(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるエンジンの動弁装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態による動弁装置の要部を示す正面図である。
図2はシリンダヘッドと推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態による動弁装置の要部を示す断面図である。
図3は、
図2におけるIII-III線断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態による動弁装置の要部を示す背面図である。
図4はシリンダヘッドと推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの平面図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの左側面図である。
【
図5C】
図5Cは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの正面図である。
【
図5D】
図5Dは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの右側面図である。
【
図5E】
図5Eは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの背面図である。
【
図5F】
図5Fは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの底面図である。
【
図5G】
図5Gは、第1の実施の形態による動弁装置のカムフォロアの左斜め下から見た斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、カムシャフトの軸線方向から見た要部の断面図である。
【
図6B】
図6Bは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の正面図である。
図6Bは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図6C】
図6Cは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の背面図である。
図6Cは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図7A】
図7Aは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、カムシャフトの軸線方向から見た要部の断面図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の正面図である。
図7Bは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図7C】
図7Cは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の背面図である。
図7Cは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図8A】
図8Aは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、カムシャフトの軸線方向から見た要部の断面図である。
【
図8B】
図8Bは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の正面図である。
図8Bは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図8C】
図8Cは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の背面図である。
図8Cは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図9A】
図9Aは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、カムシャフトの軸線方向から見た要部の断面図である。
【
図9B】
図9Bは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の正面図である。
図9Bは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図9C】
図9Cは、第1の実施の形態による動弁装置の動作を説明するための図で、要部の背面図である。
図9Cは、推力発生機構の一部を破断して描いてある。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態による動弁装置のカムフォロアとスライド部の斜視図である。
【
図11】
図11は、第2の実施の形態による動弁装置の要部を示す背面図である。
図11は、推力発生機構の一部を破断した状態で描いてある。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態による動弁装置の要部を示す背面図である。
図12は、推力発生機構の一部を破断した状態で描いてある。
【
図13】
図13は、第3の実施の形態による動弁装置の要部の分解斜視図である。
【
図14】
図14は、第3の実施の形態による動弁装置の要部の断面図である。
図14は運転休止状態を示す。
【
図15】
図15は、第3の実施の形態による動弁装置の正面図である。
図15は運転休止状態を示す。
【
図16】
図16は、第3の実施の形態による動弁装置の背面図である。
図16は運転休止状態を示す。
図16中には、
図14の破断位置をXIV-XIV線によって示してある。
【
図17】
図17は、第3の実施の形態による動弁装置の断面図である。
図17は通常運転状態を示す。
【
図18】
図18は、第3の実施の形態による動弁装置の正面図である。
