(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平滑剤成分(A)と、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)と、ポリエーテル変性シリコーン(C)と、酸化防止剤(D)とを含有する合成繊維用処理剤であって、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、合成繊維用処理剤中の平滑剤成分(A)の含有率が40〜80重量%であり、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)の含有率が10〜50重量%であり、ポリエーテル変性シリコーン(C)の含有率が0.01〜10重量%であり、 酸化防止剤(D)の含有量が0.1〜5.0重量%であり、ポリエーテル変性シリコーン(C)のHLB 値が1.0〜4.5である合成繊維用処理剤。
平滑剤成分(A)が、脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(A1)、脂肪族ポリカルボン酸アルキルエステル(A2)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明にかかる合成繊維用処理剤は、平滑剤成分(A)と、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)と、ポリエーテル変性シリコーン(C)と、酸化防止剤(D)を含む油剤成分を含有する。なお、油剤成分は公知成分を含んでいても良い。
油剤成分が平滑剤成分(A)と、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)と、ポリエーテル変性シリコーン(C)、酸化防止剤(D)の全部又はいずれかを含まない場合、合成繊維用処理剤の平滑性、制電性及びローラー上での処理剤加熱劣化物の除去性が悪化する。
【0009】
本発明における平滑剤とは、繊維に平滑性を付与し、紡糸時に繊維にかかる摩擦を低減する基剤のことである。
本発明における平滑剤成分(A)として、平滑性向上の観点から、脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(A1)、脂肪族ポリカルボン酸アルキルエステル(A2)、及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の平滑剤成分(A)が挙げられる。
【0010】
脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(A1)は、脂肪族モノカルボン酸(a1)もしくはそのエステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物または低級(炭素数1〜4)アルコールエステル]と、アルコール(b)とのエステル化反応から得られるエステルが挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸(a1)としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸(a11)と、オレイン酸、エルシン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸(a12)が挙げられる。
【0011】
脂肪族ポリカルボン酸アルキルエステル(A2)は、脂肪族ポリカルボン酸(a2)もしくはそのエステル形成性誘導体とアルコール(b)とのエステル化反応から得られるエステルが挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸(a2)としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸(a21)が挙げられる。
【0012】
硫黄原子含有脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A3)は、チオジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオジ酪酸及びチオジ吉草酸、チオジヘキサン酸などの硫黄原子含有脂肪族カルボン酸(a3)と、アルコール(b)とのエステル化反応から得られるエステルが挙げられる。
【0013】
アルコール(b)としては、例えば 炭素数8〜32のアルコール、これらのアルコールのアルキレンオキサイド1〜5モル付加物が挙げられる。
【0014】
炭素数8〜32のアルコールとしては、炭素数8〜32の脂肪族1価アルコール[脂肪族飽和1価アルコール(ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、2−デシルテトラデカノールなど)、脂肪族不飽和1価アルコール(オレイルアルコールなど)];炭素数8〜24の脂肪族多価(2〜6価)アルコール[脂肪族飽和2価アルコール(1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど)及び脂肪族飽和3〜6価アルコール(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)]である。
【0015】
アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記することがある。)が好ましく、具体的にはエチレンオキサイド(以下、EOと略記することがある。)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記することがある。)、ブチレンオキサイド(以下、BOと略記することがある。)等が挙げられる。これらのうち、乳化性の観点から、EOが更に好ましい。
