特許第6244464号(P6244464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244464ポリマーゲル下でアブレイダブル皮膜を堆積する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244464
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ポリマーゲル下でアブレイダブル皮膜を堆積する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   C23C26/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-537502(P2016-537502)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公表番号】特表2017-503070(P2017-503070A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014064576
(87)【国際公開番号】WO2015126476
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/915,399
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】カービー,グレン・ハロルド
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−065552(JP,A)
【文献】 特開2011−032160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/87
C09D 1/00
C23C 26/00
F01D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン部品(10)の上にアブレイダブル皮膜(30)を堆積する方法であって、
(a)少なくとも二峰性のセラミック粒子であって、Ln2Si27、Ln2SiO5、シリカ、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム(BSAS)、モノシリック酸化ハフニウム、希土類ガリウムガーネット(Ln2Ga29)(式中、Lnは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の1種以上である。)の1種以上である粗大粒子0体積%以下と、Ln2Si27又はLn2SiO5(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種以上である。)の1種以上を含む微細粒子5体積%以下とを含む少なくとも二峰性のセラミック粒子と、スラリーが可逆ゲルになるように1種類のアニオン性分散剤と1種類のカチオン性分散剤とからなるポリマー溶液と、低蒸気圧有機溶媒と、鉄、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、ガリウム、インジウム、これらの化合、これらの混合物又はこれらの化合物の混合物からなる群から選択される1種以上の焼結助剤を含む、スラリー混合物を形成するステップ(200)と、
(b)可逆ゲルスラリーをガスタービンエンジン部品上に直描するステップ(204)、
(c)可逆ゲルスラリーを、室温又は0℃〜80℃の第2の温度のいずれかで乾燥させ、可逆ゲルマトリックスを形成するステップ(206)と
(d)ガスタービンエンジン部品上の乾燥可逆ゲルマトリックスを、204℃超及び1357℃未満の温度で焼結し(210)、ミル(127μm)を超える厚さ及び%〜0%のポロシティを有するアブレイダブル皮膜の層を形成し、焼結層がドープ希土類二ケイ酸塩でも構成され、1種以上の焼結助剤が、希土類二ケイ酸塩に溶解してこれをドープするドーピング組成物であるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ガスタービンエンジン部品及び直描されたゲルを鋳型に配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直描が、ガスタービンエンジン部品上にパターンを作り出す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パターンが複数の隆起部である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
直描過程がロボットによる堆積を使用して自動化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
直描過程が、隆起部が前の層の隆起部同士を架け渡す複数の層の一連の摩耗性隆起部を構築する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガスタービンエンジン部品が、ブレード及びシュラウドの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ガスタービンエンジン部品がセラミックマトリックス複合材料(CMC)で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ガスタービンエンジン部品が境コーティング(14)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アブレイダブル皮膜が環境コーティング上に堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
可逆ゲルが、粒子表面に吸着された吸着高分子電解質が電荷の高分子電解質により連結されることにより形成される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は全体に、ガスタービンエンジン用のシュラウド又はブレードに関する。より詳細には、限定するものではないが、本実施形態は、シュラウド又はブレード上へのアブレイダブル皮膜の堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のガスタービンエンジンは、一般に、前端及び後端並びにそれらの間に軸方向に配置されたそのいくつかのコア又は推進部品を保有する。空気の入口又は吸気口は、ガスタービンエンジンの前端に位置する。後端に向かって順に、吸気口の後ろに圧縮機、燃焼室及びタービンが続く。さらなる部品、例えば、低圧及び高圧圧縮機並びに低圧及び高圧タービンなどが、ガスタービンエンジンに含まれ得ることは当業者には容易に理解されると思われる。しかし、これは網羅的なリストではない。ガスタービンエンジンは通常、ガスタービンエンジンの長手方向中心軸に沿って軸方向に配置された内部シャフトをさらに有する。内部シャフトは、高圧タービンが高圧圧縮機に回転入力を提供して、圧縮機ブレードを駆動するように、高圧タービン及び高圧圧縮機の両方に連結される。
【0003】
ガスタービンエンジンのより高い動作温度が、それらの効率を改良するために継続して探求されている。しかし、動作温度が上昇すると、ガスタービンエンジンの部品の高温耐久性もそれに従って上昇する必要がある。高温性能の大幅な進歩は、鉄、ニッケル及びコバルト超合金の形成により達成されてきた。超合金はガスタービンエンジンの到る所、特に高温エリアに使用される部品のための広範囲の使用が見出されているが、代替となる軽量部品材料が提唱されてきている。
【0004】
タービンのシュラウド及びブレードは、ニッケル基超合金及びセラミックマトリックス複合材料(CMC)を含む多数の材料で作製することができる。CMCは、セラミックスマトリックス相により囲まれた補強材料からなる材料の一種である。このような材料が、特定のモノリシックセラミック(すなわち、補強剤を有さないセラミック材料)と併せて、現在高温用途に使用されている。これらのセラミック材料は超合金と比べて軽量であるが、これらにより作製された部品に強度及び耐久性を依然として提供できる。したがって、このような材料は、ガスタービンエンジンの比較的高温部分に使用される多数のガスタービン部品、例えば、翼形部(例えば、タービン及びベーン)、燃焼器、シュラウド及びこれらの材料が提供可能な軽量及び高温性能により利益を得られるような他の部品用に現在検討されている。CMCは、これらの高温性能及び軽量のため、タービン用途のためのニッケル基超合金の魅力的な代替品である。
【0005】
高圧及び低圧タービン内で、シュラウドは回転ブレードを取り囲む材料のリングである。シュラウドアセンブリはタービンローターを囲み、タービンを通って流れる燃焼ガスのための外側の境界を規定している。タービンシュラウドは、単一構造であっても、又は複数のセグメントから形成されていてもよい。
【0006】
タービンの性能及び効率は、回転ブレードの先端と固定シュラウドとの間の空間を縮小して、そうしなければブレードを迂回するであろう、ブレードの上端を超える、又はその周りの空気の流動を限定することによって強化することができる。この迂回がガスタービンエンジンの効率低下を引き起こす。エンジン動作の間、ブレードの先端はシュラウドと擦れ合い、それによってギャップが増加し、効率低下をもたらし、場合によりブレードを損傷又は破壊する。
【0007】
炭化ケイ素材料はニッケル基超合金より大幅に硬いので、CMCシュラウドに関しては、金属ブレードの損傷はさらに可能性が高い。CMCシュラウドに関しては、高温蒸気の後退による材料の損失のため、パーツの良好な性能/残存のための耐環境コーティングがさらに必要とされる。
【0008】
コーティング損失に伴うリスクを低減させるために、アブレイダブル層が耐環境コーティングの上部に堆積され、ブレードを摩擦から保護する。アブレイダブル層は、回転ブレードの先端との接触において離脱する、一連のセラミックの隆起部で形成されることが望ましいと思われる。この隆起部は、動作の間にブレードの損傷を阻止するために破損するように設計される。
【0009】
アブレイダブル皮膜は、金属ブレードの損傷の代わりにアブレイダブル皮膜の離脱を確保するために、CMCシュラウド部品に塗布されている。アブレイダブル皮膜はプラズマ溶射法により塗布されており、プラズマ溶射法では溶射材料のわずかな分画しかアブレイダブル皮膜に含まれない。さらに、アブレイダブル皮膜が一連の摩耗性隆起部を使用してパターン化される場合、コーティングが金属マスクに溶射され、マスクを通る材料だけが隆起部を形成可能にするので、材料の利用はさらに減少する。
【0010】
前述により理解され得るように、ガスタービンエンジン部品のこれらの態様を改良することが望ましい。例えば、ブレードの損傷を阻止するアブレイダブル皮膜は、ブレード又はシュラウドのいずれかに堆積することが望ましい。アブレイダブル皮膜は、とりわけ含まれる材料が通常少なくとも1種の希土類元素で構成されるので、有意に優れた材料利用を可能にする(すなわち、堆積される材料の無駄が少ない)方法を使用して堆積することがさらに望ましい。
【0011】
本明細書のこの背景技術の項に含まれる情報は、本明細書に引用されるすべての参考文献及びこれらのすべての説明もしくは考察も含め、単なる技術的参考文献の目的として含まれるものであり、本発明の範囲に結び付く主題とみなすべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2011085376号
【発明の概要】
【0013】
