【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の教示内容によれば、上記の目的は、潤滑剤および保護基材を含み、潤滑剤は保護基材中に含まれ、保護基材は少なくとも部分的に選択的に除去できる金属シートまたはストリップのコーティングにより達成される。
【0018】
金属シートは特に、実質的に平面のシート、ブランクまたはプレートであってもよい。成形することができる典型的な金属は鋼および鋼合金、または好ましくは、たとえばアルミニウムおよびアルミニウム合金である。金属ストリップはまた、たとえばコイルの形態で用意してもよい。
【0019】
潤滑剤は基本的に、成形中に金属シートまたはストリップの潤滑をもたらすのに好適などのような種類の物質でもよい。潤滑剤は特に、コーティングの潤滑特性をもたらす主因である。コーティングのマトリックスは、必ずしも潤滑特性を有するものではない。
【0020】
保護基材は一般に、金属シートまたはストリップの機械的保護に好適などのような種類の材料からなっていてもよい。保護基材は特に、天然ポリマーまたは合成ポリマーを含んでもよいが、合成ポリマーが好ましい。保護基材(たとえばマトリックス)は特に、コーティングの機械的保護特性をもたらす主因である。
【0021】
潤滑剤を保護基材中に含ませることにより、必ずしも金属シートの表面上に潤滑挙動を直接示すことなく、コーティング中に潤滑剤を加えることができる。
【0022】
保護基材を選択的に除去できる下では、潤滑剤を実質的に除去することなく保護基材を除去できることが特に理解される。これは好ましくは、外部からの影響により行われる。こうした除去は、たとえば熱的除去、化学的除去および/または物理的除去であってもよい。これは、たとえば温度、化学物質、たとえば酸素もしくは溶媒、または放射線あるいはこれらの組み合わせにより除去を行う、促進する、および/または、引き起こすことができることを意味する。
【0023】
選択的除去は、保護基材の少なくとも部分的分解、特に解重合を含むことが特に好ましい。ポリプロピレンの場合、たとえば、解重合の形態の分解は、酸素により開始および/または促進される。
【0024】
解重合は、たとえばラジカルおよび/またはUV光により引き起こすことができ、特にラジカル連鎖反応である。解重合はまた、酸化分解などの副反応により達成することもできる。
【0025】
熱的除去は特に、特定の温度の分解生成物の揮発性、保護基材および潤滑剤の異なる蒸発温度および/または異なる沸点および/または昇華温度などの様々な特性により実現することができる。このため、潤滑剤は好ましくは、たとえば、保護基材より高い沸点、すなわちより低い揮発性を有する。特に保護基材の分解または解重合を行う場合、分解生成物の揮発性が重要である。
【0026】
化学的除去および/もしくは物理的除去またはこれらの組み合わせは、実質的に保護基材のみを選択的にエッチングおよび/または溶解する化学物質により実現することができる。一例としてポリエステルの加水分解がある。
【0027】
しかしながら、その代わりに、またはそれに加えて、照射による物理的除去、たとえば以下に限定されるものではないが、UV照射またはIR照射を同様に行ってもよい。物理的除去はまた、たとえば基材の選択的な物理的溶解を用いて実現することもできる。
【0028】
保護基材が少なくとも部分的に選択的に除去できる場合、コーティングが潤滑特性を付与し得る少なくともそうした量の保護基材が、選択的に除去できることが理解されよう。
【0029】
保護基材の特に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%が選択的に除去できる。基材の少なくとも99重量%を意味するほぼすべてが、除去されることが好ましい。これは、特に最大100%の保護基材の完全な除去が可能であることを意味する。
【0030】
したがって第1の状態において、コーティングは実質的に潤滑特性を示すことなく機械的保護特性を備えることができる一方、コーティングは第2の状態になると、選択的除去により機械的保護特性が減少または消失し、コーティングは潤滑特性を示し得る。
【0031】
