(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの車両において、低速・高トルク駆動に適した電動機と、高速・低トルクに適した電動機を搭載し、これらの電動機を状況に応じて使い分ければ、発進時などの低速・高トルク走行から、高速巡航時などの高速・低トルク走行までをEV走行で達成することが可能であるが、低速・高トルク駆動に適した電動機と、高速・低トルクに適した電動機を搭載すると、電動機のサイズ、コスト、重量などが増加する虞がある。
【0005】
特許文献1、2には、2つの電動機を備えたハイブリッド車両が開示されている。特許文献1に記載されたハイブリッド車両では、2つの電動機のうちの一方の電動機だけを用いる1モータEV走行が可能となっている。言い換えると、2つの電動機のうちの他方の電動機は、専ら発電機として用いるものであり、その構成上、2つの電動機の動力を合成することはできない。
【0006】
また、特許文献2に記載されたハイブリッド車両では、2つの電動機による高速・低トルクのHiモード走行は可能である。しかし、2つの電動機による低速・高トルクのLoモード走行は不可能であり、一方の電動機のみで可能となる。従って、一方の電動機の性能が支配的となり、2つの電動機を活かして駆動力特性の異なる2つのEV走行モードを達成することができない。
【0007】
また、仮に一般的な遊星歯車機構を用いて、サンギヤ及びリングギヤの一方に2つの電動機のうち一方の電動機を連結し、サンギヤ及びリングギヤの他方に2つの電動機のうち他方の電動機を連結し、キャリアに出力軸を連結した場合を想定すると、2つの電動機の動力を合成して異なる回転速度を出力軸に伝達することができる。しかし、この場合であっても、出力軸に伝達されるトルクは同程度のものであるため、トルク増大の要求を満足することができず、EV走行時の駆動力特性に大きな差異を持たせるという点で改良の余地があった。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動機のサイズ、コスト、重量などの増加を回避しつつ、駆動力特性が異なる複数のEV走行モードを実現可能な動力伝達装置及び車両、並びに、動力伝達制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を提供するものである。
第1態様は、
内燃機関(例えば、後述の実施形態のエンジンENG)と、
第1電動機(例えば、後述の実施形態の第1モータ・ジェネレータMG1)と、
第2電動機(例えば、後述の実施形態の第2モータ・ジェネレータMG2)と、
前記内燃機関及び前記第1電動機に連結され、かつ、少なくとも3つの回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素a〜d)を相互に差動回転可能に構成された第1差動式変速機(例えば、後述の実施形態の遊星歯車機構10、又は、遊星歯車機構10及び遊星歯車機構20)からなる動力分配機構(例えば、後述の実施形態の動力分配機構1)と、
前記動力分配機構、前記第2電動機及び出力軸(例えば、後述の実施形態の出力軸OUT)に連結され、かつ、4つの回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e〜h)を相互に差動回転可能に構成された第2差動式変速機(例えば、後述の実施形態の遊星歯車機構30)からなる動力合成機構(例えば、後述の実施形態の動力合成機構2)と、
前記動力合成機構のいずれか1つの回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第1固定機構(例えば、後述の実施形態の第6ブレーキ機構B6)と、を有する動力伝達装置(例えば、後述の実施形態の動力伝達装置100、100B〜100F)であって、
前記動力分配機構の前記内燃機関に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素c)を選択的に回転不能に固定可能な第2固定機構(例えば、後述の実施形態の第1ブレーキ機構B1)を有し、
前記動力合成機構は、前記動力分配機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e)、前記出力軸に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素f)、前記第2電動機及び前記第1固定機構のいずれか一方に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素g)、前記第2電動機及び前記第1固定機構のいずれか他方に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素h)の順に共線図上に並ぶように構成されている。
【0010】
第2態様は、
第1態様の動力伝達装置であって、
前記動力合成機構は、前記動力分配機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e)、前記出力軸に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素f)、前記第1固定機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素g)、前記第2電動機に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素h)の順に共線図上に並ぶように構成されている。
【0011】
第3態様は、
第1又は第2態様の動力伝達装置であって、
前記動力分配機構の回転要素は、3つであり、
前記動力分配機構は、前記第1電動機に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素a)、前記内燃機関に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素c)、前記動力合成機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素d)の順に共線図上に並ぶように構成されている。
【0012】
第4態様は、
第2態様の動力伝達装置であって、
前記動力分配機構の回転要素は、4つであり、
前記動力分配機構の回転要素のうち、前記内燃機関、前記第1電動機のいずれにも連結されない回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第3固定機構(例えば、後述の実施形態の第4ブレーキ機構B4)を有する。
【0013】
第5態様は、
第4態様の動力伝達装置であって、
前記動力分配機構は、前記第1電動機に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素a)、前記第3固定機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素b)、前記内燃機関に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素c)、前記第1電動機、前記第3固定機構、前記内燃機関のいずれにも連結されない回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素d)の順に共線図上に並ぶように構成されている。
【0014】
第6態様は、
第5態様の動力伝達装置であって、
前記第1電動機、前記第3固定機構及び前記内燃機関のいずれにも連結されない回転要素は、前記動力合成機構に連結される。
【0015】
第7態様は、
第6態様の動力伝達装置であって、
さらに、前記動力合成機構の回転要素のうち前記動力分配機構に連結される回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e)を、前記動力分配機構の回転要素のうち少なくとも前記第1電動機、前記第3固定機構、前記内燃機関のいずれにも連結されない回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素d)と、前記内燃機関に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素c)とに選択的に連結可能な第1連結機構(例えば、後述の実施形態のセレクト機構3)を有する。
【0016】
第8態様は、
第7態様の動力伝達装置であって、
前記第1連結機構は、前記動力合成機構の回転要素のうち前記動力分配機構に連結される回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e)を、前記動力分配機構の回転要素のうち前記第1電動機、前記第3固定機構、前記内燃機関のいずれにも連結されない回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素d)と、前記内燃機関に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素c)と、前記第3固定機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素b)とに選択的に連結可能である。
【0017】
第9態様は、
第1〜第8態様のいずれかの動力伝達装置であって、
前記動力分配機構の回転要素のうち、少なくとも2つを連結可能な連結機構(例えば、後述の実施形態のクラッチ機構C1)を有する。
【0018】
第10態様は、
第1〜第9態様のいずれかの動力伝達装置であって、
前記動力合成機構に連結された前記動力分配機構の回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素d)と、前記動力分配機構に連結された前記動力合成機構の回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e)のうち、少なくとも1つを選択的に回転不能に固定可能な第4固定機構(例えば、後述の実施形態の第3ブレーキ機構B3)を有する。
【0019】
第11態様は、
第1〜第10態様のいずれかの動力伝達装置であって、
前記第2電動機に連結された回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第5固定機構(例えば、後述の実施形態の第5ブレーキ機構B5)を有する。
【0020】
第12態様は、
第1〜第11態様のいずれかの動力伝達装置であって、
前記第1電動機に連結された回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第6固定機構(例えば、後述の実施形態の第2ブレーキ機構B2)を有する。
【0021】
第13態様は、
車両であって、
第1〜第12態様のいずれかの動力伝達装置(例えば、後述の実施形態の動力伝達装置100)を有する。
【0022】
第14態様は、
第13態様の車両における動力伝達制御方法であって、
前記動力伝達装置は、駆動力特性が異なる第1動力合成モード(例えば、後述の実施形態の2MOT_電気CVT_Loモード)及び第2動力合成モード(例えば、後述の実施形態の2MOT_電気CVT_Hiモード)を少なくとも有し、
現在の動力合成モードが、前記第1動力合成モードであるかを判定するモード判定ステップと、
所定の速度と前記車両の走行速度との差である速度偏差(例えば、後述の実施形態の速度偏差ΔV)が第1の閾値(例えば、後述の実施形態の閾値ΔVth)以下であるかを判定する速度判定ステップと、
前記モード判定ステップで現在の動力合成モードが前記第1動力合成モードであると判定され、かつ、前記速度判定ステップで前記速度偏差が前記第1の閾値以下であると判定された場合、少なくとも前記第2電動機を駆動制御する駆動制御ステップと、
前記第1固定機構によって固定された回転要素に加わるトルク(例えば、後述の実施形態の回転要素gの反作用トルクTB6)が第2の閾値(例えば、後述の実施形態の閾値Tth)以下であるかを判定するトルク判定ステップと、
前記トルク判定ステップで前記トルクが前記第2の閾値以下であると判定された場合、前記第1固定機構によって固定されている回転要素を回転可能にすることによって、前記第1動力合成モードから前記第2動力合成モードに遷移させる遷移ステップと、
を有する。
【0023】
第15態様は、
第14態様の動力伝達制御方法であって、
前記駆動制御ステップでは、前記第2電動機を発電機として駆動制御して、前記出力軸の回転速度を維持しつつ、前記第1固定機構によって固定された回転要素に加わる前記トルクを0に近づける。
【0024】
第167態様は、
第14又は第15態様の動力伝達制御方法であって、
前記第1動力合成モードにおける前記車両の最大速度は、前記第2動力合成モードにおける前記車両の最大速度と異なる。
【0025】
第17態様は、
第14〜第16態様のいずれかの動力伝達制御方法であって、
前記第1動力合成モードにおける前記出力軸の最大トルクは、前記第2動力合成モードにおける前記出力軸の最大トルクと異なる。
【0026】
第18態様は、
第14〜第17態様のいずれかの動力伝達制御方法であって、
前記第1動力合成モードにおける前記車両の最大速度は、前記第2動力合成モードにおける前記車両の最大速度より小さい。
【0027】
第19態様は、
第14〜第18態様のいずれかの動力伝達制御方法であって、
前記第1動力合成モードにおける前記出力軸の最大トルクは、前記第2動力合成モードにおける前記出力軸の最大トルクより大きい。
【0028】
第20態様は、
第14〜第19態様のいずれかの動力伝達制御方法であって、
前記動力合成機構は、前記動力分配機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素e)、前記出力軸に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素f)、前記第1固定機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素g)、前記第2電動機に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素h)の順に共線図上に並ぶように構成されている。
【0029】
第21態様は、
第14〜第20態様のいずれかの動力伝達制御方法であって、
前記動力分配機構は、前記第1電動機に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素a)、前記内燃機関に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素c)、前記動力合成機構に連結された回転要素(例えば、後述の実施形態の回転要素d)の順に共線図上に並ぶように構成されている。
【0030】
第22態様は、
第14〜第21態様のいずれかの動力伝達制御方法であって、
前記動力伝達装置は、前記動力分配機構の回転要素のうち、少なくとも2つを連結可能な連結機構(例えば、後述の実施形態のクラッチ機構C1)を有し、
前記モード判定ステップで現在の動力合成モードが前記第1動力合成モードであると判定され、かつ、前記速度判定ステップで前記速度偏差が前記第1の閾値以下であると判定された場合、前記連結機構によって前記動力分配機構の回転要素を連結させる連結ステップを有し、
前記連結ステップの後に行う前記駆動制御ステップでは、前記第1電動機及び前記第2電動機を駆動制御する。
【0031】
第23態様は、
第22態様の動力伝達制御方法であって、
前記駆動制御ステップでは、前記第1電動機を電動機として駆動制御し、前記第2電動機を発電機として駆動制御して、前記出力軸の回転速度を維持しつつ、前記第1固定機構によって固定された回転要素に加わる前記トルクを0に近づける。
【発明の効果】
【0032】
第1態様によれば、動力伝達装置は、動力分配機構の内燃機関に連結された回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第2固定機構を有するので、2モータEV走行モードにおいて第2固定機構によって内燃機関に連結された回転要素を固定することで、動力分配機構に連結された第1電動機の動力を動力合成機構に伝達して第2電動機の動力と合成し、2つの電動機を用いた2モータEV走行モードを実現することができる。
また、2モータEV走行モードにおいては、第1固定機構の切換えによって、出力軸に伝達される回転速度のみならずトルクにも大きな変動が生じることにより、トルク特性を変化させることができるので、電動機のサイズ、コスト、重量などの増加を回避しつつ、駆動力特性が異なる複数のEV走行モードを実現することが可能になる。
【0033】
第2態様によれば、第1固定機構の切換えによって、動力合成機構の出力軸に対するレバー比(変速比)を大きく変化させることができるので、2モータEV走行モードにおいて、駆動力性能が大きく異なるHiモードEV走行とLoモードEV走行を実現することができる。
