特許第6244444号(P6244444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6244444
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】水処理設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/46 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B01D23/24 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-246499(P2016-246499)
(22)【出願日】2016年12月20日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 瑞生
(72)【発明者】
【氏名】島崎 雄
(72)【発明者】
【氏名】寺元 大介
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−141319(JP,A)
【文献】 特開平01−262907(JP,A)
【文献】 特開昭53−072358(JP,A)
【文献】 特開平07−100491(JP,A)
【文献】 特公昭47−016713(JP,B1)
【文献】 実開平06−031805(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/46
B01D 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を濾過する濾過部と、
前記濾過部と連通され、前記濾過部にて得られた濾過水を集水する集水部と、
前記集水部の水位より高い水位となるように逆洗水を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された逆洗水を前記集水部経由で前記濾過部に流入させて、前記濾過部を逆洗するための逆洗用サイフォン管とを備え、
前記集水部は、前記逆洗水を流入させる逆洗水流入部と、前記逆洗水を前記濾過部に向けて排出させる逆洗水排出部と、前記逆洗用サイフォン管によって供給される逆洗水の流速を抑制する流速抑制部材とを備え、
前記逆洗水排出部は、前記逆洗水流入部よりも下方に配されていて、
前記流速抑制部材は、前記逆洗水流入部から前記逆洗水排出部までの間に配されている、
水処理設備。
【請求項2】
前記流速抑制部材は、前記逆洗水流入部側に配される、
請求項1に記載の水処理設備。
【請求項3】
前記流速抑制部材は、板状部を備え、
前記板状部は、前記逆洗水流入部から前記集水部に流入される逆洗水を板面に衝突させるように配される、
請求項1または2に記載の水処理設備。
【請求項4】
前記板状部は、厚さ方向に貫通する前記逆洗水を通すための複数の貫通孔を有する、
請求項3に記載の水処理設備。
【請求項5】
前記集水部は、上部を仕切る仕切壁を有し、
前記逆洗水流入部は、前記仕切壁を厚さ方向に貫通して備えられ、
前記仕切壁は、前記逆洗水流入部に向かって上方に傾斜している、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を濾過する濾過部と、逆洗水を貯留する貯留部と、前記濾過部と連通され、前記濾過部にて得られた濾過水を集水する集水部と、前記貯留部に貯留された逆洗水を前記集水部に供給する逆洗用サイフォン管とを備える水処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原水を濾過する濾過部と、逆洗水を貯留する貯留部と、記濾過部と連通され、前記濾過部にて得られた濾過水を集水する集水部と、前記貯留部に貯留された逆洗水を前記集水部に供給する逆洗用サイフォン管とを備える水処理設備として、例えば、特許文献1に示したような重力式開放型濾過設備(開放型サイフォンフィルタ)が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の水処理設備においては、濾過部と集水部とが隣り合って配され、該集水部の上方に濾過部と隣り合うように貯留部が配されている。そして、濾過部と、貯留部および集水部とは、鉛直方向に延在する第1仕切壁で仕切られ、貯留部と集水部とは、水平方向に延在する第2仕切壁で仕切られている。
【0004】
