特許第6244449号(P6244449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244449
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】小型X線発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/16 20060101AFI20171127BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20171127BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20171127BHJP
   H01J 35/06 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01J35/16
   H01J35/00 Z
   H01J35/08 F
   H01J35/08 B
   H01J35/06 B
   H01J35/06 C
   H01J35/06 E
【請求項の数】27
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-502627(P2016-502627)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-516280(P2016-516280A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】US2014027795
(87)【国際公開番号】WO2014143718
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】13/839,494
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515255917
【氏名又は名称】トライボジェニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TRIBOGENICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・ジー・カマラ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・エイ・ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ザッカリー・ジェイ・ガムリエリ
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/125492(WO,A2)
【文献】 特開2007−311195(JP,A)
【文献】 特開平09−045492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J1/00−1/12
1/32−1/98
5/00−9/18
19/00−19/06
19/08−21/36
29/36−29/45
31/08
31/26−33/04
40/00−49/48
99/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線放射装置であり、
低流体圧力環境を維持するべく構成されたハウジングであって、X線を実質的に通す窓を有する第一壁、及び、電気絶縁材料を備える外面を備える部分を有する第二壁を有するハウジングと、
前記ハウジング内の電子ターゲットと、
前記電気絶縁材料に摩擦接触する接触材料であって、前記電気絶縁材料との摩擦接触が電荷不均衡を生じさせる材料を備える接触材料と、
前記電気絶縁材料に連結されて、前記摩擦接触により生じる負電荷が蓄積する前記ハウジング内の帯電性材料と
を備えるX線放射装置。
【請求項2】
前記電気絶縁材料を備える前記第二壁の前記部分がさらに、前記ハウジング内で前記帯電性材料として機能して前記電気絶縁材料の内部で該電気絶縁材料に接触する金属を備え、前記金属が、前記ハウジングの他の部分から電気的に絶縁されている請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項3】
前記電子ターゲットが、X線を実質的に通す前記窓の内面上の金属である請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項4】
前記金属が、X線を実質的に通す前記窓上にスパッタされた金である請求項3に記載のX線放射装置。
【請求項5】
前記ハウジングの前記電気絶縁材料に近接して電子源として機能する加熱可能なフィラメントをさらに備える請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項6】
前記フィラメントが、タングステン・フィラメントである請求項5に記載のX線放射装置。
【請求項7】
前記電子ターゲットが、前記ハウジング内に、電子が衝突したときにX線を発生させる金属を備え、該金属は、前記電気絶縁材料を備える前記外面を有する前記部分からの電子が衝突するとともに、その衝突により発生するX線の少なくとも一部が、X線を実質的に通す前記窓を通って抜け出るように向けられた少なくとも一の表面を有するべく配置される請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項8】
