特許第6244465号(P6244465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244465エタノールを生産するとともにメタノールを併産するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244465
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】エタノールを生産するとともにメタノールを併産するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/149 20060101AFI20171127BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 31/08 20060101ALI20171127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   C07C29/149
   C07C31/04
   C07C31/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-538026(P2016-538026)
(86)(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公表番号】特表2017-502937(P2017-502937A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】CN2013089539
(87)【国際公開番号】WO2015089704
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】劉勇
(72)【発明者】
【氏名】朱文良
(72)【発明者】
【氏名】劉紅超
(72)【発明者】
【氏名】倪友明
(72)【発明者】
【氏名】劉中民
(72)【発明者】
【氏名】孟霜鶴
(72)【発明者】
【氏名】李利娜
(72)【発明者】
【氏名】劉世平
(72)【発明者】
【氏名】周慧
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/077725(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0261800(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0318573(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102872878(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101185895(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/149
C07C 31/04
C07C 31/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸エステル及び合成ガスのみからなる原料ガスを、触媒が充填された反応器に通過させて、反応温度が150〜350℃、反応圧力が0.1〜20.0MPa、反応体積空間速度が100〜45000mlg−1−1、酢酸エステルの質量空間速度が0.01〜5.0h−1の条件下でエタノールを生産すると共にメタノールを併産し、前記触媒の活性成分は銅と任意の、亜鉛及び/又はアルミニウムであり、
前記触媒において、活性成分である銅は、CuO換算で前記触媒の総重量に対して50.0〜100.0wt%であり、亜鉛は、ZnO換算で前記触媒の総重量に対して0〜35.0wt%であり、アルミニウムは、Al換算で前記触媒の総重量に対して0〜10.0wt%であり、
前記原料ガスは、合成ガス/酢酸エステルのモル比が21〜101/2〜4であり、前記合成ガスは、水素ガス/一酸化炭素のモル比が20〜100/1である
ことを特徴とする、エタノールを生産すると共にメタノールを併産する方法。
【請求項2】