その結果、機械的保護特性および潤滑特性の両方を備えるコーティングが得られる。機械的保護特性により、本発明のコーティングで被覆された金属シートまたはストリップは、処理と引っ掻き傷などの表面損傷からの保護とが可能になる。金属シートの処理後、金属シートまたはストリップの表面に潤滑剤を与えるため、保護基材は、たとえば加熱により少なくとも部分的に選択的に除去できる。保護用のフィルム、箔またはシートの任意の手作業による除去、および任意の手作業による潤滑剤の塗布をしないで済ますことができる。塗布される潤滑剤の量は、コーティング中の潤滑剤の量および/またはコーティング厚さの調整により正確に決定することができるので、より正確な潤滑剤の塗布が同時に行われる。したがって、金属シートまたはストリップのより確実な処理を可能にしながら、同時に金属シートの成形前により手間のかからない、より正確な準備を可能にすることで、本発明のコーティングにより金属シートまたはストリップの処理および潤滑を改善することができる。
【0032】
本コーティングは、一般により高い温度で行われる超塑性成形が可能な金属シートまたはストリップのコーティングに特に有利である。その場合、コーティングには、超塑性成形に好適な潤滑剤を使用してもよい、すなわち潤滑剤は、超塑性成形プロセスの典型的な温度および持続時間において十分な潤滑特性を付与するのに好適である。
【0033】
超塑性成形は、熱成形の特殊な事例と考えられる。アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属の超塑性状態では、ネッキングなしに1000%を超える、あるいはさらに2000%を超える引張伸びが可能である。特に、いくつかのアルミニウム合金、たとえばAA7475;AlSi1.2;AlCu3.3;AlCu6Zr0.5;AlCu6Zr0.4(AA2004 SPF);AlCu;AlZn6Mg2,3Cu1,6Cr;AlZnCa;AlMg4.5Mn AlLiCuMgZr(AA8090、8091、2090)またはAlMgMn(AA5083)では超塑性が立証されている。
【0034】
ただし、超塑性アルミニウム合金AA5083、2004および7475が特に好ましい。
【0035】
金属シートまたはストリップは、好ましくは0.5mm〜3mm、特に1.2mm〜2.5mmの厚さである。こうした厚さの金属シートの処理は特に、本発明によるコーティングの使用により容易になる。
【0036】
本発明によるコーティングは、好ましくは20μm〜200μm、一層好ましくは40μm〜100μmの厚さである。こうした厚さは、金属シートの保護に十分であり、十分な量の潤滑剤を含み得ることが明らかになった。
【0037】
保護基材と潤滑剤の比率は、使用する材料に応じて異なってもよいが、保護基材と潤滑剤の比率は特に2〜6、特に3〜5が有利であることが明らかになった。たとえば4という比率は、80重量%の保護基材および20重量%の潤滑剤が存在することを意味する。
【0038】
本発明のコーティングの実施形態によれば、潤滑剤は、グラファイト、窒化ホウ素、ブルーサイト、モンモリロナイト、雲母、白雲母、硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))および/または滑石を含む。しかしながら、同様に別の層状鉱物を使用してもよい。
【0039】
これらの潤滑剤は特に、熱成形および超塑性成形条件に好適である。
【0040】
グラファイトは、実質的に望ましくない化学反応のリスクなしに高温および低温の両方で満足のいく潤滑特性を有する。
【0041】
窒化ホウ素も同様に低温および特に最高1200℃の高温での潤滑に使用することができる。さらに窒化ホウ素は、間に、グラファイトの潤滑特性に必要な流体またはガス状分子の存在なしに酸化雰囲気で使用してもよい。さらに、窒化ホウ素は、電気伝導性を最小限に抑える必要があるときに有利である場合がある。
【0042】
乾燥および/または無機固体潤滑剤を使用することは、特に高温塗布に好適であるので特に好ましい。
【0043】
潤滑剤の粒度は、実際の潤滑剤に依存するが、好ましくは15μm未満、一層好ましくは10μm未満である。潤滑剤の粒子は、特に板状またはフレーク状の形状を有してもよい。潤滑剤の粒子は、約5〜100のアスペクト比を有してもよい。粒子の大きさは、その最大寸法に沿った粒子の直径を意味すると理解される。