上記水処理設備においては、第1仕切壁の下方には、該第1仕切壁の厚さ方向に貫通する第1開口部が形成され、第2仕切壁には、該第2仕切壁の厚さ方向に貫通する第2開口部が形成されている。また、逆洗用サイフォン管の一方の開口部は、第2仕切壁の第2開口部と接続され、他方の開口部は、前記貯留部内において前記一方の開口部よりも高位となるように配されている。
これにより、濾過部と集水部内部とが第1開口部経由で連通され、集水部と貯留部とが第2開口部経由で連通されるため、上記水処理設備においては、濾過部と貯留部とが集水部経由で連通されている。
【0005】
また、上記水処理設備においては、貯留部内の逆洗水をサイフォン効果により濾過部内に流入させるため、貯留部の水位は濾過部の水位よりも高位にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−262907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記水処理設備において、濾過部は、濾床を備えていて、該濾床は、原水中の懸濁物質を除去するための濾材層と、該濾材層の下方に配され、かつ該濾材層を支持する支持層と、該支持層の下方に配される集水機構とを備えている。そして、濾過部内に原水が流入されると、該原水中の懸濁物質を濾材層に捕捉させることにより、原水が清澄化される。
【0008】
濾材層における懸濁物質の捕捉量が多くなると、濾材層が目詰まりするようになるため、原水の濾過効率が低下するようになる。そのため、濾材層を含む濾床は、定期的に逆洗される必要がある。
【0009】
ところで、上記水処理設備においては、逆洗用サイフォン管の集水部側の管部と逆洗用サイフォン管の貯留部側の管部との間には水位差が生じる。より具体的には、逆洗用サイフォン管の集水部側の管部の水位よりも、逆洗用サイフォン管の貯留部側の管部の水位の方が高くなるような水位差が生じる。
【0010】
そのため、逆洗をするときに、真空ポンプなどにより逆洗用サイフォン管内の空気を抜いて、サイフォンを形成すると、貯留部側の管部の水が集水部側の管部に流入するようになる。これにより、空気が気泡として逆洗水に含まれるようになる。そのため、気泡を含む逆洗水が集水部を通って濾過部に流入するようになる。
【0011】
気泡を含む逆洗水が濾過部に流入すると、該気泡が原因となって、支持層を構成する支持粒子の層内での分布に乱れが生じるようになり、支持層から濾材が抜け落ちるようになるという問題があった。
また、浮上する気泡に濾材層を構成する濾材が付着することによって、濾材が外部に流出するようになるという問題もあった。
さらに、濾材層内に気泡が残留することによって、原水中の懸濁物質を付着させるために有効利用可能な濾材の表面積が低減したり、濾材層を通過する原水の通過スピードが速まることになって濾材層を通過することにより得られる濾過水の水質が悪化したりするという問題もあった。
【0012】
このような問題に鑑み、本発明は、逆洗用サイフォン管内の残留空気を気泡として含む逆洗水が、気泡を含んだ状態で濾過部に流入することを抑制することができる水処理設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る水処理設備は、原水を濾過する濾過部と、前記濾過部の水位より高い水位となるように逆洗水を貯留する貯留部と、前記濾過部と連通され、前記濾過部にて得られた濾過水を集水する集水部と、前記貯留部に貯留された逆洗水を前記集水部経由で前記濾過部に流入させて、前記濾過部を逆洗するための逆洗用サイフォン管とを備え、前記集水部は、前記逆洗水が流入される逆洗水流入部と、前記逆洗水が前記濾過部に向けて排出される逆洗水排出部とを備えるとともに、前記逆洗用サイフォン管によって供給される逆洗水の流速を抑制する流速抑制部材を備え、前記流速抑制部材は、前記逆洗水流入部から前記逆洗水排出部までの間に配されている。
【0014】
斯かる構成によれば、集水部の逆洗水流入部と逆洗水排出部との間に流速抑制部材が配されているので、逆洗用サイフォン管内の残留空気を気泡として含む逆洗水が、逆洗水流入部から集水部に流入したときに、該逆洗水を濾過部に流入させる前に流速抑制部材によって逆洗水の流速を低下させることができる。逆洗水の流速の低下により、逆洗水に含まれる気泡は、逆洗水の流れから外れて、集水部上方に向かって浮上するようになる。
これにより、逆洗水に含まれる気泡が、逆洗水とともに濾過部に流入することを抑制することができる。
【0015】