本実施形態に従って、ガスタービンエンジン部品上にアブレイダブル皮膜を堆積させる方法が提供される。ガスタービンエンジン部品は、セラミックマトリックス複合材料(CMC)から形成されており、1以上の耐環境コーティングを含む1以上の層がCMCの外層の上に堆積することもできる。構造の最外層は、耐環境コーティングの上に堆積された多孔質アブレイダブル層を含み、ブレードの損傷を阻止する易破壊性構造を提供することができる。アブレイダブル層は部品上にキャスティング及び焼結されてもよく、又は押出しプロセスによりに部品上に直描され、その後焼結されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態に従って、ガスタービンエンジン部品上にアブレイダブル皮膜を堆積する方法は、少なくとも二峰性のセラミック粒子であって、Ln2Si27、Ln2SiO5、シリカ、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム(BSAS)、モノシリック酸化ハフニウム、希土類ガリウムガーネット(Ln2Ga29)(式中、Lnは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の1種以上である。)の1種以上である粗大粒子約70体積%以下と、微細粒子約65体積%以下とを有する少なくとも二峰性のセラミック粒子を含むスラリー混合物を形成するステップを含む。微細粒子は、Ln2Si27又はLn2SiO5(Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種以上である。)の1種以上、スラリーが可逆ゲルになるように1種類のアニオン性分散剤と1種類のカチオン性分散剤とから本質的になるポリマー溶液と、低蒸気圧有機溶媒と、鉄、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、ガリウム、インジウム、これらの化合物(例えば、酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、炭化物、窒化物、炭酸塩、アセチルアセトナト、硝酸塩、ケイ化物、希土類元素含有化合物)、これらの混合物又はこれらの化合物の混合物からなる群から選択される1種以上の焼結助剤を含み得る。可逆ゲルスラリーは、ガスタービンエンジン部品に直描される。可逆ゲルスラリーは、次いで、室温又は約30℃〜80℃の第2の温度のいすれかで乾燥される。最後に、乾燥された可逆ゲルスラリーは、ガスタービンエンジン部品上で、約1204℃超1357℃未満の温度で焼結され、約6ミルを超える厚さ及び約5%〜約50%のポロシティを有するアブレイダブル皮膜の層を形成する。焼結された層は、ドープ希土類二ケイ酸塩を含み、この場合、1種以上の焼結助剤が、希土類二ケイ酸塩に溶解してこれをドープするドーピング組成物である。
【0015】
本概要は、発明を実施するための形態において以下にさらに説明される構想の選択を単純化された形態に導入するために提供される。上記の要約された特色のすべては、単なる例示として理解すべきであり、本実施形態の多数のさらなる特徴及び目的が、本明細書の開示から収集できる。この概要は特許請求する主題の鍵となる特色又は本質的な特色を特定する意図のものでも、又は特許請求する主題の範囲を限定するために使用する意図のものでもない。本発明の特色、詳細、有用性及び有利性のより広範囲な説明が、添付の図面に例示された、及び添付の特許請求の範囲に定義された本発明のさまざまな実施形態の下記の説明に提供される。したがって、この概要の限定されない解釈は、明細書全体、特許請求の範囲及び明細書に含まれる図面をさらに読み込まなくても理解されるべきである。
【0016】
これらの実施形態例の上述及び他の特色及び有利性並びにこれらを実現する様式は、下記の実施形態の説明を添付の図面と併せて解釈することによってより明らかになり、アブレイダブル皮膜及び形成方法、堆積方法はよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、環境コーティング及び多孔質アブレイダブル層を有する被覆部品の側断面略図である。
図2図2は、被覆部品を形成する方法を表すフローチャートである。
図3図3は、被覆部品を形成する第2の方法を表すフローチャートである。
図4図4は、走査型電子顕微鏡により撮影された横断面図である。
図5図5は、パターンを有するアブレイダブル層を直描された試料の微視的横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、提供される実施形態を詳細に参照し、1以上の実施例を図面に例示する。各実施例は説明の目的で提供され、開示の実施形態を限定するものではない。実際には、さまざまな改良及び変形が、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本実施形態では可能であることは当業者には明らかであると思われる。例えば、1つの実施形態の一部として例示又は記載された特色を別の実施形態に使用して、さらなる実施形態を得ることも可能である。したがって、本発明がこのような改良及び変形を添付の特許請求の範囲及びこれらの等価物の範囲内に入るものとして含むことが意図される。
【0019】
図1から5を参照すると、アブレイダブル皮膜及びこれらを堆積する方法が、セラミックマトリックス複合材料(CMC)上への使用のために提供される。このプロセスは、粗大サイズ及び微小サイズを含む2以上の粒子サイズのスラリーを作製するステップを伴う。このスラリーはさらに焼結助剤を含む。このスラリーは部品の上及び一実施形態にしたがった鋳型内に配置され、ゲル化される。別の実施形態では、ゲル化スラリーは、押出しにより部品上に直描される。ゲル化スラリーは乾燥され、焼結され、ガスタービンエンジン部品又は耐環境コーティングのいずれかの上にアブレイダブル皮膜を堆積させる。耐環境コーティング(EBC)は、製造、動作又は性能の改良をもたらす。
【0020】
より詳細には、本明細書に記載のEBCは焼結助剤を含み、焼結助剤は焼結温度を低下させ、それによって、高焼結温度への曝露により部品を損傷することなく、高温燃焼の間に発生されるガスによる腐食から下層の部品を保護する気密シールとして作用可能な高密度のEBC層の形成を促進でき、このことは本明細書の以下に説明される。さらに、例えばブレードなどのローター部品による接触時に破損される、多孔質アブレイダブル層が形成され得る。
【0021】
本明細書に記載のEBCは、CMC又はモノリシックセラミックとの併用に適切であり得る。「CMC」は、ケイ素含有マトリックス及び補強材料をいう。複合材料は、限定するものではないがセラミックマトリックス複合材料(CMC)を含む、さまざまな低延性及び低係数の熱膨張材料から形成又は構築することができる。概して、本明細書で用いるCMC材料としては、セラミック繊維、例えば、炭化ケイ素(SiC)、その窒化ホウ素(BN)などの柔軟材料でコーティングされた形態が挙げられる。本明細書における使用に許容されるCMCのいくつかの例としては、限定するべきではないが、マトリックスと、炭化ケイ素、窒化ケイ素及びこれらの混合物を含む強化用繊維とを有する材料が挙げられる。本明細書で用いる「モノリシックセラミック」は、炭化ケイ素、窒化ケイ素及びこれらの混合物を含む材料をいう。本明細書において、CMC及びモノリシックセラミックは、総称的に「セラミック」とも称される。
【0022】
通常、CMCは、他の低延性、高温可能な材料で構築されてもよい。CMC材料は、一般に、本明細書において低引張延性材料の定義として使用される約1%以下の室温引張延性を有する。概して、CMC材料は、約0.4%〜約0.7%の範囲の室温引張延性を有する。
【0023】
CMC材料は、繊維の長さに平行な方向(「繊維方向」)の材料の引張強度が、垂直方向の引張強度より強いという特徴を有する。この垂直方向は、マトリックス、層間、二次又は三次方向を含み得る。さまざまな物理的特性は、繊維及びマトリックスの方向の間でも異なり得る。
【0024】
コーティングされたエンジン部品は、耐環境コーティングの1以上の層を組み込み、耐環境コーティングは、部品の表面においてCMC材料と併せた使用に適切な公知のタイプの摩耗性材料及び/又は耐摩擦性材料であってよい。この層は時として「ラブコート」と称される。本明細書で用いる「摩耗性」という用語は、ラブコートが、2つのパーツが接触した際に、可動部、例えば、タービンブレードの先端に損傷をほとんど与えずに、又は全く与えずに摩耗、粉砕又は摩滅され離脱可能であることを意味する。この摩耗性は、その物理コンフィギュアレーションによる、又はこれらのいくつかの組合せによる、ラブコートの材料組成の結果であり得る。ラブコートは、イットリア安定化ジルコニア、希土類二ケイ酸塩又はアルミノケイ酸バリウムストロンチウムなどのセラミック層を含むことができる。本明細書で用いる「バリアコーティング」という用語は耐環境コーティング(EBC)指すことができる。本明細書におけるEBCは、高温環境(例えば、華氏2100度(°F)(1149℃)を超える動作温度)において見出される「セラミック部品」又は単純に「部品」例えば、ガスタービンエンジン中に存在する部品上の使用に適切であり得る。このようなセラミック部品としては、燃焼器部品、タービンブレード、シュラウド、ノズル、熱シールド及びベーンを上げることができる。
【0025】
まず図1を参照すると、限定されない例である、コーティングされた、タービンブレード又はシュラウドなどのエンジン部品10が示されている。コーティングエンジン部品10は、基底CMC構造12により規定されている。基底CMC構造12は、1以上のEBC14をさらに有してよく、EBC14は1以上の層を含んでもよい。一実施形態に従って、EBC14はボンドコート層16、例えば、気密性ボンドコートを含んでもよく、ボンドコート層16は高温流の後退に対するシーリング及び高い焼結温度への曝露により部品の損傷の阻止のためにより高密度である。ボンドコート層16の外側に、摩耗性ラブコーティング又はアブレイダブル層30が堆積され得る。より詳細には、EBC14は、下記:任意選択のボンドコート層16、任意選択の非晶質シリカ層20、1以上の遷移層22、任意選択の柔軟層24、任意選択の中間層26及び任選択の外層28のさまざまな組合せを含むコーティング系を含むことができ、これらは図1に全体的に示され、本明細書の以下に記載される。基底CMC構造12又はEBC14のいずれかの上は、スラリーゲルにより堆積されるアブレイダブル層30である。特に明記しない限り、アブレイダブル層は、EBC14に塗布されてもよく、又はガスタービンエンジン部品10に直接塗布されてもよい。
【0026】
ボンドコート層16は、金属ケイ素、ケイ化物又はこれらの組合せを含んでよく、概して0.1ミル〜約6ミル(約2.5〜約150μm)の厚さを有してよい。本明細書の下記の塗布方法の結果、ケイ素ボンドコートが欠落しているいくつかの局所領域が存在することがあり、これは許容され得る。例えば、一実施形態では、ボンドコート層16は基底CMC構造12の表面の約100%を覆うことができ、別の実施形態では、基底CMC構造12の表面積の約90%以上を覆うことができる。
【0027】
本明細書で用いる「ケイ化物」としては、希土類(Ln)ケイ化物、ケイ化クロム(例えば、CrSi3)、ケイ化ニオブ(例えば、NbSi2、NbSi3)、ケイ化モリブデン(例えば、MoSi2、Mo5Si3、MoSi3)、ケイ化タンタル(例えば、TaSi2、TaSi3)、ケイ化チタン(例えば、TiSi2、TiSi3)、ケイ化タングステン(例えば、WSi2、W5Si3)、ケイ化ジルコニウム(例えば、ZrSi2)、ケイ化ハフニウム(例えば、HfSi2)、ケイ化レニウム及びこれらの組合せ又はこれらの合金を挙げることができる。
【0028】
本明細書で用いる「(Ln)」で表される「希土類」は、希土類元素のスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びこれらの混合物をいう。
【0029】