【0044】
本発明のコーティングのさらなる実施形態によれば、保護基材は、好ましくは蒸発により、特に熱分解付着物をあまり付着させることなく、少なくとも部分的に熱的、化学的および/または物理的に除去できる。
【0045】
特に熱的に除去できる保護基材を選択することにより、機械的保護を除去するための労力が最小限に抑えられる。加えて、金属シートまたはストリップの表面上の過剰な保護基材の残りおよび/または熱分解付着物を減らすことができる。成形プロセス中にかなりの熱分解付着物が存在すると、成形作業を妨げることがある。
【0046】
熱的除去は、保護基材の少なくとも部分的な解重合および/または蒸発を含んでもよい。熱的除去は特に、金属シートまたはストリップの典型的な処理温度超で行ってもよい。
【0047】
一方、保護基材の残渣が金属シートの表面上に残ってもよい。保護基材の残渣は、成形において金属シートまたはストリップへの潤滑剤の固着を改善するため、成形工具に残る潤滑剤が少なくなり得ることが実際に明らかになっている。
【0048】
好ましくは、保護基材は、発泡なしにまたはわずかな発泡で少なくとも部分的に熱的、化学的および/または物理的に除去できる。これは、保護基材と潤滑剤との好適な組み合わせ、および好適な除去機構を選択することにより達成することができる。これは、熱的に除去できる保護コーティングにより特に実現することができる。
【0049】
本発明のコーティングの別の実施形態によれば、保護基材は、好ましくはプロピレン、エチレン、スチレン、イソブチレン、テトラヒドロフラン、メチルメタクリレートおよび/またはαメチルスチレンのポリマーを含む高分子マトリックスである。しかしながら、別の材料を使用してもよい。高分子マトリックスは、潤滑剤を固体に結合および保持するための媒体となり、機械的保護特性を付与する。上記のようなポリマー基材はさらに主に、多くの化学的溶媒、塩基および酸に対する耐性があり、十分な機械的保護を与え得る。高分子マトリックスは、好ましくは熱可塑性材料であり、保護基材の熱的除去を容易にする。
【0050】
保護基材はポリプロピレン(PP)であるか、またはポリプロピレン(PP)を含む場合、特に好ましい。PPは容易に入手でき、解重合により金属シート表面から蒸発により熱的に除去することが可能であり、解重合プロセスはたとえば酸化分解をさらに含んでもよい。PPの融点は一般に、PPの個々の種類に応じて130〜171℃である。このため機械的保護特性は、そうした温度まで付与することができる。解重合は一般に約300℃超で起こる。
【0051】
本発明のコーティングの別の実施形態によれば、潤滑剤は、保護基材に配合する、および/またはマスターバッチの形態の保護基材に添加される。本発明によるコーティングの用意は、これらのやり方で容易になり得る。潤滑剤は、たとえば、このようにして高分子マトリックスに埋封してもよい。加えて、コーティング中の潤滑剤の濃度は、異なる要求または要件に対応して正確に調整することができる。
【0052】
本発明のコーティングの別の実施形態によれば、コーティングは、特に摩擦低減、接着、潤滑剤の保護、潤滑剤の分離および分離性のうち1つまたは複数の機能を付与する1つまたは複数の追加の機能層を含む。この場合、分離性は、たとえば積層における異なる金属ストリップまたはシートの分離性を意味すると理解される。その場合コーティングの少なくとも1つの層は、潤滑剤および保護基材を含んでもよい。1つまたは複数の追加の層は、潤滑剤および保護基材を含む層の下に位置しても、あるいは上に位置してもよい。追加層は、たとえば金属シートもしくはストリップまたは下層もしくは上層への支持体の接着を改善することができる。追加層は、たとえばコーティングと金属シートまたはストリップとの間の接着性を付与することができる。この層は、金属シートまたはストリップと、潤滑剤および保護基材を含む層との間に位置すると考えられる。同一または異なる種類の潤滑剤を含む2つ以上の層が存在してもよい。
【0053】
