(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244380
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】フォトニックデバイスの構造及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/13 20060101AFI20171127BHJP
G02B 6/136 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
G02B6/13
G02B6/136
【請求項の数】28
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-558876(P2015-558876)
(86)(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公表番号】特表2016-509262(P2016-509262A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2014016009
(87)【国際公開番号】WO2014133760
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年9月1日
(31)【優先権主張番号】13/776,836
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595168543
【氏名又は名称】マイクロン テクノロジー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100106851
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 泰久
(72)【発明者】
【氏名】サンデュ,ガーテ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ミード,ロイ イー.
【審査官】
里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−524286(JP,A)
【文献】
特表2009−540539(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0274418(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0281493(US,A1)
【文献】
特開2011−118399(JP,A)
【文献】
特開2005−45162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック構造の形成方法であって、
半導体基板をエッチングして、前記半導体基板内に略矩形の断面形状を有する空洞を形成し、前記半導体基板の上面と前記空洞との間に前記半導体基板の一部を含む縁部を作製すること、及び
前記半導体基板の前記縁部からフォトニックデバイス素子を形成すること、を含み、
前記半導体基板の上部にハードマスクを形成すること、
前記ハードマスクの上部にパターン化フォトレジストを形成して、トレンチの位置を画定すること、
前記ハードマスクを通じて前記半導体基板をエッチングして、前記トレンチを形成すること、及び
前記ハードマスクと前記半導体基板の間に酸化物材料を形成すること、
をさらに含む方法。
【請求項2】
前記フォトニックデバイス素子が導波路コアで構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空洞をクラッド材料で充填することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クラッド材料が酸化物で構成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半導体基板がシリコン基板で構成されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化物が二酸化ケイ素で構成されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
マスク及び最初のエッチングを用いて、前記半導体基板の表面にトレンチを形成すること、及び
前記トレンチを通じた第1等方性エッチングを用いて前記空洞を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1等方性エッチングを行う前に、前記トレンチの側壁にエッチング保護ライナーを形成することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチング保護ライナーが酸化物で構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化物が二酸化ケイ素で構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1等方性エッチングが水酸化物エッチングで構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記水酸化物エッチングは、NH4OHまたはTMAHをエッチング液として用いることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