前記酢酸エステルは酢酸メチル及び/又は酢酸エチルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒は、マンガン、モリブデン、ジルコニウム、クロム、鉄、バリウム、マグネシウム、ニッケル、及びカルシウムからなる群より選択される1種以上を助剤としてさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記助剤は、その金属酸化物換算で前記触媒の総質量に対して0〜5.0wt%であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒は、使用前に、水素ガス及び/又は合成ガスで還元処理されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応温度が180〜300℃、前記反応圧力が1.0〜10.0MPa、前記反応体積空間速度が400〜35000 mlg−1−1、前記酢酸エステルの質量空間速度が0.1〜3.0h−1であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒化学分野に属し、具体的にはエタノールを生産するとともにメタノールを併産するための新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノールは主に車両用燃料及び車両用燃料添加剤とされており、同時に重要な基本有機化学工業原料でもあり、主にアセトアルデヒド、エチルエーテル、酢酸、酢酸エチル、エチルアミン等の生産に用いられる。2012年、全世界のエタノール生産量が851億リットルに到達し、中国でのエタノールガソリンが中国のガソリン消耗量の全量に対して20%以上となっている。国家第12次5カ年計画期間において、中国の非化石エネルギーの一次エネルギーに対する割合が11.4%まで向上されることになり、同時に、食糧を主たる原料とした新しい燃料エタノールプロジェクトがこれ以上建設されない。そのため、多アプローチでエタノールを合成することは石油資源の節約、環境汚染の軽減に対して重要な現実意義及び戦略意義を有する。
【0003】
従来、工業上のエタノール生産方法は、発酵法及びエチレン水和法が挙げられる(発酵法又はエチレン水和法を用いて得られたエタノールは、通常、いずれもエタノールと水との共沸混合物であり、無水エタノールを得るにはさらに脱水する必要がある)。発酵法の主な原料は、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシなどの植物である。アメリカでは、大量のトウモロコシがエタノール燃料を生産するために用いられ、世界範囲内での食糧不足や値上がりを招来しているので、多くの国がバイオエタノールプロジェクトをある程度制限している。エチレン水和法は、シリカゲル又は珪藻土上に担持されているリン酸を触媒として用い、このプロセスは、1947年にShell社により初めて工業化された。エタノール原料の由来を広げて、石油資源への依頼を軽減する研究が注目されてきた。合成ガスからエタノールを直接に製造することは、最も見込みのあるアプローチの1つだと考えられている (Appl. Catal. A 261 (2004) 47, J. Catal. 261 (2009) 9)。Pan氏らは(Nat. Mater. 6 (2007) 507)、Rh貴金属触媒を選択的にカーボンナノチューブの内壁に担持することにより、合成ガスからエタノールを直接に製造する収率を大いに向上したことが報告されている。しかし、高価な貴金属Rhの使用により、その更なる応用が制限されている。
【0004】
もう1つのアプローチは、合成ガスからエタノールを直接に製造することである。2011年11月1日、江蘇索普集団は、3万トン/年の合成ガスでエタノールを製造するセット技術研究開発プロジェクトを建設し始め、この技術は中科院大連化学物理研究所により開発され、これは、この画期的な技術が全般的に工業示範実施段階に入ったことを示し、プロジェクトの建設が完了したら、世界初の万トンレベルの、石炭由来の合成ガスでエタノールを製造する工業的プラントとなる。しかし、このアプローチでは貴金属ロジウム触媒を用いているため、触媒のコストが高い。且つ、厳密に言えば、生成物がC1−C5の低級アルコール混合物であり、エタノール選択性が80%未満である(Appl. Catal. A 407 (2011) 231, Appl. Catal. A 243 (2003) 155)。なお、メタノールのホモログ化反応でエタノールを製造する研究も多くなされており、このアプローチは、Co又はRuを触媒として、ヨウ化物を助触媒として用い、均一相システムにおいて反応するものである(J. Catal. 90 (1984)127, J. Mol. Catal. A 96 (1995) 215)。しかし、ヨウ化物が設備をひどく腐食し、かつ、反応生成物が複雑であり、エタノール選択性が低いため、この方法の応用もある程度制限されている。