また、AOの平均付加モル数は、平滑性の観点から、好ましくは1〜4モルである。
【0016】
平滑剤成分(A)の具体例としてはイソステアリルオレート、イソエイコシルステアレート、イソエイコシルオレート、イソテトラコシルオレート、イソアラキジルオレート、イソステアリルパルミテート及びオレイルオレート等;
ジオレイルアジペート、ジイソステアリネルアジペート等のアジピン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート及びジイソステアリルチオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸エステルが挙げられる。
【0017】
平滑剤成分(A)のうち、平滑性の観点から、イソエイコシルステアレート、炭素数16〜24のイソアルキルアルコールオレート[イソステアリルオレート、イソエイコシルオレートおよびイソテトラコシルオレートなど]、トリメチロールプロパントリラウレート、ジオレイルアジペート、ジイソステアリルアジペート、ジラウリルアルコールEO3モル付加物アジペート、ジオレイルチオジプロピオネート、ジイソステアリルチオジプロピオネート、2−デシルテトラデシルオレート、及びジラウリルアルコールEO3モル付加物チオジプロピオネートが好ましい。
【0018】
平滑剤成分(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、好ましくは400〜1,000であり、さらに好ましくは500〜800の範囲である。Mnが400以上である場合、平滑剤成分としての耐熱性または油膜強度が特に優れるため、十分な製糸性が得られやすく、一方、Mnが1,000以下であれば、繊維と金属間の動摩擦係数が低くなり製糸性が向上するため好ましい。
【0019】
なお、本発明において、数平均分子量Mnは、単一組成の化合物の場合は分子構造からの計算値であり、混合物の場合はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値である。例えば、GPCの測定条件として一例を挙げる。
<GPCの測定条件>
機種:HLC−8120[東ソー(株)製]
カラム:TSK gelSuperH4000
TSK gel SuperH3000
TSK gel SuperH2000
[いずれも東ソー(株)製]
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準:ポリオキシエチレングリコール
[東ソー(株)製;TSK STANDARD
POLYETHYLENE OXIDE]
データ処理装置:SC−8020[東ソー(株)製]
【0020】
本発明の油剤成分中における平滑剤成分(A)の含有率は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、40〜80重量%含有する。平滑性の観点から、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは45〜78重量%であり、さらに好ましくは50〜75重量%であり、特に好ましくは60〜70重量%である。
本発明の平滑剤成分(A)が(A)〜(D)の合計に基づいて40重量%に満たない場合では十分な平滑性が得られず、一方、80重量%を越えると処理剤の外観や乳化性に問題を生じやすくなる。
【0021】
本発明におけるポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)は、ポリアルキレングリコール鎖を有する非イオン性界面活性剤であり、ポリアルキレングリコール鎖は炭素数2〜4のAOの付加により得られる。
【0022】
AOとしては、EO、PO及びBO等が挙げられる。
このうち、乳化性の観点から、ポリアルキレングリコール鎖は、EO単独およびEOとPOの併用(ランダム付加またはブロック付加)の付加物が好ましい。
本発明におけるポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)中のAOの含有率は、併用の場合はEOの重量割合が、(B)の重量に基づいて少なくとも50%であることが好ましい
【0023】
ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(b1)高級アルコールAO付加物:炭素数8〜32の高級アルコールのEO又はEO/PO2〜100モル付加物[例えばオレイルアルコールEO5〜25モル付加物およびステアリルアルコールEO/POランダム付加物など];
(b2)高級アルコールAO付加物のカルボン酸エステル:炭素数8〜32の高級アルコールのEO又はEO/PO6〜100モル付加物と(a1)から得られる脂肪族カルボン酸エーテルエステルであって、例えばイソステアリルアルコールEO6〜20モル付加物オレートなど;
(b3)アルキルフェノールのAO付加物:アルキル基の炭素数6〜24のアルキルフェノール(オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなど)のEO4〜100モル付加物;
(b4)脂肪酸のAO付加物:炭素数8〜24の脂肪酸のEO5〜100モル付加物;
(b5)多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物:2〜8価の多価アルコールの炭素数8〜24のモノカルボン酸[上記の(a1)]エステルのEO4〜100モル付加物、および2〜8価の多価アルコールのEO6〜50モル付加物のモノカルボン酸[上記の(a1)]エステル、例えば、ソルビタントリオレートEO20モル付加物、トリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物トリオレート、ソルビトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリオレート、ペンタエリスリトールEO15〜40モル付加物トリステアレートなど;
