(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
[作業機械]
図1は、実施形態に係る作業機械100の一例を示す斜視図である。実施形態においては、作業機械100がハイブリッド方式の油圧ショベルである例について説明する。以下の説明において、作業機械100を適宜、油圧ショベル100、と称する。
【0022】
図1に示すように、油圧ショベル100は、油圧により作動する作業機1と、作業機1を支持する旋回体である上部旋回体2と、上部旋回体2を支持する下部走行体3と、油圧ショベル100を駆動する駆動装置4と、作業機1を操作するための操作装置5とを備える。
【0023】
上部旋回体2は、オペレータが搭乗する運転室6と、機械室7とを有する。オペレータが着座する運転席6Sが運転室6に設けられる。機械室7は、運転室6の後方に配置される。エンジン及び油圧ポンプ等を含む駆動装置4の少なくとも一部は、機械室7に配置される。下部走行体3は、一対のクローラ8を有する。クローラ8の回転により、油圧ショベル100が走行する。なお、下部走行体3が車輪(タイヤ)でもよい。
【0024】
作業機1は、上部旋回体2に支持される。作業機1は、複数の要素を含む。複数の要素は、作業機を構成する構造体である。実施形態において、作業機1が有する複数の要素は、バケット11、バケット11に連結されるアーム12、及びアーム12に連結されるブーム13である。バケット11とアーム12とはバケットピンを介して連結される。バケット11は、回転軸AX1を中心に回転可能なようにアーム12に支持される。アーム12とブーム13とはアームピンを介して連結される。アーム12は、回転軸AX2を中心に回転可能なようにブーム13に支持される。ブーム13と上部旋回体2とはブームピンを介して連結される。ブーム13は、回転軸AX3を中心に回転可能なように上部旋回体2に支持される。上部旋回体2は、旋回軸RXを中心に回転可能なように、下部走行体被3によって支持される。
【0025】
回転軸AX3と、旋回軸RXと平行な軸とは直交する。以下の説明においては、回転軸AX3の軸方向を適宜、上部旋回体2の車幅方向と称し、回転軸AX3及び旋回軸RXの両方と直交する方向を適宜、上部旋回体2の前後方向と称する。旋回軸RXを基準として作業機1が存在する方向が前方向である。旋回軸RXを基準として機械室7が存在する方向が後方向である。
【0026】
駆動装置4は、作業機1を作動する油圧シリンダ20と、上部旋回体2を旋回させる動力を発生する電動旋回モータ25とを有する。油圧シリンダ20は、作動油によって駆動される。油圧シリンダ20は、バケット11を作動するバケットシリンダ21と、アーム12を作動するアームシリンダ22と、ブーム13を作動するブームシリンダ23とを含む。上部旋回体2は、下部走行体3に支持された状態で、電動旋回モータ25が発生する動力により旋回軸RXを中心に旋回可能である。
【0027】
操作装置5は、運転室6に配置される。操作装置5は、油圧ショベル100のオペレータに操作される操作部材を含む。操作部材は、操作レバー又はジョイスティックを含む。操作装置5が操作されることにより、作業機1が操作される。
【0028】
[制御システム]
図2は、実施形態に係る油圧ショベル100の駆動装置4を含む制御システム9を模式的に示す図である。制御システム9は、作業機1及び作業機1を駆動する複数のアクチュエータを備える油圧ショベル100を制御するためのシステムである。複数のアクチュエータは、複数の油圧シリンダ20、詳細にはバケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23である。作業機1が異なれば、複数のアクチュエータも異なる。実施形態において、作業機1を駆動する複数のアクチュエータは、作動油によって駆動される油圧式のアクチュエータである。作業機1を駆動する複数のアクチュエータは、油圧式のアクチュエータであればよく、油圧シリンダ20には限定されない。複数のアクチュエータは、例えば、油圧モータであってもよい。
【0029】
駆動装置4は、駆動源であるエンジン26と、発電電動機27と、作動油を吐出する油圧ポンプ30とを有する。エンジン26は、例えばディーゼルエンジンである。発電電動機27は、例えばスイッチドリラクタンスモータである。なお、発電電動機27は、PM(Permanent Magnet)モータでもよい。油圧ポンプ30は、可変容量型油圧ポンプである。実施形態において、油圧ポンプ30は、斜板式油圧ポンプである。油圧ポンプ30は、第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを含む。エンジン26の出力軸は、発電電動機27及び油圧ポンプ30と機械的に結合される。エンジン26が駆動することにより、発電電動機27及び油圧ポンプ30が作動する。なお、発電電動機27は、エンジン26の出力軸に機械的に直結されてもよいし、PTO(Power Take Off)のような動力伝達機構を介してエンジン26の出力軸に接続されてもよい。
【0030】
駆動装置4は、油圧駆動システムと電動駆動システムとを含む。油圧駆動システムは、油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30から吐出された作動油が流れる油圧回路40と、油圧回路40を介して供給された作動油により作動する油圧シリンダ20と、走行モータ24とを有する。走行モータ24は、例えば、油圧ポンプ30から吐出される作動油によって駆動される油圧モータである。
【0031】
電動駆動システムは、発電電動機27と、蓄電器14と、変圧器14Cと、第1インバータ15Gと、第2インバータ15Rと、電動旋回モータ25とを有する。エンジン26が駆動すると、発電電動機27のロータ軸が回転する。これにより、発電電動機27は発電可能となる。蓄電器14は、例えば電気二重層蓄電器である。
【0032】
ハイブリッドコントローラ17は、変圧器14Cと第1インバータ15G及び第2インバータ15Rとの間で直流電力を授受させ、また変圧器14Cと蓄電器14との間で直流電力を授受させる。電動旋回モータ25は、発電電動機27又は蓄電器14から供給された電力に基づいて動作し、上部旋回体2を旋回させる動力を発生する。電動旋回モータ25は、例えば埋め込み磁石同期電動旋回モータである。電動旋回モータ25に回転センサ16が設けられる。回転センサ16は、例えばレゾルバ又はロータリーエンコーダである。回転センサ16は、電動旋回モータ25の回転角度又は回転速度を検出する。
【0033】
実施形態において、電動旋回モータ25は、減速時において回生エネルギーを発生する。蓄電器14は、電動旋回モータ25が発生した回生エネルギー(電気エネルギー)により充電される。なお、蓄電器14は、先に上げた電気二重層蓄電器ではなく、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池のような二次電池でもよい。
【0034】
駆動装置4は、運転室6に設けられた操作装置5の操作に基づいて動作する。操作装置5の操作量は、操作量検出部28で検出される。操作量検出部28は、圧力センサを含む。操作装置5の操作量に応じて発生するパイロット油圧が操作量検出部28に検出される。操作量検出部28は、圧力センサの検出信号を操作装置5の操作量に換算する。なお、操作量検出部28はポテンショメータのような電気的センサを含んでもよい。操作装置5が電気式レバーを含む場合、操作装置5の操作量に応じて発生する電気信号が操作量検出部28で検出される。
【0035】
運転室6には、スロットルダイヤル33が設けられる。スロットルダイヤル33は、エンジン26に対する燃料供給量を設定するための操作部である。
【0036】
制御システム9は、ハイブリッドコントローラ17と、エンジン26を制御するエンジンコントローラ18と、油圧ポンプ30を制御するポンプコントローラ19とを含む。ハイブリッドコントローラ17、エンジンコントローラ18、及びポンプコントローラ19は、コンピュータシステムを含む。ハイブリッドコントローラ17、エンジンコントローラ18、及びポンプコントローラ19はそれぞれ、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のような記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。なお、ハイブリッドコントローラ17、エンジンコントローラ18、及びポンプコントローラ19は1つのコントローラに統合されていてもよい。
【0037】
ハイブリッドコントローラ17は、発電電動機27、電動旋回モータ25、蓄電器14、第1インバータ15G及び第2インバータ15Rのそれぞれに設けられた温度センサの検出信号に基づいて、発電電動機27、電動旋回モータ25、蓄電器14、第1インバータ15G及び第2インバータ15Rの温度を調整する。ハイブリッドコントローラ17は、蓄電器14の充放電制御、発電電動機27の発電制御、及び発電電動機27によるエンジン26のアシスト制御を行う。ハイブリッドコントローラ17は、回転センサ16の検出信号に基づいて、電動旋回モータ25を制御する。
【0038】
エンジンコントローラ18は、スロットルダイヤル33の設定値に基づいて指令信号を生成し、エンジン26に設けられたコモンレール制御部29に出力する。コモンレール制御部29は、エンジンコントローラ18から送信された指令信号に基づいて、エンジン26に対する燃料噴射量を調整する。
【0039】
ポンプコントローラ19は、エンジンコントローラ18、ハイブリッドコントローラ17及び操作量検出部28の少なくとも一つから送信された指令信号に基づいて、油圧ポンプ30から吐出される作動油の流量を調整するための指令信号を生成する。実施形態において、駆動装置4は、2台の油圧ポンプ30、すなわち第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32を有する。第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32は、エンジン26によって駆動される。