また、上記水処理設備においては、前記流速抑制部材は、前記逆洗水流入部側に配されていてもよい。
【0016】
斯かる構成によれば、濾過部からより遠い位置で、逆洗水の流速を低下させることができるため、逆洗水に含まれる気泡が、逆洗水とともに濾過部に流入することをより抑制することができる。
【0017】
また、上記水処理設備においては、前記流速抑制部材は、板状部を備え、前記板状部は、前記逆洗水流入部から前記集水部に流入される逆洗水を板面に衝突させるように配されてもよい。
【0018】
斯かる構成によれば、板状部の板面への衝突によって、逆洗水の流速を低下させることができるとともに、逆洗水の流れを板面に平行な方向に変更することができる。これにより、逆洗水に含まれる気泡が、逆洗水とともに濾過部に流入することをより抑制することができる。
【0019】
また、上記水処理設備においては、前記板状部は、厚さ方向に貫通する前記逆洗水を通すための複数の貫通孔を有していてもよい。
【0020】
斯かる構成によれば、逆洗水は、前記板状部の貫通孔を通り抜けて流れることができる。そのため、流速抑制部材を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有さない板状部材とした場合と比べて、逆洗水に生じる圧力損失を低下させることができる。
【0021】
また、上記水処理設備においては、前記集水部は、上部を仕切る仕切壁を有し、前記逆洗水流入部は、前記仕切壁を厚さ方向に貫通して備えられ、前記仕切壁は、前記逆洗水流入部に向かって上方に傾斜していてもよい。
【0022】
斯かる構成によれば、逆洗水に含まれる気泡は、逆洗水流入部に誘導され易くなる。そのため、逆洗水に含まれる気泡は、逆洗水流入部を経由して逆洗用サイフォン管内を浮上し易くなる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、逆洗用サイフォン管内の残留空気を気泡として含む逆洗水が、気泡を含んだ状態で濾過部に流入することを抑制することができる水処理設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】水処理設備の装置構成を示した概略図。
図2】板状部の一例を示す概略図。
図3】集水室から気泡を除去する例を示す概略図。
図4】集水室側の仕切壁の他の形状を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る水処理設備について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理設備の概略図であり、図に示すように、以下においては重力式開放型濾過設備(開放型サイフォンフィルタ)である場合を例にして、本発明の水処理設備について説明する。
【0026】
本実施形態に係る水処理設備1は、原水を外部から受け入れ、該原水を濾過する濾過部としての濾過室10と、逆洗水を貯留する貯留部としての貯槽20と、濾過室10の濾過水を集水する集水部としての集水室30とを備える。
また、水処理設備1は、集水室30内の濾過水を水処理設備1の外部に排出する流路となる流出渠40をさらに備えている。
【0027】
本実施形態に係る水処理設備1においては、濾過室10と隣り合うように集水室30が配され、集水室30の上方には、濾過室10と隣り合うように貯槽20が配され、貯槽20の下方には、集水室30と隣り合うように流出渠40が配されている。
そして、濾過室10、貯槽20、集水室30、および流出渠40は、仕切壁50〜52によって仕切られている。より詳細には、濾過室10と集水室30、および濾過室10と貯槽20は、鉛直方向に所定の高さで延在する仕切壁50によって仕切られ、貯槽20と集水室30、および貯槽20と流出渠40は、水平方向に所定の長さで延在し、かつ一側端が仕切壁50と当接する仕切壁51によって仕切られ、集水室30と流出渠40とは、鉛直方向に延在し、かつ上端が仕切壁51と当接する仕切壁52によって仕切られている。
また、仕切壁50と反対側の濾過室10の側端には仕切壁53が備えられていて、濾過室10と外部とを仕切っている。仕切壁53は、仕切壁50と平行に仕切壁50よりも低位まで延在している。
また、仕切壁50と反対側の貯槽20および流出渠40の側端には仕切壁54が備えられていて、貯槽20および流出渠40と外部とを仕切っている。仕切壁54は、仕切壁50と平行に仕切壁50の上端部と同じ高さまで延在している。