図18は通常運転状態を示す。
【
図19】
図19は、第3の実施の形態による動弁装置の背面図である。
図19は通常運転状態を示す。
【
図20】
図20は、第4の実施の形態による動弁装置の要部の斜視図である。
【
図21】
図21は、第4の実施の形態による動弁装置の側面図である。
図21は、カムシャフトのシャフト本体を省略して描いてある。
【
図22】
図22は、第4の実施の形態による動弁装置の平面図である。
図22は、カムシャフトのシャフト本体を省略して描いてある。
【
図23】
図23は、第4の実施の形態による動弁装置の要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るエンジンの動弁装置の一実施の形態を
図1〜
図9Cによって詳細に説明する。
図1に示すエンジンの動弁装置1は、シリンダヘッド2に設けられたカムシャフト3と、このカムシャフト3と吸気弁4との間に介在するロッカーアーム5とを備えている。ロッカーアーム5は、ロッカーシャフト6に揺動自在かつ軸線方向に移動自在に支持されている。
【0020】
ロッカーシャフト6は、カムシャフト3と平行になる状態でシリンダヘッド2に支持されている。ロッカーアーム5の軸線方向の位置は、後述する推力発生機構11によって規制されている。
本発明は、
図1に示す吸気弁用動弁装置1と、排気弁12を駆動するための排気弁用動弁装置(図示せず)との両方に適用することができる。なお、本発明が適用された排気弁用動弁装置は、吸気弁用動弁装置1と同一構造のものである。このため、この実施の形態においては、排気弁用動弁装置の図示および説明を省略した。
【0021】
吸気弁4は、1気筒当たり2本設けられている。これらの吸気弁4は、シリンダヘッド2の吸気ポート13を開閉する弁体4aと、この弁体4aからシリンダヘッド2の動弁室14内に延びるバルブステム4bとによって構成されている。バルブステム4bは、シリンダヘッド2にバルブステムガイド15によって移動自在に支持されている。バルブステム4bの先端部とシリンダヘッド2との間には、吸気弁4を閉じる方向に付勢するバルブスプリング16が設けられている。バルブステム4bの先端部には、キャップ状のシム17が設けられている。
【0022】
吸気ポート13は、シリンダヘッド2の内部で二又状に分岐する形状に形成されている。この吸気ポート13の上流端は、シリンダヘッド2の側部に開口し、吸気ポート13の下流端は、それぞれ燃焼室18に開口している。燃焼室18の中央部には点火プラグ19が設けられている。点火プラグ19は、
図1に示すように、カムシャフト3の軸線方向から見て、シリンダ軸線Cと重なる位置に設けられている。
【0023】
カムシャフト3は、図示していないクランクシャフトの回転が伝動機構を介して伝達されることにより回転する。この実施の形態によるカムシャフト3は、
図2に示すように、棒状に形成されたカムシャフト本体21と、このカムシャフト本体21に設けられた複数のカムとを備えている。複数のカムとは、吸気弁4毎に設けられた第1のカム22および第2のカム23と、これらの2組の第1および第2のカム22,23の間に位置する同期カム24である。
【0024】
第1のカム22と第2のカム23は、吸気弁4を駆動するためのものである。第2のカム23は、第1のカム22とはカムプロフィルが異なり、実施例ではバルブリフト量が異なる形状に形成されている。また、第2のカム23は、カムシャフト3に第1のカム22と軸線方向に並べて設けられている。これらの第1のカム22と第2のカム23は、
図3に示すように、それぞれベース円部22a,23aとノーズ部22b,23bとによって構成されている。ベース円部22a,23aは、カムシャフト本体21と同一軸線上に位置する円柱の一部となる形状であって、吸気弁4のバルブリフト量が0になる大きさに形成されている。
【0025】
ノーズ部22b,23bは、ベース円部22a,23aから径方向の外側へ断面山形状に予め定めた突出量だけ突出する形状に形成されている。第1のカム22のノーズ部22bの突出量は、第2のカム23のノーズ部23bの突出量より多い。
同期カム24は、後述する推力発生機構11を駆動するためのもので、ベース円部24aとノーズ部24bとによって構成されている。この同期カム24は、第1のカム22および第2のカム23からなる弁駆動用カムと同期して回転する。同期カム24のノーズ部24bは、第1のカム22と第2のカム23のノーズ部22b,23bとはカムシャフト3の回転方向において異なる位置に形成されている。
【0026】
ロッカーアーム5は、第1のカム22または第2のカム23の回転を往復運動に変換して吸気弁4に伝達する2つのアーム本体25と、これらのアーム本体25の揺動端部どうしを接続する連結部26とを備えた平面視略U字型に形成されている。ロッカーシャフト6は、2つのアーム本体25の基端部を貫通している。
ロッカーアーム5の揺動端部には、
図2に示すように、吸気弁4を押すための押圧部27が設けられている。この押圧部27は、シム17よりロッカーシャフト6の軸線方向に大きく形成されている。このため、ロッカーアーム5の押圧部27は、ロッカーアーム5がロッカーシャフト6の軸線方向に移動したとしてもシム17から外れることはない。
【0027】
2つのアーム本体25は、
図4に示すように、ロッカーシャフト6の軸線方向に所定の間隔をおいて離間している。これらの2つのアーム本体25どうしの間には、推力発生機構11の一部を構成するスライダ31が挿入されている。
推力発生機構11は、
図3に示すように、上述したスライダ31を有するスライド部32と、このスライド部32と隣接する位置に設けられた切替部33とを有している。
【0028】
スライド部32は、ロッカーシャフト6が貫通するスライダ31と、詳細は後述するが、このスライダ31に設けられた複数の機能部とによって構成されている。スライダ31は、