【0005】
合成ガスからエタノールを直接に合成する最新のアプローチは、ジメチルエーテルを原料として、カルボニル化反応によって酢酸メチルを直接に合成し、その後、水素化してエタノールを製造するものである。このアプローチは、まだ研究の段階にあるが、非常に高い応用の見込みがある。最近、Tsubaki氏らは(JP2008239539, ChemSusChem 3 (2010) 1192)、H−MOR及びCu/ZnO触媒を用いてDMEからエタノールを直接に生成することを実現し、2種の触媒が相乗効果を有することを研究により見出した。
【0006】
メタノールも重要な化工原料及び車両用燃料添加剤の1種であり、主に溶剤として用いられ、ホルムアルデヒド、酢酸、ジメチルエーテルの製造、及びMTG、MTOなどの過程にも用いられる。2011年、我が国のメタノール生産量が2035万トンに到達し、MTOなどの技術の広がりにつれて、将来、メタノールの生産量がさらに増える見込みがある。従来、メタノールの合成は、銅系触媒を用いて固定床反応器において240〜260℃、5〜10MPaで行われる。
【0007】
現在、ジメチルエーテルは、合成ガスから単一ステップで製造可能であり(二重機能の触媒を用い、メタノールの合成及びメタノールの脱水を1つの反応器内で発生させる)、又はメタノールから脱水することで合成することができる。合成ガスは、石炭、バイオマス、天然ガスなどの非石油エネルギーを用いて製造することができる。エタノールの合成とともに一定量のメタノールの併産を実現できれば、メタノールは最終製品とされてもよいし、脱水してジメチルエーテルを生成し、ジメチルエーテルをカルボニル化して酢酸メチルを生成し、酢酸メチルを水素化して最終製品であるエタノールを生成してもよい。市場の要求に応じてエタノールとメタノールとの割合を調節して、製品の自由度及び装置取扱いの臨機応変性を向上させることができ、これが新規な石炭化学工業の開発に対して重要な現実的意義を有している。したがって、本分野では、合成ガスと酢酸エステルとの共供給条件下においてエタノールを合成するとともにメタノールを併産する方法を開発する必要がる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、合成ガスと酢酸エステルとの共供給条件下においてエタノールを生産するとともにメタノールを併産する方法を提供することにある。
【0009】
このために、本発明は、酢酸エステル及び合成ガスを含有する原料ガスを、触媒が充填された反応器に通過させて、反応温度が150〜350℃、反応圧力が0.1〜20.0MPa、反応体積空間速度が100〜45000mlg−1−1、酢酸エステルの質量空間速度が0.01〜5.0h−1の条件下でエタノールを生産するとともにメタノールを併産し、前記触媒の活性成分は銅と任意の、亜鉛及び/又はアルミニウムであることを特徴とするエタノールを生産するとともにメタノールを併産する方法を提供する。
【0010】
1つの好ましい実施形態において、前記酢酸エステルは酢酸メチル及び/又は酢酸エチルである。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、前記触媒において、活性成分である銅は、CuO換算で前記触媒の総重量に対して50.0〜100.0wt%であり、亜鉛は、ZnO換算で前記触媒の総重量に対して0〜35.0wt%であり、アルミニウムは、Al換算で前記触媒の総重量に対して0〜10.0wt%である。
1つの好ましい実施形態において、前記触媒は、マンガン、モリブデン、ジルコニウム、クロム、鉄、バリウム、マグネシウム、ニッケル、及びカルシウムからなる群より選択される1種以上を助剤としてさらに含む。好ましくは、前記助剤は、その金属酸化物換算で前記触媒の総質量に対して0〜5.0wt%である。
【0012】
1つの好ましい実施形態において、前記触媒は、使用前に、水素ガス及び/又は合成ガスで還元処理される。
【0013】