前記ハウジング内で前記帯電性材料として機能するとともに、前記電気絶縁材料を備える前記外面を有する前記第二壁の前記部分に近接する電界放出先端部をさらに備える請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項9】
前記電界放出先端部が金属先端部を備える請求項8に記載のX線放射装置。
【請求項10】
前記電界放出先端部がカーボンナノチューブを備える請求項8に記載のX線放射装置。
【請求項11】
前記電気絶縁材料が誘電体を備える請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項12】
前記電気絶縁材料がポリイミドフィルムを備える請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項13】
前記電気絶縁材料がメンブレンを備える請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項14】
前記帯電性材料が網である請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項15】
前記電気絶縁材料を備える外部を有する前記第二壁の部分と少なくとも一部を共有する少なくとも一の壁を有する第二コンテナをさらに備え、前記第二コンテナが前記接触材料を含む請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項16】
前記第二コンテナが、放出を制御するための制御可能な環境をもたらす請求項15に記載のX線放射装置。
【請求項17】
前記第二コンテナがさらに、誘電媒体を含む請求項15に記載のX線放射装置。
【請求項18】
前記誘電媒体が六フッ化硫黄である請求項17に記載のX線放射装置。
【請求項19】
前記電子ターゲットが金属を備える請求項1に記載のX線放射装置。
【請求項20】
ハウジングからX線を放射する方法であって、前記ハウジングが、X線を実質的に通さず、低流体圧力にあるチャンバーを有し、
前記ハウジングの外面を接触表面に摩擦接触させ、前記外面及び前記接触表面が異なる材料からなり、前記外面により、該外面に連結された前記ハウジング内の帯電性材料に負電荷を蓄積させつつ、当該摩擦接触により電荷不均衡を発生させ、
前記接触表面に接触する外面に近接する前記ハウジングの内面の周囲から、前記ハウジングの窓に向かう電子の流れを可能にし、
前記ハウジングの前記窓に近接する材料内でX線を発生させ、前記ハウジングの前記窓がX線を実質的に通す方法。
【請求項21】
前記X線が、前記窓の内面上の前記材料内で発生する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記窓の前記内面上の前記材料が金属である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記接触表面に接触する前記外面に近接する前記内面に近接する前記ハウジングの内部で、電子源として機能するフィラメントを加熱することをさらに備える請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ハウジングの前記外面からの前記接触表面の引き離し、及び、前記ハウジングの前記外面への前記接触表面の摩擦接触を繰り返し行うことをさらに備える請求項20に記載の方法。
【請求項25】
X線の放射のための装置であり、
ハウジングであって、該ハウジング内でチャンバーにおける低流体圧力を維持するべく構成され、X線を実質的に通す窓を含むが、他の部分でX線を実質的に通さないハウジングと、
前記ハウジングの表面との前記ハウジングの外部の材料の接触の変化により、前記ハウジングの部分上で電荷不均衡を発生させる手段と、
前記ハウジングの部分に連結されて、前記接触の変化により生じる負電荷が蓄積する前記ハウジング内の帯電性材料と、
前記ハウジング内の電子ターゲットと、
前記ハウジング内で電子源として機能する、実質的に前記電子ターゲットと前記ハウジングの部分との間のフィラメントと
を備える装置。
【請求項26】
前記電子ターゲットが、前記窓の内面上の材料である請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記電子ターゲットが、前記ハウジングの前記内面上の金属である請求項26に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、X線の発生に関するものであり、より詳細には、摩擦帯電X線トランスミッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線は様々な方法に用いられる。X線は、医療もしくは他の撮像用途、材料分析を含む結晶学関連の用途または、他の用途に用いられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
