特許第6244413号(P6244413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6244413
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】マグネットギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   F04C2/18 311F
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-137708(P2016-137708)
(22)【出願日】2016年7月12日
【審査請求日】2017年4月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506428780
【氏名又は名称】大東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】岸 修一
(72)【発明者】
【氏名】原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】仲井 利勝
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 悟史
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−299471(JP,A)
【文献】 特開2011−236795(JP,A)
【文献】 特開2012−021516(JP,A)
【文献】 特開平02−277983(JP,A)
【文献】 実開昭60−084826(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器を構成する装置本体の外周部の、相対する部位の一方側にベント管を、他方側に空気取り込み口をそれぞれ配置し、前記装置本体内で加熱された空気の前記ベント管を介した排出と、前記加熱された空気よりも温度が低い外気の前記空気取り込み口を介した取り込みによって自然対流が生ずるよう構成されていること
を特徴とするマグネットギヤポンプ。
【請求項2】
前記ベント管は、
前記外周部の、軸受部材に近接する先端側の上方側に、
前記空気取り込み口は、
前記外周部の、軸受部材に近接する先端側の下方側に
それぞれ配置されていること
を特徴とする請求項1に記載のマグネットギヤポンプ。
【請求項3】
前記装置本体は、
先端開口部には、モータの駆動軸を軸受けする軸受保持部材が設けられ、基端側には、内部の液体を外部に排出するシャフトを駆動するためのギヤ保持部材が設けられたものであること
を特徴とする請求項1又は2に記載のマグネットギヤポンプ。
【請求項4】
前記装置本体は、
前記先端開口部に延出するモータの駆動軸の先端側に、モータと連動する円筒状のカバーケースが配置され、前記カバーケース内に圧力容器が配置されたもので、前記カバーケースの内周に設けられたアウターマグネットに相対させて、前記圧力容器の内周面にインナーマグネットが設けられていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネットギヤポンプ。
【請求項5】
前記圧力容器は、
両端部が開口する装置本体内に内蔵され、
その中心に配された伝動シャフトの基端側の外周部に配されたギヤが、装置本体の後部開口部側に設けられたシャフトのギヤと係合し、装置本体内に設けられた排出口を介して液体を外部に排出できるよう構成されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネットギヤポンプ。
【請求項6】
前記カバーケースは、
その先端部が、モータの駆動軸の先端部に設けられた連結子に固着されていること
を特徴とする請求項4に記載のマグネットギヤポンプ。
【請求項7】
前記カバーケースを内蔵する装置本体は、
その先端側の開口部が、モータの駆動軸の軸受部材で閉止されたもので、
前記軸受部材の内部には、所要の間隔を存して一対の軸受が配されていること
を特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のマグネットギヤポンプ。
【請求項8】
前記装置本体の外周部の下方側には、
ドレン管が配置されていること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマグネットギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材を冷却して、その損傷を防止するとともに、安価なグリースの使用を可能にするマグネットギヤポンプに関するものである。
より具体的には、外気を利用した自然対流によって、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材を冷却するとともに、安価なグリースの使用を可能にするマグネットギヤポンプに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、レアアースの利用によって、磁石の磁力が飛躍的に向上している。