【0034】
第3態様によれば、内燃機関の動力を第1電動機及び動力合成機構に分配できるだけでなく、第1電動機と第2電動機を結ぶ電気パスを設けることによって、他方の電動機で発電した電力で一方の電動機を駆動させることができる。また、その電力量を調整することによって、バッテリへの充放電制御や電気CVT動作による燃費や電費を向上できる。
【0035】
第4態様によれば、動力分配機構の回転要素のうち、内燃機関、第2固定機構のいずれにも連結されない回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第3固定機構を有するので、内燃機関を用いた走行モードにおいて、第3固定機構の切換えによって、EV走行モードに加えて、有段変速走行を実現することができる。
【0036】
第5態様及び第6態様によれば、内燃機関の動力を第1電動機及び動力合成機構に分配できるだけでなく、第1電動機と第2電動機を結ぶ電気パスを設けることによって、他方の電動機で回生した電力で一方の電動機を駆動させることができる。また、その電力量を調整することによって、バッテリへの充放電制御や電気CVT動作による燃費や電費を向上できる。
【0037】
第7態様によれば、動力分配機構と動力合成機構との連結位置を第1連結機構によって切換えることができるので、内燃機関を用いた走行モードにおいて、有段変速走行の変速段数を増加させることができる。
【0038】
第8態様によれば、内燃機関を用いた走行モードにおいて、有段変速走行の変速段数をさらに増加させることができる。
【0039】
第9態様によれば、連結機構の切換えによって、モード遷移時における動力分配機構側のトルク変動や回転数変動を抑制できる。そのため、振動や騒音の生じない円滑なモードの遷移ができる。
【0040】
第10態様によれば、第4固定機構の切換えによって、動力合成機構と動力分配機構との間における動力伝達を停止させることができるので、第2電動機による1モータEV走行を実現することができる。
【0041】
第11態様によれば、第5固定機構の切り替えによって、第1電動機による1モータEV走行を実現することができる。
【0042】
第12態様によれば、第1電動機に連結された回転要素を選択的に回転不能に固定可能な第6固定機構をさらに有するので、内燃機関を用いた走行モードにおいて、有段変速走行の変速段数をさらに増加させることができる。また、第5固定機構及び第6固定機構の切換えによって、電動機を用いずに内燃機関のみによるメカパス100%を実現することもできる。
【0043】
第13態様によれば、2モータEV走行モードにおいて、駆動力特性が異なる複数のEV走行モードを実現可能な車両を提供することができる。
【0044】
第14態様によれば、第1固定機構によって固定されている回転要素を回転可能とすることによって第1動力合成モードから第2動力合成モードへ遷移するとき、出力軸の回転速度に変化はなく、かつ、回転可能とされる回転要素に加わるトルクは第2の閾値以下と小さいため、モード遷移時に発生する騒音又は振動を低減できる。
【0045】
第15態様によれば、第1動力合成モードから第2動力合成モードへ遷移するとき、出力軸の回転速度に変化はなく、かつ、回転可能とされる回転要素に加わるトルクは0に近いため、モード遷移時に発生する騒音又は振動を低減できる。
【0046】
第16態様によれば、最大速度が異なる2つの動力合成モード間を遷移する際に、振動又は騒音を低減できる。
【0047】
第17態様によれば、出力軸の最大トルクが異なる2つの動力合成モード間を遷移する際に、振動又は騒音を低減できる。
【0048】
第18態様によれば、最大速度が小さい第1動力合成モードから最大速度が大きい第2動力合成モードへ遷移する際に、振動又は騒音を低減できる。
【0049】
第19態様によれば、出力軸の最大トルクが大きい第1動力合成モードから最大トルクが小さい第2動力合成モードへ遷移する際に、振動又は騒音を低減できる。
【0050】
第20態様によれば、第1固定機構による回転要素の固定又は解放によって、動力合成機構の出力軸に対するレバー比(変速比)を大きく変化させることができるので、駆動力特性が大きく異なる2つの動力合成モードを実現することができる。
【0051】
第21態様によれば、内燃機関の動力を第1電動機及び動力合成機構に分配できるだけでなく、第1電動機と第2電動機を結ぶ電気パスを設けることによって、他方の電動機で発電した電力で一方の電動機を駆動させることができる。
【0052】
第22態様によれば、連結機構によって動力分配機構の少なくとも2つの回転要素を連結した状態で、第1固定機構によって固定されている回転要素を回転可能とすることによって第1動力合成モードから第2動力合成モードへ遷移するとき、出力軸の回転速度に変化はなく、回転可能とされる回転要素に加わるトルクは第2の閾値以下と小さく、かつ、出力軸のトルクに変化はないため、モード遷移時に発生する騒音又は振動をより一層低減できる。
【0053】
第23態様によれば、第1動力合成モードから第2動力合成モードへ遷移するとき、出力軸の回転速度に変化はなく、かつ、回転可能とされる回転要素に加わるトルクは0に近いため、モード遷移時に発生する騒音又は振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置のシステムを示す図であり、(a)は動力伝達装置のスケルトン図、(b)は動力伝達装置のブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の作動パターンを示す作動表である。
【
図4】2MOT_EV_Loモードの共線図である。
【
図5】2MOT_EV_Hiモードの共線図である。
【
図6】2MOT_EV_Revモードの共線図である。
【
図8】1MOT_EV_Revモードの共線図である。
【
図9】2MOT_電気CVTモードの駆動力線図である。
【
図10】2MOT_電気CVT_Loモードの共線図である。
【
図11】2MOT_電気CVT_Hiモードの共線図である。
【
図12】2MOT_電気CVT_Revモードの共線図である。
【
図14】固定ギヤモード1速(ハイブリッド運転)の共線図である。
【
図15】固定ギヤモード2速(エンジン運転)の共線図である。
【
図16】固定ギヤモード3速(ハイブリッド運転I)の共線図である。
【
図17】固定ギヤモード3速(ハイブリッド運転II)の共線図である。
【
図18】固定ギヤモード4速(ハイブリッド運転)の共線図である。
【
図19】固定ギヤモード5速(エンジン運転)の共線図である。
【
図20】固定ギヤモード5速(ハイブリッド運転)の共線図である。
【
図21】固定ギヤモード6速(ハイブリッド運転)の共線図である。
【
図22】固定ギヤモード7速(エンジン運転)の共線図である。
【
図23】固定ギヤモード8速(ハイブリッド運転)の共線図である。
【
図24】オペレーション例を示す図であり、停止状態を示す共線図である。
【
図25】オペレーション例を示す図であり、2MOT_EV_Loモード発進を示す共線図である。
【
図26】オペレーション例を示す図であり、2MOT_EV_Loモード発進後の始動準備1を示す共線図である。
【
図27】オペレーション例を示す図であり、2MOT_EV_Loモード発進後の始動準備2を示す共線図である。
【
図28】オペレーション例を示す図であり、2MOT_EV_Loモード発進後のエンジン始動を示す共線図である。
【
図29】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Loモードでの高速走行を示す共線図である。
【
図30】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_LoモードからHiモードへの持ち替え準備を示す共線図である。
【
図31】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_LoモードからHiモードへの持ち替えを示す共線図である。
【
図32】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え後の加速1を示す共線図である。
【
図33】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え後の加速2を示す共線図である。
【
図34】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Hiモードでの高速走行を示す共線図である。
【
図35】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Hiモード 高速回生遷移1を示す共線図である。
【
図36】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Hiモード 高速回生遷移2を示す共線図である。
【
図37】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Hiモード 回生を示す共線図である。
【
図38】オペレーション例を示す図であり、2MOT_電気CVT_Loモード 回生を示す共線図である。
【
図39】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法1を示す共線図である。
【
図40】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法2を示す共線図である。
【
図41】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法3を示す共線図である。
【
図42】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法4を示す共線図である。
【
図43】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法5を示す共線図である。
【
図44】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法6を示す共線図である。
【
図45】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法7を示す共線図である。
【
図46】2MOT_電気CVT_セレクト切替手法8を示す共線図である。
【
図47】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両が備えるECUの内部構成を示すブロック図である。
【
図48】第1実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードでの高速走行を示す共線図である。
【
図49】第1実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え準備を示す共線図である。
【
図50】第1実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替えを示す共線図である。
【
図51】ECUによる第1実施形態に係る運転モード遷移制御の手順を示すフローチャートである。
【
図52】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置のスケルトン図である。
【
図53】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置における2MOT_電気CVTモードの駆動力線図である。
【
図54】本発明の第2実施形態に係るハイブリッド車両が備えるECUの内部構成を示すブロック図である。
【
図55】2MOT_電気CVT_Loモードの共線図である。
【
図56】第2実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードでの高速走行を示す共線図である。
【
図57】第2実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え準備1を示す共線図である。
【
図58】第2実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え準備2を示す共線図である。
【
図59】第2実施形態に係る運転モード遷移制御時の2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替えを示す共線図である。
【
図60】ECUによる第2実施形態に係る運転モード遷移制御の手順を示すフローチャートである。
【
図61】第2実施形態に係る2MOT_電気CVT_Midモードの共線図である。
【
図62】第2実施形態に係る2MOT_電気CVT_Midモードの共線図である。
【
図63】第2実施形態に係る2MOT_電気CVT_Midモードの共線図である。
【
図64】第2実施形態に係る2MOT_電気CVT_Midモードの共線図である。
【
図65】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置のスケルトン図である。
【
図66】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置の作動パターンを示す作動表である。
【
図67】本発明の第4実施形態に係る動力伝達装置のスケルトン図である。
【
図68】本発明の第4実施形態に係る動力伝達装置の作動パターンを示す作動表である。
【
図69】本発明の第5実施形態に係る動力伝達装置のスケルトン図である。
【
図70】本発明の第5実施形態に係る動力伝達装置の作動パターンを示す作動表である。
【
図71】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置のスケルトン図である。
【
図72】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置の作動パターンを示す作動表である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の動力伝達装置の各実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下説明する各実施形態の動力伝達装置は、車両の走行状態に応じて電動機及び/又は内燃機関の動力によって走行するハイブリッド車両等に搭載される。
【0056】
(第1実施形態)
<動力伝達装置>
図1(a)及び
図1(b)に示す本発明の実施形態に係る動力伝達装置100は、ハイブリッド車両に好適に用いられる動力伝達装置であって、内燃機関であるエンジンENGと、それぞれ電動機及び発電機として機能する2つの第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2と、エンジンENG及び第1モータ・ジェネレータMG1に連結され、かつ、4つの回転要素a〜dを相互に差動回転可能に構成された第1差動式変速機からなる動力分配機構1と、動力分配機構1、第2モータ・ジェネレータMG2及び出力軸OUTに連結され、かつ、4つの回転要素e〜hを相互に差動回転可能に構成された第2差動式変速機からなる動力合成機構2と、動力合成機構2に連結される動力分配機構1の回転要素b〜dを選択的に切換えるセレクト機構(SL、SM、SH)3と、回転要素を選択的に回転不能に固定可能な固定機構である6つのブレーキ機構である第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6と、を有する。
【0057】
<動力分配機構>
本実施形態の動力分配機構1は、シングルピニオン型の遊星歯車機構10と、ダブルピニオン型の遊星歯車機構20とを組み合わせて構成されている。シングルピニオン型の遊星歯車機構10は、サンギヤS11と、サンギヤS11と同心円上に設けられたリングギヤR11と、サンギヤS11及びリングギヤR11に噛み合っているピニオンギヤP11を保持するキャリアC11と、を有する。ダブルピニオン型の遊星歯車機構20は、サンギヤS21と、サンギヤS21と同心円上に設けられたリングギヤR21と、サンギヤS21に噛み合っている内側ピニオンP21と該内側ピニオンP21及びリングギヤR21に噛み合っている外側ピニオンP22とを保持するキャリアC21と、を有する。
【0058】
そして、遊星歯車機構10のサンギヤS11は、動力分配機構1の回転要素aを構成しており、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2ブレーキ機構B2が連結されている。また、遊星歯車機構10のリングギヤR11は、遊星歯車機構20のキャリアC21に連結されて動力分配機構1の回転要素dを構成しており、第3ブレーキ機構B3及びセレクト機構3のセレクト要素SHが連結されている。また、遊星歯車機構10のキャリアC11は、遊星歯車機構20のリングギヤR21に連結されて動力分配機構1の回転要素cを構成しており、エンジンENG、第1ブレーキ機構B1及びセレクト機構3のセレクト要素SMが連結されている。また、遊星歯車機構20のサンギヤS21は、動力分配機構1の回転要素bを構成しており、第4ブレーキ機構B4及びセレクト機構3のセレクト要素SLが連結されている。