非晶質シリカ層20は、約0.0ミル〜約0.2ミルの初期の厚さを有する。しかし、非晶質シリカ層20の厚さは時間と共に増加し得る。具体的には、EBCの耐用年数の間にボンドコート層16中のケイ素がゆっくりと酸化され、非晶質シリカ層20の厚さが徐々に増加し得る。セラミック部品ではなくボンドコートが酸化されるため、及び非晶質シリカ層の間の酸素拡散速度が遅いため、ボンドコート層16のこの酸化は、下層のセラミック部品を酸化から保護することができる。非晶質シリカ層20は、いくつかの実施形態では、「ドーピング組成物」が非晶質シリカ層20中に拡散するため、本明細書の以下に定義するように、ドーピング組成物によりドープされる。
【0030】
Kirbyらにより発行された米国特許第8,501,840号(これ以降「Kirbyら」)に記載のように、遷移層22は、以下に定義するように、希土類二ケイ酸塩、ドープ希土類二ケイ酸塩又は二次材料を含有するドープ希土類二ケイ酸塩を含んでよい。より詳細には、遷移層22は、遷移層の約85体積%〜約100体積%の一次遷移材料及び遷移層の約15体積%以下の二次材料を含み、一実施形態では、遷移層の約85体積%から99体積%の一次遷移材料及び遷移層の約1%〜約15体積%の二次材料を含み得る。別の実施形態では、遷移層22は100%の一次遷移材料を含んでもよく、一次遷移材料は下記のようにドープされていてもよい。
【0031】
本明細書で用いる「一次遷移材料」は、希土類二ケイ酸塩(Ln2Si27)又はドープ希土類二ケイ酸塩をいう。本明細書で用いる「ドープ希土類二ケイ酸塩」は、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ニッケル、コバルト、希土類(Lnb)、これらの酸化物、(例えば、Fe23、Fe34、Al23、Ga23、In23、NiO、Co34、TiO2、Lnb23)これらの化合物(例えば、Lnb2Si27、Lnb2SiO5、ケイ酸鉄、ケイ酸ニッケル、ケイ酸コバルト、ムライト、希土類酸化アルミニウム、希土類酸化チタン、希土類酸化ガリウム、希土類酸化インジウムなど)並びにこれらの混合物からなる群から選択される、「ドーピング組成物」によりドープされたLn2Si27をいう。「ドープされた」は、ドーピング組成物が一次材料中に溶解され、ドーピング組成物のカチオンが格子間部位を占めるためか、又はこれらの効果のいくつかの組合せのため、(Lnb2Si27ドーピング組成物を使用してLn部位において置換するLnbの場合)Ln2Si27のLn又はSi部位のいずれかにおいてドーピング組成物によりカチオン置換を起こすことができる状態をいう。一次材料中に存在するドーピング組成物はいずれも、一次材料における溶解限度を超えるレベルである場合、熱処理により一次材料中に部分的に溶解し、残りは溶解せずに二次材料になるか、又は二次材料を形成するための反応に参加する(例えば、FeドープLn2Si27及びFe23二次材料、FeドープLn2Si27及びLn3Fe512二次材料、TiドープLn2Si27及びTiO2二次材料又はNiドープLn2Si27及び希土類酸化ニッケル二次材料)。
【0032】
本明細書の実施形態における言及において、「Lnb希土類金属」又は単純に「Lnb」は、LnbがLnと同じ希土類ではない希土類金属のサブセットをいう。
【0033】
「ケイ酸鉄」は、Fe2SiO4及び希土類ケイ酸鉄のガラスなどの化合物も含み得る。「希土類酸化鉄」は、ガーネット(Ln3Fe512)、モノシリックフェライト(Ln4Fe29)及びペロブスカイト(LnFeO3)などの化合物も含み得る。「希土類酸化アルミニウム」は、ガーネット(Ln3l512)、モノシリックアルミン酸塩(Ln4l29)及びペロブスカイトなどの(LnAlO3)化合物も含み得る。「希土類酸化アルミニウム」は、約35〜50wt%のLn23、約15〜25wt%のAl23及び約25〜50wt%のSiO2で構成されるガラス材料もまた含み得る。「希土類酸化チタン」は、Ln2Ti27(パイロクロア)及びLn2TiO5などの化合物を含み得る。「希土類酸化ガリウム」は、ガーネット(Ln3Ga512)、モノシリックガレート(Ln4Ga29)、ペロブスカイト(LnGaO3)及びLn3GaO6などの化合物を含み得る。「希土類酸化インジウム」は、ガーネット(Ln3In512)及びペロブスカイト(LnInO3)などの化合物を含み得る。「ケイ酸ニッケル」は、Ni2SiO4などの化合物を含み得、「ケイ酸コバルト」は、Co2SiO4などの化合物を含み得る。
【0034】
各遷移層22は、約0.1ミル〜約5ミルの厚さを有することができ、下記のように作製され、下層に塗布され得る。一実施形態では、複数の遷移層が存在し得る。このような場合、各遷移層は、同じか又は異なる組合せの一次遷移材料及び二次材料を含むことができる。各遷移層が同じ組合せの一次遷移材料及び二次材料を含む場合、厚さはステップバイステップ様式で構築することができる。遷移層22は、遷移層の0体積%〜約15体積%のポロシティレベルを有してよく、別の実施形態では、遷移層の約0.01体積%〜約15体積%のポロシティレベルを有してよい。このようにして、遷移層22は、気密性であるために十分に高密度であり、したがって高温蒸気をシールする。別の実施形態では、遷移層22は、ドープ希土類二ケイ酸塩である一次遷移材料、ニ次遷移材料及びポロシティで構成される。この実施形態では、細孔体積とニ次遷移材料体積との合計は、遷移層の0体積%〜約15体積%のレベルである。この実施形態は、二次材料が運転中に完全に揮発して、その場においてポロシティとして残る場合、高温蒸気に対して気密性の遷移層を確保する。
【0035】
同様に、Kirbyらにより記載されたように、外層28は希土類一ケイ酸塩、ドープ希土類一ケイ酸塩又は二次材料を含有するドープ希土類一ケイ酸塩を含み得る。より詳細には、外層28は、外層の約85体積%〜約100体積%の一次外層材料及び外層の約15体積%の先に定義された二次材料を含んでよく、一実施形態では、層の約85体積%〜約99体積%の一次外層材料及び外層の約1体積%〜約15体積%の二次材料を含み得る。別の実施形態では、外層28は100%の一次外層材料を含み、一次外層材料は下記のようにドープされていてもよい。
【0036】
本明細書で用いる「一次外層材料」は希土類一ケイ酸塩又はドープ希土類一ケイ酸塩をいう。本明細書で用いる「ドープ希土類一ケイ酸塩」は、先に定義したドーピング組成物によりドープされたLn2SiO5をいう。この場合も同様に、ドーピング組成物は、ドーピング組成物が一次材料中に溶解され、ドーピング組成物のカチオンが格子間部位を占めるためか、又はこれらの効果のいくつかの組合せのため、(Ln部位において置換するLnbの場合)Ln2SiO5のLn又はSi部位のいずれかにおいてドーピング組成物によりカチオン置換を起こすことができる状態をいう。一次遷移層材料と同様に、一次外層材料中のドーピング組成物の溶解限度を超えている場合、上記のように二次材料が存在すると思われる。外層28は、約0.1ミル〜約3ミルの厚さを有することができ、下記のように作製され、下層に塗布され得る。一実施形態では、外層28は、外層28の0体積%〜約30体積%のポロシティレベルを有し、別の実施形態では、外層28の約0.01体積%〜約30体積%、別の実施形態では、外層28の約0.01体積%〜約15体積%のポロシティレベルを有し得る。いくつかの実施形態では、外層28は、熱膨張異方性及び下層材料との熱膨張不一致のため操作の間に形成され得るクラックを、10クラック/mm以下の密度で含んでよい。
【0037】
外層28のポロシティ及びクラック発生は高温蒸気を通過させるが、外層28は後退抵抗性であり、運転中に高温蒸気と反応せず、体積の変化をもたらさないことを意味する。他方で、下層の遷移層22は気密性であり、高温蒸気が上述のボンドコート又はCMCを通過することを防ぐ。
【0038】
存在する場合、柔軟層24は、柔軟層の約85体積%〜約100体積%の一次柔軟材料及び柔軟層の約15体積%以下の二次柔軟材料を含んでよく、一実施形態では、柔軟層の約85体積%〜約99体積%の一次柔軟材料及び柔軟層の約1体積%〜約15体積%二次柔軟材料を含み得る。別の実施形態では、柔軟層24は、柔軟層の100体積%の一次柔軟材料を含んでよく、この一次柔軟材料は、希土類元素でドープされていてもよい。
【0039】
本明細書で用いる「一次柔軟材料」は、BSAS又は希土類ドープBSAS(ドーピング組成物は、少なくとも1種の希土類元素、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム又はケイ素との酸化物もしくは化合物で構成される)をいい、一方「二次柔軟材料」はLn23、Ln2Si27、Ln2SiO5、Ln3Al512、ムライト及びこれらの組合せをいう。柔軟層24は、約0.1ミル〜約40ミルの厚さを有してよく、下記のように作製及び塗布することができる。一実施形態では、柔軟層24は柔軟層の0体積%〜約30体積%のポロシティレベルを有してよく、別の実施形態では、柔軟層の約0.01体積%〜約30体積%、別の実施形態では、柔軟層の約0.01体積%〜約15体積%のポロシティレベルを有してよい。
【0040】
中間層26は、存在する場合、先に定義された一次外層材料の希土類一ケイ酸塩又はドープ希土類一ケイ酸塩を含んでよい。非晶質シリカ層20と同様に、中間層26は、EBC14の耐用年数の間に形成できる。より詳細には、高温蒸気は外層28を貫通し、この蒸気が遷移層の一次遷移材料と反応して、SiO2を揮発させ、中間層26が形成できる。
【0041】
遷移層22と同様に、アブレイダブル層30は、希土類二ケイ酸塩、ドープ希土類二ケイ酸塩又は二次材料を含有するドープ希土類二ケイ酸塩を含み得る。より詳細には、アブレイダブル層30は、アブレイダブル層30の約85体積%〜約100体積%の一次材料及びアブレイダブル層30の約15体積%以下の二次材料を含んでよく、一実施形態では、アブレイダブル層30の約85体積%〜約99体積%の一次材料及びアブレイダブル層の約1体積%〜約15体積%の二次材料を含んでよい。別の実施形態では、アブレイダブル層30は、100%の一次材料を含んでよく、この一次材料は[0041] に記載のようにドープされていてもよい。
【0042】
アブレイダブル層30のためのドーピング組成物は、鉄、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ニッケル、コバルト、これらの酸化物(例えば、Fe23、Fe34、Al23、Ga23、In23、NiO、Co34、TiO2など)これら化合物(例えば、Lnb2Si27、希土類酸化アルミニウム、希土類酸化チタン、希土類酸化ガリウム、希土類酸化インジウムなど)及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。「ドープされた」は、ドーピング組成物が一次材料中に溶解され、ドーピング組成物のカチオンが格子間部位を占めるためか、又はこれらの効果のいくつかの組合せのため、(Ln部位において置換するLnbの場合)Ln2Si27のLn又はSi部位のいずれかにおいてドーピング組成物によりカチオン置換を起こすことができる状態をいう。一次材料中に存在するドーピング組成物はいずれも、一次材料における溶解限度を超えるレベルである場合、熱処理により一次材料中に部分的に溶解し、残りは溶解せずに二次材料になるか、又は二次材料を形成するための反応に参加する(例えば、FeドープLn2Si27及びFe23二次材料、FeドープLn2Si27及びLn3Fe512二次材料、TiドープLn2Si27及びTiO2二次材料又はNiドープLn2Si27及び希土類酸化ニッケル二次材料)。
【0043】
アブレイダブル層30は他の層より厚くなってもよく、例えば、5ミルより厚く最大60ミルまでであり得る。さらに、この層は動作の間の層の破壊を促進し、パーツ、例えばタービンブレード又はシュラウドの意図しない破壊をもたらし得る摩擦力を減少させるために、多孔質(ポロシティ最大50体積%)である。