【0040】
ポンプコントローラ19は、油圧ポンプ30の斜板30Aの傾転角度である傾転角度を制御して、油圧ポンプ30からの作動油の供給量を調整する。油圧ポンプ30には、油圧ポンプ30の斜板角を検出する斜板角センサ30Sが設けられている。斜板角センサ30Sは、第1油圧ポンプ31の斜板31Aの傾転角度を検出する斜板角センサ31Sと、第2油圧ポンプ32の斜板32Aの傾転角度を検出する斜板角センサ32Sとを含む。斜板角センサ30Sの検出信号は、ポンプコントローラ19に出力される。
【0041】
ポンプコントローラ19は、斜板角センサ30Sの検出信号に基づいて、油圧ポンプ30のポンプ容量(cc/rev)を算出する。油圧ポンプ30には、斜板30Aを駆動するサーボ機構が設けられている。ポンプコントローラ19は、サーボ機構を制御して、斜板角を調整する。油圧回路40には、油圧ポンプ30のポンプ吐出圧力を検出するためのポンプ圧センサが設けられている。ポンプ圧センサの検出信号は、ポンプコントローラ19に出力される。実施形態において、エンジンコントローラ18とポンプコントローラ19とは、CAN(Controller Area Network)のような車内LAN(Local Area Network)で接続される。車内LANにより、エンジンコントローラ18とポンプコントローラ19とは、相互にデータを授受することができる。ポンプコントローラ19は、油圧回路40に設置される各センサの検出値を取得し、油圧ポンプ30等を制御するための制御指令を出力する。ポンプコントローラ19が実行する制御の詳細は後述する。
【0042】
[油圧回路40]
図3は、実施形態に係る駆動装置4の油圧回路40を示す図である。駆動装置4は、バケットシリンダ21と、アームシリンダ22と、ブームシリンダ23と、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22に供給される作動油を吐出する第1油圧ポンプ31と、ブームシリンダ23に供給される作動油を吐出する第2油圧ポンプ32とを備える。
【0043】
油圧回路40は、第1油圧ポンプ31と接続される第1ポンプ流路41と、第2油圧ポンプ32と接続される第2ポンプ流路42とを有する。油圧回路40は、第1ポンプ流路41と接続される第1供給流路43及び第2供給流路44と、第2ポンプ流路42と接続される第3供給流路45及び第4供給流路46とを有する。
【0044】
第1ポンプ流路41は、第1分岐部P1において、第1供給流路43と第2供給流路44とに分岐される。第2ポンプ流路42は、第4分岐部P4において、第3供給流路45と第4供給流路46とに分岐される。
【0045】
油圧回路40は、第1供給流路43と接続される第1分岐流路47及び第2分岐流路48と、第2供給流路44と接続される第3分岐流路49及び第4分岐流路50とを有する。第1供給流路43は、第2分岐部P2において、第1分岐流路47と第2分岐流路48とに分岐される。第2供給流路44は、第3分岐部P3において、第3分岐流路49と第4分岐流路50とに分岐される。油圧回路40は、第3供給流路45と接続される第5分岐流路51と、第4供給流路46と接続される第6分岐流路52とを有する。
【0046】
油圧回路40は、第1分岐流路47及び第3分岐流路49と接続される第1主操作弁61と、第2分岐流路48及び第4分岐流路50と接続される第2主操作弁62と、第5分岐流路51及び第6分岐流路52と接続される第3主操作弁63とを有する。
【0047】
油圧回路40は、第1主操作弁61とバケットシリンダ21のキャップ側空間21Cとを接続する第1バケット流路21Aと、第1主操作弁61とバケットシリンダ21のロッド側空間21Lとを接続する第2バケット流路21Bとを有する。油圧回路40は、第2主操作弁62とアームシリンダ22のロッド側空間22Lとを接続する第1アーム流路22Aと、第2主操作弁62とアームシリンダ22のキャップ側空間22Cとを接続する第2アーム流路22Bとを有する。油圧回路40は、第3主操作弁63とブームシリンダ23のキャップ側空間23Cとを接続する第1ブーム流路23Aと、第3主操作弁63とブームシリンダ23のロッド側空間23Lとを接続する第2ブーム流路23Bとを有する。
【0048】
油圧シリンダ20のキャップ側空間とは、シリンダヘッドカバーとピストンとの間の空間である。油圧シリンダ20のロッド側空間とは、ピストンロッドが配置される空間である。バケットシリンダ21のキャップ側空間21Cに作動油が供給され、バケットシリンダ21が伸長することにより、バケット11は掘削動作する。バケットシリンダ21のロッド側空間21Lに作動油が供給され、バケットシリンダ21が縮退することにより、バケット11はダンプ動作する。
【0049】
アームシリンダ22のキャップ側空間22Cに作動油が供給され、アームシリンダ22が伸長することにより、アーム12は掘削動作する。アームシリンダ22のロッド側空間22Lに作動油が供給され、アームシリンダ22が縮退することにより、アーム12はダンプ動作する。
【0050】
ブームシリンダ23のキャップ側空間23Cに作動油が供給され、ブームシリンダ23が伸長することにより、ブーム13は上げ動作する。ブームシリンダ23のロッド側空間23Lに作動油が供給され、ブームシリンダ23が縮退することにより、ブーム13は下げ動作する。
【0051】
操作装置5の操作により、作業機1が動作する。実施形態において、操作装置5は、運転席6Sに着座したオペレータの右側に配置される右操作レバー5Rと、左側に配置される左操作レバー5Lとを含む。右操作レバー5Rが前後方向に動かされると、ブーム13は下げ動作又は上げ動作する。右操作レバー5Rが左右方向(車幅方向)に動かされると、バケット11は掘削動作又はダンプ動作する。左操作レバー5Lが前後方向に動かされると、アーム12はダンプ動作又は掘削動作する。左操作レバー5Lが左右方向に動かされると、上部旋回体2は左旋回又は右旋回する。左操作レバー5Lが前後方向に動かされた場合に上部旋回体2が右旋回又は左旋回し、左操作レバー5Lが左右方向に動かされた場合にアーム12がダンプ動作又は掘削動作してもよい。
【0052】
第1油圧ポンプ31の斜板31Aは、サーボ機構31Bによって駆動される。サーボ機構31Bは、ポンプコントローラ19からの指令信号に基づいて作動して、第1油圧ポンプ31の斜板31Aの傾転角度を調整する。第1油圧ポンプ31の斜板31Aの傾転角度が調整されることによって、第1油圧ポンプ31のポンプ容量(cc/rev)が調整される。同様に、第2油圧ポンプ32の斜板32Aは、サーボ機構32Bによって駆動される。第2油圧ポンプ32の斜板32Aの傾転角度が調整されることによって、第2油圧ポンプ32のポンプ容量(cc/rev)が調整される。
【0053】
第1主操作弁61は、第1油圧ポンプ31からバケットシリンダ21に供給される作動油の方向及び流量を調整する方向制御弁である。第2主操作弁62は、第1油圧ポンプ31からアームシリンダ22に供給される作動油の方向及び流量を調整する方向制御弁である。第3主操作弁63は、第2油圧ポンプ32からブームシリンダ23に供給される作動油の方向及び流量を調整する方向制御弁である。
【0054】
第1主操作弁61は、スライドスプール方式の方向制御弁である。第1主操作弁61のスプールは、バケットシリンダ21に対する作動油の供給を停止してバケットシリンダ21を停止させる停止位置PT0と、キャップ側空間21Cに作動油が供給されるように第1分岐流路47と第1バケット流路21Aとを接続してバケットシリンダ21を伸長させる第1位置PT1と、ロッド側空間21Lに作動油が供給されるように第3分岐流路49と第2バケット流路21Bとを接続してバケットシリンダ21を縮退させる第2位置PT2とを移動可能である。バケットシリンダ21が停止状態、伸長状態、及び縮退状態の少なくとも一つになるように、第1主操作弁61が操作される。
【0055】
第2主操作弁62は、第1主操作弁61と同等の構造である。第2主操作弁62のスプールは、アームシリンダ22に対する作動油の供給を停止してアームシリンダ22を停止させる停止位置と、キャップ側空間22Cに作動油が供給されるように第4分岐流路50と第2アーム流路22Bとを接続してアームシリンダ22を伸長させる第2位置と、ロッド側空間22Lに作動油が供給されるように第2分岐流路48と第1アーム流路22Aとを接続してアームシリンダ22を縮退させる第1位置とを移動可能である。アームシリンダ22が停止状態、伸長状態、及び縮退状態の少なくとも一つになるように、第2主操作弁62が操作される。
【0056】
第3主操作弁63は、第1主操作弁61と同等の構造である。第3主操作弁63のスプールは、ブームシリンダ23に対する作動油の供給を停止してブームシリンダ23を停止させる停止位置と、キャップ側空間23Cに作動油が供給されるように第5分岐流路51と第1ブーム流路23Aとを接続してブームシリンダ23を伸長させる第1位置と、ロッド側空間23Lに作動油が供給されるように第6分岐流路52と第2ブーム流路23Bとを接続してブームシリンダ23を縮退させる第2位置とを移動可能である。ブームシリンダ23が停止状態、伸長状態、及び縮退状態の少なくとも一つになるように、第3主操作弁63が操作される。
【0057】
第1主操作弁61は、操作装置5によって操作される。操作装置5が操作されることによってパイロット油圧が第1主操作弁61に作用し、第1主操作弁61からバケットシリンダ21に供給される作動油の方向及び流量が決定される。バケットシリンダ21に供給される作動油の方向に対応する移動方向にバケットシリンダ21が動作し、バケットシリンダ21に供給される作動油の流量に対応するシリンダ速度でバケットシリンダ21が動作する。
【0058】