(b6)油脂のAO付加物:ヒマシ油および硬化ヒマシ油のEO5〜50モル付加物など;
(b7)油脂のAO付加物の脂肪酸エステル:上記(b6)を、さらに炭素数8〜24の脂肪酸でエステル化したもの、例えば、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物トリオレート、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物ジオレート、ヒマシ油EO5〜25モル付加物ジステアリートなど;
【0024】
(b8)油脂のAO付加物と脂肪族ジカルボン酸とのポリエステルポリオールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル:上記(b6)と炭素数4〜24の脂肪族ジカルボン酸をポリエステル化し、さらに末端のポリオール部位を炭素数8〜24の脂肪酸[上記の(a1)]でエステル化したもので、例えば、硬化ヒマシ油EO25モル付加物とセバシン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステルが挙げられる。
【0025】
このうち、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)として、乳化性の観点から、(b1)、(b5)、(b6)が好ましい。
(b1)として、オレイルアルコールEO5〜25モル付加物、ステアリルアルコールEO/POランダム付加物が挙げられる。このうちオレイルアルコールEO7モル付加物が好ましい。
(b5)として、トリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物トリラウレート、ソルビタントリオレートEO15〜25モル付加物が挙げられる。このうち、トリメチロールプロパンEO15〜25モル付加物トリラウレート、ソルビタントリオレートEO20モル付加物が好ましい。
(b6)として、硬化ヒマシ油EO5〜25モル付加物が挙げられる。このうち硬化ヒマシ油EO10〜25モル付加物が好ましい。
【0026】
さらに、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)として、極圧性が高く油膜強度を向上させる観点から、(b8)を含むことが好ましい。
(b8)として、硬化ヒマシ油EO10〜25モル付加物とセバシン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステルや硬化ヒマシ油EO10〜25モル付加物と無水マレイン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステルが挙げられる。このうち、極圧性が高く油膜強度を保つ観点から、硬化ヒマシ油EO25モル付加物とセバシン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステル及び硬化ヒマシ油EO25モル付加物と無水マレイン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステルが好ましい。
【0027】
ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)のMnは、好ましくは500〜10,000、さらに好ましくは600〜8,000の範囲である。Mnが500以上であれば、延伸時の繊維の集束性が良好で、単糸が分離する現象が少なく、延伸性が向上する傾向にある。一方、Mnが10,000以下であれば、処理剤の外観が良好であり、均一な溶液が得られやすい。
なお、本発明において、Mnは、単一組成の化合物の場合は分子構造からの計算値であり、混合物の場合はGPCによる測定値である。例えば、GPCの測定条件として前述したものが挙げられる。
【0028】
本発明の油剤成分中におけるポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)の含有率は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、10〜50重量%含有する。処理剤の外観向上及び乳化性向上の観点から、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは12〜45重量%であり、さらに好ましくは15〜40重量%である。
ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)が、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、10重量%に満たない場合で処理剤の外観や乳化性に問題を生じやすく、50重量%を越えると平滑性が不十分となる。
【0029】
本発明の処理剤は、ポリエーテル変性シリコーン(C)を含有する。
ポリエーテル変性とは、シリコーン(C)中の主鎖及び/又は側鎖にAOを有することである。
【0030】
ポリアルキレングリコール鎖としては、EO単独及びEOとPOの併用(ランダム付加またはブロック付加)の付加物であることが好ましい。
【0031】
本発明におけるポリエーテル変性シリコーン(C)のHLB値が1〜4.5である。HLB値が4.5を超えるとローラー上での処理剤の拡展防止性が不良となる。
本発明においてHLB値はグリフィン法に基づいた計算値である。
【0032】