1つの好ましい実施形態において、前記原料ガスは、合成ガス/酢酸エステルのモル比が10〜101/0.1〜4であり、前記合成ガスは、水素ガス/一酸化炭素のモル比が9〜100/1である。好ましくは、合成ガス/酢酸エステルのモル比が21〜101/2〜4であり、前記合成ガスは、水素ガス/一酸化炭素のモル比が20〜100/1である。
【0014】
1つの好ましい実施形態において、前記反応温度が180〜300℃、前記反応圧力が1.0〜10.0MPa、前記反応体積空間速度が400〜35000mlg−1−1、前記酢酸エステルの質量空間速度が0.1〜3.0h−1である。
【0015】
本発明は合成ガスと酢酸エステルとの共供給を反応原料として、一酸化炭素のメタノールへの転化生成を促進しながら、極めて高い酢酸エステルへの水素化活性を確保している。本発明の方法により、エタノールを生産しながら一定量のメタノールを併産し、かつ、エタノールとメタノールとの割合が調節可能であり、製品の自由度を向上している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法において、酢酸エステルと合成ガスとを含有する原料ガスを、触媒が充填された反応器に通過させて、反応温度が150〜350℃、反応圧力が0.1〜20.0MPa、反応体積空間速度が100〜45000mlg−1−1、酢酸エステルの質量空間速度が0.01〜5.0h−1の条件下でエタノールを生産するとともにメタノールを併産し、前記触媒の活性成分は、銅であるが、亜鉛及び/又はアルミニウムを含有してもよい。
【0017】
好ましくは、前記酢酸エステルが酢酸メチル及び/又は酢酸エチルである。
【0018】
好ましくは、前記触媒において、活性成分が銅であり、その含有量は金属酸化物換算で、触媒の総重量に対して50.0〜100.0wt%であり、助剤である亜鉛は金属酸化物換算で、触媒の総重量に対して0〜35.0wt%であり、助剤であるアルミニウムは金属酸化物換算で、触媒の総重量に対して0〜10.0wt%である。
【0019】
好ましくは、前記触媒は、マンガン、モリブデン、ジルコニウム、クロム、鉄、バリウム、マグネシウム、ニッケル、及びカルシウムからなる群より選択される1種又は任意の2種以上の混合物を助剤としてさらに含有してもよく、好ましくは、その金属酸化物(例えばMnO、Cr、Fe、MgO、NiOなど)換算で、触媒の総重量に対して0〜5.0wt%である。
【0020】
好ましくは、前記触媒は、反応前に、予め水素ガス及び/又は合成ガスで還元処理される。1〜100%のH又は合成ガス(H/CO=0.5〜50)を用いて、温度が180〜350℃、圧力が0.1〜5.0MPaの条件下で、5〜60時間還元処理される。
【0021】
好ましくは、前記原料ガスは、合成ガス/酢酸エステルのモル比が10〜101/0.1〜4であり、前記合成ガスは、水素ガス/一酸化炭素のモル比が9〜100/1である。さらに好ましい範囲は、合成ガス/酢酸エステルのモル比が21〜101/2〜4、前記合成ガスにおいて水素ガス/一酸化炭素のモル比が20〜100/1である。
【0022】
好ましい反応条件は、反応温度が180〜300℃、反応圧力が1.0〜10.0MPa、反応体積空間速度が400〜35000mlg−1−1、酢酸エステルの質量空間速度が0.1〜3.0h−1である。
【0023】
本発明の触媒(銅基触媒とも言う)は、好ましくは共沈法で製造され、以下の工程を含む:
a)Cu2+及び/又は任意の、Zn2+及び/又はAl3+イオンを含有する溶液を25〜60℃の沈殿剤溶液中に添加し、得られた沈殿物を均一に撹拌し、得られた沈殿物のpH値が7.0−10.0である;
b)工程a)で得られた沈殿物を5〜60時間エージングし、80〜160℃で乾燥して、240〜500℃で焼成処理して、焼成試料を得た;
c)必要に応じて、工程b)で得られた焼成試料をマンガン、モリブデン、ジルコニウム、クロム、鉄、バリウム、マグネシウム、ニッケル、及びカルシウムからなる群より選択される1種又は任意の2種以上の金属成分を含有する塩溶液中に一回又は複数回浸漬し、浸漬完了後、80〜160℃で乾燥し、240〜500℃で焼成して上記の銅系触媒を得た。
【0024】
本発明の優位性は、主に、安価な原料を用い、簡単な共沈法を利用して、合成ガスと酢酸エステルとの共供給でエタノールを製造しながらメタノールを併産するための触媒を製造し、かつ、該プロセスは一酸化炭素のメタノールへの転化生成を促進しながら、極めて高い酢酸エステルへの水素化活性を確保していることにある。反応条件を変更することによってエタノールとメタノールとの割合が調節可能となり、新規な反応プロセスが開発され、製品の自由度が向上されている。