それに加えてまたはその代わりに、追加層は、コーティングのため特定の表面特性を付与してもよい。こうした層は、潤滑剤および保護基材を含む層の上に位置すると考えられる。特定の表面特性は、たとえば特定の表面トポグラフィにより実現してもよい。こうすると、特に積層における金属シートまたはストリップ間の摩擦を増加または低下させることにより、コーティングされた金属シートまたはストリップの処理を容易にすることができる。これにより、接触している金属シートまたはストリップの分離性を高めることもできる。
【0054】
一方で、別の機能的な上層、下層または中層を設けてもよい。2つ以上の層の層構造は特に、たとえば共押出により設けることができる。
【0055】
本発明による別の実施形態によれば、コーティングは第1の温度範囲TR
1において機械的保護特性を有し、コーティングは、特に金属シートまたはストリップの成形を支援するため、第1の温度範囲TR
1より高い第2の温度範囲TR
2において潤滑特性を有する。
【0056】
第1の温度範囲TR
1ではコーティングは、機械的保護特性を示し、したがってコーティングされた領域の表面の引っ掻き傷および損傷からの、コーティングを施した金属シートまたはストリップの保護に好適である。これは、第1の温度範囲TR
1では保護基材の特性がコーティングの挙動または特性を支配することを意味する。一方で温度範囲TR
1は必ずしも、コーティングが機械的保護特性を示す全温度範囲をカバーする必要はない。温度範囲TR
1はまた、この温度範囲の部分範囲であってもよい。第1の温度範囲TR
1ではコーティングは特に、主としてまたは実質的に機械的保護特性のみを示してもよい。
【0057】
温度範囲は、数度あるいはさらにそれ未満の範囲であってもよいし、あるいは温度範囲は、数十度あるいはさらに数百度にわたる範囲であってもよい。
【0058】
第1の温度範囲TR
1は特に、コーティングで被覆した金属シートまたはストリップを処理する、たとえば(再)積層、貯蔵および/または輸送する典型的な温度を含んでもよい。第1の温度範囲は特に、室温、すなわち20℃および/または25℃を含むが、室温よりはるかに低い温度から100℃あるいはさらにそれを上回る温度に達してもよい。
【0059】
第2の温度範囲TR
2では、コーティングは特に、金属シートまたはストリップの成形を支援するため潤滑特性を有する。これは、第2の温度範囲TR
2では潤滑剤の特性がコーティングの挙動または特性を支配することを意味する。ただし温度範囲TR
2は必ずしも、コーティングが潤滑特性を示す全温度範囲をカバーする必要はない。温度範囲TR
2はまた、この温度範囲の部分範囲であってもよい。第2の温度範囲TR
2ではコーティングは特に、金属シートまたはストリップを成形するため、主としてまたは実質的に潤滑特性のみを示してもよい。したがってコーティングまたは潤滑剤は特に熱成形または超塑性成形に好適である。
【0060】
第2の温度範囲TR
2が第1の温度範囲TR
1より高いということは、第2の温度範囲が少なくとも部分的に第1の温度範囲TR
1より高い温度に及ぶことを意味すると理解される。温度範囲TR
1およびTR
2は相互に分離して、移行範囲があってもよいし、あるいは重複部分が存在してもよい。温度範囲はまた、互いに隣接していてもよい。
【0061】
本発明のコーティングのさらなる実施形態によれば、温度範囲TR
2は少なくとも温度≧400℃、特に≧450℃を含む。好ましくは、温度範囲TR
2は少なくとも温度≧400℃かつ≦600℃、好ましくは≧400℃≦520℃を含む。本方法では、こうした温度で確実に潤滑特性を得ることができる。こうした温度範囲における潤滑特性は特にアルミニウムの超塑性成形に有利である。しかしながら、潤滑特性はまた、他の温度で得てもよい。
【0062】
本発明の別の教示内容によれば、目的はまた、成形、特に超塑性成形することができ、かつ金属シートまたはストリップの片面もしくは両面に少なくとも部分的に本発明によるコーティングを有する金属シートまたはストリップにより達成される。
【0063】
正確に調整された潤滑、および未損傷の金属シートまたはストリップ表面は特に、本発明によるコーティングを有する金属シートにより達成することができる満足のいく成形または超塑性成形の結果に関係する。