同様に、第2主操作弁62は、操作装置5によって操作される。操作装置5が操作されることによって、第2主操作弁62からアームシリンダ22に供給される作動油の方向及び流量が決定される。アームシリンダ22に供給される作動油の方向に対応する移動方向にアームシリンダ22が動作し、アームシリンダ22に供給される作動油の流量に対応するシリンダ速度でアームシリンダ22が動作する。
【0059】
同様に、第3主操作弁63は、操作装置5によって操作される。操作装置5が操作されることによって、第3主操作弁63からブームシリンダ23に供給される作動油の方向及び流量が決定される。ブームシリンダ23に供給される作動油の方向に対応する移動方向にブームシリンダ23が作動し、ブームシリンダ23に供給される作動油の流量に対応するシリンダ速度でブームシリンダ23が動作する。
【0060】
バケットシリンダ21が動作することにより、バケットシリンダ21の移動方向及びシリンダ速度に基づいてバケット11が駆動される。アームシリンダ22が作動することにより、アームシリンダ22の移動方向及びシリンダ速度に基づいてアーム12が駆動される。ブームシリンダ23が動作することにより、ブームシリンダ23の移動方向及びシリンダ速度に基づいてブーム13が駆動される。
【0061】
バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23から排出された作動油は、排出流路53を介して、タンク54に排出される。
【0062】
第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とは、合流流路55によって接続される。合流流路55は、第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを接続する通路である。詳細には、合流流路55は、第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とを介して第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを接続する。
【0063】
合流流路55には、第1合分流弁分が設けられる。第1合分流弁67は、合流流路55に設けられて、合流流路55を開閉する開閉装置である。第1合分流弁67は、合流流路55を開閉することにより、第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とが接続される合流状態と、第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とが分離される分流状態とを切り替える。実施形態において、第1合分流弁67は、切替弁が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
合流状態とは、第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とが合流流路55を介して接続され、第1ポンプ流路41から吐出された作動油と第2ポンプ流路42から吐出された作動油とが合分流弁において合流する状態をいう。合流状態は、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の両方から供給される作動油を複数のアクチュエータ、すなわちバケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23に供給する第1状態である。
【0065】
分流状態とは、第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とを接続する合流流路55が合分流弁によって分離され、第1ポンプ流路41から吐出された作動油と第2ポンプ流路42から吐出された作動油とが分離された状態をいう。分流状態は、第1油圧ポンプ31から作動油が供給されるアクチュエータと第2油圧ポンプ32から作動油が供給されるアクチュエータとが異なる第2状態である。実施形態では、分流状態においては、第1油圧ポンプ31から作動油がバケットシリンダ21及びアームシリンダ22に供給され、第2油圧ポンプ32から作動油がブームシリンダ23に供給される。
【0066】
第1合分流弁67のスプールは、合流流路55を開路して第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とを接続する合流位置と、合流流路55を閉路して第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とを分離する分流位置とを移動可能である。第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とが合流状態及び分流状態のいずれか一方になるように、第1合分流弁67が制御される。
【0067】
第1合分流弁67が閉弁状態になると、合流流路55が閉じられる。合流流路55が閉じられた状態において、第1油圧ポンプ31は、少なくとも1つのアクチュエータが属する第1アクチュエータ群に作動油を供給し、第2油圧ポンプ32は、第1アクチュエータ群に属するアクチュエータとは異なる、少なくとも1つのアクチュエータが属する第2アクチュエータ群に作動油を供給する。実施形態において、第1アクチュエータ群には、バケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23のうち、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22が属する。第2アクチュエータ群には、バケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23のうち、ブームシリンダ23が属する。
【0068】
第1合分流弁67が閉弁状態になることにより合流流路55が閉じられると、第1油圧ポンプ31が吐出した作動油は、第1ポンプ流路41、第1主操作弁61及び第2主操作弁62を通ってバケットシリンダ21及びアームシリンダ22に供給される。また、第2油圧ポンプ32が吐出した作動油は、第2ポンプ流路42、第3主操作弁63を通ってブームシリンダ23に供給される。
【0069】
第1合分流弁67が開弁状態になることにより合流流路55が開かれると、第1ポンプ流路41と第2ポンプ流路42とが接続される。その結果、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、第1ポンプ流路41、第2ポンプ流路42、第1主操作弁61、第2主操作弁62及び第3主操作弁63を通って、バケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23に供給される。
【0070】
第1合分流弁67は、前述したポンプコントローラ19によって制御される。実施形態において、ポンプコントローラ19は、作業機1の操作状態と、油圧シリンダ20の負荷とに基づいて、それぞれの油圧シリンダ20に配分される作動油の配分流量を求め、得られた配分流量に基づいて第1合分流弁67を動作させる制御装置である。ポンプコントローラ19の詳細については後述する。
【0071】
[第2合分流弁68]
油圧回路40は、切替弁である第2合分流弁68を有する。第2合分流弁68は、第1主操作弁61と第2主操作弁62との間に設けられた第1シャトル弁80Aと接続される。第1主操作弁61と第2主操作弁62との最大圧力が第1シャトル弁80Aで選択され第2合分流弁68へ出力される。また、第2合分流弁68と第3主操作弁63との間に第2シャトル弁80Bが接続される。第1シャトル弁80Aは第2合分流弁68の接続口dに接続され、第2シャトル弁は第2合分流弁68の接続口bに接続される。
【0072】
第2合分流弁68の接続口cには第1油路91が接続され、接続口aには第2油路92が接続される。第1油路91は、バケットシリンダ21の圧力補償弁71,72、アームシリンダ22の圧力補償弁73,74及び第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bに接続される。第2油路92は、ブームシリンダ23の圧力補償弁75,76及び第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bに接続される。サーボ機構31Bは、第1油圧ポンプ31を動作させる第1油圧ポンプ制御装置である。サーボ機構32Bは、第2油圧ポンプ32を動作させる第2油圧ポンプ制御装置である。
【0073】
第2合分流弁68は、第1シャトル弁80A及び第2シャトル弁80Bにより、バケットシリンダ21(第1軸)、アームシリンダ22(第2軸)、及びブームシリンダ23(第3軸)の各軸に供給される作動油が減圧されたロードセンシング圧(LS圧)の最大圧力を選択する。ロードセンシング圧とは、圧力補償に用いられるパイロット油圧である。
【0074】
第2合分流弁68は、第1シャトル弁80Aと第2シャトル弁80Bとを合流位置PJと分流位置PSとに切り替えるとともに、第1油路91と第2油路92とを合流位置PJと分流位置PSとに切り替える。第2合分流弁68は、中間位置PIを経て、合流位置PJと分流位置PSとを切り替える。第2合分流弁68は、前述したポンプコントローラ19によって制御される。
【0075】
中間位置PIにおいて、接続口aと接続口bとを接続する通路Tf及び接続口cと接続口dとを接続する通路Tsには絞りSが設けられる。また、中間位置PIにおいて、通路Tfと通路Tsとを接続する通路Ttに絞りSは設けられない。すなわち、通路Tf及び通路Tsの断面積は、通路Ttの断面積よりも大きい。このような構造により、第2合分流弁68は、合流位置PJにおける接続状態、すなわち全開状態と、分流位置PSにおける遮断状態、すなわち全閉状態と、中間位置PIにおける中間の状態、すなわち中間の開口状態とを実現する。
【0076】
第2合分流弁68が合流位置PJになると、第1シャトル弁80Aと第2シャトル弁80Bとが接続されるとともに、第1油路91と第2油路92とが接続される。第2合分流弁68が分流位置PSになると、第1シャトル弁80Aと第2シャトル弁80Bとが遮断されるとともに、第1油路91と第2油路92とが遮断される。この場合、第1シャトル弁80Aと第1油路91とが接続されるとともに、第2シャトル弁80Bと第2油路92とが遮断される。