図4に示すように、2つのアーム本体25の基端部に摺動可能に接触する状態で2つの基端部どうしの間に挿入されており、ロッカーシャフト6に回動自在かつ軸線方向へ移動自在に支持されている。このスライダ31がロッカーシャフト6の軸線方向に移動することによって、ロッカーアーム5がスライダ31と同一方向へ一体に移動する。
【0029】
この実施の形態によるスライダ31には、上述した同期カム24と対接するカムフォロア34が一体に形成されている。このカムフォロア34は、
図3に示すように、ロッカーシャフト6の軸線方向から見てロッカーアーム5の長手方向とは交差する方向に延びるレバー状に形成されている。このカムフォロア34の先端部は、カムシャフト3と隣り合う位置まで延びている。このカムフォロア34がカムシャフト3に接近している状態でカムシャフト3が回転することにより、同期カム24がカムフォロア34を押し、
図5B〜
図5D中に矢印Aで示す揺動方向へカムフォロア34およびスライダ31がロッカーシャフト6を中心にして揺動する。
【0030】
この実施の形態による同期カム24の軸線方向の長さは、
図4に示すように、カムフォロア34の幅(
図4においては左右方向の幅であって、ロッカーシャフト6の軸線方向の幅)より長い。この理由は、カムフォロア34がスライダ31とともに軸線方向へ移動したときにカムフォロア34が同期カム24から外れることを防ぐためである。
同期カム24は、
図9Aに示すように、ロッカーアーム5が第1のカム22または第2のカム23のベース円部22a,23aと対接しているときにカムフォロア34を押す形状に形成されている。言い換えれば、カムフォロア34は、吸気弁4が閉じているときに同期カム24によって押されて揺動する。
【0031】
スライダ31に設けられている複数の機能部とは、スライダ31におけるカムフォロア34とは反対側に位置する第1の傾斜カム面35(
図4参照)および第2の傾斜カム面36と、第1の凹溝37(
図2参照)および第2の凹溝38である。
第1の傾斜カム面35および第2の傾斜カム面36は、
図5B,
図5Dに示すように、スライダ31に設けられた凸部39に形成されている。凸部39は、カムフォロア34がスライダ31から突出する方向とは異なる方向に突出している。この実施の形態による凸部39は、
図3に示す組付け状態において、ロッカーアーム5が延びる方向とは反対方向に突出している。また、この凸部39は、
図5Cに示すように、カムフォロア34とは反対側に向けて凸になる断面山形状に形成されている。第1の傾斜カム面35および第2の傾斜カム面36は、この凸部39におけるカムフォロア34とは反対側の面(下面)に設けられている。
【0032】
この実施の形態による第1の傾斜カム面35および第2の傾斜カム面36は、
図4、
図5B〜
図5Gに示すようにロッカーシャフト6の軸線方向に互いに逆向きに傾斜した平坦面によって形成されている。第1の傾斜カム面35と第2の傾斜カム面36は、
図5Cに示すように、凸部39におけるロッカーシャフト6の軸線方向の中央から一端側と他端側とに延びている。第1の傾斜カム面35は、凸部39の中央から一端側に向かうにしたがって次第に低くなるように傾斜している。
【0033】
第2の傾斜カム面36は、凸部39の中央から他端側に向かうにしたがって次第に低くなるように傾斜している。なお、第1の傾斜カム面35と第2の傾斜カム面36は、図示してはいないが、それぞれ凹曲面によって形成することもできる。
【0034】
第1の凹溝37と第2の凹溝38は、
図5Fに示すように、スライダ31におけるカムフォロア34とは反対側の端部であって、凸部39の長手方向において第1および第2の傾斜カム面35,36と隣り合う位置に形成されている。また、これらの第1の凹溝37と第2の凹溝38は、ロッカーシャフト6の軸線方向に並べて形成されており、それぞれロッカーシャフト6の軸線方向とは直交する方向に延びている。
【0035】
推力発生機構11の切替部33は、
図3および
図4に示すように、上述した第1の傾斜カム面35と対向する第1のピン41と、第2の傾斜カム面36と対向する第2のピン42と、これらのピン41,42に接触した移動部材43と、上述した第1の凹溝37または第2の凹溝38に係入する第3のピン44などを備えている。この実施の形態においては、第1のピン41が請求項2記載の発明でいう「第1の切替部材」に相当し、第2のピン42が請求項2記載の発明でいう「第2の切替部材」に相当する。
【0036】
第1のピン41と第2のピン42は、
図3に示すように、吸気弁4のバルブステム4bと平行になる状態でシリンダヘッド2に長手方向へ移動自在に支持されている。また、第1のピン41と第2のピン42は、
図4に示すように、ロッカーシャフト6の軸線方向に所定の間隔をおいて互いに離間する所定の位置に設けられている。この所定の位置とは、第1の傾斜カム面35および第2の傾斜カム面36と関連する位置である。
【0037】
第1のピン41は、
図6Cに示すように、スライダ31がロッカーシャフト6の軸線方向において第1の傾斜カム面35を有する一端側に移動した状態で第1の傾斜カム面35の突出端部と対向する位置に設けられている。この突出端部とは、第1の傾斜カム面35と第2の傾斜カム面36とによって形成される山の頂点の近傍である。
一方、第2のピン42は、
図4に示すように、スライダ31がロッカーシャフト6の軸線方向において第2の傾斜カム面36を有する他端側に移動した状態で第2の傾斜カム面36の突出端部と対向する位置に設けられている。
【0038】
これらの第1のピン41と第2のピン42は、スライダ31に向けて前進した前進位置と、スライダ31とは反対方向へ後退した後退位置との間で移動可能である。前進位置に移動した第1のピン41および第2のピン42は、スライダ31がカムフォロア34と一体に揺動することによって、第1の傾斜カム面35または第2の傾斜カム面36と当接する。また、第1のピン41および第2のピン42は、後退位置に移動した状態においては、スライダ31が揺動したとしても第1の傾斜カム面35や第2の傾斜カム面36の移動を妨げることがない。
図4は、第1のピン41が前進位置に位置し、第2のピン42が後退位置に位置している状態を示している。これらの前進位置と後退位置は、第1および第2のピン41,42に当接する移動部材43によって規制される。