X線は、材料内での内殻電子放射又は電子ブレーキ(制動放射(bremmstrahlung))により発生することが一般的である。歴史的には、自然現象を介すること以外に、X線は一般に、制動放射を通してX線を発生させる少ない割合の電子で、金属などの材料内にて電子を加速させること、又は、材料内に存在する電子を内部軌道から追い出すことにより発生し、たとえばK殻軌道では、高エネルギー軌道にある電子が低エネルギー軌道に移行して、X線が発生する。しかしながら、有用な量のX線を発生させるための電子の加速は通常、高出力の電気エネルギー源を必要とし、これには巨大な設備が含まれ得る。
【0004】
X線はまた、制御環境下における材料間の機械的接触の変化、たとえば、圧力検知接着テープの剥ぎ取り、又は、真空チャンバー内でのいくつかの材料の機械的接触により発生し得る。しかしながら、材料間の機械的接触の変化は一般に、真空チャンバー内の可動部分を含み、また、かかる可動部分のいくつかが互いに摩擦接触することも必要である。可動部分及び摩擦接触は、真空チャンバー内で自由破片(free debris)の生成及びガス放出をもたらし、そのような装置の作動に影響を及ぼし得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の側面は、小型なデザインとすることができるX線エミッタを提供する。いくつかの実施形態では、内部に低流体圧力環境を維持する小さなハウジングが、内部が金属で覆われ、X線を実質的に通す窓を有する第一壁と、電気絶縁体、好ましくは誘電材料からなる外面の少なくとも一部を有する第二壁とを有する。窓上の当該金属は、電子ターゲットを与え、また、あるいは、電子ターゲットは、代わりに、ハウジング内に配置され得る。上記の壁の部分は、その自身が誘電材料とすることができ、あるいは、上記の壁の部分は、誘電体外部被覆を有し、金属であるか、又は、ハウジングの残部から電気的に絶縁されたものとすることができる。接触材料は、好ましくは高い摩擦電気系であり、外部被覆との接触が変化し、好ましくは接触の変化は間欠的な接触であると良い。フィラメントは、好ましくは加熱可能で、かつ好ましくは金属製であって、ハウジング内にあり、たとえば、第二壁に近接する。作動時に、接触材料と誘電体との間の接触、接触の除去は、第二壁の部分、特に第二壁の部分の内面上に、負電荷を発生させる。負電荷に関連する電子及び/又は、フィラメントによりもたらされる電子は移動し、X線を実質的に通す窓の内部における金属に影響を及ぼすことがあり、これは窓を通って放射し、または送られる。
【0006】
この発明のいくつかの側面は、X線放射装置であって、低流体圧力環境を維持するべく構成されたハウジングで、X線を実質的に通す窓を有する第一壁及び、電気絶縁材料を備える外面を備える部分を有する第二壁を有するハウジングと、前記ハウジング内の金属からなる電子ターゲットと、前記ハウジング内の帯電性材料と、前記電気絶縁材料と摩擦接触し、前記電気絶縁材料より低い摩擦電気系の接触材料とを備えるX線放射装置を提供する。
【0007】
この発明のいくつかの側面は、ハウジングからX線を放射する方法であって、前記ハウジングが、X線を実質的に通さず、低流体圧力のチャンバーを有し、前記ハウジングの外面を接触表面に摩擦接触させ、前記外面及び前記接触表面が異なる材料からなり、それにより、前記外面による負電荷の蓄積とともに、当該摩擦接触で電荷不均衡を発生させること、前記接触表面により接触される外面に近接する前記ハウジングの内面の周囲から、前記ハウジングの窓に向かう電子の流れを可能にすること、前記ハウジングの前記窓に近接するX線を発生させ、前記ハウジングの前記窓が、X線を実質的に通すことを備える方法を提供する。
【0008】
この発明のいくつかの側面では、X線の放射のための装置であり、ハウジングであって、該ハウジング内のチャンバー内で低流体圧力を維持するべく構成され、X線を実質的に通す窓を含むが、他ではX線を実質的に通さないハウジングと、前記ハウジングの表面との前記ハウジングの外部の材料の接触の変化により、前記ハウジングの部分上で電荷不均衡を発生させる手段と、前記ハウジング内の電子ターゲットと、前記ハウジング内で、実質的に前記電子ターゲットと前記ハウジングの部分との間のフィラメントとを備える装置を提供する。
【0009】
この発明のこれらの又は他の側面は、この開示を検討すると、さらに詳細に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の側面に従うX線放射装置の側面を示す。
図2】この発明の側面に従う接触表面に接触するハウジングの壁の部分の断面を示す。
図3】この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。
図4】この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。
図5】この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。
図6】この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。
図7図6のX線放射装置の側面を示す。