【0059】
<動力合成機構>
一方、動力合成機構2は、ラビニヨ型の遊星歯車機構30を用いて構成されている。ラビニヨ型の遊星歯車機構30は、同一軸線上に配置された第1サンギヤS31及び第2サンギヤS32と、第1サンギヤS31及び第2サンギヤS32と同心円上に設けられたリングギヤR31と、第1サンギヤS31及びリングギヤR31に噛み合っているロングピニオンP31と該ロングピニオンP31及び第2サンギヤS32に噛み合っているショートピニオンP32とを保持するキャリアC31と、を有する。
【0060】
そして、遊星歯車機構30の第1サンギヤS31は、動力合成機構2の回転要素hを構成しており、第2モータ・ジェネレータMG2及び第5ブレーキ機構B5が連結されている。また、遊星歯車機構30の第2サンギヤS32は、動力合成機構2の入力部である回転要素eを構成しており、セレクト機構3が連結されている。また、遊星歯車機構30のリングギヤR31は、動力合成機構2の出力部である回転要素fを構成しており、出力軸OUTが連結されている。また、遊星歯車機構30のキャリアC31は、動力合成機構2の回転要素gを構成しており、第6ブレーキ機構B6が連結されている。
【0061】
つまり、本発明の実施形態に係る動力伝達装置100の動力分配機構1では、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2ブレーキ機構B2が連結された回転要素a(サンギヤS11)、第4ブレーキ機構B4及びセレクト機構3のセレクト要素SLが連結された回転要素b(サンギヤS21)、エンジンENG、第1ブレーキ機構B1及びセレクト機構3のセレクト要素SMが連結された回転要素c(キャリアC11,リングギヤR21)、第3ブレーキ機構B3及びセレクト機構3のセレクト要素SHが連結された回転要素d(リングギヤR11,キャリアC21)が単一の直線状に位置する共線関係にあり、回転要素a〜dは
図4以降に示すように共線関係を示す共線図上にこの順に並ぶように構成されている。
【0062】
また、本発明の実施形態に係る動力伝達装置100の動力合成機構2では、動力分配機構1からの入力部であり、セレクト機構3が連結されている回転要素e(第2サンギヤS32)、出力軸OUTが連結されている回転要素f(リングギヤR31)、第6ブレーキ機構B6が連結されている回転要素g(キャリアC31)、第2モータ・ジェネレータMG2及び第5ブレーキ機構B5が連結されている回転要素h(第1サンギヤS31)が単一の直線状に位置する共線関係にあり、回転要素e〜hは
図4以降に示すように共線関係を示す共線図上にこの順に並ぶように構成されている。
【0063】
<運転モード>
そして、本発明の実施形態に係る動力伝達装置100では、駆動源であるエンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2と、締結/解放要素である第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6及びセレクト機構3を、
図2の作動表に示す作動パターンで制御することにより、各種の運転モードが実現できる。
【0064】
図2に示すように、運転モードには、EVモードと、電気CVTモードと、固定ギヤモードとが含まれる。EVモードは、モータ動力のみで走行する運転モードであり、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の動力で走行する2モータEVモードと、第1モータ・ジェネレータMG1の動力だけで走行する1モータEVモードとが含まれている。また、電気CVTモードは、エンジン動力及びモータ動力で無段変速走行する運転モードであり、エンジン動力、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の動力で無段変速走行する2モータ電気CVTモードが含まれている。また、固定ギヤモードは、エンジン動力及びモータ動力で有段変速走行する運転モードであり、駆動源としてエンジンENGに加えて第1モータ・ジェネレータMG1及び/又は第2モータ・ジェネレータMG2を用いるハイブリッド運転モードを有する。加えて、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を停止して、駆動源としてエンジンENGのみを用いるエンジン運転モードを有する。
【0065】
つぎに、各運転モードの具体的な作動パターンについて、
図2に示す作動表や
図3以降に示す駆動力線図及び共線図を参照して説明する。
図3以降に示す駆動力線図では、横軸が車速、縦軸が駆動力を示している。
【0066】
<EVモード>
図3に示すように、本実施形態の動力伝達装置100では、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の動力で走行する2モータEVモードを可能にするとともに、2モータEVモードにおいて、低速・高トルクの駆動力特性を示す2MOT_EV_Loモードと、高速・低トルクの駆動力特性を示す2MOT_EV_Hiモードを可能にする。
【0067】
<2MOT_EV_Loモード>
図2及び
図4に示すように、2MOT_EV_Loモードでは、エンジンENGを停止させるとともに、第1ブレーキ機構B1及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0068】
ここで、第1モータ・ジェネレータMG1を、
図4に示すように、逆回転方向に力行駆動させると、動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素cを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dの回転が正回転方向に増速され、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素aには、第1モータ・ジェネレータMG1の作用トルクTMG1が逆回転方向に発生しており、この作用トルクTMG1は、固定点である回転要素cを支点とするレバー比ac/cd(ac間のギヤ比/cd間のギヤ比、以下同様。)で回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTMG1にレバー比ac/cdを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素cには、正回転方向の反作用トルクTB1が発生し、この反作用トルクTB1によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0069】
一方、動力合成機構2側では、第2モータ・ジェネレータMG2を逆回転方向に力行駆動させることにより、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、正回転方向の低速回転(低速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2とに起因する反作用トルクが発生するが、2MOT_EV_Loモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTIN、TMG2は、それぞれ、固定点である回転要素gを支点とするレバー比で回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUT_1と、作用トルクTMG2にレバー比gh/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUT_2とが発生する。なお、出力軸OUTが連結される回転要素fに逆回転方向のトルクが作用することは、即ち、出力軸OUTに正回転方向(前進方向)のトルクが作用することを意味する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性で前進走行可能な2MOT_EV_Loモードが実現される。なお、固定点である回転要素gには、正回転方向の反作用トルクTB6_1、TB6_2が発生し、この反作用トルクTB6_1、TB6_2によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0070】
<2MOT_EV_Hiモード>
図2及び
図5に示すように、2MOT_EV_Hiモードでは、エンジンENGを停止させるとともに、第1ブレーキ機構B1を締結させて動力分配機構1の回転要素cを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。つまり、2MOT_EV_Hiモードは、動力合成機構2の回転要素gを固定しない点が2MOT_EV_Loモードと相違している。
【0071】
図5に示すように、2MOT_EV_Hiモードにおいても、第1モータ・ジェネレータMG1を逆回転方向に力行駆動させる。2MOT_EV_Hiモードでは、高速走行を行うため、2MOT_EV_Loモードよりも高速で第1モータ・ジェネレータMG1を駆動させるが、動力分配機構1側の基本的な動作は、2MOT_EV_Loモードと同様なので、動力分配機構1側の説明は省略する。
【0072】
一方、動力合成機構2側では、第2モータ・ジェネレータMG2を正回転方向に力行駆動させることにより、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、正回転方向の高速回転(高速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2とに起因する反作用トルクが発生するが、2MOT_EV_Hiモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されていないため、回転要素fに発生する反作用トルクTOUTは、単純に動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2との合計値となる。これにより、高速・低トルクの駆動力特性で前進走行可能な2MOT_EV_Hiモードが実現される。
【0073】
このように、本実施形態の動力伝達装置100では、第1ブレーキ機構B1を締結させて動力分配機構1の回転要素cを固定することにより、第1モータ・ジェネレータMG1の作用トルクTMG1によって動力合成機構2側に作用トルクTINが作用し、さらに、第6ブレーキ機構B6を締結させて動力合成機構2の回転要素gを固定することにより、出力軸OUTが連結される回転要素fには、作用トルクTINが増幅された反作用トルクTOUT_1が発生するとともに、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2が増幅された反作用トルクTOUT_2が発生する。一方、第6ブレーキ機構B6を解放すると、作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2との合計値と等しい大きさの反作用トルクTOUTが回転要素fに発生する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性を有するEV走行モードと高速・低トルクの駆動力特性を有するEV走行モードとが第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2で実現できる。
【0074】
<2MOT_EV_Revモード>
図2及び
図6に示すように、2MOT_EV_Revモードでは、エンジンENGを停止させるとともに、第1ブレーキ機構B1及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0075】
ここで、第1モータ・ジェネレータMG1を、
図6に示すように、正回転方向に力行駆動させると、動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素cを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dの回転が逆回転方向に増速され、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素aには、第1モータ・ジェネレータMG1の作用トルクTMG1が正回転方向に発生しており、この作用トルクTMG1は、固定点である回転要素cを支点とするレバー比ac/cdで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTMG1にレバー比ac/cdを掛けて求められる正回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが逆回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素cには、逆回転方向の反作用トルクTB1が発生し、この反作用トルクTB1によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0076】
一方、動力合成機構2側では、第2モータ・ジェネレータMG2を正回転方向に力行駆動させることにより、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、逆回転方向の低速回転(低速後進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2とに起因する反作用トルクが発生するが、2MOT_EV_Revモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTIN、TMG2は、それぞれ、固定点である回転要素gを支点とするレバー比で回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる正回転方向の反作用トルクTOUT_1と、作用トルクTMG2にレバー比gh/fgを掛けて求められる正回転方向の反作用トルクTOUT_2とが発生する。なお、出力軸OUTが連結される回転要素fに正回転方向のトルクが作用することは、即ち、出力軸OUTに逆回転方向(後進方向)のトルクが作用することを意味する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性で後進走行可能な2MOT_EV_Revモードが実現される。なお、固定点である回転要素gには、逆回転方向の反作用トルクTB6_1、TB6_2が発生し、この反作用トルクTB6_1、TB6_2によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0077】
<1MOT_EVモード>
図2及び
図7に示すように、1MOT_EVモードでは、エンジンENG及び第2モータ・ジェネレータMG2を停止させるとともに、第1ブレーキ機構B1及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素hを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0078】
ここで、第1モータ・ジェネレータMG1を、
図7に示すように、逆回転方向に力行駆動させると、動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素cを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dの回転が正回転方向に増速され、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素aには、第1モータ・ジェネレータMG1の作用トルクTMG1が逆回転方向に発生しており、この作用トルクTMG1は、固定点である回転要素cを支点とするレバー比ac/cdで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTMG1にレバー比ac/cdを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素cには、正回転方向の反作用トルクTB1が発生し、この反作用トルクTB1によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0079】