【0077】
第2合分流弁68が中間位置PIになると、第1シャトル弁80A及び第2シャトル弁80Bとは絞りSが設けられた状態で接続され、第1油路91と第2油路92とは絞りSが設けられた状態で接続される。中間位置PIにおいて、第1シャトル弁80Aと第1油路91とは絞りSが設けられない状態で接続される。
【0078】
第2合分流弁68が合流位置PJ、すなわち合流状態のときは、第1軸から第3軸の最大LS圧が選択される。選択された最大LS圧は、第1軸から第3軸それぞれの圧力補償弁70と、第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bと、第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bとに供給される。第2合分流弁68が分流位置PS、すなわち分流状態のときは、第1軸と第2軸との最大LS圧が第1軸と第2軸の圧力補償弁70と第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bとに供給され、第3軸のLS圧が第3軸の圧力補償弁70と第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bとに供給される。
【0079】
第2合分流弁68が合流位置PJである場合、第1シャトル弁80A及び第2シャトル弁80Bは、第1主操作弁61、第2主操作弁62、及び第3主操作弁63から出力されたパイロット油圧のうち、最大値を示すパイロット油圧を検出する。検出されたパイロット油圧は、第1油路91及び第2油路93を介して、圧力補償弁70と、油圧ポンプ30(31,32)のサーボ機構(31B,32B)とに導かれる。詳細には、最大値を示すパイロット油圧は、第1油路91によって第1アクチュエータ群に属する油圧シリンダ20の圧力補償弁70に導かれ、第2油路92によって第2アクチュエータ群に属する油圧シリンダ20の圧力補償弁70に導かれる。
【0080】
第2合分流弁68が分流位置PSである場合、第1シャトル弁80Aは、第1主操作弁61及び第2主操作弁62から出力されたパイロット油圧のうち、最大値を示すパイロット油圧を検出する。検出されたパイロット油圧は、第1油路91によって圧力補償弁71,72,73及び74と、第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bとに導かれる。また、第2合分流弁68が分流位置PSである場合、第2シャトル弁80Bは、第3主操作弁63から出力されたパイロット油圧を検出する。検出されたパイロット油圧は、第2油路92によって圧力補償弁75及び76と、第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bとに導かれる。
【0081】
第2合分流弁68が合流位置PJである場合、第1シャトル弁80A及び第2シャトル弁80Bは、第1アクチュエータ群及び第2アクチュエータ群に属する複数のアクチュエータの主操作弁60から出力されたパイロット油圧のうち、最大値を示すパイロット油圧を選択する。選択されたパイロット油圧は、第1アクチュエータ群及び第2アクチュエータ群に属する複数の圧力補償弁70と、油圧ポンプ30(31,32)のサーボ機構(31B,32B)とに供給される。第2合分流弁68が分流位置PSである場合、第1シャトル弁80Aは、第1アクチュエータ群に属する複数の油圧シリンダ20の主操作弁60から出力されたパイロット油圧のうち、最大値を示すパイロット油圧を選択する。選択されたパイロット油圧は、第2アクチュエータ群に属する複数の圧力補償弁70と、第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bとに供給される。また、第2合分流弁68が分流位置PSである場合、第2シャトル弁80Bは、第2アクチュエータ群に属する少なくとも1つのアクチュエータの主操作弁60から出力されたパイロット油圧を選択する。選択されたパイロット油圧は、第2アクチュエータ群に属する圧力補償弁70と、第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bとに供給される。
【0082】
第1主操作弁61及び第2主操作弁62から出力されたパイロット油圧は、第1アクチュエータ群に属するアクチュエータ、すなわち油圧シリンダ20の負荷圧である。第3主操作弁63から出力されたパイロット油圧は、第2アクチュエータ群に属するアクチュエータ、すなわち油圧シリンダ20の負荷圧である。第1シャトル弁80Aは、第1アクチュエータ群に属するアクチュエータの最大負荷圧を検出する第1検出器である。第2シャトル弁80Bは、第2アクチュエータ群に属するアクチュエータの最大負荷圧を検出する第2検出器である。
【0083】
図4は、比較例において、油圧ポンプの吐出圧力及び最大LS圧と、油圧ポンプ及び油圧シリンダの流量が時間tの経過とともに変化する一例を示す図である。
図5は、比較例に係る第2合分流弁68cを示す図である。
図6は、実施形態において、油圧ポンプの吐出圧力及び最大LS圧と、油圧ポンプ及び油圧シリンダの流量が時間tの経過とともに変化する一例を示す図である。
【0084】
図4及び
図6の横軸は時間tである。
図4は比較例に係る第2合分流弁による結果の一例であり、
図6は実施形態に係る第2合分流弁68による結果の一例である。比較例に係る第2合分流弁は、
図5に示されるように、中間位置PIにおける通路Tf、通路Ts及び通路Ttのすべてに、絞りSが設けられたものである。
【0085】
圧力Ppfは第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力であり、圧力Ppsは第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力である。圧力PLfは第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bに与えられる最大LS圧であり、圧力PLsは第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bの最大LS圧である。流量Qpfは第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の流量であり、流量Qpsは第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の流量である。流量Qamはアームシリンダ22に供給される作動油の流量であり、流量Qbmはブームシリンダ23に供給される作動油の流量である。
【0086】
図4及び
図6は、いずれも時間tの進行とともに、分流状態STSから中間状態STIを経て合流状態STJに変化した例を示している。比較例において、第2合分流弁68cが分流位置PS、すなわち分流状態STSである場合、接続口cと接続口dとが接続されているため、接続口c及び接続口dは、いずれも同じ圧力になる。第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bに与えられる最大LS圧、すなわち圧力PLfは第1アクチュエータ群に属する油圧シリンダ20の負荷に相当する圧力とほぼ同じ圧力で安定する。
【0087】
第2合分流弁68cが中間位置PI、すなわち中間状態STIになると、接続口aと接続口cとを接続する油路Tfが少し開く。第2合分流弁68cは、油路Tfと油路Tsとを接続する油路Ttに絞りSが設けられているので、高圧側の接続口cの圧力、すなわち圧力PLfが低圧側の接続口aの圧力に近づき、低下する。圧力PLfが低下した瞬間において、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力Ppfはほとんど変化しないため、中間状態STIにおける圧力PLsと圧力PLfとの差圧は、分離状態STSにおける圧力PLsと圧力PLfとの差圧よりも大きくなる。その結果、サーボ機構31Bは第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の流量Qpfを低減させる方向に斜板31を動作させるので、流量Qpfは低下する。流量Qpfが低下すると、第1アクチュエータ群に属する油圧シリンダ20、この例ではアームシリンダ22に供給される作動油の流量Qamが低下してアームシリンダ22の速度が急激に低下するので、油圧ショベル100に衝撃が発生する。このように、比較例の第2合分流弁68cは、分流状態STSから中間状態STIを経て合流状態STJに移行する場合に、油圧ショベル100に衝撃が発生する。
【0088】
実施形態の第2合分流弁68は、分流状態STSにおいては比較例の第2合分流弁68cと同様であるが、中間位置PI、すなわち中間状態STIになった場合における接続口cの圧力の挙動が異なる。すなわち、第2合分流弁68は、接続口cと接続口dとを接続する油路Ttに絞りSが設けられていないため、中間位置PIになると接続口aと接続口cとを接続する油路TFが少し開いた状態であっても、接続口cの圧力は、接続口dの圧力とほぼ同じ大きさになる。このため、第2合分流弁68は、分流状態STSから中間状態STIに変化しても、接続口cの圧力、すなわち圧力PLfはほとんど低下しない。
【0089】
第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力Ppfはほとんど変化しないため、中間状態STIにおける圧力PLsと圧力PLfとの差圧は、分離状態STSにおける圧力PLsと圧力PLfとの差圧とほぼ同じ大きさになる。このため、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の流量Qpfを低減させる方向へ斜板31が動作する量は、比較例の第2合分流弁68cよりも小さくなるので、流量Qpfの低下が抑制される。流量Qpfの低下が抑制されると、アームシリンダ22に供給される作動油の流量Qamの低下が抑制されるので、アームシリンダ22の速度の急激な変化も抑制される。その結果、油圧ショベル100に発生する衝撃も抑制される。このように、実施形態の第2合分流弁68は、分流状態STSから中間状態STIを経て合流状態STJに移行する場合に、油圧ショベル100に発生する衝撃を抑制できる。
