【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法又は請求項11または12に記載の特徴を有する真空ポンプ又は回転ユニットによって解決される。本発明の好ましい実施形及び発展形は、従属請求項に記載されている。
【0007】
発明に従い、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプ、又は真空ポンプの為、特にターボ分子ポンプの為の回転ユニットの漂遊ベクトル磁場の減少の為の方法が記載され、その際、漂遊ベクトル磁場は、少なくとも部分的に、少なくとも一つの永久磁石支承部によって発生され、これは、真空ポンプ又は回転ユニットの反対方向の回転可能な支承の為に形成されており、そしてその際、本方法は、
少なくとも一つの参照点における漂遊ベクトル磁場の少なくとも一つの成分が決定され、そして、
バランスマグネットの磁場が、漂遊ベクトル場の成分を、少なくとも参照点において減少し、好ましくは補償するよう選択され、又は長期にわたって変更される、
というステップを有する。本発明に係る方法においては、特に、永久磁石支承部の各マグネットの漂遊ベクトル磁場が、測定される必要が無いという点、有利である。むしろ、参照点において、全体のまとめられた永久磁石支承部によって発生される、減少すべき又は補償すべき漂遊ベクトル場成分が測定されると十分である。発明に係る方法においては、よって、永久磁石支承部の個々のマグネットリングの漂遊ベクトル場に置かれず、永久磁石支承部の全装置の結果として生じる漂遊ベクトル磁場に置かれる。この漂遊ベクトル磁場は、バランスマグネットの磁場の長期にわたる変更によって少なくとも参照点において減少される、又は補償される。永久磁石支承部の阻害的な磁気的影響は、よって、少なくとも参照点において、減少され、又は取り除かれさえすることが可能である。その上、個々の永久磁石(これらから、支承部が纏められる)は、磁化のその永久磁石としての方向に関して、より低い空間的普遍性を有する。というのは、発明に係る方法に従い、結果として生じる漂遊ベクトル磁場の減少が達成されることが可能だからである。
【0008】
漂遊ベクトル場は、永久磁石支承部が、計測装置内に配置され、この計測装置によって、永久支承部の、ローター側の部分が、真空ポンプ又は回転ユニットのローターに設けられていたであろうときのように回転されることが可能であり、他方で、所定の参照点において、少なくとも漂遊ベクトル場の成分が受け入れられることによって計測されることが可能である。
【0009】
計測は、永久磁石支承部が組み立てられた後、ポンプまたは回転ユニットにおいて実施されることが可能である。そのような計測は、測定された成分内において、真空ポンプ又は回転ユニットの電気的な駆動部によって引き起こされる貢献分も、及び/又は真空ポンプ又はローターユニットの他の装置又は部材によって引き起こされる貢献分も検出されることが可能であるというメリットを有する。この貢献分は、同様にバランスマグネットの変更される磁場によっても減少される、又は場合によっては補償されさえすることが可能である。漂遊ベクトル磁場に対するこの貢献分の減少又は補償の為の独立したシールドは、よって省略されることが可能である。
【0010】
バランスマグネットの磁場は、特に、バランスマグネットがポンプにおいて、又は回転ユニットにおいて、その意図した組込み位置に配置されているときに、漂遊ベクトル場の成分の減少又は補償の意図した効果が最大であるように変更される。
【0011】
バランスマグネットの磁場が、漂遊ベクトル場の成分を、少なくとも参照点において減少し、または好ましくは補償するよう選択される上述した代替系においては、例えば、バランスマグネットが複数の、例えば倉庫内に保管される複数のバランスマグネットから選択されることが意図されていることが可能である。選ばれたバランスマグネットにおいては、その際、多かれ少なかれ、磁場が、まさに、所望の方法及び形式で漂遊ベクトル場の成分を、少なくとも参照点において減少し、又は好ましくは補償するよう形成されている。
【0012】
好ましくは、参照点において、漂遊ベクトル場の成分の関数が、永久磁石支承部の回転するローター側の部材において、永久磁石支承部のローター側の部材の角度位置に応じて、回転軸を中心とした磁石支承部のローター側の部材の少なくとも一つの完全な周回に対して測定され、そしてバランスマグネットの磁場は、特にバランスマグネットに対して意図されている組込み位置において、永久支承部のローター側の部材の角度位置に拠らず、参照点において測定可能又は測定される漂遊ベクトル場の成分を減少し、又は少なくとも近似的に補償するよう選択される、又は変更される。