フォトニック構造の形成方法であって、
半導体基板をエッチングして前記半導体基板内に略矩形の断面形状を有する空洞を形成し、前記半導体基板の上面と前記空洞との間に前記半導体基板の一部を含む縁部を作製すること、及び
前記半導体基板の前記縁部からフォトニックデバイス素子を形成すること、を含み、
マスク及び最初のエッチングを用いて、前記半導体基板の表面にトレンチを形成すること、及び
前記トレンチを通じた第1等方性エッチングを用いて前記空洞を形成すること、をさらに含み、
前記等方性エッチングが水酸化物エッチングで構成されており、
前記第1等方性エッチングに続いて第2等方性エッチングを行って、前記空洞をエッチングすること、をさらに含む方法。
【請求項14】
前記第2等方性エッチングは、緩衝フッ化物をエッチング液として用いることを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記緩衝フッ化物エッチング溶液がNH4F、QEII及びH2O2で構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フォトニックデバイス素子を形成することが前記第2等方性エッチングの後に行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記フォトニックデバイス素子の上部及び側面周囲にクラッド材料を形成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記フォトニックデバイス素子の上部及び側面周囲の前記クラッド材料が酸化物で構成されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化物が二酸化ケイ素で構成されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
半導体基板の上部にハードマスクを選択的に形成すること、
前記ハードマスクをマスクにして前記半導体基板をエッチングしてトレンチを形成すると共に前記トレンチを拡張して前記半導体基板内に略矩形の断面形状を有する空洞を形成することにより、前記半導体基板の一部からなる縁部であって前記空洞上に位置する縁部を形成すること、
前記空洞を絶縁物で埋めて前記縁部を支持すること、及び
前記絶縁物で支持された前記縁部を選択的に除去してフォトニックデバイス素子を形成すること、
を含む方法。
【請求項21】
基板内に略矩形の断面形状を有する空洞を形成することであって、前記基板の上面と前記空洞との間に前記基板の一部を含む縁部を残すように前記空洞を形成すること、
前記空洞を絶縁物質で埋めて前記縁部を支持すること、及び
前記空洞を前記絶縁物質で埋めて前記縁部を支持した後に、前記縁部の一部からフォトニックデバイス素子を形成すること、
を含む方法。
【請求項22】
前記絶縁物質は第1のクラッド材料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基板内に前記空洞を形成することは、前記基板の前記上面から前記基板内に延在するトレンチを形成すること、及び前記トレンチを通じて前記基板をエッチングすること、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記基板が単結晶シリコンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記フォトニックデバイス素子が導波路コアを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記導波路コアが単結晶シリコンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のクラッド材料が酸化物材料を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
第2のクラッド材料によって前記第1のクラッド材料と前記フォトニックデバイス素子を覆うことをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[米国政府の権利]
本発明は、DARPAによって裁定された契約第HR0011−11−9−0009号の下で、政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
[技術分野]
本明細書に記載した構造及び方法の実施形態は、フォトニックデバイスと基板材料の間の光学的分離を十分保った状態で集積回路基板上にフォトニックデバイスを形成して、両者の間のエバネッセント結合を抑制することに関する。
【背景技術】
【0003】