【0044】
例としては、限定するものではないが、本明細書に記載のEBC系は、一実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、遷移層22及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、遷移層22、柔軟層24、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、遷移層22、柔軟層24、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20及び遷移層22を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24、遷移層22、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、遷移層22、中間層26、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、中間層26、外層28及びアブレイダブル層30を含み、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、中間層26(動作中に形成可能)、外層28及びアブレイダブル層30を含み、並びに別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24、遷移層22、中間層26(動作中に形成可能)、外層28及びアブレイダブル層30を含む。このような実施形態は、約1704℃(華氏3100度(°F))以下の温度を有する環境における使用に適切であり得る。
【0045】
又は、EBC系は、基底CMC構造12、ボンドコート層16、遷移層22、柔軟層24及びアブレイダブル層30を含んでよく、別の実施形態では、基底CMC構造12、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20、遷移層22、柔軟層24及びアブレイダブル層30を含んでよい。このような実施形態は、約1538℃(華氏2800度(°F))以下の温度を有する環境における使用に適切であり得る。
【0046】
当業者は、の実施形態に加えた実施形態もまた許容可能であり、すべての層が最初から存在する必要はなく、エンジン動作の間に形成され得ることを理解すると思われる。さらに、アブレイダブル層30は、代替的には環境コーティング14又は関連する層の16、20、22、24、26及び28のいずれかを使用せずに、エンジン部品又は構造12に直接塗布することもできるしたがって、アブレイダブル層30は、熱バリアコーティングとしても機能し得る。いくつかの実施形態に従って、微細粒子のより大きな分画の使用は、より高い密度、したがってより強固な熱循環を提供することができる。さらに、BSAS又はシリコーン粉末の、特に粗大粒子分画のすべて又は一部としての使用は、高密度化の改良、熱循環の改良をさらに提供する。
【0047】
アブレイダブル層30を含むEBC系10は、下記の説明に従って作製し、塗布することができる。アブレイダブル層30の作製には主に2つの方法がある。1つの方法に従って、スラリーが形成され、部品上にゲルキャスティングされる。第2の方法に従って、スラリーが形成され、押出しプロセスにより部品に直描される。どちらにおいても、部品上に堆積されたスラリーのすべてではないにしてもほとんどが、最終コーティングに完全に利用される(すなわち、プラズマ溶射法と比較して無駄が非常に少ない)。
【0048】
ボンドコート層16は、さまざまな様式で部品上に形成することができる。ボンドコート層16は、プラズマ溶射法、化学蒸着、電子ビーム物理蒸着、溶融ケイ素へのディップ、スパッタリング、電気メッキ法及び当業者に公知の他の従来型の塗布により塗布することができる。
【0049】
上述のように、非晶質シリカ層20は、EBCの耐用年数の間に形成することができる。詳細には、周囲の雰囲気中の酸素が、EBC中に存在する外層、柔軟層及び遷移層のいずれかを通して拡散し、ボンドコート層16のケイ素と反応して、非晶質シリカ層20を形成することができる。又は、非晶質シリカ層20は、化学蒸着、プラズマ溶射又は他の従来型の方法により意図的に堆積させることができる。
【0050】
非晶質シリカ層20と同様に、中間層26もまた、のように高温蒸気が遷移層22と反応した場合、EBCの耐用年数の間に形成することができる。
【0051】
遷移層22、柔軟層24及び外層28の形成のための製造及び塗布プロセスは、スラリーの体積、その後の液体及び他の有機処理助剤の除去のための乾燥及び熱処理並びに層の高密度化のための熱処理からなり得る。スラリーは溶媒又は水性系であり、各個別の層に適切な一次組成物の微細粒子、層の高密度化に必要な温度を低下させるための焼結助剤及び他の有機処理助剤を含む。このようなスラリーにおいて、焼結助剤はドーピング組成物でもある。最も好ましい実施形態は、華氏2200〜2450(F)の温度で可能な最も高い高密化のコーティングを得るような、最大の熱処理減少を提供する濃度で、いずれの二次材料も形成されずに、コーティングが焼結助剤ドープ一次組成物になる、焼結助剤の使用を伴う。この堆積のためのプロセスは、Kirbyらにより考察されている。別の実施形態では、遷移層22、柔軟層24及び外層28は、熱溶射(例えばエアープラズマ溶射)により形成される。
【0052】
さらに図2を参照すると、アブレイダブル層30の製造プロセスは、堆積され、架橋され、不可逆ゲル(すなわち、印加されたせん断により流動液体に戻り得ないゲル)を形成し、液体を除去して、架橋ポリマーをバーンアウトするために熱処理され(乾燥され)、最後に層を高密度化するために熱処理される流動性スラリーからなる。この方法は「ゲルキャスティング」法と称される。具体的には、スラリーをステップ100において形成し、102においてガスタービンエンジン部品10に塗布する。ステップ104において、鋳型にスラリー混合物を塗布する。次いで、ステップ106においてこのスラリーをゲル化する。後続のステップにおいて、不可逆ゲルマトリックスをステップ108において乾燥させる乾燥後、乾燥された不可逆ゲルマトリックスを、ステップ110において焼結させる。
【0053】
さらに図3を参照すると、別の実施形態では、アブレイダブル層30が、強力なせん断減粘性スラリー又は可逆ゲル(すなわち、印加されたせん断により流動液体に戻るゲル)から堆積される。この方法は、注射器を通してスラリーを押出して、高さのある摩耗性隆起部を「直描」により形成することに適している。印加されたせん断は、注射器を通したスラリーの流動を促進するが、いったんせん断が取り除かれると、ゲルは重力下の流動を防止するように急速にリセットされる。具体的には、この実施形態では、ステップ200においいてスラリーが形成され、ステップ202において可逆ゲルがスラリーから形成される。可逆ゲルスラリーは、ステップ204においてガスタービンエンジン部品に直描される。次いで、直描された可逆ゲルスラリーを、ステップ206において乾燥させる。乾燥させた後、乾燥させた可逆スラリーの結合剤を、ステップ208においてバーンアウトする。最後に、乾燥させた可逆ゲルスラリーを、ステップ210において焼結させる。
【0054】
アブレイダブル層の形成ための「ゲルキャスティング」(不可逆ゲル)及び「直描」(可逆ゲル)法で使用されるスラリーはいくつかの共通性を有する。両方の方法においてスラリーは、希土類二ケイ酸塩一次材料で構成される。希土類二ケイ酸塩としては、限定するものではないが、Yb2Si27、Y2Si27、Lu2Si27及びこのような組合せを含む前述の希土類二ケイ酸塩のいずれかを挙げることができる。
【0055】
摩耗性スラリー中の一次材料は、粗大粒子及び微細粒子を含む、2以上の平均径又は「最頻値」の粒子から形成される。微細粒子は、任意の希土類二ケイ酸塩又は希土類一ケイ酸塩、すなわち、Ln2Si27又はLn2SiO5(式中、Lnはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びこれらの組合せであってよい)を含み得る。粗大粒子は、両方ともである任意の希土類二ケイ酸塩、任意の希土類一ケイ酸塩、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム(BSAS)、モノシリック酸化ハフニウム、希土類ガリウムガーネット(Ln2Ga29(式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの組合せであり得る)、ムライト、金属ケイ素,炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化タンタル、タンタル酸アルミニウム、酸化ケイ素及びこれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態に従って、粗大粒子は、約2μm〜約100μmの範囲の平均径を有してよい。微細粒子材料は、約2μm以下の平均粒径を有してよい。低表面積の粗大粒子の内容物は、乾燥及び焼結プロセスにおける応力を減少させ、さもなければ層又はコーティングにクラックが生じる。このような乾燥及び焼結の応力は、コーティングの厚さにより増加する。したがって、乾燥及び焼結の応力を低下させる粗大粒子の使用は、より大きな厚さのアブレイダブル層、すなわち、単回の熱処理後にクラックがない5ミルを超えて40ミル以下の層を得るために鍵となる因子である。層のポロシティはまた、焼結熱処理の間に高密度化のための駆動力のいくらかを奪い去るので、粗大分画が増加するにしたがっていくらか増加する。焼結は、高表面積層の圧密化された粒子が一緒に拡散し、ポロシティを減少させ、低表面積の凝集層を形成した場合に起こるプロセスであることに留意されたい。このプロセスの駆動力は、高表面積の微細粒子により保有される高い表面エネルギーの減少である。したがって、高表面積を有する微細粒子の存在が、このようなプロセスが強度を得るための熱処理の間に起こり、粗大粒子の周りを焼結することによってポロシティの減少を確保する。さらに、本明細書に記載の任意の焼結助剤の存在が、焼結助剤が存在しない場合より低温において、粗大粒子の周りの微細粒子の焼結を可能にする。粗大粒子は微細粒子と比較して低表面積を有するので、層のポロシティは、粗大分画が増加するにしたがっていくらか増加し、焼結熱処理の間に高密度化のための駆動力のいくらかを奪い去る。粗大粒子と微細粒子とのブレンドは、単一のスラリー(又はゲル)塗布、乾燥及び焼結サイクルにより、微細粒子単独の使用より厚く、クラックのないさらにより多孔質な層を作製する自由を可能にする。いくつかの実施形態に従って、二峰性の粒子は、70体積%以下の粗粒材料及び65体積%以下の微粒材料を含むことができる。このような実施形態の焼結後、ポロシティの量はコーティング体積の45%までであり得、最大のクラックのない約40ミルの厚さを有する。
【0056】
粗大粒子分画の化学的性質は、低表面積粒子が導入されるという事実にもかかわらず、コーティングのポロシティを最小化する様な方法で選択することができる。例えば、BSAS、金属ケイ素、ムライト及びケイ素は、粗大粒子の分画又は全体として、焼結後のコーティングにおいて、粗大分画が微細粒子と同じ材料(すなわち希土類二ケイ酸塩)に由来する場合よりポロシティを少なくなるように促進することができる。この効果は、粗大粒子の周りのより優れた高密度化を促進する、焼結の間の柔軟挙動又は(BSAS、金属ケイ素、ムライト又は酸化ケイ素)の粗大粒子に直接隣接する液体相の形成によるものと思われる。
【0057】