【0013】
磁場は、これが特に、バランスマグネットに対して意図されている組込み位置において、永久支承部のローター側の部材の角度位置によらず、少なくとも参照点において計測可能である、成分の時間的に変更可能な部分を減少させ、又は好ましくは補償するよう選択される、又は変更されることも可能である。参照点においては、回転する真空ポンプにおいて、又は回転ユニットにおいて、よって基本的に少なくとも近似的に一定の漂遊磁場のみが計測可能である。
【0014】
漂遊ベクトル場の成分の測定が、真空ポンプ又は回転ユニット内に組み込まれた永久磁石支承部において行われるとき、永久磁石支承部のローター側の部分の回転動作は、真空ポンプ又は回転ユニットのローターの回転動作に相当する。視認上の観点から、以下ではローターの回転動作又はその角度位置という。しかし、永久磁石支承部が真空ポンプ又は回転ユニットの外に配置されているとき、特に、計測装置が、永久磁石支承部のローター側の部材の為のホルダーとしてのある種のローターも有し、その回転動作を真空ポンプ又は回転ユニット内でシミュレートすることができるとき、永久磁石支承部の漂遊ベクトル場が測定されるバリエーションは排除されないべきである。つまり真空ポンプ又は回転ユニットのローターの回転動作又はその角度位置の次に話されとき、(適用可能である限り)この実施形は、測定が、測定装置による永久磁石支承部において実施され、そして真空ポンプにおいて又は回転ユニットにおいて直接実施されないバリエーションに対しても有効であるべきである。
【0015】
本発明の一つのバリエーションに従い、漂遊ベクトル場の成分の関数は、回転するローターにおいてローターの角度位置に応じて、その回転軸を中心としたローターの少なくとも一つの完全な周回に対して測定され、そしてバランスマグネットの磁場は、好ましくは、これが、参照点において測定される、回転するローターにおいて時間的に変化可能である成分部分を減少させ、又は好ましくは補償させるよう変更される。漂遊磁場の減少又は補償の後、成分は、回転するローターの参照点において、好ましくは基本的に一定の部分を一つのみを有し、しかし、時間的に変化する一つの少ない部分のみを有するか、又はこれを有さない。
【0016】
バランスマグネットの磁場は、しかし、これが、回転するローターにおける参照点で、漂遊ベクトル場成分の時間的に変化可能である部分も、一定のままである部分も、少なくとも基本的にゼロへと減少するよう変更されることも可能である。
【0017】
漂遊ベクトル場の成分は、ローターの回転軸に関して、好ましくは、軸方向、半径方向または方位学的な漂遊ベクトル場成分である。各成分に関して、参照点においてその値とその方向が測定されることが可能である。半径方向の成分は、例えばその値を測定され、そしてこれが半径方向外側に向けられているか、又は半径方向内側に向けられているか決定されることが可能である。
【0018】
特に好ましくは、参照点において、漂遊ベクトル磁場の半径方向の成分が測定される。さらに好ましくは、漂遊ベクトル磁場の軸方向の成分が測定される。好ましくは、方位学的な漂遊ベクトル場成分は測定されず、よって減少又は補償されない。
【0019】
好ましくは、減少すべき漂遊ベクトル場成分に対して、この漂遊ベクトル場成分の減少又は補償の為の少なくとも一つの独立したバランスマグネットが使用される。これは、別の漂遊ベクトル場成分の減少の為、又は補償の為には使用されない。例えば、半径方向の漂遊ベクトル場成分の減少の為に、第一のバランスマグネットが、そして軸方向の漂遊ベクトル場成分の減少の為に第二のバランスマグネットが使用されることが可能である。このメリットは、減少すべき各々に対して、この成分の減少の為によく適している一つのバランスマグネットが個々に選択されることが可能であるという点にある。例えば、半径方向の漂遊ベクトル場成分の減少の為に、それ自体、比較的多きな半径方向部分を有する漂遊ベクトル場を有するバランスマグネットが選択されることが可能である。相応して、軸方向の漂遊ベクトル場成分の減少の為、比較的大きな軸方向部分を有する漂遊ベクトル場を有し、よって半径方向の漂遊ベクトル場成分の減少に良好に適しているバランスマグネットが選択されることが可能である。
【0020】
好ましくは、磁石支承部は、リングマグネットの複数の対から形成されるか、又はリングマグネットの複数の対を有し、その際、一つの対の各一方のリングマグネットはステータに、そして当該対の他方のリングマグネットは、ローターに設けられている。
【0021】