【実施例】
【0025】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られない。
【0026】
実施例1:触媒の作製
1)100%CuO触媒の作製
121gのCu(NO・3HOを2000mlの脱イオン水中に溶解した。1500mlの脱イオン水で68.0gの濃アンモニア水(25〜28%)を希釈した。室温において、アンモニア水溶液を激しく撹拌し、その後、該金属硝酸塩水溶液をアンモニア水溶液中に徐々に添加し、添加時間が60min程度であった。アンモニア水溶液を用いて沈殿のpH値を10.0に調節し、続いて200min撹拌した後、36hエージングした。沈殿を脱イオン水で中性まで洗浄し、遠心分離させた。得られた沈殿を120℃でオーブン中で24h乾燥させ、乾燥後に試料をマッフル炉中に置き、1℃/minの昇温速度で400℃に昇温し、5h焼成し、焼成後の試料を得た。この触媒をCAT1とする。
【0027】
2)85%CuO/10%ZnO/5%Al触媒の作製
102.85gのCu(NO・3HO、12.00gのZn(NO・6HO、14.71gのAl(NO・9HOを2000mlの脱イオン水中に溶解した。1500mlの脱イオン水を用いて72.52gの濃アンモニア水(25〜28%)を希釈した。室温において、アンモニア水溶液を激しく撹拌し、その後、金属硝酸塩を混合した水溶液をアンモニア水溶液中に徐々に添加し、添加時間が60min程度であった。アンモニア水溶液を用いて沈殿のpH値を10.0に調節し、続いて200min撹拌した後、36hエージングした。沈殿を脱イオン水で中性まで洗浄し、遠心分離させた。得られた沈殿を120℃でオーブン中に24h乾燥し、乾燥後の試料をマッフル炉中に置き、1℃/minの昇温速度で400℃に昇温し、5h焼成し、焼成後の試料を得た。この触媒をCAT3とする。
【0028】
3)75%CuO/13%ZnO/5%Al/1%MnO/1%NiO触媒の作製
96.80gのCu(NO・3HO、15.60gのZn(NO・6HO、14.71gのAl(NO・9HOを2000mlの脱イオン水中に溶解した。1500mlの脱イオン水を用いて72.62gの濃アンモニア水(25〜28%)を希釈した。室温において、アンモニア水溶液を激しく撹拌し、その後、金属硝酸塩混合水溶液をアンモニア水溶液中に徐々に添加し、添加時間が60min程度であった。アンモニア水溶液を用いて沈殿のpH値を10.0に調節し、続いて200min撹拌した後、36hエージングした。沈殿を脱イオン水で中性まで洗浄し、遠心分離させた。得られた沈殿を120℃でオーブン中に24h乾燥し、乾燥後の試料をマッフル炉中に置き、1℃/minの昇温速度で400℃に昇温し、5h焼成し、焼成後の試料を得た。さらに1.41gのMn(NO・4HO、1.36gのNi(NO・4HOを50mlの脱イオン水に溶解し、浸漬法を用いてマンガンとニッケルの水溶液を焼成後の試料に担持させ、80℃で余計の溶剤を蒸発させた。120℃でオーブン中に24h乾燥し、乾燥後の試料をマッフル炉中に置き、1℃/minの昇温速度で400℃に昇温し、3h焼成し、触媒試料を得た。この触媒をCAT4とする。
【0029】
残りの触媒CAT2及びCAT5〜10の作製はCAT3及びCAT4と類似する。触媒の具体的な作製条件と番号の関係は表1に示す。XRF(X線蛍光スペクトル、オランダPANalytical B.V.社)で測定した触媒の組成は表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
実施例2:触媒の評価
本発明における反応体積空間速度は、反応原料(標準状態で)の1時間当たりに反応系に入る体積流量を触媒の質量で割ったものであると定義づけられている。GHSVで表され、単位がmlg−1−1である。