【0039】
移動部材43は、円柱状に形成されており、シリンダヘッド2の油孔45に移動自在に嵌合している。油孔45は、ロッカーシャフト6と平行に形成されている。このため、移動部材43は、第1のピン41および第2のピン42の移動する方向とは直交する方向に移動する。
この実施の形態による移動部材43は、油孔45内を移動するピストンを構成している。油孔45の一端側(
図4において左側)には圧縮コイルばね46が挿入されている。この圧縮コイルばね46は、移動部材43を油孔45の他端側に向けて付勢している。なお、移動部材43の一端部には、圧縮コイルばね46のばね力と、油圧との両方を加えてもよい。以下においては、移動部材43における圧縮コイルばね46に近接する端部を単に「一端部」といい、反対側の端部を「他端部」という。
【0040】
油孔45の他端側は、図示していない油圧供給装置に接続されている。このため、移動部材43の他端部(
図4においては右側の端部)には油圧供給装置から伝播された油圧が加えられる。
この移動部材43には、第1のピン41を前進位置と後退位置との間で動かすための第1のピン用カム47と、第2のピン42を前進位置と後退位置との間で動かすための第2のピン用カム48とが形成されている。これらのカム47,48は、移動部材43の軸線と直交する仮想平面を対称面として面対称に形成されている。
【0041】
第1のピン用カム47と第2のピン用カム48は、第1のピン41と第2のピン42の端部が挿入される凹部49,50から移動部材43の外周面に延びる曲面によって形成されている。第1のピン41および第2のピン42は、凹部49,50に挿入されることによって後退位置に位置付けられる。
第1のピン用カム47は、移動部材43の一端部に設けられている。この第1のピン用カム47は、第1のピン41が凹部49内に収容されて後退位置に位置している状態(
図6C参照)から移動部材43が油孔45の一端側(
図6Cにおいては左側)に移動することによって、
図7Cに示すように、第1のピン41を凹部49から押し出して移動部材43の外周面上に載せる。このように前進位置に移動した第1のピン41は、スライダ31が揺動することによって第1の傾斜カム面35に接触する。
【0042】
第2のピン用カム48は、移動部材43の他端部に設けられている。この第2のピン用カム48は、第2のピン42が凹部50内に収容されて後退位置に位置している状態(
図4参照)から移動部材43が他端側(
図4においては右側)に移動することによって、第2のピン42が前進位置(
図6C参照)に移動する形状に形成されている。前進位置に移動した第2のピン42は、スライダ31が揺動することによって第2の傾斜カム面36に接触する。
すなわち、第1のピン41と第2のピン42は、移動部材43が一端側または他端側に移動することによって、スライド部32(スライダ31)に選択的に接触する。
【0043】
これらの第1のピン用カム47と第2のピン用カム48は、第1のピン41と第2のピン42のうちいずれか一方のピンが前進位置に位置しているときは他方のピンが後退位置に移動可能になる構成が採られている。すなわち、移動部材43が一端側に移動したときは、
図7Cに示すように、第1のピン41が前進位置に移動するとともに第2のピン42が後退位置に復帰可能になる。また、移動部材43が長手方向の他方である他端側に移動したときは、
図6Cに示すように、第1のピン41が後退位置に復帰可能になるとともに、第2のピン42が前進位置に移動する。
【0044】
第3のピン44は、
図2および
図3に示すように、スライダ31の第1の凹溝37または第2の凹溝38と対向する位置に配置され、吸気弁4のバルブステム4bと平行になる状態でシリンダヘッド2に移動自在に支持されている。第3のピン44が移動する方向は、吸気弁4のバルブステム4bと平行な方向である。第3のピン44の先端部は、半球状に形成されている。
【0045】
また、この第3のピン44は、シリンダヘッド2との間に設けられた圧縮コイルばね51のばね力によって第1の凹溝37または第2の凹溝38に押し付けられている。このため、スライダ31は、圧縮コイルばね51のばね力によって、ロッカーシャフト6を中心にしてカムフォロア34がカムシャフト3から離間する方向に付勢される。スライダ31は、このように圧縮コイルばね51のばね力で付勢されることにより、第1の傾斜カム面35または第2の傾斜カム面36が第1のピン41または第2のピン42に接触するまでロッカーシャフト6を中心にして揺動方向Aに揺動する。このため、スライダ31とカムフォロア34は、同期カム24によってカムフォロア34が押されていないときに第1の傾斜カム面35または第2の傾斜カム面36が第1のピン41または第2のピン42に接触する状態に保たれる。
【0046】
第1の凹溝37および第2の凹溝38は、
図2に示すように、それぞれ断面V字状に形成されている。このため、例えば、
図2に示すように、第3のピン44が第1の凹溝37に係合している状態でスライダ31が第1の凹溝38とは反対方向(
図2においては右方)に移動することによって、第1の凹溝37の傾斜した側壁が第3のピン44を押し、第3のピン44が圧縮コイルばね51のばね力に抗してスライダ31とは反対方向へ移動する。
【0047】
そして、第3のピン44が第1の凹溝37と第2の凹溝38との境界となる頂部を乗り越えて第2の凹溝38の中に入る。第2の凹溝38に入った第3のピン44は、圧縮コイルばね51のばね力によって第2の凹溝38の側壁を押す。この側壁も傾斜しているために、スライダ31の移動が圧縮コイルばね51のばね力によって助勢される。スライダ31は、第3のピン44が第3の凹溝38の最も深い部分に進むことによって停止する。この第3のピン44の動作は、スライダ31の移動方向が上記とは逆方向であっても同様に行われる。
【0048】
この実施の形態によるスライダ31とロッカーアーム5は、