また、濾過室10、集水室30および流出渠40の底部には、仕切壁53から仕切壁54まで延在する仕切壁55が配されている。
【0028】
集水室30側の仕切壁50の下部には、仕切壁50の厚さ方向に貫通する第1開口部50aが形成されている。第1開口部50aは、濾過室10で得られた濾過水を集水室30に流入させるための濾過水流入部として機能するとともに、貯槽20内の逆洗水を集水室30経由で排出させるための逆洗水排出部として機能する。
また、仕切壁51の濾過室10側には仕切壁51の厚さ方向に貫通する第2開口部51aが形成され、仕切壁51の流出渠40側には仕切壁51の厚さ方向に貫通する第3開口部51bが形成されている。第2開口部51aは、貯槽20内の逆洗水を集水室30に流入させるための逆洗水流入部として機能する。第3開口部51bは、集水室30に集水された水を流出渠40に流入させるための集水流入部として機能する。
さらに、仕切壁51の流出渠40側には仕切壁51の厚さ方向に貫通する第4開口部51cが形成されている。第4開口部51cは、集水室30に集水された水を流出渠40に排出させるための集水排出部として機能する。
第1開口部50a、第2開口部51a、第3開口部51b、および第4開口部51cを介して、濾過室10、貯槽20、集水室30、および流出渠40は、連通されている。
【0029】
仕切壁53の上部には、外部から濾過室10内に原水を流入させるための原水導入部13が備えられている。原水導入部13は、仕切壁53を貫通して延在する導入管13aと、導入管13aの開閉を調整するための開閉弁13bとを備えている。
また、仕切壁53の下部には、逆洗開始時に濾過室10内の原水を外部に排出させて、濾過室10内の原水の水位を調整するため、あるいは逆洗後の逆洗水を濾過室10の外部に排出させるための水排出部14が備えられている。水排出部14は、仕切壁53を貫通して延在する排出管14aと、排出管14aの開閉を調整するための開閉弁14bとを備えている。
【0030】
濾過室10は、仕切壁50と平行に仕切壁50の上端部よりも低い位置まで延在し、かつ仕切壁50と所定の間隔を開けて濾過室10内に配される仕切壁56によって、原水を濾過するための濾過部11と、濾過室10内の水(原水または洗浄後の逆洗水)を外部に排出させる流路となる排液ピット12とに仕切られている。排液ピット12は、逆洗開始時においては、濾過室10内の原水の水位を調整するために、濾過室10内の原水を外部に排出させる流路となり、洗浄後においては、洗浄後の逆洗水を濾過室10の外部に排出させる流路となる。そして、濾過室10の上部は大気開放されている。
また、濾過室10は、図示しない液面センサを備えていて、該液面センサによって、濾過時に濾過室10内に流入される原水の水位および逆洗開始時の原水の水位が管理されている。
【0031】
また、濾過室10は、濾過部11の上方に、洗浄後の逆洗水を排液ピット12内に流入させるときの流路となる排水トラフ15を備えている。
【0032】
濾過部11の下方には、原水を濾過するための濾床11aが備えられている。濾床11aは、濾過室10の底面(仕切壁55)上に配された集水機構11a1と、集水機構11a1の上方に配された支持層11a2と、支持層11a2の上方に配された濾材層11a3とを備える。
【0033】
集水機構11a1は、濾材層11a3で濾過されることにより得られた濾過水を集水する。集水機構11a1は、その高さが仕切壁50に形成された第1開口部50aの上端位置よりも高くなるように配される。集水機構11a1は、例えば、複数の集水機構用の有孔ブロックを濾過部11の底部に敷き詰めることにより構成することができる。
支持層11a2は、濾材層11a3を支持する。支持層11a2は、砂利などの支持粒子を集水機構11a1上に所定の高さで層状に配することにより構成することができる。支持層11a2においては、層の下方から上方に向かって、大径の支持粒子から小径の支持粒子が順に積層されている。
濾材層11a3は、アンスラサイト、マンガン砂、活性炭などの濾材を支持層11a2上に所定の高さで層状に配することにより構成することができる。
【0034】
貯槽20は、密閉型の槽であり、仕切壁50から仕切壁54まで延在する仕切壁57によって、上端部が仕切られるように構成されている。
貯槽20内には、流出渠40から排出された濾過水などがポンプなどで汲み上げられて、逆洗水として貯留される。貯槽20内には、濾過室10内の原水の水位よりも、高い水位となる量の逆洗水が貯留される。貯槽20内の逆洗水の水位は、例えば、図示しない液面センサによって所定値以下となるように管理されている。