今日、フォトニックデバイスと電子デバイスを同じ半導体基板上に集積する傾向がある。こうした集積のための支持基板としては、シリコン・オン・インシュレータ(silicon−on−insulator:SOI)基板を用いることができる。光導波路などのフォトニックデバイスを形成する際には、導波路に沿って伝搬する光波を閉じ込めるためのクラッドを導波路のコアの周囲に設ける。コア材料は、クラッドの屈折率よりも大きい屈折率を有する。シリコン(約3.47の屈折率を有する)を導波路のコア材料として用いる場合、導波路のクラッドは、それより低い屈折率の材料で形成することができる。例えば、二酸化ケイ素(約1.54の屈折率を有する)を導波路のクラッドとして用いることが多い。
【0004】
シリコン・オン・インシュレータ基板を支持基板として用いる際には、導波路コアの下のクラッド材料は、SOI基板の埋め込み酸化物(buried oxide:BOX)絶縁体(これも同様に、通常は二酸化ケイ素である)とすることができ、導波路コアは、BOX絶縁体の上のシリコンから形成することができる。BOXクラッドは、シリコン導波路コアからSOI構造の支持シリコン基板へのエバネッセント結合による光信号の漏れを防ぐように機能する。しかしながら、こうしたエバネッセント結合を防ぐために、導波路コアの下のBOXクラッド材料を比較的厚くする必要がある。例えば、この厚さは、1.0μmより厚くし、多くの場合には2.0〜3.0μmとする。BOXクラッド材料が厚くなると、このクラッド材料によって下地のシリコンへの熱の流れが阻害される。そのため、特に、同一基板上に形成され得るCMOS回路にとって、シリコン基板の放熱器としての効果が低減する。加えて、一定の電子デバイス(フォトニックデバイスと同一のSOI基板上に集積された高速論理回路など)の場合には、SOI基板のBOXを比較的薄くする必要があり、通常は100〜200nmの範囲の厚さとする。こうした薄いBOX絶縁体のSOIは、電子デバイスに良好な基板を提供するが、SOI基板の下地となる支持シリコンにシリコン導波路コアがエバネッセント結合するのを防ぐには不十分であるため、それによって不要な光学的信号損失が発生する。さらに、SOI基板は比較的高価であり、時には入手性の制限を受けることがある。
【0005】
従って、電子デバイスとフォトニックデバイスを同一基板上に集積するのに、非SOI基板も用いられてきた。光デバイスと下地の非SOI基板のエバネッセント結合を防ぐのに利用可能な1つの技法が、米国特許第7,920,770号に開示されている。本特許では、製造した光デバイスの下の基板内に、深い分離トレンチをエッチングする。記載されたエッチングにより、略曲線状に形成されたトレンチが光デバイスの下に設けられる。既に述べたように、フォトニックデバイス(導波路コアなど)用の下地クラッド材料は、少なくとも1μm厚とする必要があり、好ましくは、2.0〜3.0μm厚である。さらに、このクラッド材料を、上記の深さで、フォトニックデバイスの各側端部を過ぎて横方向に少なくとも1μmは延伸すべきである。しかしながら、このクラッドの深さの基準に適合するためには、フォトニックデバイスの側端部を過ぎて、曲線状のトレンチを横方向に1μm超延伸する必要がある。曲線状のトレンチがフォトニックデバイスの側端部を超えて横方向により大きく延伸すると、フォトニックデバイスの形成に供すべき基板領域がより大きくなる。第7,920,770号の特許では、光デバイスを形成する基板の上部に別の光デバイス製造材料を設けることも開示されている。
【0006】
必要とされているのは、フォトニックデバイス及び下地クラッドを形成する簡略化された方法のみならず、CMOSとフォトニックデバイスの双方の形成に適した、略矩形の下部クラッドを提供する非SOI基板である。非SOI基板の上部に別の光デバイス製造材料の存在を必要としない基板構造も望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板の上部に製造したフォトニックデバイスの一実施形態を断面で示す図である。
【
図2】基板の上部に製造したフォトニックデバイスの別の実施形態を断面で示す図である。
【
図3A】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3B】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3C】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3D】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3E】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3F】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3G】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3H】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3I】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3J】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3K】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3L】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3M】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3N】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図3O】