図2に示すように、第3のピン44が第1の凹溝37に挿入されている状態において、ロッカーアーム5と第1のカム22とが対接する第1の位置に位置付けられる。このようにロッカーアーム5が第1の位置に位置付けられることにより、吸気弁4が第1のカム22によって駆動される第1の運転形態が実現される。
【0049】
また、スライダ31とロッカーアーム5は、
図6Bに示すように、第3のピン44が第2の凹溝38に挿入されている状態において、ロッカーアーム5と第2のカム23とが対接する第2の位置に位置付けられる。ロッカーアーム5が第2の位置に位置付けられることにより、吸気弁4が第2のカム23によって駆動される第2の運転形態が実現される。
【0050】
次に、このように構成された動弁装置1の動作を
図6A〜
図9Cによって説明する。ここでは、吸気弁4が第2のカム23によって駆動される第2の運転形態から第1の運転形態に移行するときの動作を説明する。
第2の運転形態が採られているときは、
図6Aに示すように、ロッカーアーム5が第2のカム23によって押される位置にあり、第3のピン44が
図6Bに示すように第2の凹溝38に挿入されている。また、移動部材43は、
図6Cに示すように、他端側に移動している。第1のピン41は、後退位置に位置し、第2のピン42は、前進位置に位置している。
【0051】
第2の運転形態から第1の運転形態に切替えるときは、
図7Cに示すように、移動部材43を他端側から一端側に動かす。移動部材43が他端側から一端側に移動することによって、第1のピン41が移動部材43の外周面上に載せられ、前進位置に移動して第1の傾斜カム面35を押す。第1の傾斜カム面35が第1のピン41によって押されると、
図7Aに示すように、スライダ31およびカムフォロア34が揺動方向Aとは逆方向(
図7Aにおいては反時計方向)に揺動し、カムフォロア34がカムシャフト3に接近する。このとき、スライダ31の移動(ロッカーシャフト6の軸線方向への移動)は、第3のピン44によって規制される。また、このときには、移動部材43の凹部50が第2のピン42と対向する位置に位置付けられる。
【0052】
この状態でカムシャフト3が回転することにより、
図8Aに示すように、ロッカーアーム5が第2のカム23のベース円部23aに対接している状態でカムフォロア34が同期カム24によって押され、スライダ31がカムフォロア34と一体に揺動方向Aに揺動する。スライダ31が揺動すると、
図8Cに示すように、第1の傾斜カム面35の突出端部が第1のピン41に押し付けられる。第1のピン41が前進位置に位置している状態においては、スライダ31が揺動して第1の傾斜カム面35が第1のピン41に当接したとしても、第1のピン41が移動する(後退する)ことはできない。
このように第1のピン41に第1の傾斜カム面35の突出端部が押し付けられることにより、第1の傾斜カム面35に推力が作用する。この推力が作用する方向は、第1の傾斜カム面35の低い部分が第1のピン41に接近する方向である。この結果、スライダ31がロッカーアーム5と一体に他端側(
図8Cにおいては右側)に移動する。スライダ31が移動を開始すると、
図8Bに示すように、第3のピン44が第2の凹溝38の側壁によって押され、圧縮コイルばね51のばね力に抗して後退する。
【0053】
第3のピン44は、
図9A,
図9Bに示すように、同期カム24の頂部(ノーズ部24bの最も突出する先端部分)がカムフォロア34を押す状態になるまでの間に第2の凹溝38内から第1の凹溝37内に入る。同期カム24の頂部がカムフォロア34を通過すると、カムフォロア34が同期カム24によって押されることがなくなるために、推力が消失する。なお、第2のピン42は、カムフォロア34の揺動に伴ってスライダ31が移動することにより、第2の傾斜カム面36によって押されて後退位置に戻る。
【0054】
同期カム24の頂部がカムフォロア34を通過したときは、第3のピン44が第1の凹溝37の側壁を押す状態にある。このため、第1の傾斜カム面35が第1のピン41から離れるにもかかわらず、圧縮コイルばね51のばね力で第3のピン44によって第1の凹溝37の側壁が押され、スライダ31が更に他端側に移動する。スライダ31は、第3のピン44が第1の凹溝37の最も深い部位に進むことによって停止する。このようにスライダ31が停止することにより、
図9B,
図9Cに示すように、ロッカーアーム5が第1のカム22と対接する第1の位置に位置付けられ、第1のカム22によって吸気弁4が駆動される第1の運転形態に移行する。
この運転形態から第2のカム23によって吸気弁4が駆動される第2の運転形態に移行するためには、移動部材43を
図9Cに示す状態から他端側(
図9Cにおいては右側)に動かすことにより行うことができる。このように移動部材43が移動することにより、第2のピン42が前進位置に移動し、カムフォロア34が同期カム24に接触する。そして、カムフォロア34が揺動して第2のピン42と第2の傾斜カム面36との接触により推力が発生し、スライダ31が移動する。このとき、スライダ31は、
図9Cに示す位置から
図6Cに示す位置まで
図9Cにおいて左側に移動する。また、このスライダ31の移動に伴って第1の傾斜カム面35が第1のピン41を押し、第1のピン41が後退位置に戻る。
【0055】
このように構成されたエンジンの動弁装置1に用いられている同期カム24は、従来の螺旋溝からなる前進用カムおよび後退用カムと較べると、軸線方向に短く形成することができるものである。このことは、カムシャフト3を短く形成できることを意味する。また、この同期カム24は、第1および第2のカム22,23と同等の製造方法によって形成することができるものである。すなわち、同期カム24は、第1および第2のカム22,23を形成するためのカム加工機を使用して形成することができる。
【0056】
この実施の形態による動弁装置1において、運転形態が切替えられるときの切替速度は、同期カム24のプロフィル(形状)とカム回転速度に依存して決まる。このため、カム回転速度に比例して切替速度が変わるので、切替速度を高くするにあたってばね部材のばね荷重を増やす場合と較べると、高回転状態で切替えるときの信頼性が高くなるとともに、低回転での動作音が小さくなる。