粗大粒子は、球状粒子で構成され得るが、縦横比50から1以下の扁長粒子であってもよい。扁長粒子は、コーティング層にさらなる強度をもたらし得るが、この強度これは、焼結熱処理の間のこのような粒子の周りの微細粒子の高密度化に干渉することによって起こり得る、ポロシティの増加によりさらにバランスがとられる。
【0058】
本明細書で用いる「スラリー焼結助剤」は、スラリー中への包含に適切な焼結助剤組成物を指すことができる。いくつかの実施形態では、アブレイダブル層スラリーは、約0.01wt%〜約5wt%、及びいくつかの実施形態では、約0.01wt%〜約50wt%の焼結助剤を含み、焼結助剤は、鉄、カルボニル鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、インジウム、ガリウム、希土類(Lnb)、これらの合金、これらとケイ素との合金及びこれらと希土類金属との合金;不溶性酸化粒子、例えば、酸化鉄(例えば、Fe23、Fe34),ケイ酸鉄、希土類酸化鉄、Al23、ムライト、希土類アルミン酸塩、希土類アルミノケイ酸塩、TiO2、希土類チタン酸塩、酸化ガリウム、酸化インジウム、希土類ガリウム酸塩、希土類インジウム酸塩、NiO、酸化コバルト、ケイ酸ニッケル、ケイ酸コバルト、希土類酸化ニッケル及びLnb2Si27並びにこれらの組合せを含む金属粒子からなる群に由来してよい。焼結助剤は、大気中の熱処理において酸化物に変換する不溶性の非酸化物粒子、例えば、炭化鉄、窒化鉄、アルミニウム窒化、炭化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化チタン、炭化チタン、炭化ニッケル、窒化ニッケル、窒化コバルト及び炭化コバルト;水酸化物、例えば、水酸化鉄、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化アルミニウム、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化チタン;炭酸塩、例えば炭酸鉄、炭酸ガリウム、炭酸インジウム、炭酸チタン、炭酸アルミニウム、炭酸ニッケル及び炭酸コバルト;シュウ酸塩、例えば、シュウ酸鉄、シュウ酸ガリウム、シュウ酸アルミニウム、シュウ酸チタン、シュウ酸ニッケル及びシュウ酸コバルトであってもよい。
【0059】
焼結助剤は、乾燥により沈殿して、熱処理の間に酸化物型に変換する、鉄、アルミニウム、チタン、ガリウム、インジウム、ニッケル、コバルト又はこれらの混合物のカチオンを含有する、溶媒可溶性又は水可溶性の焼結助剤「塩」であってもよい。このような「塩」としては、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、アセトアセトナトが挙げられる。溶媒可溶性塩の例としてはまた、鉄エトキシド、鉄2,4−ペンタンジオナト及び鉄テトラメチルヘプタンジオナトを挙げることができ;「溶媒可溶性ガリウム塩」としては、ガリウム8−ヒドロキシキノリナト、ガリウム2,4−ペンタンジオナト、ガリウムエトキシド、ガリウムイソプロポキシド及びガリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオナトを挙げることができ;「溶媒可溶性アルミニウム塩」としては、ブトキシド、アルミニウムジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムエトキシド、アルミニウムエトキシエトキシエトキシド、アルミニウム3,5−ヘプタンジオナト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム9−オクタデセニルアセトアセトナトジイソプロポキシド、アルミニウム2,4−ペンタンジオナト、アルミニウムペンタンジオナトビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト及びアルミニウムフェノキシドを挙げることができ;「溶媒可溶性ニッケル塩」としては、ニッケル2,4−ペンタンジオナト、ニッケル2,2,6,6−テトラメチル−3−5−ヘプタンジオナトを挙げることができ;「溶媒可溶性チタン塩」としてはチタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンジ−n−ブトキシドビス(2−エチルヘキサノエート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオナト)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオナト、チタンエトキシド、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタン2−エチルヘキソキシド、チタンヨージドトリイソプロポキシド、チタンイソブトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンメトキシド、チタンメトキシプロポキシド、チタンメチルフェノキシド、チタンn−ノニルオキシド(nonyloxide)、酸化チタンビス(ペンタンジオナト)、酸化チタンビス(テトラメチルヘプタンジオナト)及びチタンn−プロポキシドを挙げることができ;「溶媒可溶性ホウ素塩)としては、ホウ素エトキシド、ホウ素ブトキシド、ホウ素イソプロポキシド、ホウ素メトキシド、ホウ素メトキシエトキシド、ホウ素n−プロポキシドを挙げることができ;並びに「溶媒可溶性アルカリ土類塩」としてはカルシウムイソプロポキシド、カルシウムメトキシエトキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムエトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、ストロンチウムメトキシプロポキシド、ストロンチウム2,4−ペンタンジオナト、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムメトキシエトキシド、マグネシウム2,4−ペンタンジオナト、マグネシウムn−プロポキシド、バリウムイソプロポキシド、バリウムメトキシプロポキシド、バリウム2,4−ペンタンジオナト、バリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトを挙げることができる。
【0060】
焼結助剤は、粒子(特に微細粒子)の焼結に必要な温度を、ほぼ華氏2200〜2450度(F)に低下させる。このような焼結助剤が存在しない場合、焼結プロセスは、華氏2700度(F)、すなわちスラリーが基材の機械的特性を分解する温度を超える温度まで起こらない。最終的に、熱処理後、これらの焼結助剤もまた、一次材料に溶解されるドーピング組成物になる。焼結助剤の濃度は可能な限り低く保たれ、焼結効果の強化を提供し、好ましい実施形態でははどのような二次材料も生成しないが、別の実施形態では、二次材料の15体積%未満を生成する。
【0061】
粗大粒子及び微細粒子並びに焼結助剤を含む多峰性EBCスラリーの使用により提供される厚いコーティング性能を利用するために、粗大粒子の沈降を防ぎ、堆積させたスラリーの重力の影響下の下落及び流動(垂れ下がり)を防ぎ、並びに乾燥及び焼結プロセスの間ずっと基材との結合を維持する、スラリーの堆積戦略を利用する必要がある。対照的に、希土類二ケイ酸塩微細粒子及び焼結助剤で構成される5ミル未満の厚さの単峰性スラリーから堆積されるKirbyらにより記載されたEBCコーティングは、重力によりもたらされる欠陥に遭遇することが大幅に少なく、したがって、単純なディップコーティング、塗装及びスプレー法が欠陥を生じずに使用可能である。本明細書に記載の発明は、二峰性スラリー及び焼結助剤の使用と併せて、厚いコーティング(5〜40ミル)の堆積を成功させるスラリー堆積方法を組合せる。「ゲルキャスティング」法は、コーティングを「モールドイン」するために、(粗大粒子及び微細粒子並びに焼結助剤を含む)低粘度スラリーを、基剤を囲む鋳型に流し込む方法を提供することによって、厚いコーティングの課題を克服する。次いで、架橋性モノマーをさらに含有するスラリーを架橋して、コーティングの形状を固定し、重力の影響下での沈降を防ぐ不可逆ゲルを形成する。コーティングの形状は、したがって、鋳型の形状によって調節され、平滑表面又は摩耗性隆起部の可能性が認められる。「ゲル化」コーティングは、その後乾燥及び焼結することができる。又は、直描法において、化学種が導入され、スラリー中の粒子間に弱い引力をもたらす。このような場合、そのため、スラリーは、せん断応力の存在下では流動するが、せん断応力が存在しないと、重力の影響下で流動しないように構成される可逆粒子ゲルである。さらに、可逆ゲルは、粗大粒子の沈降を防ぎ、スラリーが注射器による押出し後に形状を維持可能にする強力なせん断減粘性挙動を示す。この方法は、堆積の位置づけ及び押出し速度にロボット制御を使用することにより、基材表面に直描される摩耗性隆起部を有するコーティングを可能にする。堆積後、スラリー粒子ゲルは乾燥され、焼結される。最後に、上記の「ゲルキャスティング」及び「粒子ゲル」法の両方を組合せることも可能である。
【0062】
「ゲルキャスティング」及び「直描」のスラリーは、少なくとも1つ、好ましくは2又はそれを超える液体を含有するが、液体選択の戦略は方法に依存する。「ゲルキャスティング」法のために、液体のうちの1つは全液体の80%を超えるレベルであり、約50℃を超える温度への加熱が適用されない限り乾燥が阻止されるように、非常に低い蒸気圧である。これは、Janneyらにより記載された大量生産品のための他のゲルキャスティング法とは異なり、該方法は、乾燥又はゲル化及び乾燥の混合とは対照的に、コーティング塗布のためのゲル化発生の確保に必要な手段を提供する。表面対体積の比はコーティング塗布において高く、したがって、低蒸気圧溶媒が使用されない限り、スラリーはゲル化発生前に乾燥すると思われる。
【0063】
「直描」用スラリーのためには、溶媒のうちの少なくとも1つが高蒸気圧液体である。これは、室温又はわずかな昇温においてコーティングを乾燥させるために必要な時間を加速し、1以上の低蒸気圧液体と一緒に使用する場合、当業者に公知の特定の乾燥欠陥を排除する効果を有し得る。
【0064】
より詳細には、高蒸気圧液体は、水及び限定するものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、メトキシベンゼン、ヘプタン、オクタン、キシレン、ミネラルスピリット、ナフサ(例えば、VM&Pナフサ)、テトラヒドロフラン、エーテル、メチルアセトアセトナト、エチルアセトアセトナト並びにこれらの組合せを含む溶媒をいう。
【0065】
より詳細には、「低蒸気圧液体」は、グリセリン、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコール系エーテル、例えば、限定するものではないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、さまざまな分子量のポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ビス(n−ブチル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−n−ヘキシルフタレート、ジ(プロピレングリコール)ジベンゾエート、ジ(エチレングリコール)ジベンゾエート、トリ(エチレングリコール)ジベンゾエート及びこれらの組合せを指すことができる。
【0066】