本発明の処理剤中に含まれるポリエーテル変性シリコーン(C)は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて0.01〜10.0重量%含有する。加熱劣化物の除去性の観点から、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、好ましくは0.03〜5.0重量%あり、さらに好ましくは0.05〜3.0重量%である。
10重量%を超えると処理剤の加熱劣化物の硬度が不良となり、0.01重量%未満ではとローラー上での処理剤の拡展防止性が悪化する。
【0033】
本発明の処理剤は、酸化防止剤(D)を含有する。酸化防止剤とは、処理剤の酸化を抑制し、処理剤の加熱劣化物の硬度を柔らかくするための薬剤である。
【0034】
本発明における酸化防止剤(D)としては、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン[イルガノックス565]、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート[イルガノックス245]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート] [イルガノックス1010]等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
また2−メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系酸化防止剤やポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤を併用してもよい。
【0035】
処理剤の酸化を抑制でき、処理剤の加熱劣化物の硬度を柔らかくするために、酸化防止剤(D)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、0.1〜5.0重量%であり、好ましくは0.3〜2.0重量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0036】
本発明の合成繊維用処理剤は、平滑剤成分(A)と、ポリアルキレングリコール型非イオン性界面活性剤(B)と、シリコーン(C)と酸化防止剤(D)とを含む油剤成分を含有し、常温又は必要により加熱(例えば30〜90℃)して均一に混合することにより得ることができる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。
【0037】
本発明の処理剤には、その性能を損なわない範囲でその他の任意の添加剤(E)を配合することができる。
添加剤(E)としては、例えば、制電剤(アルキル燐酸エステル塩及び脂肪酸石鹸など)、pH調整剤(水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ類、アルキルアミン及びアルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物などのアミン類、オレイン酸などの有機酸類など)、紫外線吸収剤、粘度調整剤及び外観調整剤などが挙げられる。
これらの添加剤(E)の含有率は、合成繊維用処理剤の重量に基づいて、10重量%以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の処理剤において、ローラー上での処理剤の拡展防止性および処理剤の加熱劣化物の硬度がローラー上での処理剤加熱劣化物の除去性を向上させる上で重要である。
【0039】
本発明の合成繊維用処理剤を鉱物油と混合して得られた鉱物油溶液で処理して本発明の合成繊維が得られる。
鉱物油溶液は本発明の合成繊維用処理剤を20〜90重量%の鉱物油と混合して得られる。
この鉱物油溶液を処理して、合成繊維用処理剤中の固形分を合成繊維の重量に基づいて、0.1〜3.0重量%となるよう付着させることができる(以下、前記処理法をストレート給油と略記する)。
【0040】
本発明の合成繊維用処理剤を水と混合して得られたエマルションで処理しても本発明の合成繊維が得られる。
エマルションは本発明の界面活性剤(B)を含む合成繊維用処理剤を70〜90重量%の水と混合して得られる。
このエマルションを処理して、合成繊維用処理剤中の固形分を合成繊維の重量に基づいて、0.1〜3.0重量%となるよう付着させることができる(以下、前記処理法をエマルション給油と略記する)。
【0041】
合成繊維用処理剤の合成繊維への付着方法としては、公知の方法等が使用でき、ローラー又はガイド給油装置等を用いて、紡糸工程、延伸工程又は巻取り前に付与することができる。本発明の合成繊維用処理剤の合成繊維に対する付着量は、処理前の合成繊維の重量に基づいて、好ましくは0.5〜1.0重量%である。
【0042】
本発明の合成繊維の処理方法としてストレート給油を用いる場合、製糸性の観点から、油剤成分の濃度は、好ましくは25〜75重量%であり、さらに好ましくは30〜70重量%である。
75重量%を超える場合には、給油ローラーあるいは給油ノズルを用いて処理剤を付与する際に糸が処理剤にとられて製糸が不安定になりやすく、製糸性改善の効果が得られにくい。油剤成分の濃度が25重量%に満たない場合、延伸前ローラー(フィードローラー)上で処理剤が飛散しやすくなり、油剤成分付着効率、防災上の両面から好ましくない。
【0043】
ストレート給油に用いる鉱物油としては例えば、精製スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。
【0044】
本発明の合成繊維の処理方法としてエマルション給油を用いる場合、製糸性の観点から、油剤成分の濃度は、好ましくは10〜30重量%であり、さらに好ましくは15〜25重量%である。