【0057】
この実施の形態による動弁装置1において、運転形態が切替えられるときに生じる主な動作音は、第1および第2の傾斜カム面35,36と第1および第2のピン41,42とが擦れる音と、第3のピン44とスライダ31とが擦れる音である。このような音は、金属部材どうしが衝突する音と較べて小さい。
したがって、この実施の形態によれば、カムシャフト3をコンパクトにかつ安価に形成でき、しかも、動作の信頼性が高く動作音が小さいエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0058】
この実施の形態による推力発生機構11のスライド部32は、第1の傾斜カム面35と第2の傾斜カム面36とを有し、カムフォロア34が揺動してこれらのカム面35,36が第1のピン41または第2のピン42に押し付けられることによって、ロッカーシャフト6の軸線方向に移動する。
このため、この実施の形態による推力発生機構11は、カムフォロア34の揺動を軸線方向への推力に変換するにあたってリンクや歯車などを使用する場合と較べると、小さく形成できるとともに、構造が簡単なものとなる。したがって、この実施の形態によれば、小型化とコストダウンとの両方を実現可能なエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0059】
この実施の形態による第1のピン41と第2のピン42は、一方が前進位置に位置しているときは他方が後退位置に移動可能な状態になるものである。このため、この実施の形態によれば、第1のピン41と第2のピン42とが同時に前進位置に移動することがないから、推力発生機構11の動作の信頼性が高いエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
本発明に係るエンジンの動弁装置の第2の実施の形態を
図10〜
図12によって詳細に説明する。これらの図において、
図1〜
図9Cによって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
この実施の形態によるエンジンの動弁装置61(
図11参照)は、第1の実施の形態で示した動弁装置1とはカムフォロア34とスライダ31の構造が異なるだけのものである。この動弁装置61のその他の構成は、第1の実施の形態で示した動弁装置1と同一である。
【0061】
この実施の形態によるカムフォロア34は、
図10に示すように、スライダ31とは別体に形成されている。このカムフォロア34の基端部34aは、スライダ31の凹部62内に挿入されている。この基端部34aには、ロッカーシャフト6(
図11参照)を通すための貫通孔63が形成されている。ロッカーシャフト6は、この貫通孔63と、スライダ31の両端部に形成されている2つの貫通孔64とに通されている。
【0062】
このカムフォロア34の揺動端部34bは、シリンダヘッド(図示せず)に対して固定されたストッパー65の凹溝66内に揺動可能に挿入されている。凹溝66の側壁は、カムフォロア34がロッカーシャフト6の軸線方向へ移動しようとするとカムフォロア34に当接する位置に形成されている。すなわち、この実施の形態によるカムフォロア34は、凹溝66の側壁によって規制されるために、ロッカーシャフト6の軸線方向へ移動できないものである。
【0063】
スライダ31の凹部62は、カムフォロア34に対してスライダ31がロッカーシャフト6の軸線方向に移動することを許容するために、カムフォロア34より所定の長さだけロッカーシャフト6の軸線方向に長く形成されている。この所定の長さとは、
図11に示すように、ロッカーアーム5が第1のカム22と対接する位置と、
図12に示すように、ロッカーアーム5が第2のカム23と対接する位置との間でスライダ31がカムフォロア34に対して移動可能な長さである。
【0064】
カムフォロア34の基端部34aには、スライダ31に対する相対的な揺動を規制するために第1の凸部67と第2の凸部68とが設けられている。第1の凸部67と第2の凸部68は、ロッカーシャフト6の径方向の一方側と他方側とに振り分けられる位置に設けられている。第1の凸部67は、スライダ31の受圧部69に接触し、第2の凸部68は、スライダ31の伝動部70に接触する。すなわち、カムフォロア34が同期カム24によって押されて揺動するときは、押圧力が第1の凸部67と受圧部69との接触部分を介してカムフォロア34からスライダ31に伝達される。また、スライダ31が第3のピン44によって押されて揺動するときは、押圧力が第2の凸部68と伝動部70との接触部分を介してスライダ31からカムフォロア34に伝達される。
【0065】
この実施の形態による動弁装置61においては、スライダ31がロッカーシャフト6の軸線方向に移動したとしても、カムフォロア34の位置が変わることはない。このため、カムフォロア34を押す同期カム24は、カムフォロア34がロッカーシャフト6の軸線方向に移動する場合と較べると、軸線方向に小さく形成することができる。したがって、この実施の形態によれば、カムシャフト3に同期カム24を設けるための設置部が狭くなるから、カムシャフト3をさらに短く形成することが可能になる。
【0066】
(第3の実施の形態)
本発明に係る動弁装置は、
図13〜
図19に示すように構成することができる。
図13〜
図19において、
図1〜
図9Cによって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
この実施の形態によるエンジンの動弁装置71は、第1の実施の形態で示した動弁装置1とはカムシャフト3と、ロッカーアーム5およびカムフォロア34と、推力発生機構11の構造が異なるものである。この実施の形態によるカムフォロア34は、第2の実施の形態を採るときと同様に、軸線方向への移動が規制されたものである。この動弁装置71のその他の構成は、第1の実施の形態で示した動弁装置1と同一である。
【0067】