図8】この発明の側面に従うX線発生装置の作動のモードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、この発明の側面に従うX線透過装置の側面を示す。装置は、ハウジング111を含み、ハウジングは、低流体圧力環境を維持するべく構成される。いくつかの実施形態では、低流体圧力環境は、200mTorr未満の圧力、いくつかの実施形態では50mTorr未満の圧力、そしていくつかの実施形態では10mTorr未満の圧力での環境である。いくつかの実施形態では、アルゴンなどのガスがハウジング内に含まれ、このガスは、逆帯電表面から又は帯電表面から接地への電流フローの制御を補助する働きをし、また、当該ガスは、電子の源として働くことができる。ガスの分圧は、たとえば50mTorrとすることができ、様々な実施形態では、1mTorr〜200mTorrとすることができる。いくつかの実施形態では、ハウジングは通常、セラミック材料からなる。
【0012】
ハウジングは、電気的に絶縁の外面を有する少なくとも一部を有する第一壁113を有し、いくつかの実施形態ではポリイミドフィルム、たとえばカプトンであり、好ましくは誘電材料である。いくつかの実施形態では、電気絶縁外部を有する壁の部分は、電気絶縁外部から形成されるメンブレンである。いくつかの実施形態では、壁の部分は金属を備え、ハウジングの他の部分から、ハウジングの内部に向けて、ハウジングの外部上の金属を被覆する電気絶縁材料で電気的に絶縁される。いくつかの実施形態では、ハウジングの部分は金属のグリッドを備え、これは、いくつかの実施形態では、他の材料内もしくは上にあり、又はその上に浮遊され得る。いくつかの実施形態では、壁の部分は、たとえばガラスまたはセラミック材料などの非金属を備える。
【0013】
接触表面115は、ハウジングの電気絶縁外部との接触が変化する。接触表面は、好ましくは、接触表面と電気絶縁材料との間の接触の変化が電荷不均衡を生じさせるような材料からなる。好ましくは、その材料は、電気絶縁材料がより負に帯電することになるようなものとする。いくつかの実施形態では、その材料は、当該電気絶縁材料より高い摩擦電気系である。接触表面は、電気絶縁材料の変動する表面領域にわたって、接触表面の摩擦接触により、電気絶縁材料との接触が変化し得る。このことは、たとえば、時間とともに電気絶縁材料の異なる部分と接触する接触表面の異なる部分を有し、該表面の繰り返しの接触及び分離により、又は、前述のいくらか又は全てにより達成され得る。
【0014】
接触表面は、様々な方式で移動され、又は駆動され得る。いくつかの実施形態では、また図1に典型的に示すところでは、接触表面は、回転方式で駆動されることができ、接触表面は、軸119によりモーター117に連結される。いくつかの実施形態では、接触表面は、直線運動装置により駆動されることがあり、その運動の方向は、たとえば、電気絶縁材料の表面と平行、又は該表面と垂直である。いくつかのそのような実施形態では、直線移動は、たとえばモーターにより駆動される振動とすることができ、モーターは、定期的な時限の方向の逆転を有し、又は、モーターは、適切な方向逆転リンクにより接触表面に連結される。いくつかのそのような実施形態では、直線移動は、ベルトもしくはバンドの循環により適用されることができ、ここでは、ベルトもしくはバンドは、接触表面として働き、又はそれを支持する。いくつかの実施形態では、接触表面は、手動装置(hand operated devices)により駆動されることがあり、また、いくつかの実施形態では、手動装置(hand driven devices)により駆動されることがある。
【0015】
作動時には、接触表面と電気絶縁材料との接触の変化は、電気絶縁材料の負の帯電又は電子の蓄積をもたらす。電気絶縁材料が、ハウジングの壁の部分を形成するメンブレンである実施形態では、メンブレンは、負に帯電される。電気絶縁材料が、第二壁を形成し、ハウジングの他の部分から電気的に絶縁されたハウジングの箇所、たとえば金属箇所用の外部カバーである実施形態では、当該金属は負に帯電される。負電荷をもたらす電子は移動し、前記ハウジング内の電子ターゲットに衝突し得る。
【0016】
図1の実施形態では、電子ターゲットは、ハウジングの窓121の内面上の金属である。当該金属は、金とすることができ、たとえばスパッタリングにより窓上に蒸着し得る。窓はX線を実質的に通し、たとえばベリリウムからなるものとすることができる。図1に示すように、窓は、外部部分を形成する電気絶縁材料を有する壁とは反対のハウジングの壁上にある。電子が金属に衝突したとき、いくらかのX線が発生し得る。X線は、ベリリウム窓を通ってハウジングから抜け出ることができ、それ故に、装置は、X線放射もしくは透過能力を有するX線発生器として機能する。
【0017】
図2に、たとえば図1の装置のいくつかの実施形態のように、電気絶縁材料217と接触する接触表面215を示す。図2では、軸211はベース213を駆動する。ベースは、いくつかの実施形態では木製とすることができる。接触表面215は、ベースに固定され、それにより、ベースに沿って駆動される。接触表面は、たとえば石英とすることができる。接触表面は、電気絶縁材料、たとえばカプトンとの接触が変化する。カプトンは固定されて、金属219用の外面を与える。カプトンが、接触表面との接触の変化に起因して摩擦帯電すると、負電荷は、カプトン表面から離れた金属の表面、すなわち、ハウジングの内部に晒される金属の表面に蓄積する。