これを受けて、高トルクを伝達可能となったマグネット式トルクカプラーが、様々な分野において応用されている。
【0003】
かかるマグネット式トルクカプラーを応用したギヤポンプは、圧力容器(「キャン」ともいう。)は、金属で製作され、キャンを隔てて磁力伝達が行われるため、キャンの材料は非磁性であることが求められる。
【0004】
前記トルクカプラー方式においては、キャンは基本的に静止しているが、回転する磁束が圧力容器を通過するため、渦電流がキャンの外周部に発生する。
この渦電流は、閉じた円形電流であって、すべてが熱に変換される。
一方、圧力容器を非磁性金属で構成する場合、必ず渦電流損による発熱が生じる。
他方、ギヤポンプは、比較的高粘度の液体も扱うので、熱可塑性樹脂などの移送に際して、対象となる液体をコントロールすることが頻繁に行われる。
【0005】
例えば、特開2005−220865号公報(特許文献1)においては、核熱を利用した水を原料とした熱科学ISプラントの濃硫酸、およびヨウ素+ヨウ化水素混合液に使用される、耐食性材料を用いた高温高圧用マグネットカップリング式ポンプが開示されている。
【0006】
前記特許文献1におけるポンプは、
1)インペラー、その回転シャフト、フロント部、ドレン部およびリアケーシング部をTaで構成し、
2)そのスラストリング、回転シャフトを支えるスリーブ、そのブッシュおよびカップリングキイをセラミックで構成し、
3)使用する重液がポンプ内部で固化した場合、その重液をセラミックヒータで加熱し、軟化させてドレンから排出すること
が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−220865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載されたポンプは、運転温度を温度120℃〜450℃とするものである。
【0009】
しかしながら、マグネットギヤポンプの運転に際して使用するグリースには、耐熱温度がある。
したがって、運転温度ないしポンプ内部温度に応じて適正なグリースを選択する必要があるところ、使用するグリースの耐熱温度を超える高い温度で、ポンプを長時間運転した場合には、溶解したグリースの漏えいが促進され、漏えいしたグリースが、ポンプ内部で乾燥・炭化するという問題があった。
【0010】
さらに、耐熱温度が高いグリースは、非常に高価である、という問題もあった。
【0011】
さらにまた、マグネットを回転させるための駆動軸を軸支している軸受部材(ボールベアリング)の焼き戻し温度、例えば、温度180℃以上で運転する場合には、この軸受部材が高温になり、損傷するおそれがある、という問題もあった。
上記の問題は、移送する流体の温度が、温度250℃〜300℃を超える場合において特に顕著であった。
【0012】
この発明はかかる現状に鑑み、圧力容器を構成する装置本体の相対する側壁の一方側にベント管を、他方側に空気取り込み口を配置することによって、装置本体内部の空気の排出と外気の取り込みによる自然対流を発生させ、この自然対流を利用することによって、マグネット回転用の駆動軸を軸支している軸受部材を、冷却してその損傷を防止するとともに、安価なグリースを使用することのできるマグネットギヤポンプを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の請求項1に記載の発明は、
圧力容器を構成する装置本体の外周部の、相対する部位の一方側にベント管を、他方側に空気取り込み口をそれぞれ配置し、前記装置本体内で加熱された空気の前記ベント管を介した排出と、前記加熱された空気よりも温度が低い外気の前記空気取り込み口を介した取り込みによって自然対流が生ずるよう構成されていること
を特徴とするマグネットギヤポンプである。
【0014】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記ベント管は、
前記外周部の、軸受部材に近接する先端側の上方側に、
前記空気取り込み口は、
前記外周部の、軸受部材に近接する先端側の下方側に
それぞれ配置されていること
を特徴とするマグネットギヤポンプである。
【0015】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記装置本体は、
先端開口部には、モータの駆動軸を軸受けする軸受保持部材が設けられ、基端側には、内部の液体を外部に排出するシャフトを駆動するためのギヤ保持部材が設けられたものであること
を特徴とするマグネットギヤポンプである。
【0016】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記装置本体は、