この実施の形態によるカムシャフト3の2つの第1のカム22は、
図15に示すように、同期カム24と隣り合う位置に設けられている。第2のカム23は、これらの2つの第1のカム22を両側から挟む位置に設けられている。この第2のカム23は、
図14に示すように、ノーズ部は形成されておらず、ベース円部23aのみによって形成されている。すなわち、この実施の形態による動弁装置71は、吸気弁4が第1のカム22によって駆動される第1の運転形態と、吸気弁4が開くことがない第2の運転形態とを切替えることができるものである。
【0068】
この実施の形態によるロッカーアーム5は、
図13に示すように、吸気弁4(
図15参照)毎に設けられている。すなわち、この実施の形態によるロッカーアーム5は、アーム本体25のみによって構成され、第1の実施の形態を採るときに用いた連結部26は備えていない。
この実施の形態による推力発生機構11のスライド部32は、カムフォロア34とは別体に形成された第1のスライダ72および第2のスライダ73と、これらのスライダ72、73にそれぞれ設けられた複数の機能部とによって構成されている。第1のスライダ72と第2のスライダ73は、ロッカーアーム5の軸線と直交する仮想平面を対称面として面対称に形成されている。これらの第1および第2のスライダ72、73には、ロッカーシャフト6(
図15参照)を通すための貫通穴74が形成されている。第1および第2のスライダ72、73は、ロッカーシャフト6に回動自在かつ軸線方向へ移動自在に支持されている。
【0069】
これらの第1および第2のスライダ72,73に設けられた機能部とは、第1および第2の傾斜カム面35,36(
図16参照)と第1および第2の凹溝37,38(
図15参照)である。この実施の形態においては、便宜上、第1のスライダ72と第2のスライダ73の互いに近接する一側部に位置する傾斜カム面と凹溝を第1の傾斜カム面35、第1の凹溝37という。また、第1のスライダ72および第2のスライダ73の他側部に位置する傾斜カム面と凹溝を第2の傾斜カム面36、第2の凹溝38という。
【0070】
この実施の形態による第1のスライダ72と第2のスライダ73には、
図13に示すように、それぞれロッカーアーム5を保持するための外側凹部75と、後述するカムフォロア34のボス76が挿入される内側凹部77とが形成されている。
外側凹部75は、ロッカーアーム5の揺動を許容するとともに、第1および第2のスライダ72,73に対するロッカーアーム5の軸線方向への移動を規制する形状に形成されている。
【0071】
ロッカーアーム5は、基端部が外側凹部75に挿入された状態でロッカーシャフト6がスライダ72,73の貫通穴74とロッカーアーム5の軸孔78とに通されることによって、第1および第2のスライダ72,73にロッカーシャフト6を介して揺動自在に支持される。第1のスライダ72に支持されたロッカーアーム5は、第1のスライダ72とともにロッカーシャフト6の軸線方向に移動する。第2のスライダ73に支持されたロッカーアーム5は、第2のスライダ73とともにロッカーアーム5の軸線方向に移動する。
【0072】
この実施の形態によるカムフォロア34は、
図13に示すように、ロッカーシャフト6が通される円筒状のボス76と、このボス76からロッカーシャフト6の径方向に延びるレバー79と、このレバー79からロッカーシャフト6の軸線方向に延びる第1および第2の連結片80,81とを備えている。これらのボス76と、レバー79と、第1および第2の連結片80,81は、一体成形により一体に形成されている。
【0073】
ボス76の中空部は、ロッカーシャフト6が回転自在に嵌合する形状に形成されている。ボス76の軸線方向の長さは、レバー79の幅(ロッカーシャフト6の軸線方向の幅)より長い。レバー79は、ボス76の軸線方向の中央部に位置している。このためボス76の両端部は、レバー79より軸線方向に突出する。この突出部は、
図18に示すように、第1のスライダ72と第2のスライダ73とが互いに接近することによって、第1および第2のスライダ72,73の内側凹部77に収容される。
【0074】
第1および第2の連結片80,81は、スライダ72,73に対するカムフォロア34の相対的な揺動を規制するためのもので、カムフォロア34の揺動方向において異なる位置に設けられている。第1の連結片80は、
図14に示すように、レバー79よりカムフォロア34の揺動方向の下流側に位置している。ここでいう下流側とは、カムフォロア34が同期カム24によって押されて揺動するときの揺動方向Aの下流側である。この第1の連結片80は、第1および第2のスライダ72,73に設けられている受圧部82に上述した揺動方向の上流側から接触する。すなわち、カムフォロア34が同期カム24によって押されて揺動するときは、押圧力が第1の連結片80と受圧部82との接触部分を介してカムフォロア34から第1および第2のスライダ72,73に伝達される。
【0075】
第2の連結片81は、第1の連結片80より上述した揺動方向Aの上流側に位置している。この第2の連結片81は、第1および第2のスライダ72,73に設けられている伝動部83に上述した揺動方向Aの下流側から接触する。すなわち、第1および第2のスライダ72,73が後述する第3のピン44によって押されて揺動するときは、押圧力が第2の連結片81と伝動部83との接触部分を介して第1および第2のスライダ72,73からカムフォロア34に伝達される。
【0076】
第1の連結片80と第2の連結片81の長さは、
図16に示すように、第1のスライダ72と第2のスライダ73とが互いに離間する方向に最大移動位置まで移動した状態で受圧部82や伝動部83に接触する長さである。このため、カムフォロア34と第1および第2のスライダ72,73は、常に一体に揺動する。
【0077】
この実施の形態による推力発生機構11の切替部33は、
図15および
図16に示すように、スライダ毎の第1および第2のピン41,42と、これらのピン41,42を駆動するための第1および第2のピン用カム47,48を有する1つの移動部材43と、スライダ毎の第3のピン44などを備えている。