「ゲルキャスティング」及び「直描」のスラリーは、スラリーに含まれる「分散剤」のタイプが異なる。ゲルキャスティング法のためには、1以上の分散剤が使用され、一次材料の粒子及び任意の焼結助剤粒子(すなわち、不溶性焼結助剤が使用される場合)が、液体媒体中で一様に分布又は「分散」され得る。ゲルキャスティングスラリーにおいて、複数の分散剤が使用される場合、分散剤は、すべてがアニオン性であるか、又はすべてがカチオン性でなければならない。アニオン性分散剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、リン酸エステル、スルホン化ポリマー、ポリシラザン、これらとポリビニルアルコールとのコポリマー、これらとポリ酢酸ビニルとのコポリマー及びこれらとポリエチレンオキシドとのコポリマーを指すことができる。カチオン性分散剤は、ポリエチレンイミン、ポリ−Nビニルピロリドン、ポリビニルアルコールとのコポリマーポリ酢酸ビニルとのコポリマー及びポリエチレンオキシドとのコポリマーを指すことができる。1つの分散剤の利用又はそれ以上の分散剤の同時利用は、スラリーが、スラリー中60体積%以下の一次材料の負荷まで確実に流動性のままにする(スラリー中残りの40体積%は、液体、焼結助剤、分散剤及び結合剤(増粘剤としても公知である)を含むことに留意されたい)。
【0067】
「直描」法のスラリーのためには、2つの分散剤が使用される。最初に、1つの分散剤(アニオン性又はカチオン性のいずれか)だけが、一次材料粒子及び任意の焼結助剤粒子(すなわち、不溶性焼結助剤が使用される場合)を分散させる目的でスラリーに含まれる。しかし、一様な分散液が得られた後で、逆電荷の分散剤が加えられ、スラリー中に激しく混合される。逆電荷の分散剤の添加により、スラリーが一様な可逆ゲルになり、可逆ゲルは上記の直描プロセスにより注射器を通して押出すことができる。逆電荷の誘引性分散剤により導入されたゲルのネットワークは、粗大粒子の沈降及び微細粒子からの粗大粒子の最終的な分離を防ぐために十分である。
【0068】
「ゲルキャスティング」法において、スラリーは液体相に可溶性のモノマーを含有する。「モノマー」又は「モノマー溶液」は、「開始剤の存在下で架橋する材料を指すことができる。いったん架橋が起これば不可逆ゲルが形成され、部品の表面上のスラリーの形状が保たれる。不可逆ゲルもまた、分散された一次材料をその場に固定し、粗大粒子の沈降及び微細粒子からの粗大粒子の最終的な分離を防ぐ。さらに、不可逆ゲルは、乾燥の間に誘導される応力を支持できる強力なポリマーネットワークであるので、不可逆ゲルは、より厚い層の形成及びクラック発生のない乾燥を可能にする。
【0069】
モノマーとしては、限定するものではないが、ヒドロキシメチルアクリルイミド、エトキシメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、N−ビニルピロリドン、ジアリルフタレート及びこれらの混合物を含む化学物質を挙げることができる。モノマー化学物質は、スラリーの液体相に溶解するように選択する必要があり、このことは当業者には明らかである。
【0070】
開始剤は、モノマーの架橋を開始するためにゲルキャスティングスラリーに加えられる化学物質であり、キャスティングの直前に実施される。開始剤は、過硫酸アンモニウム、アゾビス(2−アミジノプロパン)HCl、アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]HCl及びジクミルペルオキシドから選択される。さらに、開始剤は、光開始剤であってよい。
【0071】
いったんモノマー及び開始剤を、例えば50℃以下の温度で組合せれば、熱を使用して架橋プロセスを加速することができる。モノマーが過硫酸アンモニウム開始剤と組み合わされた場合、反応は、テトラメチルエチレンジアミンとして公知の化学触媒のさらなる添加により加速することができる。モノマーが光開始剤と組み合わされた場合、いったん紫外線放射が適用されると架橋反応が起こる。光開始剤及び紫外線放射を使用する「ゲルキャスティング」法はさらに、層ごとの構築及び光耐性マスキングに適しており、コーティングのこのようないくつかの領域は硬化しないままで洗い流すことができる。このような方法は、摩耗性隆起部のパターンを作製するために使用され得る。
【0072】
「直描」法において、逆電荷の高分子電解質の引力により形成されたネットワークは、この「可逆ゲル」の強力なせん断減粘挙動特徴を生じるためには十分であるが、乾燥の間に発生する応力を支持する、ゲルキャスティング法で架橋された不可逆ゲル程強力ではない。結果として、結合剤又は「増粘剤」が使用され、堆積された(deposted)スラリーに生強度をもたらし、乾燥によるクラック発生を防ぐ。このような結合剤としては、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ[(n−ブチルメタクリレート−co−イソブチルメタクリレート)]、メチルメタクリレートコポリマー、エチルメタクリレートコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリN−ビニルピロリドン、エチルセルロース、ニトロセルロース及び他の溶媒可溶性セルロース誘導体、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0073】
界面活性剤は、スラリーの発泡を低減させるために、「ゲルキャスティング」又は「直描」のスラリーのいずれにも使用することができる。「界面活性剤」は、フッ化炭素、ジメチルシリコーン及びエトキシル化アセチレンジオール化学品(例えば、Surfynol(登録商標)420及び502などのSurfynol(登録商標)シリーズ(Air Products and Chemicals,Inc.)の市販の界面活性剤)並びにこれらの組合せからなる群から選択される組成物をいう。
【0074】
ゲルキャスティング法によるアブレイダブル層形成のためのスラリー堆積サイクルは、概して、スラリー形成、キャスティング調製、スラリー塗布、ゲル化、乾燥、結合剤のバーンアウト及び焼結を含むことができる。当業者は、さまざまな組成物のスラリーが、さまざまな組成物のEBC層の作製に使用できること、及び複数のスラリー堆積サイクルが、特定の層の全厚さを構築するために使用できることを理解するものと思われる。しかし、ゲルキャスティング法の1つの有利性は、厚いアブレイダブル層が単回の堆積サイクルで作製できることである。
【0075】
本明細書で用いる「有機処理助剤」は、スラリー中に存在する任意の分散剤、架橋ポリマー、結合剤及び界面活性剤をいう。これらの有機処理助剤は主に、炭素及び焼結後のコーティングに存在しないように、処理の間に揮発する他の元素で構成される。
【0076】
ゲルキャスティングスラリーは、希土類二ケイ酸塩一次材料と、焼結助剤、溶媒、分散剤、モノマー及び界面活性剤を含むのスラリー構成物質のいくつかもしくは全部及び混合媒体とを容器中で組合せることによって形成することができる。混合物は、当業者に公知の従来型の技術、例えば、直径約1インチ(約25.4mm)以下のアルミナ又はジルコニア混合媒体による振とう、直径約0.25インチ〜約1インチ(約0.64cm〜約2.54cm)のアルミナ又はジルコニア混合媒体を使用するボールミリング、直径約1mm〜約5mmのジルコニア系混合媒体を使用する摩擦未リング(attritor milling)、直径約1mm〜約5mmのジルコニア系媒体を使用する遊星ボールミリング(planetary ball milling)又は超音波エネルギーの同時適用による機械的混合もしくは撹拌を使用して混合することができる。混合媒体又は超音波エネルギーは、スラリー中の任意の凝集したセラミック粒子をバラバラにすることができる。任意の混合媒体の存在は、その後、例えば、濾して除去することができる。
【0077】
事前に添加されなかった場合、結合剤は所望によりスラリーに添加されてもよく、得られた混合物は、機械的撹拌、ローリング、ブレンディング、振とう及び他の同様の方法により、増粘剤が完全に溶解されるまで、概して約5〜約60分後まで撹拌されればよい。
【0078】
いったんすべてのスラリー成分が混合されたら、スラリーの初回混合後、又はコーティング組成物を堆積するためのスラリーの使用後などに、さまざまなメッシュサイズの篩を介してスラリーをろ過し、存在し得るすべての不純物を除去することができる。例えば、325メッシュの篩を使用して、平均径約44ミクロン以上を有する不純物をろ別することができる。
【0079】
混合及び任意選択のろ過の後で、スラリーを、低速ローリング、低速機械混合又はスラリー内への気泡の閉じ込めを避ける他の同様の方法により、無制限に撹拌されてよい。一実施形態では、処理の間に蒸発された溶媒を考慮して、さらなる溶媒を添加することによってスラリーを再生してもよい。又は、いったん混合したら、スラリーは、塗布に必要とされるまで取っておくこともできる。当業者は、前述の実施形態が本明細書に記載のスラリー組成物の作製方法の1つを説明しており、下記の実施例に記載の他の方法もまた許容可能であることを理解するものと思われる。
【0080】
キャスティング調製の間、ゲルキャスト摩耗性スラリーの堆積のための基材が調製される。耐環境コーティング層は、スラリー又はプラズマ溶射法のいずれかにより既に堆積されている。したがって、アブレイダブル層30の形成において、このような層30用のスラリーが、コーティングされたエンジン部品10、ボンドコート層16、非晶質シリカ層20又は所望応じてさらなる層のうちの1つに塗布される。基材は、当業者に公知の従来型の技術を使用してモールディング及びマスキングを適用することによって、摩耗性スラリーを受けるように調製される。モールディングを使用して、アブレイダブル層の形状及び厚さが、ゲルキャストスラリーが注入される、基底CMC構造12と鋳型表面の間のギャップを規定することによって形成される。マスキングとしては、限定するものではないが、テープ、ツーリング及びスラリーが基材の選択領域をコーティングすることを防ぐペイント・オン・アドヘッシブ(paint−on adhesives)を挙げることができる。一実施形態では、モールディングは、アブレイダブル層に平滑表面をもたらす。この場合、平滑さは、鋳型表面の平滑さによって決定される。別の実施形態では、モールディングは、アブレイダブル層の表面にきめ、例えば一連の摩耗性隆起部をもたらす特殊なデザインであってよい。
【0081】
いったん基材が調製されれば、開始剤を添加することによってキャスティング用の摩耗性スラリーが調製される。開始剤は、液体重量の2%以下の量で加えられ、激しく混合される。激しい混合のためにスラリー中に取り込まれた空気は、デシケーターにおいて真空適用により除去することができる。開始剤を含むアブレイダブル層スラリーがいったん鋳型に注入されたら、架橋が完了して、スラリーが不可逆ゲル化されるまで放置する。熱の適用(25℃〜85℃)及び潜在的にUV光の適用により待ち時間を最短にすることができる。ゲル化後、コーティングの生強度は、操作、マスキング除去及び鋳型除去にとって十分である。
【0082】
場合により、スラリーの1以上のさらなる層が第1のゲル化層の上に配置され、さらなるゲル化層を形成することができる。塗布される最終層は、のようにモールディングされ得るアブレイダブル層30であることを理解すべきである。
【0083】
代替の実施形態では、ゲルキャストスラリーは鋳型のない、複数の浅いパスと一緒に構築されて、各薄層の堆積後にスラリーは不可逆的にゲル化される。この場合、ゲルキャストスラリーは、部品のスラリーバスへのディッピング、塗装、ローリング、スタンピング、スプレーイング又は部品へのスラリーの注入により堆積することができる。スラリー塗布は手作業で実施されても、又は自動で実施されてもよい。
【0084】
いったんスラリーが部品に塗布されたが、スラリーがまだ濡れている間に、過剰のスラリー材料を除去するためにレベリングされてもよい。レベリングは、従来型の技術、例えば限定するものではないが、スピニング、回転、部品の玉掛け、振動を適用した、もしくは適用しない又はドクターブレードを使用するドリッピングを使用して実施し、過剰なスラリー材料を除去することができる。スラリー塗布と同様に、レベリングも手作業で実施されても、又は自動で実施されてもよい。