図1の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図4A】
図1の実施形態の一部についての断面視及び平面視を示す図である。
【
図4A-1】
図1の実施形態の一部についての断面視及び平面視を示す図である。
【
図4B】
図1の実施形態の他の一部についての断面視及び平面視を示す図である。
【
図4B-1】
図1の実施形態の他の一部についての断面視及び平面視を示す図である。
【
図5A】
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図5B】
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図5C】
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図5D】
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図5E】
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図5F】
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【
図6】
図1の実施形態に係る基板であって、上部に電子デバイスとフォトニックデバイスが共に製造された基板の断面を示す図である。
【
図7】
図2の実施形態に係る基板であって、上部に電子デバイスとフォトニックデバイスが共に製造された基板の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載した実施形態は、フォトニックデバイスを提供する。このフォトニックデバイスは、例えば、半導体基板材料から形成されたコア、及びこれに関連する下部クラッド材料であって、基板材料の空洞内に設けられた下部クラッド材料を備えた導波路である。この空洞は、フォトニックデバイスの下に位置している。フォトニックデバイス及び下地クラッドの形成方法の実施形態についても説明する。
【0009】
本明細書に記載した実施形態は、内部に略矩形の下部クラッドが形成された半導体基板の上部にフォトニックデバイス(例えば、導波路)も提供する。
【0010】
本明細書に記載した種々の実施形態は、CMOSデバイスとフォトニックデバイスの集積に適した非SOI基板を提供する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態を構造的に示す図である。この実施形態では、半導体基板101の一部に、フォトニックデバイスの下部クラッドとして機能する酸化物(例えば、二酸化ケイ素)充填空洞125を設けている。
図1に示すフォトニックデバイスは、その構成要素として導波路コア129を備えた導波路である。酸化物充填空洞125は、略矩形断面を有する。フォトニックデバイスはさらに、酸化物135(例えば、導波路コア129の両側及び上部に形成された二酸化ケイ素)の形態をとった上部クラッドを備える。導波路コア129の上部に形成された酸化物135は、以下で詳細に説明するように、CMOS回路とフォトニック回路を相互接続する金属配線の一部として形成される層間絶縁(interlayer dielectric:ILD)構造の一部であってよい。
【0012】
導波路コア129は、基板101の縁部131(
図3K)から形成される。この縁部は、基板101のエッチング中に生成されて、酸化物充填空洞125を略矩形にする。導波路コア129は、内部に酸化物充填空洞125が形成された同一の半導体材料から形成されるため、処理工程を追加して、別のフォトニックデバイス製造層を基板101の上部に形成する必要がない。
【0013】
図2は、別の実施形態を示す図である。この実施形態でも、基板201を製造して、略矩形の酸化物充填空洞225を生成する。酸化物充填空洞225は、導波路の下部クラッドとして機能する。この導波路は、酸化物材料203の上部に設けられた導波路コア229を備える。この酸化物材料は、例えば、二酸化ケイ素であり、基板201の保護層として機能する。導波路コア229の上部に形成された酸化物235(例えば、二酸化ケイ素)は、導波路コア229の両側及び上部に設けられた上部クラッドとなる。上記酸化物は、CMOS回路とフォトニック回路を相互接続する金属配線の一部として形成される層間絶縁(ILD)構造の一部であってよい。
図1の実施形態とは異なり、
図2の実施形態は、フォトニックデバイス製造層から形成された導波路コア229を備えており、このフォトニックデバイス製造層は、酸化物層225及び酸化物スペーサ層203の上部に設けられている。
【0014】
図3A〜3Oは、半導体基板101から開始して
図1の構造を形成する処理シーケンスを示す図である。基板材料は、単結晶シリコンの半導体材料であってよい。しかしながら、この処理シーケンスは、CMOSデバイス及びフォトニックデバイスの製造に適した他の基板材料に用いてもよい。このような基板材料としては、多結晶シリコン、炭化ケイ素及びシリコンゲルマニウムなどがある。