30重量%を超える場合には、給油ローラーあるいは給油ノズルを用いて処理剤を付与する際に糸が処理剤にとられて製糸が不安定になりやすく、製糸性改善の効果が得られにくい。油剤成分の濃度が15重量%に満たない場合、延伸前ローラー(フィードローラー)上で処理剤が飛散しやすくなり、油剤成分付着効率から好ましくない。
【0045】
ストレート給油は製糸性の観点からナイロン繊維を紡糸する際の処理方法として好ましい。エマルション給油は防災上およびコストの観点からその他の繊維の処理方法として好ましい。
【0046】
本発明の合成繊維用処理剤は合成繊維に用いることができる。
合成繊維は、例えば、エアバッグ、タイヤコード用ナイロン繊維及びエアバッグ、タイヤコード、シートベルト用ポリエステル繊維等の産業資材用繊維である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
2−デシルテトラデシルオレート29.2重量部、ジラウリルアルコールEO3モル付加物チオジプロピオネート42.0重量部、トリメチロールプロパンEO24モル付加物トリラウレート9.7重量部、硬化ヒマシ油EO25モル付加物とセバシン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステル14.5重量部、イルガノックス245を1.2重量部、2―メルカプトベンズイミダゾール 0.7重量部を90〜100℃で1時間攪拌混合した。均一化後、40℃以下に冷却し、牛脂アルキルアミンのEO15モル付加物1.8重量部、ポリエーテル変性シリコーン(C1−1)0.2重量部を混合し、合成繊維用処理剤1を調整した。
【0049】
<実施例2〜9及び比較例1〜5>
各成分を表1に記載の配合重量部で配合した以外は、実施例1と同様にして各成分を配合し、実施例2〜9及び比較例1〜5の合成繊維用処理剤を調整した。
【0050】
【表1】
【0051】
なお、表1における各成分は以下の通りである。
(A1−1):2−デシルテトラデシルオレート
(A1−2):トリメチロールプロパントリラウレート
(A2−1):ジラウリルアルコールEO3モル付加物のアジピン酸エステル
(A3−1):ラウリルアルコールEO3モル付加物チオジプロピオネート
(B2−1):トリメチロールプロパンEO24モル付加物トリラウレート
(B2−2):ソルビタントリオレートEO20モル付加物
(B3−1):硬化ヒマシ油EO25モル付加物
(B4−1):硬化ヒマシ油EO20モル付加物トリオレート
(B5−1):硬化ヒマシ油EO25モル付加物とセバシン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステル
(B5−2):硬化ヒマシ油EO25モル付加物と無水マレイン酸とのポリエステルポリオールとステアリン酸とのエステル
(C1−1):ポリエーテル変性シリコーン(パンフレット記載のHLB=4)
(C’1−2):ポリエーテル変性シリコーン(パンフレット記載のHLB=5)
(C’2−1):長鎖アルキル変性シリコーン
酸化防止剤(D1−1):イルガノックス245
酸化防止剤(D1−2):2―メルカプトベンズイミダゾール
酸化防止剤(D1−3):イルガノックス565
pH調整剤(E1−1):牛脂アルキルアミンのEO15モル付加物
制電剤(E2−1):2−デシルテトラデカノールのリン酸エステルカリウム塩 (モノエステル体/ジエステル体=50/50)
制電剤(E2−2):イソオクタデカノールのEO5モル付加物リン酸エステルカリウム塩 (モノエステル体/ジエステル体=50/50)
【0052】
表1に記載の実施例1〜9及び表2に記載の比較例1〜5の合成繊維用処理剤を用い、拡展防止性評価と加熱劣化物の硬度評価を行った。
【0053】
<処理剤の拡展防止性の評価方法>
処理剤の拡展防止性は以下の方法で行う。
(1)表面を金属クロムでメッキ加工した金属板[表面粗さが ISO R 1302 およびJIS B 0601で規定される。中心線平均粗さ(Rs):1.6a、最大高さ(Rmax):6.3S 、幅30mm、長さ300mmのもの)を傾斜角度を30°としたヒーター上にセットする。
(2)金属板の表面温度が230℃となるようにヒーターで加熱し、金属板の上端より10mmの位置へ、試料処理剤4mlをマイクロチューブポンプを用いて、0.35g/時で8時間かけて滴下させる。
(3)滴下終了後、金属板の滴下位置より100mm下方における処理剤の拡展幅(横への広がり)と200mm下方における処理剤の拡展幅をそれぞれ測定し、その算術平均値を処理剤拡展幅とする。
【0054】
処理剤拡展幅が低い程、処理剤の拡展防止性に優れ、処理剤の加熱劣化物の除去性が良好であることを示す。
[判定基準]
◎:油剤拡展幅が5mm以下
○:油剤拡展幅が6mm〜10mm
△:油剤拡展幅が11〜15mm
×:油剤拡展幅が15mmを超える
【0055】
<処理剤の加熱劣化物の硬度の測定方法>
(1)サンプル作成
SUS製シャーレ(直径50mm、深さ10mm)に処理剤0.5gを量り取り、250℃の循風乾燥機中で24時間焼成する。
【0056】
(2)硬度測定
処理剤の加熱劣化物の硬度はJISK5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して、手かき法によって測定される。
【0057】
作成した処理剤の加熱劣化物の硬度を測定し、次の基準で判定した。硬度が低い程、処理剤の加熱劣化物の除去性が良好であることを示す。
[判定基準]
○:鉛筆硬度が6B
△:鉛筆硬度が5B〜2B以下
×:鉛筆硬度がB以上
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜9の本発明の処理剤は、処理剤の拡展防止性及び処理剤の加熱劣化物の硬度のすべてにおいて優れていることがわかる。それに対し、比較例1〜5は性能項目をすべて満たすものはない。