交互に積層されたマグネットリングの上述した形態におけるターボ分子ポンプの永久磁石支承部の典型的に見出される構成に対する代替として、発明に係る方法は、モノリス形状(この形状において、補正リング以外の積層された個々のリングは、相応する多極帯磁部を有する同じ構造の磁気的な一つの中空シリンダーによって置換されることが可能である)の磁石支承部の磁場の補正の際に制限を有さない。
【0022】
バランスマグネットは、好ましくは、リングマグネット対の、ローターに設けられた一方のリングマグネットであることが可能である。
【0023】
バランスマグネットは、永久磁石支承部の磁石に追加的に設けられる永久磁石であることが可能である。バランスマグネットは、その際、好ましくは、その処理の前又は後に、真空ポンプ又は回転ユニット内のローターの側面に設けられる。ローターに設けることによって、支承部強度が高められることが可能である。更に、複数のバランスマグネットから設けられていることも可能である。
【0024】
バランスリングを有する永久磁石支承部形成の別の形状において、これは、モノリスの磁石支承部リングの部分であることも可能であり、例えば、ローターの磁気的中空シリンダーの軸方向の一つの端部に位置する極領域の一つとして形成されていることが可能である。バランスリングは、その際、もはや本来の意味でのリングではなく、磁気的中空シリンダーの部分、特に中空シリンダーのリング形状の部分である。
【0025】
好ましくは、永久磁石支承部は、少なくとも一つの磁気的中空シリンダーを有する。これは、軸方向に連続する二以上の部分を有する。その際、互いに隣接する部分は、少なくとも基本的に反対方向の磁極方向を有する。
【0026】
バランスマグネットは、中空シリンダーに対して独立したリングマグネットから形成されることが可能である。バランスマグネットは、代替として、中空シリンダーの一部内に形成されていることが可能である。バランスマグネットは、よって中空シリンダー内に統合されていることが可能である。中空シリンダーの部分によって発生される磁場は、適当な方法で、外部のバランスマグネットの磁場のように、つまり例えばバランスマグネットを形成する中空シリンダーの当該部分の形状の局所的な変更によって、及び/又は、当該部分の材料特有の永久磁石特性の局所的な変更によって、変更されることが可能である。
【0027】
中空シリンダーは、好ましくは磁気的な又は磁化可能な材料から成っている。
【0028】
本発明の好ましい発展形に従い、バランスマグネットの磁場は、バランスマグネットの形状の局所的な変更によって、特にバランスマグネットの材料の局所的な除去によって、及び/又は、バランスマグネットの材料特有の永久磁石特性の局所的な変更によって、特に少なくとも部分的な局所的な脱磁によって変更される。
【0029】
材料は、例えば研磨、穿孔、及び/又は旋削のような切削法によって、又はレーザー処理によって除去されることが可能である。
【0030】
少なくとも部分的な局所的な脱磁は、例えばレーザー光線の照射による局所的な加熱によって行われることが可能である。その際、バランスマグネットの永久磁石材料が、少なくとも部分的にその永久磁石特性を長期的に失う温度へと、バランスマグネットは局所的に加熱される。レーザー光線は、局所的に、バランスマグネットの所定の領域に向けられることが可能である。この領域を加熱し、これによって少なくとも部分的に脱磁を行うためである。
【0031】
好ましくは、漂遊ベクトル場の成分の測定された関数に基づいて、ローターの角度位置に応じて、特に少なくとも一つのレーザーによる処理装置の制御の為の処理関数が決定され、その際、処理関数内には、バランスマグネットの形状及び/又はその材料特有の永久磁石特性がそのように変更されるべきであるか特定され、そして処理装置は、当該処理関数に基づいて制御され、バランスマグネットの形状及び/又は材料特有の永久磁石特性を処理する。
【0032】
漂遊ベクトル場の成分K(φ)の関数は、成分の値及び強度を、連続的な又は非連続的な関数としてローターの角度位置φに応じて出力する。バランスマグネットが漂遊ベクトル場の成分を参照点において、少なくとも基本的に補償することができるように、本発明の好ましい態様に従い、バランスマグネットの磁場M(φ)は、その推移がローターの角度位置φに応じて少なくとも近似的に、漂遊ベクトル場成分の相補関数(独語:Komplementaeren der Funktion)に相当する:0度から360度の全ての角度に対してM(φ)≒−K(φ)であるように変更される。
【0033】