【0090】
[圧力センサ]
第1バケット流路21Aには、圧力センサ81Cが取り付けられる。第2バケット流路21Bには、圧力センサ81Lが取り付けられる。圧力センサ81Cは、バケットシリンダ21のキャップ側空間21C内の圧力を検出する。圧力センサ81Lは、バケットシリンダ21のロッド側空間21L内の圧力を検出する。
【0091】
第1アーム流路22Aには、圧力センサ82Cが取り付けられる。第2アーム流路22Bには、圧力センサ82Lが取り付けられる。圧力センサ82Cは、アームシリンダ22のキャップ側空間22C内の圧力を検出する。圧力センサ82Lは、アームシリンダ22のロッド側空間22L内の圧力を検出する。
【0092】
第1ブーム流路23Aには、圧力センサ83Cが取り付けられる。第2ブーム流路23Bには、圧力センサ83Lが取り付けられる。圧力センサ83Cは、ブームシリンダ23のキャップ側空間23C内の圧力を検出する。圧力センサ83Lは、ブームシリンダ23のロッド側空間21L内の圧力を検出する。
【0093】
第1油圧ポンプ31の吐出口側、詳細には第1油圧ポンプ31と第1ポンプ流路41との間には、圧力センサ84が取り付けられる。圧力センサ84は、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力を検出する。第2油圧ポンプ32の吐出口側、詳細には第2油圧ポンプ32と第2ポンプ流路42との間には、圧力センサ85が取り付けられる。圧力センサ85は、第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力を検出する。それぞれの圧力センサ81C,81L,82C,82L,83C,83L,84,85によって検出された検出値は、ポンプコントローラ19が受け取る。
【0094】
[圧力補償弁70]
油圧回路40は、圧力補償弁70を有する。圧力補償弁70は、連通と絞りと遮断とを選択するための選択ポートを備える。圧力補償弁70は、自己圧で遮断と、絞りと、連通との切り替えを可能とする、絞り弁を含む。圧力補償弁70は、各軸の負荷圧が異なっていても、各軸のメータリング開口面積の比率に応じて流量分配を補償することを目的としている。圧力補償弁70がない場合、低負荷側の軸にほとんどの作動油が流れてしまう。圧力補償弁70は、低負荷圧の軸の主操作弁60の出口圧力が、最大負荷圧の軸の主操作弁60の出口圧力と同等になるように、低負荷圧の軸に圧力損失を作用させることで、各主操作弁60の出口圧力が同一となるため、流量分配の機能を実現する。
【0095】
圧力補償弁70は、第1主操作弁61に接続される圧力補償弁71及び圧力補償弁72と、第2主操作弁62に接続される圧力補償弁73及び圧力補償弁74と、第3主操作弁63に接続される圧力補償弁75及び圧力補償弁76とを含む。
【0096】
圧力補償弁71は、キャップ側空間21Cに作動油が供給されるように第1分岐流路47と第1バケット流路21Aとが接続された状態において第1主操作弁61の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。圧力補償弁72は、ロッド側空間21Lに作動油が供給されるように第3分岐流路49と第2バケット流路21Bとが接続された状態において第1主操作弁61の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。
【0097】
圧力補償弁73は、ロッド側空間22Lに作動油が供給されるように第2分岐流路48と第1アーム流路22Aとが接続された状態において第2主操作弁62の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。圧力補償弁74は、キャップ側空間22Cに作動油が供給されるように第4分岐流路50と第2アーム流路22Bとが接続された状態において第2主操作弁62の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。
【0098】
なお、主操作弁の前後差圧(メータリング差圧)とは、主操作弁の油圧ポンプ側に対応する入口ポートの圧力と、油圧シリンダ側に対応する出口ポートの圧力との差をいい、流量を計測(metering)するための差圧である。
【0099】
圧力補償弁70により、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22の一方の油圧シリンダ20に軽負荷が作用し、他方の油圧シリンダ20に高負荷が作用した場合においても、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22のそれぞれに、操作装置5の操作量に応じた流量で作動油を分配することができる。
【0100】
圧力補償弁70は、複数の油圧シリンダ20の負荷によらず、操作に基づく流量を供給可能にする。例えば、バケットシリンダ21に高負荷が作用し、アームシリンダ22に軽負荷が作用する場合、軽負荷側に配置された圧力補償弁70(73,74)は、第1主操作弁61からバケットシリンダ21に作動油が供給され発生するメータリング差圧ΔP1にかかわらず、第2主操作弁62からアームシリンダ22に作動油が供給されるとき、第2主操作弁62の操作量に基づく流量が供給されるように、軽負荷側であるアームシリンダ22側のメータリング差圧ΔP2がバケットシリンダ21側のメータリング差圧ΔP1とほぼ同一の圧力となるように補償する。
【0101】
アームシリンダ22に高負荷が作用し、バケットシリンダ21に軽負荷が作用する場合、軽負荷側に配置された圧力補償弁70(71,72)は、第2主操作弁62からアームシリンダ22に作動油が供給され発生するメータリング差圧ΔP2に関わらず、第1主操作弁61からバケットシリンダ21に作動油が供給されるとき、第1主操作弁61の操作量に基づく流量が供給されるように、軽負荷側のメータリング差圧ΔP1を補償する。
【0102】
[ポンプコントローラ19]
図7は、実施形態に係るポンプコントローラ19の機能ブロック図である。ポンプコントローラ19は、処理部19Cと、記憶部19Mと、入出力部19IOとを有する。処理部19Cはプロセッサであり、記憶部19Mは記憶装置であり、入出力部19IOは入出力インターフェース装置である。処理部19Cは、配分流量演算部19Caと、決定部19Cbと、遅れ処理部19Ccと、操作状態判定部19Cdとを含む。記憶部19Mは、処理部19Cが処理を実行する際の一時記憶部としても使用される。
【0103】
配分流量演算部19Caは、バケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23に配分される作動油の流量である配分流量を求める。決定部19Cbは、配分流量演算部19Caによって求められた配分流量に基づいて、第1合分流弁67を開くか否かを決定する。遅れ処理部19Ccは、配分流量演算部19Caによって求められた配分流量が増加する場合、配分流量演算部19Caによって求められた配分流量に遅れ処理を施した修正配分流量を求めて、決定部19Cbに与える。遅れ処理は、配分流量演算部19Caによって求められた配分流量の、時間に対する増加量を小さくする処理である。操作状態判定部19Cdは、操作装置5に与えられた入力を用いて、作業機1の操作状態を判定する。
【0104】
プロセッサである処理部19Cは、配分流量演算部19Ca、決定部19Cb、遅れ処理部19Cc及び操作状態判定部19Cdの機能を実現するためのコンピュータプログラムを記憶部19Mから読み出して実行する。この処理によって、配分流量演算部19Ca、決定部19Cb、遅れ処理部19Cc及び操作状態判定部19Cdの機能が実現される。これらの機能は、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせた処理回路によって実現されてもよい。
【0105】
入出力部19IOには、圧力センサ81C,81L,82C,82L,83C,83L,84,85,86,87及び88と、第1合分流弁67と、第2合分流弁68とが接続される。圧力センサ86,87及び88は、操作量検出部28が有する圧力センサである。圧力センサ86は、バケット11を操作するための入力が操作装置5に与えられた場合のパイロット油圧を検出する。圧力センサ87は、アーム12を操作するための操作装置5に与えられた場合のパイロット油圧を検出する。圧力センサ88は、ブーム13を操作するための入力が操作装置5に与えられた場合のパイロット油圧を検出する。
【0106】
ポンプコントローラ19、詳細には処理部19Cは、入出力部19IOから圧力センサ81C,81L,82C,82L,83C,83L,84,85,86,87及び88の検出値を取得して、分流状態と合流状態とを切り替える制御に用いる。分流状態と合流状態とを切り替える制御は、少なくとも第1合分流弁67を動作させる制御であり、さらに第2合分流弁68を動作させる制御を含む。次に、第1合分流弁67を開閉する制御について説明する。
【0107】
[第1合分流弁67を動作させる制御]
ポンプコントローラ19は、操作装置5の圧力センサ86,87及び88の検出値に基づいて作業機1の操作状態を求める。また、ポンプコントローラ19は、圧力センサ81C,81L,82C,82L,83C及び83Lの検出値から、バケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23に配分される作動油の配分流量を求める。
【0108】