一方、動力合成機構2側では、回転要素eに正回転の動力が入力されると、固定点である回転要素hを支点として共線の傾きが変化し、出力部である回転要素fには、入力回転に応じた正回転方向の回転(前進走行)が伝達される。また、動力分配機構1から入力された作用トルクTINは、回転要素hを支点とするレバー比で回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eh/fhを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、1モータであっても低速から高速にわたって低トルクの駆動力特性で前進走行可能な1MOT_EVモードが実現される。なお、固定点である回転要素hには、正回転方向の反作用トルクTB5が発生し、この反作用トルクTB5によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0080】
<1MOT_EV_Revモード>
図2及び
図8に示すように、1MOT_EV_Revモードでは、エンジンENG及び第2モータ・ジェネレータMG2を停止させるとともに、第1ブレーキ機構B1及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素hを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0081】
ここで、第1モータ・ジェネレータMG1を、
図8に示すように、正回転方向に力行駆動させると、動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素cを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dの回転が逆回転方向に増速され、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素aには、第1モータ・ジェネレータMG1の作用トルクTMG1が正回転方向に発生しており、この作用トルクTMG1は、固定点である回転要素cを支点とするレバー比ac/cdで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTMG1にレバー比ac/cdを掛けて求められる正回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが逆回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素cには、逆回転方向の反作用トルクTB1が発生し、この反作用トルクTB1によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0082】
一方、動力合成機構2側では、回転要素eに逆回転の動力が入力されると、固定点である回転要素hを支点として共線の傾きが変化し、出力部である回転要素fには、入力回転に応じた逆回転方向の回転(後進走行)が伝達される。また、動力分配機構1から入力された作用トルクTINは、回転要素hを支点とするレバー比で回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eh/fhを掛けて求められる正回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、1モータであっても低速から高速にわたって後進走行可能な1MOT_EV_Revモードが実現される。なお、固定点である回転要素hには、逆回転方向の反作用トルクTB5が発生し、この反作用トルクTB5によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0083】
<2MOT_電気CVTモード>
図9に示すように、本実施形態の動力伝達装置100では、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の動力で無段変速走行する2モータ電気CVTモードを可能にするとともに、2モータ電気CVTモードにおいて、低速・高トルクの駆動力特性を示す2MOT_電気CVT_Loモードと、高速・低トルクの駆動力特性を示す2MOT_電気CVT_Hiモードを可能にする。
【0084】
<2MOT_電気CVT_Loモード>
図2及び
図10に示すように、2MOT_電気CVT_Loモードでは、第6ブレーキ機構B6を締結させて動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0085】
図10に示すように、このモードでは、エンジンENGを駆動させるとともに、第1モータ・ジェネレータMG1を回生駆動させる。なお、第1モータ・ジェネレータMG1を回生駆動させることで第1モータ・ジェネレータMG1を発電機として利用でき、発電電力は必要に応じて第2モータ・ジェネレータMG2に供給する、いわゆる電気パスをしてもよく、不図示のバッテリに充電してもよい。動力分配機構1側の共線は、エンジンENG及び第1モータ・ジェネレータMG1の回転数に基づいて傾きが制御されており、回転要素dは正回転方向に増速され、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが正回転方向に発生しており、これにより、回転要素aに逆回転方向の反作用トルクTMG1が発生し、回転要素dに逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。
【0086】
一方、動力合成機構2側では、第2モータ・ジェネレータMG2を逆回転方向に力行駆動させることにより、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、正回転方向の低速回転(低速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2とに起因する反作用トルクが発生するが、2MOT_電気CVT_Loモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTIN、TMG2は、それぞれ、固定点である回転要素gを支点とするレバー比で回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUT_1と、作用トルクTMG2にレバー比gh/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUT_2とが発生する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性で前進走行可能な2MOT_電気CVT_Loモードが実現される。なお、固定点である回転要素gには、正回転方向の反作用トルクTB6_1、TB6_2が発生し、この反作用トルクTB6_1、TB6_2によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0087】
<2MOT_電気CVT_Hiモード>
図2及び
図11に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードでは、すべての第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6を解放させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。つまり、2MOT_電気CVT_Hiモードは、動力合成機構2の回転要素gを固定しない点が2MOT_電気CVT_Loモードと相違している。
【0088】
図11に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードにおいても、エンジンENGを駆動させるとともに、第1モータ・ジェネレータMG1を回生駆動させる。2MOT_電気CVT_Hiモードでは、高速走行を行うため、2MOT_電気CVT_Loモードよりも第1モータ・ジェネレータMG1の回転速度を下げ、回転要素dの回転速度を上げているが、動力分配機構1側の基本的な動作は、2MOT_電気CVT_Loモードと同様なので、動力分配機構1側の説明は省略する。
【0089】
一方、動力合成機構2側では、第2モータ・ジェネレータMG2を正回転方向に力行駆動させることにより、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、正回転方向の高速回転(高速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2とに起因する反作用トルクが発生するが、2MOT_電気CVT_Hiモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されていないため、回転要素fに発生する反作用トルクTOUTは、単純に動力分配機構1から入力された作用トルクTINと、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2との合計値となる。これにより、高速・低トルクの駆動力特性で前進走行可能な2MOT_電気CVT_Hiモードが実現される。
【0090】
<2MOT_電気CVT_Revモード>
図2及び
図12に示すように、2MOT_電気CVT_Revモードでは、第3ブレーキ機構B3を締結させて動力分配機構1の回転要素dを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0091】
図12に示すように、このモードでは、エンジンENGを駆動させるとともに、第1モータ・ジェネレータMG1を回生駆動させる。このとき、回転要素dが固定されているので、動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素dを支点として傾きが変化する。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが正回転方向に発生しており、これにより、回転要素aに逆回転方向の反作用トルクTMG1が発生し、回転要素dに逆回転方向の反作用トルクTB3が発生するが、回転要素dが固定されているので、反作用トルクTB3は動力合成機構2の回転要素eに伝達されない。
【0092】
一方、動力合成機構2側では、回転要素dに連結された回転要素eも回転不能に固定されるので、動力合成機構2側の共線は、回転要素eを支点として第2モータ・ジェネレータMG2の回転に応じて傾きが変化する。ここで、
図12に示すように、第2モータ・ジェネレータMG2を逆回転方向に力行駆動させることにより、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、逆回転方向の低速回転(低速後進走行)が伝達される。また、回転要素fには、第2モータ・ジェネレータMG2の作用トルクTMG2に起因する反作用トルクが発生するが、2MOT_電気CVT_Revモードでは、動力合成機構2の回転要素eも固定されているため、作用トルクTMG2は、固定点である回転要素eを支点とするレバー比で回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTMG2にレバー比eh/efを掛けて求められる正回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性で後進走行可能な2MOT_電気CVT_Revモードが実現される。なお、固定点である回転要素eには、逆回転方向の反作用トルクTINが発生し、この反作用トルクTINによって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。また、このモードでは、連結された回転要素d及び回転要素eが互いに回転不能であることによって、エンジン始動時に発生する不要な振動などを伝えるおそれがないため、第1モータ・ジェネレータMG1の発電電力で第2モータ・ジェネレータMG2を駆動させる、いわゆる電気パスを好適に用いることができる。
【0093】
<固定ギヤモード>
図13に示すように、本実施形態の動力伝達装置100では、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の動力で8段の有段変速走行する固定ギヤモードを可能にするとともに、8段の変速段のうち、3つの変速段(2速、5速、7速)では、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を停止させ、エンジンENGの動力のみで走行する、いわゆる機械パス100%を実現している。なお、固定ギヤモードでは、回転要素a、hが第2ブレーキ機構B2及び第5ブレーキ機構B5によって回転不能に固定されていない限り、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を電動機又は発電機として利用することは可能であるが、以下で説明する本実施形態の固定ギヤモードでは、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2が空転しているものとして説明する。
【0094】
<固定ギヤモード 1速(ハイブリッド運転)>
図2及び
図14に示すように、固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)では、第2ブレーキ機構B2及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素gとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SLを介して、動力分配機構1の回転要素bと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0095】
図14に示すように、固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)では、エンジンENGを駆動させ、第1モータ・ジェネレータMG1を停止させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素aを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素bが正回転方向に低速で回転し、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGは、固定点である回転要素aを支点とするレバー比ac/abで回転要素bに伝達される。つまり、回転要素bには、作用トルクTENGにレバー比ac/abを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTbが発生し、この反作用トルクTbが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素aには、正回転方向の反作用トルクTB2が発生し、この反作用トルクTB2によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0096】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素gを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の低速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の低速回転(1速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素gを支点とするレバー比eg/fgで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)が実現される。なお、固定点である回転要素gには、正回転方向の反作用トルクTB6が発生し、この反作用トルクTB6によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0097】
<固定ギヤモード 2速(エンジン運転)>
図2及び
図15に示すように、固定ギヤモードの2速(エンジン運転)では、第2ブレーキ機構B2及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素hとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SLを介して、動力分配機構1の回転要素bと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。この固定ギヤモードの2速(エンジン運転)では、動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素hとが回転不能に固定されるため、回転要素aに連結された第1モータ・ジェネレータMG1及び回転要素hに連結された第2モータ・ジェネレータMG2も回転不能となり、機械パス100%が実現される。
【0098】
図15に示すように、固定ギヤモードの2速(エンジン運転)における動力分配機構1側の動作は、固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)における動力分配機構1側の動作と同様である。