前記先端開口部に延出するモータの駆動軸の先端側に、モータと連動する円筒状のカバーケースが配置され、前記カバーケース内に圧力容器が配置されたもので、前記カバーケースの内周に設けられたアウターマグネットに相対させて、前記圧力容器の内周面にインナーマグネットが設けられていること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記圧力容器は、
両端部が開口する装置本体内に内蔵され、
その中心に配された伝動シャフトの基端側の外周部に配されたギヤが、装置本体の後部開口部側に設けられたシャフトのギヤと係合し、装置本体内に設けられた排出口を介して液体を外部に排出できるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項4に記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記カバーケースは、
その先端部が、モータの駆動軸の先端部に設けられた連結子に固着されていること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項2〜6のいずれかに記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記カバーケースを内蔵する装置本体は、
その先端側の開口部が、モータの駆動軸の軸受部材で閉止されたもので、
前記軸受部材の内部には、所要の間隔を存して一対の軸受が配されていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載のマグネットギヤポンプにおいて、
前記装置本体の外周部の下方側には、
ドレン管が配置されていること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明にかかるマグネットギヤポンプは、圧力容器を内蔵する装置本体の外周部の、相対する部位の一方側にベント管が、他方側に空気取り込み口が配置されているので、外気を空気取り込み口から吸引してベント管から排出することによって、外気温に応じてマグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材を随時冷却することができる。
したがって、前記軸受部材の損傷を防止することができる。
さらに、外気温に応じて圧力容器を含む装置本体内も随時冷却することができるので、装置内部温度が低くなり、耐熱温度が低い安価なグリースの使用が可能となる。
【0022】
さらに、この発明のマグネットギヤポンプは、外気循環部材として、ベント管と空気取り込み口を採用することによって、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材の高熱化を防止することができるので、大掛かりな冷却用の装置を外付けする必要がなく、この軸受部材から圧力容器までの長さを短くすることを可能とするものである。
したがって、マグネットギヤポンプの構成を大幅に簡素化かつコンパクト化させることができる。
【0023】
特に、この発明のマグネットギヤポンプを、前記ベント管が、前記外周部(側壁)の上方側に、前記空気取り込み口が、前記外周部の下方側にそれぞれ配置されるように構成した場合には、装置本体内の加熱された空気は、その密度差によって上昇し、前記ベント管から排出され、排出される空気よりも低い温度の外気が、前記空気取り込み口から供給されるので、自然対流が生じやすくなる。
【0024】
さらにまた、この発明のマグネットギヤポンプにおいては、前記装置本体の外周部の、相対する部位の下方側に、ドレン管を配置することによって、溶解したグリースを装置外に排出することができるので、グリースの装置内部での乾燥・炭化を防止することができる。
【0025】
なお、この発明を構成する軸受部材は、所要の間隔を存して設けられる一対の軸受で構成されるので、モータの駆動軸の回転によって発生する摩擦熱も、すべて、前記外気を空気取り込み口から吸引してベント管から排出することによる自然対流によって、系外に排出されるので、装置本体内に熱が籠ることがなく、前記軸受部材を随時冷却してその損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明にかかるマグネットギヤポンプの一例を示す説明図である。
図2図1に示すマグネットギヤポンプのA−A’一部切欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明にかかるマグネットギヤポンプ1の実施の一例を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