ポンプコントローラ19は、求めた配分流量と、第1合分流弁67を動作させるか否かを決定する際に用いられる作動油の流量の閾値とを比較し、配分流量が閾値以下である場合は第1合分流弁67を閉じて、分流状態とする。ポンプコントローラ19は、求めた配分流量が閾値よりも大きい場合は第1合分流弁67を開いて合流状態とする。閾値は、第1油圧ポンプ31が1台で供給できる作動油の流量又は第2油圧ポンプ32が1台で供給できる作動油の流量に基づいて定められる。
【0109】
配分流量をQとすると、配分流量は式(1)で求めることができる。式(1)中のQdは要求流量、PPは油圧ポンプ30が吐出する作動油の圧力、ΔPAは設定差圧である。実施形態において、第1主操作弁61、第2主操作弁62及び第3主操作弁63は、入口側と出口側との差圧が一定になるようにする。この差圧が設定差圧ΔPAであり、第1主操作弁61、第2主操作弁62及び第3主操作弁63毎に予め設定されて、ポンプコントローラ19の記憶部19Mに記憶されている。配分流量Qに最も寄与するのは作業機5の操作状態なので、式(1)においては、作業機1の操作状態によって定まる要求流量Qdを含んだ式となっている。このように、作業機5の操作状態を考慮して配分流量Qが求められるので、分流状態と合流状態とを精度よく切り替えることができる。
Q=Qd×√(PP/ΔPL)・・・(1)
【0110】
配分流量は、式(2)で求められてもよい。式(2)中のLAは油圧シリンダ20の負荷である。油圧シリンダ20の負荷が考慮されることにより、配分流量Qの精度が向上する。負荷LAは、それぞれの油圧シリンダ20の実際の負荷であってもよいし、予め定められた定数であってもよいし、0であってもよい。負荷Lが0である場合、式(2)は式(1)になる。
Q=Qd×√{(PP−LA)/ΔPL}・・・(2)
【0111】
配分流量Qは、それぞれの油圧シリンダ20、すなわちバケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23毎に求められる。バケットシリンダ21の配分流量をQbk、アームシリンダ22の配分流量をQa、ブームシリンダ23の配分流量をQbとすると、配分流量Qbk,Qa及びQbは、式(3)から式(5)で求められる。
Qbk=Qdbk×√{(PP−LAbk)/ΔPL}・・・(3)
Qa=Qda×√{(PP−LAa)/ΔPL}・・・(4)
Qb=Qdb×√{(PP−LAb)/ΔPL}・・・(5)
【0112】
式(2)のQdbkはバケットシリンダ21の要求流量、LAbkはバケットシリンダ21の負荷である。式(3)のQdaはアームシリンダ22の要求流量、LAaはアームシリンダ22の負荷である。式(4)のQdbはブームシリンダ23の要求流量、LAbはブームシリンダ23の負荷である。設定差圧ΔPLは、バケットシリンダ21に作動油を給排油する第1主操作弁61と、アームシリンダ22に作動油を給排油する第2主操作弁62と、ブームシリンダ23に作動油を給排油する第3主操作弁63とで、いずれも同じ値が用いられる。前述したように、負荷LAbk、負荷LAa及び負荷LAbは定数又は0であってもよい。この場合、配分流量Qは、要求流量Qdに基づいて、すなわち作業機5の操作状態に基づいて定められる。負荷LAbk、負荷LAa及び負荷LAbがバケットシリンダ21、アームシリンダ22及びブームシリンダ23の実際の負荷である場合、配分流量Qは、作業機5の操作状態及び油圧シリンダ20の負荷に基づいて定められる。
【0113】
要求流量Qdbk,Qda及びQdbは、操作装置5の操作量検出部28が有する圧力センサ86,87及び88によって検出されたパイロット油圧に基づいて求められる。圧力センサ86,87及び88によって検出されたパイロット油圧は、作業機1の操作状態に対応している。配分流量演算部19Caは、パイロット油圧を主操作弁60のスプールストロークに変換し、得られたスプールストロークから、要求流量Qdbk,Qda及びQdbを求める。パイロット油圧と主操作弁60のスプールストロークとの関係、及び主操作弁60のスプールストロークと要求流量Qdbk,Qda及びQdbとの関係は、それぞれ変換テーブルに記述される。変換テーブルは、記憶部19Mに記憶される。このように、要求流量Qdbk,Qda及びQdbは、作業機1の操作状態に基づいて求められる。
【0114】
配分流量演算部19Caは、バケット11の操作に対応したパイロット油圧を検出する圧力センサ86の検出値を取得し、第1主操作弁61のスプールストロークに変換する。そして、配分流量演算部19Caは、得られたスプールストロークからバケットシリンダ21の要求流量Qdbkを求める。
【0115】
配分流量演算部19Caは、アーム12の操作に対応したパイロット油圧を検出する圧力センサ87の検出値を取得し、第2主操作弁62のスプールストロークに変換する。そして、配分流量演算部19Caは、得られたスプールストロークからアームシリンダ22の要求流量Qdaを求める。
【0116】
配分流量演算部19Caは、ブーム13の操作に対応したパイロット油圧を検出する圧力センサ88の検出値を取得し、第3主操作弁63のスプールストロークに変換する。そして、配分流量演算部19Caは、得られたスプールストロークからブームシリンダ23の要求流量Qdbを求める。
【0117】
第1主操作弁61、第2主操作弁62及び第3主操作弁63のスプールがストロークする方向によって、バケット11、アーム12及びブーム13が動作する方向が異なる。配分流量演算部19Caは、バケット11、アーム12及びブーム13が動作する方向によって、負荷LAを求める際に、キャップ側空間21C,22C及び23Cの圧力、又はロッド側空間21L,22L及び23Lの圧力のいずれを用いるかを選択する。例えば、スプールストロークが第1の方向である場合、配分流量演算部19Caは、キャップ側空間21C,22C及び23Cの圧力を検出する圧力センサ81C,82C及び83Cの検出値を用いて負荷LAbk,LAa及びLAbを求める。スプールストロークが第1の方向とは反対方向である第2の方向である場合、配分流量演算部19Caは、ロッド側空間21L,22L及び23Lの圧力を検出する圧力センサ81L,82L及び83Lの検出値を用いて負荷LA,LAa及びLAbを求める。実施形態において、負荷LA,LAa及びLAbは、バケットシリンダ21の圧力、アームシリンダ22の圧力及びブームシリンダ23の圧力である。
【0118】
式(1)から式(5)において、油圧ポンプ30が吐出する作動油の圧力PPは未知である。配分流量演算部19Caは、任意の初期流量を与え、次の式(6)が収束するように繰り返し数値計算を実行し、式(6)収束したときの配分流量Qbk,Qa及びQbに基づいて、第1合分流弁67を動作させる。
Qlp=Qbk+Qa+Qb・・・(6)
【0119】
Qlpは、ポンプ制限流量であり、ポンプ最大流量Qmaxと、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の目標とする出力から決まるポンプ目標流量Qtとの最小値である。ポンプ最大流量Qmaxは、スロットルダイヤル33の指示値から求められる流量から、電動旋回モータ25が油圧旋回モータに置き換わった場合に油圧旋回モータへ供給される作動油の流量を減算した値である。油圧ショベル100が電動旋回モータ25を有さない場合、ポンプ最大流量Qmaxは、スロットルダイヤル33の指示値から求められる流量になる。
【0120】
第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の目標とする出力は、エンジン26の目標とする出力から油圧ショベル100の補機の出力を減算した値である。ポンプ目標流量Qtは、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の目標とする出力及びポンプ圧力から得られる流量である。詳細には、ポンプ圧力は、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力と、第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力とのうち、大きい方である。
【0121】
配分流量Qbk,Qa及びQbが得られたら、ポンプコントローラ19の決定部19Cbは、配分流量Qbk,Qa及びQbと、閾値とを比較した結果に基づいて、第1合分流弁67を動作させる。すなわち、決定部19Cbは、配分流量Qbk,Qa及びQbと、閾値とを比較した結果に基づいて、合流状態又は分流状態とする。閾値は、第1油圧ポンプ31が1台で供給できる作動油の流量及び第2油圧ポンプ32が1台で供給できる作動油の流量に基づいて定められる。
【0122】
第1油圧ポンプ31が1台で供給できる作動油の流量(以下においては適宜、第1供給流量Qsf、と称する)は、第1油圧ポンプ31の最大容量に、スロットルダイヤル33の指示値から定まるエンジン26の最大回転速度を乗算することにより求められる。第2油圧ポンプ32が1台で供給できる作動油の流量(以下においては適宜、第2供給流量Qss、と称する)は、第2油圧ポンプ32の最大容量に、スロットルダイヤル33の指示値から定まるエンジン26の最大回転速度を乗算することにより求められる。第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32はエンジン26の出力シャフトに直結されているので、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の回転速度は、エンジン26の回転速度と等しくなる。実施形態において、第1合分流弁67を動作させるか否かを決定する際に用いられる作動油の閾値は、第1供給流量Qsf及び第2供給流量Qssである。
【0123】
第1油圧ポンプ31は、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22に作動油を供給する。したがって、バケットシリンダ21の配分流量Qbkとアームシリンダ22の配分流量Qaとの和が第1供給流量Qsf以下であれば、第1油圧ポンプ31単独でバケットシリンダ21及びアームシリンダ22に作動油を供給できる。第2油圧ポンプ32は、ブームシリンダ23に作動油を供給する。したがって、ブームシリンダ23の配分流量Qbが第2供給流量Qss以下であれば、第2油圧ポンプ32単独でブームシリンダ23に作動油を供給できる。