【0035】
貯槽20は、槽内に逆洗用サイフォン管21を備えている。逆洗用サイフォン管21の集水室30側の開口部は、集水室30と連通するように、仕切壁51の第2開口部51aに取り付けられる。逆洗用サイフォン管21の貯槽20側の開口部は、集水室30側の開口部よりも高位になるように、貯槽20内に配されている。
上述のように、貯槽20内の逆洗水の水位の方が、濾過室10内の原水の水位よりも高くされているため、濾過室10と貯槽20との間において、逆洗時に、水圧の差により逆洗用サイフォン管21を介してサイフォン効果を生じさせることができる。
また、逆洗用サイフォン管21の集水室30側の開口部は、集水室30と連通されているため、集水室30側の管部の水位は、大気開放状態においては、濾過室10内の原水の水位と同じになる。これに対して、逆洗用サイフォン管21の貯槽20側の開口部は、貯槽20内に開放されているため、貯槽20側の管部の水位は、大気開放状態においては、貯槽20内の逆洗水の水位と同じになる。
そのため、逆洗用サイフォン管21内にサイフォンが形成される前においては、貯槽20側の管部の水位の方が集水室30側の管部の水位よりも高位になっている。
【0036】
逆洗用サイフォン管21は、逆洗用サイフォン管21内を排気する経路となる排気管21aと、逆洗用サイフォン管21内を排気する真空ポンプ21bとを備えている。
逆洗用サイフォン管21は、排気管21aを介して、真空ポンプ21bと接続されている。
排気管21aは、逆洗用サイフォン管21から真空ポンプ21bに至る管路において、逆洗用サイフォン管21内を真空引きするのに寄与する第1管部21a1と、逆洗用サイフォン管21を大気開放するのに寄与する第2管部21a2とに分岐される。第1管部21a1には真空弁21cが配され、第2管部21a2には大気開放弁21dが配されている。
逆洗用サイフォン管21内にサイフォンを形成する場合には、大気開放弁21dを閉め、真空弁21cを開け、真空ポンプ21bを起動させることにより、逆洗用サイフォン管21内の空気を管外に排出させる。
また、逆洗用サイフォン管21を大気開放する場合には、真空ポンプ21bを停止させ、真空弁21cを閉じ、大気開放弁21dを開けることにより、真空を破る。
上述のように、逆洗用サイフォン管21内にサイフォンが形成される前においては、他方側管部の水位の方が一方側管部の水位よりも高位にあるため、真空ポンプ21bで逆洗用サイフォン管21内の空気を管外に排出させるときに、他方側管部内の水位の方が一方側管部内の水よりも、逆洗用サイフォン管21の頂部に早く到達し、他方側管部内の水が一方側管部内に流入する(供給される)ようになる。その結果、一方側管部と他方側管部の水位差に相当する空気が逆洗水中に気泡として含まれるようになり、気泡を含む逆洗水が集水室30内に流入する(供給される)ようになる。
【0037】
集水室30には、第1開口部50a(逆洗水排出部)から第2開口部51a(逆洗水流入部)までの間に、逆洗用サイフォン管21によって供給される逆洗水の流速を抑制する流速抑制部材31が備えられている。流速抑制部材31は、第2開口部51a側に備えられることが好ましい。
流速抑制部材31としては、図2に示すように、板状部31aを備えるものが好ましく、板状部31aは、第2開口部51aから流入される逆洗水を板面に衝突させるように配されることが好ましい。
また、板状部31aは、厚さ方向に貫通する逆洗水を通すための複数の貫通孔を有することが好ましい。
本実施形態においては、流速抑制部材31として、板状部31aと板状部31aの周囲を囲み、かつ一方側に延びる壁部31bとを備えるものが用いられ、板状部31aおよび壁部31bは、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有している。
また、本実施形態においては、流速抑制部材31は、第2開口部51aと板状部31aの板面とが向かい合うように配されていて、壁部31bの開放側が仕切壁51に固定されている。
板状部31aは、逆洗用サイフォン管21を管軸に垂直な方向に切断したときの断面積よりも大きな面積を有することが好ましい。
板状部31aの形状は特に限られない。例えば、矩形形状を含む多角形状であってもよいし、楕円形状を含む円形状であってもよい。
厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有する板状部31aおよび壁部31bとしては、金属製の織物や編物(金網)、パンチングメタルなどを用いることができ、中でも、パンチングメタルを用いることが好ましい。
該パンチングメタルは、平均開口径(平均開口面積と同じ面積の真円の直径)が5mm〜20mmであることが好ましく、開口率(単位面積当たりの開口面積の割合)が20%〜80%であることが好ましい。
【0038】
流出渠40は、濾過室10で濾過されることによって得られ、かつ集水室30に流入した濾過水を受け入れて、水処理設備1の外部に排出させるように構成されている。
流出渠40は、集水室30内の濾過水を流出渠40に流入させる濾過水用サイフォン管41を備えている。より具体的には、流出渠40は、濾過水用サイフォン管41の流出渠40側の開口部を内部に配することにより、濾過水用サイフォン管41を備えている。濾過水用サイフォン管41は、流出渠40側の仕切壁51の第4開口部51cを通って、流出渠40の上方に向かって延び、仕切壁57よりも低い位置でUターンし、さらに集水室30側の仕切壁51に向かって下方に延びて、集水室30側の開口部が、第3開口部51bに接続されている。これにより、流出渠40は集水室30と連通される。
また、流出渠40は、仕切壁55から鉛直上方に向かって仕切壁51よりも低い位置まで延在する堰42を備えている。流出渠40は、堰42によって、濾過水用サイフォン管41からの濾過水を受け入れる第1濾過水受入部43と、第1濾過水受入部43に受け入れられた濾過水のうち、堰42を越えた濾過水を受け入れる第2濾過水受入部44とに仕切られている。第1濾過水受入部43に受け入れられた濾過水は、堰42を越えて第2濾過水受入部44に流入されるようになっている。
また、流出渠40は、第1濾過水受入部43から堰42を越えて第2濾過水受入部44に流入される濾過水を水処理設備1の外部に排出するための濾過水排出管45を備えている。濾過水排出管45は、仕切壁54の下方に備えられていて、仕切壁54を厚さ方向に貫通して延在している。
【0039】
次に、本実施形態に係る水処理設備1の作動例について説明する。
以下では、まず、水処理設備1によって、原水導入部13を経由して濾過室10内に流入させた原水を濾過部11によって濾過する例を説明し、次に、貯槽20内に貯留された逆洗水を用いて濾過部11の濾床11aを洗浄する例を説明する。
また以下では、原水を濾過部11によって濾過する工程を濾過工程とし、逆洗水を用いて濾過部11の濾床11aを洗浄する工程を逆洗工程として説明する。
【0040】
(濾過工程)
原水導入部13の開閉弁13bを開け、濾過室10の濾過部11に原水を流入させて、濾過工程を開始する。濾過部11に流入された原水は、その水頭圧によって、濾床11aの濾材層11a3を通過する。原水が濾材層11a3を通過するときに、原水に含まれる懸濁物質が濾材層11a3に捕捉されることにより、原水が清澄化されて、濾過水が得られる。
該濾過水は、支持層11a2および集水機構11a1を順に通過して、集水室30内に流入される。集水室30内に流入された濾過水は、貯槽20と集水室30とを仕切る仕切壁51まで到達すると、濾過水用サイフォン管41を通って、流出渠40の第1濾過水受入部43内に流入される。第1濾過水受入部43内に流入された濾過水の水位が上昇し、該水位が堰42の上端に達すると、第1濾過水受入部43内の濾過水は、堰42を越えて第2濾過水受入部44内に流入される。第2濾過水受入部44内に流入された濾過水は、濾過水排出管45を通って外部に排出される。
濾過工程の進行に伴って、濾材層11a3における懸濁物質の捕捉量が多くなると、濾材層11a3は目詰まりを起こし、濾過室10内の原水の水位が上昇するようになる。濾過室10内の原水の水位が所定値に達したときに、原水導入部13の開閉弁13bを閉じて、濾過工程を終了し、逆洗工程へと切り替える。
【0041】
(逆洗工程)
原水導入部13の開閉弁13bを閉じた後、水排出部14の開閉弁14bを開けて、濾過室10内の原水を濾過室10の外部に排出する。濾過室10内の原水の水位を所定値まで下げた後、逆洗工程を開始する。逆洗工程を開始するときの、濾過室10内の原水の水位は、原水の水質によっても異なるが、通常は排水トラフ15よりも下方の位置とされる。