【0099】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素hを支点として共線の傾き(1速よりも傾きが小さい)が変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の低速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の低速回転(2速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素hが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素hを支点とするレバー比eh/fhで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eh/fhを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、低速・高トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの2速(エンジン運転)が実現される。なお、固定点である回転要素hには、正回転方向の反作用トルクTB5が発生し、この反作用トルクTB5によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0100】
<固定ギヤモード 3速(ハイブリッド運転I)>
図2及び
図16に示すように、固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転I)では、第2ブレーキ機構B2及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素gとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SMを介して、動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0101】
図16に示すように、固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転I)では、エンジンENGを駆動させ、第1モータ・ジェネレータMG1を停止させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素aを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素cが正回転方向に中速で回転し、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。
【0102】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素gを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の中速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の中速回転(3速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素gを支点とするレバー比eg/fgで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、中速・中トルクの駆動力特性で前進可能な固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転I)が実現される。なお、固定点である回転要素gには、正回転方向の反作用トルクTB6が発生し、この反作用トルクTB6によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0103】
<固定ギヤモード 3速(ハイブリッド運転II)>
図2及び
図17に示すように、固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転II)では、第4ブレーキ機構B4及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素bと、動力合成機構2の回転要素gとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SMを介して、動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0104】
図17に示すように、固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転II)では、エンジンENGを駆動させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素bを支点とはするが、回転要素cの回転が直接に動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。
【0105】
一方、動力合成機構2側の動作は、固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転I)における動力合成機構2側の動作と同様である。したがって、これによっても中速・中トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの3速(ハイブリッド運転II)が実現される。
【0106】
<固定ギヤモード 4速(ハイブリッド運転)>
図2及び
図18に示すように、固定ギヤモードの4速(ハイブリッド運転)では、第2ブレーキ機構B2及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素gとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0107】
図18に示すように、固定ギヤモードの4速(ハイブリッド運転)では、エンジンENGを駆動させ、第1モータ・ジェネレータMG1を停止させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素aを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dが正回転方向に高速で回転し、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGは、固定点である回転要素aを支点とするレバー比ac/adで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTENGにレバー比ac/adを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素aには、正回転方向の反作用トルクTB2が発生し、この反作用トルクTB2によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0108】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素gを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の高速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の中速回転(4速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素gを支点とするレバー比eg/fgで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、中速・中トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの4速(ハイブリッド運転)が実現される。なお、固定点である回転要素gには、正回転方向の反作用トルクTB6が発生し、この反作用トルクTB6によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0109】
<固定ギヤモード 5速(エンジン運転)>
図2及び
図19に示すように、固定ギヤモードの5速(エンジン運転)では、第2ブレーキ機構B2及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素hとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SMを介して、動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。この固定ギヤモードの5速(エンジン運転)では、動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素hとが回転不能に固定されるため、回転要素aに連結された第1モータ・ジェネレータMG1及び回転要素hに連結された第2モータ・ジェネレータMG2も回転不能となり、機械パス100%が実現される。
【0110】
図19に示すように、固定ギヤモードの5速(エンジン運転)では、エンジンENGを駆動させ、第1モータ・ジェネレータMG1を停止させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素aを支点とするが、回転要素cの回転が直接に動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。
【0111】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素hを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の中速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の中速回転(5速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素hが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素hを支点とするレバー比eh/fhで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eh/fhを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、中速・中トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの5速(エンジン運転)が実現される。なお、固定点である回転要素hには、正回転方向の反作用トルクTB5が発生し、この反作用トルクTB5によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0112】
<固定ギヤモード 5速(ハイブリッド運転)>
図2及び
図20に示すように、固定ギヤモードの5速(ハイブリッド運転)では、第4ブレーキ機構B4及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素bと、動力合成機構2の回転要素hとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SMを介して、動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0113】
図20に示すように、固定ギヤモードの5速(ハイブリッド運転)では、エンジンENGを駆動させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素bを支点とはするが、回転要素cの回転が直接に動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。
【0114】
一方、動力合成機構2側の動作は、固定ギヤモードの5速(エンジン運転)における動力合成機構2側の動作と同様である。したがって、これによっても中速・中トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの5速(ハイブリッド運転)が実現される。
【0115】
<固定ギヤモード 6速(ハイブリッド運転)>
図2及び
図21に示すように、固定ギヤモードの6速(ハイブリッド運転)では、第4ブレーキ機構B4及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素bと、動力合成機構2の回転要素gとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0116】
図21に示すように、固定ギヤモードの6速(ハイブリッド運転)では、エンジンENGを駆動させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素bを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dが正回転方向に高速で回転し、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGは、固定点である回転要素bを支点とするレバー比bc/bdで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTENGにレバー比bc/bdを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素bには、逆回転方向の反作用トルクTB4が発生し、この反作用トルクTB4によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0117】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素gを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の高速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の高速回転(6速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素gが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素gを支点とするレバー比eg/fgで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eg/fgを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、高速・低トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの6速(ハイブリッド運転)が実現される。なお、固定点である回転要素gには、正回転方向の反作用トルクTB6が発生し、この反作用トルクTB6によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0118】
<固定ギヤモード 7速(エンジン運転)>
図2及び
図22に示すように、固定ギヤモードの7速(エンジン運転)では、第2ブレーキ機構B2及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素hとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。この固定ギヤモードの7速(エンジン運転)では、動力分配機構1の回転要素aと、動力合成機構2の回転要素hとが回転不能に固定されるため、回転要素aに連結された第1モータ・ジェネレータMG1及び回転要素hに連結された第2モータ・ジェネレータMG2も回転不能となり、機械パス100%が実現される。
【0119】