第1のピン41は、第1の傾斜カム面35と対向する位置に配置され、第2のピン42は、第2の傾斜カム面36と対向する位置に配置されている。
【0078】
移動部材43の第1のピン用カム47および第2のピン用カム48は、スライダ毎に設けられている。この実施の形態による第1のピン用カム47および第2のピン用カム48は、第1のスライダ72と第2のスライダ73とが互いに反対方向へ移動する構成が採られている。詳述すると、第1のピン用カム47は、移動部材43が
図19に示す他端側の位置から
図16に示す一端側の位置に移動することによって、第1のピン41を後退位置から前進位置に動かす。
【0079】
第2のピン用カム48は、移動部材43が
図16に示す一端側の位置から
図19に示す他端側の位置に移動することによって、第2のピン42を後退位置から前進位置に動かす。この実施の形態においても、第1のピン用カム47と第2のピン用カム48は、第1のピン41と第2のピン42とのうちいずれか一方が前進位置に位置しているときは他方のピンが後退位置に移動可能になる構成が採られている。
【0080】
この実施の形態によるエンジンの動弁装置71においては、移動部材43が
図16に示す一端側の位置から
図19に示す他端側の位置に移動することによって、第2のピン42が後退位置から前進位置に移動し、第2の傾斜カム面36に作用した推力によって第1のスライダ72と第2のスライダ73が
図19に示すように互いに接触する位置に移動する。また、このときには第3のピン44が第1および第2のスライダ72,73の第1の凹溝37内から第2の凹溝38内に移動する。
このように第1および第2のスライダ72,73が移動することによって、
図17および
図18に示すように、ロッカーアーム5が第1のカム22に対接し、吸気弁4が第1のカム22によって駆動される。
【0081】
一方、移動部材43が
図19に示す他端側の位置から
図16に示す一端側の位置に移動すると、第1のピン41が前進位置に移動し、第1の傾斜カム面35に作用した推力によって第1のスライダ72と第2のスライダ73とが
図16に示すように互いに離間する方向に移動する。また、このときには第3のピン44が各スライダ72、73の第2の凹溝38内から第1の凹溝37内に移動する。このように第1および第2のスライダ72,73が移動することによって、
図14および
図15に示すように、ロッカーアーム5が第2のカム23に対接し、吸気弁4が閉じた状態に保たれる。
このため、この実施の形態によれば、吸気弁4が動作する第1の運転形態と、吸気弁4が休止する第2の運転形態とを切替可能なエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0082】
(第4の実施の形態)
本発明に係る動弁装置のスライダとカムフォロアは、
図20〜
図23に示すように構成することができる。
図20〜
図23において、
図1〜
図12によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0083】
この実施の形態によるエンジンの動弁装置91は、第2の実施の形態(
図10〜
図12)で示した動弁装置61とはカムフォロア34とスライダ31の構造が異なるだけのものである。この動弁装置91のその他の構成は、第2の実施の形態で示した動弁装置61と同一である。この実施の形態によるカムフォロア34は、ストッパー65(
図21参照)によって軸線方向への移動が規制されている。また、1気筒あたり2つあるロッカーアーム5は、この実施の形態によるスライダ92(
図23参照)の両側に配置され、スライダ92とともに1本の筒状軸93に揺動自在に支持されている。
【0084】
筒状軸93は、2つのロッカーアーム5の軸孔94とスライダ92の貫通孔64とに挿通され、これらの部材を貫通している。この筒状軸93の中空部には、ロッカーシャフト6が嵌合している。筒状軸93は、ロッカーシャフト6に回転自在かつ軸線方向へ移動自在に支持されている。2つのロッカーアーム5とスライダ92は、筒状軸93の軸線方向に互いに接触する状態で筒状軸93に装着されている。筒状軸93の両端部には、それぞれサークリップ95がロッカーアーム5と接触する状態で取付けられている。すなわち、2つのロッカーアーム5およびスライダ92と、筒状軸93とは、一体となった状態でロッカーシャフト6に対して軸線方向へ移動可能である。
この実施の形態によるロッカーアーム5は、第1のカム22または第2のカム23に対接するローラ96を備えている。
【0085】
この実施の形態によるスライダ92は、第2の実施の形態で示したスライダ31とは、第1および第2の傾斜カム面35,36と第1および第2の凹溝37,38を有する凸部39の位置が異なるものである。この凸部39は、シリンダ軸線C(
図1参照)と略平行に燃焼室18とは反対側に向けて延びており、カムフォロア34に沿う形状に形成されている。第1および第2の傾斜カム面35,36と、第1および第2の凹溝37,38は、凸部39におけるカムフォロア34とは反対側の側部に形成されている。このため、推力発生機構11の切替部33は、シリンダの軸線方向(
図21においては上下方向)において、カムフォロア34と同じ位置に配設されている。
【0086】
このスライダ92は、カムフォロア34に対する相対的な揺動を規制するために、受圧部97(
図21および
図23参照)と伝動部98とを有している。受圧部97は、カムフォロア34の揺動中心(ロッカーシャフト6の軸芯)と揺動端部34bとの間に位置する中間部34c(
図23参照)に対接している。伝動部98は、カムフォロア34の揺動中心を挟んで揺動端部34bとは反対側に位置する他方の揺動端部34d(
図23参照)に対接している。
【0087】
この実施の形態によるエンジンの動弁装置91においては、推力発生機構11の切替部33がシリンダの軸線方向においてカムフォロア34と同じ位置に設けられているから、ロッカーアーム5と燃焼室18との間に他の部材を配置するスペースが広く形成される。