この発明のマグネットギヤポンプ1は、圧力容器3を内蔵する両端部が開口する円筒状の装置本体2と、モータ側に位置する先端開口部を閉止し、かつマグネットを回転させる駆動軸4aを支持する軸受部材4と、後端開口部を閉止するギヤ保持部材5と、前記圧力容器3の回転を前記ギヤ保持部材5に伝達するシャフト6と、前記装置本体2の先端開口側に設けられ、かつ外気によって前記装置本体2内及び軸受部材4を冷却するベント管7aと空気取り込み口7e,7eからなる外気循環部材7とから構成されている。
なお、前記ベント管7aは、図2に示すように、雨水の侵入を防止するため、その先端が下方に向くように構成することが好ましい。
【0028】
前記装置本体2は外周部が2重に形成されたもので、前記軸受部材4に近接する先端側の、相対する側壁の一方側に前記装置本体2内の空気を排出するための前記ベント管7aが、他方側に前記空気取り込み口7e,7eが配置され、前記装置本体2内の加熱された空気は、透孔7cおよび前記ベント管7aを介して大気中に放出され、その密度差によって、外気が、前記空気取り込み口7e,7eから取り込まれ、透孔7dを介して装置本体2内に供給されるものである。
このような構成によって、前記装置本体2内部と前記軸受部材4を冷却して、健全な状態を保持することが可能となる。
【0029】
図1及び2に示すように、前記ベント管7aは相対する側壁の上方側に、前記空気取り込み口7e,7eは相対する側壁の下方側に、それぞれ配置されている。
このような構成によって、前記装置本体2内の加熱された空気は、その密度差によって上昇し、前記ベント管7aから排出され、さらに、前記排出される空気よりも低い温度の外気が、前記空気取り込み口7e,7eから供給されるので、自然対流が生じやすくなる。
【0030】
なお、図1及び2において、前記空気取り込み口7e,7e間には、ドレン管7bが配置されている。
このドレン管7bは、溶解したグリースを排出して装置本体2内で乾燥・炭化することを防止するためのものであるが、前記空気取り込み口7e,7eと同様に、外気を取り込んで前記装置本体2内に供給することが期待されるものである。
【0031】
前記軸受部材4は、マグネットを回転させるための駆動軸4aを軸支するもので、この駆動軸4aは、モータ(図示せず)に接続されている。
図1において、前記軸受部材4は、所要の間隔を存して配される左右一対の軸受4b,4cによって構成されたもので、前記軸受4b,4c間には、所要の大きさの隙間Xが形成されている。
【0032】
前記駆動軸4aの先端側は、所要の間隔を存して配される左右一対の軸受4b,4cによって保持され、その先端部の連結子4dを前記装置本体2内に挿入させ、当該連結子4dの先端を、前記装置本体2内に配置された回転体(カバーケース)8に一体的に固着する。
なお、前記軸受4bと4cとの間に空隙Xを構成することによって、前記駆動軸4aが回転する際に発生する熱を、外気中に自然放熱させることができる。
【0033】
前記回転体(カバーケース)8は、一端部に前記連結子4dと係合する受容れ部8aを有する底部が開口した円筒体からなるもので、その外周部には、円筒状のアウターマグネット9が固定されている。
【0034】
前記回転体(カバーケース)8の内部には、先端部が閉止された円筒状の圧力容器3の先端部が挿入されている。
この圧力容器3は、その内部に前記アウターマグネット9に対応するインナーマグネット10が装着された伝動シャフト6の先端部が装着され、前記伝動シャフト6の基端部近傍の外周部には、前記ギヤ保持部材5のギヤ5aが外装されている。
【0035】
前記ギヤ5aはギヤ5bと連動するとともに、前記ギヤ5bは、前記装置本体2の他端開口部側に配置されたシャフト11と連動するもので、このシャフト11の回転によって前記装置本体2内に充填させて液状媒体(移送流体)を、排出口12を介して外部に排出できるよう構成されている。
【0036】
かかる構成において、外気を、主として空気取り込み口7e,7eから吸引してベント管7aから排出することによる自然対流によって、熱は系外に排出されるので、前記装置本体2内に熱が籠ることがなく、前記軸受部材4を随時冷却してその損傷を防止することができる。
【0037】
すなわち、前記装置本体2内に、所定の温度、特に高温の移送流体を充填して使用する場合、前記圧力容器3を内蔵する前記装置本体2の内部が高温になるので、前記装置本体2内の空気も加熱されて高温になる。
加熱された空気は、その密度差によって上昇し、前記装置本体2の外周部に配した外気循環部材7のベント管7aから外部に排出され、さらに、排出される空気よりも低い温度の外気が、その密度差によって、外気循環部材7の空気取り込み口7e,7eから、場合によってはドレン管7bからも、取り込まれる。
この発明においては、前記装置本体2の外周部の上部にあるベント管7aを介した高温の空気の排出と、下部にある空気取り込み口7e,7eを介した温度の低い空気(外気)の取り込みによる自然対流によって、前記装置本体2内の熱を外部に排出し、その軸受部材4の温度を下げることができるものである。
【0038】