図22に示すように、固定ギヤモードの7速(エンジン運転)では、エンジンENGを駆動させ、第1モータ・ジェネレータMG1を停止させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素aを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dが正回転方向に高速で回転し、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGは、固定点である回転要素aを支点とするレバー比ac/adで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTENGにレバー比ac/adを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素aには、逆回転方向の反作用トルクTB2が発生し、この反作用トルクTB2によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0120】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素hを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の高速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の高速回転(7速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素hが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素hを支点とするレバー比eh/fhで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eh/fhを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、高速・低トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの7速(エンジン運転)が実現される。なお、固定点である回転要素hには、正回転方向の反作用トルクTB5が発生し、この反作用トルクTB5によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0121】
<固定ギヤモード 8速(ハイブリッド運転)>
図2及び
図23に示すように、固定ギヤモードの8速(ハイブリッド運転)では、第4ブレーキ機構B4及び第5ブレーキ機構B5を締結させて動力分配機構1の回転要素bと、動力合成機構2の回転要素hとを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。
【0122】
図23に示すように、固定ギヤモードの8速(ハイブリッド運転)では、エンジンENGを駆動させる。動力分配機構1側の共線は、固定点である回転要素bを支点として傾きが変化する。これにより、回転要素dが正回転方向に高速(7速よりも高速)で回転し、その回転が動力合成機構2の回転要素eに入力される。このとき、動力分配機構1の回転要素cには、エンジンENGの作用トルクTENGが発生しており、この作用トルクTENGは、固定点である回転要素bを支点とするレバー比bc/bdで回転要素dに伝達される。つまり、回転要素dには、作用トルクTENGにレバー比bc/bdを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTdが発生し、この反作用トルクTdが正回転方向の作用トルクTINとして動力合成機構2の回転要素eに伝達される。なお、固定点である回転要素bには、逆回転方向の反作用トルクTB4が発生し、この反作用トルクTB4によって動力分配機構1側のトルクの総和が0になる。
【0123】
一方、動力合成機構2側では、固定点で回転要素hを支点として共線の傾きが変化する。したがって、動力分配機構1側から回転要素eに正回転方向の高速回転が入力されると、出力部である動力合成機構2の回転要素fには、前記傾きに応じて減速された正回転方向の高速回転(8速前進走行)が伝達される。また、回転要素fには、動力分配機構1から入力された作用トルクTINに起因する反作用トルクが発生するが、このモードでは、動力合成機構2の回転要素hが固定されているため、作用トルクTINは、固定点である回転要素hを支点とするレバー比eh/fhで回転要素fに伝達される。つまり、回転要素fには、作用トルクTINにレバー比eh/fhを掛けて求められる逆回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。これにより、高速・低トルクの駆動力特性で前進走行可能な固定ギヤモードの8速(エンジン運転)が実現される。なお、固定点である回転要素hには、正回転方向の反作用トルクTB5が発生し、この反作用トルクTB5によって動力合成機構2側のトルクの総和が0になる。
【0124】
−オペレーション例−
つぎに、動力伝達装置100のオペレーション例について、
図24〜
図38を参照して説明する。
【0125】
<停止>
図24に示すように、停止状態では、2MOT_EV_Loモードによる発進を想定し、第1ブレーキ機構B1及び第6ブレーキ機構B6を締結させて動力分配機構1の回転要素cと、動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させる。また、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させる。この状態では、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を停止させるので、いずれの回転要素a〜hも停止している。
【0126】
<2MOT_EV_Loモード発進>
図25に示すように、発進操作が行われたら、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を逆回転方向に力行駆動させ、2MOT_EV_Loモードで車両を発進させる。このとき、出力軸OUTは低速で回転し、出力軸OUTには高トルクが出力されている(
図4及びその説明を参照)。
【0127】
<2MOT_EV_Loモード発進後始動準備1>
図26に示すように、2MOT_EV_Loモードによる発進後は、2MOT_電気CVT_Loモードへの移行を想定し、エンジンENGの始動準備を開始する。まず、始めの段階では、第1モータ・ジェネレータMG1を無負荷運転状態にして、固定点である回転要素cの反作用トルクTB1を0に近づける。
【0128】
<2MOT_EV_Loモード発進後始動準備2>
図27に示すように、回転要素cの反作用トルクTB1が0となったら第1ブレーキ機構B1を解放する。このとき、回転要素cが固定状態から回転許容状態に移行するが、回転要素cの反作用トルクTcが略0の状態なので、回転要素cは無回転状態を維持する。
【0129】
<2MOT_EV_Loモード発進後エンジン始動>
図28に示すように、第1ブレーキ機構B1の解放後は、第1モータ・ジェネレータMG1を回生駆動させることによって回転要素aに正回転方向の作用トルクTMG1を発生させる。このとき、動力合成機構2側から回転要素dに正回転方向の反作用トルクTdが伝達されるので、回転要素cには、作用トルクTMG1と反作用トルクTdとの合算トルクと釣り合う逆回転方向の反作用トルクTcが発生する。なお、エンジンENGが連結される回転要素cに逆回転方向のトルクが作用することは、エンジンENGに正回転方向(前進方向)のトルクが作用し、クランク軸の回転方向にクランク軸を連れまわすことを意味する。そして、クランク軸が所定回転数を超えた時点でエンジン運転制御を開始することによりエンジンENGが始動される。エンジンENGの始動後は、電気CVT_Loモードとなる。
【0130】
<2MOT_電気CVT_Loモード 高速走行>
図29に示すように、2MOT_電気CVT_Loモードへの移行後は、エンジンENGを所定の回転数で駆動しつつ、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の回転数制御に基づいて車速を低速域で無段階状に変速させる。そして、車速が2MOT_電気CVT_Loモードで所定速度に到達したら、2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え準備を開始する。
【0131】
<2MOT_電気CVT_Loモード→Hiモード持ち替え準備>
図30に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え準備では、第2モータ・ジェネレータMG2を回生駆動することによって回転要素hに正回転方向の作用トルクTMG2を発生させ、固定点である回転要素gの反作用トルクTB6を0に近づける。
【0132】
<2MOT_電気CVT_Loモード→Hiモード持ち替え>
図31に示すように、回転要素gの反作用トルクTB6が0となったら第6ブレーキ機構B6を解放する。このとき、回転要素gが固定状態から回転許容状態に移行するが、回転要素gの反作用トルクTB6が略0の状態なので、回転要素gは無回転状態を維持する。
【0133】
<2MOT_電気CVT_Hiモード持ち替え後加速1>
図32に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードへ移行すると、出力軸OUTの回転が低速から高速に変化するに従い、出力軸OUTに出力されるトルクは、等出力特性に従って高トルクから低トルク特性に順次変化する(
図11及びその説明を参照)。
【0134】
<2MOT_電気CVT_Hiモード持ち替え後加速2>
図33に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードでは、エンジンENGの回転数を維持しつつ、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の回転数制御に基づいて車速を高速域で無段階状に変速させる。
【0135】
<2MOT_電気CVT_Hiモード 高速走行>
図34に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードでは、高速域で所定速度まで車速を無段階状に変速させることができる。そして、所定速度に到達した後、車速を減速させる際には、2MOT_電気CVT_Hiモードから回生状態に移行させる。
【0136】
<2MOT_電気CVT_Hiモード 高速回生遷移1>
図35に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードの高速域から回生状態に移行する場合は、その準備としてエンジンENGを停止させるとともに、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を回転数合わせ程度の無負荷運転状態にする。
【0137】
<2MOT_電気CVT_Hiモード 高速回生遷移2>
図36に示すように、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の無負荷運転は、回転要素cの回転速度が0付近になってエンジンENGのクランク軸の回転が停止するまで継続させる。
【0138】
<2MOT_電気CVT_Hiモード 回生>
図37に示すように、第1ブレーキ機構B1を締結させて回転要素cを回転不能に固定させた後、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を回生駆動させることによって出力軸OUTに連結された回転要素fには、正回転方向の反作用トルクTOUTが発生する。なお、出力軸OUTが連結される回転要素fに正回転方向のトルクが作用することは、上記したように、出力軸OUTに逆回転方向(後進方向)のトルクが作用することを意味し、前進走行している車両においては制動力が作用することを意味する。第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を回生駆動させることで、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2で発電し、不図示のバッテリに充電できる。
【0139】
<2MOT_電気CVT_Loモード 回生>
続いて、
図38に示すように、車速の低下、即ち、出力軸OUTの回転数の低下に伴って回転要素cの回転数が0となったときに、第6ブレーキ機構B6を締結させることで、2MOT_電気CVT_Loモードに移行でき、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2を回生駆動させ続けることによって、車両に制動力を作用させるとともに、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2で発電し、不図示のバッテリに充電できる。
【0140】
−セレクト切替手法−
つぎに、セレクト機構3の切替手法について、
図2、
図10、
図39〜
図46を参照して説明する。セレクト機構3の切替動作は、固定ギヤモード内における変速動作、固定ギヤモードから他のモードへの移行、他のモードから固定ギヤモードへの移行に際して行われる。
図39〜
図46は、2MOT_電気CVT_Loモードから固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)に移行する場合におけるセレクト機構3の切替手法を例示している。
【0141】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法1>
図2及び
図10に示すように、2MOT_電気CVT_Loモードでは、第6ブレーキ機構B6を締結させて動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させるとともに、セレクト機構3は、セレクト要素SHを介して、動力分配機構1の回転要素dと、動力合成機構2の回転要素eとを連結させている。
【0142】
このような2MOT_電気CVT_Loモードから固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)に移行する場合は、セレクト機構3を切替動作するために、まず、第1モータ・ジェネレータMG1の回転速度をエンジンENGの回転速度に同期させて、
図39に示すように、動力分配機構1側の各回転要素a〜dの回転数を同期させ、動力分配機構1の各回転要素を共線図上で水平な状態にする。
【0143】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法2>
続いて、
図40に示すように、動力分配機構1側の各回転要素a〜dの回転数が同期したら、エンジンENGのトルクを低下させるとともに、第1モータ・ジェネレータMG1を他の回転要素b〜dと回転数の同期ができる程度の低負荷運転状態にして動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数の同期を維持しつつ、動力分配機構1側における各回転要素a〜dのトルクを0に近づける。
【0144】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法3>
図41に示すように、動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数が同期しており、かつ各回転要素a〜dのトルクが略0の状態になったとき、セレクト機構3の切替動作を実行する。まず、セレクト要素SHからセレクト要素SMへの切替動作を実行し、動力合成機構2側の回転要素eに連結させる動力分配機構1側の相手を回転要素dから回転要素cに変更する。
【0145】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法4>
図42に示すように、セレクト要素SHからセレクト要素SMへの切替動作を実行した後、エンジンENG及び/又は第1モータ・ジェネレータMG1を所望の適切なトルクおよび回転数に制御して、動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数の同期状態を維持する。
【0146】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法5>
図43に示すように、動力分配機構1側における各回転要素a〜dのトルクを0に近づける。
【0147】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法6>
図44に示すように、動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数が同期しており、かつ各回転要素a〜dのトルクが略0の状態になったとき、セレクト機構3の切替動作を実行する。つまり、セレクト要素SMからセレクト要素SLへの切替動作を実行し、動力合成機構2側の回転要素eに連結させる動力分配機構1側の相手を回転要素cから回転要素bに変更する。
【0148】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法7>
図45に示すように、セレクト要素SMからセレクト要素SLへの切替動作を実行した後、エンジンENG及び/又は第1モータ・ジェネレータMG1を所望の適切なトルクおよび回転数に制御して、回転要素cの回転速度を増速させる。このとき、動力合成機構2側の回転要素eに連結される回転要素bの回転速度が変化しないように、第1モータ・ジェネレータMG1の回転速度を制御し、回転要素aの回転速度を0に近づける。
【0149】
<2MOT_電気CVT_セレクト切替手法8>
図46に示すように、回転要素aの回転速度が略0になったとき、第1モータ・ジェネレータMG1を停止させつつ、第2ブレーキ機構B2を締結させて回転要素aを回転不能に固定させる。これにより、固定ギヤモードの1速(ハイブリッド運転)への移行が完了する。