図3A〜3Oに示した処理シーケンスは、同一の基板101の他の一部にCMOSデバイスを形成するために基板101に施す処理の前、後または最中に行うことができる。
【0015】
図3Aは、プロセスの開始点となる上面104を有する半導体基板101の一部を示す図である。
図3Bに示すように、基板101の上面に保護材料103の層を形成する。この保護材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)などの酸化物であってよく、基板101の上面に成長または積層されて、その後の処理工程から基板101を保護する。ハードマスク材料105は、例えば、窒化ケイ素(Si
3N
4)であり、次いで、保護材料103の上に堆積される。
【0016】
次に、
図3Cに示すように、ハードマスク材料105の上部にパターン化フォトレジスト材料107を形成する。このパターンは、フォトレジスト材料107において開口109を画定する。
【0017】
図3Dに示すように、開口109は、ハードマスク材料105及び保護材料103を通じて基板101に至るエッチングに用いられて、基板101の上面104に基板トレンチ111を形成する。トレンチ111を形成するための、保護層103及びハードマスク105を通じてエッチングを行う上記エッチングは、異方性乾式エッチングとすることができる。次いで、フォトレジスト材料107を除去する。
【0018】
図3Eは、トレンチ111の側面と、開口109における保護材料103及びハードマスク材料105の側面とに保護ライナー113を形成した状態を示す図である。保護ライナー113は、例えば、SiO
2などの酸化物であってよく、堆積によって付着させることができる。その後の処理中に保護すべき領域は、基板トレンチ111の側壁の箇所であるため、堆積によって付着させる代わりに、トレンチ111の側壁及び底部に保護ライナー113を成長させてもよい。いずれにしても、
図3Fに示すように、トレンチ111内の保護ライナー113の底部を異方性湿式エッチングまたは異方性乾式エッチングによって除去して、トレンチ111の側面に保護ライナー113を残すようにする。保護ライナー113を堆積によって付着させた場合、保護ライナー113は、保護材料103及びハードマスク材料105に設けられた開口109の側面にも残される。基板トレンチ111の深さによってトレンチ111の側面に沿った保護ライナー113の長さl(
図3F)も決まるが、この深さは、その後生成される基板101の縁部131(
図3J)の目標厚に基づいて選択される。この縁部は、以下に説明するようにフォトニックデバイス素子の形成に用いられる。例えば、フォトニックデバイス素子(導波路コア129など)の目標厚が約30nm〜約1μmの範囲の値である場合、トレンチ111の深さ、及びトレンチ111の側面に沿った保護ライナー103の長さl(トレンチ111の深さによって必然的に決まる)は、同様に、約30nm〜約1μmの範囲に該当する同じ値となる。
【0019】
保護ライナー113の形成後、
図3Gに示すように、開口109及びトレンチ111を通じて基板101の等方性湿式エッチングが開始され、これによって基板101内に空洞117が形成され始める。エッチング液は、保護ライナー113でも保護材料103でもなく、シリコン基板101をエッチングする。フォトニックデバイス及びこれに関連する下地クラッドによって占有される基板101の領域を最小化しやすくするため、略矩形のエッチング空洞が望まれる。シリコン基板における略矩形の空洞エッチングを実施可能な方法及びそのための適切なエッチング液は、米国特許第7,628,932号及び米国特許第8,159,050号に開示されており、ここに本明細書の一部を構成するものとしてこれらの出願全体を援用する。
【0020】
湿式エッチングの前に、最初にトレンチ111内でシリコンエッチングを行って、基板101の所望のシリコン面を露出させる。所望の空洞形状、基板101の縁部131(
図3J)の望ましい形状及び基板の結晶方位に基づき、湿式エッチング液を選択してよい。<100>面のシリコンを用いた場合、湿式エッチング液は、水酸化物とすることができる。このような水酸化物としては、例えば、NH
4OHまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide:TMAH)などがあるが、NH
4OHはTMAHよりも速く形状空洞を形成する。基板101のエッチング速度は、シリコン面の方向に応じて異なる。
図3Gは、エッチングの開始を示す図であり、ここでは、略六角形の空洞を形成し始めている。さらにエッチングを行うことにより、
図3Hに示すように、略菱形の空洞119が生成される。なおさらにエッチングを行うことにより、
図3Iでは、横方向に延伸した略六角形の空洞121が生成される。
図3Iの空洞から略矩形に形作るために、異なるエッチング液を用いて、空洞121に直角の角部を作製してよい。従って、NH
4F:QEII:H
2O
2の体積比が約4:2:3である緩衝フッ化物エッチング溶液を用いて、