【0064】
金属ストリップは、たとえば複数の金属シートにする長さに切断してもよい。次いで金属シートの表面を破損することなく、複数の金属シートを互いに積層してもよい。金属シートが金属シートの両面にコーティングを有するとき、最大の保護が得られる。
【0065】
本発明による金属シートの実施形態によれば、金属シートはアルミニウムまたはアルミニウム合金で作られている。アルミニウム合金は特に、その柔らかさゆえ、たとえば鋼と比較して損傷しやすい。したがってアルミニウムまたはアルミニウム合金シートは、処理中の保護を高める必要がある。
【0066】
特に超塑性成形が可能なアルミニウム合金として、たとえばアルミニウム合金AA5083、2004および7475がある。
【0067】
しかしながら、超塑性は厳格な合金特性ではなく、構造に基づく特性であるため、たとえば好適な機械的または熱的手段により広範囲に及ぶ別の合金を超塑性状態にできる可能性がある。それでも、以下の基準が超塑性を促進することが明らかになっている。
【0068】
超塑性成形プロセスでは、≧0.5の対応する温度で(すなわち金属のケルビン単位の融点温度の半分より高い温度で)成形を行うべきである。加えて、特有の成形速度を比較的低く維持する必要がある。アルミニウム合金の典型的な超塑性成形温度は、≧400℃、好ましくは≧450℃、好ましくは550℃以下の範囲である。したがって、こうした高い温度で潤滑特性を付与すると特に有利である。
【0069】
使用する金属に関しては、金属内に微粒子構造、すなわち≦15μm、好ましくは≦10μmの粒度を備えているべきである。さらに、等方性の金属シート表面、および好ましくは一定のシート厚さが、有利であると分かるに違いない。したがって、未損傷の表面は、特に超塑性成形を行う予定の金属シートまたはストリップに適している。
【0070】
本発明の別の教示内容によれば、本目的は、成形すること、特に超塑性成形することができる金属シートまたはストリップを用意するステップ、および本発明によるコーティングを塗布するステップを含む、本発明によりコーティングされた金属シートまたはストリップを製造するための方法によっても達成することができる。
【0071】
金属シートまたはストリップは特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られている。
【0072】
成形することができる金属シートまたはストリップに本発明によるコーティングを塗布することにより、保護基材をまだ選択的に除去していない場合、金属シートまたはストリップの安全な処理ができるので、金属シートの処理および準備の改善を達成することができる。同時に金属シートまたはストリップの成形の前に手間のかからない、より正確な潤滑が、保護基材を少なくとも部分的に選択的に除去することにより達成される。潤滑剤の任意の手作業による不均一な塗布の必要がない。
【0073】
本発明による方法の実施形態によれば、コーティングは、コイルコーティング、フォーマットコーティング、ホットラミネート、圧延クラッドまたは(共)押出コーティングにより塗布する。フォーマットコーティングは特にホットラミネートを使用してもよい。あるいは、回転成形などにおける粉末コーティングを使用してもよい。こうしてコーティングの厚さの調整により、または潤滑剤と保護基材の比率の調整により、コーティングの正確な量、したがって潤滑剤の正確な量を金属シートに塗布することができる。コーティングの塗布は、たとえばローリングトレイン(rolling train)において金属シートまたはストリップの生産後すぐに行ってもよい。たとえばローリングトレイン(rolling train)においてコイルコーティング、ホットラミネート、圧延クラッドまたは押出コーティングの装置を実行してもよい。このため、シートは、その生産後すぐに損傷から保護される。しかしながらシートはまた、別個の装置で被覆してもよい。たとえば、金属ストリップは、コーティングされた金属シートを得る長さに切断する前に被覆しても、あるいは切断した後に被覆してもよい。このためコイル・ツー・コイルもしくはリール・ツー・リールプロセスまたはフォーマットコーティングを使用してもよい。