【0150】
−運転モード遷移制御−
<運転モード遷移制御(2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Hiモード)>
つぎに、動力伝達装置100の運転モード遷移制御(2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Hiモード)について説明する。動力伝達装置100の運転モード遷移制御は、動力伝達装置100と共にハイブリッド車両に搭載されたECU40によって行われる。ECU40は、エンジンENGの運転制御、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の駆動制御、セレクト機構3の切換制御、並びに、第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6の締結・解放制御等を行う。
図47は、ECU40の内部構成を示すブロック図である。なお、
図47中の点線の矢印は値データを示し、実線の矢印は指示内容を含む制御信号を示す。
【0151】
図47に示すように、ECU40は、モード判定部101と、速度判定部103と、駆動制御部105と、トルク判定部107と、遷移制御部109とを有する。モード判定部101は、第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6の各締結・解放状態、セレクト機構3による連結状態、並びに、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の各運転状態に基づいて、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるかを判定する。速度判定部103は、2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V11と、不図示の車速センサが計測した現在の車速VPとの差である速度偏差ΔV(=V11−VP)が閾値ΔVth以下(ΔV≦ΔVth)であるかを判定する。
【0152】
駆動制御部105は、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるとモード判定部101が判定し、かつ、速度偏差ΔVが閾値ΔVth以下であると速度判定部103が判定した場合に、第2モータ・ジェネレータMG2を発電機として駆動制御する。トルク判定部107は、不図示のトルクセンサが計測した回転要素gの反作用トルクTB6の絶対値が閾値Tth以下(|TB6|≦Tth)であるかを判定する。遷移制御部109は、回転要素gの反作用トルクTB6の絶対値が閾値Tth以下であるとトルク判定部107が判定した場合に、第6ブレーキ機構B6によって固定されている回転要素gを解放することによって、運転モードを2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードに遷移させる。
【0153】
以下、本実施形態の運転モード遷移制御によって2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードに遷移する際に変化する各作動パターンについて、
図10及び
図48〜
図50の各共線図、並びに、
図51を参照して説明する。ただし、
図48〜
図50の共線図において各回転要素a〜hに発生しているトルクの説明は、段落[0087]〜[0092]の説明を援用する。
図51は、ECU40による第1実施形態に係る運転モード遷移制御の手順を示すフローチャートである。
【0154】
<2MOT_電気CVT_Loモードにおける高速走行>
図10に示すように、2MOT_電気CVT_Loモードでは、第6ブレーキ機構B6を締結させて動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させるとともに、エンジンENGを所定の回転数で駆動しつつ、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の駆動制御に基いて車速を低速域で無段階状に変速させる。そして、
図48に示すように、車速が2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V11に近づいたら、
図49に示すように、2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え準備を開始する。
【0155】
このとき、ECU40のモード判定部101は、
図51に示すように、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるかを判定するステップST11を実行し、この判定結果が肯定の場合はステップST12に進む。ステップST12で速度判定部103は、2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V11と現在の車速VPとの差である速度偏差ΔV(=V11−VP)が閾値ΔVth以下であるかを判定する。ステップST12での判定結果が肯定(ΔV≦ΔVth)の場合はステップST13に進み、2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え準備を開始する。なお、ステップST12での判定結果が否定(ΔV>ΔVth)の場合はステップST12に戻る。
【0156】
<2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Hiモード持ち替え準備>
図49に示す2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え準備段階では、駆動制御部105は、
図51に示すステップST13を実行する。ステップST13では、駆動制御部105が第2モータ・ジェネレータMG2を発電機として駆動制御することにより、出力軸OUTの回転速度を維持しつつ、固定点である回転要素gの反作用トルクTB6を0に近づける。
図49に示す例では、空転状態であった第2モータ・ジェネレータMG2を、その回転速度を維持しつつ、発電機として作用させることにより、回転要素hに正回転方向の作用トルクTMG2を発生させ、固定点である回転要素gの反作用トルクTB6を0に近づける。
【0157】
駆動制御部105による第2モータ・ジェネレータMG2の駆動制御が行われると、
図51のステップST14が実行される。ステップST14では、トルク判定部107が、回転要素gの反作用トルクTB6の絶対値が閾値Tth以下(|TB6|≦Tth)であるかを判定する。なお、閾値Tthは0に近い値である。ステップST14での判定結果が肯定(|TB6|≦Tth)の場合はステップST15に進み、2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え段階に移行する。なお、ステップST14での判定結果が否定(|TB6|>Tth)の場合はステップST12に戻る。
【0158】
<2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Hiモード持ち替え>
図50に示す2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの持ち替え段階では、遷移制御部109は、
図51に示すステップST15を実行する。ステップST15では、遷移制御部109が第6ブレーキ機構B6を解放して回転要素gを回転可能にすることで、運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードに遷移する。
【0159】
以上のように構成された本発明の実施形態によれば、動力伝達装置100は、エンジンENGと、第1モータ・ジェネレータMG1と、第2モータ・ジェネレータMG2と、エンジンENG及び第1モータ・ジェネレータMG1に連結され、かつ、少なくとも3つの回転要素a〜dを相互に差動回転可能に構成された第1差動式変速機からなる動力分配機構1と、動力分配機構1と第2モータ・ジェネレータMG2及び出力軸OUTに連結され、かつ、4つの回転要素e〜hを相互に差動回転可能に構成された第2差動式変速機からなる動力合成機構2と、動力合成機構2の回転要素gを選択的に回転不能に固定可能な第6ブレーキ機構B6と、動力分配機構1の回転要素cを選択的に回転不能に固定可能な第1ブレーキ機構B1と、動力分配機構1の回転要素のうち、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1のいずれにも連結されない回転要素bを選択的に回転不能に固定可能な第4ブレーキ機構B4とを有する。また、動力合成機構2は、動力分配機構1に連結された回転要素e、出力軸OUTに連結された回転要素f、第6ブレーキ機構B6に連結された回転要素g、第2モータ・ジェネレータMG2に連結された回転要素hの順に共線図上に並ぶように構成され、動力分配機構1は、第1モータ・ジェネレータMG1回転要素a、第4ブレーキ機構B4に連結された回転要素b、エンジンENGに連結された回転要素c、動力合成機構2に連結された回転要素dの順に共線図上に並ぶように構成されている。さらに、動力合成機構2の回転要素のうち動力分配機構1に連結される回転要素eを、動力分配機構1の回転要素のうち第1モータ・ジェネレータMG1、第4ブレーキ機構B4、エンジンENGのいずれにも連結されない回転要素dと、エンジンENGが連結された回転要素cと、第4ブレーキ機構B4が連結された回転要素bとに選択的に連結可能なセレクト機構3を有する。このように、動力伝達装置100は、動力分配機構1のエンジンENGに連結された回転要素cを選択的に回転不能に固定可能な第1ブレーキ機構B1を有するので、2モータEV走行モードにおいて第1ブレーキ機構B1によってエンジンENGに連結された回転要素cを固定することで、動力分配機構1に連結された第1モータ・ジェネレータMG1の動力を動力合成機構2に伝達して第2モータ・ジェネレータMG2の動力と合成し、2モータEV走行モードを実現することができる。
【0160】
また、2モータEV走行モードにおいては、第6ブレーキ機構B6の切換えによって、トルク特性を変化させることができるので、電動機のサイズ、コスト、重量などの増加を回避しつつ、駆動力特性が異なる複数のEV走行モード(2MOT_EV_Loモード及び2MOT_EV_Hiモード)を実現することが可能になる。
【0161】
また、動力伝達装置100は、動力分配機構1の回転要素のうち、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1のいずれにも連結されない回転要素bを選択的に回転不能に固定可能な第4ブレーキ機構B4を有するので、第4ブレーキ機構B4の切換えによって有段変速走行を実現することができる。
【0162】
また、動力分配機構1と動力合成機構2との連結位置をセレクト機構3によって切換えることができるので、有段変速走行の変速段数を増加させることができる。
【0163】
さらに、固定ギヤモードにおける8段の変速段のうち、3つの変速段(2速、5速、7速)では、第2ブレーキ機構B2及び第5ブレーキ機構B5によって第1モータ・ジェネレータMG1に連結された回転要素a及び第2モータ・ジェネレータMG2に連結された回転要素hを固定することにより、エンジンENGの動力のみで走行する、いわゆる機械パス100%が実現されるので、高い動力伝達効率が得られる。
【0164】
また、上記説明した本実施形態の運転モード遷移制御では、運転モードを2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへ遷移させるにあたり、車速が2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V11に近づいた際には、出力軸OUTの回転速度を維持しつつ、第2モータ・ジェネレータMG2を発電機として駆動制御することによって、第6ブレーキ機構B6によって固定された回転要素gに加わる反作用トルクTB6を0に近づけて、当該反作用トルクTB6の絶対値が所定の閾値Tth以下である状態のときに第6ブレーキ機構B6を解放する。このように、モード遷移前後で出力軸OUTの回転速度は変わらず、かつ、第6ブレーキ機構B6によって固定された回転要素gが解放される時の回転要素gにおける反作用トルクTB6は0に近いため、駆動力特性が異なる2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Hiモードへの遷移時に発生する騒音又は振動を低減できる。
【0165】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置100Bについて、
図52を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付与することにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0166】
図52に示すように、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置100Bは、動力分配機構1の回転要素a〜dのうち、少なくとも2つを連結可能な連結機構であるクラッチ機構C1を有する点が前記第1実施形態と相違している。このようにすると、
図53に示すように、2モータ電気CVTモードにおいて、低速・高トルクの駆動力特性を示す2MOT_電気CVT_Loモードと、高速・低トルクの駆動力特性を示す2MOT_電気CVT_Hiモードとのモード遷移において、クラッチ機構C1を切換えることによって、電気CVT_Loモードと電気CVT_Hiモードの中間の駆動力特性を有する電気CVT_Midモードを実現できるため、モード遷移時におけるトルク変動や回転数変動を抑えることができる。例えば、第2実施形態のクラッチ機構C1は、動力分配機構1の回転要素aと回転要素dとを連結することにより、動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数の同期状態に維持できるので、セレクト機構3の切替動作などに際し、トルク変動や回転数変動を抑制できる。従って、クラッチ機構C1を用いたモード遷移では、
図9と比較して、ショックレスでスムーズなモード遷移が可能となる。
【0167】
−運転モード遷移制御−
<運転モード遷移制御(2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Midモード)>
以下、第2実施形態に係る動力伝達装置100Bの運転モード遷移制御(2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Midモード)について説明する。動力伝達装置100Bの運転モード遷移制御は、動力伝達装置100Bと共にハイブリッド車両に搭載されたECU40Bによって行われる。ECU40Bは、第1実施形態のECU40と同様に、エンジンENGの運転制御、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の駆動制御、セレクト機構3の切換制御、並びに、第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6の締結・解放制御等を行い、さらに、クラッチ機構C1の締結・解放制御も行う。
図54は、ECU40Bの内部構成を示すブロック図である。なお、
図54中の点線の矢印は値データを示し、実線の矢印は指示内容を含む制御信号を示す。
【0168】
図54に示すように、ECU40Bは、モード判定部201と、速度判定部203と、連結制御部205と、駆動制御部207と、トルク判定部209と、遷移制御部211とを有する。モード判定部201は、第1ブレーキ機構B1〜第6ブレーキ機構B6の各締結・解放状態、セレクト機構3による連結状態、並びに、エンジンENG、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の各運転状態に基づいて、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるかを判定する。速度判定部203は、2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V21と、不図示の車速センサが計測した現在の車速VPとの差である速度偏差ΔV(=V21−VP)が閾値ΔVth以下(ΔV≦ΔVth)であるかを判定する。連結制御部205は、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるとモード判定部201が判定し、かつ、速度偏差ΔVが閾値ΔVth以下であると速度判定部203が判定した場合に、クラッチ機構C1を締結させて、動力分配機構1の回転要素aと回転要素dとを連結する。