【0085】
次に、不可逆的にゲル化されたアブレイダブル層でコーティングされたエンジン部品10を乾燥させる。ゲルキャスティングスラリー法に使用される溶媒は、室温で乾燥しないように低蒸気圧なので、乾燥は、炉又は乾燥オーブンにおいて実施され、0.5〜5℃/分の低速で85℃〜285℃の低温(保持時間あり又はなし)まで加熱して液体を蒸発させる。別の実施形態では、乾燥は、真空チャンバーに封入して、真空を引いて、液体を蒸発させる。さらに別の実施形態では、液体は、不可逆ゲルから液体を抽出するような駆動力を提供する材料と接触させることによる、拡散性又は浸透性のプロセスにより抽出される。乾燥は、鋳型除去の前又は後のいずれに実施されてもよいが、鋳型除去前の場合、乾燥環境に耐え得る適切な鋳型材料を使用するべきである。
【0086】
次に、有機処理助剤のバーンアウトは、乾燥させた部品を、いずれの有機処理助剤もが熱分解可能なように昇温環境に配置することによって実施することができる。一実施形態では、有機処理助剤のバーンアウトは、乾燥させた部品を1℃/分〜約15℃/分の速度で約275℃〜約1000℃の温度に加熱して、部品をこの温度に約0〜約10時間保持することによって達成することができる。別の実施形態では、被覆部品は、2℃/分〜約6℃/分の速度で約600℃〜約800℃の温度に加熱され、部品はこの温度に約0〜約10時間保持され得る。別の実施形態では、保持せずに標的温度までゆっくりと上昇させ、その後別の温度に異なる速度で上昇又は下降させることによって、保持時間を排除することができる。別の実施形態では、結合剤のバーンアウトは、被覆部品を、約400℃〜約1400℃の温度に加熱された炉に配置することによって急速に起こり得る。
【0087】
バーナアウトされたコーティングエンジン部品10は、その後焼結して、少なくともアブレイダブル層30を含む耐環境コーティング14を含む部品を作製することができる。焼結は、同時に高密度化のために機能でき、コーティングに強度をもたらし、一次材料に焼結助剤の「ドーピング組成物」をドープする。焼結は、従来型の炉を使用するか、又はマイクロ波焼結、レーザー焼結、赤外線焼結などの方法を使用することによって実施可能である。
【0088】
焼結は、バーンアウトされた部品を1℃/分〜約15℃/分の速度で約1100℃〜約1375℃の温度に加熱して、部品をその温度に約0〜約24時間保持することによって達成することができる。焼結後、アブレイダブル層30は約6ミルを超える厚さ及び約5%〜約50%の間のポロシティを有する。
【0089】
直描法によるアブレイダブル層形成のためのスラリー堆積サイクルは、概して、スラリー形成、キャスティング調製、スラリー塗布、乾燥、結合剤のバーンアウト及び焼結を含むことができる。当業者は、さまざまな組成物のスラリーが、さまざまな組成物のEBC層の作製に使用できること、及び複数のスラリー堆積サイクルが、特定の層の全厚さを構築するために使用できることを理解するものと思われる。しかし、直描法の1つの有利性は、厚いアブレイダブル層が単回の堆積サイクルで作製できることである。
【0090】
図3の直描スラリーの実施形態は、希土類二ケイ酸塩一次材料と、焼結助剤、溶媒、分散剤及び界面活性剤を含むのスラリー構成物質のいくつかもしくは全部及び混合媒体とを容器中で組合せることによって形成することができる。混合物は、当業者に公知の従来型の技術、例えば、直径約1インチ(約25.4mm)以下のアルミナ又はジルコニア混合媒体による振とう、直径約0.25インチ〜約1インチ(約0.64cm〜約2.54cm)のアルミナ又はジルコニア混合媒体を使用するボールミリング、直径約1mm〜約5mmのジルコニア系混合媒体を使用する摩擦未リング(attritor milling)、直径約1mm〜約5mmのジルコニア系媒体を使用する遊星ボールミリング(planetary ball milling)又は超音波エネルギーの同時適用による機械的混合もしくは撹拌を使用して混合することができる。混合媒体又は超音波エネルギーは、スラリー中の任意の凝集したセラミック粒子をバラバラにすることができる。任意の混合媒体の存在は、その後、例えば、濾して除去することができる。
【0091】
一次分散剤(既にスラリー中にある)と逆の電荷である二次分散剤を、上記のようにスラリーが形成された後で加えた。二次分散剤の添加後、上記の混合方法のいずれかを使用して激しく混合した。逆電荷の分散剤の添加及び混合後すぐに、スラリーは強力にせん断減粘性の可逆ゲルとなる。
【0092】
可逆ゲルは、材料を部品上に開口部を通して押し出すことによって塗布することができる。開口部の直径及び形状は、押し出されるビーズのサイズ及び形状に影響を与えるように選択することができ、このビーズは最終的に摩耗性隆起部となる。可逆ゲルは単回通過で完全な厚さに堆積することもでき、又は複数回通過を材料の構築に使用することもできる。独特な「架け渡し」構造、90°、45°又は互いに選択されたいくつかの角度のパスを有する一連のパターン化された摩耗性隆起部を重ね合わせることによって形成することができる。摩耗性隆起部の間隔は、可逆ゲルスラリーの次の層先行する層の隆起部同士を架け渡さなくてはならない長さを規定する。可逆ゲルの強力なせん断減粘レオロジーは、この架け渡し挙動を可能にする。
【0093】
可逆ゲルは手で塗布されても、又はより好ましくは、材料が一様に十分調節された様式で配置され得るようにロボットによる堆積であってもよい。ロボットによる堆積は、ヒトの操作者により必要とされる従事時間を短縮するために高レベルに自動化することが可能である。
【0094】
塗布後の可逆ゲルは、鋳型を重ねて、材料を特定の厚さ又は表面のきめに一致させることによってさらに成形可能である。
【0095】
堆積後、可逆ゲルは室温又は85℃〜285℃にわずかに昇温された温度で乾燥される。
【0096】
次に、有機処理助剤のバーンアウトは、乾燥させた部品を、いずれの有機処理助剤もが熱分解可能なように昇温環境に配置することによって実施することができる。一実施形態では、有機処理助剤のバーンアウトは、乾燥させた部品を1℃/分〜約15℃/分の速度で約275℃〜約1000℃の温度に加熱して、部品をこの温度に約0〜約10時間保持することによって達成することができる。別の実施形態では、被覆部品は、2℃/分〜約6℃/分の速度で約600℃〜約800℃の温度に加熱され、部品はこの温度に約0〜約10時間保持され得る。別の実施形態では、保持せずに標的温度までゆっくりと上昇させ、その後別の温度に異なる速度で上昇又は下降させることによって、保持時間を排除することができる。別の実施形態では、結合剤のバーンアウトは、被覆部品を、約400℃〜約1400℃の温度に加熱された炉に配置することによって急速に起こり得る。
【0097】
バーナアウトされたコーティングエンジン部品10は、その後焼結して、少なくともアブレイダブル層30を含む耐環境コーティング14を含む部品を作製することができる。焼結は、同時に高密度化のために機能でき、コーティングに強度をもたらし、一次材料に焼結助剤の「ドーピング組成物」をドープする。焼結は、従来型の炉を使用するか、又はマイクロ波焼結、レーザー焼結、赤外線焼結などの方法を使用することによって実施可能である。
【0098】
焼結は、バーンアウトされた部品を1℃/分〜約15℃/分の速度で約1100℃〜約1375℃の温度に加熱して、部品をその温度に約0〜約24時間保持することによって達成することができる。焼結後、アブレイダブル層30は約6ミルを超える厚さ及び約5%〜約50%の間のポロシティを有する。
【0099】
ゲルキャスティング又は直描法のいずれかのための結合剤のバーンアウト及び焼結熱処理は、周囲空気雰囲気又はガスが窒素、水素、希ガス、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、これらの混合物又はこれらと酸素との混合物から選択されるガス雰囲気において実施することができる。
【0100】
代替の実施形態では、アブレイダブル層30を含むEBCのいくつか又はすべての層は、マスキングの除去、乾燥、有機処理助剤のバーンアウト及び焼結が実施される前順に重ねて塗布することができる当業者は、各層の塗布後、その層が後続の層の塗布前にゲル化されなければならないことを理解するものと思われる。
【0101】
別の実施形態では、焼結助剤は、所望の結果を得るために、必ずしもスラリーの遷移層又は外層に直接塗布される必要はない。焼結助剤は、EBCスラリーの1つの層に加えられ、焼結の間に焼結助剤はEBC全体に拡散し残りの層に拡散し得る。別の実施形態では、焼結助剤を含まない一次材料スラリーは、層を塗布し、乾燥させ、その後、前述の熱処理前に焼結助剤を含むゾルゲル溶液を逆浸透することによって高密度化できる。
【0102】
浸透は、EBC材料のより厚い層を一度に高密度化させることができる。さらに、浸透は、コーティングが所望ほど高密度でない場合に、焼結後により多くの焼結助剤を添加する方法である。浸透に使用されるゾルゲル溶液は、前述のような、有機溶媒及び溶媒可溶性塩の焼結助剤の溶液又は水及び水溶性塩の焼結助剤の溶液であってよい。
【0103】
理論に縛られることを意図するものではないが、本明細書のEBC実施形態への焼結助剤の包含は、表面積の縮小(すなわち、表面積の大きな粒子が圧密化し、高密度なコーティングを形成する)が焼結助剤が存在しない場合より低温で起こり得るように、一次材料の拡散速度を上げることができる。のように、低温(すなわち、約1344℃以下)における焼結は、エンジン環境からの熱い蒸気の貫通が起こりにくい非常に高密度のコーティングをもたらすだけでなく、高温への長期曝露からもたらされ得る下層部品の機械特性の分解を防ぐ助けとなり得る。
【0104】
焼結助剤は、EBCに含まれる焼結助剤の量及びコーティングが焼結温度に曝露される時間に依存してさまざまな方法で作用可能である。例えば、一実施形態では、焼結助剤は一次材料に完全に溶解して、この材料を「ドープ」することができる。別の実施形態では、一次材料に可溶である焼結助剤の量を超えている場合、焼結助剤の残りの不溶部分は、一次材料を反応して、二次材料を形成することができる。別の実施形態では、一次材料及び二次材料は、のように残存する焼結材料と併せて存在可能である。いくつかの実施形態では、焼結助剤は完全に溶解するが、二次材料の10%以下が焼結後に残存していることも望ましい。
【0105】
これら後者2つの実施形態では、二次材料が高温蒸気中で非常に揮発性である場合、EBCの中間層又は(存在する場合)柔軟層のいずれか中に二次材料+ポロシティ(+存在する場合残存焼結助剤)の合計体積が、約15体積%以下残存すれば、気密シールは維持され得る。又は、これら後者2つの実施形態では、二次材料が高温蒸気中で揮発に非常に抵抗性である場合、したがって、二次材料が希土類含有化合物、例えば限定するものではないが、希土類酸化物、希土類チタン酸塩、希土類鉄化合物、希土類ガリウム酸塩、希土類アルミン酸塩、希土類酸化インジウム及び希土類アルミノケイ酸塩を含む場合、EBCの中間層又は(存在する場合)柔軟層のいずれか中のポロシティは、気密シールを維持するために約15体積%以下残存することが必要である。気密性は、Kirbyらにより記載された遷移層にとって特に重要であるが、50体積%以下のポロシティを有し得る本明細書に記載のアブレイダブル層にとっては必ずしも必要ではない。
【0106】
低レベルの焼結助剤、高密度化コーティング層は、検出可能な二次材料を最初は全く含んでいなくてもよいことに留意すべきである。いくつかの実施形態では、二次材料は決して検出可能になることはない。しかし、他の実施形態では、エンジン環境において高温蒸気に数時間曝露後、二次材料は、x線回折、電子顕微鏡、電子分散分光光度計(EDS)などの技術を使用して検出可能になり得る。