次に、大気開放弁21dを閉じ、真空弁21cを開けて、真空ポンプ21bを起動する。そして、逆洗用サイフォン管21内の空気を管外に排出する。このとき、他方側管部の水位が逆洗用サイフォン管21の頂部に到達すると、一方側管部に他方側管部内の逆洗水が流入し、逆洗用サイフォン管21内に残留した空気を気泡として含む逆洗水が、集水室30に向かって流下する。該逆洗水が流速抑制部材31の板状部31aに衝突することによって、逆洗水に含まれる気泡は、集水室30側の仕切壁51に向かって上昇し、その表面に滞在されるようになる。そして、気泡を含まない逆洗水が濾過室10内に流入される。
貯槽20内の逆洗水の水位が、他方側管部の開口部の位置を下回ると、逆洗用サイフォン管21内に大気中の空気が流入して、逆洗用サイフォン管21内にサイフォンが形成されなくなる。これにより、貯槽20から集水室30内への逆洗水の流入が停止される。逆洗水の流入が停止され、排液ピット12内の逆洗水が水排出部14から外部に排出された後、水排出部14の開閉弁14bを閉じて、逆洗工程を終了する。
【0042】
逆洗工程の終了後、図3に示すように、集水室30側の仕切壁51表面に滞在された気泡を、大気開放弁21dを開けることにより大気中に排出する。その後、原水導入部13の開閉弁13bを開けて、濾過室10に所定の水位まで原水を導入することにより、濾過工程を再度開始することができる。
【0043】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態および変形が可能とされたものである。また、上述の実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0044】
上記実施形態では、流速抑制部材31として、板状部31aと板状部31aの周囲を囲み、かつ一方側に延びる壁部31bとを備えるとともに、板状部31aおよび壁部31bが、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有している例について説明したが、流速抑制部材31はこの例に限られるものではない。
例えば、流速抑制部材31は、板状部31aのみで構成されていて、板状部31aは、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有さないものであってもよい。
【0045】
上記実施形態では、仕切壁51の集水室30側の形状を平坦面にする例について説明したが、仕切壁51の集水室30側の形状はこれに限られるものではない。
例えば、集水室30側の仕切壁51の形状は、図4に示すように、第2開口部51a(逆洗水流入部)に向かって上方に傾斜するような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1:水処理設備、10:濾過室、11:濾過部、12:排液ピット、13:原水導入部、14:水排出部、15:排水トラフ、20:貯槽、21:逆洗用サイフォン管、30:集水室、31:流速抑制部材、40:流出渠、41:濾過水用サイフォン管、42:堰、43:第1濾過水受入部、44:第2濾過水受入部、45:濾過水排出管、50〜57:仕切壁、
11a:濾床、11a1:集水機構、11a2:支持層、11a3:濾材層、
13a:導入管、13b:開閉弁、14a:排出管、14b:開閉弁、21a:排気管、21a1:第1管部、21a2:第2管部、21b:真空ポンプ、21c:真空弁、21d:大気開放弁、31a:板状部、31b:壁部、50a:第1開口部、51a:第2開口部、51b:第3開口部、51c:第4開口部
【要約】
【課題】 逆洗用サイフォン管内の残留空気を気泡として含む逆洗水が、気泡を含んだ状態で濾過部に流入することを抑制することができる水処理設備を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理設備は、原水を濾過する濾過部と、前記濾過部の水位より高い水位となるように逆洗水を貯留する貯留部と、前記濾過部と連通され、前記濾過部にて得られた濾過水を集水する集水部と、前記貯留部に貯留された逆洗水を前記集水部経由で前記濾過部に流入させて、前記濾過部を洗浄するための逆洗用サイフォン管とを備え、前記集水部は、前記逆洗水が流入される逆洗水流入部と、前記逆洗水が前記濾過部に向けて排出される逆洗水排出部とを備えるとともに、前記逆洗用サイフォン管によって供給される逆洗水の流速を抑制する流速抑制部材を備え、前記流速抑制部材は、前記逆洗水流入部から前記逆洗水排出部までの間に配されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4