図3Iの空洞121にさらに等方性エッチングを行い、より角張った角部を空洞に形成してよく、これらの角部によって
図3Jに示した略矩形の空洞123が生成される。QEIIは、「Olin Microelectronics Materials」(コネチカット州、ノーウォーク)から入手可能な市販のエッチング溶液である。略矩形の空洞123により、空洞123の上部に基板材料の縁部131が作製される。
【0021】
図3Jに示した略矩形の断面形状を有する空洞123を確定する湿式エッチングに続き、保護材料103及びハードマスク材料105を乾式エッチングまたは化学機械研磨によって除去して、基板101の上面104を露出させる。次いで、基板101を洗浄することにより、
図3Kに示すように、略矩形の空洞123、縁部131及び保護ライナー113の一部を備えた基板101が残る。
【0022】
次に、
図3Lに示すように、空洞123を酸化物材料125(例えば、二酸化ケイ素)で充填する。酸化物材料125は、その後形成されるフォトニックデバイスの下部クラッドとして機能するものであり、堆積、スピンコーティングまたは熱成長によって形成されてよい。
【0023】
図3Mは、基板101の縁部131の上部にパターン化フォトレジスト材料127を形成した状態を示す図である。フォトレジスト材料は、基板101及び縁部131に異方性エッチングを行う際のマスクとして機能する。
図3Nに示すように、このエッチングは、酸化物125の上面で停止して、導波路コア129の形態でフォトニックデバイス素子を生成する。導波路コア129は、酸化物材料125の上面に支持されており、この酸化物材料は、導波路コア129の下部クラッドとなる。次に、
図3Oに示すように、酸化物135(例えば、二酸化ケイ素)の形態をとった上部クラッド材料をシリコン導波路コア129の両側及び上部に形成して、
図1に示した完成状態の導波路を形成する。
【0024】
酸化物材料125については、
図3Lに関連して説明しており、その際には、導波路コアデバイス129を形成する前に、この酸化物材料を略矩形の空洞123内に形成するものとした。しかしながら、導波路コア129を形成した後に、酸化物材料125を空洞123内に形成することもできる。
【0025】
図4A及び4A−1は、
図1の構造の一部についての平面視及び断面視(線A−1〜A−1に沿った)をそれぞれ示す図である。
図4Aの平面視は、酸化物135の下の構造を点線で示している。
図4A−1は、基板101に設けられたトレンチ111の位置を横断して取り出した断面視であり、このトレンチを通じて略矩形の空洞123を形成するエッチングが行われる。酸化物125、135は、
図4A−1の断面に共に示されている。また、酸化物125は、
図4Aの平面視にも点線で示されている。
図4Aに示すように、複数のトレンチ111が形成されており、これらのトレンチは、基板101に沿った直線方向に配置されている。従って、直線的に延在する導波路コア129に対し、直線的に延在する下地のクラッド酸化物125が提供される。
【0026】
図4B及び4B−1は、
図1の構造の他の一部についての平面視及び断面視(線B−1〜B−1に沿った)をそれぞれ示す図である。
図4Bの平面視は、酸化物135の下の構造を点線で示している。この断面視は、直線的に延在する導波路コア129を横断して取り出したものであり、
図4B−1の断面のクラッド酸化物125、135によって導波路コア129が囲まれている状態を示している。直線的に延在する酸化物125及び導波路コア129は、
図4Bの平面視において点線で示されている。上部クラッド酸化物135は、
図6に関連して以下で説明する方法により、CMOSデバイスとフォトニックデバイスを接続するための金属配線パターンを支持するのに用いられる層間絶縁(ILD)構造の一部とすることができる。
【0027】
図1の実施形態は、基板材料で形成されたコア129を備えた導波路の形態で光デバイスを提供する。この導波路は、断面で見ると、基板の略矩形空洞に形成された下部クラッドを備えており、曲線状の空洞と比較すると、光デバイスの形成に必要な基板101の領域の大きさを抑制しつつ、製造が容易な構造を呈する。
【0028】
図5A〜5Eは、
図2の実施形態の形成に利用可能な処理シーケンスを断面で示す図である。
【0029】
図5Aは、基板101と同一の材料(一例として、単結晶シリコン)で構成可能な半導体基板201を示す図である。
【0030】
図5Bは、基板201の上部に保護酸化物材料203(例えば、二酸化ケイ素)を形成した状態を示す図である。酸化物材料203は、成長させることができ、あるいは堆積またはスピンコーティングによって形成することができる。フォトニックデバイス製造材料213は、例えば、堆積により、酸化物材料203の上部に形成される。フォトニックデバイス製造材料213は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、またはフォトニックデバイスの形成に適した他の材料とすることができる。このような他の材料としては、Si
3N
4、Si
xN
y、SiO
xN
y、SiC、Si
xGe
y、GaAs、AlGaAs、InGaAsまたはInPなどがあり、ここで、x及びyは正整数である(例えば、1、2など)。材料213は、後に形成される周囲のクラッド材料よりも屈折率が高くなるように選択する。