【0107】
本明細書に記載のEBCの実施形態は、現在のEBC及びこれらの製造を超えるさまざまな有利性を提示することができる。具体的には、のように、本明細書のEBC実施形態における焼結助剤の包含は、低温(すなわち、約1350℃以下)における焼結を可能にする。これは、エンジン環境からの熱い蒸気の貫通が起こりにくい非常に高密度のコーティングをもたらし、高温への長期曝露からもたらされ得る下層部品の機械特性の分解を防ぐ助けとなり得る。さらに、本明細書に記載の実施形態は、焼結助剤をさまざまな層に組み込むことにより可能になるスラリー堆積の使用のため、現在のEBCより安価に作製可能である。さらに、本実施形態は、薄層(<2ミル)を塗布したとしても、プラズマ溶射などの従来型の技術より一様な厚さを有するEBCを提供することができる。さらに、スラリー堆積は内部部品EBCの内部部品通路への適用及び追加の研磨ステップを行わずに平滑表面を作り出す能力を可能にする。
【0108】
EBCが小型及び/又は狭い欠陥(例えば、直径約10ミクロン〜約5mm又は幅約10ミクロン〜約1mm)を生じた場合、修復する必要が起こり得る。下記の修復は、本明細書に記載のEBCに適用可能であり、下記に示すように個別のEBC層の焼結後、又は塗布されたEBC全体の焼結後に実施することができる。
【0109】
一実施形態では、修復は、EBCが本明細書に記載の方法を使用して塗布される場合、1以上の個別の層の欠陥を改善することを含み得る。この実施形態では、修復は、欠陥を有する層を作製するために使用された同じスラリー材料を含む修復スラリーを塗布することによって、所与の層を焼結した後で実施することができる。例えば、遷移層が焼結後に欠陥を生じた場合、欠陥は、遷移層の元々の塗布に使用された同じ遷移層スラリー材料を含む、「遷移層修復スラリー」を使用して修復することができる。一実施形態では、修復スラリーは、コーティングの修復部分の乾燥及び焼結による収縮を低減させる、元々のスラリー層より固形物負荷の高い一次材料のセラミック粒子を含んでよい。特に、修復スラリー中の一次材料セラミック粒子の固形物負荷は、(元々のスラリーの一実施形態では、約10体積%超、層を作製するために使用された元々のスラリー別の実施形態では、10%から55体積%に対して)約30体積%超から55体積%であってよい。修復スラリーは、の方法を含む任意の従来型の方法並びに本明細書に記載のゲルキャスティング及び直描を使用して塗布することができる。得られた「修復(された)コーティング」は、その後、EBCの任意の後続の層の塗布前に、本明細書に先に記載のように処理され得る。
【0110】
代替の実施形態では修復は、EBC全体の塗布及び焼結後に欠陥を回復させることを含み得る。この実施形態では、修復は、欠陥を有するEBCにおいて、一次遷移材料の粗大分画を除く先に定義されたアブレイダブル層スラリー(すなわち、一次材料、焼結助剤及び場合により二次材料)中に存在する同じ材料を含む層修復スラリーを使用して実施することができる。この特定の修復スラリーは、EBC中に存在するすべての欠陥に染み込み、焼結後に修復されたEBCコーティングの気密シールを提供することができる。この場合も同様に、遷移層修復スラリーの固形物負荷は、約30体積%超から55体積%を含んでよい。
【0111】
このような修復は、剥ぎ取り及びコーティング全体の再塗布とは対照的に、局在欠陥を、コーティングの塗布又は耐用期間の間のさまざまな時点で修復する能力を提供することができるこのことは、順に、時間、労力及び材料の削減をもたらし得る。
【実施例1】
【0112】
ゲルキャスティング法
グリセロール(低蒸気圧液体)、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド(モノマー)、ポリアクリル酸−ポリエチレンオキシドコポリマー(アニオン性分散剤)、イットリウムドープイッテルビウム二ケイ酸塩(一次材料)、Fe34酸化鉄(焼結助剤)及びAl23(焼結助剤)を、直径0.25”のイットリウムドープ−二酸化ジルコニウムミリング媒体とプラスチックボトルにおいて組合せた。混合物を、ローラーミルにおいて少なくとも12時間回転させた。
【0113】
その後10%(重量)の過硫酸アンモニウム開始剤溶液をスラリーにドープして、次いで手作業により数分間激しく混合した。
【0114】
次に、このスラリーを、化学蒸着により堆積された金属ケイ素ボンドコート及びスラリー堆積により堆積されたFeドープイッテルビウム二ケイ酸塩遷移層(5%以下のポロシティの気密性)を既に有する炭化ケイ素試験片の上部にキャスティングした。このスラリーを、ドクターブレードを使用してレべリングし、過剰のスラリーを除去し、所望の厚さに設定した。
【0115】
その後、スラリーを50℃に30分間加熱して、スラリーを不可逆的にゲル化した。
【0116】
次に、ゲル化されたスラリーを、1.5℃/分の速度で150℃まで加熱することによって乾燥させた。
【0117】
その後結合剤のバーンアウトを、3℃/分の速度で550℃まで加熱することによって実施した。
【0118】
最後に、焼結を、10℃/分の速度で1344℃(1344℃において10時間保持)まで加熱することによって実施した。
【0119】
冷却後、試料を横断切片化し、走査型電子顕微鏡(SEM)評価のためにエポキシに埋め込み、得られた後方散乱画像を図4に示す。画像において、EBCコーティングの後方散乱SEM横断面は、下記を含む:(A)化学蒸着(CVD)により堆積されたケイ素ボンドコート、(B)スラリー堆積法により堆積されたFeドープイッテルビウム二ケイ酸塩遷移層及び(C)ゲルキャスティングスラリー法により堆積されたFeドープ、イットリウムドープイッテルビウム二ケイ酸塩アブレイダブル層及び(D)スラリー堆積法により最上層に堆積されたFeドープイットリウム一ケイ酸塩層。
【実施例2】
【0120】
直描法
1−ヘキサノール(高蒸気圧液体)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(低蒸気圧液体)、イットリウムドープイッテルビウム二ケイ酸塩粉末(粗大平均粒径一次材料)、イットリウムドープイッテルビウム二ケイ酸塩(微小平均粒径一次材料)、Fe34酸化鉄(焼結助剤)、Al23酸化アルミニウム(焼結助剤)及びポリN−ビニルピロリドン(カチオン性分散剤、結合剤)を、直径0.25”の球状イットリウムドープ酸化ジルコニウム媒体とプラスチックボトルにおいて組合せた。混合物を、ローラーミルにおいて少なくとも12時間回転させた。次に、ポリアクリル酸の50%水溶液をスラリーに加え、その後手作業で急速に撹拌した。撹拌の1分後、スラリーは強力なせん断減粘性の、直描に適切な可逆ゲルになる。
【0121】
次に、可逆ゲル「直描」スラリーを、化学蒸着により堆積された金属ケイ素ボンドコート及びスラリー堆積により堆積されたFeドープイッテルビウム二ケイ酸塩遷移層(5%以下のポロシティの気密性)を既に有する炭化ケイ素試験片の上部に注射器を通して押し出した。
【0122】
次に、このスラリーを、1.5℃/分の速度で150℃まで加熱することによって乾燥させた。
【0123】
その後結合剤のバーンアウトを、3℃/分の速度で550℃まで加熱することによって実施した。
【0124】
最後に、焼結を、10℃/分の速度で1344℃(1344℃において10時間保持)まで加熱することによって実施した。
【0125】
冷却後、試料400を実体顕微鏡により図5に示すように特徴付け、図5は、可逆ゲルスラリーを使用して直描されたFeドープ、イットリウムドープイッテルビウム二ケイ酸塩摩耗性の隆起部の光学顕微鏡横断面を表す。
【0126】
上述の構造及び方法は、例示の目的で提示している。網羅的であることを意図するものでなく、又は構造及び方法を開示の正確な形態及び/又はステップに限定する意図のものではなく、上記の教示を考慮して、さまざまな改良及び変形が明らかに可能である。本明細書に記載の特色は、任意の組合せで組合せることができる。本明細書に記載の方法のステップは、物理的に可能な任意の順序で実施することができる。複合材構造の特定の形態を例示及び記載してきたが、これに限定するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によってだけ限定されるものである。
【0127】
複数の発明実施形態を本明細書に例示及び記載してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能の実施及び/又は結果及び/又は1以上の有利性の獲得のためにさまざまな他の手段及び/又は構造を容易に想像すると思われ、このような変形及び/又は改良のそれぞれは、本明細書に記載の実施形態の範囲内であると判断される。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメーター、大きさ、材料及び構成が例示を意味すること、及び実際のパラメーター、大きさ、材料及び/又は構成が、使用される発明の教示のための具体的適用に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験を使用するだけで、本明細書に記載の特定の発明実施形態の多くの等価物を認識又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単なる例示の目的で提示され、添付の特許請求の範囲内及びその等価物内で、発明の実施形態は、具体的に記載及び特許請求されていなくても実践することができることを理解すべきである。本開示の発明実施形態は、本明細書に記載の各個別の特色、系、物品、材料、キット及び/又は方法を対象とする。さらに、このような特色、系、物品、材料、キット及び/又は方法の2つ又はそれを超える任意の組合せは、このような特色、系、物品、材料、キット及び/又は方法が互いに矛盾しない限り、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0128】
最良の様式を含む実施形態を開示するため、任意の当業者が、任意のデバイス又は系の作製及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実施を含む、装置及び/又は方法を実践可能にするために実施例を使用する。これらの実施例は、網羅的であることを意図するものでなく、又は本開示を、開示の正確なステップ及び/又は形態に限定する意図のものではなく、上記の教示を考慮して、多数の改良及び変形が可能である。本明細書に記載の特色は、任意の組合せで組合せることができる。本明細書に記載の方法のステップは、物理的に可能な任意の順序で実施することができる。
【0129】
本明細書において定義され、使用されたすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた参考文献中の定義及び/又は定義された用語の普通の意味にわたって統制することを理解すべきである。不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、特に逆のことが明示されない限り「少なくとも1つ」を意味することを理解すべきである。「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、そのように繋ぎ合わされた構成要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する構成要素を意味することを理解すべきである。
【0130】
特に逆のことが明記されない限り、複数のステップ又は作用を含む本明細書において特許請求される任意の方法において、方法のステップ又は作用の順番は、必ずしも方法のステップ又は作用が列挙された順番に限定されるものではないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5