【0124】
決定部19Cbは、バケットシリンダ21の配分流量Qbkとアームシリンダ22の配分流量Qaとの和が第1供給流量Qsf以下、かつブームシリンダ23の配分流量Qbが第2供給流量Qss以下である場合に、分流状態とする。この場合、決定部19Cbは、第1合分流弁67を閉弁する。決定部19Cbは、バケットシリンダ21の配分流量Qbkとアームシリンダ22の配分流量Qaとの和が第1供給流量Qsf以下でない場合、又はブームシリンダ23の配分流量Qbが第2供給流量Qss以下でない場合のいずれかが成立したら、合流状態とする。この場合、決定部19Cbは、第1合分流弁67を開弁する。
【0125】
図8は、油圧ポンプ及び油圧シリンダの流量、油圧ポンプの吐出圧力及びレバーストロークが時間tの経過とともに変化する一例を示す図である。
図8の横軸は時間tである。アームシリンダ22に供給される作動油の流量の推定値をQag、ブームシリンダ23に供給される作動油の流量の推定値をQbg、アームシリンダ22に供給される作動油の流量の真値をQar、ブームシリンダ23に供給される作動油の流量の真値をQbrとする。推定値Qagは、ポンプコントローラ19によって求められた、アームシリンダ22の配分流量Qaであり、推定値Qbgは、ポンプコントローラ19によって求められた、ブームシリンダ23の配分流量Qbである。
【0126】
流量Qpfは第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の流量であり、流量Qpsは第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の流量である。圧力Ppfは第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力であり、圧力Ppsは第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力である。圧力Paはアームシリンダ22に供給される作動油の圧力であり、圧力Pbはブームシリンダ23に供給される作動油の圧力である。レバーストロークLvsaは、アーム12を操作するために操作装置5を操作したときの、操作レバーのストロークである。レバーストロークLvsbは、ブーム13を操作するために操作装置5を操作したときの、操作レバーのストロークである。
【0127】
実施形態において、ポンプコントローラ19は、作業機1の操作状態と、作業機1を駆動するアクチュエータである油圧シリンダ20の負荷とに基づいて、それぞれの油圧シリンダ20に配分される作動油の配分流量Qを求める。そして、ポンプコントローラ19は、得られた配分流量Qと、閾値Qsとに基づいて、合流状態と分流状態とを切り替える。実施形態において、分流状態とすることができるのは、期間PDPである。
【0128】
これに対して、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力Ppf及び第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力Ppsに基づいて、合流状態と分流状態とを切り替える方法がある。この方法は、例えば、圧力Ppf及びPpsが閾値Ps以上の場合は油圧シリンダ20に必要な作動油の流量が小さくなるので分流状態とし、圧力Ppf及びPpsが閾値Psよりも小さい場合は油圧シリンダ20に必要な作動油の流量が大きくなるので合流状態とする。圧力Ppf及びPpsから油圧シリンダ20に供給される作動油の流量を正確に推定することは困難であるため、閾値Psを高くする必要がある。この場合、分流状態とすることができるのは、期間PDUである。
【0129】
分流状態とすることができる期間PDIは、油圧シリンダ20に供給される作動油の流量の真値Qar及びQbrと、閾値Qsとに基づいて得られた期間である。油圧シリンダ20に供給される作動油の流量の真値Qar及びQbrは実際に求めることはできないが、真値Qar及びQbrに基づく期間PDIは、理論上実現できる最も長い期間である。
【0130】
図8から分かるように、分流状態とすることができる期間は、圧力Ppf及びPpsに基づく期間PDU、ポンプコントローラ19を含む制御システム9による期間PDP、真値Qar及びQbrに基づく期間PDIの順に長くなる。このように、制御システム9は、分流状態とすることができる期間PDPを、理論上実現できる期間、すなわち油圧シリンダ20に供給される作動油の流量の真値Qar及びQbrに基づく期間PDIに近づけることができる。その結果、制御システム9は、分流状態で駆動装置4を動作させる期間を長くすることができるので、合流状態において高圧の作動油を減圧してブームシリンダ23に供給する際の圧力損失を低減できる期間が長くなる。
【0131】
[第2合分流弁68を動作させる制御]
第2合分流弁68は、分流位置PSと合流位置PJとの間に中間位置PIを有する。ポンプコントローラ19、詳細には処理部19Cにおける決定部19Cbは、分流状態から合流状態に切り替える際に、第2合分流弁68を分流位置PSから中間位置PIにした後、中間位置PIで一旦保持してから合流位置PJにする。このような制御によって、分流状態から合流状態へ切り替わる際に油圧ショベル100に発生する衝撃が抑制される。
【0132】
第2合分流弁68が中間位置PIで保持される時間が長くなり過ぎると、合流状態に切り替えられるタイミングが遅れてしまうため、油圧シリンダ20に供給される作動油の流量が不足し、十分な作業性能が得られなくなる可能性がある。第2合分流弁68cが、早いタイミングで分流位置PSから中間位置PIに切り替えられると、分流状態の時間が短くなるため、分流状態による圧力損失の低減効果が減少する可能性がある。
【0133】
決定部19Cbは、第2合分流弁68が合流位置PJになった後に、第1合分流弁67を閉弁状態から開弁状態とする。ポンプコントローラは、第2合分流弁68を中間位置PIで保持している状態において、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力と、第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力との差圧が予め定められた閾値以下になった場合に、中間位置PIでの保持を終了して、合流位置PJとする。ポンプコントローラ19は、第2合分流弁68を合流位置PJとした後、第1合分流弁67を開弁する。このような制御により、第2合分流弁68が中間位置PIとなる時間を必要十分な長さとすることができるので、油圧ショベル100に発生する衝撃を抑制し、かつ分流状態の時間を長くして圧力損失を低減できる時間を長くすることができる。
【0134】
図9は、実施形態に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る制御方法は、作業機1の操作状態と、作業機1を駆動するアクチュエータである油圧シリンダ20の負荷とに基づいて、それぞれの油圧シリンダ20に配分される作動油の配分流量Qを求め、得られた配分流量Qと、閾値とに基づいて、合流状態と分流状態とを切り替える。実施形態に係る制御方法は、制御システム9、詳細にはポンプコントローラ19によって実現される。
【0135】
ステップS101において、ポンプコントローラ19の配分流量演算部19Caは、配分流量Qbk,Qa及びQbを求める。ステップS102において、ポンプコントローラ19の決定部19Cbは、分流状態とする条件が成立したか否かを判定する。分流状態とする条件が成立した場合(ステップS102,Yes)、ステップS103において、決定部19Cbは第1合分流弁67を閉弁する(ステップS103)。この処理により、駆動装置4は、分流状態で動作する。分流状態とする条件が成立しない場合(ステップS102,No)、ステップS104において、決定部19Cbは第1合分流弁67を開弁する(ステップ104)。この処理により、駆動装置4は、合流状態で動作する。
【0136】
ステップS102において分流状態とする条件が成立した場合、ステップS103においてポンプコントローラ19決定部19Cbは、第2合分流弁68を分流位置PSから中間位置PIにするとともに、一旦分流位置PSで保持する。決定部19Cbは、圧力センサ84の検出値及び圧力センサ85の検出値から、第1油圧ポンプ31が吐出する作動油の圧力と、第2油圧ポンプ32が吐出する作動油の圧力との差圧を求める。決定部19Cbは、差圧が予め定められた閾値以下になった場合に、第2合分流弁68cの中間位置PIでの保持を終了し、第2合分流弁68を合流位置PJとする。その後、決定部19Cbは、第1合分流弁67を閉弁する。
【0137】
[遅れ処理部19Ccの処理]
ポンプコントローラ19の配分流量演算部19Caが求める配分流量Qは、負荷が変動した場合、真値Qrと比較して、値が早めに増減する傾向がある。このため、配分流量Qに基づいて第1合分流弁67を動作させて合流状態と分流状態とを切り替えると、短い期間に頻繁に合流状態と分流状態とが切り替わり、結果として分流状態による圧力損失の低減効果が減少することがある。
【0138】
図10は、配分流量Q、修正配分流量Qc及び油圧シリンダ20に供給される実際の作動油の流量の真値Qrの時間tに対する変化の一例を示す図である。
図10に示されるように、期間PDJにおいて、駆動装置4は合流状態で動作している。期間PDJから期間PDSになったタイミングにおいて、駆動装置4は分流状態で動作している。しかし、配分流量Qが真値Qrと比較して値が早めに増減し、特に流量が増加する方向に大きく演算される結果、期間PDSにおいては配分流量Qが閾値Qsを上回った後、下回る現象が繰り返される。その結果、短い期間に頻繁に合流状態と分流状態とが切り替わっている。
【0139】
