6はP沈着の用量依存的沈着を示し、
図7はBb形成の用量依存的沈着を示し、
図8はヒト化抗Bb抗体によるC5b−9の用量依存的沈着を示す。これらのデータは、抗Bbモノクローナル抗体がコンベルターゼ形成を防止し、AP活性化を阻害することの直接的証拠を提供する。
【0075】
施例4:ヒト化抗Bb抗体はウサギ赤血球(rRBC)の副経路(AP)依存的溶解を阻害する
この赤血球溶解アッセイは、rRBCの表面上の終末補体複合体の形成に基づく。その結果、rRBCを溶解させる。700nmでの光散乱の段階的減少は、赤血球溶解の直接的尺度である。典型的には、rRBCを、5mMのMgCl
2を含有するゼラチンベローナル緩衝液中正常ヒト血清中でインキュベートする。これらの条件下で、rRBCの表面はn正常ヒト血清における副経路の活性化を誘発する。副経路活性化は、rRBCの表面上のC5b−9複合体形成に至る。C5b−9複合体の形成を阻害する薬剤は、細胞溶解を阻害すると予想される。抗プロペルジン抗体およびそのフラグメントの効果を評価するために、様々な濃度のIgG、F(ab’)
2、およびFabを、700nmで読み取ることができる恒温ELISAプレートリーダー中一定濃度のウサギ赤血球で、37℃にてAP緩衝液中正常ヒト血清(10%のNHS)とともにインキュベートした。光散乱の段階的減少(インタクト細胞の溶解による)を時間の関数として700nmで測定した。データを記録し、SpectraMax190プレートリーダーおよびSoftMaxソフトウェアを用いて分析した。計算のために、全阻害を各濃度のIgG、F(ab’)2、およびFabで計算し、結果を未溶解対照の%として表した。MicroCal Origin Softwareを用いてシグモイドプロットで各濃度でのデータをプロットした。
【0076】
図9で示されるように、ヒト化抗BbIgGは、赤血球溶解を阻害する正常ヒト血清中79nMのIC
50で正常ヒト血清中のrRBCのAP依存的溶血を阻害する。抗体は、約79nMのIC
50で溶解を阻害することができる。
【0077】
同様の実験を発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者由来の血清で実施した。10%の最終血清濃度の代わりに、本発明者らは40%の最終血清濃度を使用した。
図11で示されるように、ヒト化抗BbはPNH血清中の赤血球の溶解を防止した。
【0078】
実施例5:ヒト化抗Bbは古典的活性経路を阻害しない
本発明のモノクローナル抗体は宿主防御に必要な古典的経路を阻害しない。抗体感作ヒツジ赤血球を、カルシウム(5mMのCaCl
2/MgCl
2)緩衝液を含有するゼラチンベローナル緩衝液中10%正常ヒト血清とともにインキュベートした。抗体感作ヒツジ細胞は古典的経路を活性化する。その結果、C5b−9が赤血球の表面上に形成され、それによって溶解が起こる。本発明者らは10%の正常ヒト血清を試験した。両条件下で、抗Bbはヒツジ赤血球溶解を阻害しなかった。典型的なアッセイでは、100μlの抗体感作ヒツジ赤血球(テキサス州タイラー所在のComplement Technologies)をCP緩衝液中10%正常ヒト血清中でインキュベートして、補体活性化を起こさせた。CP活性化の結果、赤血球は溶解する。細胞溶解のための光散乱の段階的減少を時間の関数として700nmで測定した。
【0079】
図10で示されるように、ヒト化抗BbIgGは抗体感作ヒツジ細胞正常ヒト血清の溶解を阻害しない。これらの結果は、抗Bb抗体が古典的活性経路に影響を及ぼすことなく補体副経路を選択的に阻害することができることを示唆する。
【0080】
実施例6:ヒト化抗Bb抗体の産生
CDRを有するマウスモノクローナル抗体を配列させ、CDRを様々なhumaフレームワーク領域内にグラフトした。抗体をクローン化し、当該技術分野で開発された方法を用いてCHO細胞で発現させた。
図12〜17は抗体CDRおよびフレームワーク領域を示す。
【0081】
実施例7:Bbタンパク質のエピトープマッピング
clips技術を用いてBbタンパク質のエピトープマッピングを実施した。複数のオーバーラッピングペプチドを合成し、抗体をペプチドと1μg/mlの濃度で結合させた。最強のシグナルを生じたペプチドを抗体の潜在的なエピトープであると特定した。配列47および48が1つの抗体クローンについて特定された一方で、配列49、50、および51がヒト化抗Bb抗体について特定された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]