処理関数の決定の為に、特に、経験的に得られたデータの使用の下、パラメーターが計算される。これらパラメーターは、バランスマグネットが(角度位置に関して)どのように、かつどこにおいて、局所的に加熱及び/又は材料切崩される必要があるかを提供する。これによって、バランスマグネットにおいて、磁場の推移は角度位置に応じて漂遊ベクトル場成分の相補関数に相当する。演算されたパラメーターは、バランスマグネットの相応する処理のための処理装置の為の制御指令内へと変換されることが可能である。
【0034】
処理装置は、バランスマグネットの材料の材料の局所的な除去の為の装置を有することが可能である。これは例えばフライス又はドリルである。
【0035】
処理装置は、レーザーを有することが可能である。これによってバランスマグネットが、少なくとも部分的な局所的な脱磁の為に局所的に加熱されることが可能である。バランスマグネットは、レーザーによって提供されるレーザー光線の焦点に対して回転可能である、又は調整可能であることが可能であるので、バランスマグネットの処理すべき各領域は、焦点内に移動させられることが可能である。バランスマグネットの処理の為のレーザーの使用において特に有利であるのは、正確な局所的処理が可能であることである。その上、バランスマグネットの処理は、その意図される組込み位置において可能である。
【0036】
バランスマグネットの処理の前に、その磁場、特に相応する漂遊ベクトル場成分が、回転するローターにおいてローターの角度位置に応じて参照点で測定される。この測定は、好ましくは、永久磁石支承部なしで行われる。引き続いて、バランスマグネットの磁場が、相応する磁場成分が、ローターの角度位置に応じて、少なくとも基本的に漂遊ベクトル場成分の推移の相補に、ローターの角度位置にわたって相当する推移を有するよう、長期的に変更されることが可能である。
【0037】
バランスマグネットとして、特に永久磁石、特にリングマグネットが提供される。これは、減少すべき、または補償すべき漂遊ベクトル場成分中に明らかな磁化(又は帯磁部分、独語:Magnetisierung)を有する。磁石の処理によって、特に、その形状の変更によって、及び局所的な加熱によって、そのような磁石において成分が、値において、比較的大きな領域にわたって変更され、これによって永久磁石支承部の漂遊ベクトル場成分の減少又は補償が達成されることが可能である。
【0038】
バランスマグネットは、その組込位置において処理されることが可能であり、又はまず処理され、そしてその後、真空ポンプ又は回転ユニットにおけるその組込位置に配置されることが可能である。
【0039】
本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプ、又は真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの為の回転ユニットに関する。これは、本発明に従い実施される方法によって得られる、又は得られることが可能である。
【0040】
本発明は更に、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプ、または真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの為の回転ユニットに関する。これは、少なくとも一つの永久磁石支承部を有し、この支承部は、真空ポンプ又は回転ユニットの回転子及び固定子の反対方向の回転可能な支承の為に形成されており、その際、バランスマグネットの磁場は、永久磁石支承部の漂遊ベクトル磁場の少なくとも一つの成分を、真空ポンプ又は回転ユニットの外の少なくとも一つの参照点において減少させる、及び好ましくは補償するよう形成される、又は変更される。
【0041】
真空ポンプ又は回転ユニット内、特に固定子のハウジング内には、少なくともその意図される組込み位置に配置されるバランスマグネットへの一つのアクセスチャネルが形成されていることが可能である。その際、アクセスチャネルは、真空ポンプ又は回転ポンプの外から来るレーザー光線によるバランスマグネットの局所的な付勢を許容する。
【0042】
バランスマグネットは、好ましくは、ローターの軸方向端部に、特に磁石支承部のローター側の永久磁石のリング積層部の上に設けられている。これによって、バランスマグネットはレーザー光線による処理のために、良好にアクセス可能である。
【0043】
バランスマグネットに対する内容は、多極帯磁部を有する磁気的な中空シリンダーの一部に対しても同様に有効である。多極帯磁部は、バランスマグネットを形成する又は漂遊ベクトル場の減少又は補償に関しその機能を提供するものである。
【0044】
以下に本発明を添付の図面を参照しつつ例示的に説明する。