この発明のマグネットギヤポンプは、以上述べたように、前記外気循環部材7を構成する空気取り込み口7e,7eから取り込まれた空気によって、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材4を冷却することができるので、高温の移送流体、特に温度200℃〜350℃の移送流体を扱う場合であっても、健全な状態を維持することができる。
さらに、前記圧力容器3内に充填された液状媒体の粘性が変化しても、前記外気循環部材7を構成するベント管7aから取り込まれた外気温の高低によって、粘性を一定に保持することができるので、求められる液体の粘性を最適に維持することができる。
さらにまた、液状媒体を常に最適に維持するための構成が、きわめて簡単かつ容易であるため、町工場などにおいて経済的に利用することができる。
なお、ギヤポンプ以外の装置であっても、マグネットカップリングを利用したものであれば、この発明を適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げてこの発明を詳細に説明するが、この発明はこれら実施例により制限されることはない。
【0040】
[実施例1]
図1に示すマグネットギヤポンプと同様のものを用いて、その運転状況の確認を行った。
【0041】
<結 果>
移送流体の温度320℃で、約2700時間の運転において、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材4の、ベアリング近傍の表面温度は温度100℃程度に維持されており、安価な高温グリース(耐熱温度250℃)を使用して正常に運転していることが確認され、この条件下での年間8,000時間以上の正常運転が期待できる。
したがって、この発明によれば、このような軸受部材4を冷却して、健全な状態を長期間に亘って維持することができることは明らかである。
さらに、この実施例においては、耐熱温度250℃のグリースを使用したが、軸受部材4のベアリング近傍の表面温度は、温度100℃程度に維持されているので、この発明によれば、耐熱温度110〜140℃の汎用のグリースの使用が期待できる。
【0042】
[比較例1]
ベント管7aとドレン管7bと空気取り込み口7e,7eを設けないこと以外は、図1に示すマグネットギヤポンプと同様のものを用いて、その運転状況の確認を行った。
【0043】
<結 果>
移送流体の温度300℃で、グリースとして耐熱温度140℃の汎用グリースを使用して運転したところ、運転開始から約3,000時間後に、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材の崩壊が確認された。
【0044】
[比較例2]
前記ベント管7aとドレン管7bと空気取り込み口7e,7eを設けないこと以外は、図1に示すマグネットギヤポンプ1と同様のものを用い、その運転状況の確認を行った。
【0045】
<結 果>
移送流体の温度300℃で、耐熱温度200℃のグリースを使用して7,000時間の運転を行った後、点検した結果、マグネット回転用の駆動軸を軸支する軸受部材のベアリング近傍の表面温度は温度約150℃で、この軸受部材は摩耗が生じて正常ではない状態のものになり、前記装置本体2のマグネットケース内部において漏えいした、グリースの固化ないし炭化物が発生したことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明のマグネットギヤポンプは、従来の冷却機能を有しないマグネットギヤポンプの外周部に、外気循環部材を簡単かつ容易に後付けすることができるので、マグネットギヤポンプ自体の構造を変える必要や、大掛かりな冷却装置を外付けする必要がなく、中小企業などが積極的に利用できる技術である。
【符号の説明】
【0047】
1 マグネットギヤポンプ
2 装置本体
3 圧力容器
4 軸受部材
4a マグネット回転用の駆動軸
4b,4c 軸受
5 ギヤ保持部材
5a,5b ギヤ
6 シャフト
7 外気循環部材
7a ベント管
7b ドレン管
7c,7d 透孔
7e 空気取り込み口
8 回転体
9 アウターマグネット
10 インナーマグネット
11 シャフト
12 排出口
【要約】
【課題】 軸受部材を冷却してその損傷を防止し、かつ安価なグリースを使用することのできるマグネットギヤポンプを提供する。
【解決手段】 このマグネットギヤポンプ1は、これを構成する圧力容器3を内蔵する装置本体2の外周部の、相対する部位の一方側にベント管7aが、他方側に空気取り込み口7e,7eが配置されているので、外気を空気取り込み口7e,7eから吸引してベント管7aから排出することによって、外気温に応じてマグネット回転用の駆動軸4aを軸支する軸受部材4を随時冷却してその損傷を防止することができる。
さらに、このマグネットギヤポンプ1は、外気温に応じて圧力容器3を含む装置本体2内も随時冷却することができるので、装置内部温度が低くなり、耐熱温度が低い安価なグリースの使用が可能となる。
【選択図】 図1
図1
図2