図5Bは、フォトニックデバイス製造材料213の上部に設けられたパターン化フォトレジスト227も示している。
【0031】
図5Cは、
図5Bの構造を示す図である。この図は、フォトレジスト227をマスクに利用し、異方性湿式エッチングまたは異方性乾式エッチングを用いてフォトニックデバイス製造材料213をエッチングし、次いで、フォトレジスト227を除去した後の状態を示している。酸化物材料203の上部には、フォトニックデバイス製造材料203で形成されたフォトニックデバイス素子(例えば、導波路コア229)が残る。
【0032】
次に、
図5Dに示すように、パターン化フォトレジスト(図示せず)を用いて、酸化物材料203に開口209をエッチングする。開口209は、一部が基板201に延伸して、基板201内にトレンチ211を形成する。これに続き、
図3G〜3Kに関して上述した技法及びエッチング材料を用いて、基板201をさらにエッチングすることにより、基板内に略矩形の空洞223を形成する。この空洞は、導波路コア229の側端部を過ぎて横方向に延伸している。エッチング液は、保護材料203ではなくシリコン基板201をエッチングする。次いで、
図5Eに示すように、空洞223及び開口209を、成長、堆積またはスピンコーティングによって形成される酸化物225(例えば、二酸化ケイ素)で充填する。
図5Fに示すように、酸化物235(例えば、二酸化ケイ素)を導波路コア229の上部に形成して、酸化物下部クラッド225及び酸化物上部クラッド235が導波路コア229を完全に囲むようにする。この酸化物235は、
図7に関連して以下で説明する方法により、別個に形成することができ、あるいはCMOSデバイスとフォトニックデバイスを接続するための金属配線パターンを支持するのに用いられる層間絶縁(ILD)の一部とすることができる。
【0033】
図6は、
図1の実施形態を基板101に形成した状態を示す図である。この基板101は、その一部にCMOS回路が形成され、他の一部にはフォトニックデバイス(例えば、導波路)が形成されている。
図6は、1層以上の金属配線層141を支持する層間絶縁(ILD)構造の一部として、上部クラッド酸化物135が形成され得ることも示している。このCMOS回路は、MOSFETトランジスタ151によって例示されている。このトランジスタは、ゲート酸化物155の上部に形成され、側壁スペーサ163を有するゲート153と共に、ソース領域157及びドレイン領域159を備える。このCMOS回路は、浅いトレンチ分離構造161によって分離されている。このCMOSデバイス(例えば、トランジスタ151)は、導波路コア129及びこれに関連する酸化物充填空洞125の形成の前、後または最中に、基板101に形成することができる。
【0034】
図7は、
図2の実施形態を基板201に形成した状態を示す図である。この基板201は、その一部にCMOS回路が形成され、他の一部にはフォトニックデバイス(例えば、導波路)が形成されている。
図7は、1層以上の金属配線層141を支持する層間絶縁(ILD)構造の一部として、上部クラッド酸化物135が形成され得ることも示している。このCMOS回路は、MOSFETトランジスタ151によって例示されている。このトランジスタは、ゲート酸化物155の上部に形成され、側壁スペーサ163を有するゲート153と共に、ソース領域157及びドレイン領域159を備える。このCMOS回路は、浅いトレンチ分離構造161によって分離されている。このCMOSデバイス(例えば、トランジスタ151)は、導波路コア229及びこれに関連する酸化物充填空洞225の形成の前、後または最中に、基板201に形成することができる。
【0035】
図6及び7から理解できるように、
図1及び2に示した実施形態は、上部にCMOS回路並びにフォトニックデバイス及びフォトニック回路を共に形成した共通基板101(201)の一部とすることができる。
【0036】
本発明の例示となる方法及び装置の実施形態について上述してきたが、本発明はこれらの実施形態の具体的な事項には限定されず、本発明の概念または範囲を逸脱せずに変更をなすことが可能である。例えば、関連するコア129(229)を備えた導波路、並びに周囲の上部酸化物クラッド及び下部酸化物クラッドについて説明し、図示してきたが、基板101(
図1)由来のシリコンを用いて、またはフォトニックデバイス製造材料(
図2)から、他のフォトニックデバイスも構築することができる。このようなフォトニックデバイスとしては、光変調器、フィルタ、回折格子、分岐器、光検出器、光放出器及び他のフォトニックデバイスがある。また、トランジスタ151は、基板101(201)のCMOS領域内に形成可能な様々な電子デバイス及び電子回路の一例にすぎない。また、
図1の実施形態に関連してシリコン基板について説明したが、基板101は、フォトニックデバイス素子の形成に適した他の材料で形成することもできる。同様に、
図2に関連して説明したシリコン基板201は、フォトニックデバイスの支持に適した他の材料で形成されてもよい。
【0037】
従って、本発明は、前述の説明によって限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によってのみ限定される。