10gの20〜40メッシュの上記触媒を固定床反応器の定温ゾーンに充填した。反応前に、触媒をオンライン還元し、還元温度が260℃、圧力が0.1MPa、還元ガスが5%H+95%N、還元時間が24hであった。還元終了後、温度制御器を調節して反応温度を230℃に降温させ、Nを用いて管路及び反応器内をパージして残留Hを清掃した後、ガスを一定の組成の合成ガスに切り替えて充圧し、質量流量計を指定の流量(標準状態)に調節し、酢酸エステルの高圧フィードポンプを指定の流速に設置し、温度及び圧力が安定した後に反応を開始させた。生成物をオンライン分析し、1時間当たりに1回サンプリングした。反応器の出口からガスクロマトグラフィー10ポート弁の入口まで、全ての管線及び背圧弁も加熱保温された。
【0033】
生成物の分析方法
クロマトグラフィー:Agilent 7890A
FIDクロマトグラフィーカラム: HP−PLOT−Q 19091P−Q04、30m×0.32mm(内径), 膜厚20μm
キャリアガス:ヘリウムガス、2ml/min
カラムオーブン温度:50℃〜240℃、10℃/min
240℃で15min保持
試料入口:分流(50:1);温度:250℃
検出器:FID;温度:300℃
TCDクロマトグラフィーカラム:カーボン分子篩カラム、TDX−01 2m×2mm(内径)
キャリアガス: ヘリウムガス、35ml/min
カラムオーブン温度:50℃〜240℃、10℃/min
240℃で15min保持
試料入口:スペーサ越しに入口をパージする;温度:250℃
検出器:TCD;温度:300℃
【0034】
1)異なる組成の触媒の、合成ガス(体積組成が80%H/4%CO及びその他のガス)と酢酸メチル(MAc)との共供給条件下での反応活性は表3に示す。
反応条件:反応温度が240℃、反応圧力が4.5MPa、原料ガスのモル組成がH/CO/MAc=20/1/4(80%H/4%CO/16%MAc)、総体積空間速度がGHSV=5676mlg−1−1、酢酸メチルの質量空間速度がWHSVMAc =3.0h−1である。
【0035】
【表3】
【0036】
2)異なる温度における触媒CAT5の、合成ガス(体積組成が98.9%H/0.99%CO及びその他のガス)と酢酸メチル(MAc)との共供給による反応性能は表4に示す。
反応条件:反応圧力が5.5Mpa、原料ガスモル組成がH/CO/MAc=1000/10/1(98.9%H/0.99%CO/0.11%MAc)、総体積空間速度がGHSV=35000mlg−1−1、酢酸メチルの質量空間速度がWHSVMAc=0.127h−1である。
【0037】
【表4】
【0038】
3)異なる圧力にける触媒CAT3の、合成ガス(体積組成が95.2%H/1.4%CO及び他のガス)と酢酸メチルとの共供給による反応性能は表5に示す。
反応条件:反応温度が250℃、原料ガスのモル組成がH/CO/MAc=70/1/2.5(95.2%H/1.4%CO/3.4%MAc)であり、総体積空間速度がGHSV=19587mlg−1−1であり、酢酸メチルの質量空間速度がWHSVMAc=2.2h−1である。
【0039】
【表5】
【0040】
4)異なる触媒及び異なる反応条件での合成ガスと酢酸エチルとの共供給による反応性能は表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
以上の実施例及びデータにより下記の結論が得られる。
一定量の合成ガスと酢酸エステルとの共供給を反応原料として、1つの反応器内において、特定の触媒により、エタノールを効果的に合成するとともに少量のメタノールを併産することができる。併産したメタノールは単独な製品とされてもよいし、脱水を経てジメチルエーテルを生産し、ジメチルエーテルをカルボニル化・水素化を経てさらにエタノールを生産してもよい。合成ガス中の一酸化炭素と水素ガスと酢酸エステルとの供給比を変更することにより、エタノールとメタノールとの割合を調節し、装置取扱いの自由度及び市場への適応性を向上させることができる。
【0043】
本発明の優位性は、1つの反応器内において、安価で入手しやすい触媒を用いて、一定量の合成ガスと酢酸エステルとの共供給を原料として、適切な反応条件下において、エタノールを効果的に合成するとともにメタノールを併産することができることにある。一般的なメタノール合成に比べて、この発明は一酸化炭素がメタノールへ転化生成する反応を促進しながら、高効率の酢酸エステル水素化反応活性を確保している。この発明は石炭化学工業の発展のために新しいアプローチを開発した。
【0044】
なお、当業者にとって、本発明の技術原理を逸脱しない限り、これらの実施例に対して種々の変更を行うことができ、これらの変更も本発明の保護する範囲内にあると見なされるべきである。