【0074】
本発明による方法の実施形態によれば、本方法は、コーティングされた金属シートまたはストリップを処理するステップ、特に(再)積層する、貯蔵するおよび/または輸送するステップをさらに含む。
【0075】
保護基材が少なくとも部分的に選択的に除去される前に金属シートまたはストリップを処理する場合、主に保護基材に起因する機械的保護特性を有するコーティングにより、損傷および引っ掻き傷からの保護が可能になる。ただし言うまでもなく、金属シートまたはストリップはまた、機械的に保護することなく部分的に処理してもよい。好ましくは、処理は、少なくとも部分的に温度範囲TR
1において行う。
【0076】
本発明による方法のさらなる実施形態によれば、本方法は、特に処理後に保護基材を少なくとも部分的に選択的に除去するステップ、および金属シートまたはストリップの成形、特に超塑性成形のステップをさらに含む。
【0077】
(再)積層または輸送などの処理後、金属シートのそれ以上の機械的保護は、必要ない。保護基材を解重合および/または蒸発させるため、たとえばコーティングされた金属シートを加熱することで、保護基材を少なくとも部分的に選択的に除去することにより、コーティングの保護機能は、任意の保護箔、フィルムまたは層を除去しなくても自動的に低下または消失する。同時にコーティングは、コーティング内に含まれる潤滑剤により、金属シートまたはストリップの成形を支援するための潤滑特性を有する。さらに、保護基材が存在し過ぎることにより、潤滑特性を妨げるリスクも低下する。保護基材は少なくとも部分的に選択的に除去されるので、潤滑剤は主に金属シートの表面上に残る。成形は、好ましくは温度範囲TR
2において行う。
【0078】
成形は、好ましくは熱成形または超塑性成形である。超塑性成形は高温で行われる一方、明確に定められた潤滑および未損傷の表面が要求される。したがって、本発明による方法を超塑性成形と組み合わせると特に有利である。
【0079】
成形、および特に超塑性成形は、好ましくは吹込成形、真空成形または熱成形により実現される。超塑性成形では温度は、好ましくは少なくとも400℃、特に少なくとも450℃である。
【0080】
本発明による方法の別の実施形態によれば、コーティングされた金属シートまたはストリップから保護基材の少なくともかなりの部分が熱的に除去される。保護基材の少なくともかなりの部分が熱的に除去される場合、保護基材の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも90重量%、一層好ましくは少なくとも99重量%が除去される。これは同様に、特に最大100%の保護基材の完全な除去が可能であることも意味する。熱的除去は、特にコーティングされた金属シートまたはストリップの処理後および成形の前に、特に温度範囲TR
2未満および/または温度範囲TR
2において行う。
【0081】
たとえば解重合および/または蒸発により、保護基材のかなりの部分が熱的に除去されると、保護基材の選択的除去が促進される。金属シートまたはストリップは何れにしても加熱を行う必要があるので、こうした選択的除去は、金属シートまたはストリップの超塑性成形ステップとの組み合わせに特に有利である。
【0082】
一方、本発明による方法の別の実施形態によれば、保護基材を少なくとも部分的に選択的に除去した後、保護基材の残渣が金属シートまたはストリップ上に残ると、残渣は、金属シートまたはストリップ表面への潤滑剤の固着を改善するため、成形工具に残る潤滑剤が少なくなる。残渣は、当初の保護基材の50重量%未満、好ましくは10重量%未満、一層好ましくは1重量%未満を意味すると理解される。残渣は、しかしながら、不完全な蒸発のため基材と化学的に異なる場合がある。
【0083】
本発明の様々な教示のさらに好ましい実施形態およびその利点については、従属クレームに言及され、本発明の他の教示の記載にも言及されている。
【0084】
本発明によるコーティング、金属シートまたはストリップ、および方法をさらに開発および設計する多くの可能性がある。それは、一方では独立特許クレームに従属する特許クレームに言及され、他方では図面における本発明の例示的な実施形態の記載に言及されている。