【0018】
図3に、この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。図3の装置は、図1の装置に類似して、低流体圧力環境を維持するべく構成されたハウジング311を含む。ハウジングは、誘電材料のメンブレン313を含む一の壁の部分を含み、いくつかの実施形態では、誘電材料は、金属の外部を覆い、ハウジングの残部から電気的に絶縁され、一の壁の部分の残部を形成する。軸315はベース317を駆動し、ここでは、ベースは、
ハウジングの誘電体との接触が変化する接触材料321を有し、それに固定される。軸は、図3に示すように、モーター319により駆動される。
【0019】
メンブレンの内部及び、メンブレンの下層の金属の内部は、存在する場合、電界放出先端部323(field emitting tips 323)である。電界放出先端部は、たとえば、鋭い金属先端部またはカーボンナノチューブとすることができる。いくつかの実施形態では、電界放出先端部は、金属片からメンブレンの内部に延びる。いくつかの実施形態では、そのような金属片が複数あり、これらは、いくつかの実施形態では、互いに電気的に絶縁されている。いくつかの実施形態では、一の電界放出先端部が各金属片から延び、いくつかの実施形態では、一以上の電界放出先端部が各金属片から延び、またいくつかの実施形態では、複数の電界放出先端部が各金属片から延びる。また、いくつかの実施形態では、導電性網が、電界放出先端部上に配置されることがあり、ここでは、比較的低い電圧、いくつかの実施形態では100V未満が、導電性網に印加されて、電界放出先端部からの電子の放出を制御する働きをする印加電圧の制御とともに、電界放出先端部からの電気の放電を防止することを補助する。たとえば、タングステンもしくは六ホウ化ランタン(Lanthanum Hexoboride)又は、酸化バリウムカソードのような他のカソード等の加熱可能なフィラメント325もまた、ハウジングの内部にあり、好ましくは、電界放出先端部に近接する。加熱可能なフィラメントは、ハウジング内で、ポート(図示せず)により、たとえばバッテリー等のエネルギー源に連結することができる。加熱可能なフィラメントは、電子の源をもたらし、たとえば、これは、外部電源からの制御電力下にあるものとすることができる。
【0020】
ハウジングの他の壁は、図3で、誘電体を有する壁の反対に示し、窓327を含む。窓それ自体は、X線を実質的に通し、たとえばベリリウム等から形成される。しかしながら、図3の実施形態では、窓の内面は、たとえば金などの金属で覆われており、電子ターゲットを形成する。
【0021】
図3の装置の作動は、メンブレンの負の帯電をもたらし、ここでは、メンブレン及びフィラメントからの電子は移動して、窓の表面上の電子ターゲットに衝突する。このプロセスで生じるX線は、窓を通って移動し、それにより、装置がX線放射源になる。
【0022】
図4は、この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を半断面図で示す。図4の装置は、図3の装置と類似し、低流体圧力環境の維持をもたらすハウジング411と、ハウジングの一方側におけるベリリウム窓421と、ハウジングの反対の壁の部分を形成するメンブレン413とを有する。接触材料415は、メンブレンより高い摩擦電気系であり、直線状にスライドしてメンブレンと接触し、メンブレンの摩擦帯電をもたらす。電界放出先端部417は、メンブレンからハウジングの内部に向けて延び、ここでは、フィラメント419は、たとえば加熱可能であり、電界放出先端部の先端部と窓との間で、好ましくは電界放出先端部の近くにあり、又はそれに近接する。メンブレンの負の摩擦帯電は、電界放出先端部の先端部での負電荷の蓄積を可能にし、実質的に先端部について負の表面電荷を与えるとともに、先端部がカソードとして機能することを可能にする。窓の金属製の内面423はアノードとして機能し、フィラメントから電子を受け取る。電子が、電子ターゲットとしても機能する金属製の内面に衝突したとき、X線が発生して窓を通って送られる。
【0023】
図5は、この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。図5の装置は、図4のそれと類似するが、窓が金属コーティングを有しない点で異なる。代わりに、電子ターゲットは、ハウジングの内部にあり、窓と接触しない。
【0024】
図5の装置では、ハウジングは、一方の壁上に窓525を有し、ここでは、窓は実質的にX線を通す。メンブレン、たとえばカプトンは、他方の壁の一部を形成し、他方の壁は、窓を含む壁の反対ではない。接触材料515はスライドして、メンブレンとの接触を変化させ、接触材料は、メンブレンより高い摩擦帯電系である。電界放出先端部は、メンブレンのすぐ内部にあり、フィラメント519は、電界放出先端部の内部にある。
【0025】