この現象を回避するため、ポンプコントローラ19の遅れ処理部19Ccは、得られた配分流量Qが時間tの進行とともに増加する場合、得られた配分流量Qの時間tに対する増加量を小さくした修正配分流量Qcを用いて、第1合分流弁67を動作させる。修正配分流量Qcは、例えば、ローパスフィルタを通過させた配分流量Qであるが、修正配分流量Qcは、配分流量Qの時間tに対する増加量を小さくしたものであればよい。例えば、修正配分流量Qcは、遅れ処理部19Ccが一次遅れに従って配分流量Qを遅らせて出力した値であってもよい。
【0140】
決定部19Cbは、修正配分流量Qcを用いて第1合分流弁67を動作させて、合流状態と分流状態とを切り替える。このような処理によって、
図10に示されるように、時間tに対して配分流量Qの増加する割合が低下するので、油圧シリンダ20に対する負荷の変動が頻繁に発生した場合でも、修正配分流量Qcが閾値Qsを上回ることが抑制される。その結果、制御システム9は、短い期間に頻繁に分流状態から合流状態に切り替わることを回避できるので、分流状態による圧力損失の低減効果の減少を抑制できる。
【0141】
実施形態において、得られた配分流量Qが時間tの進行とともに増加する場合に、ポンプコントローラ19は、修正配分流量Qcを用いて第1合分流弁67を動作させる。分流状態から合流状態に切り替わるのは、配分流量Qが閾値Qsを超えた場合であり、合流状態から分流状態に切り替わるのは配分流量Qが閾値Qs以下になった場合である。ポンプコントローラ19は、得られた配分流量Qが時間tの進行とともに増加する場合に第1合分流弁67を動作させることにより、分流状態から合流状態へ素早く切り替えることができる。
【0142】
修正配分流量Qcを用いて第1合分流弁67を動作させる場合、油圧ショベル100が行う作業の種類によっては、第1合分流弁67の動作が遅れる場合がある。例えば、油圧ショベル100が行う作業が、作業機1を速い速度で動作させる作業である場合に、第1合分流弁67の動作が遅れる場合がある。作業機1を速い速度で動作させる場合としては、例えば、作業機1がダンプ動作を行っている場合が挙げられる。作業機1を速い速度で動作させる作業は、油圧シリンダ20に供給される流量が大きい作業である。
【0143】
ポンプコントローラ19は、第1合分流弁67を動作させるか否かを決定する際に、作業機1の操作状態に応じて、ローパスフィルタの有効と無効とを切り替える。詳細には、修正配分流量Qcを用いるか又はローパスフィルタを通過しない配分流量Qを用いるかを切り替える。このような処理によって、決定部19Cbは、作業機1を速い速度で動作させる必要がある場合には、配分流量Qを用いて第1合分流弁67を動作させて、合流状態と分流状態とを切り替えることができる。その結果、作業機1を速い速度で動作させる必要がある場合における作業機1の速度低下が抑制される。
【0144】
ポンプコントローラ19の操作状態判定部19Cdは、作業機1の操作状態を、操作装置5の操作量を検出する操作量検出部28が有する圧力センサ86,87及び88が検出したパイロット油圧に基づいて判定する。操作状態判定部19Cdは、パイロット油圧から、作業機1を速い速度で動作させる操作が行われていると判定した場合、決定部19Cbは、配分流量Qを用いて第1合分流弁67を動作させて、合流状態と分流状態とを切り替える。
【0145】
図11は、配分流量Q、修正配分流量Qc及び油圧シリンダ20に供給される作動油の流量の真値Qrの時間tに対する変化の一例を示す図である。期間PDJにおいて、駆動装置4は分流状態で動作している。期間PDJから期間PDSになったタイミングにおいて、駆動装置4は合流状態で動作する。修正配分流量Qcと閾値Qsとを比較して駆動装置4の動作状態が分流状態から合流状態へ切り替えられる場合、時間t1よりも後にならないと合流状態に切り替えられない。一方、配分流量Qと閾値Qsとを比較して駆動装置4の動作状態が分流状態から合流状態へ切り替えられる場合、時間t1で合流状態に切り替えられる。その結果、制御システム9は、作業機1を速い速度で動作させる作業である場合においては、油圧シリンダ20に供給される作動油の流量が不足する前に、作業機1の動作に必要な流量の作動油を油圧シリンダ20に供給できるので、作業機1の速度低下が抑制される。
【0146】
油圧ショベル100の駆動装置4において、電動旋回モータ25は、上部旋回体2を旋回させる。すなわち、上部旋回体2は、第1アクチュエータ群及び第2アクチュエータ群に属さないアクチュエータによって駆動される。電動旋回モータ25で上部旋回体2を旋回させ、第1油圧ポンプ31から吐出された作動油でバケットシリンダ21及びアームシリンダ22を駆動することによって、ブームシリンダ23において圧力損失が発生することが抑制される。また、圧力補償弁を設けて操作装置5の操作性を向上しようとすると、圧力補償弁に起因する圧力損失が発生する。実施形態においては、ブームシリンダ23は1つの油圧ポンプ30(第2油圧ポンプ32)から作動油が供給され、上部旋回体2は、電動旋回モータ25で旋回される。そのため、操作性の低下及び圧力損失の発生が抑制される。
【0147】
以上、制御システム9は、作業機1の操作状態に基づいてそれぞれのアクチュエータ、すなわち油圧シリンダ20に配分される作動油の配分流量を求める。そして、制御システム9は、得られた配分流量に基づいて、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の両方から供給される作動油を複数の油圧シリンダ20に供給する第1状態と、第1油圧ポンプ31から作動油が供給される油圧シリンダ20と第2油圧ポンプ32から作動油が供給される油圧シリンダ20とが異なる第2状態とを切り替える。このような処理によって、制御システム9は、複数の油圧ポンプからアクチュエータに作動油を供給する場合、複数の油圧ポンプから吐出される作動油を分離してアクチュエータに供給できる範囲を拡大することができる。すなわち、制御システム9は、第2状態で駆動装置4を動作させる期間を長くすることができるので、第1状態において高圧の作動油を減圧してブームシリンダ23に供給する際の圧力損失を低減できる期間が長くなる。
【0148】
制御システム9は、作業機1の操作状態とアクチュエータの負荷とに基づいて配分流量を求めることにより、配分流量の精度を向上させることができる。その結果、開閉装置である第1合分流弁67を動作させるか否かを決定する際に用いられる作動油の流量の閾値を理論値に近づけることができる。このため、制御システム9は、第2状態で駆動装置4を動作させる期間をより長くして、第1状態において高圧の作動油を減圧してブームシリンダ23に供給する際の圧力損失を低減できる期間をより長くすることができる。
【0149】
実施形態においては、駆動装置4(油圧回路40)が油圧ショベル100に適用されることとした。駆動装置4が適用される対象は、油圧ショベルに限定されず、油圧ショベル以外の油圧駆動の作業機械に広く適用可能である。
【0150】
実施形態において、作業機械である油圧ショベル100はハイブリッド方式であるが、作業機械はハイブリッド方式でなくてもよい。実施形態において、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32は斜板式のポンプであるが、これには限定されない。実施形態において、負荷LA,LAa及びLAbは、バケットシリンダ21の圧力、アームシリンダ22の圧力及びブームシリンダ23の圧力であるとしたが、これに限定されない。例えば、圧力補償弁71から76が有する絞り弁の面積比等によって補正された、バケットシリンダ21の圧力、アームシリンダ22の圧力及びブームシリンダ23の圧力を負荷LA,LAa及びLAbとしてもよい。
【0151】
実施形態において、第1合分流弁67を動作させるか否かを決定する際に用いられる閾値Qsは、第1供給流量Qsf及び第2供給流量Qssであるとしたが、これに限定されない。例えば、第1供給流量Qsf及び第2供給流量Qssよりも小さい流量が閾値Qsであってもよい。実施形態において、ポンプコントローラ19は、遅れ処理部19Cc及び操作状態判定部19Cdを備えるが、ポンプコントローラ19は、遅れ処理部19Cc及び操作状態判定部19Cdの両方を備えていなくてもよいし、操作状態判定部19Cdを備えていなくてもよい。
【0152】
実施形態においては、第1合分流弁67を動作させることにより、第1状態と第2状態とを切り替えたが、第1状態と第2状態との切り替えは、第1合分流弁67の動作によるものに限定されない。実施形態において、作業機1の要素はバケット8、アーム7及びブーム6としたが、作業機1の要素はこれらには限定されない。
【0153】
以上、実施形態を説明したが、実施形態において説明した事項により実施形態が限定されるものではない。実施形態において説明した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、及びいわゆる均等の範囲のものが含まれる。実施形態において説明した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
複数の要素を含む作業機及び複数の前記要素を駆動する複数のアクチュエータを備える作業機械を制御するための制御システムは、複数の前記アクチュエータのうち少なくとも1つに作動油を供給する第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、前記作業機の操作状態に基づいてそれぞれの前記アクチュエータに配分される作動油の配分流量を求め、得られた前記配分流量に基づいて、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプの両方から供給される前記作動油を前記複数のアクチュエータに供給する第1状態と、前記第1油圧ポンプから前記作動油が供給される前記アクチュエータと前記第2油圧ポンプから前記作動油が供給される前記アクチュエータとが異なる第2状態とを切り替える制御装置と、を含む。