【0169】
駆動制御部207は、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるとモード判定部201が判定し、かつ、速度偏差ΔVが閾値ΔVth以下であると速度判定部203が判定した場合に、第2モータ・ジェネレータMG2を発電機として駆動制御し、かつ、第1モータ・ジェネレータMG1を電動機として駆動制御する。トルク判定部209は、不図示のトルクセンサが計測した回転要素gの反作用トルクTB6の絶対値が閾値Tth以下(|TB6|≦Tth)であるかを判定する。遷移制御部211は、回転要素gの反作用トルクTB6の絶対値が閾値Tth以下であるとトルク判定部209が判定した場合に、第6ブレーキ機構B6によって固定されている回転要素gを解放することによって、運転モードを2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードに遷移させる。
【0170】
以下、本実施形態の運転モード遷移制御によって2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードに遷移する際に変化する各作動パターンについて、
図55〜
図59の各共線図、並びに、
図60を参照して説明する。
図60は、ECU40Bによる第2実施形態に係る運転モード遷移制御の手順を示すフローチャートである。
【0171】
<2MOT_電気CVT_Loモードにおける高速走行>
図55に示すように、2MOT_電気CVT_Loモードでは、第6ブレーキ機構B6を締結させて動力合成機構2の回転要素gを回転不能に固定させるとともに、エンジンENGの回転速度を一定に維持しつつ、第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の駆動制御に基いて車速を低速域で無段階状に変速させる。そして、
図56に示すように、車速が2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V21に近づいたら、
図57に示すように、2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え準備を開始する。
【0172】
このとき、ECU40Bのモード判定部201は、
図60に示すように、現在の運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードであるかを判定するステップST21を実行し、この判定結果が肯定の場合はステップST22に進む。ステップST22で速度判定部203は、2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V21と現在の車速VPとの差である速度偏差ΔV(=V21−VP)が閾値ΔVth以下であるかを判定する。ステップST22での判定結果が肯定(ΔV≦ΔVth)の場合はステップST23に進み、2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え準備を開始する。なお、ステップST22での判定結果が否定(ΔV>ΔVth)の場合はステップST22に戻る。
【0173】
<2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Midモード持ち替え準備1>
図57に示す2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え準備段階1では、連結制御部205は、
図60に示すステップST23を実行する。ステップST23では、連結制御部205がクラッチ機構C1を締結させて、動力分配機構1の回転要素aと回転要素dとを連結する。当該ステップST23におけるクラッチ機構C1の締結により、動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数が同期して各回転要素が共線図上で水平な状態となり、各回転要素a〜dがエンジンENGの回転数を基準とした回転速度を維持しつつ、第1モータ・ジェネレータMG1の駆動制御に基いて動力合成機構2に伝達するトルクTINを増減させることが可能になる。なお、本実施形態では、車速が2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V21に近づくと、
図56に示すように、動力分配機構1の各回転要素a〜dの回転数が同期するように第1モータ・ジェネレータMG1を駆動制御している。このため、クラッチ機構C1の締結制御を行っても、回転要素aと回転要素dとの連結時に発生する振動又は騒音を抑制できる。
【0174】
<2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Midモード持ち替え準備2>
図58に示す2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え準備段階2では、駆動制御部207は、
図60に示すステップST24を実行する。ステップST24では、駆動制御部207が第2モータ・ジェネレータMG2を発電機として駆動制御して得た発電電力により、第1モータ・ジェネレータMG1を電動機として駆動制御することにより、出力軸OUTの回転速度及びトルクを維持しつつ、固定点である回転要素gの反作用トルクTB6を0に近づける。
図58に示す例では、力行駆動状態であった第2モータ・ジェネレータMG2を、その回転速度を維持しつつ、発電機として作用させることにより、回転要素hに正回転方向の作用トルクTMG2(TMG2_1+TMG2_2)を発生させ、固定点である回転要素gの反作用トルクTB6を0に近づける。また、それに伴う回転要素fのトルク変動(反作用トルクTOUT=TOUT_1+TOUT_2)を抑制するために、発電状態であった第1モータ・ジェネレータMG1を力行駆動状態に切換えることにより、動力合成機構2側に第1モータ・ジェネレータMG1の作用トルクTMG1をトルクTIN_2として伝達する。
【0175】
駆動制御部207による第1モータ・ジェネレータMG1及び第2モータ・ジェネレータMG2の駆動制御が行われると、
図60のステップST25が実行される。ステップST25では、トルク判定部209が、回転要素gの反作用トルクTB6の絶対値が閾値Tth以下(|TB6|≦Tth)であるかを判定する。なお、閾値Tthは0に近い値である。ステップST25での判定結果が肯定(|TB6|≦Tth)の場合はステップST26に進み、2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え段階に移行する。なお、ステップST25での判定結果が否定(|TB6|>Tth)の場合はステップST22に戻る。
【0176】
<2MOT_電気CVT_Loモード→2MOT_電気CVT_Midモード持ち替え>
図59に示す2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの持ち替え段階では、遷移制御部211は、
図60に示すステップST26を実行する。ステップST26では、遷移制御部211が第6ブレーキ機構B6を解放して回転要素gを回転可能にすることで、運転モードが2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードに遷移する。
【0177】
以下、本実施形態の運転モード遷移制御によって2MOT_電気CVT_Midモードで増速する各作動パターンについて、
図61〜
図64の各共線図を参照して説明する。
【0178】
図61に示すように、2MOT_電気CVT_Midモードでは、回転要素gが回転可能な状態であるため、発電機として駆動制御されている第2モータ・ジェネレータMG2の速度を下げながら発電する電力をベースに、電動機として駆動制御されている第1モータ・ジェネレータMG1のトルクTMG1を上げることによって、出力軸OUTの回転速度が増加する。
図62は、第2モータ・ジェネレータMG2の速度が0となって発電電力が0になり、第1モータ・ジェネレータMG1のトルクTMG1が0となった状態を示す。
【0179】
図62に示した状態から、
図63に示すように、第1モータ・ジェネレータMG1を発電機として駆動制御し、第2モータ・ジェネレータMG2を電動機として駆動制御して、第1モータ・ジェネレータMG1の発電トルクTMG1を上げ、かつ、第2モータ・ジェネレータMG2の速度を上げると、
図64に示す状態となる。
【0180】
以上説明した本実施形態の運転モード遷移制御では、運転モードを2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへ遷移させるにあたり、車速が2MOT_電気CVT_Loモードでの所定速度V21に近づいた際には、クラッチ機構C1を締結し、出力軸OUTの回転速度を維持しつつ、第2モータ・ジェネレータMG2を発電機として駆動制御することによって、第6ブレーキ機構B6によって固定された回転要素gに加わる反作用トルクTB6を0に近づけて、当該反作用トルクTB6の絶対値が所定の閾値Tth以下である状態のときに第6ブレーキ機構B6を解放する。また、第2モータ・ジェネレータMG2を駆動制御する際には、第1モータ・ジェネレータMG1を電動機として駆動制御することによって、出力軸OUTのトルクは維持される。このように、モード遷移前後で出力軸OUTの回転速度及びトルクは変わらず、かつ、第6ブレーキ機構B6によって固定された回転要素gが解放される時の回転要素gにおける反作用トルクTB6は0に近いため、駆動力特性が異なる2MOT_電気CVT_Loモードから2MOT_電気CVT_Midモードへの遷移時に発生する騒音又は振動をより一層低減できる。
【0181】
(第3実施形態)
つぎに、本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置100Cについて、
図65及び
図66を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付与することにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0182】
図65に示すように、本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置100Cは、セレクト機構3Cのセレクト要素がSHとSMの2つであり、セレクト要素SLが省かれている点が前記第1実施形態と相違している。このような第3実施形態の動力伝達装置100Cによれば、
図66に示すように、前記第1実施形態で実現されていた固定ギヤモードの1速及び2速が実現不可能となるが、第1実施形態の動力伝達装置100に比べて構造が簡略になるという利点がある。
【0183】
(第4実施形態)
つぎに、本発明の第4実施形態に係る動力伝達装置100Dについて、
図67及び
図68を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付与することにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0184】
図67に示すように、本発明の第4実施形態に係る動力伝達装置100Dは、セレクト機構3が省かれている点が前記第1〜第3実施形態と相違している。このような第4実施形態の動力伝達装置100Dによれば、
図68に示すように、固定ギヤモードの6速以外が実現不可能となるが、第1〜第3実施形態の動力伝達装置100、100B、100Cに比べて構造が簡略になるという利点がある。
【0185】
(第5実施形態)
つぎに、本発明の第5実施形態に係る動力伝達装置100Eについて、
図69及び
図70を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付与することにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0186】
図69に示すように、本発明の第5実施形態に係る動力伝達装置100Eは、セレクト機構3が省かれている点が前記第1〜第3実施形態と相違し、さらに、動力分配機構1Eが3つの回転要素a、c、dで構成されている点が前記第1〜第4実施形態と相違している。具体的に説明すると、第5実施形態に係る動力伝達装置100Eの動力分配機構1Eは、シングルピニオン型の遊星歯車機構10のみで構成されており、ダブルピニオン型の遊星歯車機構20によって構成されていた前記第1〜第4実施形態の回転要素bが省かれている。このような第5実施形態の動力伝達装置100Eによれば、
図70に示すように、固定ギヤモードが実現不可能となるが、第1〜第4実施形態の動力伝達装置100、100B、100C、100Eに比べて構造が簡略になるという利点がある。
【0187】
(第6実施形態)
つぎに、本発明の第6実施形態に係るハイブリッド車両の動力伝達装置100Fについて、
図71及び
図72を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付与することにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0188】
図71に示すように、本発明の第6実施形態に係る動力伝達装置100Fは、セレクト機構3が省かれている点が前記第1〜第3実施形態と相違し、さらに、動力分配機構1Fが3つの回転要素a、c、dで構成されている点が前記第1〜第4実施形態と相違している。具体的に説明すると、第6実施形態に係る動力伝達装置100Fの動力分配機構1Fは、シングルピニオン型の遊星歯車機構10のみで構成されており、ダブルピニオン型の遊星歯車機構20によって構成されていた前記第1〜第4実施形態の回転要素bが省かれている。このような第6実施形態の動力伝達装置100Fによれば、
図72に示すように、固定ギヤモードが実現不可能となるが、第1〜第4実施形態の動力伝達装置100、100B、100C、100Eに比べて構造が簡略になるという利点がある。
【0189】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、動力伝達装置はハイブリッド車両に搭載されると説明したが、電動機の動力によって走行する電動車両に搭載されても良い。
【0190】
(変形例1)
例えば、動力合成機構2は、動力分配機構1に連結された回転要素e、出力軸OUTに連結された回転要素f、第2電動機である第2モータ・ジェネレータMG2に連結された回転要素h、第1固定機構である第6ブレーキ機構B6に連結された回転要素gの順に共線図上に並ぶように構成されてもよい。このような動力合成機構2であっても、動力分配機構1に連結された第1モータ・ジェネレータMG1の動力を動力合成機構2に伝達して第2モータ・ジェネレータMG2の動力と合成し、2モータEV走行モードを実現することができる。
【0191】
(変形例2)
また、前記実施形態で示した作動表は、本発明の動力伝達装置100において実現可能なすべての作動パターンを示すものではない。例えば、動力合成機構2に連結された動力分配機構1の回転要素dと、動力分配機構1に連結された動力合成機構2の回転要素eのうち、少なくとも1つを選択的に回転不能に固定可能な第3ブレーキ機構B3を備える動力伝達装置100においては、第3ブレーキ機構B3の締結により動力合成機構2と動力分配機構1との間における動力伝達を停止させ、第2電動機である第2モータ・ジェネレータMG2による1モータEV走行を実現するようにしてもよい。
【0192】
さらに、動力合成機構2の変形例として、シングルピニオンやダブルピニオンを用いた4要素の差動式変速機を用いてもよい。
【0193】
また、固定機構として例示したブレーキ及びクラッチは、ドグ機構に限定されるものでなく、適宜に変形や改良などが可能である。
【0194】
また、第1実施形態の
図51に示したステップST14で用いられる閾値Tth及び第2実施形態の
図60に示したステップST25で用いられる閾値Tthは0に近い値であると説明したが、閾値Tthは0であっても良い。この場合、回転要素gに反作用トルクTB6が全く加わっていない状態で第6ブレーキ機構B6が解放されるため、駆動力特性が異なるモードへの遷移時に第6ブレーキ機構B6の解放によって発生する騒音又は振動を完全になくすことができる。
【0195】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0196】
本出願は、2014年12月26日出願の日本特許出願(特願2014−266414)、2014年12月26日出願の日本特許出願(特願2014−266415)、2014年12月26日出願の日本特許出願(特願2014−266416)、2014年12月26日出願の日本特許出願(特願2014−266417)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。