固体の電子ターゲット521は、たとえば金属からなり、ハウジングの内部にある。電子ターゲットは、フィラメント/電界放出先端部/メンブレンと窓との両方の見通し線(a line of sight)を有する表面523を含む。装置が作動するとき、フィラメントからの電子が電子ターゲットと衝突し、X線を発生させ、そのいくらかは窓を通って抜け出る。いくつかの実施形態では、電子ターゲットは、表面523がより少ない電子を受け取ることができるように回転され、又は、より少ないX線を窓に向けて放射するように回転されることが有利であり、このことは、窓を通って流動するX線の制御の向上を可能にする。同様に又は追加的に、いくつかの実施形態では、電子ターゲットは、窓の近くに、又はそれから遠くに移動されることができ、このこともまた、窓を通って流動するX線の制御の向上を可能にする。メンブレンからターゲットの距離も変化させることができ、いくつかの実施形態では、出力X線エネルギーを制御する手段として、衝突する電子の最大エネルギーを変化させるように変化させることができる。ターゲットの材料は、特定のX線スペクトルをもたらすよう選択することができ、たとえば、モリブデンのような材料の特有のX線の線(the characteristic x-ray lines)である。また、いくつかの実施形態では、ハウジングの部分及び接触表面と電界放出先端部とは、代替的に又は追加的に、逆に配置することができ、ここでは、代替的に又は追加的に、これらのアイテムは、ハウジングの反対側に配置され、接触表面及びハウジングの部分の外部の材料は逆である。材料が逆であると、作動時に正の電荷が発生し、正の電荷は、フィラメントからハウジングの反対側に電子を引き付け、ここでは、いくつかの実施形態では、電子ターゲットは、そのような電子の経路に電子ターゲットがある。しかしながら、いくつかの実施形態では、電子ターゲットは、他のいずれかの場所、たとえば、窓の内面上とすることができ、この場合、電子ターゲット内で、X線を発生させる電子が散乱して戻されると考えられ、X線は窓を通って放射される。
【0026】
図6に、この発明の側面に従う更なるX線放射装置の側面を示す。図6の実施形態では、ハウジング611はまた、低流体圧力環境を維持するべく構成される。ハウジングは、一方の壁上に、X線を実質的に通す窓621を含み、反対の壁の一部には、電気絶縁金属を被覆し得るメンブラン613を有する。ハウジングの内部は、電子の源をもたらすフィラメント619がある。
【0027】
メンブレンは、接触材料615との回転接触により負に摩擦帯電される。接触材料及びメンブレンの材料は、二つの材料の表面の接触の変化により摩擦帯電が生じるように選択され、メンブレンは、接触材料と比較して負に帯電される。
【0028】
図6の実施形態では、第二コンテナが接触材料を含み、ここでは、メンブレンはまた、第二コンテナの壁を形成する。当該コンテナは、囲まれたコンテナとすることができ、接触材料及びメンブレンの外部(ハウジング)表面に対し、制御された環境をもたらす。好ましくは、制御された環境は、ハウジングの外部放電を防止するべく制御される。いくつかの実施形態では、制御された環境は、放電を減らす流体圧力であり、いくつかの実施形態では、コンテナは、たとえば六フッ化硫黄などの誘電媒体を含み、放電の防止を補助する。
【0029】
図7に、接触ローラー713の実施形態を示し、これはまたスライドして、メンブレン711に接触することができる。接触ローラーは、第一誘電材料の第一部分715と、より低い誘電率を有し、異なる第二誘電材料の第二部分717とを含む。第一誘電材料及び第二誘電材料のそれぞれは、異なる領域でローラーの表面上に露出する。ローラーがメンブレンを横切って回転すると、第一部分及び第二部分は、メンブレンとの接触が交互に行われる。このような交互の接触は、電荷補償の変動をもたらし、第二誘電材料がメンブレンに接触するときに、メンブレン上の蓄積する負電荷が取り出される。
【0030】
図8に、この発明の側面に従うX線透過装置の作動のモードを示す。図8では、ハウジング811は、低流体圧力環境を維持するべく構成される。ハウジングは、ハウジングの一方側に窓827を含み、ここでは、窓は、実質的にX線を通す材料である。電子ターゲットは、窓の内面上にある。メンブレン813は、ハウジングの反対の壁の一部を形成し、好ましくは、メンブレンの内部の電界放出先端部823及び、電界放出先端部の内部の加熱可能なフィラメントを有する。メンブレンは、接触材料815との接触が変化する。接触材料及びメンブレンの材料は、接触の変化がメンブレンの負の摩擦帯電をもたらすように選択される。
【0031】
接触材料は、駆動システム上でベース817に取り付けられる。図8の実施形態で示すように、駆動システムは、モーター821により駆動される軸819を含み、当該軸は、ベース817を回転させる。他の実施形態では、接触材料は他の方法で駆動され得る。
【0032】
図8に示すように、接触材料は、メンブレンとの接触が断たれ得る。接触材料のそのような接触が一度断たれると、蓄積した負電荷は、メンブレンの内面から取り出され、フィラメントから電子ターゲットへの電子の流れをもたらし、窓を通過するX線が発生する。
【0033】
様々な実施形態に関して、この発明を説明したが、この発明は、この開示によりサポートされる新規で非自明な特許請求の範囲を備えると認識されるべきである。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8